説明

プリンタ

【課題】 熱可逆性記録媒体であるカードに対してできるだけ多量の目視可能な可変情報の書き換えを可能にするプリンタを提供する。
【解決手段】 熱エネルギーの印加と冷却で発色及び消色する成分を表裏両面に塗工されたリライトカードに対して熱可逆記録方式により印刷するプリンタ煮おいて,リライトカードを搬送路に沿って搬送する搬送手段と,搬送されるリライトカードに対して前記成分の発色及び消色が可能となる熱エネルギーを印加できるサーマルヘッドと,搬送手段及びサーマルヘッドのそれぞれに対して搬送制御及び熱エネルギー印加制御を行う制御手段とを備えた。サーマルヘッドは搬送路を搬送されるリライトカードの表と裏に対応するように搬送路を挟んで配置され,制御手段は上位装置から与えられる印刷情報を基にサーマルヘッドにより当該リライトカードの表裏両面に書き換えを行うものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,書き換えを繰り返し行うことができるリライタブルカード(以下,リライトカードという。)に対して熱可逆記録方式により印刷するプリンタ及びその使用方法に関する。
【0002】
近年,文字や数字等の情報を繰り返し書き換え(印字・消去)が可能なリライトカードが,ポイントカード,定期券,プリペイドカード,レジャーカード,診察券等の用途に広く用いられている。リライトカードに熱可逆性記録層を備えたものを用い,上記情報を熱可逆記録方式により書き換えるプリンタも知られている(例えば,特許文献1,2,3参照。)。
【0003】
従来の上記リライトカードは,その表面にカード発行者の名称や役務名等の発行者情報が目視可能に印刷されているとともに,カード利用者(顧客)の氏名,生年月日,家族構成等の書き換えのない又は少ない顧客情報が目視不可能に記録され,裏面には顧客の利用履歴,取引内容又は現状,獲得ポイント等の履歴情報その他の可変情報が目視可能に印刷される。そして,発行者情報や顧客情報等の基本情報の記録には,磁気ストライプ又は全面磁気面に記録する磁気記録方式や接触式又は非接触式ICカードに対するデータ記録方式が採用され,可変情報はカードの裏面に設けられた熱可逆性記録層に加熱により消色及び発色を繰り返し行うことができる熱可逆記録方式が採用されている(例えば,特許文献4〜6参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3567241号公報
【特許文献2】特開2005−186495号公報
【特許文献3】特開2004−322348号公報
【特許文献4】特開2000−94866号公報
【特許文献5】特開2000−251042号公報
【特許文献6】特開2002−103654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って,従来のリライトカードは,少なくとも一面にプリンタの磁気ヘッドと接触する磁気記録層(磁気ストライプ又は全面磁気面)を有するので,その面には熱可逆性記録層を設けることができないため,リライト方式として,先端部に複数個の発熱素子を一列に配置したサーマルヘッドを用いて,個々の発熱素子から印加する熱エネルギーを制御することにより画像を消去し・形成する熱可逆記録方式を適用する場合は,画像の消去又は形成が可能な面がカードの片面に限定されるから,記録可能な情報量に限りがあった。また,磁気記録層の記録容量も少ない。従って,従来のリライトカードには提供可能な情報量に限界があるという問題があった。
【0006】
また,情報を熱可逆記録方式により書き換える従来のプリンタでは,目視可能な可変情報はサーマルヘッドで印刷し,その消去は消去専用のセラミックヒータやヒートローラで行っている。そして,磁気ストライプ又は全面磁気面に対する基本情報の読取・記録のための磁気ヘッドが備えられている。従って,リライトカードの情報読取から書き換えまでの処理に長い搬送路を必要とするので,プリンタの小型化が困難であるという問題があった。
【0007】
本発明は,上記の問題点に鑑みてなされたものであり,(1)第一の課題は,加熱により発色及び消色を繰り返し行うことができる熱可逆性記録媒体を用いるプリンタにおいて,熱可逆性記録媒体に対してできるだけ多量の目視可能な可変情報の書き換えを可能にすることにある。(2)第二の課題は,上記プリンタにおいて,処理時間の短縮が図れ,装置の小型化を可能にすることにある。(3)第三の課題は,上記プリンタにおいて,可変情報を写真と変わらない程度にできるだけ高品質に書き換えることを可能にすることにある。(4)そして,第四の課題は,書き換えを無駄な動作が発生しないようスループットの向上を図る上記プリンタの使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は,上記第一の課題を解決するため,熱エネルギーの印加と冷却で発色及び消色する成分を表裏両面に塗工されたリライトカードに対して熱可逆記録方式により印刷するプリンタであって,リライトカードを搬送路に沿って搬送する搬送手段と,搬送されるリライトカードに対して前記成分の発色及び消色が可能となる熱エネルギーを印加できるサーマルヘッドと,前記搬送手段及びサーマルヘッドのそれぞれに対して搬送制御及び熱エネルギー印加制御を行う制御手段とを備えてなり,前記サーマルヘッドは前記搬送路を搬送されるリライトカードの表と裏に対応するように前記搬送路を挟んで配置され,前記制御手段は上位装置から与えられる印刷情報を基に前記サーマルヘッドにより当該リライトカードに書き換えを行うものであることを特徴としている(請求項1)。
【0009】
上記の発明特定事項を項を分けて説明すると,まず,(ァ)本発明は,熱エネルギーの印加と冷却で発色及び消色する成分を表裏両面に塗工されたリライトカードを用いる。リライトカードは,支持体の表裏両面に熱エネルギーの印加と冷却で発色及び消色する成分,すなわち,ロイコ染料と顕色剤の混合材料を塗工して熱可逆性記録層を備えたものである。無色のロイコ染料と顕色剤とがそれぞれ分離した状態で消色状態にあり,所定量の熱エネルギーが印加されて第一の特定温度(170〜180℃)になると,分子間の凝集力を高める性質及びロイコ染料を発色させる性質を有する顕色剤とロイコ染料とが溶融してロイコ染料が発色し,この状態で急激に冷却されると両者が混ざり合ったまま発色状態を保つ。また,発色状態で溶融され結晶化された顕色剤とロイコ染料は,両者の融点以下の第二の特定温度(120〜140℃)での加熱により分離され,冷却されることによりそれぞれが結晶化してロイコ染料が元の無色状態に戻る。
リライトカードの支持体は,PVC又はPETであり,その熱膨張率と熱可逆性記録層の熱膨張率は異なる。従って,支持体の片面のみに熱可逆性記録層を設ける場合は,印刷中に加熱により応力が発生してリライトカードがカールする虞があるが,本発明において用いるリライトカードは支持体の両面に熱可逆性記録層が設けられるので,リライトカードのカールが有効に防止される。
【0010】
(イ)また,本発明のプリンタは,リライトカードに対して熱エネルギーを印加して熱可逆性記録層に発色と消色を同時に行わせる,つまり,画像形成手段と画像消去手段を兼ねるサーマルヘッドを用いる。本発明は,一つのサーマルヘッドで画像形成手段と画像消去手段を兼ねる点が,画像形成手段として一つのサーマルヘッドを用い,画像消去手段としてセラミックヒータやヒートローラを用いる従来技術と異なる。
【0011】
本発明で用いるサーマルヘッドは,先端部にライン状に配置された多数の微小な発熱素子と,上位装置から与えられる印刷情報を基にそれぞれの発熱素子の発熱制御,すなわち加熱と冷却を制御する制御回路とを有する。サーマルヘッドは,一般的な特性として電圧印加により発熱素子が急加熱し,電圧印加の遮断により発熱素子が急冷する。従って,上記印刷情報に基づいて発熱制御することによりリライトカードの熱可逆性記録層に所望の文字,数字等の画像を印刷することができる。
【0012】
(ウ)また,本発明のプリンタは,二つのサーマルヘッドをリライトカードの搬送路を挟んで取り付けてある。一つのサーマルヘッドは,リライトカードの一つの面に対する基本情報と可変情報の一方又は双方の書き換えに用いられ,もう一つのサーマルヘッドは,同リライトカードの他の面に対する別の可変情報の書き換えに用いられる。換言すると,本発明は,一つのリライトカードの表裏両面に二つのサーマルヘッドを用いて,画像の印刷・消去を繰り返し行うことを特徴としている。
【0013】
基本情報や顧客情報の全部又は一部に非可変情報が含まれる場合は,リライトカードにその非可変情報がプレ印刷されたものを用い,本発明のプリンタでは,二つのサーマルヘッドにより可変情報のみを記録し又は書き換えを行うこともできるが,発行者情報や顧客情報に非可変情報が含まれる場合も,非可変情報がプレ印刷されていないブランクのリライトカードに非可変情報を可変情報とともに二つのサーマルヘッドにより記録し又は書き換えを行うこともできる。
【0014】
