説明

プリンタ装置

【課題】印画紙ロールから引き出された印画紙を容易に案内機構に挿入しサーマルヘッドに案内することが可能なプリンタ装置を提供する。
【解決手段】プリンタ装置は、所定のセット位置にセットされたロール紙10から引き出された印画紙の先端を挿入する挿入口19を有し当該挿入口19に挿入された印画紙をサーマルヘッド2に案内する案内機構を備え、案内機構は、ロール紙10の所定のセット位置の下方に設けられ、上方側にロール紙10の周面と同方向に湾曲した受け面20を有する案内部材8と、一端が案内部材8の受け面20の中途近傍に設けられた回転軸6に軸支され他端がロール紙10に接触する方向に回動自在に付勢され、下方側にロール紙10の周面と同方向に湾曲した倣い面21を有し当該倣い面21と案内部材8の受け面20との間が挿入口19となる可動式案内部材4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ装置に関し、特に、ロール状の印画紙(以下、ロール紙あるいは印画紙ロールとも称する)から引き出された印画紙をサーマルヘッド近傍まで案内する案内機構を備えたプリンタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロール紙から、例えばインクジェットヘッド近傍まで印画紙を案内する案内機構に対して印画紙を装着する際に、ロール紙の奥側に位置する案内部へ印画紙を手動で差し込むロール紙のセット機構がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、紙ガイド部材をロール紙に付勢する紙ガイド機構を備え、紙を自動給紙するためにガイド板の先端をロール紙に付勢し、ロール紙を回転させたときに移動してくるロール紙の先端を掬い易くしたロール紙の自動給紙装置がある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、ロール紙から引き出された印画紙に対して付勢する紙ガイド部材である緩衝部材を備え、印画紙を案内する際に生じる衝撃的な荷重を緩衝するために、衝撃の大きさに応じて緩衝部材の形状を変化させるプリンタがある(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
また、回転軸が保持・固定されていないロール紙から引き出された印画紙に対して付勢する紙ガイド部材を備えたプリンタがある(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−161382号公報(第2図)
【特許文献2】特開平11−11750号公報(第1図)
【特許文献3】特開2002−241006号公報(第1図)
【特許文献4】特開平11−349197号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、案内部がロール紙の奥側に位置するため、案内先が見づらく、かつ、手前のロール紙が邪魔になるため、印画紙の装着作業が困難であった。
【0008】
また、特許文献2では、印画紙を自動給紙することを目的としており、センサーや駆動機構等の設置が必要となるため、装置全体のサイズが大きくなり、部品点数も多くなるという問題があった。
【0009】
また、特許文献3では、緩衝部材の端部に巻き付く印画紙の巻き付き角度が衝撃の大きさによって変化しており、巻き付き角度が大きくなったときには印画紙に対してダメージを残し易くなるという問題があった。
【0010】
また、特許文献4では、ロール紙の回転軸が保持・固定されていないためにロール紙の挙動が定まらず、摺動ロスが大きく変化してしまう。また、紙終端セパレータ部材とロール紙との間で生じる摺動ロスの大きさは、ロール紙の外径の変化によって大きく変化する。また、ロール紙の外径の変化に伴うロール紙の重量の変化によっても摺動ロスは変化する。このように、上記摺動ロスが原因となって印画紙にダメージを残し易くなるという問題があった。
【0011】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたものであり、印画紙ロールから引き出された印画紙を容易に案内機構に挿入しサーマルヘッドに案内することが可能なプリンタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明によるプリンタ装置は、印画紙ロールから引き出された印画紙に印画を行うサーマルヘッドと、所定のセット位置にセットされた印画紙ロールから引き出された印画紙の先端を挿入する挿入口を有し、当該挿入口に挿入された印画紙をサーマルヘッドに案内する案内機構とを備え、案内機構は、印画紙ロールの所定のセット位置の下方に設けられ、上方側に印画紙ロールの周面と同方向に湾曲した受け面を有する第1案内