プリンタ
【課題】サーマルヘッドとプラテンローラとが直接接触する領域に付与される押圧力を積極的に低減した上で、幅の異なる複数のロール紙を同一の装置で取り扱うことができるプリンタを提供する。
【解決手段】多数の発熱素子41を有し、ロール紙から引き出される記録紙の幅方向に沿って配置されたサーマルヘッド33と、サーマルヘッド33に対向配置され、サーマルヘッド33との間に記録紙を挟んだ状態で回転することで、記録紙を送り出すプラテンローラ34と、サーマルヘッド33に対してプラテンローラ34の反対側に設けられ、サーマルヘッド33をプラテンローラ34に向けて押圧する弾性部材45,45aと、を備え、弾性部材45aは、供給されるロール紙の幅に応じて幅方向に沿ってスライド移動可能に構成されていることを特徴とする。
【解決手段】多数の発熱素子41を有し、ロール紙から引き出される記録紙の幅方向に沿って配置されたサーマルヘッド33と、サーマルヘッド33に対向配置され、サーマルヘッド33との間に記録紙を挟んだ状態で回転することで、記録紙を送り出すプラテンローラ34と、サーマルヘッド33に対してプラテンローラ34の反対側に設けられ、サーマルヘッド33をプラテンローラ34に向けて押圧する弾性部材45,45aと、を備え、弾性部材45aは、供給されるロール紙の幅に応じて幅方向に沿ってスライド移動可能に構成されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール紙から引き出された記録紙に各種の情報を印字するプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
熱を加えると発色する特殊な記録紙(感熱紙)にサーマルヘッドを押し付けることで印刷を行うサーマルプリンタは、現在様々な種類のものが数多く提供されている。特に、トナーやインク等を使用せずに、滑らかな文字の印刷や多彩なグラフィック印字ができるため、各種ラベル、レシートやチケットの印刷等に好適に使用されている。
【0003】
上述したサーマルプリンタは、プラテンローラとサーマルヘッドとで記録紙を挟持し、プラテンローラの回転により記録紙を紙送りしながら記録紙の印字面(感熱面)をサーマルヘッドの発熱素子により加熱することで、印字面を発色させて印字を行うものである。このサーマルプリンタで使用される記録紙としては、ロール状に巻回されたロール紙のタイプが多い。このロール紙は、幅の異なるもの(例えば、3インチ幅、4インチ幅等)が数種類提供されており、用途に応じて適宜選択されて使用されている。
【0004】
ところで、上述したサーマルプリンタでは、印刷目的や用途に応じて幅の異なるロール紙を、1つのサーマルプリンタで使い分けて印刷するような要請がある。
しかしながら、従来の構成では、使用可能な最大幅のロール紙(以下、第1ロール紙という)よりも幅の狭いロール紙(以下、第2ロール紙という)を使用する場合に、サーマルヘッドとプラテンローラとの間において、第2ロール紙の幅方向外側には記録紙が通過せずに、サーマルヘッドとプラテンローラとが直接接触する領域が存在する。この接触領域では、サーマルヘッドとプラテンローラとの間の磨耗に起因して、プラテンローラの表面が削れて紙送り力が低下したり、サーマルヘッドの表面における保護膜が損傷したりする等の虞がある。
これに対して、ロール紙の幅に対応したプラテンローラをそれぞれ用意し、ロール紙のサイズ交換に応じてプラテンローラのみをサイズ交換することも考えられる。しかしながら、この構成では、装置コストの増加に繋がるという問題がある。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1には、サーマルヘッドを支持するヘッドばねによって記録紙(プラテンローラ)に付与される押圧力の合力作用点が、第1ロール紙の幅方向中心である第1中心と、第2ロール紙の幅方向中心である第2中心と、の間にあるように設定する構成が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−168350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1の構成では、第2ロール紙を使用する場合に、サーマルヘッドとプラテンローラとの接触領域において、ヘッドばねによって付与される押圧力を未だ十分に低減することができないという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、このような事情に考慮してなされたものであって、サーマルヘッドとプラテンローラとが直接接触する領域に付与される押圧力を積極的に低減した上で、幅の異なる複数のロール紙を同一の装置で取り扱うことができるプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明に係るプリンタは、幅の異なる複数のロール紙に対して印刷を行うサーマルプリンタであって、多数の発熱素子を有し、前記ロール紙から引き出される記録紙の幅方向に沿って配置されたサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドに対向配置され、前記サーマルヘッドとの間に前記記録紙を挟んだ状態で回転することで、前記記録紙を送り出すプラテンローラと、前記サーマルヘッドに対して前記プラテンローラの反対側に設けられ、前記サーマルヘッドを前記プラテンローラに向けて押圧する第1弾性部材と、を備え、前記第1弾性部材は、供給される前記ロール紙の幅に応じて前記幅方向に沿ってスライド移動可能に構成されていることを特徴としている。
【0010】
この構成によれば、弾性部材によりサーマルヘッドに付与される押圧力の作用点を幅方向に沿って可変することができる。すなわち、印刷可能な最大幅のロール紙(以下、第1ロール紙という)よりも幅の狭いロール紙(以下、第2ロール紙)を使用する場合に、第1弾性部材を内側に移動させることで、第1弾性部材により付与される押圧力の作用点を、第2ロール紙が存在しない領域(サーマルヘッドとプラテンローラとが直接接触する接触領域)を回避するように設定できる。そのため、接触領域におけるサーマルヘッドとプラテンローラとの接触圧(プラテン圧)を積極的に低減することが可能になり、サーマルヘッドとプラテンローラとにおける摩擦負荷を低減できる。したがって、サーマルヘッドとプラテンローラとの磨耗によるダメージを低減した上で、幅の異なる複数種類のロール紙を同一の装置で取り扱うことができる。
さらに、従来のようにロール紙の幅に応じて複数種類のプラテンローラを別途用意する場合に比べて、装置コストの低下も図ることができる。
【0011】
また、本発明に係るプリンタは、前記第1弾性部材は、前記幅方向に沿って複数配列され、複数の前記第1弾性部材のうち、配列方向の一端側の前記第1弾性部材のみがスライド移動可能に構成されていることを特徴としている。
この構成によれば、幅方向に沿って配列された複数の第1弾性部材のうち、最端の第1弾性部材のみをスライド移動可能に構成することで、各第1弾性部材をスライド操作する場合に比べて操作性を向上させることができる。
【0012】
また、本発明に係るプリンタは、前記第1弾性部材を支持するとともに、前記第1弾性部材のスライド移動を操作するレバー部材を備えていることを特徴としている。
この構成によれば、レバー部材の操作により、ユーザー自身で間単に第1弾性部材をスライド移動させることができるので、操作性をより一層向上させることができる。
【0013】
また、本発明に係るプリンタは、前記幅方向に沿って延在するとともに、前記レバー部材が通過可能なスライド通路と、前記スライド通路に連通するとともに、前記スライド通路に対して前記弾性部材の伸縮方向における長さが長く形成された位置決め孔と、を備え、前記位置決め孔は、前記幅方向に沿って間隔を空けて複数設けられるとともに、それぞれ前記レバー部材を収容可能に構成されていることを特徴としている。
この構成によれば、位置決め孔内でレバー部材を収容可能に構成することで、スライド機構の幅方向における位置決めを行うことができる。これにより、スライド機構が幅方向にずれる等の虞がないので、装置の信頼性を向上させることができる。
【0014】
また、本発明に係るプリンタは、前記複数の位置決め孔は、前記伸縮方向における長さがそれぞれ異なるように形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、第1弾性部材のストロークを、収容される位置決め孔によって可変することができるので、第1弾性部材のばね圧を位置決め孔によって可変することができる。これにより、接触領域におけるサーマルヘッドとプラテンローラとの接触圧をより積極的に低減することが可能になる。
【0015】
また、本発明に係るプリンタは、前記ロール紙を収容するロール紙収容部を有し、前記ロール紙収容部内には、前記第1弾性部材のスライド移動に連動して前記ロール紙収容部内を前記幅方向に沿ってスライド移動可能に構成されたペーパーガイドが設けられていることを特徴としている。
この構成によれば、第1弾性部材に連動してペーパーガイドがロール紙収容部内をスライド移動可能に構成されているため、ロール紙の幅に応じてペーパーガイドが移動することになる。そのため、ロール紙収容部内でのロール紙の幅方向への移動を規制することができる。
【0016】
また、本発明に係るプリンタは、前記サーマルヘッドに対して前記第1弾性部材の反対側には、前記サーマルヘッドを前記プラテンローラから離間させる方向に付勢する第2弾性部材が設けられ、前記第2弾性部材は、供給される前記ロール紙の幅に応じて付勢力を変更可能に構成されていることを特徴としている。
この構成によれば、接触領域におけるサーマルヘッドとプラテンローラとの接触圧をより積極的に低減することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るプリンタによれば、サーマルヘッドとプラテンローラとが直接接触する領域に付与される押圧力を積極的に低減した上で、幅の異なる複数のロール紙を同一の装置で取り扱うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態におけるサーマルプリンタにおけるペーパーカバーが閉位置の状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態におけるサーマルプリンタにおけるペーパーカバーが開位置の状態を示す斜視図である。
【図3】印刷モジュールの斜視図である。
【図4】図3の要部を拡大した平面図である。
【図5】第1ロール紙モードから第2ロール紙モードへの切替操作を説明するための説明図であって、図4に相当する拡大図である。
【図6】第1ロール紙モードから第2ロール紙モードへの切替操作を説明するための説明図であって、図3に相当する斜視図である。
【図7】第1ロール紙モードから第2ロール紙モードへの切替操作を説明するための説明図であって、図3に相当する斜視図である。
【図8】第1ロール紙モードから第2ロール紙モードへの切替操作を説明するための説明図であって、ケーシングの平面図である。
【図9】位置決め孔の他の構成を示す平面図である。
【図10】接触圧調整機構を示す印刷モジュールの平面図である。
【図11】スライド機構の他の構成を示す断面図である。
【図12】スライド機構の他の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(サーマルプリンタ)
