説明

プリンタ

【課題】プリンタにおいて定着終了時にプラテンを冷却し、プラテンから加工布を取外す場合やプラテンに加工布をセットする場合の安全性を高める。
【解決手段】プリンタは、前部側約2/3部分に印刷領域11を有すると共に後部約1/3部分に定着領域21を有し、プラテン31に保持された加工布の表面に定着機構30のヒートプレス板34を押圧させることで印刷された画像の定着を行うように構成され、定着領域21のうちの印刷領域11付近の位置にプラテン31を冷却する冷却ファン71が設けられ、冷却ファン71から流出する空気をプラテン31の上面側へ案内するダクト72を設け、定着機構30による定着終了から例えば約60秒間だけ冷却ファン71を作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに関し、特に加工布に印刷を行った後、印刷された画像を加工布に定着させた直後に、加工布を保持するプラテンを冷却するようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加工布に画像を印刷するインクジェット式のプリンタは、多数のインクジェットノズルを有するカラーの印刷ヘッドと、加工布を保持するプラテンとを備え、その印刷ヘッドを印刷方向と平行な主走査方向に往復移動させるとともに、プラテンと加工布を副走査方向へ往復移動させることで、加工布にインクを噴射させてカラー印刷するようになっている。
【0003】
印刷後、加工布の表面に発熱部を所定時間だけ押圧又は近接させることで、インク中に含まれる溶剤を蒸発させて、印刷された画像を加工布に定着させる必要があるが、近年、印刷処理を行った後に定着処理を自動で行うプリンタが提案されている。
【0004】
特許文献1のデジタル印刷装置では、多数のインクジェットノズルを有するプリントヘッド(印刷ヘッド)と、加工布を保持する印刷テーブル(プラテン)と、プリントヘッドと印刷テーブルを移動させる各軸ステージ(移送機構)と赤外線加熱ユニットからなる硬化ユニット(定着機構)とを備えている。プリントヘッドと印刷テーブルを移動させながら加工布に印刷を行った後、硬化ユニットによって、加工布の表面に赤外線を所定時間だけ照射することで、印刷された画像を加工布に定着させている。
【特許文献1】特表2007−525339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のような定着処理を自動で行うプリンタにおいては、印刷された画像の定着を行う際に、プラテンに保持された加工布の表面に発熱部を押圧又は近接させるため、加工布だけでなくプラテンも高温状態になる。定着終了直後、プラテンから加工布を取外す場合や、プラテンに次の加工布をセットする場合に誤ってプラテンに触れると火傷をする虞があるため対策を講じる必要がある。
【0006】
本発明の目的は、定着終了直後にプラテンに加工布を着脱する場合の安全性を高めることのできるプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1のプリンタは、インクジェットノズルを有する印刷ヘッドと、加工布を保持するプラテンと、前記印刷ヘッドを主走査方向へ移送する印刷ヘッド移送機構と、前記プラテンを副走査方向へ移送するプラテン移送機構と、前記加工布上に印刷された画像を定着させる定着機構とを備え、前記印刷ヘッド移送機構と前記プラテン移送機構とにより前記プラテンと前記印刷ヘッドとを移送させながら前記加工布に印刷を行った後、前記プラテンを前記プラテン移送機構によって前記定着機構まで移送し、該定着機構により印刷された画像を前記加工布に定着させるプリンタにおいて、前記定着機構は発熱部を有し且つ前記プラテンに保持された前記加工布の表面に発熱部を押圧又は近接させることで印刷された画像の定着を行うように構成され、前記定着機構の発熱部によって熱せられた前記プラテンを冷却する冷却ファンを設けたことを特徴としている。
【0008】
このプリンタでは、印刷ヘッド移送機構とプラテン移送機構とによりプラテンと印刷ヘッドとを移送させながら加工布に印刷を行った後、プラテンをプラテン移送機構によって定着機構まで移送し、プラテンに保持された加工布の表面に発熱部を押圧又は近接させることで印刷された画像の定着を行う。定着終了時に冷却ファンを作動させてプラテンを冷却することができるので、定着終了直後にプラテンから加工布を取り外す場合や、プラテンに次の加工布をセットする場合の安全性が高まる。
【0009】
