プリントエンジンのページ印刷を効率的に行うための方法及びシステム
【課題】省電力化を図りつつ、用紙などの物理媒体に効率的に印刷するための方法を提供する。
【解決手段】この方法は、グラフィックス命令としてフォーマットされた複数の論理ページを有する印字ジョブを受信し、ラスタ画像プロセッサ(RIP)が印字ジョブをレンダリングしてラスタライズ画像にする。印字ジョブのレンダリング中に、ラスタライズ画像が論理ページとしてメモリに蓄積される。ウォームアップ信号の受信に応じて、プリントエンジンを動作温度まで温めて、RIPが蓄積されたラスタライズ画像の論理ページを印刷装置のプリントエンジンに送信する。印刷装置の定着ローラはトナーを物理媒体上で溶融するのに充分な温度まで温められる。電力を節約するため、各論理ページの印刷と印刷の間、プリントエンジンを動作温度に維持しつつ、ラスタライズ画像の論理ページが物理媒体上に印刷される。
【解決手段】この方法は、グラフィックス命令としてフォーマットされた複数の論理ページを有する印字ジョブを受信し、ラスタ画像プロセッサ(RIP)が印字ジョブをレンダリングしてラスタライズ画像にする。印字ジョブのレンダリング中に、ラスタライズ画像が論理ページとしてメモリに蓄積される。ウォームアップ信号の受信に応じて、プリントエンジンを動作温度まで温めて、RIPが蓄積されたラスタライズ画像の論理ページを印刷装置のプリントエンジンに送信する。印刷装置の定着ローラはトナーを物理媒体上で溶融するのに充分な温度まで温められる。電力を節約するため、各論理ページの印刷と印刷の間、プリントエンジンを動作温度に維持しつつ、ラスタライズ画像の論理ページが物理媒体上に印刷される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して印刷装置に関し、より詳細には、ラスタ画像の論理ページをプリントエンジンに送信する前に蓄積することによって経済的に文書を印刷する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ウィキペディアに記載されているように、レーザプリンタは、普通紙に高品質なテキストやグラフィックスを高速で作成する一般的な種類のコンピュータプリンタである。デジタルコピー機や複合プリンタ(MFP)と同様に、レーザプリンタは、乾式電子写真方式の印刷処理を採用しているが、レーザ光で直接プリンタの感光体を走査することにより画像を作成するという点において、アナログコピー機と異なっている。レーザ光は、印刷対象ページの画像を、セレニウムで被覆され、帯電された回転ドラム上に投影する。光伝導性によって露光された領域の電荷が除去される。その後、乾式インク(トナー)粒子がドラムの帯電領域に静電的に付着する。ドラムは、その後、用紙を直接接触させて加熱することによって、インクを用紙に定着させて画像を印刷する。
【0003】
レーザプリンタは、他の種類のプリンタに比べて多くの重要な有意性を有する。刻印(インパクト)式プリンタとは異なり、レーザプリンタの速度は広範囲に変化し、その速度は、処理するジョブのグラフィック強度など多くの要因に左右される。最速の機種では、白黒ページを1分間に200ページ(1時間に12,000ページ)以上印刷することができる。
【0004】
レーザプリンタに比べて、ほとんどのインクジェットプリンタとドットマトリックスプリンタは、単に、送られてくるデータのストリームを取り込んで、プリンタが追加のデータを待っている間は休止することもある。低速のよたよたした一連の処理(slow lurching Process)でそのデータを直接インプリントする。レーザプリンタは、かかる大量のデータを高速で連続して印刷装置に出力する必要があるため、このようには動作しない。プリンタはその機構を正確に停止させることができないので、追加のデータが送られてくるのを待って停止させると、印刷ページに目に見えるギャップやドットのずれが生じてしまう。そのため、画像データを作成して、一ページ分の全ドットに相当し得る大きなメモリバンクに記憶する。すなわち、ページを中断して印刷するには、ページ全体のデータをメモリに保存する必要がある。
【0005】
図10は、ラスタ画像データを生成する処理を示す図である(従来技術)。レーザ印刷処理にはいくつかのステップがある。最初に、ラスタ画像データが生成される。ページを横切る水平方向の各ドットの細長い一片は、ラスタ線又は走査線として知られている。印刷対象の画像は、ラスタ画像プロセッサ(RIP)によって作成され、このRIPは、一般にレーザプリンタの中、もしくは、原稿をプリンタへ供給するコンピュータ又はサーバ内に内蔵される。供給された原資料は、フォーマットされていないテキストのみのデータはもちろんのこと、アドビ・ポストスクリプト(Adobe PostScript、以下、PSという)、HPプリンタコントロール言語(HP Printer Control Language、以下、PCLという)、又はMicrosoft XML Page Specification(以下、XPSという)などの多くの特殊なページ記述言語(PDL)でコード化される。RIPは、ページ記述言語(PDL)を使用して、ラスタメモリ内に最終ページのビットマップを生成する。ラスタメモリにおいてページ全体がレンダリングされると、プリンタは、ラスタ化(ラスタライズともいう)されたドットのストリームを連続ストリームで用紙に送る処理を開始する準備が整ったことになる。
【0006】
ラスタ化は、ベクタグラフィックス形式(型)で記述された画像を取り込み、ビデオディスプレイやプリンタに出力したり、ビットマップファイル形式で記憶するためにラスタ画像(ピクセル又はドット)に変換するタスクである。ラスタ化なる用語は、一般に、ベクトル情報をラスタ形式に変換することができる任意の処理に適用することができる。
【0007】
ページ記述言語を用いてグラフィカル出力を完全に行うためには、300dpiでA4サイズの白黒の文書のページ全体のドットを記憶するのに、最低1メガバイトのメモリが必要である。300dpiでは、1平方インチ当たり90,000ドット(1リニアインチ当たり300ドット)ある。一般的な8.5×11の用紙には0.25インチの余白があるため、印刷可能領域は減少して8.0×10.5インチ、すなわち、84平方インチになる。84平方インチ×90,000ドット/平方インチ=7,560,000ドットである。一方、300dpiでページ全体を保存するのにちょうどよい大きさは、1メガバイト= 1048576バイト、すなわち、8,388,608ビットであり、このうち約100キロバイトは、ラスタ画像プロセッサで使用するために取っておかれる。
【0008】
カラープリンタでは、CYMKの4つのトナー層がそれぞれ別のビットマップとして記憶され、一般的に、印刷が開始される前に4層全てが前処理されるため、300dpiでフルカラーのレターサイズのページには最低4メガバイトが必要である。必要メモリは、dpiの平方で増加するため、600dpiの白黒で最低4メガバイト、600dpiのカラーで16メガバイトが必要である。いくつかのプリンタは、ドットのサイズやドット間隔を変えることができ、こうした機能を追加すると、前述の最低容量の何倍もの容量を有するメモリが必要となる。
【0009】
図11は、感光体ドラムへの電荷の印加を示す図である(従来技術)。一次帯電ローラは、暗闇の中でその表面に静電荷を保持することができる感光体(光伝導ユニットともいわれる)、回転感光体ドラム又はベルトに静電荷を与える。旧式のプリンタでは、コロナ線とドラムが平行に配設される。DCバイアスが一次帯電ローラに印加されることによって、前の画像により残された残留電荷が除去される。また、ローラは、DCバイアスをドラム表面に印加することによって、確実にドラム表面を均一な負電位にする。所望の印字濃度はこのDCバイアスによって調整される。
【0010】
図12は、露光技術を用いた感光体ドラムへのビットマップの書込みを示す図である(従来技術)。レーザは回転しているポリゴンミラーに向けられ、ポリゴンミラーはレーザ光を一系統のレンズとミラーを介して感光体上に向ける。レーザ光は、ページを真っ直ぐに横切って掃引するような角度で感光体を掃引する。掃引している間、シリンダは回転し続け、掃引角度はこの動作を補償する。メモリに保持されているラスタライズされたデータストリームは、レーザをオンオフしてシリンダ上にドットを形成する。いくつかのプリンタは、ページ幅に及ぶ発光ダイオード(LED)のアレイの切り替えを行う。このような装置は、レーザプリンタのように、塗布された乾式トナーを充分に溶融する温度までドラムを加熱することによって動作する。レーザ又はLEDは、画像の黒い部分の電荷を中和(又は反転)させ、静電的に負の画像を感光体表面に形成してそこにトナー粒子を載せる。
【0011】
現像ステップでは、潜像を有する表面に、カーボンブラックや着色剤と混合した乾式可塑粉末の微粒子であるトナーが付与される。帯電されたトナー粒子は、負の電荷を付与され、レーザが接触した領域である感光体の潜像に静電的に吸着される。同じ電荷同士は反発するため、負に帯電されたトナー粒子はドラムの負電荷が残留しているところには付着しない。
【0012】
印刷画像全体の黒さは、供給トナーに印加される高電圧電荷によって制御される。帯電されたトナーがギャップを飛び越えてドラム表面に到達すれば、トナー自体の負の電荷が供給トナーをはじき、それ以上のトナーがドラムに飛んでくるのを防ぐ。電圧が低い場合、トナーの被覆が薄くても、更にトナーが転写するのを止めることができる。電圧が高い場合、ドラム上の被覆が薄ければ、更にトナーがドラムに転写するのを止めることはできない。ドラム上の電荷が再び供給されるトナーを充分にはじくほど高くなるまで、トナーはドラムに向かって飛び続ける。最も黒い設定では、供給トナーの電圧は、充分に高く、最初の書き込まれていないドラムの電荷がそのまま存在しているドラムを被覆し始め、ページ全体に黒い陰影を与える。
【0013】
転写ステップでは、感光体は用紙に押圧され、あるいは用紙上を回転して画像を転写する。よりハイエンドなマシンでは、トナーを感光体から用紙に引き込むために、用紙の裏面に対して正電荷転写ローラを使用することができる。
【0014】
図13は、熱と圧力を組み合せて使用してトナーを用紙上で溶融する定着ステップを示す図である(従来技術)。用紙は定着装置のローラ間を通過し、そこで熱(セ氏200度まで)と圧力によって可塑粉末を用紙に付着させる。通例、一方のローラは中空チューブ(加熱ローラ)であり、他方はゴム支持ローラ(加圧ローラ)である。放射熱ランプは、中空チューブの中心に懸下され、その赤外線エネルギがローラを内部から均一に加熱する。トナーを適切に付着させるには、定着ローラは均一に加熱されなければならない。