本発明は,上記第二の課題を解決するため,上記プリンタにおいて,リライトカードの基本情報や顧客情報をQRコード等の二次元コードで表記し,取込み方向に搬送されるリライトカードに対して二次元コードの読取を行う位置及び情報読取後の表面の書き換えを行う位置にそれぞれ二次元コードを読み取る二次元コード読取手段と第1サーマルヘッドとを設け,排出方向に搬送されるリライトカードに対して裏面の書き換えを行う位置に第2サーマルヘッドを設け,制御手段は前記二次元コード読取手段により読み取った情報と上位装置から与えられる印刷情報を基に取込み方向に搬送されるリライトカードに対して第1サーマルヘッドにより書き換えを行い,かつ,排出方向に搬送されるリライトカードに対して第2サーマルヘッドにより書き換えを行うことを特徴としている(請求項2)。
【0015】
二次元コードには,バーコードとQRコードがあるが,QRコードは記録密度が高く,印刷面積の縮小化が可能であるので,基本情報や顧客情報をQRコードで表記し,二次元コード読取手段にQRコードリーダー(以下,QRリーダーという。)を用いることが望ましい。本発明は,二次元コードにはQRコードを用い,二次元コード読取手段にはラインセンサであるQRリーダーを用いることを特徴としている(請求項3)。
【0016】
本発明は,上記第三の課題を解決するため,上記プリンタにおいて,サーマルヘッドがリライトカードに印刷中(発色及び消色中)は,リライトカードの搬送をサーマルヘッドが圧接しているプラテンローラの搬送力のみによって行うとともに,その前後の搬送ローラのニップを開放して搬送ローラが印刷中のリライトカードに衝撃を加えないようにしたことを特徴としている(請求項4)。
【0017】
本発明は,また,上記第三の課題を解決するため,サーマルヘッドに,先端部にライン状に配置された多数の微小な発熱素子と,上位装置から与えられる印刷情報を基にそれぞれの発熱素子の加熱と冷却を制御する制御回路とを有し,発熱素子のピッチが300〜500dpi程度のものを用い,リライトカードに印刷中はサーマルヘッドの前後の搬送ローラのニップを開放して印刷中のリライトカードに搬送ローラが衝撃を加えないようにするとともに,サーマルヘッドをプラテンローラに圧接させてリライトカードの搬送をプラテンローラのみによって行い,その印刷を終了したときは前記サーマルヘッドを前記プラテンローラから離間するとともに,その前後の搬送ローラのニップを閉じて搬送ローラにより搬送することを特徴としている(請求項5)。
【0018】
さらに,本発明は,上記第三の課題を解決するため,搬送ローラのピンチローラをフィードローラに対して昇降させると同時にラインセンサを昇降させる第1昇降手段と,第1サーマルヘッドを昇降させる第2昇降手段と,第2サーマルヘッドを昇降させる第3昇降手段とを備え,併せて,カード挿入時から熱可逆記録による印刷を終了してカード排出時までの間に上記各昇降手段をホームポジション(以下,HPという。)の位置に保持するHPモード,各昇降手段を第1サーマルヘッドがカードの上面(表面)に印刷する時の位置に保持する上面リライトモード,各昇降手段を第2サーマルヘッドがカードの下面(裏面)に印刷する時の位置に保持する下面リライトモードに切り替えるためのモード切換機構を備えていることを特徴としている(請求項6)。
【0019】
そして,本発明は,上記第四の課題を解決するため,第一の特定温度で消色し,その第一の特定温度よりも高い第二の特定温度範囲で発色する熱可逆記録材料を表裏両面に塗工したリライトカードを用い,微小な発熱素子を一列に300〜500dpiの密度で配置した二つのサーマルヘッドを搬送路を挟んで設置し,上位装置から各サーマルヘッドに与える印刷情報に前記サーマルヘッドの発熱素子ごとに階調指定信号を付加することにより,カードの少なくとも片面に所定の階調度を有する解像度が300〜500dpiの画像を形成することを特徴としている(請求項7)。
【0020】
本発明に係るプリンタの使用方法は,リライトカードを挿入兼排出口から第2のサーマルヘッドの後方までの間の搬送路を搬送手段により往復搬送する工程,取込方向に搬送されるリライトカードに記録されている二次元コードを二次元コード読取手段により読み取る工程,取込方向に搬送されるリライトカードの表面に対して二次元コードの読取により得られた基本情報と上位装置から与えられる印刷情報を基に第1サーマルヘッドにより二次元コードを含む基本情報を印刷する工程,排出方向に搬送されるリライトカードの裏面に対して前記上位装置から与えられる印刷情報を基に第2サーマルヘッドにより印刷をする工程,及び前記第1サーマルヘッドにより印刷された二次元コードを読み取ってベリファイチェックを行う工程を含むことを特徴としている(請求項8)。すなわち,カードの取込方向の搬送の際に二次元コードの読取と第1サーマルヘッドによるカード表面の書き換えを行い,カードの排出方向の搬送の際に第2サーマルヘッドによるカード裏面の書き換えと二次元コードのチェックを行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明によれば,サーマルヘッドは搬送路を搬送されるリライトカードの表と裏に対応するように搬送路を挟んで配置され,上位装置から与えられる印刷情報を基に書き換えが必要な場合に前記サーマルヘッドにより当該リライトカードに書き換えを行うので,可及的に多くの目視可能な可変情報の書き換えが可能になる。また,リライトカードの表裏両面に上下のサーマルヘッドにより書き換えを行うので,搬送距離及び処理時間の短縮すなわちスループットの向上が図れ,装置の小型化が可能である。さらに,リライトカードは支持体の両面に熱エネルギーの印加と冷却で発色及び消色する成分を塗工するだけで製作され,磁気記録層を設ける必要がないので,カード製造コストが安価である。
【0022】
請求項2の発明によれば,取込み方向に搬送されるリライトカードに対して二次元コードの読取を行う二次元コード読取手段と,読取後のリライトカードの表面への二次元コード及び可変情報の書き換えを行う一つのサーマルヘッドとを設け,排出方向に搬送されるリライトカードに対して裏面への可変情報の書き換えを行うもう一つのサーマルヘッドとを設けたので,リライトカードに記録されている基本情報と上位装置から与えられる印刷情報に基づいて,リライトカードの表面に新たな二次元コード(基本情報や顧客情報)及び可変情報を,裏面に新たな可変情報を印刷することができる。
【0023】
請求項3の発明によれば,基本情報や顧客情報をQRコードで表記し,QRリーダーで読み取るようにしているので,リライトカードに磁気記録面を設けることが不要になる。従って,リライトカードの表裏両面への熱可逆方式による印刷が可能になった。また,基本情報や顧客情報の印刷所要面積が縮小し,その分,記録可能な可変情報量が増大する。
【0024】
請求項4の発明によれば,リライトカードに印刷中(発色及び消色中)は,リライトカードの搬送をサマーヘッドに押圧されているプラテンローラの搬送力のみによって行うとともに,その前後の搬送ローラを開放して印刷中のリライトカードに搬送ローラから衝撃が加わらないので,写真と変わらない高解像度の画像をも高品質に書き換えることが可能になる。
【0025】
請求項5の発明によれば,写真と変わらない高解像度の画像をも高品質に書き換えることが可能になる。
【0026】
請求項6の発明によれば,写真と変わらない高解像度の画像を高品質に書き換えることが可能になる。
【0027】
請求項7の発明によれば,所望の階調度の画像を高解像度,高品質に書き換えることが可能になる。
【0028】
請求項8の発明によれば,カードの取込方向の搬送の際に二次元コードの読取とカード表面の書き換えを行い,カードの排出方向の搬送の際にカード裏面の書き換えと二次元コードのチェックを行うので,書き換えを無駄な動作が発生しないようスループットの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
続いて,本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【図1】本発明に係るプリンタの構成を概括的に示すブロック図である。
【図2】図1のプリンタの筐体を取り除いて具体的構成を示す斜視図である。
【図3】図2のプリンタの正面図である。
【図4】同じく平面図である。
【図5】同じく右側面図である。
【図6】図2のプリンタの上フレームを開けた状態を示す図であり,(a)は斜視図,(b)は左側面図である。
【図7】主として搬送手段の構成,カードセンサ,QRリーダー及びサーマルヘッドの配置位置を示す側面図である。
【図8】モード切替機構の全体構成を説明する平面図である。
【図9】下フレームに取付けられている部材を示す斜視図であり,(a)は左側手前から見た斜視図,(b)は(a)の反対側から見た斜視図である。
【図10】図9の下フレームを除去した状態を示す図であり,(a)は斜視図,(b)は平面図である。
【図11】上フレームの底面図である。
【図12】図11の矢印V1方向から見た斜視図である。
【図13】第1昇降手段,第2昇降手段,第3昇降手段及びモード切替機構を抽出して示す平面図である。
