説明

プリンタ

【課題】本発明は、インクリボンの交換時に印字ユニットに対して閉じる方向の力が作用しても、上蓋部が閉じられることなく、インクリボンの交換作業が妨害されることがないプリンタを提供することを課題とする。
【解決手段】開いた上蓋部30を所定の位置で支持すると共に、上蓋部30に対して閉じる方向の力を作用させることで、上蓋部30の支持を解除する上蓋部ストッパ34(ガイドプレート31)と、上蓋部ストッパ34によって上蓋部30が支持されている状態で、上下に作業空間を確保した状態に印字ユニット40を支持するアームストッパ35(ガイドプレート31)と、アームストッパ35によって印字ユニット40が支持されている状態では、上蓋部30および印字ユニット40に対して閉じる方向の力が作用しても、上蓋部ストッパ34による上蓋部30の支持の解除を阻止する突起部41bとを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルヘッドを用いて印字を行うプリンタに関し、インクリボンと被印字媒体とを重ねてプラテンローラとサーマルヘッドとの間に挟持搬送することで、インクリボンから被印字媒体にインクを転写させて印字を行うプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラテンローラとサーマルヘッドとの間に、ラベル連続体やタグ連続体等の被印字媒体と、リボン巻取り軸およびリボン供給軸に架け渡されたインクリボンとを重ねて挟持搬送することで、被印字媒体に所定の印字情報を印字するプリンタにおいて、サーマルヘッド、リボン巻取り軸およびリボン供給軸を備えた印字ユニットを、本体と上蓋部との間に配置すると共に、上蓋部と印字ユニットとを支持軸17によって回動自在に支持し、上蓋部と印字ユニットとを開くことで、被印字媒体やインクリボンの交換を可能にしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一般的に、この種のプリンタでは、インクリボンの交換、すなわちリボン巻取り軸とリボン供給軸との間にサーマルヘッドを経由して新たなインクリボンを架け渡す際には、上下に作業空間を確保した状態に印字ユニットが支持されるように構成されており、インクリボンの交換後には、印字ユニットもしくは上蓋部に対して閉じる方向の力を作用させることで、簡単に印字ユニットを印字位置にセットすることができるようになっている。
【0004】
しかしながら、従来技術では、インクリボンの交換時に印字ユニットに対して閉じる方向の力が作用すると、意に反して印字ユニットが閉じられてしまったり、印字ユニットと上蓋部とが連動している場合には、上蓋部が閉じられてしまったりする虞があり、インクリボンの交換作業が妨害されてしまうという問題点があった。
【0005】
【特許文献1】特開2005−81729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は斯かる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、インクリボンの交換時に印字ユニットに対して閉じる方向の力が作用しても、印字ユニットおよび上蓋部が閉じられることなく、インクリボンの交換作業が妨害されることがないプリンタを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
請求項1記載の発明の要旨は、プラテンローラとサーマルヘッドとの間に、被印字媒体と、リボン巻取り軸およびリボン供給軸に架け渡されたインクリボンとを重ねて挟持搬送することで印字を行うと共に、前記サーマルヘッド、前記リボン巻取り軸および前記リボン供給軸を備えた印字ユニットが、本体と、当該本体の上部を覆う上蓋部との間に配置され、前記上蓋部と前記印字ユニットとを支持軸によって回動自在に支持し、前記上蓋部と前記印字ユニットとを開くことで、前記被印字媒体や前記インクリボンの交換を行うプリンタであって、開いた前記上蓋部を所定の位置で支持すると共に、前記上蓋部に対して閉じる方向の力を作用させることで、前記上蓋部の支持を解除する上蓋部支持手段と、該上蓋部支持手段によって前記上蓋部が支持されている状態で、上下に作業空間を確保した状態に前記印字ユニットを支持する印字ユニット支持手段と、該印字ユニット支持手段によって前記印字ユニットが支持されている状態では、前記上蓋部および前記印字ユニットに対して閉じる方向の力が作用しても、前記上蓋部支持手段による前記上蓋部の支持および前記印字ユニット支持手段による前記印字ユニットの支持の解除を阻止する解除阻止手段とを具備することを特徴とするプリンタに存する。