請求項2のプリンタは、請求項1の発明において、前記冷却ファンは、前記印刷ヘッド移送機構と前記定着機構との間に、且つ前記印刷ヘッド移送機構側から前記定着機構側へ空気が向かうように配置したことを特徴としている。
【0010】
請求項3のプリンタは、請求項1又は2の発明において、前記冷却ファンから流出する空気を、前記プラテンの上面側へ案内するダクトを設けたことを特徴としている。
【0011】
請求項4のプリンタは、請求項1〜3の何れかの発明において、前記定着機構による定着終了から所定時間だけ前記冷却ファンを作動させる冷却ファン制御手段を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、定着機構は発熱部を有し且つプラテンに保持された加工布の表面に発熱部を押圧又は近接させることで印刷された画像の定着を行うように構成され、プラテンを冷却する冷却ファンを設けたので、定着機構による定着終了時に冷却ファンによりプラテンを冷却することができる。そのため、定着終了直後にプラテンから加工布を取外す場合や、プラテンに次の加工布をセットする場合の安全性が向上する。
【0013】
請求項2の発明によれば、冷却ファンは、印刷ヘッド移送機構と定着機構との間に、且つ印刷ヘッド移送機構側から定着機構側へ空気が向かうように配置したので、冷却ファンから流出する空気が印刷ヘッド移送機構側に流れるのを防止することができ、印刷ヘッド移送機構側の雰囲気温度が上昇しない。それ故、ヘッド内のインクを適正な粘度に保持することができ、印刷不良の発生を防止することができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、冷却ファンから流出する空気を、プラテンの上面側へ案内するダクトを設けたので、冷却ファンから流出する空気によりプラテンを効果的に冷却することができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、定着機構による定着終了から所定時間だけ冷却ファンを作動させる冷却ファン制御手段を設けたので、定着機構による定着時に冷却ファンが作動しない。そのため、定着時に加工布の表面温度が低下することなく、定着不良の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施する為の最良の形態について説明する。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の実施例について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、プリンタ本体2と、インクカートリッジ収容部3と、定着部4と、コントロールユニット5等で構成されている。プリンタ本体2は側面視にてほぼL字状に構成され、プリンタ本体2の前方の右端部には、ディスプレイ7とプリントボタン8などを有する操作パネル6が設けられている。プリンタ本体2の筐体9の前壁には、プラテン31及びプラテン31に保持された加工布が出入可能な開口部10が設けられている。
【0018】
図3〜図4に示すように、プリンタ本体2の筐体9に覆われた部分には、加工布に印刷を行う印刷領域11が設けられている。印刷領域11には、インクジェットノズル(図示略)を有する印刷ヘッド12と、この印刷ヘッド12を搭載したキャリッジ13が設けられ、このキャリッジ13を案内する上下1対のガイドロッド14,15が左右方向に架設されている。
【0019】
印刷領域11の右端部には、キャリッジ13を左右方向へ往復駆動するステッピングモータからなるキャリッジモータ18(図10参照)が設けられている。キャリッジ13は、ガイドロッド14,15と平行に掛けられたベルト(図示略)に連結されている。該ベルトは、キャリッジモータ18に連結されたプーリ(図示略)と印刷領域の左端部に設けられたプーリ(図示略)とに掛装されている。キャリッジモータ18を駆動することで、印刷ヘッド12とキャリッジ13がガイドロッド14,15に沿って左右方向(主走査方向)に移送される。キャリッジ13と、ガイドロッド14,15と、キャリッジモータ18と、プーリと、ベルトとで印刷ヘッド移送機構を構成する。
インクカートリッジ収容部3に収容された4種類のインクカートリッジが、インク供給チューブを介して印刷ヘッド12に接続されている。
【0020】
印刷領域11と後述する定着領域21において左右方向中央部には、プラテン31を搭載した移動部材60を案内する左右1対のガイドレール22,23が前後方向に列設されている。移動部材60の先端部の穴部61aに支柱62が嵌合され、支柱62の上端に加工布を保持する平板状のプラテン31が固定されている。プラテン31の下側には、プラテン31に加工布をセットしたときに加工布の端部を受け止める為のトレー63が、移動部材60の基端部61bの上面に固定され、且つトレー63の後板部64の開口部64aに移動部材60の後端部が嵌め込まれている。