【図14】図13の矢印V2方向から見た斜視図である。
【図15】全ての昇降手段の全体構成及び動作を説明する側面図である。
【図16】第1昇降手段の構成及び動作を説明する側面図である。
【図17】第2昇降手段と第3昇降手段の構成及び動作を説明する側面図である。
【図18A】モード切替の動作遷移の中のHPモードにおけるカムの角度及び各要素の位置関係を示す図である。
【図18B】モード切替の動作遷移の中の上面ライトモードにおけるカムの角度及び各要素の位置関係を示す図である。
【図18C】モード切替の動作遷移の中の下面ライトモードにおけるカムの角度及び各要素の位置関係を示す図である。
【図19】プリンタのイニシャル動作のフローチャートである。
【図20】図19のフローチャート中の排紙動作の詳細を示すフローチャートである。
【図21】図20のフローチャート中のHP移行動作の詳細を示すフローチャートである。
【図22】プリンタへのカード挿入から抜取りまでの間の一連動作のフローチャートである。
【図23】図22のフローチャート中の給紙動作の詳細を示すフローチャートである。
【図24】図22のフローチャート中のQRコード読取動作の詳細を示すフローチャートである。
【図25】図22のフローチャート中の上面リライト移行動作の詳細を示すフローチャートである。
【図26】図22のフローチャート中の上面リライト動作の詳細を示すフローチャートである。
【図27】図22のフローチャート中の下面リライト移行動作の詳細を示すフローチャートである。
【図28】図22のフローチャート中の下面リライト動作の詳細を示すフローチャートである。
【図29】図22のフローチャート中のQRベリファイチェック動作の詳細を示すフローチャートである。
【図30】実施の形態の一例における一連動作のタイムチャートである。
【図31】カードの搬送路寸法,カードの流れ及びリライト可能範囲の一例を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[全体構成]
本発明に係るプリンタAは,図1に示すように,外装及び内部保護を行う筐体Hの中に,図2〜図7に示すように,取付基部となる上下のフレーム1,2が設けられている。フレーム1,2は,その後部に貫通された軸11により,上フレーム2をその軸11周りに回転して前部を開閉可能に結合されている。そして,上フレーム2を閉じた時は,下フレーム1の前部に設けた軸12の両端部に回転可能に取付けたフック13を上フレーム2の両側に突設したピン13に係合して閉状態に維持することができる。閉状態のフレーム1,2の前端面の間に横長の開口が形成される。この開口は筐体Hの前面に設けてある挿入兼排出口3に連通している。
【0031】
上記フレーム1,2には,挿入されるリライトカード(以下,単にカードという。)Cを所定の搬送路に沿って所定の位置まで往復搬送する搬送手段100と,挿入されたカードの有無及び搬送されるカードが所定の位置に到達したことを検知する検知手段200a,200b,200cと,搬送されるカードに記録されている二次元コードを読み取る二次元コード読取手段300と,搬送路を挟んで配置され,搬送されるカードCに対して熱可逆記録方式により書き換えを行う二つのサーマルヘッド400a,400bと,検知手段200a〜200c,二次元コード読取手段300及び上位装置(図示省略)からの信号又は印刷情報に基づいて搬送手段100に対する搬送制御及びサーマルヘッド400a,400bに対する発熱制御(熱可逆記録制御)を行う制御手段500とが,最小限の構成要素として設けられている。
【0032】
好ましい実施の形態においては,上記構成要素に加えて,二つのサーマルヘッドによる印刷品質を向上させるための昇降手段600(図1には示されていない。)とモード切替機構700とを備えている。モード切替機構700を備えた場合は,制御手段500は,このモード切替機構700に対するモード切替制御をも行う。
図1において,M1は搬送手段100の構成要素の一つである搬送駆動モータであり,M2はモード切替機構700の構成要素の一つであるモードモータである。
以下に,各構成要素について順次詳細に説明する。
【0033】
[搬送手段]
カードの搬送については,筐体Hの正面に設けられた挿入口から挿入されたカードを一方向に搬送し,その間に画像形成処理を行い,筐体Hの背面に設けられた排出口から抜取る1パス方式も可能であるが,本実施例は,プリンタAの正面側でのカードの挿入及び抜取りを可能にするため,筐体Hの正面に設けられた挿入兼排出口3から挿入されたカードを往復搬送し,その間に画像形成処理を行った後,挿入兼排出口3から抜取る往復搬送方式を採っている。
【0034】
下フレーム1の上部には,左右の側板1a,1bの間において,挿入兼排出口3から取込方向に所定間隔をもってフィードローラ101f1〜101f3が備えられ,上フレーム2の下部にはフィードローラ101f1〜101f3のそれぞれに対向してピンチローラ101p1〜101p3が備えられている。それぞれ対向するフィードローラ101f1〜101f3とピンチローラ101p1〜101p3とで搬送ローラ101R1〜101R3が構成されている。
【0035】
フィードローラ101f1〜101f3の各軸が下フレーム1の一方の側板,例えば右側の側板1aの外側まで延伸された部分にシンクロプーリ102p1〜102p3が固着され,これらのシンクロプーリ102p1〜102p3にタイミングベルト103が張設されている。
【0036】
図7の104aは,後述される第1サーマルヘッド400aに対応して下フレーム1の左右の側板1a,1bの間において搬送面の下側に設けられた第1プラテンローラであり,その第1プラテンローラ104aの軸の右側側板1aの外側まで延伸された部分にもシンクロプーリ102p4が固着され,そのシンクロプーリ102p4にも前記タイミングベルト103が架け回されている。
【0037】
搬送手段の重要な構成要素である搬送モータM1の回転駆動力を搬送ローラ101R1〜101R3に与えるため,減速手段と伝動手段を兼ねるギヤ列106a〜106eが下フレーム1の左右両側の側板1a,1bのいずれか一方に設けられ,そのギヤ列の最終段のギヤ106fが第1プラテンローラ104aの軸上に固着されたギヤ105aに噛合されている。
【0038】
図7の104bは,後述される第2サーマルヘッドPヘッドに対応して上フレーム2の左右の側板2a,2bの間において搬送面の上側に設けられた第2プラテンローラであり,その第2プラテンローラ104bの軸のギヤ列106a〜106eと同一側の側板2a又は2bの外側まで延伸された部分にギヤ105bが固着され,そのギヤ105bはギヤ105aに噛合されている。
こうして,搬送モータM1の正転駆動又は逆転駆動により,搬送ローラ101R1〜101R3を介して挿入兼排出口3から挿入されるカードCを取込方向又は排出方向に搬送することができるようになっている。
【0039】
[検知手段]
検知手段には,挿入兼排出口3内にカードが存在するか否かを検知する検知手段200a(以下,第1カードセンサという。)と,搬送路の後端部付近にカードが存在するか否かを検知する検知手段200b(以下,第2カードセンサという。)と,取込方向に搬送されるカードの先端がそのカードに対して第1サーマルヘッド400aによる印刷(熱可逆式記録)を開始するための所定の基準位置に到達したか否かを検知する検知手段200c(以下,レジストセンサという。)とがある。これらの検知手段には,反射式又は透過式の光電センサを用いることができる。
【0040】
[二次元コード読取手段]
本発明において用いられるカードには,カード発行者及び/又はカード利用者の基本情報と可変情報とが後述されるサーマルヘッドにより書き換え可能に記録される。カード発行者は,例えば,ポイントカードの場合の店舗,クレジットカードの場合の金融機関,定期券の場合の交通機関,診察券の場合の医療機関等であり,その基本情報は,例えば,カード発行者の名称,営業PR,サービス内容,担当者氏名等のIDであり,可変情報は,例えば,イベントやキャンペーン等の案内情報,ニュースなどである。また,カード利用者は,例えば,顧客,取引者,患者等であり,その基本情報はカード利用者の住所,氏名,生年月日,年齢,性別,係員や主治医等の氏名等のIDであり,可変情報は,顧客の利用金額や取引金額などの利用履歴又は取引履歴,あるいは病歴や検査結果等のカード使用の都度に変化する情報である。
【0041】
基本情報は,従来は,カードの磁気記録面に磁気ヘッドにより記録されてきたが,本発明においては,基本情報も可変情報もカードの熱可逆記録面にサーマルヘッドにより記録される。本発明においては,表裏両面に熱可逆記録面を有するカードが用いられる。従って,カードの表面には基本情報のみを,裏面には可変情報のみを記録しても良いし,表面と裏面の一方又は双方に基本情報と可変情報を記録しても良い。
【0042】