部材と、一端が第1案内部材の受け面の中途近傍に設けられた回動軸に軸支され、他端が印画紙ロールに接触する方向に回動自在に付勢され、下方側に印画紙ロールの周面と同方向に湾曲した倣い面を有し、当該倣い面と第1案内部材の受け面との間が挿入口となる第2案内部材とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、印画紙ロールから引き出された印画紙に印画を行うサーマルヘッドと、所定のセット位置にセットされた印画紙ロールから引き出された印画紙の先端を挿入する挿入口を有し、当該挿入口に挿入された印画紙をサーマルヘッドに案内する案内機構とを備え、案内機構は、印画紙ロールの所定のセット位置の下方に設けられ、上方側に印画紙ロールの周面と同方向に湾曲した受け面を有する第1案内部材と、一端が第1案内部材の受け面の中途近傍に設けられた回動軸に軸支され、他端が印画紙ロールに接触する方向に回動自在に付勢され、下方側に印画紙ロールの周面と同方向に湾曲した倣い面を有し、当該倣い面と第1案内部材の受け面との間が挿入口となる第2案内部材とを備えるため、印画紙ロールから引き出された印画紙を容易に案内機構に挿入しサーマルヘッドに案内することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態1によるプリンタ装置の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1によるプリンタ装置の側面図である。
【図3】本発明の実施形態1によるプリンタ装置の側面図である。
【図4】本発明の実施形態1による印画紙を案内部材に案内する動作を示す図である。
【図5】本発明の実施形態1による印画紙を案内部材に案内する動作を示す図である。
【図6】本発明の実施形態1による印画紙を案内部材に案内する動作を示す図である。
【図7】本発明の実施形態1によるロール紙の巻径が小さい場合におけるプリンタ装置の側断面図である。
【図8】本発明の実施形態1によるロール紙の巻径が小さい場合における可動案内部材付近の側面図である。
【図9】本発明の実施形態1によるロール紙と回転軸との位置関係を示す図である。
【図10】本発明の実施形態1によるロール紙と回転軸との位置関係を示す図である。
【図11】本発明の実施形態2による可動式案内部材の側面図である。
【図12】本発明の実施形態2によるプリンタ装置の側断面図である。
【図13】本発明の実施形態3によるプリンタ装置の斜視図である。
【図14】本発明の実施形態3によるプリンタ装置の側面図である。
【図15】本発明の実施形態3によるレバーの構成を示す図である。
【図16】本発明の実施形態3によるプリンタ装置の側面図である。
【図17】本発明の実施形態3によるプリンタ装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について、図面に基づいて以下に説明する。
【0016】
〈実施形態1〉
図1は、本発明の実施形態1によるプリンタ装置の斜視図である。また、図2,3は、本実施形態1によるプリンタ装置の側面図である。図1〜3に示すように、本実施形態1によるプリンタ装置本体1(プリンタ装置)は、ロール状の印画紙であるロール紙10(印画紙ロール)から引き出された印画紙10aに印画を行うサーマルヘッド2と、サーマルヘッドに対向配置されたプラテンローラー3と、印画紙10aをサーマルヘッド2に案内する案内部材8(第1案内部材)と、案内部材8に回転自在に保持された回転軸6(回動軸)と、回転軸6によって支持され回転軸6と同期して回転する可動式案内部材4(第2案内部材)と、回転軸6に挿入され回転軸6と同期して回転するレバー7とを備えている。また、レバー7を付勢するバネ5を備え、バネ5の片端(一端)はプリンタ装置1に固定されている。
【0017】
なお、本実施形態1における案内機構は、案内部材8と可動式案内部材4とを備えている。すなわち、案内機構は、所定のセット位置にセットされたロール紙10から引き出された印画紙10aの先端を挿入する挿入口19を有し、当該挿入口19に挿入された印画紙10aをサーマルヘッド2に案内しており、ロール紙10の所定のセット位置の下方に設けられ、上方側にロール紙10の周面と同方向に湾曲した受け面20を有する案内部材8(第1案内部材)と、一端が案内部材8の受け面20の中途近傍に設けられた回転軸6(回動軸)に軸支され、他端がロール紙10に接触する方向に回動自在に付勢され、下方側にロール紙10の周面と同方向に湾曲した倣い面21を有し、当該倣い面21と案内部材8の受け面20との間が挿入口19となる可動式案内部材4(第2案内部材)とを備えている。
【0018】
