説明

プリンタ

【課題】大型化を抑制しつつ、ロール紙の使用量に対応して印刷停止時のロール紙の弛みを防止できるプリンタを提供する。
【解決手段】ロール50を支持するロール支持部25(支持手段)を備え、ロール支持部25は、ロール50の外周面52と当接可能な第一支持部材31と、第二支持部材36と、第一支持部材31を第二支持部材36に向かって付勢する付勢部材40と、を備え、第一支持部材31および第二支持部材36は、ロール50の外周面52に当接しロール50を支持した状態で相対移動可能に形成されるとともに、未使用のロール50を支持したときロール50の自重により付勢部材40の付勢力に抗して互いに離反するように相対移動し、ロール50の重量が軽くなるのに対応して付勢部材40の付勢力によりロール50の自重に抗して互いに接近するように相対移動することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタとして、例えば、熱を加えると発色する感熱記録紙に、サーマルヘッドを加熱しながら押し付けることで印刷を行うサーマルプリンタがある。
サーマルプリンタは、ロール紙が巻回されたロールを支持する支持手段と、多数の発熱素子を有するサーマルヘッドと、サーマルヘッドとの間でロール紙を挟みながら該ロール紙を搬送するプラテンローラと、歯車を介してプラテンローラを回転させ、ロールからロール紙を引き出す電動モータとを備えている。
ロールの支持手段としては、収容部内にロールを落とし込こんで収容部の底部に載置した状態で支持するドロップイン式や、ロールの中心孔にシャフトを挿通させて回転自在に支持する軸支式が採用されている。
【0003】
印刷開始時は、電動モータを駆動させることでプラテンローラが回転する。ロールは、ロール紙がプラテンローラの回転により引っ張られることで回転する。これにより、サーマルヘッド側へのロール紙の搬送が開始し、サーマルヘッド側へ連続的に引き出される。
また、印刷停止時は、電動モータを停止させることでプラテンローラの回転が停止し、サーマルヘッド側へのロール紙の搬送も停止する。ロールは、プラテンローラの回転の停止により収容部内で回転が停止する。
【0004】
ここで、プラテンローラの回転を停止させた後でも、ロールが慣性力により少しだけ回転するため、プラテンローラと収容部との間でロール紙の弛みが発生するおそれがある。このロール紙の弛みにより、ロール紙がずれた状態でサーマルヘッドに供給される等の不具合が生じるおそれがある。また、ロール紙が弛んだ状態で電動モータを再駆動して印刷を再開し、プラテンローラによりロール紙を引っ張ると、ロール紙の弛みが解消した瞬間にロールの重量に起因して搬送時のトルクが急激に上昇し、電動モータが脱調するおそれがある。このように、ロール紙の弛みが発生すると、プラテンローラは安定してロール紙を搬送できず、印刷精度が低下するおそれがある。
【0005】
このような問題を解決するために、ロール紙(ロール)を収納し上部が開口された略箱状の収納部を備えたプリンタにおいて、ロール紙の搬送方向と直交し、ロール紙の外周が当接する収納部の後部壁部と、該後部壁部に向かって下降するように傾斜され、ロール紙を支持する前記収納部の底部と、を備えたプリンタが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1によれば、底部が後部壁部に向かって傾斜して形成されているので、ロール紙は使用されて外周が小さくなっても後部壁部に常時当接される。これにより、ロール紙の挙動は安定し、印字紙の走行性が安定するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−329989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載のプリンタには、以下のような問題がある。
従来技術のプリンタは、底部が後部壁部に向かって下降するように傾斜して形成されており、ロールの収容部の底部にはロールが自重により下降し易いように移動スペースが形成されている。したがって、ロールの収容部の底部は、ロールの収納部の移動スペースが下方に突出して形成されるため、プリンタが大型化する傾向にある。
【0009】
そこで本発明は、プリンタの大型化を抑制しつつ、ロール紙の使用量に対応して印刷停止時のロール紙の弛みを防止できるプリンタの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明のプリンタは、ロール紙が巻回されたロールの外周面と当接して前記ロールを支持する支持手段を備え、前記ロールを回転させながら前記ロール紙を引き出し印刷するプリンタであって、前記支持手段は、前記ロールの自重方向下側において、前記ロールの中心軸に対応する位置よりも前記ロール紙の引出し方向の下流側で前記ロールの外周面と当接可能な第一当接部を有する第一支持部材と、前記ロールの自重方向下側において、前記ロールの中心軸に対応する位置よりも前記ロール紙の引出し方向とは反対の前記ロールの外周面と当接可能な第二当接部を有する第二支持部材と、前記第一支持部材および前記第二支持部材のうち少なくとも一方を他方に向かって付勢する付勢部材と、を備え、前記第一支持部材および前記第二支持部材は、前記第一当接部および前記第二当接部が前記ロールの外周面に当接し前記ロールを支持した状態で、相対移動可能に形成されるとともに、前記第一支持部材および前記第二支持部材は、未使用の前記ロールを支持したとき前記ロールの自重により前記付勢部材の付勢力に抗して互いに離反するように相対移動し、前記ロール紙の使用によって前記ロールの重量が軽くなるのに対応して前記付勢部材の付勢力により前記ロールの自重に抗して互いに接近するように相対移動することを特徴としている。
【0011】
本発明によれば、第一支持部材および第二支持部材は、ロールを支持した状態で付勢部材の付勢力によりロールの自重に抗して互いに接近するように相対移動する。したがって、ロール紙の使用によりロールが小径となっても第一当接部および第二当接部がロールの外周面に当接できる。さらに、第一支持部材および第二支持部材は、未使用のロールを支持するのと同様に、使用により小径化したロールを、第一支持部材および第二支持部材で支持できる。すなわち、第一支持部材および第二支持部材を相対移動可能に形成することで、未使用のロールを支持するのに必要なスペースさえ確保できればよく、従来技術のようにロールの移動スペースを設ける必要がない。したがって、プリンタが自重方向下側に大型化するのを抑制できる。
また、第一支持部材および第二支持部材は、ロールの重量が軽くなるのに対応して、付勢部材の付勢力により互いに接近するように形成されている。すなわち、第一支持部材の第一当接部および第二支持部材の第二当接部は、ロールの直径の変化に追従してロールの外周面に当接できるので、常にロールの外周面に一定の負荷を付与できる。これにより、印刷停止時にロールが慣性力により回転するのを抑制でき、その結果、印刷停止時のロール紙の弛みを防止できる。