そして,基本情報及び可変情報には,人は読めないが,読取手段により読取可能に記録される情報(以下,これを非可読情報といい,人に読めるように記録される情報を可読情報という。)がある。このような非可読情報は,熱可逆記録方式で記録される場合は,例えば,バーコードやQRコードなどの二次元コードで記録される。QRコードは,バーコードに比し小面積に多量の情報の記録が可能であるので,可読情報の記録面積を広く確保できる点で好ましい。本発明は,カードにQRコードを記録することは必ずしも必要ではないが,好ましい実施の形態は,可読情報の印刷に用いるサーマルヘッドで非可読情報をもQRコードで記録するように構成してある。そこで,二次元コード読取手段として,QRリーダー300を備えている。このQRリーダー300はライン状に配置されたCCDからなる公知のものであり,微細なQRコードの読取が可能である。
【0043】
QRリーダー300は,図8,11,12にも示されているように,第1搬送ローラ101R1のピンチローラ101p1と第2搬送ローラ101R2のピンチローラ101p2の間にこれらのピンチローラとともに昇降可能に取付けられている。すなわち,上フレーム2の両側板2a,2bの間でその両側板2a,2bの付近に存在する支持部材301に,QRリーダー300をカード搬送方向と直角な方向に貫通する2本の支持棒302を固着し,両側板2a,2bの下部(図2においては上部)に懸架されたリーダーアームシャフト303の両側に一端を回転可能に取付けた腕部材304の他端を支持部材301の長手方向中間部において回転可能に軸支してある。
【0044】
第1搬送ローラ101R1のピンチローラ101p1と第2搬送ローラ101R2のピンチローラ101p2は,両側の支持部材301の前後両端部同士の間に保持されている支軸305に回転自在に支持されている。
腕部材304と,これに支持されている支持部材301と,支持棒302を介して支持されているQRリーダー300と,前後のピンチローラ101p1〜101p3との組合せで,昇降可能な搬送ローラアセンブリRAが構成されている。昇降可能な構成とされているのは,後述される第1昇降手段610と関連している。
【0045】
[熱可逆性記録手段]
本発明では,熱可逆性記録手段として,下記の構造及び特性を有するサーマルヘッド400a,400bを用いることと,その2個のサーマルヘッドを搬送路の上側と下側にその搬送路を挟んで配置してあることを特徴の一つとしている。
すなわち,サーマルヘッド400a,400bは,いずれも先端に1インチ当たり200〜300ドットの密度で一列に並べて配置された微小発熱素子群と,上位装置から与えられる印刷情報を元に各発熱素子に所定の熱エネルギーを発生させる制御回路とを有するものである。発熱素子には発熱温度で抵抗値が変化する抵抗体であるサーミスタが使用されている。印刷時は,サーマルヘッドの先端部にカードを接触させて,ヘッドの発熱素子の密度が200dpiであれば,カードを1/200インチのピッチで移動(搬送)させることにより印刷が行われる。
【0046】
このサーマルヘッド400a,400bは,その特性として,電流を印加すると発熱素子が急加熱し,電流印加を遮断することで発熱素子が急冷却する。また,第一の特定温度(170〜180℃)で発色し,第一の特定温度よりも低い第二の特定温度(120〜140℃)で消色する。従って,各発熱素子を印刷情報に基づいて発熱制御することでサーマルヘッド400a,400bの先端に当接して搬送(副走査)されるカードの熱可逆記録面に所望の文字,数字又はQRコードを含む画像を印刷(発色)することができる。
【0047】
上記サーマルヘッド400a,400bは,それぞれ上記特許文献1に記載の印刷制御装置の一構成要素として用いることができる。その印刷制御装置は,上記サーマルヘッドと,その各発熱素子に流れる電流回路について,発熱駆動時と温度検知時に切り替える制御回路と,温度検知時に流れる電流から各発熱素子の温度値を電圧値に変換し検知する回路と,同電圧をデジタル変換するアナログ/デジタル変換回路と,そのデジタル値を加熱開始時から積算する積算器と,同積算器の積算値と予め設定された上位装置から送られてきた該当部分の印刷濃度設定値とを大小比較する比較器と,その比較器で目標濃度に達したことを検出したならば,発熱素子の発熱駆動を停止する回路とから構成されている。
【0048】
カード表面のライン毎に与える熱エネルギー積算値を逐次その表面温度を検知しつつ行うので,熱可逆性記録層に対してきわめて高精度の発色温度管理が可能である。従って,上位装置から送る印刷情報(印刷濃度設定値)に階調度を指定する階調指定信号を付加することにより,サーマルヘッド400a,400bの一方又は双方によって所望の階調度の画像の多段階濃度印刷が可能となり,写真画質と変わらない印刷を高速で行うことができる。
【0049】
熱可逆性記録層には,モノクロ発色熱可逆性記録層,2色発色熱可逆性記録層,あるいはカラー発色熱可逆性記録層などが使用可能である。これらの感熱記録装置の各色の発生特性は,印刷時の発色濃度はサーマルヘッド上の発熱素子で印加される発熱エネルギーによって決定されることである。そして,印刷制御においては,カード上の発熱素子の温度測定を行い,その値を時々刻々積算し,その積算値が目標設定値になるまで加熱していき,積算値が目標設定値になったとき,加熱駆動を停止させる。
【0050】
[第1サーマルヘッド]
第1サーマルヘッド400a(以下,Pヘッドという場合がある。)は,図7,図15に示すように,レジストセンサ200cのカード取込方向直後においてカード搬送面の上側に,その搬送面の下側に設けられた第1プラテンローラ104aに対向させて設置されている。そして,第1サーマルヘッド400aは,搬送されるカードに対して確実に熱可逆反応を起こさせるため,昇降可能に取付けられ,かつ,常に第1プラテンローラ104a方向に付勢されている。
【0051】
そのための取付構造の一例を説明すると,上フレーム2の両側の側板2a,2bに一端が軸支されたヘッドアーム401の他端を第1サーマルヘッド400aの両側に回転可能に結合し,その第1サーマルヘッド400aを側板2a,2bに設けられたガイド部材402に昇降可能に保持するとともに,付勢部材により常に下方に付勢させて,第1サーマルヘッド400aの発熱面が第1プラテンローラ104aに圧接されるようにしてある。付勢部材は,例えば,コイルバネ403aであり,その上端部が第1サーマルヘッド400aに結合されているとともに,その下端部が上フレーム2に突設された軸404aに固定してある。
【0052】
[第2サーマルヘッド]
第2サーマルヘッドPヘッド(以下,Sヘッドという場合がある。)は,図8,図15に示すように,第1サーマルヘッド400aからカード取込方向にわずかに離れた位置において,カード搬送面よりも下側に,その搬送面の上側に設けられた第2プラテンローラ104bに対向させて設置されている。そして,搬送されるカードに対して確実に熱可逆反応を起こさせるため,第1サーマルヘッド400aの場合と同様に,コイルバネ403a,軸404aにより昇降可能に取付けられ,かつ,常に第2プラテンローラ104b方向に付勢されていて,第2サーマルヘッドPヘッドの発熱面が第2プラテンローラ104bに当接することができる。
【0053】
[昇降手段とモード切替機構]
搬送ローラのピンチローラ101p1〜101p3が常にフィードローラ101f1〜101f3に圧接していると,カードがその搬送ローラ101のニップ部に進入するときに衝撃を受けるため,カードの搬送精度に影響を与える。QRリーダー300が常に読取位置に存在している場合も,同様に搬送精度に影響を与える。さらに,二つのサーマルヘッド400a,400bが常にプラテンローラ104a,104bに圧接されていると,カードがそのサーマルヘッドとプラテンローラの間に進入するときに衝撃を受けるため,カードの搬送精度に影響を与える。このような搬送精度の変化は,サーマルヘッド400a,400bによる印刷品質及びQRリーダー300による読取精度を低下させる原因となるので,好ましくない。
【0054】
本発明の好ましい実施の形態は,基本情報又は可変情報の中に写真と同程度の高解像度画像の印刷を可能にすることを目的として,搬送手段の搬送精度及び二つのサーマルヘッドによる印刷精度を高めるため,次述される昇降手段600とモード切替機構700を備えている。
【0055】
[昇降手段]
昇降手段には,ピンチローラ101p1〜101p3及びQRリーダー300を所定のタイミングで昇降させる第1昇降手段610と,第1サーマルヘッド400aを所定のタイミングで昇降させる第2昇降手段620と,第2サーマルヘッドPヘッドを所定のタイミングで昇降させる第3昇降手段630とがある。
【0056】
第1昇降手段610は,図13〜図16に示すように,後述されるコントロールシャフト701に固着されたリーダードライブカム611と,L字形をなし,その屈曲部において下フレーム1に支軸612aにより揺動自在に取付けられ,下端にカムフォロワ613を,上端に押圧片614をそれぞれ有するリーダードライブアーム615と,カード搬送方向のほぼ中間点において支軸612bにより下フレーム1に揺動自在に支持され,カード取込方向後端部にリーダードライブアーム611の押圧片614の下側に設けられた被押圧片616を有するリーダーアーム617と,そのリーダーアーム617の先端に設けられたリーダーリトラクトアーム618とからなっている。