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1はサーマルプリンタにおけるペーパーカバーが閉位置の状態を示す斜視図であり、図2はペーパーカバーが開位置の状態を示す斜視図である。なお、以下の説明では、発明を理解し易くするために、適宜構成部品の一部を省略したり、形状を単純化したり、縮尺を変更したりする等、図示を簡略化している。また、図中において、FRは前方を、LHは左方を、UPは上方をそれぞれ示す。
【0020】
図1,2に示すように、サーマルプリンタ(プリンタ)1は、幅の異なる複数種類の記録紙P1を印刷可能に構成されたものである。記録紙P1は、熱を加えると変色する感熱紙であり、各種ラベル、レシートやチケットの印刷等に好適に使用される。この記録紙P1は、中空孔5を有するように巻回されたロール紙Pの状態でサーマルプリンタ1にセットされ、ロール紙Pから引き出された部分に対して印刷が行われる。なお、以下の説明では、まずサーマルプリンタ1にセット可能な最大幅(例えば、4インチ幅)のロール紙Pがセットされている状態について説明する。
【0021】
サーマルプリンタ1は、開口部3a(図2参照)を有するケーシング3と、ケーシング3に回動可能に支持され、ケーシング3の開口部3aを開閉するペーパーカバー20と、により外観構成されている。また、サーマルプリンタ1には、ロール紙収容部21、及び印刷モジュール22が内装されている。
【0022】
ケーシング3は、ポリカーボネート等のプラスチックや金属材料からなり、その前部は上壁10を有する略直方体状に形成される一方、後部は上方に向けて開口する箱型形状に形成されている。ケーシング3の上壁10には、サーマルプリンタ1の各種操作を行う操作部14が配置されている。操作部14は、電源スイッチやFEEDスイッチ等の各種機能スイッチ15が配置されるとともに、機能スイッチ15に隣接して電源スイッチのON/OFFの情報を知らせるPOWERランプや、サーマルプリンタ1のエラー等を知らせるERRORランプ等の各種ランプ16が配置されている。また、ケーシング3の上壁10と側壁12との間には、ペーパーカバー20のオープンボタン18が設けられている。
【0023】
ペーパーカバー20は、ポリカーボネート等のプラスチックからなり、その後端で図示しないヒンジシャフトによりケーシング3に対して回動可能に支持されるとともに、前端が図示しない係止部によりケーシング3に係止可能に構成されている。そして、上述したケーシング3のオープンボタン18を押下することにより、ケーシング3とペーパーカバー20との係止が解除され、ペーパーカバー20が閉位置(図1参照)から開位置(図2参照)へ開閉可能に構成されている。また、ペーパーカバー20の閉位置において、ペーパーカバー20の前端縁とケーシング3の上壁10における後端縁との間には、記録紙P1の幅方向に沿って間隙を有しており、この間隙が印刷された記録紙P1が排出される排出口19(図1参照)を構成している。
【0024】
図2に示すように、ロール紙収容部21は、ケーシング3の後部における開口部3a内に形成されている。具体的に、ロール紙収容部21は、ロール紙Pを保持するガイドプレート23を備え、このガイドプレート23とペーパーカバー20の内面との間でロール紙Pを覆うように保持している。ガイドプレート23は、ケーシング3の内側に設けられた断面弧状の部材であり、その一端が上述したペーパーカバー20の後端側まで延出するとともに、他端が印刷モジュール22に近接する位置まで延出している。つまり、ガイドプレート23には、その内周面にロール紙Pの外周面が接触した状態で保持されており、ロール紙Pから引き出された記録紙P1を印刷モジュール22まで案内している。
【0025】
図3は、印刷モジュールの斜視図である。
図2,3に示すように、印刷モジュール22は、ケーシング3の上壁10における後端縁に設けられた本体ユニット24と、ペーパーカバー20の前端縁に設けられ、本体ユニット24に対して着脱可能に組み合わされるプラテンユニット25と、印刷モジュール22で印刷された記録紙P1を切断する切断ユニット26と、で構成されている。
【0026】
図3に示すように、本体ユニット24は、本体フレーム31と、本体フレーム31に支持されたヘッド支持体32と、ヘッド支持体32に貼付固定されたサーマルヘッド33と、本体フレーム31に対してプラテンユニット25の後述するプラテンローラ34を回転可能に保持する一対のロックアーム35と、を備えている。
【0027】
本体フレーム31は、左右方向に延在する底壁部31aと、底壁部31aの左右方向両端部から上方に向けて立設された一対の側壁部31bと、を有する板状の部材である。底壁部31aの後端縁には、下方に向けて屈曲形成されたガイド部31cが形成されている。このガイド部31cは、上述したガイドプレート23から案内される記録紙P1を、サーマルヘッド33とプラテンローラ34との間(搬送方向の下流側)に向けて導くためのものである。
【0028】
各側壁部31bの上端縁には、下方に向けて切り込まれたスリット31dが形成されており、ここにプラテンローラ34の両端部が入り込むようになっている。
【0029】
ヘッド支持体32は、左右方向を長手方向とした平板状の部材であり、側壁部31b間に配置されているとともに、その後面にサーマルヘッド33が貼付固定されている。また、ヘッド支持体32は、下端側が図示しないシャフトに回動可能に支持されている。シャフトは、軸方向の両端部が側壁部31bにそれぞれ固定され、これによりヘッド支持体32は、前後方向に向けてシャフト回りに回動するようになっている。また、ヘッド支持体32の上端部には、ヘッド支持体32の回動範囲を規制するためのストッパ37が形成されている。このストッパ37は、ヘッド支持体32における左右方向の外側に向けて延出するものであり、本体フレーム31の側壁部31bの上部に形成された凹部31e内を臨むように形成されている。そして、ストッパ37は、ヘッド支持体32の回動に伴って凹部31e内を移動し、凹部31eの両端面に接触可能に構成されている。そして、ストッパ37が凹部31eの端面に当接することで、ヘッド支持体32のそれ以上の回動を規制するようになっている。
【0030】
サーマルヘッド33は、印刷モジュール22内に搬送された記録紙P1に対して印刷を行うものであり、ヘッド支持体32に貼付固定された平面視(前後方向から見て)矩形状に形成されている。この場合、サーマルヘッド33は、ケーシング3の上壁10の内側であって、開口部3a内に露出するように配置されるとともに、その長手方向と記録紙P1の幅方向とが一致した状態で配置されている。また、サーマルヘッド33のヘッド面33aには左右方向に平行に且つライン状に並んだ多数の発熱素子41が配列されている。なお、ヘッド面33aとは、記録紙Pの印字面との対向面であり、このヘッド面33aと、プラテンローラ34の外周面との間で記録紙Pを挟持しうるようになっている。サーマルヘッド33の発熱素子41は、図示しない制御部からの信号に基づいて、それぞれ発熱するように制御されており、発熱素子41の発熱を制御することで各種の文字や図形等を記録紙P1の印字面へ印刷することが可能となっている。
【0031】
図2,3に示すように、プラテンユニット25は、ペーパーカバー20の前端縁に設けられ、ペーパーカバー20の開閉に伴って本体フレーム31に着脱可能に構成されたプラテンローラ34を備えている。プラテンローラ34は、ペーパーカバー20の閉位置において、ロール紙Pから引き出された記録紙P1を間に挟んだ状態で、サーマルヘッド33に対してその周面が接触するように設けられている。具体的に、プラテンローラ34は、ペーパーカバー20に対して回転可能に支持されるローラシャフト(不図示)と、このローラシャフトに外装されたゴムからなるローラ本体34aと、を備えている。
【0032】
ローラシャフトの両端部には、軸受け34b(図2参照)が装着されており、側壁部31aのスリット31dとロックアーム35との間で、軸受34bが保持されることによりプラテンローラ34が中心軸回りに回転可能に、且つ本体フレーム31に着脱可能に保持される。また、プラテンローラ34の軸方向一端には図示しない従動ギアが固定されており、プラテンローラ34が一対の側壁部31bに保持されたときに、本体フレーム31側に取り付けられた歯車伝達機構42に噛合するようになっている。この歯車伝達機構42は、モータ等の駆動手段43に接続されており、駆動手段43からの回転駆動力を従動ギアに伝達している。これによりプラテンローラ34は、一対の側壁部31bに支持された状態で回転し、記録紙P1を送り出すことができる。なお、プラテンローラ34は、ペーパーカバー20の開操作に伴って本体ユニット24(スリット31d及びロックアーム35)から分離することで、組み合わせが解除されるようになっている。
【0033】
上述した本体ユニット24において、ヘッド支持体32の前方には、ヘッド支持体32と略平行に延在する平板状の弾性部材支持板44が配置されている。そして、ヘッド支持体32と弾性部材支持板44との間には、左右方向に沿って複数(例えば、4つ)の弾性部材45が介装されており、弾性部材支持板44とヘッド支持体32とを互いに離間させる方向に向けて付勢している。すなわち、弾性部材45は、ヘッド支持体32をプラテンローラ34側に向けて常に押圧するように構成されている。また、各弾性部材45のうち、両側2つの弾性部材45は、内側2つの弾性部材45に比べてバネ定数が小さく設定されている。
【0034】
上述したロックアーム35は、上述した弾性部材支持板44の左右方向における両端部から後方に向けて、一体的に延出する部材であり、基端側(前端側)に形成されたアーム部35aと、先端側(後端側)に形成されたフック部35bと、を有している。
アーム部35aは、ヘッド支持体32が間に配置されるように弾性部材支持板44の両端部から後方に向けて延在するとともに、上述したシャフトに回動可能に支持されている。したがって、弾性部材支持板44及びロックアーム35は、前後方向に向けてシャフト回りに回動可能に構成されている。また、上述した弾性部材支持板44及びロックアーム35は、回動時に弾性部材支持板44が本体フレーム31に当接することで、弾性部材支持板44及びロックアーム35のそれ以上の回動が規制されている。
【0035】
フック部35bは、アーム部35aの先端側からプラテンローラ34の軸受け34bの外周面を抱え込むように延設されている。フック部35bの内周縁には、プラテンローラ34の軸受け34bの外周面を支持する凹部35cが形成されており、この凹部35cと側壁部31bのスリット31dとの間でプラテンローラ34の軸受け34bを保持するようになっている。
【0036】
このように、一対のロックアーム35は、弾性部材支持板44に一体的に形成され、この弾性部材支持板44とヘッド支持体32とは、弾性部材45によって互いに反発する方向に向けて付勢されているので、ロックアーム35は、フック部35bの凹部35cとスリット31dとの間にプラテンローラ34の軸受け34bを挟み込んで、プラテンローラ34を回転可能に保持できるようになっている。
【0037】
図2に示すように、切断ユニット26は、記録紙P1の搬送方向におけるプラテンローラ34よりも下流側であって、ペーパーカバー20の前端縁に一体形成された第1切断刃26aと、サーマルヘッド33よりも下流側であって、ケーシング3の上壁10における後端縁に一体形成された第2切断刃26bとで構成されている。そして、サーマルヘッド33を通過した記録紙P1、すなわち印刷された記録紙P1は、第1切断刃26aと第2切断刃26bとの間に形成された排出口19(図1参照)から送り出され、これら第1切断刃26aまたは第2切断刃26bに接触させた状態で引き倒すことにより切断されるようになっている。