また請求項2記載の発明の要旨は、前記印字ユニット支持手段によって前記印字ユニットが支持されている状態から、前記印字ユニットを前記上蓋部に向けて開くことで、前記解除阻止手段の機能が解除されることを特徴とする請求項1記載のプリンタに存する。
また請求項3記載の発明の要旨は、前記上蓋部支持手段は、一端部が前記上蓋部に固定されていると共に、解放端側が前記本体に形成されている開口に挿通され、解放端側から一端部側に向かって同一の幅で形成されたスリットによって、前記開口の縁部に当接することで前記上蓋部を支持する上蓋部ストッパが形成された弾性を有する第1片と、第2片とに分割された円弧状部材であり、前記解除阻止手段は、前記印字ユニットに設けられ、前記スリットに移動可能に挿嵌された、前記印字ユニット支持手段によって前記印字ユニットが支持されている状態では、前記第1片の弾性を阻害する突起手段であることを特徴とする請求項1又は2記載のプリンタに存する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のプリンタは、開いた上蓋部を所定の位置で支持すると共に、上蓋部に対して閉じる方向の力を作用させることで、上蓋部の支持を解除する上蓋部支持手段と、上蓋部支持手段によって上蓋部が支持されている状態で、上下に作業空間を確保した状態に印字ユニットを支持する印字ユニット支持手段と、印字ユニット支持手段によって印字ユニットが支持されている状態では、上蓋部および印字ユニットに対して閉じる方向の力が作用しても、上蓋部支持手段による上蓋部の支持および印字ユニット支持手段による印字ユニットの支持の解除を阻止する解除阻止手段とを設けることにより、印字ユニット支持手段によって、上下に作業空間を確保した状態に印字ユニットを支持して、インクリボンの交換作業を行う際に、解除阻止手段によって、上蓋部支持手段による上蓋部の支持および印字ユニット支持手段による印字ユニットの支持の解除が阻止されるため、インクリボンの交換時に印字ユニットに対して閉じる方向の力が作用することで、意図に反して印字ユニットおよび上蓋部が閉じられることを防止することができ、インクリボンの交換作業が妨害されることがないという効果を奏する。
【0009】
さらに、本発明のプリンタは、印字ユニット支持手段によって印字ユニットが支持されている状態から、印字ユニットを上蓋部に向けて開くことで、解除阻止手段の機能が解除されるように構成されることにより、インクリボンの交換後、印字ユニットを上蓋部に向けて開くという簡単な動作で、解除阻止手段の機能を解除して、上蓋部を閉じることができる状態に移行させることができると共に、印字ユニットを上蓋部に向けて開くことで、サーマルヘッドの印字面を目視できる状態となるため、インクリボンが正常に架け渡されているか否かの確認をユーザに促すことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明に係るプリンタの実施の形態の構成を示す概略側面図であり、図2は、本発明に係るプリンタの実施の形態の閉状態を示す外観斜視図であり、図3は、本発明に係るプリンタの実施の形態の開状態を示す外観斜視図であり、図4は、図3に示すガイドプレートおよびアーム部の構成を示す概略斜視図であり、図5は、図3に示すガイドプレートの動作を説明するための説明図であり、図6は、図2に示す閉状態における印字ユニットの構成を示す概略側面図であり、図7は、図3に示す開状態における印字ユニットの構成を示す概略側面図である。
【0012】
本実施の形態のプリンタ10は、図1を参照すると、印字部として、プラテンローラ11と、複数の発熱体が幅方向に形成されている面(以下、印字面と称す)がプラテンローラ11に対向するように配置されたサーマルヘッド12とを有し、複数枚のラベルが帯状台紙に仮着されているラベル連続体等の被印字媒体1とインクリボン2とを重ねてプラテンローラ11とサーマルヘッド12との間に挟持搬送し、サーマルヘッド12の発熱体を選択的に発熱させることにより、被印字媒体1にインクリボン2からインクを転写させて印字を施すように構成されている。
【0013】
被印字媒体1は、紙管等の筒状体にロール状に巻き回された状態、すなわちロール紙3として供給部13に回転可能に支持(収容)され、供給部13からプラテンローラ11とサーマルヘッド12との間に供給される。また、インクリボン2は、プラテンローラ11に連動して回転駆動されるリボン巻取り軸14とリボン供給軸15との間に架け渡され、リボン供給軸15にロール状に巻き回された状態で支持されたインクリボン2が、プラテンローラ11とサーマルヘッド12との間に被印字媒体1と共に供給され、転写後のインクリボン2が、リボン巻取り軸14によって巻き取られるようになっている。