【0057】
下フレーム1の側板1a,1bには,リーダーアーム617の前端部付近において縦孔又は縦溝619が形成され,その縦溝に両側板間を連続する支持棒6110が昇降自在に嵌合されている。その支持棒6110の両側板内側付近に,カード搬送方向に長い天秤状に形成されている前記リーダーリトラクトアーム618が,その中間部において固着されている。そして,リーダーリトラクトアーム618の上部から両側板1a,1b方向に延びるガイド軸6111が縦溝619に昇降自在に嵌合されて,リーダーリトラクトアーム618を常時水平状態に維持させている。そして,リーダーリトラクトアーム618の両端の上側に,図16に示すように,搬送ローラアセンブリRAの第1ピンチローラ101p1と第2ピンチローラ101p2の支軸が支えられている。
なお,図16の6112は,リーダーアーム617が第2搬送ローラ101R2のフィードローラ101f2により揺動を妨げられないように設けた楕円孔である。
【0058】
第2昇降手段620は,図8,図14,図17(a)に示すように,後述されるコントロールシャフト701に固着されたPヘッドリトラクトカム621と,フレーム1に屈曲部において支軸622により揺動自在に取付けられ,下端にカムフォロワ623を,上端に押圧片624を有するL字形のPヘッドリトラクトアーム625とからなっている。Pヘッドリトラクトアーム625の押圧片624は,第1サーマルヘッド400aの下面に当接されている。
【0059】
第3昇降手段630は,図8,図14,図17(b)に示すように,後述されるコントロールシャフト701に固着されたSヘッドリトラクトカム631と,フレーム1に屈曲部において支軸632により揺動自在に取付けられ,上端にカムフォロワ633を,下端に押圧片634を有するL字形のSヘッドリトラクトアーム635とからなっている。Sヘッドリトラクトアーム635の押圧片634は,第2サーマルヘッド104bの下部の上面に当接されている。
【0060】
[モード切替機構]
本発明の好ましい実施の形態おいては,上記のように,搬送ローラのピンチローラ101p1〜101p3及びQRリーダー300を昇降可能に支持し,かつ,サーマルヘッド400a,400bを昇降可能に取り付け,コントロールシャフト701を所定方向に所定角度回転することでその昇降を所定タイミングで制御することにより,搬送精度の低下を未然に防止している。そして,これらのピンチローラ101p1〜101p3及びQRリーダー300の昇降パターン並びにサーマルヘッド400a,400bの昇降パターンを切り替えるためにモード切替機構700が設けられている。
【0061】
モード切替機構700は,上記各昇降手段610,620,630をホームポジション(HP)に維持するHPモードと,上記各昇降手段をカードの上面(表面)にリライトする際の位置に移動する上面リライトモードと,上記各昇降手段をカードの下面(裏面)にリライトする際の位置に移動する下面リライトモードとの3つのモードのいずれかに設定するものである。
【0062】
続いて,図8,図15,図18A〜図18Cを基にモード切替機構の構成と動作について説明する。
モード切替機構700は,下フレーム1に取付けられたモードモータM2を有する。このモードモータM2には,回転方向が一方向(CW)のパルスモーターを用いている。モードモータM2の回転軸上にはギヤG1が固着されている。下フレーム1の両側板1a,1bに回転可能に懸架されたモード切替用のコントロールシャフト701上にもギヤG6が固着されている。そして,モードモータM2のケースに伝動手段と減速手段を兼ねるギヤ列G2〜G5が設けられ,その始端のギヤG2は,モードモータM2のギヤG1に噛合され,終端のギヤG5はコントロールシャフト701上のギヤG6に噛合されていて,モードモータM2の回転によりコントロールシャフト701が一定方向に回転されるようになっている。
【0063】
コントロールシャフト701上には,図8に示すように,その左右両側に,上記各昇降手段610,620,630を介してQRリーダー300とピンチローラ101p1〜101p3,Pヘッド400a及びSヘッド400bの位置をそれぞれHPモード,上面リライトモード,下面リライトモードの3つのモードに切り替えるためのカム,すなわち,第1昇降手段610のモード切替機構を構成する上記リーダードライブカム611,第2昇降手段620のモード切替機構を構成する上記Pヘッドリトラクトカム621,第3昇降手段630のモード切替機構を構成するSヘッドリトラクトカム631が固着されている。
【0064】
モード切替機構700は,現在,上記駆動要素がHPモード,上面リライトモード,下面リライトモードの3つのモードのいずれにあるかを検知し,制御信号を受けた場合に所定のモードに移行させるためのモード検出手段を有している。モード検出手段は,コントロールシャフト701の回転角度,従って,リーダードライブカム611,Pヘッドリトラクトカム621,Sヘッドリトラクトカム631のそれぞれの回転角度が所定の角度にあるか否かを検知するものであり,コントロールシャフト701に固着された第1スリットディスク702aと第2スリットディスク702bの2個のスリットディスクと,これらの2個のスリットディスクのスリットをそれぞれ検知する第1モードセンサ703aと第2モードセンサ703bの2個のモードセンサとからなっている。スリットディスクは,いずれも2個のスリットを中心間角度が120度となるように有しており,2個のスリットディスク702a,702bと2個のモードセンサ703a,703bは,コントロールシャフト701が120度回転されるたびに2個のモードセンサの一方のみON又は双方がONされるように2個のスリットディスクが各スリットの位置を回転方向に所定角度ずらして取付けられている。モードセンサには,一例として,スリットを検知した時,モードセンサがONする光電センサが用いられている。
【0065】
各モードにおける駆動要素とモードセンサの状態は,次の通りである。すなわち,コントロールシャフト701の角度がHPに存在する時,換言すると,HPモードにおいては,図18A(b)に示すように,第1スリットディスク702aの第2のスリットs2が第1モードセンサ703aをONさせ,第2スリットディスク702bは第2モードセンサ703bをOFFさせる。
【0066】
このHPモードにおいては,図18A(a)に示すように,リーダードライブカム611の回転角度はリーダードライブアーム615,リーダーアーム617及びリーダーリトラクトアーム618を介して搬送ローラアセンブリRAを閉じる状態,すなわち,搬送ローラ101R1,101R2のピンチローラ101P1,101P2がフィードローラ101f1,101f2に押圧されてカード搬送可能な状態にあり,Pヘッドリトラクトカム621の回転角度はPヘッドリトラクトアーム622を介してPヘッド400aを退避位置,すなわち,上昇させた位置にあり,Sヘッドリトラクトカム631の回転角度はSヘッドリトラクトアーム632を介してSヘッド400bを退避位置,すなわち,下降させた位置にある。
【0067】
モードモータM2が所定方向に所定角度回転して,コントロールシャフト701が所定方向(図面上は時計方向)に120度回転されると,図18B(b)に示すように,第1スリットディスク702aは第1モードセンサ703aをOFFさせ,第2スリットディスク702bは第1のスリットs1が第2モードセンサ703bをONさせたとき,モードモータM2が回転を停止し,上面リライトモードとなる。この上面リライトモードにおいては,図18B(a)に示すように,リーダードライブカム611の回転角度はリーダードライブアーム615,リーダーアーム617及びリーダーリトラクトアーム618を介して搬送ローラアセンブリRAを開ける状態,すなわち,搬送ローラのピンチローラ101p1,101p2がフィードローラ101f1,101f2から上方に離間され,QRリーダー300がカード搬送面から上方に離間された状態となり,Pヘッドリトラクトカム621の回転角度はPヘッドリトラクトアーム625を介してPヘッド400aを下降させて第1プラテンローラ104aに圧接させ,Sヘッドリトラクトカム631の回転角度はSヘッドリトラクトアーム635を介してSヘッド400bを退避位置,すなわち,第2プラテンローラ104bから下方に離間させた位置に維持する。
【0068】