本発明は、上述したような構成により、プリンタの大型化を抑制しつつ、ロール紙を使用し続けてロール径が小さく、軽くなっても印刷停止時のロール紙の弛みを防止できる。
【0012】
また、本発明のプリンタは、前記第一支持部材の前記第一当接部が、前記ロールの外周面と当接して回転可能な第一ローラ部を備え、前記第二支持部材の前記第二当接部が、前記ロールの外周面と当接して回転可能な第二ローラ部を備え、前記第一当接部および前記第二当接部が、未使用の前記ロールを支持したとき前記第一ローラ部および前記第二ローラ部が前記ロールの外周面に当接するように形成されていることを特徴としている。
【0013】
本発明によれば、ロール紙の使用開始直後、ロールの外周面は第一ローラ部および第二ローラ部と当接している。これにより、ロール紙が搬送されてロールが回転すると、ロールの外周面と接する第一ローラ部および第二ローラ部も回転するので、ロール紙の使用量が少なくロールが重いときに、前記ローラ部によってロールと第一当接部および第二当接部との摩擦力を軽減できる。したがって、ロール紙を搬送する電動モータの大型化を抑制できる。
【0014】
また、本発明のプリンタは、前記ロール紙が、前記ロールの中心に中心孔を有するように巻回されており、前記支持手段を構成する少なくとも一つの側壁には、前記ロール紙の使用によって前記ロールが小径化したことを検出するロール残量検出手段を備え、前記ロール残量検出手段が、前記ロールの軸方向に沿って前記ロール側に付勢され、前記ロールの巻回中心孔よりも小形な第一突起を備え、前記ロール残量検出手段が、前記支持手段で支持された前記ロールの巻回ロールが小径化したとき、前記第一突起が前記中心孔に入り込んで前記ロール側に移動することで、前記ロールが小径化したことを検出することを特徴としている。
【0015】
本発明によれば、ロール残量検出手段は、第一突起がロールの巻回中心孔に入り込んでロール側に移動することによりロールの小径化を検出しているので、ロールの下端部を検知する必要がなくなり、その結果、ロールを自重方向下側に移動させる必要もなくなる。さらに、従来のようにロール収納部内の下方にロール移動スペースを設け、この移動スペースにロール残量検出手段を設ける必要がないので、プリンタが自重方向下側に大型化するのを抑制できる。
【0016】
また、本発明のプリンタは、前記ロールを収容し、自重方向上側に開口部を有するケーシングと、前記開口部を閉塞するプリンタカバーとを備え、前記第一支持部材および前記第二支持部材は、前記ケーシング内.に設けられていることを特徴としている。
【0017】
本発明によれば、ケーシング内に第一支持部材および第二支持部材を設けているので、自重方向上側の開口部にプリンタカバーが横に配置されてロール紙の排出口が上側に形成される、いわゆる横置き上出しプリンタに本発明を適用できる。したがって、横置き上出しプリンタの大型化を抑制しつつ、ロール紙の使用量に対応して印刷停止時のロール紙の弛みを防止できる。
【0018】
また、本発明のプリンタは、前記ロールを収容し、自重方向と交差する方向に開口部を有するケーシングと、前記開口部を閉塞するプリンタカバーと、を備え、前記第一支持部材および前記第二支持部材のうち一方は前記ケーシング内に設けられ、他方は前記プリンタカバーに設けられていることを特徴としている。
【0019】
本発明によれば、第一支持部材および第二支持部材のうち一方をケーシング内に設け、他方をプリンタカバーに設けているので、自重方向と交差する方向の開口部にプリンタカバーが縦に配置されてロール紙の排出口が前側に形成される、いわゆる縦置き前出しプリンタに本発明を適用できる。したがって、縦置き前出しプリンタの大型化を抑制しつつ、ロール紙の使用量に対応して印刷停止時のロール紙の弛みを防止できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第一支持部材および第二支持部材は、ロールを支持した状態で付勢部材の付勢力によりロールの自重に抗して互いに接近するように相対移動する。したがって、ロールが小径となっても第一当接部および第二当接部がロールの外周面に当接できる。さらに、第一支持部材および第二支持部材は、未使用のロールを支持するのと同様に、使用により小径化したロールを、第一支持部材および第二支持部材で支持できる。すなわち、第一支持部材および第二支持部材をロール径に合わせて相対移動可能に形成することで、未使用のロールを支持するのに必要なスペースを確保すればよく、従来技術のように自重方向下側にロールの移動スペースを設ける必要がない。したがって、プリンタが大型化するのを抑制できる。
また、第一支持部材および第二支持部材は、ロールの重量が軽くなるのに対応して、付勢部材の付勢力により互いに接近するように形成されている。すなわち、第一支持部材の第一当接部および第二支持部材の第二当接部は、ロールの直径の変化に追従してロールの外周面に当接するので、常にロールの外周面に負荷を付与できる。これにより、印刷停止時にロールが慣性力により回転するのを抑制でき、印刷停止時のロール紙の弛みを防止できる。
以上のように、本発明によれば、プリンタの大型化を抑制しつつ、ロール紙の使用量に対応して印刷停止時のロール紙の弛みを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第一実施形態のサーマルプリンタの斜視図である。
【図2】プリンタカバーを開けたときの第一実施形態のサーマルプリンタの斜視図である。
【図3】図1のA−A線に沿った断面図である。
【図4】図1のA−A線に沿った断面図であって、未使用のロールを収容したときの説明図である。
【図5】図1のA−A線に沿った断面図であって、使用によりロールが小径化したときの説明図である。
【図6】図5のB−B線に沿った断面図である。
【図7】第二実施形態のサーマルプリンタの斜視図である。
【図8】プリンタカバーを開けたときの第二実施形態のサーマルプリンタの斜視図である。
【図9】図7のC−C線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第一実施形態)
以下に、本発明に係るプリンタの第一実施形態について、図面を参照して説明をする。なお、本実施形態では、プリンタの一例として、サーマルプリンタを例に挙げて説明する。
図1は、本実施形態のサーマルプリンタ1の斜視図である。なお、図1では、サーマルプリンタ1から排出されるロール紙Pを二点鎖線で図示している。
図2は、プリンタカバー3を開けたときの本実施形態のサーマルプリンタ1の斜視図である。
図3は、図1のA−A線に沿った断面図である。なお、図3では、ロール50が収容された状態で、ロール50を二点鎖線で示している。
図1に示すように、本実施形態のサーマルプリンタ1は、ケーシング2と、プリンタカバー3とを備えている。サーマルプリンタ1は、図1における上下方向がロール50の自重方向であり、床面Gに載置して使用されるものである。以下の説明では、自重方向上側を単に上側といい、自重方向下側を単に下側として説明する。