【0014】
また、プリンタ10は、プラテンローラ11および供給部13を備え、上部が解放された本体20と、本体20の上部を覆う上蓋部30と、サーマルヘッド12、リボン巻取り軸14およびリボン供給軸15を備え、本体20と上蓋部30との間に配置された印字ユニット40とからなり、上蓋部30と印字ユニット40とは、印字済みの被印字媒体が排出される排出口16が設けられている手前側から開くように構成されており、本体20の奥側に設けられている支持軸17によって、回動自在に支持されている。
【0015】
図2は、上蓋部30が閉じられた閉状態のプリンタ10が示されており、閉状態では、印字ユニット40が本体20と上蓋部30とに挟まれて位置決めされ、図1に示すように、印字ユニット40に備えられたサーマルヘッド12が本体に備えられたプラテンローラ11に押し当てられて位置決めされる。なお、印字ユニット40は、上蓋部30に嵌脱可能に構成されており、図2に示す閉状態において、印字ユニット40は、上蓋部30に嵌装された嵌装状態となっている。
【0016】
図3は、上蓋部30が開けられた開状態のプリンタ10が示されており、上蓋部30は、上蓋部30を図3に示す開状態に支持する機能を有するガイドプレート31によってガイドされながら開閉されるように構成されている。ガイドプレート31は、図4(a)を参照すると、支持軸17を中心とする円弧状部材であり、一端部が上蓋部30に固定されていると共に、解放端側が本体20に形成されている開口21に挿通され、解放端側の先端部には、開口21の縁部の裏面側に当接することで、上蓋部30が開く角度を規制する鍔部32が形成されている。
【0017】
また、ガイドプレート31は、解放端側から上蓋部30に固定された一端部側に向かって同一の幅で形成されたスリット33によって、第1片31aと、第2片31bとに分割され、第1片31aが内側に向かって、すなわちスリット33を挟んで対向している第2片31bの方向に向かって、弾性を有して撓むことができるようになっていると共に、第1片31aの外側、すなわちスリット33を挟んで第2片31bと対向している面の反対面には、上蓋部ストッパ34が突出して形成され、上蓋部30を所定の角度以上開くと、上蓋部ストッパ34が開口21から引き出されて開口21の縁部の表面側に弾性を有して当接することで、上蓋部30を図3に示す開状態に支持できるようになっている。
【0018】
一方、印字ユニット40は、図3を参照すると、一方端が支持軸17に支持されたアーム部41の解放端側に、リボン巻取り軸14およびリボン供給軸15が回転可能にそれぞれ架け渡される右リボンフレーム42と左リボンフレーム43とが設けられており、上蓋部30に対して独立して回動させることができるようになっている。なお、上蓋部30には、印字ユニット40に弾性を有して当接することで、印字ユニット40を嵌装状態に維持する図示しない当接部材が設けられており、図2に示す閉状態から上蓋部30を開く際には、印字ユニット40も嵌装状態で上蓋部30と共に回動される。
【0019】
アーム部41には、図4(b)を参照すると、ガイドプレート31の第1片31aに形成されているアームストッパ35に係止される切り欠き41aが形成されていると共に、ガイドプレート31に形成されているスリット33に移動可能に挿嵌される突起部41bが設けられており、嵌装状態で上蓋部30と共に回動された印字ユニット40を上蓋部30から引き出して、印字ユニット40を閉じる方向に移動させると、アーム部41に形成されている切り欠き41aが、ガイドプレート31の第1片31aに形成されているアームストッパ35に係止され、印字ユニット40を図3に示すように上蓋部30から引き出して独立した状態、すなわち上下に作業空間を確保した状態に支持させることができるようになっている。
【0020】
また、突起部41bは、印字ユニット40が上蓋部30に嵌装された嵌装状態では、図5(a)に示すように、ガイドプレート31の上蓋部30に固定された一端部側に移動し、印字ユニット40が図3に示すように上蓋部30から引き出されて独立した状態では、図5(b)に示すように、ガイドプレート31の解放端側に移動するように構成されている。
【0021】