【0015】
定着装置は、プリンタの消費電力の最大90パーセントを占める。定着装置からの熱はプリンタの他の部分を傷める可能性があるため、たびたびファンで通気して、熱を内部から逃がしている。ほとんどの複写機とレーザプリンタの主な節電機能は、定着装置の電源をオフして冷却することである。通常の動作を再開するには、印刷を開始する前に定着装置が動作温度に戻るまで待機する必要がある。
【0016】
プリンタの中には、非常に薄い可撓性のある金属製の定着ローラを使用しているため、加熱対象質量が小さく、定着装置がより早急に動作温度に達することができるものもある。これにより、待機状態からの印刷が早くなり、定着装置をより頻繁にオフさせて電力を節約することができる。用紙が定着装置を更にゆっくりと通過する場合、トナーを溶融させるためのローラの接触時間が長くなり、定着装置は更に低い温度で動作することができる。用紙の接触時間が非常に短く、高温の定着装置をより高速で通過する大型の高速プリンタと比べて、より小型で安価なレーザプリンタの印字速度はこのような省エネ設計のために一般的に遅い。定着処理の後、感光体は清掃される。
【0017】
前述のように、いわゆるレーザプリンタの中には、光をドラム上に書き込むために、リニアアレイのLEDを使用しているものもある。定着装置は、赤外線オーブン、加熱加圧ローラ、又はキセノンフラッシュランプとすることもできる。レーザプリンタに最初に電源が入れられたときのレーザプリンタのウォームアップ処理は、主として定着装置の構成要素を加熱するものである。
【0018】
図14は、複数ページの印字ジョブに関連するプリントエンジンのウォームアップサイクルを示す図である(従来技術)。ユーザが複雑なジョブを印刷するとき、印刷されるページとページの間で相当なエネルギが浪費されている。従来、印刷対象ページがレンダリングされ、次に、レンダリングされた画像が用紙に印刷されるが、その間に、次のページがレンダリングされている。ページを印刷するために、プリントエンジンは「ウォーム」状態になる必要があり、その状態ではトナーと定着装置は動作温度にならなければならない。このウォームアップの段階で消費されるエネルギは、実際のページを印刷する際に消費される全エネルギに比べて相当な量である。別のレンダリングされたページがすぐに使用できない場合、プリントエンジンは、ハードウェアと消耗品の寿命を延ばすために、トナーと定着装置をクールダウンし始める。次のページが準備できると、トナーと定着装置は再びウォームアップする必要があり、相当なエネルギを消費する。相当なレンダリング時間を要する複雑な印字ジョブでは、このウォームアップとクールダウンのサイクルはページ毎に発生し、印字ジョブを処理するのに使用される全エネルギは非常に増大する。
【0019】
ほとんどのプリンタは、最初のページの終了時間と最後のページの終了時間によって評価される。製造業者は、過去何度も、エネルギを浪費しても最初のページの終了時間を最適化することに多大な労力を投じてきた。しかしながら、ほとんどのユーザにとって最初のページの終了時間は関係なく、エネルギをいくらか節約できるのであれば、最後のページの終了時間が少し遅れても容認される。
【0020】
多くのプリンタ製造業者は、複雑なジョブを印刷する際の従来のエネルギ浪費の状況を考慮し、より効率的な定着装置、すなわち、ヒートアップに要するエネルギが少ない瞬時ONの定着装置を重点的に開発したり、それほど多くの熱/エネルギを必要とせずに機能するトナーを開発してきた。このような改良によって、エネルギ消費を減らすことはできるが、依然として、クールダウン状態から温度を上げるには、大量のエネルギが必要である。また、このような改良では、最も効率的な最高速度でプリントエンジンを機能させることはできない。
【0021】
エンジンがウォームアップされる前に、複雑な印字ジョブを予めレンダリングすることができれば好都合であり、従来のジョブに関連するウォームアップ/クールダウンの繰り返しのサイクルを、1サイクルに低減することができる。
【0022】
例えば、特許文献1には、印刷要求が発行される時点から低電力状態の画像形成装置が印刷処理を開始する時点までが最短時間になるようにした画像形成装置が記載されている。この画像形成装置は、データ処理時間情報、画像展開時間予測手段によって予測された画像展開時間情報、及びウォームアップ時間算出手段によって算出されたウォームアップ時間情報に基づいて、ウォームアップのタイミング情報を算出するタイミング情報算出手段と、データ受信手段によって印刷要求が受け付けられた時点とタイミング情報手段によって算出されたタイミング情報とに基づき、低電力状態の画像形成処理手段を規定電力状態に遷移させる電力制御手段とを備えて構成されている。
【0023】
また、特許文献2には、複数ジョブを蓄積して、まとめてレンダリング処理することで省エネを実現する画像形成装置が記載されている。この画像形成装置は、印刷時に通常の印刷を行うか、あるいは、複数の印刷ジョブを待機させ、これらの待機印刷ジョブを連続して印刷することによる省エネ印刷を行うかを選択できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開2008−265056号公報
【特許文献2】特開2008−023891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
ここで、レンダリング処理完了予定時刻から、(ウォームアップ時間+印字継続時間)の分だけ遡った時刻にウォームアップを開始し、さらに、レンダリング処理完了予定時刻から印字継続時間の分だけ遡った時刻に、レンダリング済みの第1ページのデータをプリンタに送信するようにすれば、全ページ分のデータのレンダリング処理が完了する前に、プリンタにレンダリング済みデータを送信できるため、より効率的な印刷を行えるものと考えられる。なお、印字継続時間とは、印刷ジョブに含まれる全てのページを印刷するために必要な時間である。
【0026】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術は、プリントデータの処理完了の予定時刻からウォームアップに要する時間分遡ってウォームアップ開始時刻を設定するようにしているだけで、上記のように、印字継続時間まで考慮して印刷制御を行うものではない。また、特許文献2に記載の技術についても、複数ジョブを蓄積して、まとめてレンダリング処理するだけであり、特許文献1と同様に、上記の印刷制御を行うものではない。
【0027】
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたもので、省電力化を図りつつ、用紙などの物理媒体に効率的に印刷するための方法及びシステムを提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記課題を解決するために、本発明の第1の技術手段は、物理媒体に印刷する方法であって、グラフィックス命令としてフォーマットされた複数の論理ページを有する印字ジョブを受信する工程と、ラスタ画像プロセッサが前記印字ジョブをラスタライズ画像にレンダリングする工程と、前記印字ジョブのレンダリング中に、ラスタライズ画像の論理ページをメモリに蓄積する工程と、ウォームアップ信号の受信に応じて、前記印刷装置のプリントエンジンを温めて動作温度にする工程と、前記ラスタ画像プロセッサが前記蓄積されたラスタライズ画像の論理ページを前記プリントエンジンに送信する工程と、各論理ページの印刷と印刷の間、前記プリントエンジンを動作温度に維持して、前記ラスタライズ画像の論理ページを物理媒体に印刷する工程とを含み、さらに、前記ウォームアップ信号が前記プリントエンジンで受信された時から前記プリントエンジンが動作温度に達するまでのウォームアップ時間と前記印字ジョブのレンダリングが完了するのに必要なレンダリング時間とを予測する工程と、前記ウォームアップ信号を前記プリントエンジンに送信する工程とを含み、前記レンダリング時間を予測する工程は、前記印字ジョブの最終論理ページがレンダリングされる完了時刻を予測すること、及び、前記ラスタライズ画像の全ての論理ページを印刷するのに必要な期間である印字継続時間を予測することを含み、前記ウォームアップ信号を前記プリントエンジンに送信する工程は、((前記完了時刻)−(前記ウォームアップ時間+前記印字継続時間))に相当する時刻に、前記ウォームアップ信号を送信することを含み、前記蓄積されたラスタライズ画像の論理ページを前記プリントエンジンに送信する工程は、前記ラスタライズ画像を蓄積している間であって、((前記完了時刻)−(前記印字継続時間))に相当する時刻に、前記蓄積されたラスタライズ画像の第1論理ページを送信することを含むことを特徴としたものである。
【0029】
また、第2の技術手段は、印刷装置を動作させるシステムであって、コンピュータ読み取り可能なメモリと、グラフィックス命令としてフォーマットされた、複数の論理ページを有する印字ジョブを受信するインターフェース及びラスタライズ画像にレンダリングされた前記印字ジョブを供給するインターフェースを備えるラスタ画像プロセッサと、該ラスタ画像プロセッサに接続されたインターフェースを備える保存モジュールと、該保存モジュールに接続されたインターフェースを備える印刷装置のプリントエンジンとを備え、前記保存モジュールは、前記印字ジョブのレンダリング中に、ラスタライズ画像の論理ページを前記メモリに蓄積し、前記蓄積されたラスタライズ画像の論理ページを印字のために送信するインターフェースを備え、前記プリントエンジンは、ウォームアップ信号の受信に応じて、前記プリントエンジン自体を温めて動作温度にし、各論理ページの印刷と印刷の間、前記動作温度で維持して、前記ラスタライズ画像の論理ページを物理媒体に印刷し、前記保存モジュールは、前記ウォームアップ信号が前記プリントエンジンで受信された時から前記プリントエンジンが前記動作温度に達するまでのウォームアップ時間と前記印字ジョブのレンダリングが完了するのに必要なレンダリング時間とを予測し、前記ウォームアップ信号を前記プリントエンジンに送信し、さらに、前記保存モジュールは、前記印字ジョブの最終論理ページがレンダリングされる完了時刻を予測し、前記ラスタライズ画像の全ての論理ページを印刷するのに必要な印字継続時間を予測し、前記ウォームアップ信号を、((前記完了時刻)−(前記ウォームアップ時間+前記印字継続時間))に相当する時刻に送信し、前記ラスタライズ画像を蓄積している間であって、((前記完了時刻)−(前記印字継続時間))に相当する時刻に、前記蓄積されたラスタライズ画像の第1論理ページを送信することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0030】