図2に示すように、ロール紙10を保持する保持部材9は、プリンタ装置本体1の所定のセット位置にセットされる。図2は、保持部材9がプリンタ装置本体1にセットされる様子を示している。また、図3は、ロール紙10から引き出された印画紙10aの先端を挿入口19(すなわち、可動式案内部材4の倣い面21と案内部材8の受け面20との間)から挿入した状態を示している。
【0019】
図3に示すように、印画紙10aを挿入口19に挿入する際には、ロール紙10をプリンタ装置本体1にセットした状態で、ロール紙10を図4の矢印Aの方向に回転させて、印画紙10aの先端が可動式案内部材4の先端部に現れるようにする。その後、ロール紙10を図5の矢印Bの方向に回転させることによって、図6に示すように印画紙10aの先端が可動式案内部材4の背面(前記倣い面21)に沿って案内される。その後、さらにロール紙10を図5の矢印Bの方向に回転させることによって、印画紙10aの先端をサーマルヘッド2の方へ送る。なお、回転軸6からサーマルヘッド2までの印画紙10aの経路において、印画紙10aの浮き上がりを防止するために、受け面20の上方に当該受け面20に沿って天井(図示せず)を設けてもよい。
【0020】
図7は、本実施形態1によるロール紙10の巻径が小さい場合におけるプリンタ装置の側断面図である。また、図8は、本実施形態1によるロール紙10の巻径が小さい場合における可動案内部材4付近の側面図である。図7,8に示すように、ロール紙10の巻き径が小さい場合において、可動式案内部材4は、バネ5の付勢によってレバー7および回転軸6を介して常にロール紙10の外周部に接触している。
【0021】
図9,10は、本実施形態1によるロール紙10と回転軸6との位置関係を示す図である。
【0022】
図9は、印画紙10aの挿入口が視点Aの位置から見える位置に配置した場合において、回転軸6に巻き付く印画紙10aの巻き付け角が、ロール紙10の巻径によって変化することを示している。図9に示すように、ロール紙10の巻径が大きい状態では、回転軸6に巻き付く印画紙10aの巻き付け角はθ1である。また、ロール紙10の巻径が小さくなると、回転軸6に巻き付く印画紙10aの巻き付け角はθ2に変化する。従って、巻き付け角がθ1からθ2に変化するに伴って印画紙10aに加わる張力が大きくなるため、印画紙10aに折れ跡が残る等、印画紙10aへのダメージが大きくなる。
【0023】
また、図10は、回転軸6がロール紙10の直下にあり、印画紙10aの挿入口19が視点Aの位置から見えない位置に配置した場合を示している。図10に示すように、回転軸6をロール紙10の直下に設けることによって、回転軸6に巻き付く印画紙10aの巻き付け角θ1,θ2のそれぞれは、図9の状態よりも小さくなるため、印画紙10aへのダメージが小さくなる。しかし、図10において、特にロール紙10の巻径が大きい状態では挿入口19が見えないため、印画紙10aの挿入が困難となる。
【0024】
一方、本実施形態1によるプリンタ装置では、図7,8に示すように、ユーザーが印画紙10aを挿入口19に挿入する際に、可動式案内部材4の背面に沿って印画紙10aを案内することによって、印画紙10aを案内機構からサーマルヘッド2の方へ確実に送ることができる。さらに、ロール紙10の巻径が小さい場合であっても、可動式案内部材4の回転軸6に巻き付いている印画紙10aの巻き付け角を小さくすることができる。
【0025】
以上のことから、本実施形態1によれば、ユーザーがロール紙10から引き出された印画紙10aを案内機構の挿入口19に挿入する際には、印画紙10aを可動式案内部材4の背面(倣い面21)に沿って挿入すればよく、印画紙10aを容易に案内機構に案内することが可能となり、印画紙10aを案内機構からサーマルヘッド2の方へ確実に送ることができる。また、ロール紙10の外径が変化しても、印画紙10aを容易に案内機構に案内することが可能となる。また、回転軸6における印画紙10aの巻き付け角を小さくすることができ、印画紙10aへのダメージを小さくすることができる。
【0026】
〈実施形態2〉
図11は、本実施形態2による可動式案内部材11の側面図である。本実施形態2では、可動式案内部材11(第2案内部材)が、当該可動式案内部材11の先端部を含む所定の箇所に少なくとも1つ以上のローラーを設けられてなることを特徴としている。その他の構成は実施形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0027】
図11に示すように、可動式案内部材11は、先端部に設けられたローラー12と、内側に設けられたローラー13と、回転軸(例えば図2に示す回転軸6)部に設けられたローラー14と、印画紙10aとの接触部分である背面(倣い面21)側に設けられたローラー15a〜15e(以下、単にローラー15とも称する)を備えている。
【0028】