図5(a)に示すように、スリット33に挿嵌された突起部41bが、ガイドプレート31の上蓋部30に固定された一端部側に移動した状態では、ガイドプレート31における第1片31aの弾性が確保されており、上蓋部30を閉じることで、上蓋部ストッパ34が開口21の縁部に押されて第1片31aが内側に撓み、上蓋部ストッパ34と開口21の縁部との当接が解除され、図2に示す閉状態に移行させることができるようになっている。
【0022】
それに対し、図5(b)に示すように、スリット33に挿嵌された突起部41bが、ガイドプレート31の解放端側に移動した状態では、ガイドプレート31における第1片31aと第2片31bとの間に位置する突起部41bによって、第1片31aの弾性が阻害され、上蓋部30を閉じようとしても、第1片31aが内側に撓むことがないため、上蓋部ストッパ34と開口21の縁部との当接が解除されず、図2に示す閉状態に移行させることができないようになっている。
【0023】
さらに、印字ユニット40は、右リボンフレーム42および左リボンフレーム43と垂直な方向に架け渡された調整軸44と当該調整軸44に取り付けられている偏心部材45とからなるヘッド圧調整手段を備えている。右リボンフレーム42には、リボン巻取り軸14、リボン供給軸15および調整軸44にそれぞれ対応する箇所に、リボン巻取り軸14、リボン供給軸15および調整軸44を操作する貫通孔がそれぞれ形成されている。左リボンフレーム43には、プラテンローラ11と共に回転駆動される伝達ギヤ22に対して図2に示す閉状態において咬合される図示しない被伝達ギヤと、被伝達ギヤからリボン巻取り軸14に回転駆動力を伝達するギヤやベルト等の図示しない駆動力伝達機構が設けられている。
【0024】
ヘッドハウジング60は、図6を参照すると、リボン巻取り軸14およびリボン供給軸15の下方に組み付けられており、リボン供給軸15からプラテンローラ11とサーマルヘッド12との間に供給されるインクリボン2を案内するガイド面として機能する下面を有している。また、ヘッドハウジング60は、サーマルヘッド12(形成されている発熱体)よりも被印字媒体1の搬送方向上流側に設けられた図示しない回動軸に対して、サーマルヘッド12を印字面に対して略垂直な方向に移動可能に枢設されていると共に、ヘッドハウジング60には、サーマルヘッド12が固着されており、サーマルヘッド12の印字面の反対面側には、ヘッドハウジング60を印字ユニット40に組み付けた際に、後述するヘッド圧調整手段に当接する押圧部材61が、印字面に対して垂直な方向に移動可能に支持されており、サーマルヘッド12と押圧部材61との間には、バネ62が介装されている。これにより、ヘッドハウジング60に固着されているサーマルヘッド12が、バネ62の付勢力によってプラテンローラ11に押圧されるようになっている。
【0025】
組み付けられているヘッドハウジング60の上方、すなわち押圧部材61側には、調整軸44と偏心部材45とからなるヘッド圧調整手段が設けられており、調整軸44を回動させて偏心部材45を押圧部材61に当接されることで、ヘッドハウジング60における押圧部材61の位置を制御して、サーマルヘッド12がプラテンローラ11に押圧される力、すなわちヘッド圧を調整することができるようになっている。
【0026】
また、印字ユニット40には、リボン供給軸15の下方を覆うリボンカバー50が設けられており、リボンカバー50は、リボン供給軸15よりも奥側、すなわちアーム部41側に配置され、右リボンフレーム42および左リボンフレーム43と垂直な回動軸51によって、回動自在に支持されている。
【0027】
リボンカバー50は、上蓋部30が閉じられた閉状態、すなわち印字ユニット40が上蓋部30に嵌装された嵌装状態では、図6を参照すると、リボンカバー50の回動軸51を挟んだ被当接端53に、上蓋部30に設けられた当接部36が当接することにより、リボンカバー50が閉じられた状態となり、ヘッドハウジング60の下面とリボンカバー50の上面との間隙が、リボン供給軸15からサーマルヘッド12に供給されるインクリボン2の挿通路52となり、リボンカバー50の下面が、供給部13からサーマルヘッド12に供給される被印字媒体1を上側から案内するガイド板として機能するように構成されている。
【0028】
リボンカバー50は、図3に示すように、上蓋部30と印字ユニット40とをそれぞれ独立して回動させた開状態では、被当接端53と上蓋部30に設けられた当接部36との当接が解除されると共に、リボンカバー50と本体20との当接が解除されるため、リボンカバー50は、自重によって、ヘッドハウジング60の下面から離れる方向に回動され、図7に示すように、挿通路52が大きく拡がるようになっている。