本明細書に記載の発明の効果は、プリントエンジンのウォームアップ/クールダウンのサイクルを崩壊させることであり、これによって、印字ジョブ全体を、そのエンジンでサポートされる最も効率的な最大速度で印刷することができる。複数のジョブ又は1つのジョブ内の複数のページは、印刷時に統合される。ジョブ又は個々のページのプリントアウトの分配を、ページ間の遅延を回避できるように変更することによって、少なくともいくつかのジョブのウォームアップサイクルを削除し、プリンタのエネルギ消費を改善することができる。こうした変更には、レンダリング処理の時間変更、位置変更、又は資源変更が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】印刷装置を経済的に動作させるシステムを示す概略ブロック図である。
【図2A】図1のシステムの変形形態を明示する図である。
【図2B】図1のシステムの変形形態を明示する図である。
【図2C】図1のシステムの変形形態を明示する図である。
【図3】第1のラスタ画像の蓄積とウォームアップの方法のタイミング図である。
【図4】第2のラスタ画像の蓄積とウォームアップの方法のタイミング図である。
【図5】第3のラスタ画像の蓄積とウォームアップの方法のタイミング図である。
【図6】第4のラスタ画像の蓄積とウォームアップの方法のタイミング図である。
【図7A】従来のレンダリング方法と蓄積レンダリング方法によって行われる印字ジョブの対比を示す図である。
【図7B】従来のレンダリング方法と蓄積レンダリング方法によって行われる印字ジョブの対比を示す図である。
【図8】物理媒体に経済的に印刷する方法を示すフロー図である。
【図9】物理媒体に経済的に印刷する方法を示すフロー図である。
【図10】ラスタ画像データを生成する処理を示す図である(従来技術)。
【図11】感光体ドラムへの電荷の印加を示す図である(従来技術)。
【図12】露光技術を用いた感光体ドラムへのビットマップの書込みを示す図である(従来技術)。
【図13】熱と圧力を組み合せて使用してトナーを用紙上で溶融する定着ステップを示す図である(従来技術)。
【図14】複数ページの印字ジョブに関連するプリントエンジンのウォームアップサイクルを示す図である(従来技術)。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明にて使用する場合、「コンポーネント」、「モジュール」、「システム」などの用語は、ハードウェア、ファームウェア、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせ、ソフトウェア、コンピュータ読み取り可能な媒体に記憶されたソフトウェア、又は実行中のソフトウェアなどの自動コンピューティングシステムのエンティティを指すものである。例えば、コンポーネントとは、それに限定されるものではないが、プロセッサ上で実行中のプロセス、プロセッサ、オブジェクト、実行ファイル、実行のスレッド、プログラム、及び/又はコンピュータとすることができる。説明上、コンピュータ装置で実行中のアプリケーションとコンピュータ装置はいずれもコンポーネントとすることができる。1つのプロセス及び/又は実行のスレッド内に1つ以上のコンポーネントが存在することができ、1つのコンポーネントが1台のコンピュータ上に局在していても、及び/又は2台以上のコンピュータ間に分散されていてもよい。
【0033】
また、これらのコンポーネントは、様々なデータ構造が格納されている様々なコンピュータ読み取り可能な媒体から実行することができる。コンポーネントは、1つ以上のデータパケット(例えば、信号によってローカルシステム内、分散システム内の別のコンポーネントと、及び/又はインターネットなどのネットワークを介して別のシステムとインタラクトする1つのコンポーネントからのデータ)を有する信号に従うなどして、ローカルプロセス及び/又はリモートプロセスによって通信してもよい。
【0034】
以下で説明するプリンタ及びクライアント装置は、情報の通信を行うバス又は他の通信機構を有するコンピュータシステムと、情報を処理するためのバスに接続されたプロセッサを利用する。コンピュータシステムは、バスに接続された、プロセッサによって実行されるべき情報や命令を記憶するための、ランダムアクセスメモリ(RAM)や他の動的記憶装置などのメインメモリも含む。これらのメモリは、コンピュータ読み取り可能な媒体ということもできる。コンピュータ読み取り可能な媒体に含まれた命令のシーケンスを実行すると、プロセッサは位置の算出に関連するいくつかのステップを実行する。あるいは、これらの機能又はこれらの機能のいくつかは、ハードウェアで実行可能である。コンピュータ又はコンピュータシステムを用いるプリンタの実用的な実装は、当業者に周知であろう。
【0035】
本発明にて使用する場合、「コンピュータ読み取り可能な媒体」なる用語は、プロセッサに実行命令を出すことに関与する任意の媒体を指す。このような媒体は、それに限定されないが、非揮発性媒体、揮発性媒体、伝送媒体などの多くの形態をとることができる。非揮発性媒体は、例えば、光学ディスク又は磁気ディスクを含む。揮発性媒体は、ダイナミックメモリを含む。コンピュータ読み取り可能な媒体の一般的な形態としては、例えば、フロッピーディスク(登録商標)、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープや任意の他の磁気媒体、CD−ROM、任意の他の光学媒体、パンチカード、紙テープ、ホールのパターンを備えた任意の他の物理媒体、RAM、PROM、EPROM、フラッシュEPROM、任意の他のメモリチップ又はカートリッジ、以下で説明する搬送波、あるいはコンピュータが読み取り可能な任意の他の媒体が挙げられる。
【0036】
図1は、印刷装置を経済的に動作させるシステムを示す概略ブロック図である。システム600はコンピュータ読み取り可能なメモリ614を含む。ラスタ画像プロセッサ(RIP)602は、グラフィックス命令としてフォーマットされた複数の論理ページを有する印字ジョブを受信するためのインターフェースをライン604上に備える。論理ページは、電子形式で示された情報のページを意味する。最も単純なケースとして、論理ページは情報の印刷されたページと同一である。一方、論理ページは、印刷前に圧縮、結合、又は再編成することができる。RIP602は、ラスタライズ画像にレンダリングした印字ジョブを供給するためのインターフェースをライン620上に備える。また、RIP602は、複数の印字ジョブを受信し、この複数の印字ジョブをレンダリングして、複数の結合したラスタライズ画像を有する1つのラスタライズ画像群にする。
【0037】
保存モジュール618は、RIP602に接続されたインターフェースをライン620上に備える。保存モジュール618は、印字ジョブのレンダリング中に、ラスタライズ画像の論理ページをメモリ614に蓄積する。保存モジュール618は、蓄積されたラスタライズ画像の論理ページを印刷用に送信するためのライン610に接続されたインターフェースを備える。この場合も、保存モジュール618は、コンピュータ読み取り可能な媒体614に記憶されてプロセッサ(図示せず)によって実行されるソフトウェア命令として使用可能(実現可能)であり、また、保存モジュール618は、RIP602のコンポーネントとすることもできる。あるいは、保存モジュール618は、バッファメモリ(図示せず)などのハードウェア装置や、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせとすることもできる。以下詳細に説明されるように、メモリは、プリンタ、プリントサーバ、又はクライアントコンピュータに配設することができる。
【0038】
印刷装置612は、保存モジュール618に接続されたライン610上のインターフェースを有するプリントエンジン622を備える。印刷装置612は、プリンタ、複合機(MFP)、複写機、又はファックス機とすることができる。プリントエンジン622は、蓄積されたラスタライズ画像の論理ページの受信に応じて、動作温度までプリントエンジン自体を温める。プリントエンジン622は、各論理ページの印刷と印刷の間、動作温度で維持しつつ、ラスタライズ画像の論理ページを物理媒体(例えば、用紙)に印刷する。レーザ又はLEDプリンタの場合、プリントエンジン622は、トナーを物理媒体上で溶融するのに充分な温度まで定着ローラを温める。しかしながら、ウォームアップサイクルを減らすことで電力を節約するという概念は、消費電力がページ印刷前に増加する任意の種類のプリンタに適用可能であると理解されるべきである。
【0039】
図2A−図2Cは、図1のシステムの変形形態を明示する図である。図2Aにおいて、クライアントコンピュータ608は、印刷装置612に接続されたライン610上のインターフェースを備える。RIP602は、コンピュータ608に内蔵されたラスタドライバアプリケーションとして示され、コンピュータ読み取り可能な媒体614に記憶されてプロセッサ616によって実行されるソフトウェア命令として実現可能である。図示されているように、オペレーティングシステム(OS)617もコンピュータ読み取り可能な媒体614に記憶されてプロセッサ616によって実行されるソフトウェア命令として実現可能であり、当該技術において十分理解されているように、RIP602とプロセッサ616の間を仲介する。
【0040】
一般的に、印字ジョブは、プリンタドライバ(図示せず)によって供給されるが、これはコンピュータ読み取り可能な媒体に記憶されてプロセッサによって実行されるソフトウェア命令として実現可能な機能の別の例であり、当該技術分野においては十分理解されている。RIP(ラスタドライバ)において、PDLは、一種のPDLである一連のDDI(装置依存インタフェース)命令とすることもできるが、これはプリンタドライバ用であるため、PDLとは呼ばれない。PDLとDDI命令のストリームはいずれも、印刷することを記述した一連のグラフィックス命令である。ドライバは、何か特殊な方法で印刷するために(例えば、4−UP印刷)DDI命令を変更することがある。RIPがラスタドライバで実行されたとしても、印刷装置は追加の処理を行うことができる。例えば、ページの画像を拡大縮小したり、RGBカラーからインクカラー(CMYK)に変換したりすることができる。