そして,再び,モードモータM2が所定方向に所定角度回転して,コントロールシャフト701が所定方向にさらに120度回転されると,図18C(b)に示すように,第1スリットディスク702aは第1のスリットが第1モードセンサ703aをONさせ,第2スリットディスク702bは第2のスリットが第2モードセンサ703bをONさせたとき,モードモータM2が回転を停止し,下面リライトモードになる。この下面リライトモードにおいては,図18C(a)に示すように,リーダードライブカム611の回転角度は搬送ローラアセンブリRAを開ける状態,すなわち,搬送ローラの101p1,101p2がフィードローラ101f1,101f2から離間された状態を維持し,Pヘッドリトラクトカム621の回転角度はPヘッド400aを退避位置,すなわち,第1プラテンローラ104aから離間させた位置に上昇させ,Sヘッドリトラクトカム631の回転角度はSヘッドリトラクトアーム635を介してSヘッド400bを第2プラテンローラ104bに圧接する位置に下降させる。
【0069】
[制御手段]
制御手段500は,上記検知手段200a〜200c,モードセンサ703a,703bからの検知信号や上位装置からの印刷情報に基づいて上記搬送手段の搬送モータM1の駆動制御,QRリーダー300の読取制御,二つのサーマルヘッド400a,400bの印刷制御,モード切替機構700のモードモータM2の駆動制御を行うものであり,入出力インターフェース及び記憶部に接続された演算処理部(CPU)により構成される。
【0070】
このプリンタAが独立型で使用される場合は,図示されていないが,上記筐体Hの上面には,カードから読み取ったQRコードに基づいて可読情報に変換された内容を表示する表示部,取引内容を入力するための置数キーその他の入力部が設けられ,このプリンタAが例えばPOSシステムなどのコンピュータに接続して使用される場合は,筐体Hの上面には何も設けられない。
【0071】
進んで,プリンタAの上記構成による作用を図19以下の図面を参照しながら説明する。
[初期化動作]
プリンタAを使用するため電源を投入すると,予め設定されている複数のプログラムが順次実行され,最初に,図19に示すようにイニシャル動作が開始される。すなわち,ステップ(以下,Sという。)11において現在のモードがHPモードに指定されているか否かを調べ,HPモードに指定されている場合は,第1カードセンサ200a,第2カードセンサ200b,レジストセンサ200c及びQRリーダー300の検知信号からカードを検知しているか否かを調べる(S12)。カードありの場合は,S13において,図20に基づいて後述される排紙動作のルーチンに移行し,その排紙動作のルーチンを実行した後はモードモータM2を時計方向(CW)に回転させ(S14),第1モードセンサ703aがOFFからONに切り替わった時(S15においてY)からモードモータM2をさらに極少の所定ステップ(例えば18ステップ)だけ時計方向(CW)に回転させて(S16),イニシャル動作を終了する。
【0072】
S11において現在のモードがHPモード以外に指定されている場合は,S17において,図21に基づいて後述されるHP移行動作のルーチンに移行し,そのHP移行動作のルーチンを実行した後は,搬送モータM1を隣接する検知手段間距離(例えば第1カードセンサ200aとレジストセンサ200cの間の距離など)のうち最大距離よりも僅かに大きい距離を搬送できる数のステップだけ反時計方向(CCW)に回転させ(S18),その回転後,第1カードセンサ200aのみがカードを検知しているか否かを調べる(S19)。その結果,第1カードセンサ200aのみにカードがある時はイニシャル動作を終了する。しかし,そうでない時はジャムと判定して,警報を発する。
S12においてカードが検知されないときは,S18に移行する。
【0073】
[排紙動作]
排紙動作のルーチンにおいては,まずS21において,現在,HPモードか否かを確認し,HPモードでないときは,S22において後述されるHP移行動作のルーチンに移行し,HPモードであるときは,第2カードセンサのみがONであるか否かを調べる(S23)。第2カードセンサのみがONであるとき,すなわち,カードが搬送路の最奥に存在するときは,搬送モータM1を第1カードセンサ200aがONされるまで,反時計方向に回転させる(S24,S25)。第1カードセンサ200aがONされたときは,搬送モータM1をさらに所定ステップ,すなわち,カードの先端が挿入兼排出口に突出されるまで回転させて(S26),第1カードセンサ200aのみがONされたか否かを調べる(S27)。第1カードセンサ200aのみがONとなったときは排紙動作を終了する。しかし,第1カードセンサ200aのみがONの状態にならない場合は,搬送エラーなどのエラー表示がされる。
【0074】
また,S23において,第2カードセンサ200bのみがONでないときは,レジストセンサ200cと第2カードセンサ200bがともにONであるか否かを調べ(S28),肯定のときはS24に移行するが,否定のときは,レジストセンサ200cと第1カードセンサ200aがともにONであるか否かを調べ(S29),肯定であるときは,搬送モータM1をレジストセンサ200cがOFFするまで反時計方向に回転させる(S210,S211)。そして,レジストセンサ200cがOFFした後は,搬送モータM1をカードの先端が挿入兼排出口3に突出されるまでさらに所定ステップ(例えば1800ステップ),反時計方向に回転させて停止する(S212)。
S29において,レジストセンサ200cと第1カードセンサ200aがともにONでないときは,第1カードセンサ200aのみがONか否かを調べ(S213),肯定のときはS212に移行するが,否定のときはエラー表示をする。
【0075】
[HP移行動作]
図19のS17及び図20のS22のHP移行動作は,同一内容であり,図21に示すように,まず,S31において,第1モードセンサ703aがONで,かつ,第2モードセンサ703bがOFFであるか否かを調べ,肯定であるときはHP移行動作を終了する。これに対し,否定であるときは,モードモータM2を所定ステップ(例えば150ステップ)時計方向に回転(S32)した後,再度,第1モードセンサ703aがONで,かつ,第2モードセンサ703bがOFFであるか否かを調べる(S33)。そして,肯定のときはモードモータM2を所定ステップ(例えば18ステップ)時計方向に回転した後,回転を停止する(S34)。
最初のモードモータM2の回転を開始した後のS33における判定が否定であるときは,そのときのモードモータM2に与えたパルス数が所定値(例えば500ステップ)以下か否かを調べ,肯定のときはS32に移行し,否定のとき,すなわち,モードモータM2へのパルス数が前記所定値を超えたときは,エラー表示をする。
【0076】
以上の初期化動作が終了し,正常に初期化された後は,プリンタAが定常的な運用に供される。そして,挿入兼排出口3に所定のカード,すなわち,上述された熱可逆記録層を表裏両面に有するカードが挿入されると,図22に示すように,一連動作のプログラムが実行される。
【0077】
[一連動作]
まず,S41において後述される給紙動作ルーチンが実行され,続いて,後述される上面リライト移行動作ルーチンが実行(S42)された後,カードの上面に印刷するための上面リライトコマンドが入力されたか否かを調べる(S43)。肯定のときは,後述される上面リライト動作のルーチンが実行される(S44)。上面リライト動作を終了すると,カードの下面に印刷するための下面リライトコマンドが入力されたか否かを調べる(S45)。肯定のときは,後述される下面リライト移行動作ルーチンが実行(S46)された後,続いて,後述される下面リライト動作のルーチンが実行される(S47)。下面リライト動作を終了すると,搬送モータM1の反時計方向の回転が開始される(S49)。
S45において下面リライトコマンドが入力されないときは,上記HP移行動作ルーチンが実行されると同時に搬送モータM1の回転を瞬時(例えば50ms),停止した後,S49に移行して搬送モータM1の反時計方向の回転が開始される。
【0078】
次に,S49において,QRコードが正常に印刷されているかどうかをチェックするためのQRベリファイチェックコマンドが入力されたか否かを調べ(S410),肯定のときは,後述されるQRベリファイチェック動作のルーチンを実行する(S411)。その後,搬送モータM1の反時計方向の回転を継続し(S412),QRリーダーがカードなしを検知したか否かを調べ(S413),否定のときは,カードなしを検知するまで搬送モータM1の反時計方向の回転を継続して,カードなしを検知したときは,搬送モータM1を所定ステップ(例えば1000ステップ)反時計方向に回転した後,停止する(S414)。S410においてQRベリファイチェックコマンドの入力がないとは,S415において上述した排紙動作ルーチンが実行された後,一連動作を終了する。
【0079】
[給紙動作]
図22のS41における上記給紙動作は,図23に示すように,S51において,第1モードセンサ703aがON,かつ,第2モードセンサ703bがOFFであるか否かを調べ,肯定であるときは,第1カードセンサ200aがカード有りと検知しているか否かを調べる(S52)。S51において否定であるときは,上記HP移行動作ルーチンを実行(S53)した後,S52に移行する。そして,S52において肯定であるときは,搬送モータM1を時計方向に回転(S54)させた後,S55とS56を並行して行い,レジストセンサ200cがカードを検知したか否か,QRリーダー300がカードを検知したか否かを調べる。