【0038】
(スライド機構)
図4は、図3の要部を拡大した平面図である。
ここで、図3,4に示すように、上述した弾性部材45のうち、左右方向の一端側(歯車伝達機構42側)の弾性部材(第1弾性部材)45aには、ヘッド支持体32と弾性部材支持板44との間で弾性部材45aを左右方向に沿ってスライド移動可能とするスライド機構51が設けられている。
スライド機構51は、弾性部材45aにおける伸縮方向の一端(後端)を支持する第1座面52、及び他端(前端)を支持する第2座面53と、ケーシング3の上壁10に形成されたスリット54と、を有している。
【0039】
第1座面52は、前方に向けて開放されたコ字状の部材であり、ヘッド支持体32、及び弾性部材45aの間に配置された底壁部55と、底壁部55の左右両側から前方に向けて立設された側壁部56と、を有している。
底壁部55は、ヘッド支持体32の前面上に配置され、弾性部材45aの一端を支持するとともに、ヘッド支持体32の前面上を左右方向に沿って摺動可能に構成されている。
各側壁部56は、弾性部材45aにおける左右方向の両側を取り囲むように形成され、弾性部材45aの伸縮方向における中間部分までそれぞれ延在している。
【0040】
第2座面53は、後方に向けて開放されたコ字状の部材であり、弾性部材支持板44、及び弾性部材45aの間に配置された底壁部57と、底壁部57の左右両側から後方に向けて立設された側壁部58と、を有している。
【0041】
底壁部57は、弾性部材支持板44の後面上に配置され、弾性部材45aの他端を支持するとともに、弾性部材支持板44の後面上を左右方向に沿って摺動可能に構成されている。底壁部57の上端部には、上方に向けて延在するレバー部材61が形成されている。レバー部材61は、左右方向の幅が底壁部57の幅と同等に形成され、その先端(上端)が上述したスリット54を通してケーシング3の上壁10から上方に向けて突出している(図1参照)。
各側壁部58は、弾性部材45aにおける左右方向の両側を取り囲むように形成され、弾性部材45aにおける伸縮方向の中間部分までそれぞれ延在している。この場合、各側壁部58の先端部(後端部)は、第1座面52の側壁部56の内側に位置している。したがって、弾性部材45aは、左右方向の両側が第1座面52、及び第2座面53の側壁部56,58によって伸縮方向の全域に亘って囲まれている。
【0042】
上述したスリット54は、ケーシング3の上壁10における弾性部材45aと重なる位置で上壁10を貫通するように形成され、弾性部材45a(スライド機構51)の位置決めを行うものである。具体的に、スリット54は、左右方向の外側に形成された第1位置決め孔62と、内側に形成された第2位置決め孔63と、各位置決め孔62,63同士を連通させるスライド通路64と、を備えている。
【0043】
第1位置決め孔62は、平面視(上下方向から見て)で矩形状に形成され、その内側に上述したレバー部材61が収まるようになっている。具体的に、第1位置決め孔62は、前端側が弾性部材支持板44と重なる位置まで延在するとともに、左右方向における幅がレバー部材61よりも僅かに大きく形成されている。そして、レバー部材61は、第1位置決め孔62の前端側に収まることで、第1位置決め孔62の内周縁に当接して、弾性部材45a(スライド機構51)の前方及び左右方向への移動が規制されている。これにより、弾性部材45aは、レバー部材61が第1位置決め孔62に位置決めされた第1位置において、各座面52,53を介してヘッド支持体32と弾性部材支持板44とを離間させる方向に付勢した状態で保持されている。
【0044】
第2位置決め孔63は、上述した第1位置決め孔62と同形同大に形成され、その内側に上述したレバー部材61が収まるようになっている。そして、レバー部材61は、第2位置決め孔63の前端側に収まることで、第2位置決め孔63の内周縁に当接して、弾性部材45a(スライド機構51)の前方及び左右方向への移動が規制されている。これにより、弾性部材45aは、レバー部材61が第2位置決め孔63に位置決めされた第2位置において、各座面52,53を介してヘッド支持体32と弾性部材支持板44とを離間させる方向に付勢した状態で保持されている。なお、第2位置は、第1位置よりも左右方向における内側に設定されている。なお、スライド機構51は、下端部が上述したシャフトに当接することで、上下方向の位置決めが行われている。
【0045】
スライド通路64は、上述した各位置決め孔62,63に比べて前後方向の幅を縮小して形成され、各位置決め孔62,63の後端部同士を連結して各位置決め孔62,63間を連通させている。この場合、レバー部材61の操作により第2座面53を後端側へ移動させて弾性部材45aを収縮させ、レバー部材61をスライド通路64と左右方向で重なる位置まで移動させることで、レバー部材61がスライド通路64内を通過可能になっている。そして、レバー部材61がスライド通路64内を通過することで、第1位置と、第1位置よりも内側に設定された第2位置と、との間を移動可能に構成されている。すなわち、レバー部材61の操作により、スライド機構51で支持している弾性部材45aが、第1位置と第2位置との間を左右方向に沿ってスライド移動可能に構成されている。
【0046】
また、上述した第1座面52の底壁部55からは、後方に向けて延在するペーパーガイド66が第1座面52と一体的に形成されている。ペーパーガイド66は、ロール紙収容部21内に配置されたガイド本体67と、ガイド本体67、及び第1座面52を連結する連結部68と、を有している。
ガイド本体67は、半円板状の板材であり、その円弧部分がロール紙収容部21のガイドプレート23の内面に倣うように形成されている。そして、ガイド本体67と、ケーシング3における一方(オープンボタン18側)の側壁12と、の間にロール紙Pが収まるようになっている。これにより、ロール紙Pの幅方向(左右方向)における位置決めが可能となる。また、ガイド本体67の下端部には、ペーパーガイド66と、ガイドプレート23との位置決めを行う突起部69が形成されており、ガイドプレート23に形成された図示しない位置決め孔内に収まるようになっている。
【0047】
連結部68は、ガイド本体67の前端部から前方に向かって延在しており、上述したヘッド支持体32及びシャフトの下方を通って、第1座面52に連結されている。これにより、ガイド本体67は、スライド機構51のスライド移動に連動してロール紙収容部21内を左右方向に移動可能に構成されている。
【0048】
(サーマルプリンタの作動方法)
次に、上述したサーマルプリンタ1の作動方法について説明する。なお、以下の説明では、主としてサーマルプリンタ1にセット可能な最大幅(例えば、4インチ幅)のロール紙P(以下、第1ロール紙Pという)を印刷する第1ロール紙モードと、第1ロール紙Pよりも幅が狭い(例えば、3インチ幅)第2ロール紙P’(図8参照)を印刷する第2ロール紙モードと、各モード間の切替操作と、について説明する。また、以下の説明では、スライド機構51が第1位置に保持された状態から説明する。
【0049】
まず、図2に示すように、オープンボタン18を押下してペーパーカバー20を開けた後、第1ロール紙Pをセットする。具体的には、ロール紙収容部21内に向けて第1ロール紙Pを投げ込むようにセットする。これにより、第1ロール紙Pは、その外周面がロール紙収容部21のガイドプレート23の内周面に接触した状態で保持される。また、第1ロール紙Pは、幅方向の両側がケーシング3の一方の側壁12とペーパーガイド66のガイド本体67とに囲まれ、左右方向への移動が規制されている。そして、第1ロール紙Pから記録紙P1を引き出し、引き出した記録紙P1の先端をプラテンローラ34とサーマルヘッド33との間に接触させておく。その後、ペーパーカバー20を閉じることで、第1ロール紙Pのセットが完了する。
【0050】
そして、サーマルプリンタ1を作動させ、プラテンローラ34を回転させると、第1ロール紙Pから記録紙P1が引き出され、プラテンローラ34の周面とサーマルヘッド33との間に挟まれた状態で下流側、すなわち排出口19に向けて送り出される。これと同時に、多数の発熱素子41が適宜熱を発したサーマルヘッド33によって、送り出された記録紙P1に対して各種の文字や図形等を明瞭に印刷することができる。その後、排出口19から排出された記録紙P1を、切断ユニット26側に傾けて引張ることで、記録紙P1が切断される。その結果、第1ロール紙Pに巻回された記録紙P1を、レシート等として使用することができる。
【0051】
上述した第1ロール紙モードから第2ロール紙モードへと切り替える場合には、まずオープンボタン18を押下してペーパーカバー20を開けた後、ロール紙収容部21内からロール紙Pを取り出す。
その後、第1ロール紙Pよりも幅の狭い第2ロール紙P’(例えば、3インチ)を、上述した第1ロール紙モードと同様にロール紙収容部21内にセットする。この際、第2ロール紙P’における幅方向の一端側を、ケーシング3の一方の側壁12に合わせてセットする。
【0052】
ところで、サーマルプリンタ1で使用可能な最大幅の第1ロール紙Pよりも幅の狭い第2ロール紙P’を使用する場合に、ロール紙収容部21内における第2ロール紙P’の外側(幅方向の他端側とケーシング3の他方の側壁12との間)には、隙間が生じる。そして、この隙間ではサーマルヘッド33とプラテンローラ34との間に、記録紙P1’は存在せず、サーマルヘッド33とプラテンローラ34とが直接接触することとなる(図8中接触領域R)。
【0053】
図5〜8は、第1ロール紙モードから第2ロール紙モードへの切替操作を説明するための説明図であって、図5は図4に相当する拡大図、図6,7は図3に相当する斜視図、図8はケーシングの平面図である。
図5に示すように、レバー部材61を操作して、レバー部材61とスライド通路64とが左右方向から見て重なる位置までレバー部材61を後方に向けて移動させる(図5中矢印J1)。これにより、第2座面53が第1座面52に接近する方向に移動するとともに、弾性部材45aが収縮する。この時、第1座面52はヘッド支持体32に当接した状態で、第2座面53は弾性部材支持板44から離間した状態となっている。
この状態で、図5,6に示すように、レバー部材61を左右方向の内側に向けて操作する(図6中矢印J2)。すると、レバー部材61がスライド通路64内を通過することで、スライド機構51が内側に弾性部材45aを保持した状態で左右方向の内側(第2位置)に向けてスライド移動する。この場合、スライド機構51は、第1座面52の底壁部55がヘッド支持体32の前面上を摺動しながらスライド移動する。また、これに連動して、図8に示すように、ペーパーガイド66がロール紙収容部21内を左右方向の内側に向けて移動する。
【0054】
そして、図7に示すように、レバー部材61が第2位置決め孔63に到達した時点で、レバー部材61の操作を解除すると、弾性部材45aの付勢力により第2座面52が前方に向けて移動する(図7中矢印J3)。すると、第2座面52が弾性部材支持板44の後面に当接するとともに、第2座面53のレバー部材61が第2位置決め孔63の後端縁に当接する。これにより、スライド機構51が第2位置で保持される。すなわち、弾性部材45a及びペーパーガイド66が第1位置よりも内側に配置される。
以上により、第2ロール紙モードへの切替操作が終了する。その後、上述した第1ロール紙モードと同様の方法により第2ロール紙P’への印刷が行われる。
【0055】