また、本実施形態のサーマルプリンタ1は、プリンタカバー3がケーシング2の上側に水平(横)に配置され、印刷されたロール紙Pが上側から排出される、いわゆる横置き上出しプリンタである。
【0023】
図2に示すように、ケーシング2は、プラスチックや金属材料等により、上側に開口部2aを有し、下側に底部2bを有する略箱状に形成されている。ケーシング2の内部にはロール収容部20が形成されている。ロール収容部20には、ロール紙Pが巻回されたロール50(図3参照)がケーシング2の開口部2aから投入されて収容される。すなわち、サーマルプリンタ1は、いわゆるドロップイン方式のプリンタである。ロール収容部20の詳細については後述する。
【0024】
図3に示すように、ケーシング2の開口部2aの一側(図3における右側)には、サーマルヘッド4が組み込まれている。
サーマルヘッド4は、ロール50から引き出されるロール紙Pに印字を行う部材であり、複数の発熱素子が並んで配置されている。サーマルヘッド4の発熱素子が並んで配置される方向(図3における紙面表裏方向)は、ロール50の軸方向と一致している。
サーマルヘッド4は、ヘッド支持体16に固定されている。さらに、ヘッド支持体16は、例えばコイルバネ等のバネ部材16aによって後述するプラテンローラ5側に付勢されており、この結果、サーマルヘッド4はプラテンローラ5に弾性的に圧接される。
【0025】
サーマルヘッド4の上方近傍には、固定刃11aが設けられている。この固定刃11aは、平板状に形成されており、開口部2aの縁部に沿って配置されている。固定刃11aは、後述のプリンタカバー3に設けられた可動刃11bとともにカッターユニット11を構成している。
【0026】
図2に示すように、サーマルヘッド4の一端側(図2における紙面手前側)における開口部2aの縁部には、ステッピングモータによって回転する歯車列18が設けられている。歯車列18は、後述するプラテンローラ5に連結された従動歯車13に回転力を伝達し、プラテンローラ5を回転させる。
【0027】
ケーシング2の上側には、開口部2aを閉塞するプリンタカバー3が設けられている。プリンタカバー3は、ケーシング2の開口部2aの一端の縁部に、ヒンジ部7を介して取り付けられており、ヒンジ部7のヒンジ軸7a周りに回動し、ケーシング2に対して開閉自在になっている。図3に示すように、プリンタカバー3を閉じてケーシング2の開口部2aを閉塞したとき、プリンタカバー3は、ケーシング2の上側で床面Gに対して略水平に配置される。
【0028】
プリンタカバー3には、ロック機構が設けられている。プリンタカバー3を閉じたとき、ロック機構によってプリンタカバー3とケーシング2とがロックされる。プリンタカバー3とケーシング2とがロックされた後は、ロック機構を解除しないとプリンタカバー3を開けることができないようになっている。
図1に示すように、プリンタカバー3の先端側の角部には、開閉レバー8が設けられている。開閉レバー8を操作することにより、サーマルプリンタ1の外側からワンタッチでロック機構が解除され、プリンタカバー3を開けることができる。
【0029】
図2に示すように、プリンタカバー3の先端側には、プリンタカバー3の縁部に沿ってプラテンローラ5が設けられている。プラテンローラ5は、ゴム等の弾性体により略円筒状に形成されており、プラテンローラ5の軸方向は、ロール50(図3参照)の軸方向と一致している。プラテンローラ5の軸方向の一端側(図2における紙面手前側)には従動歯車13が固定されており、プリンタカバー3が閉じられたときにケーシング2に設けられた歯車列18に噛合するようになっている。これにより、プラテンローラ5は、不図示のステッピングモータからの回転駆動力によって回転するようになっており、図3に示すようにサーマルヘッド4とプラテンローラ5との間でロール紙Pを挟持して、ロール紙Pをロール50から引き出し搬送することができる。なお、上述したステッピングモータは、不図示の制御部の信号を受けて回転する。
【0030】
プリンタカバー3の先端内側とプラテンローラ5との間には、固定刃11aと対向する可動刃11bが設けられている。可動刃11bは、平板状に形成されており、プリンタカバー3の先端側の縁部に沿って配置され、可動刃11bの刃先は、プリンタカバー3の開放先端側に向いている。
【0031】
プリンタカバー3を閉じたとき、ヒンジ部7とは反対側の一側(図3における右側)であって、ケーシング2の周縁とプリンタカバー3の周縁との間には、ロール紙Pを排出するための排出口6が形成される。排出口6は、ケーシング2の内外を上下方向に連通するように形成されており、印刷されたロール紙Pがプリンタカバー3の上側に排出される。
【0032】
また、プリンタカバー3を閉じたとき、ケーシング2の内側の排出口6に対応する箇所には、印刷ユニット10とカッターユニット11とが形成される。
印刷ユニット10は、プリンタカバー3を閉じたときに、排出口6の下側において、プラテンローラ5とサーマルヘッド4とが、ロール紙Pを挟んだ状態で対向配置されて形成される。この際、上述したように、サーマルヘッド4は、バネ部材16aによる付勢力によってプラテンローラ5側に圧接される。また、プラテンローラ5は、ロール紙Pをサーマルヘッド4との間に圧接しながら搬送し、排出口6から外部に送り出している。
【0033】
カッターユニット11は、プリンタカバー3が閉じられたときに、印刷ユニット10と排出口6との間において、ケーシング2側に設けられた固定刃11aと、プリンタカバー3側に設けられた可動刃11bとが、対向配置されて形成される。可動刃11bは、制御部(不図示)からの信号に基づいて駆動する電動モータ(不図示)によって、輪列を介して固定刃11a側に向かってスライド移動可能に設けられている。印刷ユニット10での印刷作業が終了すると、制御部から切断信号を受信して可動刃11bがスライド移動し、ロール紙Pが切断されるようになっている。
【0034】
印刷ユニット10の下側には、テンションローラ9が設けられている。テンションローラ9は、ゴム等の弾性体により略円筒状に形成されている。テンションローラ9は、ロール50から引き出されるロール紙Pを揺動可能に付勢しており、この結果、ロール紙Pに一定のテンションが付与される。これにより、ロール紙Pは、弛みが生じにくい状態でロール50から引き出されて搬送され、サーマルヘッド4とプラテンローラ5との間に導入される。
【0035】
(ロール収容部)
図2に示すように、ケーシング2の内側には、ロール50(図3参照)を収容するロール収容部20が設けられている。
ロール収容部20は、図2に示すように、収容されるロール50の軸方向両端に配置される一対の側壁21,22と、図3に示すように、ロール50の外周面52と当接してロール50を支持するロール支持部25(請求項の「支持手段」に相当。)と、ロール紙Pの使用によりロール50が小径化したことを検出するロール残量検出センサ60(請求項の「ロール残量検出手段」に相当。)とにより構成されている。