【0041】
図示しないが、イーサネットプロセッサ又はいくつかの他の通信装置は、プロセッサのデータ/アドレスバスとライン610上の出力インターフェースの間に介在することができると理解されるべきである。
【0042】
図2Bにおいて、プリントサーバ700は、クライアントコンピュータ608と印刷装置612の間に介在する。ここで、保存モジュール618はサーバ700内に配置され、ソフトウェア、ハードウェア、又はハードウェアとソフトウェアの組み合わせとして実現可能である。他の態様(図示せず)において、保存モジュール618は、サーバとクライアントコンピュータの間、サーバと印刷装置の間、又はサーバ,クライアントコンピュータと印刷装置の間で分散することができるため、サーバ700の保存モジュール618は論理ページを部分的に蓄積しているだけである。
【0043】
図2Cにおいて、RIP602は印刷装置612に内蔵されたラスタドライバアプリケーションであり、コンピュータ読み取り可能な媒体614に記憶されてプロセッサ616によって実行されるソフトウェア命令として実現可能である。印字ジョブは、ネットワーク接続されたクライアントコンピュータ装置又はプリントサーバ(図示せず)に内蔵されたプリントドライバによってライン610上で供給される。また、印刷装置612は、ライン704上で(インタープリタ706とプロセッサ616を介して)RIP602に接続された複写機モジュール702を含み、ユーザは、文書を複写することによって印字ジョブ相当物を生成することができる(例えば、プリンタパイプラインを使用)。他の態様では、明示しないが、RIPではなく保存モジュールが印刷装置に内蔵されている。更に別の態様では、保存モジュールは他のネットワーク接続されたコンポーネント間で分散されるため、印刷装置に内蔵された保存モジュール618は論理ページを部分的に蓄積しているだけである。
【0044】
背景技術の項目で記載したように、RIPの処理は大量のデータを生成するため、これにより、大量のメモリが必要になる。以前、メモリは非常に高価であったため、プリンタの製造業者は、メモリ関連のタスクをクライアントコンピュータとプリントサーバにオフロードするのに苦労していた。その結果、RIPの処理とデータのスプール処理は、従来、印刷装置によって実行されていなかった。しかしながら、現在、メモリは非常に安価になっている。この現実を踏まえ、図2Cの印刷装置612は、メモリ集約的タスクは印刷装置で実行することができるという認識、更に重要なことには、いくつかのタスクは印刷装置で最良に実行されるという認識から、従来の考え方の流れに反したものとなっている。よって、印刷装置は論理ページを充分に蓄積可能なメモリを備えており、いくつかの態様では(図示せず)、RIPと保存モジュールの両方を含む。
【0045】
図3は、第1のラスタ画像の蓄積とウォームアップの方法のタイミング図である。図1、図2A−2C、及び図3によると、システム600の一態様において、保存モジュール618は、印字ジョブにおける最終論理ページのレンダリング後に蓄積されたラスタライズ画像を送信し、プリントエンジン622は、第1ラスタライズ画像の論理ページを印刷する前にウォームアップ期間待機する。ウォームアップ期間は、蓄積されたラスタライズ画像の第1ページをプリントエンジンで受信した時からプリントエンジンがウォームアップ期間後に動作温度に達する時までの期間と定義される。この例において、RIPとプリントエンジンの間では通信の遅延はないと仮定する。
【0046】
図4は、第2のラスタ画像の蓄積とウォームアップの方法のタイミング図である。図1、図2A−2C、及び図4によると、システム600の他の態様において、保存モジュール618は、印字ジョブのレンダリングを完了するのに必要な時間と定義されるレンダリング時間を予測する。保存モジュール618は、プリントエンジン622にウォームアップ信号を送信することによってウォームアップ期間(上記で定義)を最小化し、プリントエンジンは、ウォームアップ期間後に動作温度に達する。簡素化するため、ウォームアップ信号はライン610を介して送信されると仮定することができる。しかしながら、ウォームアップ信号は、WiFiリンクなどの他の手段によって送信することもできる。レンダリング時間は、印字ジョブ中の論理ページ数、印字ジョブのファイルサイズ、印字ジョブのグラフィックスの内容などの要因(基準)、及びこれらの基準の組み合わせに基づいて予測される。
【0047】
図5は、第3のラスタ画像の蓄積とウォームアップの方法のタイミング図である。図1、図2A−2C、及び図5によると、システム600の他の態様において、保存モジュール618は、印字ジョブの最終論理ページがレンダリングされる完了時刻を予測し、(完了時刻)−(ウォームアップ時間)に相当する時間にウォームアップ信号を送信する。保存モジュール618は、次に、印字ジョブの最終論理ページがレンダリングされた後に、蓄積されたラスタライズ画像を送信する。この例において、通信の遅延はなく、予測した完了時刻は最終ページが実際にレンダリングされる時間と一致すると仮定する。
【0048】
図6は、第4のラスタ画像の蓄積とウォームアップの方法のタイミング図である。図1、図2A−2C、及び図6によると、システム600の別の一態様において、保存モジュール618は、印字ジョブの最終論理ページがレンダリングされる完了時刻を予測して、ラスタライズ画像における全ての論理ページを印刷するのに必要な期間である印字継続時間を予測する。保存モジュール618は、((完了時刻)−(ウォームアップ時間+印字継続時間))に相当する時刻に、ウォームアップ信号を送信する。保存モジュールは、(完了時刻)−(印字継続時間)に相当する時刻に、ラスタライズ画像が依然蓄積されている間、第1論理ページ(最初の論理ページ)を送信する。この例において、通信の遅延はなく、予測した完了時刻は最終ページが実際にレンダリングされる時間と一致すると仮定する。
【0049】
すなわち、保存モジュール618は、ウォームアップ信号がプリントエンジン622で受信された時からプリントエンジン622が動作温度に達するまでのウォームアップ時間と、印字ジョブのレンダリングが完了するのに必要なレンダリング時間とを予測し、ウォームアップ信号をプリントエンジンに送信する。なお、ここで予測するウォームアップ時間は、前述の説明で定義したウォームアップ期間、つまり、蓄積されたラスタライズ画像の第1ページをプリントエンジン622で受信した時からプリントエンジン622がウォームアップ期間後に動作温度に達する時までの期間と同じであるため、これを用いることができる。また、保存モジュール618は、印字ジョブの最終論理ページがレンダリングされる完了時刻を予測し、ラスタライズ画像の全ての論理ページを印刷するのに必要な印字継続時間を予測し、ウォームアップ信号を、上記のように、((完了時刻)−(ウォームアップ時間+印字継続時間))に相当する時刻に送信し、ラスタライズ画像を蓄積している間であって、((完了時刻)−(印字継続時間))に相当する時刻に、蓄積されたラスタライズ画像の第1論理ページを送信する。
【0050】
上記の例は、プリントエンジンがウォームアップ信号に即座に応答するものと仮定している。他の態様において、図示しないが、ウォームアップ信号は、内蔵された時間基準で送信することもでき、プリントエンジンは、ウォームアップ信号で指定された時間にウォームアップ処理を開始する。
【0051】
[機能的記載]
一般的な印刷装置は、スリープ待機モードで13ワット、アウェイク待機モードで70ワットの電力を消費し、動作温度に達するために70ワットから900ワットまで増加させる。定着装置は、レンダリングを待機するためにクールダウンすると、その後ウォームアップする必要がある。最大ページウォームアップ時間は、定着装置が室温から印刷温度になるのに要する時間である。この時間がページウォームアップとクールダウンにかかる時間よりも短ければ重要でない。ページのレンダリングにかかる時間が、最大ページクールダウン時間及びウォームアップ時間よりも長ければ、計測可能である。1ページのレンダリングに30秒かかるが、クールダウンやウォームアップに5秒ずつかかるとする。すると、ページのクールダウン及びウォームアップ以外に20秒かかることになる。
【0052】
レンダリングは、データのサイズに大きく影響し、これは伝送時間にとって重要である。つまり、未処理のグラフィックスは最終ラスタよりも、かなり小さくなり得るので、MFPにおける処理には、無視し得る伝送時間と膨大なレンダリング時間を要する。ラスタ印刷はページをかなり高速でレンダリングすることができるが、伝送時間については劣っている。よって、図3−4のグラフをより現実的にするため、伝送時間の影響をウォームアップ期間に加えることができる。同様に、伝送時間の影響を図5−6の予測(レンダリング)完了時刻に加えることができる。
【0053】
タイミングの効率化に伴う、もう1つの問題は、ジョブのサイズを事前に知ることができないことである。しかしながら、この方法を用いることによる節約は、この事前知識にかかっている。ページ数に加えて、グラフィックスの内容又はデータのサイズに関するいくつかの統計により、より正確な予測が可能になる。このことは、Windowsの印刷において、OSのグラフィックスや(高レベルのPDLのための)PDLのグラフィックスをスプールする際、ドライバにおいて行うことができる。
【0054】
図7A及び7Bは、それぞれ従来のレンダリング方法と蓄積レンダリング方法によって行われる印字ジョブの対比を示す図である。図7Aに示すように、従来のレンダリング方法は、データが使用可能になり次第、処理のスケジュールを立てて、レンダリング−印刷−レンダリング−印刷のサイクル、又は(ラスタドライバに対する)受信−印刷−受信−印刷のサイクルで印刷を行う。ページの時間変更(図7B)は、サイクルをレンダリング−レンダリング−印刷−印刷、又は受信−受信−印刷−印刷に切り替えることからなる。
【0055】