このように、第1位置から第2位置へスライド機構51を移動させることで、弾性部材45aが左右方向において第2ロール紙P’寄りに配置されることになる。すなわち、弾性部材45aが、サーマルヘッド33とプラテンローラ34とが直接接触する接触領域Rを回避するように移動する。さらに、第1位置から第2位置へスライド機構51を移動させることで、ガイド本体67が第2ロール紙P’寄りに配置されることになる。そのため、ロール紙収容部21内の第2ロール紙P’は、幅方向の両側がケーシング3の一方の側壁12と、ガイド本体67とにそれぞれ囲まれ、左右方向への移動が規制される。
【0056】
なお、第2ロール紙モードから第1ロール紙モードへと切り替える場合には、上述した動作と逆の手順を行えばよい。すなわち、レバー部材61を操作して、後方に移動させた後、スライド通路64内を左右方向の外側に向けて移動させる。これにより、スライド機構51が弾性部材45aを保持した状態で左右方向の外側(第1位置)に向けてスライド移動する。そして、スライド機構51が第1位置決め孔62に到達した時点で、レバー部材61の操作を解除すると、弾性部材45aの付勢力により第2座面52が前方に向けて移動する。これにより、スライド機構51が第1位置で保持される。すなわち、弾性部材45a及びペーパーガイド66が第2位置よりも外側(ケーシング3における他方の側壁12寄り)に配置される。
以上により、第1ロール紙モードへの切替操作が終了する。
【0057】
このように、本実施形態では、ロール紙収容部21内に供給されるロール紙Pの幅に応じて、弾性部材45aを記録紙P1の幅方向に沿ってスライド移動可能に構成した。
この構成によれば、弾性部材45aにより付与される押圧力の作用点を左右方向に沿って可変することができる。すなわち、上述したように印刷可能な最大幅の第1ロール紙Pよりも幅の狭い第2ロール紙P’を使用する場合に、弾性部材45aを内側に移動させることで、弾性部材45aにより付与される押圧力の作用点を、接触領域Rを回避するように内側に設定できる。そのため、接触領域Rにおけるサーマルヘッド33とプラテンローラ34との接触圧(プラテン圧)を積極的に低減することが可能になり、サーマルヘッド33とプラテンローラ34とにおける摩擦負荷を低減できる。したがって、サーマルヘッド33とプラテンローラ34との磨耗によるダメージを低減した上で、幅の異なる複数種類のロール紙を同一の装置で取り扱うことができる。また、サーマルヘッド33とプラテンローラ34との間での磨耗によるダメージを低減できるので、装置の長寿命化を図ることができる。
さらに、従来のようにロール紙Pの幅に応じて複数種類のプラテンローラを別途用意する場合に比べて、装置コストの低下も図ることができる。
【0058】
また、左右方向に沿って配列された複数の弾性部材45のうち、最端の弾性部材45aのみをスライド移動可能に構成することで、各弾性部材45をスライド操作する場合に比べて操作性を向上させることができる。
さらに、弾性部材45aをスライド移動させるスライド機構51を設けることで、レバー部材61の操作により、ユーザー自身で間単に簡単に弾性部材45aをスライド移動させることができるため、操作性をより一層向上させることができる。
また、第1座面52、及び第2座面53により弾性部材45aにおける左右方向の両側を取り囲むことで、弾性部材45aの収縮時やスライド移動時等において、弾性部材45aが倒れ込むのを抑制できる。
さらに、第1位置決め孔62または第2位置決め孔63内でレバー部材61を保持可能に構成することで、スライド機構51の左右方向における位置決めを行うことができる。これにより、スライド機構51が左右方向にずれる等の虞がないので、装置の信頼性を向上させることができる。
【0059】
しかも、本実施形態では、スライド機構51に連動してペーパーガイド66がロール紙収容部21内をスライド移動可能に構成されているため、ロール紙Pの幅に応じてペーパーガイド66が移動することになる。そのため、ロール紙収容部21内でのロール紙Pの移動を規制することができる。
【0060】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、本実施形態では中空孔を有するように巻回されたロール紙を用いて説明したが、芯管に記録紙が巻回されたロール紙を用いてもよい。
また、上述した実施形態では、各弾性部材45のうち、最端の弾性部材45aをスライド移動可能に構成したが、これに限らず、任意の弾性部材45をスライド移動可能に構成しても構わない。
また、上述した実施形態では、位置決め孔62,63を左右方向に沿って2つ設け、幅の異なる2つのロール紙P,P’に応じて弾性部材45aを2段階にスライド移動させる場合について説明したが、これに限らず、位置決め孔を3つ以上設けて3段階以上スライド移動させても構わない。これにより、3種類以上の幅の異なるロール紙に対応することができる。
【0061】
また、上述した実施形態では、各位置決め孔62,63をそれぞれ同等の長さに形成したが、これに限らず、各位置決め孔62,63の長さをそれぞれ異ならせても構わない。
この場合、図9に示すように、第2位置決め孔63の長さを第1位置決め孔62の長さよりも長く形成することで、スライド機構51が第2位置決め孔63に保持された状態での弾性部材45aのストロークを長くすることができる。これにより、第2位置での弾性部材45aのばね圧を第1位置での弾性部材45aのばね圧に比べて低減することができるため、接触領域Rにおけるサーマルヘッド33とプラテンローラ34との接触圧をより積極的に低減することが可能になる。
さらに、上述した実施形態では、弾性部材支持板44を平板状に形成した場合について説明したが、これに限らず、弾性部材支持板44の左右方向における第2位置に対応する位置に前方に向けて窪んだ凹部を形成することで、第2位置での弾性部材45aのストロークを長くなるように構成しても構わない。
【0062】
さらに、上述した実施形態に加えて、図10に示すように、サーマルヘッド33(ヘッド支持体32)をプラテンローラ34から離間する方向に付勢する接触圧調整機構71を設けても構わない。接触圧調整機構71は、ヘッド支持体32における左右方向の一端側から側方に向けて延在する延在部72と、延在部72(ヘッド支持体32)を間に挟んで弾性部材45とは反対側に配置され、延在部72に対して接近または離間する方向に回動する回動部材73と、延在部72及び回動部材73の間に介装された弾性部材(第2弾性部材)74と、を備えている。
この構成によれば、第2ロール紙P’を使用する際に、回動部材73を延在部72に向けて回動させる。すると、弾性部材74が収縮することで、サーマルヘッド33(ヘッド支持体32)をプラテンローラ34から離間させる方向に押圧力が作用することになる。これにより、接触領域Rにおけるサーマルヘッド33とプラテンローラ34との接触圧をより積極的に低減することが可能になる。なお、第1ロール紙Pを使用する場合には、回動部材73を延在部72から離間させる方向に回動させ、弾性部材74を自然長の状態に保持しておくことで、弾性部材74からヘッド支持体32に付与される押圧力を解除できる。
【0063】
また、上述した実施形態では、スライド機構51(各座面52,53)の下端部がシャフトに当接することで、上下方向での位置決めを行う構成について説明したが、これに限られない。例えば、図11に示すように、ヘッド支持体32及び弾性部材支持板44に、それぞれ対向する方向に向けて突出するレール部81,82を左右方向に沿って形成する一方、スライド機構51の各座面52,53にレール部81,82をそれぞれ収容する収容溝83,84を形成する。この場合、スライド機構51をレール部81,82上にスライド移動させることで、スライド機構51の上下方向での位置決めを行うことができる。
【0064】
また、上述した実施形態では、第2座面53の底壁部57にレバー部材61を形成する構成としたが、これに限られない。例えば、図12に示すように、ガイド本体67の上面に沿って前後方向に沿ってスライド移動可能に形成されたスライド部材91を設け、このスライド部材91と第1座面52とを連結部92により連結することで、スライド部材91の操作により第1座面52を前後方向に沿って操作しても構わない。この場合、ガイド本体67に、一端が上面で開放され、他端が前方に向けて(印刷モジュール22に向けて)開放された溝93を形成し、この溝93内に連結部92を通すことで、スライド機構51における左右方向へのスライド移動に連動して、ガイド本体67をスライドさせることができる。なお、図12では、溝93が側方に向けて開放されているが、溝93を覆うようにプレート部材(不図示)を別体で設けても構わない。
【符号の説明】
【0065】
1…サーマルプリンタ 21…ロール紙収容部 33…サーマルヘッド 34…プラテンローラ 45…弾性部材 45a…弾性部材(第1弾性部材) 51…スライド機構 61…レバー部材 62…第1位置決め孔 63…第2位置決め孔 63…スライド通路 67…ペーパーガイド 74…弾性部材(第2弾性部材) P…第1ロール紙(ロール紙) P’…第2ロール紙(ロール紙) P1,P’…記録紙
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール紙から引き出された記録紙に各種の情報を印字するプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
熱を加えると発色する特殊な記録紙(感熱紙)にサーマルヘッドを押し付けることで印刷を行うサーマルプリンタは、現在様々な種類のものが数多く提供されている。特に、トナーやインク等を使用せずに、滑らかな文字の印刷や多彩なグラフィック印字ができるため、各種ラベル、レシートやチケットの印刷等に好適に使用されている。
【0003】
上述したサーマルプリンタは、プラテンローラとサーマルヘッドとで記録紙を挟持し、プラテンローラの回転により記録紙を紙送りしながら記録紙の印字面(感熱面)をサーマルヘッドの発熱素子により加熱することで、印字面を発色させて印字を行うものである。このサーマルプリンタで使用される記録紙としては、ロール状に巻回されたロール紙のタイプが多い。このロール紙は、幅の異なるもの(例えば、3インチ幅、4インチ幅等)が数種類提供されており、用途に応じて適宜選択されて使用されている。
【0004】
ところで、上述したサーマルプリンタでは、印刷目的や用途に応じて幅の異なるロール紙を、1つのサーマルプリンタで使い分けて印刷するような要請がある。
しかしながら、従来の構成では、使用可能な最大幅のロール紙(以下、第1ロール紙という)よりも幅の狭いロール紙(以下、第2ロール紙という)を使用する場合に、サーマルヘッドとプラテンローラとの間において、第2ロール紙の幅方向外側には記録紙が通過せずに、サーマルヘッドとプラテンローラとが直接接触する領域が存在する。この接触領域では、サーマルヘッドとプラテンローラとの間の磨耗に起因して、プラテンローラの表面が削れて紙送り力が低下したり、サーマルヘッドの表面における保護膜が損傷したりする等の虞がある。