【0036】
図2に示すように、一対の側壁21,22は平坦に形成されており、ロール50(図3参照)の側面と略平行に配置されている。一対の側壁21,22の離間距離は、ロール50(図3参照)の軸方向の幅よりも若干広く形成されている。
【0037】
(ロール支持部)
一対の側壁21,22の間における下側には、ロール支持部25が設けられている。図3に示すように、ロール支持部25は、ロール50の下側において、ロール紙Pの搬送方向の下流側(図3における右側)に配置される第一支持部材31と、該第一支持部材31を弾性的に付勢する付勢部材支持片24と、第一支持部材31よりもロール紙Pの搬送方向の上流側(図3における左側であり、ロール紙Pの引出し方向とは反対側)に配置される第二支持部材36と、第一支持部材31を第二支持部材36側に付勢する付勢部材40とを備えている。第一支持部材31および第二支持部材36は、ロール収容部20の底部23上に設けられている。
【0038】
(第一支持部材)
第一支持部材31は、ロール50の軸方向に沿った幅がロール50の軸方向の幅と略同一に形成されている。第一支持部材31は、ロール50の外周面52と当接可能な第一当接部32と、第一当接部32の上側に形成されたロール案内部35と、第一当接部32の下側に形成された延出片33とを備えている。
第一支持部材31は、後述する付勢部材40によって第二支持部材36側に付勢されており、ロール収容部20の底部23上において、ロール紙Pの搬送方向に沿って第二支持部材36と接近離反するようにスライド移動可能に形成されている。第一支持部材31のスライド移動の詳細については、後述する作用で説明する。
【0039】
第一当接部32は、ロール50の下側において、ロール50の中心軸Oに対応する位置よりもロール紙Pの搬送方向の下流側(ロール紙Pの引出し方向側)で、ロール50の外周面52と当接可能に形成されている。第一当接部32は、上側に第一ローラ部32aを備え、下側に第一傾斜面32bを備えている。
第一ローラ部32aは、アルミ等の金属やゴム等の弾性体等により略円筒状に形成されており、第一ローラ部32aの軸方向は、ロール50の軸方向と一致している。第一ローラ部32aは、未使用のロール50を支持したとき、ロール50の中心軸Oに対応する位置よりもロール紙Pの搬送方向の下流側で、ロール50の外周面52と当接するように形成されている。
第一ローラ部32aの下側には、第一傾斜面32bが形成されている。第一傾斜面32bは、ロール紙Pの搬送方向の下流側から上流側(図3における右側から左側)に向かって、上側から下側に傾斜して形成されている。
【0040】
また、第一当接部32には、ロール紙Pの搬送方向の下流側に、支持部34が形成されている。
【0041】
第一当接部32の上側に形成されたロール案内部35は、軸方向視略三角形状に形成されており、ロール50が配置される側に面する案内面35aが形成されている。案内面35aは、ロール50の下側において、ロール紙Pの搬送方向の下流側から上流側に向かって下側に傾斜しており、第一傾斜面32bと略同一面に連続して形成されている。ロール50は、ロール収容部20内に投入された後、傾斜した案内面35aに沿って下側に案内され、第一支持部材31と第二支持部材36との間に配置される。
【0042】
ロール案内部35には、ロール紙Pの搬送方向の下流側に面する当接面35bが形成されている。当接面35bは、ロール収容部20内に未使用のロール50が収容され、第一支持部材31がロール紙Pの搬送方向の下流側にスライド移動したとき、後述する付勢部材支持片24のストッパ面24bと当接して第一支持部材31のスライド移動を規制している。
【0043】
第一当接部32の下側に形成された延出片33は、第一当接部32の下端からロール紙Pの搬送方向の上流側に向かって、ロール収容部20の底部23に沿うように延出形成されている。延出片33は、略平板状に形成されており、下面33aがロール収容部20の底部23と面接触しているとともに、後述する第二支持部材36に形成された第二傾斜面37bの下端37cは、前記延出片33の上面33bに摺動可能に当接している。延出片33の上面33bが第二支持部材36と接することで、第一支持部材31がスライド移動する際に、第一当接部32が浮き上がるのを防止している。
【0044】
付勢部材支持片24は、一対の側壁21,22(図2参照)の間における下側であって、第一支持部材31よりもロール紙Pの搬送方向の下流側(図3における右側)に設けられている。付勢部材支持片24には、付勢部材支持部24aが形成されており、後述する付勢部材40をこの支持部34との間で支持している。
また、付勢部材支持片24の上側には、ロール紙Pの搬送方向の上流側に面するストッパ面24bが形成されている。ストッパ面24bは、第一支持部材31の当接面35bと当接することで第一支持部材31のスライド移動量を規制している。
【0045】
(第二支持部材)
第二支持部材36は、ロール50の軸方向に沿った幅がロール50の軸方向の幅と略同一に形成されている。第二支持部材36は、ロール50の外周面52と当接可能な第二当接部37を備えている。
第二当接部37は、ロール50の中心軸Oに対応する位置よりもロール紙Pの搬送方向の上流側で、ロール50の外周面52と当接可能に形成されている。第二当接部37は、上側に第二ローラ部37aを備え、下側に第二傾斜面37bを備えている。
第二ローラ部37aは、第一ローラ部32aと同様に、アルミ等の金属やゴム等の弾性体等により略円筒状に形成されており、第二ローラ部37aの軸方向は、ロール50の軸方向(幅方向)と一致している。第二ローラ部37aは、ロール収容部20内に未使用のロール50を支持したとき、ロール50の中心軸Oに対応する位置よりもロール紙Pの搬送方向の上流側で、ロール50の外周面52と当接するように形成されている。
第二ローラ部37aの下側に形成された第二傾斜面37bは、ロール紙Pの搬送方向の上流側から下流側(図3における左側から右側)に向かって、上側から下側に傾斜して形成されている。第二傾斜面37bは、ロール50が使用されて小径化したとき、ロール50の中心軸Oに対応する位置よりもロール紙Pの搬送方向の上流側で、ロール50の外周面52と当接するように形成されている。
【0046】
第二傾斜面37bの下端37cは、ロール収容部20の底部23から上側に離間して配置されている。第二傾斜面37bの下端37cとロール収容部20の底部23との間には、第一支持部材31に形成された延出片33が配置されている。
第二傾斜面37bの下端37cは、ロール50が収容されていないとき、第一支持部材31の第一傾斜面32bと延出片33とにより形成された角部(延出片33から第一傾斜面32bの立ち上がり部)と当接している。これにより、第二支持部材36側に付勢された第一支持部材31の位置が規制されている。