例えば、ユーザが、テキスト、グラフィックス、及び画像を含む4ページのカラー文書を印刷する必要があるとする。図7Aに示すエネルギサイクルとは対照的に、ユーザは「節約」モードを選択する(又はプリントドライバが予め節約用に構成されている)。これは複雑な文書であるため、MFPが完了ジョブのレンダリングを開始すると、ジョブが印刷を開始する前に、顕著な遅延が生じる。ジョブ全体がレンダリングされた後、印刷のためMFPに送信される。MFPはウォームアップする。レンダリングが完了し、MFPがウォームアップすると、MFPはエンジン速度で印刷を行う。プリンタドライバのUIは「エコ」の選択を備えていなければならず、プリンタドライバは「エコ遅延」のPJL命令を発する。MFPはエコ遅延命令を識別し、ウォームアップと印刷の前にジョブのレンダリングが完了するまで待機する。
【0056】
最も単純なスキームでは、レンダリングされたページは、レンダリングが完了するまで保存される。次に、プリントエンジンはウォームアップを開始する。この方法は単純であるという利点があるが、印字ジョブに伴い全体の完了時間が長くなる。その他の点では、ジョブのレンダリングが完了する前にウォームアップを開始するために、予測技術を用いることができる。
【0057】
対話型ページ遅延技術により、ユーザは個々のページ又は残りのジョブのタイミングを無効にすることができる。このことは、一度に1ページを校正するためか、又はユーザがエネルギ消費と引き換えにジョブの高速化を所望する場合に行われる。対話型ページ遅延は、N番目のページの印刷時間に影響する。これは、印刷前にページを閲覧するための良好なディスプレイが利用できない場合のモバイル印刷又はUSBスティックからの印刷において特に有益である。
【0058】
ページの時間変更の管理がMFPの外部で行われる場合、例えば、レンダリング及びページのペースの制御がホスト又はクラウドで行われる場合、MFPは、MFP自体が省エネモードで動作していることを認識していない。あるいは、レンダリングはMFPの内部で行われる場合、MFPはページのペースを制御する。さらに、レンダリングはホスト又はクラウドで行われるが、MFPがページのペースを制御する。ハイブリッドの管理技術では、レンダリングはMFPで行われるが、MFPはページのペースの制御に役立つ統計を受信する。ここでもレンダリングはホスト又はクラウドでも行われるが、MFPがページのペースを制御するのに役立つよう、統計は極力早くMFPに送信される。
【0059】
オープンエンドのジョブを既知のジョブにアップグレードするために、ページの時間変更のタイミング予測を用いることができる。ドライバは、スプールの際、ページ及びグラフィックスの統計を蓄積し、印字ジョブの一部として、又は別個のWindowsカラーシステム(WCS)のメッセージとして、MFPに提供することができる。予測は、実時間エネルギ計測、履歴エネルギ計測、実時間タイミング計測、履歴タイミング計測に基づき、テーブル駆動することができる。
【0060】
図8は、物理媒体に経済的に印刷する方法を示すフロー図である。この方法を明確に示すため、番号を付した一連のステップとして示しているが、必ずしもこの番号がステップの順序を決定するものではない。これらのステップの一部は省略しても、並行して行っても、厳密に順序を守る必要なく行ってもよいと理解されるべきである。しかしながら、一般的には、この方法は、ステップの番号順に行われる。この方法はステップ1300から始まる。
【0061】
ステップ1302は、グラフィックス命令(例えば、DDI又はPDL)としてフォーマットされた複数の論理ページを有する印字ジョブを受信する。ステップ1304で、ラスタ画像プロセッサ(RIP)が印字ジョブをレンダリングしてラスタライズ画像にする。ステップ1306は、印字ジョブのレンダリング中に、ラスタライズ画像の論理ページをメモリに蓄積する。ステップ1308では、RIPが蓄積されたラスタライズ画像の論理ページを印刷装置のプリントエンジンに送信する。あるいは、図1に示すように、別個の保存モジュールが論理ページを蓄積し、この蓄積されたページを印刷装置に送信する。ステップ1310は、蓄積されたラスタライズ画像の論理ページの受信に応じて、プリントエンジンを動作温度に温める。一態様において、印刷装置の定着ローラはトナーを物理媒体上で溶融するのに充分な温度にまで温められる。ステップ1312は、ラスタライズ画像の論理ページを物理媒体上に印刷し、各論理ページの印刷と印刷の間、プリントエンジンを動作温度で維持する。
【0062】
一態様において、ステップ1306における印字ジョブの受信は、ハードウェア又はコンピュータ読み取り可能な媒体に記憶されてプロセッサにより実行される、少なくとも部分的に論理ページを蓄積するソフトウェア命令として実現可能なコンピュータ(クライアントコンピュータ又は印字サーバ)内蔵の保存モジュールを含む。次に、ステップ1308における蓄積されたラスタライズ画像の論理ページをプリントエンジンに送信することは、印刷装置のプリントエンジンに蓄積されたラスタライズ画像を送信するコンピュータ内蔵のRIPを含む。異なる態様において、ステップ1306は、ハードウェア又はコンピュータ読み取り可能な媒体に記憶されてプロセッサにより実行される、少なくとも部分的に論理ページを蓄積するソフトウェア命令として実現可能な印刷装置内蔵の保存モジュールを含む。
【0063】
一態様において、ステップ1308における蓄積されたラスタライズ画像の論理ページをプリントエンジンに送信することは、印字ジョブにおける最終論理ページのレンダリング後に蓄積されたラスタライズ画像を送信することを含む。次に、ステップ1312におけるラスタライズ画像の論理ページの印刷は、第1(最初の)ラスタライズ画像の論理ページの印刷前にウォームアップ期間を待機することを含み、ここでウォームアップ期間は、蓄積されたラスタライズ画像の第1ページがプリントエンジンで受信された時からプリントエンジンが動作温度に達するまでの期間と定義される。
【0064】
異なる態様では、ステップ1303aは、印字ジョブのレンダリングを完了するのに必要な時間と定義されるレンダリング時間を予測する。レンダリング時間の予測は、印字ジョブ中の論理ページ数、印字ジョブのファイルサイズ、印字ジョブのグラフィックスの内容などの基準、及びこれらの基準の組み合わせに基づいて行うことができる。
【0065】
例えば、ステップ1303aは、印字ジョブの最終論理ページがレンダリングされる完了時刻を予測し、ステップ1303bは、(完了時刻)−(ウォームアップ時間)と同じ時間にウォームアップ信号を送信する。次に、ステップ1308は、印字ジョブの最終論理ページがレンダリングされた後に、蓄積されたラスタライズ画像を送信する。
【0066】
別の例として、ステップ1303aは、印字ジョブの最終論理ページがレンダリングされる完了時刻を予測して、ラスタライズ画像における全ての論理ページを印字するのに必要な期間である印字継続時間を予測する。ステップ1303bは((完了時刻)−(ウォームアップ時間+印字継続時間))と同じ時間にウォームアップ信号を送信し、ステップ1308は、(完了時刻)−(印字継続時間)と同じ時刻に、ラスタライズ画像が依然蓄積されている間、第1論理ページを送信する。
【0067】
別の態様では、ステップ1302における印字ジョブの受信は、複数の印字ジョブの受信を含み、ステップ1304で印字ジョブをレンダリングしてラスタライズ画像にすることは、複数の印字ジョブをレンダリングして、複数の結合ラスタ画像を含むラスタライズ画像群にすることを含む。
【0068】
図9は、物理媒体に経済的に印刷する方法を示すフロー図である。この方法はステップ1400から開始する。ステップ1402で、コンピュータ読み取り可能な媒体に記憶されてプロセッサにより実行されるソフトウェア命令として実現可能なRIPドライバアプリケーションは、複数の論理ページを含みグラフィックス命令としてフォーマットされた印字ジョブを受信する。ステップ1404で、RIPは印字ジョブをレンダリングして、ラスタライズ画像にする。ステップ1406で、コンピュータ読み取り可能なメモリに記憶されてプロセッサにより実行されるソフトウェア命令として実現可能な保存モジュールは、プリントエンジンがラスタライズ画像の論理ページを物理媒体に印刷するのに必要な最小電力を算出する。一態様では、印刷装置のプリントエンジンがラスタライズ画像を印刷するのに必要な定着装置の最小電力を算出する。ステップ1408では、保存モジュールが、最小電力の消費を確実にするため、RIPとプリントエンジンの間のインターフェースを管理する。あるいは、上記のように、この機能は、修正されたRIPにより作成してもよい。
【0069】
一態様では、ステップ1406でプリントエンジンがラスタライズ画像の論理ページを印刷するのに必要な最小電力を算出することは、サブステップを含む。ステップ1406aは、印字ジョブのレンダリング中に、ラスタライズ画像の論理ページをメモリに蓄積する。ステップ1406bは、蓄積されたラスタライズ画像の論理ページの受信に応じて、プリントエンジンを動作温度まで温める。次に、ステップ1410は、各論理ページの印刷と印刷の間、プリントエンジンを動作温度に維持しつつ、ラスタライズ画像の論理ページを物理媒体に印刷する。
【0070】
印刷装置を経済的に管理するシステムと方法を提供する。本発明を例示するために特定のモジュール及び処理のステップの例を挙げたが、本発明は、これらの例にのみ限定されるものではない。当業者は本発明の他の変形形態及び実施形態に想到すると思われる。
【符号の説明】
【0071】
600…システム、602…RIP、604,620,610,704…ライン、608…クライアントコンピュータ、612…印刷装置、614…メモリ、616…プロセッサ、617…OS、618…保存モジュール、622…プリントエンジン、700…サーバ、706…インタープリタ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して印刷装置に関し、より詳細には、ラスタ画像の論理ページをプリントエンジンに送信する前に蓄積することによって経済的に文書を印刷する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ウィキペディアに記載されているように、レーザプリンタは、普通紙に高品質なテキストやグラフィックスを高速で作成する一般的な種類のコンピュータプリンタである。デジタルコピー機や複合プリンタ(MFP)と同様に、レーザプリンタは、乾式電子写真方式の印刷処理を採用しているが、レーザ光で直接プリンタの感光体を走査することにより画像を作成するという点において、アナログコピー機と異なっている。レーザ光は、印刷対象ページの画像を、セレニウムで被覆され、帯電された回転ドラム上に投影する。光伝導性によって露光された領域の電荷が除去される。その後、乾式インク(トナー)粒子がドラムの帯電領域に静電的に付着する。ドラムは、その後、用紙を直接接触させて加熱することによって、インクを用紙に定着させて画像を印刷する。