【0080】
そして,S55において肯定であるときは搬送モータM1を時計方向に所定ステップ(例えば776ステップ)回転した後,すなわち,カードをQRリーダー300による読取領域まで搬送した後,停止する(S57)。S55において否定であるときは搬送モータM1に与えたパルス数が所定値(例えば2000ステップ)以下であるか否かを調べ(S58),肯定であるときはS54に戻って搬送モータの時計方向の回転を継続する。しかし,否定であるときは,ジャム表示をする。
【0081】
また,S56において肯定であるとき,すなわちQRリーダー300がカードを検知したときは,S59において後述されるQRコード読取ルーチンを実行する。S56において否定であるときは,搬送モータM1に与えたパルス数が所定値(例えば2000ステップ)以下であるか否かを調べ(S510),肯定であるときはS54に戻って搬送モータの時計方向の回転を継続する。しかし,否定であるときは,搬送モータM1の回転を停止する(S511)とともに,カードの再セットを要求する表示を行う。
【0082】
S59でのQRコード読取を終了した後は,その読取の結果が正常であるか否かを判断し(S512),正常であるときはレジストセンサ200cがカード有りを検知し,かつ,第1カードセンサ200aがカード無しを検知しているか否かを調べる(S513)。そして,肯定のときは,給紙動作を終了し,否定であるときは,ジャム表示をする。S512においてQRコードの読取結果が正常でないときは,S514において上記排紙動作ルーチンを実行するとともに,読取エラーを表示する。
【0083】
[QRコード読取]
給紙動作中にS59において行われるQRコード読取は,図24に示すように,搬送モータM1の前速度の回転を継続し(S61),カード上のQRコードを認知したか否かを調べ(S62),認知した時は前速度で搬送したままQRコードのセルを読み取って(S63),QRコード読取を終了する。
【0084】
[上面リライト移行動作]
図22のS42の上面リライト移行動作は,図25に示すように,S71において,第1モードセンサ703aがOFFで,かつ,第2モードセンサ703bがONであるか否かを調べる。肯定であるときは上面リライト移行動作を終了する。これに対して,否定であるときは,モードモータM2を時計方向に回転し(S72),再び第1モードセンサ703aがOFFで,かつ,第2モードセンサ703bがONであるか否かを調べる(S73)。その結果が肯定であるときはモードモータM2を所定ステップ(例えば18ステップ)回転させた後,停止する(S74)。そして,S73において否定であるときは,モードモータM2に与えられたパルス数が所定値(例えば500ステップ)以下であるか否かを調べ(S75),肯定であるときはS72に戻り,モードモータM2の回転を継続させる。これに対して,S75において否定であるときは,エラー表示をする。
【0085】
[上面リライト動作]
図22のS44の上面リライト移行動作は,図26に示すように,S81において,搬送モータM1を時計方向に所定ステップ回転させた後,第1サーマルヘッド(図26においては上ヘッドと記載)400aに所定の印刷を行うための発熱素子ごとの電流印加を行い(S82),続いて,搬送モータM1をカードの1ライン分移動(副走査)させるに必要なステップ(例えば3ステップ)だけ回転(S83)させた後,カード移動(副走査)をリライトすべき全ライン数分終了したか否かを調べ(S84),未終了のときはS82に戻って,全ライン数分終了するまで第1サーマルヘッドへの電流印加と,カードの1ライン分移動(副走査)を繰り返し,全ラインに対するリライトが終了したとき,搬送モータM1の回転を減速し,停止する(S85)。
【0086】
[下面リライト移行動作]
また,図22のS46の下面リライト移行動作は,図27に示すように,S91において,第1モードセンサ703aと第2モードセンサ703bがともにONであるか否かを調べる。肯定であるときは下面リライト移行動作を終了する。これに対して,否定であるときは,モードモータM2を時計方向に回転し(S92),再び第1モードセンサ702aと第2モードセンサ703bがともにONであるか否かを調べる(S93)。その結果が肯定であるときはモードモータM2を所定ステップ(例えば18ステップ)回転させた後,停止する(S94)。そして,S93において否定であるときは,モードモータM2に与えられたパルス数が所定値(例えば500ステップ)以下であるか否かを調べ(S95),肯定であるときはS92に戻り,モードモータM2の回転を継続させる。これに対して,S95において否定であるときは,エラー表示をする。
【0087】
[下面リライト動作]
図22のS47の下面リライト動作は,図28に示すように,まず,S101において,搬送モータM1を反時計方向に所定ステップ回転させた後,第2サーマルヘッド(図28においては下ヘッドと記載)400bに所定の印刷を行うための発熱素子ごとの電流印加を行い(S102),続いて,搬送モータM1をカードの1ライン分移動(副走査)させるに必要なステップ(例えば3ステップ)だけ回転(S103)させた後,カード移動(副走査)をリライトすべき全ライン数分終了したか否かを調べ(S104),未終了のときはS102に戻って,予め設定された所定ライン数分終了するまで第2サーマルヘッドへの電流印加と,カードの1ライン分移動(副走査)を繰り返し(S106,S107,S108において否定),所定ライン数に対するリライトが終了した後(S108において肯定),搬送モータM1の反時計方向の回転を停止(S109)するとともに,S110においてHP移行動作を行う。
【0088】
[QRベリファイチェック動作]
図22のS411のQRベリファイチェック動作においては,図29に示すように,搬送モータM1の前速度の反時計方向回転を継続して(S111),QRリーダーがカードを検知したか否かを調べ(S112),肯定であるときはそのカードのQRコードを認知したか否かを調べる(S113)。そして,認知したときは搬送モータM1の前速度の反時計方向回転を維持したままQRコードのセル読取(S114)を行ってQRベリファイチェック動作を終了する。QRベリファイチェックの正否判定は制御手段500の中の演算処理部が行う。S112においてQRリーダーがカードを検知しないときは,その時の搬送モータM1に与えるパルス数が,カードの先端がQRリーダーの読取領域に到達するのに必要な所定値(例えば1500ステップ)以下か否かを調べ(S115),肯定のときはS111に戻り,否定のときはジャム表示を行う。
【0089】
図30は,本発明に係るプリンタAの搬送路の寸法,カードの流れ,リライト可能範囲を例示している。
【0090】
[タイムチャート]
プリンタAの一連動作のタイムチャートを例示すると,図30のとおりである。以下,これについて説明する。なお,搬送中のカードのジャム,モードモータM2のエラー,QRリーダーの読取エラーなどの異常の発生は想定されていない。
【0091】
HPモードにおいて挿入されたカードを第1カードセンサ200aが検知したことに基づき搬送モータM1が時計方向回転を開始されてカードが取込方向に搬送される。そして,QRリーダー300が搬送されるカードの先端を検知してから所定ステップ搬送された時点からQRリーダーによるQRコードの読取が行われる。そして,レジストセンサ200cがカード先端を検知した時点から所定ステップ数の後に,すなわち,QRコードの読取終了の値に,搬送モータM1の回転が停止されると同時にモードモータM2が所定角度回転されてHPモードから上面リライト移行動作を経て上面リライトモードに切り替えられる。
【0092】
従って,それまで退避位置に保持されていたPヘッド400aが第1プラテンローラ104aに圧接されるとともに,それまで閉じられていた搬送ローラアセンブリRAは開放される。すなわち,カードが搬送ローラアセンブリRAから離れる時にカードに振動が加わることが避けられ,その後のカード搬送はPヘッドに圧接している下側のプラテンローラのみによって行われるので,カードは振動することなく,非常に安定して搬送される。
【0093】
QRコードの読取により得られたデータは上位装置に送られ,その上位装置における各種の情報処理に用いられる。その上位装置から情報処理の結果として送られてくる印刷情報を基に制御手段がリライトコマンドを入力すると,Pヘッドにより図32に示す表面リライト領域に対する上面リライト動作及びQRコードのリライト動作が行われる。
【0094】
印刷情報(リライトコマンド)の入力が無くなると,搬送モータM1の回転が停止されると同時にモードモータM2が所定角度回転されて上面リライトモードから下面リライト移行動作を経て下面リライトモードに切り替えられる。すなわち,それまで下側のプラテンローラ104bに圧接されていたPヘッドが退避されるとともに,それまで退避されていたSヘッドが上側のプラテンローラ104aに圧接される。その後,搬送モータM1が反時計方向に回転されるとともに,カードの裏面に対する印刷情報(リライトコマンド)に基づいて図32に示す裏面リライト領域に対する上面リライト動作が行われる。この間も,搬送ローラアセンブリRAは開放状態に維持されている。