これに対して、ロール紙の幅に対応したプラテンローラをそれぞれ用意し、ロール紙のサイズ交換に応じてプラテンローラのみをサイズ交換することも考えられる。しかしながら、この構成では、装置コストの増加に繋がるという問題がある。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1には、サーマルヘッドを支持するヘッドばねによって記録紙(プラテンローラ)に付与される押圧力の合力作用点が、第1ロール紙の幅方向中心である第1中心と、第2ロール紙の幅方向中心である第2中心と、の間にあるように設定する構成が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−168350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1の構成では、第2ロール紙を使用する場合に、サーマルヘッドとプラテンローラとの接触領域において、ヘッドばねによって付与される押圧力を未だ十分に低減することができないという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、このような事情に考慮してなされたものであって、サーマルヘッドとプラテンローラとが直接接触する領域に付与される押圧力を積極的に低減した上で、幅の異なる複数のロール紙を同一の装置で取り扱うことができるプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明に係るプリンタは、幅の異なる複数のロール紙に対して印刷を行うサーマルプリンタであって、多数の発熱素子を有し、前記ロール紙から引き出される記録紙の幅方向に沿って配置されたサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドに対向配置され、前記サーマルヘッドとの間に前記記録紙を挟んだ状態で回転することで、前記記録紙を送り出すプラテンローラと、前記サーマルヘッドに対して前記プラテンローラの反対側に設けられ、前記サーマルヘッドを前記プラテンローラに向けて押圧する第1弾性部材と、を備え、前記第1弾性部材は、供給される前記ロール紙の幅に応じて前記幅方向に沿ってスライド移動可能に構成されていることを特徴としている。
【0010】
この構成によれば、弾性部材によりサーマルヘッドに付与される押圧力の作用点を幅方向に沿って可変することができる。すなわち、印刷可能な最大幅のロール紙(以下、第1ロール紙という)よりも幅の狭いロール紙(以下、第2ロール紙)を使用する場合に、第1弾性部材を内側に移動させることで、第1弾性部材により付与される押圧力の作用点を、第2ロール紙が存在しない領域(サーマルヘッドとプラテンローラとが直接接触する接触領域)を回避するように設定できる。そのため、接触領域におけるサーマルヘッドとプラテンローラとの接触圧(プラテン圧)を積極的に低減することが可能になり、サーマルヘッドとプラテンローラとにおける摩擦負荷を低減できる。したがって、サーマルヘッドとプラテンローラとの磨耗によるダメージを低減した上で、幅の異なる複数種類のロール紙を同一の装置で取り扱うことができる。
さらに、従来のようにロール紙の幅に応じて複数種類のプラテンローラを別途用意する場合に比べて、装置コストの低下も図ることができる。
【0011】
また、本発明に係るプリンタは、前記第1弾性部材は、前記幅方向に沿って複数配列され、複数の前記第1弾性部材のうち、配列方向の一端側の前記第1弾性部材のみがスライド移動可能に構成されていることを特徴としている。
この構成によれば、幅方向に沿って配列された複数の第1弾性部材のうち、最端の第1弾性部材のみをスライド移動可能に構成することで、各第1弾性部材をスライド操作する場合に比べて操作性を向上させることができる。
【0012】
また、本発明に係るプリンタは、前記第1弾性部材を支持するとともに、前記第1弾性部材のスライド移動を操作するレバー部材を備えていることを特徴としている。
この構成によれば、レバー部材の操作により、ユーザー自身で間単に第1弾性部材をスライド移動させることができるので、操作性をより一層向上させることができる。
【0013】
また、本発明に係るプリンタは、前記幅方向に沿って延在するとともに、前記レバー部材が通過可能なスライド通路と、前記スライド通路に連通するとともに、前記スライド通路に対して前記弾性部材の伸縮方向における長さが長く形成された位置決め孔と、を備え、前記位置決め孔は、前記幅方向に沿って間隔を空けて複数設けられるとともに、それぞれ前記レバー部材を収容可能に構成されていることを特徴としている。
この構成によれば、位置決め孔内でレバー部材を収容可能に構成することで、スライド機構の幅方向における位置決めを行うことができる。これにより、スライド機構が幅方向にずれる等の虞がないので、装置の信頼性を向上させることができる。
【0014】
また、本発明に係るプリンタは、前記複数の位置決め孔は、前記伸縮方向における長さがそれぞれ異なるように形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、第1弾性部材のストロークを、収容される位置決め孔によって可変することができるので、第1弾性部材のばね圧を位置決め孔によって可変することができる。これにより、接触領域におけるサーマルヘッドとプラテンローラとの接触圧をより積極的に低減することが可能になる。
【0015】
また、本発明に係るプリンタは、前記ロール紙を収容するロール紙収容部を有し、前記ロール紙収容部内には、前記第1弾性部材のスライド移動に連動して前記ロール紙収容部内を前記幅方向に沿ってスライド移動可能に構成されたペーパーガイドが設けられていることを特徴としている。
この構成によれば、第1弾性部材に連動してペーパーガイドがロール紙収容部内をスライド移動可能に構成されているため、ロール紙の幅に応じてペーパーガイドが移動することになる。そのため、ロール紙収容部内でのロール紙の幅方向への移動を規制することができる。
【0016】
また、本発明に係るプリンタは、前記サーマルヘッドに対して前記第1弾性部材の反対側には、前記サーマルヘッドを前記プラテンローラから離間させる方向に付勢する第2弾性部材が設けられ、前記第2弾性部材は、供給される前記ロール紙の幅に応じて付勢力を変更可能に構成されていることを特徴としている。
この構成によれば、接触領域におけるサーマルヘッドとプラテンローラとの接触圧をより積極的に低減することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るプリンタによれば、サーマルヘッドとプラテンローラとが直接接触する領域に付与される押圧力を積極的に低減した上で、幅の異なる複数のロール紙を同一の装置で取り扱うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態におけるサーマルプリンタにおけるペーパーカバーが閉位置の状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態におけるサーマルプリンタにおけるペーパーカバーが開位置の状態を示す斜視図である。
【図3】印刷モジュールの斜視図である。
【図4】図3の要部を拡大した平面図である。
【図5】第1ロール紙モードから第2ロール紙モードへの切替操作を説明するための説明図であって、図4に相当する拡大図である。
【図6】第1ロール紙モードから第2ロール紙モードへの切替操作を説明するための説明図であって、図3に相当する斜視図である。
【図7】第1ロール紙モードから第2ロール紙モードへの切替操作を説明するための説明図であって、図3に相当する斜視図である。
【図8】第1ロール紙モードから第2ロール紙モードへの切替操作を説明するための説明図であって、ケーシングの平面図である。
【図9】位置決め孔の他の構成を示す平面図である。
【図10】接触圧調整機構を示す印刷モジュールの平面図である。
【図11】スライド機構の他の構成を示す断面図である。
【図12】スライド機構の他の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(サーマルプリンタ)
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1はサーマルプリンタにおけるペーパーカバーが閉位置の状態を示す斜視図であり、図2はペーパーカバーが開位置の状態を示す斜視図である。なお、以下の説明では、発明を理解し易くするために、適宜構成部品の一部を省略したり、形状を単純化したり、縮尺を変更したりする等、図示を簡略化している。また、図中において、FRは前方を、LHは左方を、UPは上方をそれぞれ示す。
【0020】
図1,2に示すように、サーマルプリンタ(プリンタ)1は、幅の異なる複数種類の記録紙P1を印刷可能に構成されたものである。記録紙P1は、熱を加えると変色する感熱紙であり、各種ラベル、レシートやチケットの印刷等に好適に使用される。この記録紙P1は、中空孔5を有するように巻回されたロール紙Pの状態でサーマルプリンタ1にセットされ、ロール紙Pから引き出された部分に対して印刷が行われる。なお、以下の説明では、まずサーマルプリンタ1にセット可能な最大幅(例えば、4インチ幅)のロール紙Pがセットされている状態について説明する。
【0021】
サーマルプリンタ1は、開口部3a(図2参照)を有するケーシング3と、ケーシング3に回動可能に支持され、ケーシング3の開口部3aを開閉するペーパーカバー20と、により外観構成されている。また、サーマルプリンタ1には、ロール紙収容部21、及び印刷モジュール22が内装されている。
【0022】
ケーシング3は、ポリカーボネート等のプラスチックや金属材料からなり、その前部は上壁10を有する略直方体状に形成される一方、後部は上方に向けて開口する箱型形状に形成されている。ケーシング3の上壁10には、サーマルプリンタ1の各種操作を行う操作部14が配置されている。操作部14は、電源スイッチやFEEDスイッチ等の各種機能スイッチ15が配置されるとともに、機能スイッチ15に隣接して電源スイッチのON/OFFの情報を知らせるPOWERランプや、サーマルプリンタ1のエラー等を知らせるERRORランプ等の各種ランプ16が配置されている。また、ケーシング3の上壁10と側壁12との間には、ペーパーカバー20のオープンボタン18が設けられている。
【0023】
ペーパーカバー20は、ポリカーボネート等のプラスチックからなり、その後端で図示しないヒンジシャフトによりケーシング3に対して回動可能に支持されるとともに、前端が図示しない係止部によりケーシング3に係止可能に構成されている。そして、上述したケーシング3のオープンボタン18を押下することにより、ケーシング3とペーパーカバー20との係止が解除され、ペーパーカバー20が閉位置(図1参照)から開位置(図2参照)へ開閉可能に構成されている。また、ペーパーカバー20の閉位置において、ペーパーカバー20の前端縁とケーシング3の上壁10における後端縁との間には、記録紙P1の幅方向に沿って間隙を有しており、この間隙が印刷された記録紙P1が排出される排出口19(図1参照)を構成している。
【0024】
図2に示すように、ロール紙収容部21は、ケーシング3の後部における開口部3a内に形成されている。具体的に、ロール紙収容部21は、ロール紙Pを保持するガイドプレート23を備え、このガイドプレート23とペーパーカバー20の内面との間でロール紙Pを覆うように保持している。ガイドプレート23は、ケーシング3の内側に設けられた断面弧状の部材であり、その一端が上述したペーパーカバー20の後端側まで延出するとともに、他端が印刷モジュール22に近接する位置まで延出している。つまり、ガイドプレート23には、その内周面にロール紙Pの外周面が接触した状態で保持されており、ロール紙Pから引き出された記録紙P1を印刷モジュール22まで案内している。
【0025】
図3は、印刷モジュールの斜視図である。