また、第二傾斜面37bの下端37cは、ロール50が収容されて第一支持部材31がスライド移動しているとき、延出片33の上面33bと接している。これにより、第一支持部材31がスライド移動する際に、第一当接部32が上側に浮き上がるのを防止している。
【0047】
(付勢部材)
第一支持部材31と付勢部材支持片24との間には、第一支持部材31を第二支持部材36に向かって付勢する付勢部材40が設けられている。付勢部材40は、例えばコイルバネにより形成されており、一端側が第一支持部材31の支持部34に外挿され、他端側が付勢部材支持片24の付勢部材支持部24aに外挿されて取り付けられている。付勢部材40は、ロール50の軸方向に並んで略等間隔に3本配置されている。これにより、第一支持部材31は、ロール50の軸方向に渡って略均等の付勢力で第二支持部材36側に付勢されている。
【0048】
(ロール残量検出センサ)
ケーシング2の一方の側壁21には、ロール50の軸方向の外側に接するロール残量検出センサ60が設けられている。ロール残量検出センサ60は、第一突起61および第二突起62を備えている。
第一突起61は、ロール50側が略円錐形状に形成されており(図2参照)、外形がロール50の中心孔51よりも小さく形成されている。
第一突起61の中心軸61aは、第一支持部材31の第一当接部32および第二支持部材36の第二当接部37から所定値Rだけ離間するように配置されている。これにより、第一突起61は、未使用のロール50が使用されて小径化し、ロール50の半径が所定値Rとなったとき、ロール50の中心孔51に入り込めるようになっている。
【0049】
第二突起62は、第一突起61と同様にロール50側が略円錐形状に形成されている(図2参照)。第二突起62は、第一突起61よりも上側において、第一突起61の中心軸61aから所定値Rよりも大きな距離だけ離間した位置に形成されている。これにより、第二突起62は、未使用のロール50が使用されて小径化し、ロール50の半径が所定値Rとなったとき、ロール50の径方向外側に配置されてロール50側に移動可能となっている。
【0050】
第一突起61および第二突起62は、ケーシング2の一方の側壁21に形成された貫通孔21a,21bを介して、収容されるロール50側に向かって軸方向に沿って突設されている。また、第一突起61および第二突起62は、未使用のロール50の中心孔51よりも径方向外側で外周面52よりも径方向内側に突出するように配置されている。
第一突起61および第二突起62は、不図示のバネ部材によりロール50側に向かって付勢されており、貫通孔21a,21bに対して出没自在に形成されている。したがって、未使用のロール50をロール収容部20に収容したとき、ロール50の側面53によってロール50の軸方向外側に押圧された状態となっている。このとき、第一突起61および第二突起62の先端は、ロール50の側面53に当接した状態で配置される。
【0051】
さらに、本実施形態の第一突起61および第二突起62は、連結部63(図6参照)によって連結されている。これにより、第一突起61および第二突起62は、ロール50の軸方向に沿って連動して移動可能に形成されている。したがって、第一突起61がロール50の中心孔51に入り込むのに連動して、第二突起62がロール50側に移動可能になっている。第一突起61および第二突起62が連動してロール50側に移動することにより、ロール残量検出センサ60は、ロール50が使用によって半径が所定値R以下の小径になったことを検出できる。
【0052】
このように、ロール残量検出センサ60は、第一突起61によりロール50の中心孔51の位置を検出するとともに、第二突起62によりロール50の外周面52の位置を検出することで、ロール50の小径化を検出している。したがって、ロール50の中心孔51の位置およびロール50の外周面52の位置のいずれか一方のみを検出することでロール50の小径化を検出するロール残量検出手段よりも、正確にロール50の小径化を検出できる。
【0053】
(作用)
次に、図面を用いて、サーマルプリンタ1でロール紙Pに印字したときの作用について説明をする。
図4は、図1のA−A線に沿った断面図であって、未使用のロール50を収容したときの説明図である。なお、図4では、未使用のロール50の投入直後におけるロール50の外周面52の一部およびスライド移動前の第一支持部材31を二点鎖線で図示している。スライド移動前の第一支持部材31は、付勢部材40によって第二支持部材36に付勢された状態となっている。
【0054】
図4に示すように、プリンタカバー3を開き、ロール収容部20に未使用のロール50を投入すると、第一支持部材31に形成されたロール案内部35の案内面35aに沿って、ロール50が下側に案内される。
このとき、収容途中のロール50の外周面52と第一支持部材31(図4では案内面35a)との当接ポイントKには、ロール50の自重により自重方向下側に荷重Fが発生する。このロール50の自重による荷重Fは、傾斜した案内面35aによって、案内面35aと直交する方向の荷重F1と、案内面35aに沿う方向の荷重F2とに分解される。
【0055】
続いて、ロール50が自重によって下側に移動するのに伴い、第一支持部材31が荷重F1によって第二支持部材36から離反する方向(図4における右側)にスライド移動する。ここで、第一支持部材31は、第二支持部材36側、すなわちロール紙Pの搬送方向の下流側から上流側に向かって付勢部材40によって付勢されている。しかし、未使用のロール50は自重が十分重いため、第一支持部材31は、ロール50の自重により付勢部材40の付勢力に抗して第二支持部材36から離反するように、すなわちロール紙Pの搬送方向の上流側から下流側に向かってスライド移動する。
【0056】
続いて、ロール50が下側にさらに移動すると、第一支持部材31がさらにスライド移動する。そして、第一支持部材31の当接面35bと付勢部材支持片24のストッパ面24bとが当接した時点で、第一支持部材31のスライド移動が規制される。
このとき、第一支持部材31の第一当接部32は、ロール50の中心軸Oに対応する位置よりもロール紙Pの搬送方向の下流側(図4における右側)で、ロール50の外周面52と当接する。また、第二支持部材36の第二当接部37は、ロール50の中心軸Oに対応する位置よりもロール紙Pの搬送方向の上流側(図4における左側)で、ロール50の外周面52と当接する。これにより、未使用のロール50は、第一支持部材31および第二支持部材36により支持される。なお、本実施形態では、未使用のロール50を収容したとき、第一当接部32の第一ローラ部32aと第二当接部37の第二ローラ部37aとが、ロール50の外周面52と当接することにより、未使用のロール50が支持されている。
【0057】
また、未使用のロール50が収容されると、ロール残量検出センサ60の第一突起61および第二突起62は、ロール50の側面53によってロール50の軸方向外側に押圧される。これにより、第一突起61および第二突起62の先端は、ロール50の側面53に当接しつつロール50の側面53を付勢した状態で配置される。