【0029】
次に、本実施の形態における印字ユニット40へのインクリボン2の装着動作について図8および図9を参照して詳細に説明する。
図8は、本発明に係るプリンタの実施の形態における印字ユニットへのインクリボンの装着動作を説明するための説明図であり、図9は、図3に示す印字ユニットを上方側から見た平面図である。
【0030】
ロール紙3やインクリボン2の交換に際し、まず、上蓋部30を図2に示す閉状態から上蓋部ストッパ34によって支持されるまで開けると、印字ユニット40も嵌装状態で上蓋部30と共に回動されるため、供給部13の上方が解放され、ロール紙3の交換作業を行うことが可能になる。
【0031】
次に、上蓋部30から印字ユニット40を引き出して、印字ユニット40を閉じる方向に移動させることで、アーム部41に形成されている切り欠き41aを、ガイドプレート31の第1片31aに形成されているアームストッパ35によって係止させ、印字ユニット40を図3に示すように上蓋部30から引き出して独立した状態で支持させる。これにより、印字ユニット40の上方および下方が解放され、インクリボン2の交換作業を行うことが可能な空間が確保される(以下、印字ユニット40が開状態の上蓋部30から引き出され、アーム部41がアームストッパ35によって支持された状態をリボン交換状態と称す)。
【0032】
リボン交換状態においては、ヘッドハウジング60の下面から離れる方向にリボンカバー50が回動され、挿通路52、すなわちヘッドハウジング60の下面とリボンカバー50の上面との間隙は、少なくとも供給スプール軸4および巻取りスプール軸5の直径よりも大きく拡がるようになっており、未使用のインクリボン2が引き出された供給スプール軸4を供給スプール軸装着部15aから取り外し、図7に矢印で示すように、供給スプール軸4を大きく拡がった挿通路52を通し、転写後のインクリボン2が巻き取られている巻取りスプール軸5を巻取りスプール軸装着部14aから取り外す。
【0033】
インクリボン2は、図8(a)に示すように、未使用のインクリボン2を巻付けてある紙管等の筒状体からなる供給スプール軸4と、転写後のインクリボン2を巻取る紙管等の筒状体からなる巻取りスプール軸5とに架け渡されて提供される。図9(a)を参照すると、リボン巻取り軸14には、巻取りスプール軸5を軸方向から挟持する巻取りスプール軸装着部14aが、リボン供給軸15には、供給スプール軸4を軸方向から挟持する供給スプール軸装着部15aがそれぞれ設けられており、図9(b)に示すように、巻取りスプール軸5が巻取りスプール軸装着部14aにリボン巻取り軸14として装着されると共に、供給スプール軸4が供給スプール軸装着部15aにリボン供給軸15として装着されるように構成されている。
【0034】
次に、供給スプール軸4の巻き回されている新品のインクリボン2を用意し、図8(a)に矢印で示すように、巻取りスプール軸5を大きく拡がった挿通路52に通し、図8(b)に矢印で示すように、インクリボン2がサーマルヘッド12の印字面を経由するように、巻取りスプール軸5をリボン巻取り軸14として巻取りスプール軸装着部14aに、供給スプール軸4をリボン供給軸15として供給スプール軸装着部15aにそれぞれ装着し、リボン巻取り軸14やリボン供給軸15を回転させることによって、インクリボン2の弛みを解消する。
【0035】
なお、リボン交換状態においては、インクリボン2の取り外しや装着に際し、印字ユニット40を閉じる方向の力が作用する場合も想定されるが、本実施の形態では、印字ユニット40を閉じる方向の力が作用しても、印字ユニット40および上蓋部30が閉じられないように構成されている。すなわち、リボン交換状態において、ガイドプレート31のスリット33に挿嵌された突起部41bがガイドプレート31の解放端側に移動しているため、ガイドプレート31における第1片31aと第2片31bとの間に位置する突起部41bによって、第1片31aの弾性が阻害、すなわち、第1片31aが内側に撓むことがないため、上蓋部30を閉じようとしても、上蓋部ストッパ34と開口21の縁部との当接が解除されず、上蓋部30が図2に示す閉状態に移行させることができないようになっていると共に、ガイドプレート31における第1片31aのアームストッパ35によってアーム部41が支持されている印字ユニット40も図2に示す閉状態に移行させることができないようになっている。
【0036】