【0021】
ガイドレール22,23の間において、ガイドレール22,23の前端部付近には、ステッピングモータからなるプラテンモータ26(図4、図10参照)が設けられている。プラテンモータ26の出力軸には、プーリ16が固定されている。プラテンモータ26よりも前側のプリンタ本体2の底部にプーリ27が回転可能に支持されている。ベルト17は、プーリ16とプーリ27とに掛装されている。プーリ27は、同軸上方にプーリ24を有する。定着領域21の下方に、プーリ28が回転可能に支持されている。プーリ24とプーリ28とに、ベルト25が掛装されている。ベルト25には、移動部材60が連結されている。プラテンモータ26の回転駆動によって、プーリ16が回転する。プーリ16の回転は、ベルト17を介してプーリ24を回転させる。プーリ24の回転は、ベルト25に伝達し移動部材60をガイドレール22,23に沿って前後方向(副走査方向)に移送する。尚、プラテンモータ26と、ガイドレール22,23と、プーリ16,24,27,28と、ベルト25とでプラテン移送機構を構成する。
【0022】
図2〜図4に示すように、プリンタ本体2の後側には定着部4が設けられ、定着部4の筐体20の内部には、印刷された画像を定着させる定着領域21が設けられている。定着領域21には、加工布上に印刷された画像を定着させる定着機構30が設けられている。印刷領域11と定着領域21の間には遮蔽板29が設けられ、遮蔽板29には、プラテン31とプラテン31に保持された加工布が通過可能な開口部29aが設けられている。
【0023】
次に、定着機構30について説明する。
図4〜図7に示すように、定着機構30は、水平姿勢の中板40と、この中板40を昇降自在に案内する案内機構58と、ヒートプレス板34と、中板40に対してヒートプレス板34を上下方向に摺動可能に弾性支持する4組の弾性支持機構55と、プラテン31に保持された加工布の表面に対してヒートプレス板34を接離可能に昇降駆動する昇降駆動機構56とを備えている。
【0024】
中板40は、左右1対の支持柱49と、これら支持柱49の上端から上方へ延びる1対のガイドロッド49aと、中板40の左右両端部に固着されて1対のガイドロッド49aに昇降自在に外嵌された1対の被ガイド筒57とで構成される案内機構58により昇降自在に案内される。ヒートプレス板34は、シリコンゴム発泡体製の断熱板33と、この断熱板33の下面に固定されたヒートシート部32とで構成されている。ヒートシート部32は、内部にニクロム線が配設されたヒートシート32a(発熱部)と、ヒートシート32aを挟むように配置された鉄製の蓄熱材32bとで構成されている。
【0025】
前記4組の弾性支持機構55は、ヒートプレス板34の4隅に対応する部位に設けられている。各弾性支持機構55は中板40を挿通し下端部がヒートプレス板34の蓄熱材32bに螺合されたボルト35と、ボルト35に外装されたセラミックス製のスリーブ36及びワッシャ39と、バネ受ワッシャ37と、バネ受ワッシャ37とヒートプレス板34との間でスリーブ36に外装された圧縮コイルバネ38とを備えている。
【0026】
圧縮コイルバネ38は偏平な矩形断面の線材からなるバネである。セラミックス製のスリーブ36、バネ受ワッシャ37及びワッシャ39は、ヒートプレス板34から中板40への伝熱を抑制する。図7は、ヒートプレス板34により加工布を押圧していない状態を示しているが、ヒートプレス板34により加工布を押圧する状態では、ボルト35とスリーブ36の上端部分とワッシャ39とが中板40より上方へ突出する。
【0027】
図4〜図6に示すように、昇降駆動機構56は、中板40と、中板40に固定されたカラー45と、ボールネジナット44と、ボールネジ軸43と、ヒートプレスモータ47と、ベルト48を含むベルト伝動機構などを備えている。中板40の上側には、左右1対の柱部材80の上端に固定された天板42が設けられている。天板42は上部に複数の支持部材41を有し、支持部材41は筐体20を支持する。
【0028】
天板42を貫通して鉛直方向に延びるボールネジ軸43が配設され、ボールネジ軸43の上端部は天板42に回動可能に支持されたプーリ46に固定されている。ボールネジ軸43と中板40の左方(図5、図6においては右方)には、ステッピングモータからなるヒートプレスモータ47が設けられている。ヒートプレスモータ47の出力軸に固着されたプーリ47aとプーリ46に掛装されたベルト48を介してヒートプレスモータ47の回転駆動力がボールネジ軸43に伝達される。