図2,3に示すように、印刷モジュール22は、ケーシング3の上壁10における後端縁に設けられた本体ユニット24と、ペーパーカバー20の前端縁に設けられ、本体ユニット24に対して着脱可能に組み合わされるプラテンユニット25と、印刷モジュール22で印刷された記録紙P1を切断する切断ユニット26と、で構成されている。
【0026】
図3に示すように、本体ユニット24は、本体フレーム31と、本体フレーム31に支持されたヘッド支持体32と、ヘッド支持体32に貼付固定されたサーマルヘッド33と、本体フレーム31に対してプラテンユニット25の後述するプラテンローラ34を回転可能に保持する一対のロックアーム35と、を備えている。
【0027】
本体フレーム31は、左右方向に延在する底壁部31aと、底壁部31aの左右方向両端部から上方に向けて立設された一対の側壁部31bと、を有する板状の部材である。底壁部31aの後端縁には、下方に向けて屈曲形成されたガイド部31cが形成されている。このガイド部31cは、上述したガイドプレート23から案内される記録紙P1を、サーマルヘッド33とプラテンローラ34との間(搬送方向の下流側)に向けて導くためのものである。
【0028】
各側壁部31bの上端縁には、下方に向けて切り込まれたスリット31dが形成されており、ここにプラテンローラ34の両端部が入り込むようになっている。
【0029】
ヘッド支持体32は、左右方向を長手方向とした平板状の部材であり、側壁部31b間に配置されているとともに、その後面にサーマルヘッド33が貼付固定されている。また、ヘッド支持体32は、下端側が図示しないシャフトに回動可能に支持されている。シャフトは、軸方向の両端部が側壁部31bにそれぞれ固定され、これによりヘッド支持体32は、前後方向に向けてシャフト回りに回動するようになっている。また、ヘッド支持体32の上端部には、ヘッド支持体32の回動範囲を規制するためのストッパ37が形成されている。このストッパ37は、ヘッド支持体32における左右方向の外側に向けて延出するものであり、本体フレーム31の側壁部31bの上部に形成された凹部31e内を臨むように形成されている。そして、ストッパ37は、ヘッド支持体32の回動に伴って凹部31e内を移動し、凹部31eの両端面に接触可能に構成されている。そして、ストッパ37が凹部31eの端面に当接することで、ヘッド支持体32のそれ以上の回動を規制するようになっている。
【0030】
サーマルヘッド33は、印刷モジュール22内に搬送された記録紙P1に対して印刷を行うものであり、ヘッド支持体32に貼付固定された平面視(前後方向から見て)矩形状に形成されている。この場合、サーマルヘッド33は、ケーシング3の上壁10の内側であって、開口部3a内に露出するように配置されるとともに、その長手方向と記録紙P1の幅方向とが一致した状態で配置されている。また、サーマルヘッド33のヘッド面33aには左右方向に平行に且つライン状に並んだ多数の発熱素子41が配列されている。なお、ヘッド面33aとは、記録紙Pの印字面との対向面であり、このヘッド面33aと、プラテンローラ34の外周面との間で記録紙Pを挟持しうるようになっている。サーマルヘッド33の発熱素子41は、図示しない制御部からの信号に基づいて、それぞれ発熱するように制御されており、発熱素子41の発熱を制御することで各種の文字や図形等を記録紙P1の印字面へ印刷することが可能となっている。
【0031】
図2,3に示すように、プラテンユニット25は、ペーパーカバー20の前端縁に設けられ、ペーパーカバー20の開閉に伴って本体フレーム31に着脱可能に構成されたプラテンローラ34を備えている。プラテンローラ34は、ペーパーカバー20の閉位置において、ロール紙Pから引き出された記録紙P1を間に挟んだ状態で、サーマルヘッド33に対してその周面が接触するように設けられている。具体的に、プラテンローラ34は、ペーパーカバー20に対して回転可能に支持されるローラシャフト(不図示)と、このローラシャフトに外装されたゴムからなるローラ本体34aと、を備えている。
【0032】
ローラシャフトの両端部には、軸受け34b(図2参照)が装着されており、側壁部31aのスリット31dとロックアーム35との間で、軸受34bが保持されることによりプラテンローラ34が中心軸回りに回転可能に、且つ本体フレーム31に着脱可能に保持される。また、プラテンローラ34の軸方向一端には図示しない従動ギアが固定されており、プラテンローラ34が一対の側壁部31bに保持されたときに、本体フレーム31側に取り付けられた歯車伝達機構42に噛合するようになっている。この歯車伝達機構42は、モータ等の駆動手段43に接続されており、駆動手段43からの回転駆動力を従動ギアに伝達している。これによりプラテンローラ34は、一対の側壁部31bに支持された状態で回転し、記録紙P1を送り出すことができる。なお、プラテンローラ34は、ペーパーカバー20の開操作に伴って本体ユニット24(スリット31d及びロックアーム35)から分離することで、組み合わせが解除されるようになっている。
【0033】
上述した本体ユニット24において、ヘッド支持体32の前方には、ヘッド支持体32と略平行に延在する平板状の弾性部材支持板44が配置されている。そして、ヘッド支持体32と弾性部材支持板44との間には、左右方向に沿って複数(例えば、4つ)の弾性部材45が介装されており、弾性部材支持板44とヘッド支持体32とを互いに離間させる方向に向けて付勢している。すなわち、弾性部材45は、ヘッド支持体32をプラテンローラ34側に向けて常に押圧するように構成されている。また、各弾性部材45のうち、両側2つの弾性部材45は、内側2つの弾性部材45に比べてバネ定数が小さく設定されている。
【0034】
上述したロックアーム35は、上述した弾性部材支持板44の左右方向における両端部から後方に向けて、一体的に延出する部材であり、基端側(前端側)に形成されたアーム部35aと、先端側(後端側)に形成されたフック部35bと、を有している。
アーム部35aは、ヘッド支持体32が間に配置されるように弾性部材支持板44の両端部から後方に向けて延在するとともに、上述したシャフトに回動可能に支持されている。したがって、弾性部材支持板44及びロックアーム35は、前後方向に向けてシャフト回りに回動可能に構成されている。また、上述した弾性部材支持板44及びロックアーム35は、回動時に弾性部材支持板44が本体フレーム31に当接することで、弾性部材支持板44及びロックアーム35のそれ以上の回動が規制されている。
【0035】
フック部35bは、アーム部35aの先端側からプラテンローラ34の軸受け34bの外周面を抱え込むように延設されている。フック部35bの内周縁には、プラテンローラ34の軸受け34bの外周面を支持する凹部35cが形成されており、この凹部35cと側壁部31bのスリット31dとの間でプラテンローラ34の軸受け34bを保持するようになっている。
【0036】
このように、一対のロックアーム35は、弾性部材支持板44に一体的に形成され、この弾性部材支持板44とヘッド支持体32とは、弾性部材45によって互いに反発する方向に向けて付勢されているので、ロックアーム35は、フック部35bの凹部35cとスリット31dとの間にプラテンローラ34の軸受け34bを挟み込んで、プラテンローラ34を回転可能に保持できるようになっている。
【0037】
図2に示すように、切断ユニット26は、記録紙P1の搬送方向におけるプラテンローラ34よりも下流側であって、ペーパーカバー20の前端縁に一体形成された第1切断刃26aと、サーマルヘッド33よりも下流側であって、ケーシング3の上壁10における後端縁に一体形成された第2切断刃26bとで構成されている。そして、サーマルヘッド33を通過した記録紙P1、すなわち印刷された記録紙P1は、第1切断刃26aと第2切断刃26bとの間に形成された排出口19(図1参照)から送り出され、これら第1切断刃26aまたは第2切断刃26bに接触させた状態で引き倒すことにより切断されるようになっている。
【0038】
(スライド機構)
図4は、図3の要部を拡大した平面図である。
ここで、図3,4に示すように、上述した弾性部材45のうち、左右方向の一端側(歯車伝達機構42側)の弾性部材(第1弾性部材)45aには、ヘッド支持体32と弾性部材支持板44との間で弾性部材45aを左右方向に沿ってスライド移動可能とするスライド機構51が設けられている。
スライド機構51は、弾性部材45aにおける伸縮方向の一端(後端)を支持する第1座面52、及び他端(前端)を支持する第2座面53と、ケーシング3の上壁10に形成されたスリット54と、を有している。
【0039】
第1座面52は、前方に向けて開放されたコ字状の部材であり、ヘッド支持体32、及び弾性部材45aの間に配置された底壁部55と、底壁部55の左右両側から前方に向けて立設された側壁部56と、を有している。
底壁部55は、ヘッド支持体32の前面上に配置され、弾性部材45aの一端を支持するとともに、ヘッド支持体32の前面上を左右方向に沿って摺動可能に構成されている。
各側壁部56は、弾性部材45aにおける左右方向の両側を取り囲むように形成され、弾性部材45aの伸縮方向における中間部分までそれぞれ延在している。
【0040】
第2座面53は、後方に向けて開放されたコ字状の部材であり、弾性部材支持板44、及び弾性部材45aの間に配置された底壁部57と、底壁部57の左右両側から後方に向けて立設された側壁部58と、を有している。
【0041】
底壁部57は、弾性部材支持板44の後面上に配置され、弾性部材45aの他端を支持するとともに、弾性部材支持板44の後面上を左右方向に沿って摺動可能に構成されている。底壁部57の上端部には、上方に向けて延在するレバー部材61が形成されている。レバー部材61は、左右方向の幅が底壁部57の幅と同等に形成され、その先端(上端)が上述したスリット54を通してケーシング3の上壁10から上方に向けて突出している(図1参照)。
各側壁部58は、弾性部材45aにおける左右方向の両側を取り囲むように形成され、弾性部材45aにおける伸縮方向の中間部分までそれぞれ延在している。この場合、各側壁部58の先端部(後端部)は、第1座面52の側壁部56の内側に位置している。したがって、弾性部材45aは、左右方向の両側が第1座面52、及び第2座面53の側壁部56,58によって伸縮方向の全域に亘って囲まれている。
【0042】
上述したスリット54は、ケーシング3の上壁10における弾性部材45aと重なる位置で上壁10を貫通するように形成され、弾性部材45a(スライド機構51)の位置決めを行うものである。具体的に、スリット54は、左右方向の外側に形成された第1位置決め孔62と、内側に形成された第2位置決め孔63と、各位置決め孔62,63同士を連通させるスライド通路64と、を備えている。
【0043】
第1位置決め孔62は、平面視(上下方向から見て)で矩形状に形成され、その内側に上述したレバー部材61が収まるようになっている。具体的に、第1位置決め孔62は、前端側が弾性部材支持板44と重なる位置まで延在するとともに、左右方向における幅がレバー部材61よりも僅かに大きく形成されている。そして、レバー部材61は、第1位置決め孔62の前端側に収まることで、第1位置決め孔62の内周縁に当接して、弾性部材45a(スライド機構51)の前方及び左右方向への移動が規制されている。これにより、弾性部材45aは、レバー部材61が第1位置決め孔62に位置決めされた第1位置において、各座面52,53を介してヘッド支持体32と弾性部材支持板44とを離間させる方向に付勢した状態で保持されている。
【0044】