また、使用中のインクリボン2に皺等の何らかの障害や、印字色の変更等が生じた場合には、供給スプール軸4に未使用のインクリボン2が、巻取りスプール軸5に転写済みのインクリボン2がそれぞれ巻き回された状態で、交換作業が行われることがあり、この場合には、未使用のインクリボン2が巻き回されている供給スプール軸4もしくは転写済みのインクリボン2が巻き回されている巻取りスプール軸5を、大きく拡がった挿通路52に通す必要がある。そこで、リボン交換状態において、挿通路52、すなわちヘッドハウジング60の下面とリボンカバー50の上面との間隙を、少なくともインクリボン2を半分使用した状態の供給スプール軸4および巻取りスプール軸5の巻き径よりも広くなるように設定し、インクリボン2を半分使用した状態の供給スプール軸4および巻取りスプール軸5を挿通路52に通すことができるように構成するとより好適である。
【0037】
次に、印字ユニット40を上蓋部30に嵌装させて、サーマルヘッド12の印字面を経由するように架け渡されたインクリボン2の状態を確認した後、印字ユニット40が嵌装状態で上蓋部30を図2に示すように閉じる。印字ユニット40が上蓋部30に嵌装された嵌装状態では、図6に示すように、リボンカバー50の回動軸51を挟んだ被当接端53に、上蓋部30に設けられた当接部36が当接することにより、リボンカバー50が閉じられた状態となると共に、スリット33に挿嵌された突起部41bがガイドプレート31の上蓋部30に固定された一端部側に移動しているため、ガイドプレート31における第1片31aの弾性が確保、すなわち上蓋部ストッパ34が開口21の縁部に押されて第1片31aが内側に撓むことが可能であり、上蓋部30を閉じることで、上蓋部ストッパ34と開口21の縁部との当接が解除され、図2に示す閉状態に移行させることができるようになっている。
【0038】
以上説明したように、本実施の形態によれば、開いた上蓋部30を所定の位置で支持すると共に、上蓋部30に対して閉じる方向の力を作用させることで、上蓋部30の支持を解除する上蓋部ストッパ34(ガイドプレート31)と、上蓋部ストッパ34によって上蓋部30が支持されている状態で、上下に作業空間を確保した状態に印字ユニット40を支持するアームストッパ35(ガイドプレート31)と、アームストッパ35によって印字ユニット40が支持されている状態では、上蓋部30および印字ユニット40に対して閉じる方向の力が作用しても、上蓋部ストッパ34による上蓋部30の支持およびアームストッパ35による印字ユニット40の支持の解除を阻止する突起部41bとを設けることにより、アームストッパ35によって、上下に作業空間を確保した状態に印字ユニット40を支持して、インクリボン2の交換作業を行う際に、突起部41bによって、上蓋部ストッパ34による上蓋部30の支持およびアームストッパ35による印字ユニット40の支持の解除が阻止されるため、インクリボン2の交換時に印字ユニット40に対して閉じる方向の力が作用しても、意図に反して印字ユニット40および上蓋部30が閉じられることを防止することができ、インクリボン2の交換作業が妨害されることがないという効果を奏する。
【0039】
さらに、本実施の形態によれば、アームストッパ35(ガイドプレート31)によって印字ユニット40が支持されている状態から、印字ユニット40を上蓋部30に向けて開くことで、解除阻止手段である突起部41bの機能が解除されるように構成されることにより、インクリボン2の交換後、印字ユニット40を上蓋部30に向けて開くという簡単な動作で、解除阻止手段である突起部41bの機能を解除して、上蓋部30を閉じることができる状態に移行させることができると共に、印字ユニット40を上蓋部30に向けて開くことで、サーマルヘッド12の印字面を目視できる状態となるため、インクリボン2が正常に架け渡されているか否かの確認をユーザに促すことができるという効果を奏する。
【0040】
なお、本発明が上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、上記構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。なお、各図において、同一構成要素には同一符号を付している。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係るプリンタの実施の形態の構成を示す概略側面図である。
【図2】本発明に係るプリンタの実施の形態の閉状態を示す外観斜視図である。
【図3】本発明に係るプリンタの実施の形態の開状態を示す外観斜視図である。