【0003】
レーザプリンタは、他の種類のプリンタに比べて多くの重要な有意性を有する。刻印(インパクト)式プリンタとは異なり、レーザプリンタの速度は広範囲に変化し、その速度は、処理するジョブのグラフィック強度など多くの要因に左右される。最速の機種では、白黒ページを1分間に200ページ(1時間に12,000ページ)以上印刷することができる。
【0004】
レーザプリンタに比べて、ほとんどのインクジェットプリンタとドットマトリックスプリンタは、単に、送られてくるデータのストリームを取り込んで、プリンタが追加のデータを待っている間は休止することもある。低速のよたよたした一連の処理(slow lurching Process)でそのデータを直接インプリントする。レーザプリンタは、かかる大量のデータを高速で連続して印刷装置に出力する必要があるため、このようには動作しない。プリンタはその機構を正確に停止させることができないので、追加のデータが送られてくるのを待って停止させると、印刷ページに目に見えるギャップやドットのずれが生じてしまう。そのため、画像データを作成して、一ページ分の全ドットに相当し得る大きなメモリバンクに記憶する。すなわち、ページを中断して印刷するには、ページ全体のデータをメモリに保存する必要がある。
【0005】
図10は、ラスタ画像データを生成する処理を示す図である(従来技術)。レーザ印刷処理にはいくつかのステップがある。最初に、ラスタ画像データが生成される。ページを横切る水平方向の各ドットの細長い一片は、ラスタ線又は走査線として知られている。印刷対象の画像は、ラスタ画像プロセッサ(RIP)によって作成され、このRIPは、一般にレーザプリンタの中、もしくは、原稿をプリンタへ供給するコンピュータ又はサーバ内に内蔵される。供給された原資料は、フォーマットされていないテキストのみのデータはもちろんのこと、アドビ・ポストスクリプト(Adobe PostScript、以下、PSという)、HPプリンタコントロール言語(HP Printer Control Language、以下、PCLという)、又はMicrosoft XML Page Specification(以下、XPSという)などの多くの特殊なページ記述言語(PDL)でコード化される。RIPは、ページ記述言語(PDL)を使用して、ラスタメモリ内に最終ページのビットマップを生成する。ラスタメモリにおいてページ全体がレンダリングされると、プリンタは、ラスタ化(ラスタライズともいう)されたドットのストリームを連続ストリームで用紙に送る処理を開始する準備が整ったことになる。
【0006】
ラスタ化は、ベクタグラフィックス形式(型)で記述された画像を取り込み、ビデオディスプレイやプリンタに出力したり、ビットマップファイル形式で記憶するためにラスタ画像(ピクセル又はドット)に変換するタスクである。ラスタ化なる用語は、一般に、ベクトル情報をラスタ形式に変換することができる任意の処理に適用することができる。
【0007】
ページ記述言語を用いてグラフィカル出力を完全に行うためには、300dpiでA4サイズの白黒の文書のページ全体のドットを記憶するのに、最低1メガバイトのメモリが必要である。300dpiでは、1平方インチ当たり90,000ドット(1リニアインチ当たり300ドット)ある。一般的な8.5×11の用紙には0.25インチの余白があるため、印刷可能領域は減少して8.0×10.5インチ、すなわち、84平方インチになる。84平方インチ×90,000ドット/平方インチ=7,560,000ドットである。一方、300dpiでページ全体を保存するのにちょうどよい大きさは、1メガバイト= 1048576バイト、すなわち、8,388,608ビットであり、このうち約100キロバイトは、ラスタ画像プロセッサで使用するために取っておかれる。
【0008】
カラープリンタでは、CYMKの4つのトナー層がそれぞれ別のビットマップとして記憶され、一般的に、印刷が開始される前に4層全てが前処理されるため、300dpiでフルカラーのレターサイズのページには最低4メガバイトが必要である。必要メモリは、dpiの平方で増加するため、600dpiの白黒で最低4メガバイト、600dpiのカラーで16メガバイトが必要である。いくつかのプリンタは、ドットのサイズやドット間隔を変えることができ、こうした機能を追加すると、前述の最低容量の何倍もの容量を有するメモリが必要となる。
【0009】
図11は、感光体ドラムへの電荷の印加を示す図である(従来技術)。一次帯電ローラは、暗闇の中でその表面に静電荷を保持することができる感光体(光伝導ユニットともいわれる)、回転感光体ドラム又はベルトに静電荷を与える。旧式のプリンタでは、コロナ線とドラムが平行に配設される。DCバイアスが一次帯電ローラに印加されることによって、前の画像により残された残留電荷が除去される。また、ローラは、DCバイアスをドラム表面に印加することによって、確実にドラム表面を均一な負電位にする。所望の印字濃度はこのDCバイアスによって調整される。
【0010】
図12は、露光技術を用いた感光体ドラムへのビットマップの書込みを示す図である(従来技術)。レーザは回転しているポリゴンミラーに向けられ、ポリゴンミラーはレーザ光を一系統のレンズとミラーを介して感光体上に向ける。レーザ光は、ページを真っ直ぐに横切って掃引するような角度で感光体を掃引する。掃引している間、シリンダは回転し続け、掃引角度はこの動作を補償する。メモリに保持されているラスタライズされたデータストリームは、レーザをオンオフしてシリンダ上にドットを形成する。いくつかのプリンタは、ページ幅に及ぶ発光ダイオード(LED)のアレイの切り替えを行う。このような装置は、レーザプリンタのように、塗布された乾式トナーを充分に溶融する温度までドラムを加熱することによって動作する。レーザ又はLEDは、画像の黒い部分の電荷を中和(又は反転)させ、静電的に負の画像を感光体表面に形成してそこにトナー粒子を載せる。
【0011】
現像ステップでは、潜像を有する表面に、カーボンブラックや着色剤と混合した乾式可塑粉末の微粒子であるトナーが付与される。帯電されたトナー粒子は、負の電荷を付与され、レーザが接触した領域である感光体の潜像に静電的に吸着される。同じ電荷同士は反発するため、負に帯電されたトナー粒子はドラムの負電荷が残留しているところには付着しない。
【0012】
印刷画像全体の黒さは、供給トナーに印加される高電圧電荷によって制御される。帯電されたトナーがギャップを飛び越えてドラム表面に到達すれば、トナー自体の負の電荷が供給トナーをはじき、それ以上のトナーがドラムに飛んでくるのを防ぐ。電圧が低い場合、トナーの被覆が薄くても、更にトナーが転写するのを止めることができる。電圧が高い場合、ドラム上の被覆が薄ければ、更にトナーがドラムに転写するのを止めることはできない。ドラム上の電荷が再び供給されるトナーを充分にはじくほど高くなるまで、トナーはドラムに向かって飛び続ける。最も黒い設定では、供給トナーの電圧は、充分に高く、最初の書き込まれていないドラムの電荷がそのまま存在しているドラムを被覆し始め、ページ全体に黒い陰影を与える。
【0013】
転写ステップでは、感光体は用紙に押圧され、あるいは用紙上を回転して画像を転写する。よりハイエンドなマシンでは、トナーを感光体から用紙に引き込むために、用紙の裏面に対して正電荷転写ローラを使用することができる。
【0014】
図13は、熱と圧力を組み合せて使用してトナーを用紙上で溶融する定着ステップを示す図である(従来技術)。用紙は定着装置のローラ間を通過し、そこで熱(セ氏200度まで)と圧力によって可塑粉末を用紙に付着させる。通例、一方のローラは中空チューブ(加熱ローラ)であり、他方はゴム支持ローラ(加圧ローラ)である。放射熱ランプは、中空チューブの中心に懸下され、その赤外線エネルギがローラを内部から均一に加熱する。トナーを適切に付着させるには、定着ローラは均一に加熱されなければならない。
【0015】
定着装置は、プリンタの消費電力の最大90パーセントを占める。定着装置からの熱はプリンタの他の部分を傷める可能性があるため、たびたびファンで通気して、熱を内部から逃がしている。ほとんどの複写機とレーザプリンタの主な節電機能は、定着装置の電源をオフして冷却することである。通常の動作を再開するには、印刷を開始する前に定着装置が動作温度に戻るまで待機する必要がある。
【0016】
プリンタの中には、非常に薄い可撓性のある金属製の定着ローラを使用しているため、加熱対象質量が小さく、定着装置がより早急に動作温度に達することができるものもある。これにより、待機状態からの印刷が早くなり、定着装置をより頻繁にオフさせて電力を節約することができる。用紙が定着装置を更にゆっくりと通過する場合、トナーを溶融させるためのローラの接触時間が長くなり、定着装置は更に低い温度で動作することができる。用紙の接触時間が非常に短く、高温の定着装置をより高速で通過する大型の高速プリンタと比べて、より小型で安価なレーザプリンタの印字速度はこのような省エネ設計のために一般的に遅い。定着処理の後、感光体は清掃される。
【0017】
前述のように、いわゆるレーザプリンタの中には、光をドラム上に書き込むために、リニアアレイのLEDを使用しているものもある。定着装置は、赤外線オーブン、加熱加圧ローラ、又はキセノンフラッシュランプとすることもできる。レーザプリンタに最初に電源が入れられたときのレーザプリンタのウォームアップ処理は、主として定着装置の構成要素を加熱するものである。
【0018】
図14は、複数ページの印字ジョブに関連するプリントエンジンのウォームアップサイクルを示す図である(従来技術)。ユーザが複雑なジョブを印刷するとき、印刷されるページとページの間で相当なエネルギが浪費されている。従来、印刷対象ページがレンダリングされ、次に、レンダリングされた画像が用紙に印刷されるが、その間に、次のページがレンダリングされている。ページを印刷するために、プリントエンジンは「ウォーム」状態になる必要があり、その状態ではトナーと定着装置は動作温度にならなければならない。このウォームアップの段階で消費されるエネルギは、実際のページを印刷する際に消費される全エネルギに比べて相当な量である。別のレンダリングされたページがすぐに使用できない場合、プリントエンジンは、ハードウェアと消耗品の寿命を延ばすために、トナーと定着装置をクールダウンし始める。次のページが準備できると、トナーと定着装置は再びウォームアップする必要があり、相当なエネルギを消費する。相当なレンダリング時間を要する複雑な印字ジョブでは、このウォームアップとクールダウンのサイクルはページ毎に発生し、印字ジョブを処理するのに使用される全エネルギは非常に増大する。