第2位置決め孔63は、上述した第1位置決め孔62と同形同大に形成され、その内側に上述したレバー部材61が収まるようになっている。そして、レバー部材61は、第2位置決め孔63の前端側に収まることで、第2位置決め孔63の内周縁に当接して、弾性部材45a(スライド機構51)の前方及び左右方向への移動が規制されている。これにより、弾性部材45aは、レバー部材61が第2位置決め孔63に位置決めされた第2位置において、各座面52,53を介してヘッド支持体32と弾性部材支持板44とを離間させる方向に付勢した状態で保持されている。なお、第2位置は、第1位置よりも左右方向における内側に設定されている。なお、スライド機構51は、下端部が上述したシャフトに当接することで、上下方向の位置決めが行われている。
【0045】
スライド通路64は、上述した各位置決め孔62,63に比べて前後方向の幅を縮小して形成され、各位置決め孔62,63の後端部同士を連結して各位置決め孔62,63間を連通させている。この場合、レバー部材61の操作により第2座面53を後端側へ移動させて弾性部材45aを収縮させ、レバー部材61をスライド通路64と左右方向で重なる位置まで移動させることで、レバー部材61がスライド通路64内を通過可能になっている。そして、レバー部材61がスライド通路64内を通過することで、第1位置と、第1位置よりも内側に設定された第2位置と、との間を移動可能に構成されている。すなわち、レバー部材61の操作により、スライド機構51で支持している弾性部材45aが、第1位置と第2位置との間を左右方向に沿ってスライド移動可能に構成されている。
【0046】
また、上述した第1座面52の底壁部55からは、後方に向けて延在するペーパーガイド66が第1座面52と一体的に形成されている。ペーパーガイド66は、ロール紙収容部21内に配置されたガイド本体67と、ガイド本体67、及び第1座面52を連結する連結部68と、を有している。
ガイド本体67は、半円板状の板材であり、その円弧部分がロール紙収容部21のガイドプレート23の内面に倣うように形成されている。そして、ガイド本体67と、ケーシング3における一方(オープンボタン18側)の側壁12と、の間にロール紙Pが収まるようになっている。これにより、ロール紙Pの幅方向(左右方向)における位置決めが可能となる。また、ガイド本体67の下端部には、ペーパーガイド66と、ガイドプレート23との位置決めを行う突起部69が形成されており、ガイドプレート23に形成された図示しない位置決め孔内に収まるようになっている。
【0047】
連結部68は、ガイド本体67の前端部から前方に向かって延在しており、上述したヘッド支持体32及びシャフトの下方を通って、第1座面52に連結されている。これにより、ガイド本体67は、スライド機構51のスライド移動に連動してロール紙収容部21内を左右方向に移動可能に構成されている。
【0048】
(サーマルプリンタの作動方法)
次に、上述したサーマルプリンタ1の作動方法について説明する。なお、以下の説明では、主としてサーマルプリンタ1にセット可能な最大幅(例えば、4インチ幅)のロール紙P(以下、第1ロール紙Pという)を印刷する第1ロール紙モードと、第1ロール紙Pよりも幅が狭い(例えば、3インチ幅)第2ロール紙P’(図8参照)を印刷する第2ロール紙モードと、各モード間の切替操作と、について説明する。また、以下の説明では、スライド機構51が第1位置に保持された状態から説明する。
【0049】
まず、図2に示すように、オープンボタン18を押下してペーパーカバー20を開けた後、第1ロール紙Pをセットする。具体的には、ロール紙収容部21内に向けて第1ロール紙Pを投げ込むようにセットする。これにより、第1ロール紙Pは、その外周面がロール紙収容部21のガイドプレート23の内周面に接触した状態で保持される。また、第1ロール紙Pは、幅方向の両側がケーシング3の一方の側壁12とペーパーガイド66のガイド本体67とに囲まれ、左右方向への移動が規制されている。そして、第1ロール紙Pから記録紙P1を引き出し、引き出した記録紙P1の先端をプラテンローラ34とサーマルヘッド33との間に接触させておく。その後、ペーパーカバー20を閉じることで、第1ロール紙Pのセットが完了する。
【0050】
そして、サーマルプリンタ1を作動させ、プラテンローラ34を回転させると、第1ロール紙Pから記録紙P1が引き出され、プラテンローラ34の周面とサーマルヘッド33との間に挟まれた状態で下流側、すなわち排出口19に向けて送り出される。これと同時に、多数の発熱素子41が適宜熱を発したサーマルヘッド33によって、送り出された記録紙P1に対して各種の文字や図形等を明瞭に印刷することができる。その後、排出口19から排出された記録紙P1を、切断ユニット26側に傾けて引張ることで、記録紙P1が切断される。その結果、第1ロール紙Pに巻回された記録紙P1を、レシート等として使用することができる。
【0051】
上述した第1ロール紙モードから第2ロール紙モードへと切り替える場合には、まずオープンボタン18を押下してペーパーカバー20を開けた後、ロール紙収容部21内からロール紙Pを取り出す。
その後、第1ロール紙Pよりも幅の狭い第2ロール紙P’(例えば、3インチ)を、上述した第1ロール紙モードと同様にロール紙収容部21内にセットする。この際、第2ロール紙P’における幅方向の一端側を、ケーシング3の一方の側壁12に合わせてセットする。
【0052】
ところで、サーマルプリンタ1で使用可能な最大幅の第1ロール紙Pよりも幅の狭い第2ロール紙P’を使用する場合に、ロール紙収容部21内における第2ロール紙P’の外側(幅方向の他端側とケーシング3の他方の側壁12との間)には、隙間が生じる。そして、この隙間ではサーマルヘッド33とプラテンローラ34との間に、記録紙P1’は存在せず、サーマルヘッド33とプラテンローラ34とが直接接触することとなる(図8中接触領域R)。
【0053】
図5〜8は、第1ロール紙モードから第2ロール紙モードへの切替操作を説明するための説明図であって、図5は図4に相当する拡大図、図6,7は図3に相当する斜視図、図8はケーシングの平面図である。
図5に示すように、レバー部材61を操作して、レバー部材61とスライド通路64とが左右方向から見て重なる位置までレバー部材61を後方に向けて移動させる(図5中矢印J1)。これにより、第2座面53が第1座面52に接近する方向に移動するとともに、弾性部材45aが収縮する。この時、第1座面52はヘッド支持体32に当接した状態で、第2座面53は弾性部材支持板44から離間した状態となっている。
この状態で、図5,6に示すように、レバー部材61を左右方向の内側に向けて操作する(図6中矢印J2)。すると、レバー部材61がスライド通路64内を通過することで、スライド機構51が内側に弾性部材45aを保持した状態で左右方向の内側(第2位置)に向けてスライド移動する。この場合、スライド機構51は、第1座面52の底壁部55がヘッド支持体32の前面上を摺動しながらスライド移動する。また、これに連動して、図8に示すように、ペーパーガイド66がロール紙収容部21内を左右方向の内側に向けて移動する。
【0054】
そして、図7に示すように、レバー部材61が第2位置決め孔63に到達した時点で、レバー部材61の操作を解除すると、弾性部材45aの付勢力により第2座面52が前方に向けて移動する(図7中矢印J3)。すると、第2座面52が弾性部材支持板44の後面に当接するとともに、第2座面53のレバー部材61が第2位置決め孔63の後端縁に当接する。これにより、スライド機構51が第2位置で保持される。すなわち、弾性部材45a及びペーパーガイド66が第1位置よりも内側に配置される。
以上により、第2ロール紙モードへの切替操作が終了する。その後、上述した第1ロール紙モードと同様の方法により第2ロール紙P’への印刷が行われる。
【0055】
このように、第1位置から第2位置へスライド機構51を移動させることで、弾性部材45aが左右方向において第2ロール紙P’寄りに配置されることになる。すなわち、弾性部材45aが、サーマルヘッド33とプラテンローラ34とが直接接触する接触領域Rを回避するように移動する。さらに、第1位置から第2位置へスライド機構51を移動させることで、ガイド本体67が第2ロール紙P’寄りに配置されることになる。そのため、ロール紙収容部21内の第2ロール紙P’は、幅方向の両側がケーシング3の一方の側壁12と、ガイド本体67とにそれぞれ囲まれ、左右方向への移動が規制される。
【0056】
なお、第2ロール紙モードから第1ロール紙モードへと切り替える場合には、上述した動作と逆の手順を行えばよい。すなわち、レバー部材61を操作して、後方に移動させた後、スライド通路64内を左右方向の外側に向けて移動させる。これにより、スライド機構51が弾性部材45aを保持した状態で左右方向の外側(第1位置)に向けてスライド移動する。そして、スライド機構51が第1位置決め孔62に到達した時点で、レバー部材61の操作を解除すると、弾性部材45aの付勢力により第2座面52が前方に向けて移動する。これにより、スライド機構51が第1位置で保持される。すなわち、弾性部材45a及びペーパーガイド66が第2位置よりも外側(ケーシング3における他方の側壁12寄り)に配置される。
以上により、第1ロール紙モードへの切替操作が終了する。
【0057】
このように、本実施形態では、ロール紙収容部21内に供給されるロール紙Pの幅に応じて、弾性部材45aを記録紙P1の幅方向に沿ってスライド移動可能に構成した。
この構成によれば、弾性部材45aにより付与される押圧力の作用点を左右方向に沿って可変することができる。すなわち、上述したように印刷可能な最大幅の第1ロール紙Pよりも幅の狭い第2ロール紙P’を使用する場合に、弾性部材45aを内側に移動させることで、弾性部材45aにより付与される押圧力の作用点を、接触領域Rを回避するように内側に設定できる。そのため、接触領域Rにおけるサーマルヘッド33とプラテンローラ34との接触圧(プラテン圧)を積極的に低減することが可能になり、サーマルヘッド33とプラテンローラ34とにおける摩擦負荷を低減できる。したがって、サーマルヘッド33とプラテンローラ34との磨耗によるダメージを低減した上で、幅の異なる複数種類のロール紙を同一の装置で取り扱うことができる。また、サーマルヘッド33とプラテンローラ34との間での磨耗によるダメージを低減できるので、装置の長寿命化を図ることができる。
さらに、従来のようにロール紙Pの幅に応じて複数種類のプラテンローラを別途用意する場合に比べて、装置コストの低下も図ることができる。
【0058】
また、左右方向に沿って配列された複数の弾性部材45のうち、最端の弾性部材45aのみをスライド移動可能に構成することで、各弾性部材45をスライド操作する場合に比べて操作性を向上させることができる。
さらに、弾性部材45aをスライド移動させるスライド機構51を設けることで、レバー部材61の操作により、ユーザー自身で間単に簡単に弾性部材45aをスライド移動させることができるため、操作性をより一層向上させることができる。
また、第1座面52、及び第2座面53により弾性部材45aにおける左右方向の両側を取り囲むことで、弾性部材45aの収縮時やスライド移動時等において、弾性部材45aが倒れ込むのを抑制できる。
さらに、第1位置決め孔62または第2位置決め孔63内でレバー部材61を保持可能に構成することで、スライド機構51の左右方向における位置決めを行うことができる。これにより、スライド機構51が左右方向にずれる等の虞がないので、装置の信頼性を向上させることができる。
【0059】