【図4】図3に示すガイドプレートおよびアーム部の構成を示す概略斜視図である。
【図5】図3に示すガイドプレートの動作を説明するための説明図である。
【図6】図2に示す閉状態における印字ユニットの構成を示す概略側面図である。
【図7】図3に示す開状態における印字ユニットの構成を示す概略側面図である。
【図8】本発明に係るプリンタの実施の形態における印字ユニットへのインクリボンの装着動作を説明するための説明図である。
【図9】図3に示す印字ユニットを上方側から見た平面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 被印字媒体
2 インクリボン
3 ロール紙
4 供給スプール軸
5 巻取りスプール軸
10 プリンタ
11 プラテンローラ
12 サーマルヘッド
13 供給部
14 リボン巻取り軸
14a 巻取りスプール軸装着部
15 リボン供給軸
15a 供給スプール軸装着部
16 排出口
17 支持軸
20 本体
21 開口
22 伝達ギヤ
30 上蓋部
31 ガイドプレート(上蓋部支持手段、印字ユニット支持手段)
31a 第1片
31b 第2片
32 鍔部
33 スリット
34 上蓋部ストッパ(上蓋部支持手段)
35 アームストッパ(印字ユニット支持手段)
36 当接部
40 印字ユニット
41 アーム部
41a 切り欠き
41b 突起部(解除阻止手段)
42 右リボンフレーム
43 左リボンフレーム
44 調整軸
45 偏芯部材
50 リボンカバー
51 回動軸
52 挿通路
53 被当接端
60 ヘッドハウジング
61 押圧部材
62 バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラテンローラとサーマルヘッドとの間に、被印字媒体と、リボン巻取り軸およびリボン供給軸に架け渡されたインクリボンとを重ねて挟持搬送することで印字を行うと共に、前記サーマルヘッド、前記リボン巻取り軸および前記リボン供給軸を備えた印字ユニットが、本体と、当該本体の上部を覆う上蓋部との間に配置され、前記上蓋部と前記印字ユニットとを支持軸によって回動自在に支持し、前記上蓋部と前記印字ユニットとを開くことで、前記被印字媒体や前記インクリボンの交換を行うプリンタであって、
開いた前記上蓋部を所定の位置で支持すると共に、前記上蓋部に対して閉じる方向の力を作用させることで、前記上蓋部の支持を解除する上蓋部支持手段と、
該上蓋部支持手段によって前記上蓋部が支持されている状態で、上下に作業空間を確保した状態に前記印字ユニットを支持する印字ユニット支持手段と、
該印字ユニット支持手段によって前記印字ユニットが支持されている状態では、前記上蓋部および前記印字ユニットに対して閉じる方向の力が作用しても、前記上蓋部支持手段による前記上蓋部の支持および前記印字ユニット支持手段による前記印字ユニットの支持の解除を阻止する解除阻止手段とを具備することを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記印字ユニット支持手段によって前記印字ユニットが支持されている状態から、前記印字ユニットを前記上蓋部に向けて開くことで、前記解除阻止手段の機能が解除されることを特徴とする請求項1記載のプリンタ。
【請求項3】
前記上蓋部支持手段は、一端部が前記上蓋部に固定されていると共に、解放端側が前記本体に形成されている開口に挿通され、解放端側から一端部側に向かって同一の幅で形成されたスリットによって、前記開口の縁部に当接することで前記上蓋部を支持する上蓋部ストッパが形成された弾性を有する第1片と、第2片とに分割された円弧状部材であり、
前記解除阻止手段は、前記印字ユニットに設けられ、前記スリットに移動可能に挿嵌された、前記印字ユニット支持手段によって前記印字ユニットが支持されている状態では、前記第1片の弾性を阻害する突起手段であることを特徴とする請求項1又は2記載のプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−285999(P2009−285999A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141554(P2008−141554)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(307010993)株式会社サトー知識財産研究所 (588)
【出願人】(000130581)株式会社サトー (1,153)
【Fターム(参考)】