【0029】
中板40の上面に、カラー45を介してボールネジナット44が固定されている。このボールネジナット44はボールネジ軸43に螺合されている。ヒートプレスモータ47は、ベルト48を介してボールネジ軸43を回転駆動する。ボールネジ軸43の回転により、中板40がカラー45及びボールネジナット44と共に昇降駆動されるため、ヒートプレス板34も鉛直方向に移動駆動される。
【0030】
図5、図6に示すように、中板40の左端部には、左方に突出する上下1対の作動片51,52が取付板50を介して固定されている。これら作動片51,52の近傍には、ヒートプレス板34が上限位置に位置することを検出する上限リミットSW53と、ヒートプレス板34が下限位置に位置することを検出する下限リミットSW54が設けられている。図5に示すように、中板40と共にヒートプレス板34が上昇し、作動片51が上限リミットSW53の作動部53aに接触したとき、ヒートプレス板34が上限位置に到達したことが検出される。
【0031】
図6に示すように、中板40と共にヒートプレス板34が下降し、作動片52が下限リミットSW54の作動部54aに接触したとき、ヒートプレス板34が下限位置に到達したことが検出される。すなわち、中板40の位置に基づいて、ヒートプレス板34が上限位置に到達したか、又は下限位置に到達したかが検出される。ヒートプレス板34が下限位置にあるとき、4つのコイルバネ38の弾性力によって、プラテン31に保持された加工布の表面がヒートプレス板34により均等な所定の押圧力で押圧される。これは、ヒートプレス板34の押圧力はコイルバネ38の圧縮量に比例し、コイルバネ38の圧縮量はヒートプレス板34の位置によって決まるためである。そのため、加工布に対するヒートプレス板34の押圧力をヒートプレス板34の位置、つまり、中板40の位置によって設定することができる。また、コイルバネ38を4隅に配置したため、押圧力が均等になる。この状態で約35秒間押圧し続けることで、印刷された画像の定着処理が行われる。
【0032】
定着部4の左側内面のうち天板42の近傍位置に、定着部4の内部の空気を外部に排気する2つの排気ファン70が設けられている。定着領域21のうち、印刷領域11側の領域には、ヒートプレス板34によって熱せられたプラテン31を冷却する3つの冷却ファン71が設けられている。これら冷却ファン71は、印刷領域11から定着領域21側に向かう方向へ空気流を発生させるようになっている。冷却ファン71はその軸心が後方下がりに傾斜するように設けられ、冷却ファン71の後側(定着領域21側)には、冷却ファン71から流出する空気をプラテン31の上面側へ案内するダクト72が設けられている。
【0033】
図8、図9に示すように、ダクト72は、ダクト本体部73と案内板77とを有する。ダクト本体部73は、前板部74と、前板部74の左右両端から後方に延びる左右の側板部75と、左右の側板部75の端部から左右に張出すフランジ部76とを一体形成したものである。前板部74は、左右1対の柱部材80の左右方向間隔とほぼ同じ左右長さに形成されている。ダクト本体部73は、左右のフランジ部76に挿通されたボルトにより、左右の柱部材80の前面に夫々固定されている。3つの冷却ファン71は、前板部74の前面に左右方向に小間隔をあけて配設されている。前板部74において、冷却ファン71の送風口71aに対応する位置に、3つの開口74aが夫々形成されている。
【0034】
案内板77は、前板部74に配設された3つの冷却ファンの左右長さよりも大きな寸法に形成されている。案内板77は前方上がりに傾斜するように、案内板77の下端部が中板40の上面に固定されている。ヒートプレス板34が上限位置にある場合、前板部74の上端が案内板77の上端部に当接するため、冷却ファン71から流出する空気が中板40の上側に流れることなく、プラテン31の上面側へ導かれる。定着部4の左側のコントロールユニット5には、制御装置84(図10参照)が設けられている。
【0035】
次に、プリンタ1の制御系について、図10に基づいて説明する。