しかも、本実施形態では、スライド機構51に連動してペーパーガイド66がロール紙収容部21内をスライド移動可能に構成されているため、ロール紙Pの幅に応じてペーパーガイド66が移動することになる。そのため、ロール紙収容部21内でのロール紙Pの移動を規制することができる。
【0060】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、本実施形態では中空孔を有するように巻回されたロール紙を用いて説明したが、芯管に記録紙が巻回されたロール紙を用いてもよい。
また、上述した実施形態では、各弾性部材45のうち、最端の弾性部材45aをスライド移動可能に構成したが、これに限らず、任意の弾性部材45をスライド移動可能に構成しても構わない。
また、上述した実施形態では、位置決め孔62,63を左右方向に沿って2つ設け、幅の異なる2つのロール紙P,P’に応じて弾性部材45aを2段階にスライド移動させる場合について説明したが、これに限らず、位置決め孔を3つ以上設けて3段階以上スライド移動させても構わない。これにより、3種類以上の幅の異なるロール紙に対応することができる。
【0061】
また、上述した実施形態では、各位置決め孔62,63をそれぞれ同等の長さに形成したが、これに限らず、各位置決め孔62,63の長さをそれぞれ異ならせても構わない。
この場合、図9に示すように、第2位置決め孔63の長さを第1位置決め孔62の長さよりも長く形成することで、スライド機構51が第2位置決め孔63に保持された状態での弾性部材45aのストロークを長くすることができる。これにより、第2位置での弾性部材45aのばね圧を第1位置での弾性部材45aのばね圧に比べて低減することができるため、接触領域Rにおけるサーマルヘッド33とプラテンローラ34との接触圧をより積極的に低減することが可能になる。
さらに、上述した実施形態では、弾性部材支持板44を平板状に形成した場合について説明したが、これに限らず、弾性部材支持板44の左右方向における第2位置に対応する位置に前方に向けて窪んだ凹部を形成することで、第2位置での弾性部材45aのストロークを長くなるように構成しても構わない。
【0062】
さらに、上述した実施形態に加えて、図10に示すように、サーマルヘッド33(ヘッド支持体32)をプラテンローラ34から離間する方向に付勢する接触圧調整機構71を設けても構わない。接触圧調整機構71は、ヘッド支持体32における左右方向の一端側から側方に向けて延在する延在部72と、延在部72(ヘッド支持体32)を間に挟んで弾性部材45とは反対側に配置され、延在部72に対して接近または離間する方向に回動する回動部材73と、延在部72及び回動部材73の間に介装された弾性部材(第2弾性部材)74と、を備えている。
この構成によれば、第2ロール紙P’を使用する際に、回動部材73を延在部72に向けて回動させる。すると、弾性部材74が収縮することで、サーマルヘッド33(ヘッド支持体32)をプラテンローラ34から離間させる方向に押圧力が作用することになる。これにより、接触領域Rにおけるサーマルヘッド33とプラテンローラ34との接触圧をより積極的に低減することが可能になる。なお、第1ロール紙Pを使用する場合には、回動部材73を延在部72から離間させる方向に回動させ、弾性部材74を自然長の状態に保持しておくことで、弾性部材74からヘッド支持体32に付与される押圧力を解除できる。
【0063】
また、上述した実施形態では、スライド機構51(各座面52,53)の下端部がシャフトに当接することで、上下方向での位置決めを行う構成について説明したが、これに限られない。例えば、図11に示すように、ヘッド支持体32及び弾性部材支持板44に、それぞれ対向する方向に向けて突出するレール部81,82を左右方向に沿って形成する一方、スライド機構51の各座面52,53にレール部81,82をそれぞれ収容する収容溝83,84を形成する。この場合、スライド機構51をレール部81,82上にスライド移動させることで、スライド機構51の上下方向での位置決めを行うことができる。
【0064】
また、上述した実施形態では、第2座面53の底壁部57にレバー部材61を形成する構成としたが、これに限られない。例えば、図12に示すように、ガイド本体67の上面に沿って前後方向に沿ってスライド移動可能に形成されたスライド部材91を設け、このスライド部材91と第1座面52とを連結部92により連結することで、スライド部材91の操作により第1座面52を前後方向に沿って操作しても構わない。この場合、ガイド本体67に、一端が上面で開放され、他端が前方に向けて(印刷モジュール22に向けて)開放された溝93を形成し、この溝93内に連結部92を通すことで、スライド機構51における左右方向へのスライド移動に連動して、ガイド本体67をスライドさせることができる。なお、図12では、溝93が側方に向けて開放されているが、溝93を覆うようにプレート部材(不図示)を別体で設けても構わない。
【符号の説明】
【0065】
1…サーマルプリンタ 21…ロール紙収容部 33…サーマルヘッド 34…プラテンローラ 45…弾性部材 45a…弾性部材(第1弾性部材) 51…スライド機構 61…レバー部材 62…第1位置決め孔 63…第2位置決め孔 63…スライド通路 67…ペーパーガイド 74…弾性部材(第2弾性部材) P…第1ロール紙(ロール紙) P’…第2ロール紙(ロール紙) P1,P’…記録紙
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅の異なる複数種類のロール紙に対して印刷を行うサーマルプリンタであって、
多数の発熱素子を有し、前記ロール紙から引き出される記録紙の幅方向に沿って配置されたサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドに対向配置され、前記サーマルヘッドとの間に前記記録紙を挟んだ状態で回転することで、前記記録紙を送り出すプラテンローラと、
前記サーマルヘッドに対して前記プラテンローラの反対側に設けられ、前記サーマルヘッドを前記プラテンローラに向けて押圧する第1弾性部材と、を備え、
前記第1弾性部材は、供給される前記ロール紙の幅に応じて前記幅方向に沿ってスライド移動可能に構成されていることを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記第1弾性部材は、前記幅方向に沿って複数配列され、
複数の前記第1弾性部材のうち、配列方向の一端側の前記第1弾性部材のみがスライド移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1記載のプリンタ。
【請求項3】
前記第1弾性部材を支持するとともに、前記第1弾性部材のスライド移動を操作するレバー部材を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のプリンタ。
【請求項4】
前記幅方向に沿って延在するとともに、前記レバー部材が通過可能なスライド通路と、
前記スライド通路に連通するとともに、前記スライド通路に対して前記弾性部材の伸縮方向における長さが長く形成された位置決め孔と、を備え、
前記位置決め孔は、前記幅方向に沿って間隔を空けて複数設けられるとともに、それぞれ前記レバー部材を収容可能に構成されていることを特徴とする請求項3記載のプリンタ。
【請求項5】
前記複数の位置決め孔は、前記伸縮方向における長さがそれぞれ異なるように形成されていることを特徴とする請求項4記載のプリンタ。
【請求項6】
前記ロール紙を収容するロール紙収容部を有し、
前記ロール紙収容部内には、前記第1弾性部材のスライド移動に連動して前記ロール紙収容部内を前記幅方向に沿ってスライド移動可能に構成されたペーパーガイドが設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載のプリンタ。
【請求項7】
前記サーマルヘッドに対して前記第1弾性部材の反対側には、前記サーマルヘッドを前記プラテンローラから離間させる方向に付勢する第2弾性部材が設けられ、
前記第2弾性部材は、供給される前記ロール紙の幅に応じて付勢力を変更可能に構成されていることを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載のプリンタ。
【請求項1】
幅の異なる複数種類のロール紙に対して印刷を行うサーマルプリンタであって、
多数の発熱素子を有し、前記ロール紙から引き出される記録紙の幅方向に沿って配置されたサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドに対向配置され、前記サーマルヘッドとの間に前記記録紙を挟んだ状態で回転することで、前記記録紙を送り出すプラテンローラと、
前記サーマルヘッドに対して前記プラテンローラの反対側に設けられ、前記サーマルヘッドを前記プラテンローラに向けて押圧する第1弾性部材と、を備え、
前記第1弾性部材は、供給される前記ロール紙の幅に応じて前記幅方向に沿ってスライド移動可能に構成されていることを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記第1弾性部材は、前記幅方向に沿って複数配列され、
複数の前記第1弾性部材のうち、配列方向の一端側の前記第1弾性部材のみがスライド移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1記載のプリンタ。
【請求項3】
前記第1弾性部材を支持するとともに、前記第1弾性部材のスライド移動を操作するレバー部材を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のプリンタ。
【請求項4】
前記幅方向に沿って延在するとともに、前記レバー部材が通過可能なスライド通路と、
前記スライド通路に連通するとともに、前記スライド通路に対して前記弾性部材の伸縮方向における長さが長く形成された位置決め孔と、を備え、
前記位置決め孔は、前記幅方向に沿って間隔を空けて複数設けられるとともに、それぞれ前記レバー部材を収容可能に構成されていることを特徴とする請求項3記載のプリンタ。
【請求項5】
前記複数の位置決め孔は、前記伸縮方向における長さがそれぞれ異なるように形成されていることを特徴とする請求項4記載のプリンタ。
【請求項6】
前記ロール紙を収容するロール紙収容部を有し、
前記ロール紙収容部内には、前記第1弾性部材のスライド移動に連動して前記ロール紙収容部内を前記幅方向に沿ってスライド移動可能に構成されたペーパーガイドが設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載のプリンタ。
【請求項7】
前記サーマルヘッドに対して前記第1弾性部材の反対側には、前記サーマルヘッドを前記プラテンローラから離間させる方向に付勢する第2弾性部材が設けられ、
前記第2弾性部材は、供給される前記ロール紙の幅に応じて付勢力を変更可能に構成されていることを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載のプリンタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−200867(P2012−200867A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64295(P2011−64295)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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