【0058】
続いて、ロール50からロール紙Pを引き出して、印刷ユニット10へと引き込む。これにより、プラテンローラ5とサーマルヘッド4との間にロール紙Pが配置されて、ロール紙Pへの印刷準備が完了する。
【0059】
続いて、ロール紙Pへの印刷を開始すると、不図示のステッピングモータが回転し、プラテンローラ5が回転する。また、これと共に、ロール紙Pに印刷するために必要な情報に基づいてサーマルヘッド4の発熱素子を発熱させる。これにより、ロール紙Pの印刷面には、サーマルヘッド4を通過する際に、発熱素子によって所望の文字や図形等が印刷される。ロール50は、プラテンローラ5の回転に伴ってロール紙Pが排出口6に向かって送り出されて回転運動する。また、プラテンローラ5によって送り出されたロール紙Pは、カッターユニット11により所望の長さに切断される。
【0060】
ここで、ロール紙Pの使用開始直後、ロール50の外周面52は第一当接部32の第一ローラ部32aおよび第二当接部37の第二ローラ部37aと当接している。この状態でロール紙Pが搬送されてロール50が回転すると、ロール50の外周面52とともに第一ローラ部32aおよび第二ローラ部37aも回転する。これにより、ロール紙Pの使用量が少なくロール50が重いときに、第一ローラ部32aおよび第二ローラ部37aが回転することでロール50と第一当接部32および第二当接部37との摩擦力を軽減できる。したがって、ロール紙Pを搬送する際に大きなトルクが必要ないので、ステッピングモータの大型化を抑制できる。
【0061】
図5は、図1のA−A線に沿った断面図であって、使用によりロール50が小径化したときの説明図である。
図5に示すように、ロール紙Pの使用量が増すにつれて、ロール50が小径化するとともに、ロール50の重量が軽くなる。ここで、第一支持部材31は、第二支持部材36側に付勢部材40によって付勢されている。したがって、第一支持部材31は、ロール紙Pの使用によりロール50の重量が軽く、小径化するのに対応して、付勢部材40の付勢力によりロール50の自重に抗して第二支持部材36側に接近するようにスライド移動する。
【0062】
また、第一支持部材31が第二支持部材36側に接近するようにスライド移動することで、第一支持部材31の第一当接部32および第二支持部材36の第二当接部37は、ロール50の直径の変化に追従してロール50の外周面52に当接する。これにより、第一支持部材31および第二支持部材36は、未使用のロール50を支持するのと同様に、使用により小径化したロール50を、第一支持部材31および第二支持部材36の上側で支持できる。したがって、常にロール50の外周面52には負荷が付与されているので、印刷停止時にロール50が慣性力により回転するのを抑制でき、印刷停止時のロール紙Pの弛みを防止できる。
さらに、本実施形態では、ロール50が小径化したとき、ロール50の外周面52が第二当接部37の第二傾斜面37bと当接する。これにより、ロール50が回転するとロールの外周面52と第二傾斜面37bとが摺接するので、ロール紙Pの使用量が増加してロール50が軽くなったときに、ロール50と第二当接部37との摩擦力を確保できる。したがって、ロール50が軽いときであっても、印刷停止時にロール50が慣性力により回転するのを抑制でき、印刷停止時のロール紙Pの弛みを防止できる。
【0063】
ロール紙Pへの印刷が継続されると、ロール紙Pはロール50から引き出されて、ロール50はさらに小径化する。そして、ロール50の半径が所定値Rとなったとき、ロール50の中心軸Oとロール残量検出センサ60の第一突起61の中心軸61aとが一致する。また、ロール50の中心軸Oと第一突起61の中心軸61aとが一致したとき、第二突起62は、ロール50の径方向外側に配置される。
【0064】
図6は、図5のB−B線に沿った断面図である。
ロール50の中心軸Oと第一突起61の中心軸61aとが一致すると、図6に示すように、ロール50の側面53により軸方向外側に押圧されていた第一突起61は、不図示のバネ部材の付勢力によりロール50の中心孔51に入り込んでロール50側に移動する。また、連結部63により第一突起61と連結された第二突起62は、第一突起61の移動に連動してロール50の径方向外側でロール50側に移動する。したがって、ロール残量検出センサ60は、第一突起61および第二突起62のロール50側への移動により、ロール50が使用によって半径が所定値R以下の小径になったことを検出できる。その後、ロール残量検出センサ60は、信号を出力してケーシング2(図1参照)に設けられた不図示の表示部にロール50の交換が必要である旨を警告表示する。ロール50の交換の警告表示がされた時点で、ロール紙Pへの印刷動作が停止し、ロール紙Pへの印刷が終了する。
【0065】
(第一実施形態の効果)
本実施形態によれば、第一支持部材31は、ロール50を支持した状態で付勢部材40の付勢力によりロール50の自重に抗して第二支持部材36に向かってスライド移動する。したがって、ロール紙Pの使用によりロール50が小径となっても、ロール50を自重方向下側に移動させることなく第一当接部32および第二当接部37がロール50の外周面52に当接できる。さらに、第一支持部材31および第二支持部材36は、未使用のロール50を支持するのと同様に、使用により小径化したロール50を、第一支持部材31および第二支持部材36の上側で支持できる。すなわち、第一支持部材31を第二支持部材36に向かってスライド移動可能に形成することで、未使用のロール50を支持するのに必要なスペースさえ確保できればよく、従来技術のように自重方向下側にロール50の移動スペースを設ける必要がない。したがって、サーマルプリンタ1が自重方向下側に大型化するのを抑制できる。
また、第一支持部材31および第二支持部材36は、ロール50の重量が軽くなるのに対応して、付勢部材40の付勢力により互いに接近するように形成されている。このとき、第一支持部材31の第一当接部32および第二支持部材36の第二当接部37は、ロール50の直径の変化に追従してロールの外周面に当接できるので、常にロール50の外周面52に負荷を付与できる。これにより、印刷停止時にロール50が慣性力により回転するのを抑制でき、印刷停止時のロール紙Pの弛みを防止できる。
したがって、サーマルプリンタ1の大型化を抑制しつつ、ロール紙Pの使用量に対応して印刷停止時のロール紙Pの弛みを防止できる。
【0066】
また、本実施形態によれば、ロール残量検出センサ60は、第一突起61がロール50の中心孔51に入り込んでロール50側に移動することでロール50の小径化を検出しているので、小径のロール50の下端部を検知する必要がない。これにより、ロール50を下側に移動させる必要がなく、さらにロール50の下側にロール残量検出センサ60を設ける必要がないので、サーマルプリンタ1が下側に大型化するのを抑制できる。
【0067】