制御装置84は、CPU87と、ROM88と、RAM89と、通信制御部86と、入力インターフェイス85と、出力インターフェイス90とがバス81を介して電気的に接続されている。制御装置84の入力インターフェイス85には、プリントボタン8と、温度センサ82と、リミットSW53,54等が電気的に接続され、制御装置84の出力インターフェイス90には、印刷ヘッド12と、ヒートシート32と、キャリッジモータ18と、プラテンモータ26と、ヒートプレスモータ47と、ディスプレイ7と、排気ファン70と、冷却ファン71等が駆動回路91〜98を介して夫々電気的に接続されている。尚、画像データ処理装置83が、通信制御部86に電気的に接続されている。
【0036】
制御装置84は、リミットSW53,54によって検出された検出信号に基づいて昇降駆動機構56を制御する。ROM88には、画像データ処理装置83から入力された画像データに基づいて加工布に印刷を行う印刷制御プログラムと、図11、図12のフローチャートに示す印刷・定着制御のプログラム等が記憶されている。プリントボタン8は、印刷開始指令を制御装置84に入力するものである。
【0037】
温度センサ82は、ヒートシート32の温度を検出し、その検出温度が制御装置84に入力される。リミットSW53,54はヒートプレス板34が上限位置又は下限位置にあるか否かを検出し、その検出信号が制御装置84に入力される。画像データ処理装置83は、パーソナルコンピュータで構成され、その内部メモリや外部メモリに格納された画像データが制御装置84に入力される。
【0038】
次に、制御装置84で実行される印刷・定着制御について、図11、図12に基づいて説明する。但し、図中Si(i=1,2・・・)は各ステップを示す。
プリンタ1の電源がONされてこの印刷・定着制御が開始されると、先ず、ヒートシート32がONされ(S1)、排気ファン70を作動させる(S2)。温度センサ82によりヒートシート温度が検出され、ヒートシート温度が180℃以上であるか否かが判定される。ヒートシート温度が180℃以上である場合(S3;Yes)、プリントボタン8がONされたか否かが判定され、プリントボタン8がONされた場合は(S4;Yes)、排気ファン70を停止させる(S5)。
【0039】
次に、画像データ処理装置83から入力された画像データに基づいて、印刷ヘッド移送機構とプラテン移送機構によりプラテン31と印刷ヘッド12とを移送させながら、加工布に印刷処理が実行される(S6)。印刷処理終了後、プラテンモータ26の駆動により加工布とプラテン31を定着領域21へ移動させた後(S7)、排気ファン70を作動させる(S8)。ヒートプレスモータ47の駆動により定着機構30(ヒートプレス板34)を下降させ(S9)、下限リミットSW54がONした場合(S10;Yes)、タイマーをスタートさせ且つヒートプレスモータ47の駆動を停止する(S11)。このとき、ヒートプレス板34により加工布が押圧された状態となり、加工布に対する定着処理が開始される。但し、下限リミットSW54がOFFの場合は(S10;No)、S9へ戻る。
【0040】
定着処理を開始してから例えば35秒以上が経過した場合、冷却ファン71を作動させて(S13)、ヒートプレスモータ47の駆動により定着機構30(ヒートプレス板34)を上昇させて加工布に対する定着処理を終了する(S14)。上限リミットSW53がONした場合(S15;Yes)、ヒートプレスモータ47の駆動を停止する(S16)。S11においてスタートしたタイマーが例えば95秒以上、つまり、冷却ファン71を作動させてから60秒経過した場合は(S17;Yes)、冷却ファン71を停止させた後(S18)、タイマーを停止させる(S19)。
【0041】
次に、プラテンモータ26の駆動により加工布とプラテン31を着脱位置へ移動させた後(S20)、S4に移行する。尚、冷却ファン制御手段は、図11、図12に示すフローチャートのS11〜S19と制御装置84により構成される。
【0042】
次に、以上説明したプリンタ1の作用、効果について説明する。
このように、定着機構30は発熱部としてのヒートシート32aを有するヒートプレス板34を備え且つプラテン31に保持された加工布の表面にヒートプレス板34を押圧させることで加工布に印刷された画像の定着を行うように構成され、ヒートプレス板34によって熱せられたプラテン31を冷却する冷却ファン71を設けたので、定着機構30による定着終了時に冷却ファン71によりプラテン31を冷却することができる。そのため、定着終了直後にプラテン31から加工布を取外す場合や、プラテン31に次の加工布をセットする場合の安全性が向上する。
【0043】
冷却ファン71は、印刷ヘッド移送機構と定着機構30との間に、且つ印刷ヘッド移送機構側から定着機構30側へ空気が向かうように配置したので、冷却ファン71から流出する空気が印刷領域11側(印刷ヘッド移送機構側)に流れるのを防止することができ、印刷領域11の雰囲気温度が上昇しない。そのため、ヘッド内のインクを適正な粘度に保持することができ、印刷不良の発生を防止することができる。