【0019】
ほとんどのプリンタは、最初のページの終了時間と最後のページの終了時間によって評価される。製造業者は、過去何度も、エネルギを浪費しても最初のページの終了時間を最適化することに多大な労力を投じてきた。しかしながら、ほとんどのユーザにとって最初のページの終了時間は関係なく、エネルギをいくらか節約できるのであれば、最後のページの終了時間が少し遅れても容認される。
【0020】
多くのプリンタ製造業者は、複雑なジョブを印刷する際の従来のエネルギ浪費の状況を考慮し、より効率的な定着装置、すなわち、ヒートアップに要するエネルギが少ない瞬時ONの定着装置を重点的に開発したり、それほど多くの熱/エネルギを必要とせずに機能するトナーを開発してきた。このような改良によって、エネルギ消費を減らすことはできるが、依然として、クールダウン状態から温度を上げるには、大量のエネルギが必要である。また、このような改良では、最も効率的な最高速度でプリントエンジンを機能させることはできない。
【0021】
エンジンがウォームアップされる前に、複雑な印字ジョブを予めレンダリングすることができれば好都合であり、従来のジョブに関連するウォームアップ/クールダウンの繰り返しのサイクルを、1サイクルに低減することができる。
【0022】
例えば、特許文献1には、印刷要求が発行される時点から低電力状態の画像形成装置が印刷処理を開始する時点までが最短時間になるようにした画像形成装置が記載されている。この画像形成装置は、データ処理時間情報、画像展開時間予測手段によって予測された画像展開時間情報、及びウォームアップ時間算出手段によって算出されたウォームアップ時間情報に基づいて、ウォームアップのタイミング情報を算出するタイミング情報算出手段と、データ受信手段によって印刷要求が受け付けられた時点とタイミング情報手段によって算出されたタイミング情報とに基づき、低電力状態の画像形成処理手段を規定電力状態に遷移させる電力制御手段とを備えて構成されている。
【0023】
また、特許文献2には、複数ジョブを蓄積して、まとめてレンダリング処理することで省エネを実現する画像形成装置が記載されている。この画像形成装置は、印刷時に通常の印刷を行うか、あるいは、複数の印刷ジョブを待機させ、これらの待機印刷ジョブを連続して印刷することによる省エネ印刷を行うかを選択できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開2008−265056号公報
【特許文献2】特開2008−023891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
ここで、レンダリング処理完了予定時刻から、(ウォームアップ時間+印字継続時間)の分だけ遡った時刻にウォームアップを開始し、さらに、レンダリング処理完了予定時刻から印字継続時間の分だけ遡った時刻に、レンダリング済みの第1ページのデータをプリンタに送信するようにすれば、全ページ分のデータのレンダリング処理が完了する前に、プリンタにレンダリング済みデータを送信できるため、より効率的な印刷を行えるものと考えられる。なお、印字継続時間とは、印刷ジョブに含まれる全てのページを印刷するために必要な時間である。
【0026】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術は、プリントデータの処理完了の予定時刻からウォームアップに要する時間分遡ってウォームアップ開始時刻を設定するようにしているだけで、上記のように、印字継続時間まで考慮して印刷制御を行うものではない。また、特許文献2に記載の技術についても、複数ジョブを蓄積して、まとめてレンダリング処理するだけであり、特許文献1と同様に、上記の印刷制御を行うものではない。
【0027】
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたもので、省電力化を図りつつ、用紙などの物理媒体に効率的に印刷するための方法及びシステムを提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記課題を解決するために、本発明の第1の技術手段は、物理媒体に印刷する方法であって、グラフィックス命令としてフォーマットされた複数の論理ページを有する印字ジョブを受信する工程と、ラスタ画像プロセッサが前記印字ジョブをラスタライズ画像にレンダリングする工程と、前記印字ジョブのレンダリング中に、ラスタライズ画像の論理ページをメモリに蓄積する工程と、ウォームアップ信号の受信に応じて、前記印刷装置のプリントエンジンを温めて動作温度にする工程と、前記ラスタ画像プロセッサが前記蓄積されたラスタライズ画像の論理ページを前記プリントエンジンに送信する工程と、各論理ページの印刷と印刷の間、前記プリントエンジンを動作温度に維持して、前記ラスタライズ画像の論理ページを物理媒体に印刷する工程とを含み、さらに、前記ウォームアップ信号が前記プリントエンジンで受信された時から前記プリントエンジンが動作温度に達するまでのウォームアップ時間と前記印字ジョブのレンダリングが完了するのに必要なレンダリング時間とを予測する工程と、前記ウォームアップ信号を前記プリントエンジンに送信する工程とを含み、前記レンダリング時間を予測する工程は、前記印字ジョブの最終論理ページがレンダリングされる完了時刻を予測すること、及び、前記ラスタライズ画像の全ての論理ページを印刷するのに必要な期間である印字継続時間を予測することを含み、前記ウォームアップ信号を前記プリントエンジンに送信する工程は、((前記完了時刻)−(前記ウォームアップ時間+前記印字継続時間))に相当する時刻に、前記ウォームアップ信号を送信することを含み、前記蓄積されたラスタライズ画像の論理ページを前記プリントエンジンに送信する工程は、前記ラスタライズ画像を蓄積している間であって、((前記完了時刻)−(前記印字継続時間))に相当する時刻に、前記蓄積されたラスタライズ画像の第1論理ページを送信することを含むことを特徴としたものである。
【0029】
また、第2の技術手段は、印刷装置を動作させるシステムであって、コンピュータ読み取り可能なメモリと、グラフィックス命令としてフォーマットされた、複数の論理ページを有する印字ジョブを受信するインターフェース及びラスタライズ画像にレンダリングされた前記印字ジョブを供給するインターフェースを備えるラスタ画像プロセッサと、該ラスタ画像プロセッサに接続されたインターフェースを備える保存モジュールと、該保存モジュールに接続されたインターフェースを備える印刷装置のプリントエンジンとを備え、前記保存モジュールは、前記印字ジョブのレンダリング中に、ラスタライズ画像の論理ページを前記メモリに蓄積し、前記蓄積されたラスタライズ画像の論理ページを印字のために送信するインターフェースを備え、前記プリントエンジンは、ウォームアップ信号の受信に応じて、前記プリントエンジン自体を温めて動作温度にし、各論理ページの印刷と印刷の間、前記動作温度で維持して、前記ラスタライズ画像の論理ページを物理媒体に印刷し、前記保存モジュールは、前記ウォームアップ信号が前記プリントエンジンで受信された時から前記プリントエンジンが前記動作温度に達するまでのウォームアップ時間と前記印字ジョブのレンダリングが完了するのに必要なレンダリング時間とを予測し、前記ウォームアップ信号を前記プリントエンジンに送信し、さらに、前記保存モジュールは、前記印字ジョブの最終論理ページがレンダリングされる完了時刻を予測し、前記ラスタライズ画像の全ての論理ページを印刷するのに必要な印字継続時間を予測し、前記ウォームアップ信号を、((前記完了時刻)−(前記ウォームアップ時間+前記印字継続時間))に相当する時刻に送信し、前記ラスタライズ画像を蓄積している間であって、((前記完了時刻)−(前記印字継続時間))に相当する時刻に、前記蓄積されたラスタライズ画像の第1論理ページを送信することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0030】
本明細書に記載の発明の効果は、プリントエンジンのウォームアップ/クールダウンのサイクルを崩壊させることであり、これによって、印字ジョブ全体を、そのエンジンでサポートされる最も効率的な最大速度で印刷することができる。複数のジョブ又は1つのジョブ内の複数のページは、印刷時に統合される。ジョブ又は個々のページのプリントアウトの分配を、ページ間の遅延を回避できるように変更することによって、少なくともいくつかのジョブのウォームアップサイクルを削除し、プリンタのエネルギ消費を改善することができる。こうした変更には、レンダリング処理の時間変更、位置変更、又は資源変更が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】印刷装置を経済的に動作させるシステムを示す概略ブロック図である。
【図2A】図1のシステムの変形形態を明示する図である。
【図2B】図1のシステムの変形形態を明示する図である。
【図2C】図1のシステムの変形形態を明示する図である。
【図3】第1のラスタ画像の蓄積とウォームアップの方法のタイミング図である。
【図4】第2のラスタ画像の蓄積とウォームアップの方法のタイミング図である。
【図5】第3のラスタ画像の蓄積とウォームアップの方法のタイミング図である。
【図6】第4のラスタ画像の蓄積とウォームアップの方法のタイミング図である。
【図7A】従来のレンダリング方法と蓄積レンダリング方法によって行われる印字ジョブの対比を示す図である。
【図7B】従来のレンダリング方法と蓄積レンダリング方法によって行われる印字ジョブの対比を示す図である。
【図8】物理媒体に経済的に印刷する方法を示すフロー図である。
【図9】物理媒体に経済的に印刷する方法を示すフロー図である。
【図10】ラスタ画像データを生成する処理を示す図である(従来技術)。
【図11】感光体ドラムへの電荷の印加を示す図である(従来技術)。
【図12】露光技術を用いた感光体ドラムへのビットマップの書込みを示す図である(従来技術)。
【図13】熱と圧力を組み合せて使用してトナーを用紙上で溶融する定着ステップを示す図である(従来技術)。