また、本実施形態によれば、ケーシング2内に第一支持部材31および第二支持部材36を設けているので、自重方向上側の開口部2aにプリンタカバー3が水平(横)に配置されてロール紙Pの排出口6が上側に形成される、いわゆる横置き上出しプリンタに本発明を適用できる。したがって、横置き上出しプリンタの大型化を抑制しつつ、ロール紙Pの使用量に対応して印刷停止時のロール紙Pの弛みを防止できる。
【0068】
(第二実施形態)
続いて、第二実施形態のサーマルプリンタ1について説明する。
図7は、第二実施形態のサーマルプリンタ1の斜視図である。
図8は、プリンタカバー3を開けたときの第二実施形態のサーマルプリンタ1の斜視図である。
図9は、図7のC−C線に沿った断面図である。なお、図9では、ロール50が小径化して収容された状態を二点鎖線で示している。また、以下の説明では、自重方向と直交する方向であってケーシング2の開口部2aが設けられている側を前側とし、反対側を後側として説明する。
第一実施形態のサーマルプリンタ1は、プリンタカバー3が水平(横)に配置されてロール紙Pの排出口6が形成され、印刷されたロール紙Pが上側から排出される、いわゆる横置き上出しプリンタであった(図1参照)。これに対して、第二実施形態のサーマルプリンタ1は、図7に示すように、プリンタカバー3が鉛直(縦)に配置されてロール紙Pの排出口6が形成され、印刷されたロール紙Pが前側から排出される、いわゆる縦置き前出しプリンタである点で、第一実施形態のサーマルプリンタ1とは異なっている。なお、第一実施形態と同様の構成の部分については、詳細な説明を省略する。
【0069】
図8に示すように、ケーシング2は、自重方向と直交する方向の一方側(前側)に開口部2aを有する略箱状に形成されている。
図9に示すように、ケーシング2の開口部2aの上側には、サーマルヘッド4が組み込まれている。サーマルヘッド4の前側には、固定刃11aが設けられている。
ケーシング2の前側には、開口部2aを閉塞するプリンタカバー3が設けられている。プリンタカバー3を閉じてケーシング2の開口部2aを閉塞したとき、プリンタカバー3は、ケーシング2の前側で床面Gに対して略垂直に配置される。
【0070】
図7に示すように、プリンタカバー3を閉じたとき、ケーシング2の上側の周縁とプリンタカバー3の周縁との間には、ロール紙Pを排出するための排出口6が形成される。排出口6は、ケーシング2の内外を前後方向に連通するように形成されており、印刷されたロール紙Pがプリンタカバー3の前側に排出される。
図9に示すように、印刷ユニット10は、排出口6の後側(図9における右側)において、プラテンローラ5とサーマルヘッド4とが、ロール紙Pを挟んだ状態で対向配置されて形成される。
カッターユニット11は、印刷ユニット10と排出口6との間において、ケーシング2側に設けられた固定刃11aと、プリンタカバー3側に設けられた可動刃11bとが、ロール紙Pを挟んだ状態で対向配置されて形成される。印刷ユニット10の後側には、テンションローラ9が設けられている。
【0071】
(ロール支持部)
図8に示すように、一対の側壁21,22の間の下側およびプリンタカバー3には、ロール支持部25が設けられている。
図9に示すように、第一支持部材31は、ロール収容部20の底部23上に設けられており、第二支持部材36はプリンタカバー3のヒンジ部7近傍に設けられている。
【0072】
一対の側壁21,22(図8参照)の間における下側であって、第一支持部材31よりもロール紙Pの搬送方向の下流側(図9における右側)には、付勢部材40を支持する付勢部材支持片24が設けられている。
付勢部材支持片24には、上側にロール案内部35が形成されている。ロール案内部35は、案内面35aを備えている。案内面35aは、ロール紙Pの搬送方向の下流側から上流側に向かって下側に傾斜しており、第一傾斜面32bと略同一の角度で傾斜して形成されている。ロール収容部20内に投入されたロール50は、傾斜した案内面35aに沿って下側に案内されて、第一支持部材31と第二支持部材36との間に配置される。
【0073】
(第二支持部材)
第二支持部材36は、プリンタカバー3の内側に設けられており、ロール50の中心軸Oに対応する位置よりもロール紙Pの搬送方向の上流側で、ロール50の外周面52と当接可能な第二当接部37を備えている。第二当接部37は、第二ローラ部37aおよび第三ローラ部37dにより形成されている。
【0074】
未使用のロール50を収容する際は、まず、プリンタカバー3を開け、プラテンローラ5と第二当接部37との間に未使用のロール50を載置する。
続いて、プリンタカバー3を閉めて未使用のロール50をロール収容部20に押し込むことにより、第一支持部材31がロール紙Pの搬送方向の上流側から下流側(図9における左側から右側)に向かってスライド移動し、未使用のロール50がロール収容部20内に収容される。このとき、未使用のロール50は、第一当接部32の第一ローラ部32a(図9における二点鎖線で図示)と、第二当接部37の第二ローラ部37aとが、ロール50の外周面52と当接することで支持される。
続いて、ロール紙Pの使用によりロール50が小径化すると、第一支持部材31が第二支持部材36側に接近するように、すなわちロール紙Pの搬送方向の下流側から上流側(図9における右側から左側)に向かってスライド移動する。そして、小径化したロール50は、第一当接部32の第一傾斜面32bおよび第二当接部37の第三ローラ部37dが、ロール50の外周面52と当接することで支持される。
なお、ロール残量検出センサ60の動作については、第一実施形態と同様のため説明を省略する。
【0075】
(第二実施形態の効果)
本実施形態によれば、第一支持部材31をケーシング2内に設け、第二支持部材36をプリンタカバー3に設けているので、前側の開口部2aにプリンタカバー3が鉛直(縦)に配置されてロール紙Pの排出口が前に形成される、いわゆる縦置き前出しプリンタに本発明を適用できる。したがって、縦置き前出しプリンタの大型化を抑制しつつ、ロール紙Pの使用量に対応して印刷停止時のロール紙Pの弛みを防止できる。
【0076】
なお、この発明の技術範囲は上記実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0077】
各実施形態では、プリンタの一例としてサーマルプリンタ1を例に挙げて説明したが、これに限定されることはない。例えば、インク滴を利用してロール紙に印刷するインクジェットプリンタ等、サーマルプリンタ1以外のプリンタにも本発明を適用できる。
【0078】
各実施形態では、ケーシング2の開口部2aの縁部に沿って印刷ユニット10が配置され、印刷ユニット10の上方にカッターユニット11が配置されていたが、印刷ユニット10およびカッターユニット11の位置は実施形態に限定されることはない。またカッターユニット11は、必ずしも備えている必要はない。
【0079】
各実施形態では、付勢部材40はコイルバネにより形成されていたが、付勢部材40はコイルバネに限られない。また、各実施形態では、付勢部材40の本数が3本であったが、付勢部材40の本数は3本に限られない。