【0044】
冷却ファン71から流出する空気を、プラテン31の上面側へ案内するダクト72を設けたので、冷却ファン71から流出する空気によりプラテン31を効果的に冷却することができる。定着機構30による定着終了から約60秒間だけ冷却ファン71を作動させるので、定着機構による定着時に冷却ファン71が作動しない。そのため、定着時に加工布の表面温度が低下することなく、定着不良の発生を防止することができる。
【0045】
次に、前記実施例を部分的に変更した変更例について説明する。
1〕発熱部として非接触式のものを採用し、プラテンに保持された加工布の表面に発熱部を近接させて、赤外線などを加工布の表面に照射することで印刷された画像の定着処理を行うことも可能である。
【0046】
2〕リミットSW53,54を省略してもよい。ヒートプレスモータ47はステッピングモータで構成されているので、リミットSW53,54を省略した場合にも、定着機構30を上限位置と下限位置に正確に停止させることができる。
3〕画像データ処理装置83として、パーソナルコンピュータ以外に携帯電話機などを適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施例に係るプリンタの斜視図である。
【図2】プリンタの筐体の一部を取外した状態の後方から視た斜視図である。
【図3】プリンタの筐体の一部を取外した状態の平面図である。
【図4】図2のIV-IV 線断面図である。
【図5】定着機構(上限位置)の背面図である。
【図6】定着機構(下限位置)の背面図である。
【図7】弾性支持機構とその近傍部の断面図である。
【図8】ダクトの斜視図である。
【図9】ダクトの後方から視た斜視図である。
【図10】プリンタの制御系のブロック図である。
【図11】印刷・定着制御プログラムのフローチャートの一部である。
【図12】印刷・定着制御プログラムのフローチャートの残部である。
【符号の説明】
【0048】
1 インクジェットプリンタ
12 印刷ヘッド
13 キャリッジ
14,15 ガイドロッド
18 キャリッジモータ
22,23 ガイドレール
25 ベルト
26 プラテンモータ
16,24,27,28 プーリ
30 定着機構
31 プラテン
32a ヒートシート
71 冷却ファン
72 ダクト
84 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットノズルを有する印刷ヘッドと、加工布を保持するプラテンと、前記印刷ヘッドを主走査方向へ移送する印刷ヘッド移送機構と、前記プラテンを副走査方向へ移送するプラテン移送機構と、前記加工布上に印刷された画像を定着させる定着機構とを備え、前記印刷ヘッド移送機構と前記プラテン移送機構とにより前記プラテンと前記印刷ヘッドとを移送させながら前記加工布に印刷を行った後、前記プラテンを前記プラテン移送機構によって前記定着機構まで移送し、該定着機構により印刷された画像を前記加工布に定着させるプリンタにおいて、
前記定着機構は発熱部を有し且つ前記プラテンに保持された前記加工布の表面に発熱部を押圧又は近接させることで印刷された画像の定着を行うように構成され、
前記定着機構の発熱部によって熱せられた前記プラテンを冷却する冷却ファンを設けたことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記冷却ファンは、前記印刷ヘッド移送機構と前記定着機構との間に、且つ前記印刷ヘッド移送機構側から前記定着機構側へ空気が向かうように配置したことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記冷却ファンから流出する空気を、前記プラテンの上面側へ案内するダクトを設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記定着機構による定着終了から所定時間だけ前記冷却ファンを作動させる冷却ファン制御手段を設けたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−18919(P2010−18919A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181823(P2008−181823)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】