図12は、本実施形態2によるプリンタ装置の側断面図である。図12に示すように、ロール紙10から引き出された印画紙10aは、ローラー12,15,14の順に接触しながら案内機構からサーマルヘッド2の方へ案内される。また、ローラー13は、ロール紙10に対して常に付勢するように設けられている。
【0029】
以上のことから、本実施形態2によれば、可動式案内部材11にローラーを設けることによって、印画紙10aと可動式案内部材11との接触による負荷が原因となる印画紙10aへのダメージを軽減することができる。
【0030】
〈実施形態3〉
図13は、本実施形態3によるプリンタ装置の斜視図であり、図14は、本実施形態3によるプリンタ装置の側面図である。また、図15は、本実施形態3によるレバー16の構成を示す図である。図13〜15に示すように、本実施形態3では、一端がプリンタ装置本体1に固定され、他端がレバー16に固定されているバネ17と、ロール紙10がセットされていないときはバネ17によって可動式案内部材4を挿入口19が狭まる側に付勢するレバー16とを備えることを特徴としている。すなわち、図14に示すように、所定のセット位置にロール紙10(印画紙ロール)がセットされていないときは可動式案内部材4(第2案内部材)を挿入口19が狭まる側に強制的に位置させる機構(バネ17、レバー16)を備えることを特徴としている。その他の構成は実施形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0031】
図16,17は、本実施形態3によるプリンタ装置の側面図である。図16に示すように、ロール紙10を保持する保持部材9が所定の設置位置にセットされていないとき、可動式案内部材4は、レバー7を介して付勢するレバー16よって挿入口19が狭まる側に位置している。
【0032】
一方、図17に示すように、保持部材9が所定の位置にセットされると、保持部材9に設けられたガイド部(図示せず)によってレバー16が可動式案内部材4から離間する方向に移動すると、可動式案内部材4はロール紙10の外周に接触するよう付勢される。
【0033】
以上のことから、本実施形態3によれば、所定のセット位置にロール紙10がセットされていないときは可動式案内部材4を挿入口19が狭まる側に位置しているため、ロール紙10をプリンタ装置にセットするときに、上方向からだけでなく前方向からもセットすることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の活用例として、ロール紙から引き出された印画紙を、ロール紙の下側を経由してロール紙の奥側に位置するサーマルヘッドに案内する案内機構を有するプリンタ装置に適用できる。
【符号の説明】
【0035】
1 プリンタ装置本体、2 サーマルヘッド、3 プラテンローラー、4 可動式案内部材、5 バネ、6 回転軸、7 レバー、8 案内部材、9 保持部材、10 ロール紙、10a 印画紙、11 可動式案内部材、12,13,14,15 ローラー、16 レバー、17 バネ、18 案内部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印画紙ロールから引き出された印画紙に印画を行うサーマルヘッドと、
所定のセット位置にセットされた前記印画紙ロールから引き出された前記印画紙の先端を挿入する挿入口を有し、当該挿入口に挿入された前記印画紙を前記サーマルヘッドに案内する案内機構とを備え、
前記案内機構は、
前記印画紙ロールの前記所定のセット位置の下方に設けられ、上方側に前記印画紙ロールの周面と同方向に湾曲した受け面を有する第1案内部材と、
一端が前記第1案内部材の前記受け面の中途近傍に設けられた回動軸に軸支され、他端が前記印画紙ロールに接触する方向に回動自在に付勢され、下方側に前記印画紙ロールの周面と同方向に湾曲した倣い面を有し、当該倣い面と前記第1案内部材の前記受け面との間が前記挿入口となる第2案内部材と、
を備える、プリンタ装置。
【請求項2】
前記第2案内部材は、当該第2案内部材の前記他端を含む所定の箇所に、少なくとも1つ以上のローラーを設けられてなることを特徴とする、請求項1に記載のプリンタ装置。
【請求項3】
前記所定のセット位置に前記印画紙ロールがセットされていないときは前記第2案内部材を前記挿入口が狭まる側に強制的に位置させる機構をさらに備える、請求項1または2に記載のプリンタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−218312(P2012−218312A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86918(P2011−86918)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】