【0095】
カードの裏面に対するリライトが終了すると,モードモータM2が所定角度回転されてHPモード移行動作を経てHPモードに復帰され,カードに密着しているQRリーダー300によるQRベリファイチェック動作が行われる。このQRベリファイチェック動作により得られたQRデータは,制御手段500又は上位装置によるQRベリファイに用いられる。搬送モータM1の反時計方向回転は,QRベリファイチェック動作が終了した後に停止され,一枚のカードに対する印刷動作が終了する。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明に係る上記プリンタAは,従来のカードの磁気記録面を有しないカードを印刷対象とし,そのカードの両面に印刷するので,印刷可能な情報量を飛躍的に増大することが可能であるから,例えば,量販店,スーパーマーケット,小売店,百貨店,ガソリンスタンド,レンタルショップ,美容院やエステティックサロン,ホテル等,商店街,アミューズメント施設,フィットネスクラブなどで使用されるポイントカード,プリペイドカード,病院等で使用される診察券や健診カード,図書館など使用される貸し出しカードに対する印刷を行う際に,例えば,表面には,店名,ポイントカード等のカード種類その他の基本情報のほか,施設案内情報又はイベント,キャンペーンなどの広告情報とQRコードを印刷し,裏面にはカード使用履歴,獲得ポイント,クーポン,予約日時などの使用の都度に変わる可変情報を印刷することができる。そして,本発明で用いるサーマルヘッドは,写真同様の高画質,高階調度の多色画像印刷が可能であるので,施設案内情報や広告情報等を写真と変わらない画像を印刷することにより,使用者に対して強いアピール力を有するカードとすることができる。
【0097】
以上には,印刷媒体として,説明の便宜のため,両面に熱可逆記録面を有するカードに限定して説明したが,本発明は,基本的にはカード以外の両面に熱可逆記録面を有する媒体にも適用可能である。従って,本願の明細書及び特許請求の範囲に記載の両面に熱可逆記録面を有するカードには,カード以外の媒体も含まれるものと理解されたい。
【符号の説明】
【0098】
A プリンタ
100 搬送手段
M1 搬送モータ
101R1〜101R3 搬送ローラ
101p1〜101p3 ピンチローラ
101f1〜101f3 フィードローラ
104a 第1プラテンローラ
104b 第2プラテンローラ
200 検知手段
200a 第1カードセンサ
200b 第2カードセンサ
200c レジストセンサ
300 画像読取手段(QRリーダー)
400a 第1サーマルヘッド
Pヘッド 第2サーマルヘッド
500 制御手段
600 昇降手段
610 第1昇降手段
620 第2昇降手段
630 第3昇降手段
700 モード切替機構
M2 モードモータ
701 コントロールシャフト
702a,702b スリットディスク
703a,703b モードセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱エネルギーの印加と冷却で発色及び消色する成分を表裏両面に塗工されたリライトカードに対して熱可逆記録方式により印刷するプリンタであって,リライトカードを搬送路に沿って搬送する搬送手段と,搬送されるリライトカードに対して前記成分の発色及び消色が可能となる熱エネルギーを印加できるサーマルヘッドと,前記搬送手段及びサーマルヘッドのそれぞれに対して搬送制御及び熱エネルギー印加制御を行う制御手段とを備えてなり,前記サーマルヘッドは前記搬送路を搬送されるリライトカードの表と裏に対応するように前記搬送路を挟んで配置され,前記制御手段は上位装置から与えられる印刷情報を基に前記サーマルヘッドにより当該リライトカードの表裏両面に書き換えを行うものであることを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
リライトカードの基本情報や顧客情報をQRコード等の二次元コードで表記し,取込み方向に搬送されるリライトカードに対して二次元コードの読取を行う位置及び情報読取後の表面の書き換えを行う位置にそれぞれ二次元コードを読み取る二次元コード読取手段と第1サーマルヘッドとを設けるとともに,排出方向に搬送されるリライトカードに対して裏面の書き換えを行う位置に第2サーマルヘッドを設け,制御手段は前記二次元コード読取手段により読み取った情報と上位装置から与えられる印刷情報を基に取込み方向に搬送されるリライトカードに対して第1サーマルヘッドにより書き換えを行い,かつ,排出方向に搬送されるリライトカードに対して第2サーマルヘッドにより書き換えを行うことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
二次元コード読取手段には,ラインセンサーを用いていることを特徴とする請求項2に記載のプリンタ。
【請求項4】
サーマルヘッドがリライトカードに印刷中は,リライトカードの搬送をサーマルヘッドが当接しているプラテンローラの搬送力のみによって行うとともに,その前後の搬送ローラのニップを開放して搬送ローラが印刷中のリライトカードに衝撃を加えないようにしたことを特徴とする請求項1,2又は3に記載のプリンタ。
【請求項5】
サーマルヘッドに,先端部にライン状に配置された多数の微小な発熱素子と,上位装置から与えられる印刷情報を基にそれぞれの発熱素子の加熱と冷却を制御する制御回路とを有し,発熱素子のピッチが300〜500dpi程度のものを用い,リライトカードに印刷中はサーマルヘッドの前後の搬送ローラのニップを開放して印刷中のリライトカードに搬送ローラが衝撃を加えないようにとともに,サーマルヘッドをプラテンローラに圧接させてリライトカードの搬送をプラテンローラのみによって行い,その印刷を終了したときは前記サーマルヘッドを前記プラテンローラから離間するとともに,その前後の搬送ローラのニップを閉じて搬送ローラにより搬送することを特徴とする請求項4に記載のプリンタ。
【請求項6】
搬送ローラのピンチローラをフィードローラに対して昇降させると同時に二次元コード読取手段を昇降させる第1昇降手段と,第1サーマルヘッドを昇降させる第2昇降手段と,第2サーマルヘッドを昇降させる第3昇降手段とを備え,併せて,カード挿入時から熱可逆記録による印刷を終了してカード排出時までの間に上記各昇降手段をホームポジションの位置に保持するHPモード,各昇降手段を第1サーマルヘッドがカードの表面に印刷する時の位置に保持する上面リライトモード,各昇降手段を第2サーマルヘッドがカードの裏面に印刷する時の位置に保持する下面リライトモードに切り替えるためのモード切換機構を備えていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項7】
第一の特定温度で消色し,その第一の特定温度よりも高い第二の特定温度範囲で発色する熱可逆記録材料を表裏両面に塗工したカードを用い,微小な発熱素子を一列に300〜500dpiの密度で配置した二つのサーマルヘッドを搬送路を挟んで設置し,上位装置から各サーマルヘッドに与える印刷情報に前記サーマルヘッドの発熱素子ごとに階調指定信号を付加することにより,カードの少なくとも片面に所定の階調度を有する解像度が300〜500dpiの画像を印刷することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項8】
リライトカードを挿入兼排出口から第2のサーマルヘッドの後方までの間の搬送路を搬送手段により往復搬送する工程,取込方向に搬送されるリライトカードに記録されている二次元コードを二次元コード読取手段により読み取る工程,取込方向に搬送されるリライトカードの表面に対して二次元コードの読取により得られた基本情報と上位装置から与えられる印刷情報を基に第1サーマルヘッドにより二次元コードを含む基本情報を印刷する工程,排出方向に搬送されるリライトカードの裏面に対して前記上位装置から与えられる印刷情報を基に第2サーマルヘッドにより印刷をする工程,及び前記第1サーマルヘッドにより印刷された二次元コードを読み取ってベリファイチェックを行う工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のプリンタの使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2012−200945(P2012−200945A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66176(P2011−66176)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(502038842)株式会社デジアイズ (18)
【Fターム(参考)】