【0080】
各実施形態では、ロール残量検出センサ60は、ロール50側に付勢された第一突起61を備えており、第一突起61がロール50側に移動することでロール50の中心孔51の位置を検出していた。しかし、ロール残量検出手段は実施形態のロール残量検出センサ60に限定されることはなく、例えば、光センサにより、ロール50の中心孔51の位置を検出することでロール50の残量を検出してもよい。光センサを用いても、本発明と同様の効果が得られる。
【0081】
第一実施形態では、第一当接部32は第一ローラ部32aおよび第一傾斜面32bにより構成され、第二当接部37は第二ローラ部37aと第二傾斜面37bとにより構成されていた。また、第一実施形態では、第一当接部32は第一ローラ部32aおよび第一傾斜面32bにより構成され、第二当接部37は第二ローラ部37aおよび第三ローラ部37dにより構成されていた。しかし、第一当接部32および第二当接部37の構成は各実施形態に限定されることはない。例えば、ローラ部の個数は実施形態に限定されることはない。
【0082】
第一実施形態では、ロール50が小径化したとき、ロール50の外周面52と第二当接部37の第二傾斜面37bとが当接することで、ロール50が軽くなったときのロール50と第二当接部37との摩擦力を確保していた。これに対して、例えば、ロール50の外周面52と第一当接部32の第一傾斜面32bとが当接することにより、ロール50が軽くなったときの摩擦力を確保してもよい。また、ロール50の外周面52と第一傾斜面32bおよび第二傾斜面37bの両方とが当接することにより、ロール50が軽くなったときの摩擦力を確保してもよい。
【0083】
各実施形態では、第一支持部材31に付勢部材40が取り付けられており、第一支持部材31が第二支持部材36側に付勢されていた。これに対して、例えば、第二支持部材36に付勢部材40が取り付けられ、第二支持部材36が第一支持部材31側に付勢されていてもよい。また、第一支持部材31および第二支持部材36の両方に付勢部材40が取り付けられており、第一支持部材31および第二支持部材36がお互いに付勢されていてもよい。上記のいずれの場合においても、第一支持部材31および第二支持部材36が相対的にスライド移動可能に形成されることで、本発明の目的を達成できる。
【符号の説明】
【0084】
1・・・サーマルプリンタ(プリンタ) 2・・・ケーシング 3・・・プリンタカバー 25・・・ロール支持部(支持手段) 31・・・第一支持部材 32・・・第一当接部 32a・・・第一ローラ部 36・・・第二支持部材 37・・・第二当接部 37a・・・第二ローラ部 40・・・付勢部材 50・・・ロール 51・・・中心孔 52・・・外周面 53・・・側面 60・・・ロール残量検出センサ(ロール残量検出手段) 61・・・第一突起 P・・・ロール紙 O・・・中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール紙が巻回されたロールの外周面と当接して前記ロールを支持する支持手段を備え、前記ロールを回転させながら前記ロール紙を引き出し印刷するプリンタであって、
前記支持手段は、
前記ロールの自重方向下側において、前記ロールの中心軸に対応する位置よりも前記 ロール紙の引出し方向の下流側で前記ロールの外周面と当接可能な第一当接部を有する 第一支持部材と、
前記ロールの自重方向下側において、前記ロールの中心軸に対応する位置よりも前記 ロール紙の引出し方向とは反対の前記ロールの外周面と当接可能な第二当接部を有する 第二支持部材と、
前記第一支持部材および前記第二支持部材のうち少なくとも一方を他方に向かって付 勢する付勢部材と、
を備え、
前記第一支持部材および前記第二支持部材は、前記第一当接部および前記第二当接部が前記ロールの外周面に当接し前記ロールを支持した状態で、相対移動可能に形成されるとともに、
前記第一支持部材および前記第二支持部材は、未使用の前記ロールを支持したとき前記ロールの自重により前記付勢部材の付勢力に抗して互いに離反するように相対移動し、前記ロール紙の使用によって前記ロールの重量が軽くなるのに対応して前記付勢部材の付勢力により前記ロールの自重に抗して互いに接近するように相対移動することを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
請求項1に記載のプリンタであって、
前記第一支持部材の前記第一当接部は、前記ロールの外周面と当接して回転可能な第一ローラ部を備え、
前記第二支持部材の前記第二当接部は、前記ロールの外周面と当接して回転可能な第二ローラ部を備え、
前記第一当接部および前記第二当接部は、未使用の前記ロールを支持したとき前記第一ローラ部および前記第二ローラ部が前記ロールの外周面に当接するように形成されていることを特徴とするプリンタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプリンタであって、
前記ロール紙は、前記ロールの中心に中心孔を有するように巻回されており、
前記支持手段を構成する少なくとも一つの側壁には、前記ロール紙の使用によって前記ロールが小径化したことを検出するロール残量検出手段を備え、
前記ロール残量検出手段は、前記ロールの軸方向に沿って前記ロール側に付勢され、ロールの巻回中心孔よりも小形な第一突起を備え、
前記ロール残量検出手段は、前記支持手段で支持された前記ロールが小径化したとき、前記第一突起が前記ロールの巻回中心孔に入り込んで前記ロール側に移動することで、前記ロールが小径化したことを検出することを特徴とするプリンタ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のプリンタであって、
前記ロールを収容し、自重方向上側に開口部を有するケーシングと、前記開口部を閉塞するプリンタカバーとを備え、
前記第一支持部材および前記第二支持部材は、前記ケーシング内に設けられていることを特徴とするプリンタ。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載のプリンタであって、
前記ロールを収容し、自重方向と交差する方向に開口部を有するケーシングと、前記開口部を閉塞するプリンタカバーと、を備え、
前記第一支持部材および前記第二支持部材のうち一方は前記ケーシング内に設けられ、他方は前記プリンタカバーに設けられていることを特徴とするプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−111924(P2013−111924A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262083(P2011−262083)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】