【図14】複数ページの印字ジョブに関連するプリントエンジンのウォームアップサイクルを示す図である(従来技術)。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明にて使用する場合、「コンポーネント」、「モジュール」、「システム」などの用語は、ハードウェア、ファームウェア、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせ、ソフトウェア、コンピュータ読み取り可能な媒体に記憶されたソフトウェア、又は実行中のソフトウェアなどの自動コンピューティングシステムのエンティティを指すものである。例えば、コンポーネントとは、それに限定されるものではないが、プロセッサ上で実行中のプロセス、プロセッサ、オブジェクト、実行ファイル、実行のスレッド、プログラム、及び/又はコンピュータとすることができる。説明上、コンピュータ装置で実行中のアプリケーションとコンピュータ装置はいずれもコンポーネントとすることができる。1つのプロセス及び/又は実行のスレッド内に1つ以上のコンポーネントが存在することができ、1つのコンポーネントが1台のコンピュータ上に局在していても、及び/又は2台以上のコンピュータ間に分散されていてもよい。
【0033】
また、これらのコンポーネントは、様々なデータ構造が格納されている様々なコンピュータ読み取り可能な媒体から実行することができる。コンポーネントは、1つ以上のデータパケット(例えば、信号によってローカルシステム内、分散システム内の別のコンポーネントと、及び/又はインターネットなどのネットワークを介して別のシステムとインタラクトする1つのコンポーネントからのデータ)を有する信号に従うなどして、ローカルプロセス及び/又はリモートプロセスによって通信してもよい。
【0034】
以下で説明するプリンタ及びクライアント装置は、情報の通信を行うバス又は他の通信機構を有するコンピュータシステムと、情報を処理するためのバスに接続されたプロセッサを利用する。コンピュータシステムは、バスに接続された、プロセッサによって実行されるべき情報や命令を記憶するための、ランダムアクセスメモリ(RAM)や他の動的記憶装置などのメインメモリも含む。これらのメモリは、コンピュータ読み取り可能な媒体ということもできる。コンピュータ読み取り可能な媒体に含まれた命令のシーケンスを実行すると、プロセッサは位置の算出に関連するいくつかのステップを実行する。あるいは、これらの機能又はこれらの機能のいくつかは、ハードウェアで実行可能である。コンピュータ又はコンピュータシステムを用いるプリンタの実用的な実装は、当業者に周知であろう。
【0035】
本発明にて使用する場合、「コンピュータ読み取り可能な媒体」なる用語は、プロセッサに実行命令を出すことに関与する任意の媒体を指す。このような媒体は、それに限定されないが、非揮発性媒体、揮発性媒体、伝送媒体などの多くの形態をとることができる。非揮発性媒体は、例えば、光学ディスク又は磁気ディスクを含む。揮発性媒体は、ダイナミックメモリを含む。コンピュータ読み取り可能な媒体の一般的な形態としては、例えば、フロッピーディスク(登録商標)、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープや任意の他の磁気媒体、CD−ROM、任意の他の光学媒体、パンチカード、紙テープ、ホールのパターンを備えた任意の他の物理媒体、RAM、PROM、EPROM、フラッシュEPROM、任意の他のメモリチップ又はカートリッジ、以下で説明する搬送波、あるいはコンピュータが読み取り可能な任意の他の媒体が挙げられる。
【0036】
図1は、印刷装置を経済的に動作させるシステムを示す概略ブロック図である。システム600はコンピュータ読み取り可能なメモリ614を含む。ラスタ画像プロセッサ(RIP)602は、グラフィックス命令としてフォーマットされた複数の論理ページを有する印字ジョブを受信するためのインターフェースをライン604上に備える。論理ページは、電子形式で示された情報のページを意味する。最も単純なケースとして、論理ページは情報の印刷されたページと同一である。一方、論理ページは、印刷前に圧縮、結合、又は再編成することができる。RIP602は、ラスタライズ画像にレンダリングした印字ジョブを供給するためのインターフェースをライン620上に備える。また、RIP602は、複数の印字ジョブを受信し、この複数の印字ジョブをレンダリングして、複数の結合したラスタライズ画像を有する1つのラスタライズ画像群にする。
【0037】
保存モジュール618は、RIP602に接続されたインターフェースをライン620上に備える。保存モジュール618は、印字ジョブのレンダリング中に、ラスタライズ画像の論理ページをメモリ614に蓄積する。保存モジュール618は、蓄積されたラスタライズ画像の論理ページを印刷用に送信するためのライン610に接続されたインターフェースを備える。この場合も、保存モジュール618は、コンピュータ読み取り可能な媒体614に記憶されてプロセッサ(図示せず)によって実行されるソフトウェア命令として使用可能(実現可能)であり、また、保存モジュール618は、RIP602のコンポーネントとすることもできる。あるいは、保存モジュール618は、バッファメモリ(図示せず)などのハードウェア装置や、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせとすることもできる。以下詳細に説明されるように、メモリは、プリンタ、プリントサーバ、又はクライアントコンピュータに配設することができる。
【0038】
印刷装置612は、保存モジュール618に接続されたライン610上のインターフェースを有するプリントエンジン622を備える。印刷装置612は、プリンタ、複合機(MFP)、複写機、又はファックス機とすることができる。プリントエンジン622は、蓄積されたラスタライズ画像の論理ページの受信に応じて、動作温度までプリントエンジン自体を温める。プリントエンジン622は、各論理ページの印刷と印刷の間、動作温度で維持しつつ、ラスタライズ画像の論理ページを物理媒体(例えば、用紙)に印刷する。レーザ又はLEDプリンタの場合、プリントエンジン622は、トナーを物理媒体上で溶融するのに充分な温度まで定着ローラを温める。しかしながら、ウォームアップサイクルを減らすことで電力を節約するという概念は、消費電力がページ印刷前に増加する任意の種類のプリンタに適用可能であると理解されるべきである。
【0039】
図2A−図2Cは、図1のシステムの変形形態を明示する図である。図2Aにおいて、クライアントコンピュータ608は、印刷装置612に接続されたライン610上のインターフェースを備える。RIP602は、コンピュータ608に内蔵されたラスタドライバアプリケーションとして示され、コンピュータ読み取り可能な媒体614に記憶されてプロセッサ616によって実行されるソフトウェア命令として実現可能である。図示されているように、オペレーティングシステム(OS)617もコンピュータ読み取り可能な媒体614に記憶されてプロセッサ616によって実行されるソフトウェア命令として実現可能であり、当該技術において十分理解されているように、RIP602とプロセッサ616の間を仲介する。
【0040】
一般的に、印字ジョブは、プリンタドライバ(図示せず)によって供給されるが、これはコンピュータ読み取り可能な媒体に記憶されてプロセッサによって実行されるソフトウェア命令として実現可能な機能の別の例であり、当該技術分野においては十分理解されている。RIP(ラスタドライバ)において、PDLは、一種のPDLである一連のDDI(装置依存インタフェース)命令とすることもできるが、これはプリンタドライバ用であるため、PDLとは呼ばれない。PDLとDDI命令のストリームはいずれも、印刷することを記述した一連のグラフィックス命令である。ドライバは、何か特殊な方法で印刷するために(例えば、4−UP印刷)DDI命令を変更することがある。RIPがラスタドライバで実行されたとしても、印刷装置は追加の処理を行うことができる。例えば、ページの画像を拡大縮小したり、RGBカラーからインクカラー(CMYK)に変換したりすることができる。
【0041】
図示しないが、イーサネットプロセッサ又はいくつかの他の通信装置は、プロセッサのデータ/アドレスバスとライン610上の出力インターフェースの間に介在することができると理解されるべきである。
【0042】
図2Bにおいて、プリントサーバ700は、クライアントコンピュータ608と印刷装置612の間に介在する。ここで、保存モジュール618はサーバ700内に配置され、ソフトウェア、ハードウェア、又はハードウェアとソフトウェアの組み合わせとして実現可能である。他の態様(図示せず)において、保存モジュール618は、サーバとクライアントコンピュータの間、サーバと印刷装置の間、又はサーバ,クライアントコンピュータと印刷装置の間で分散することができるため、サーバ700の保存モジュール618は論理ページを部分的に蓄積しているだけである。
【0043】
図2Cにおいて、RIP602は印刷装置612に内蔵されたラスタドライバアプリケーションであり、コンピュータ読み取り可能な媒体614に記憶されてプロセッサ616によって実行されるソフトウェア命令として実現可能である。印字ジョブは、ネットワーク接続されたクライアントコンピュータ装置又はプリントサーバ(図示せず)に内蔵されたプリントドライバによってライン610上で供給される。また、印刷装置612は、ライン704上で(インタープリタ706とプロセッサ616を介して)RIP602に接続された複写機モジュール702を含み、ユーザは、文書を複写することによって印字ジョブ相当物を生成することができる(例えば、プリンタパイプラインを使用)。他の態様では、明示しないが、RIPではなく保存モジュールが印刷装置に内蔵されている。更に別の態様では、保存モジュールは他のネットワーク接続されたコンポーネント間で分散されるため、印刷装置に内蔵された保存モジュール618は論理ページを部分的に蓄積しているだけである。
【0044】
背景技術の項目で記載したように、RIPの処理は大量のデータを生成するため、これにより、大量のメモリが必要になる。以前、メモリは非常に高価であったため、プリンタの製造業者は、メモリ関連のタスクをクライアントコンピュータとプリントサーバにオフロードするのに苦労していた。その結果、RIPの処理とデータのスプール処理は、従来、印刷装置によって実行されていなかった。しかしながら、現在、メモリは非常に安価になっている。この現実を踏まえ、図2Cの印刷装置612は、メモリ集約的タスクは印刷装置で実行することができるという認識、更に重要なことには、いくつかのタスクは印刷装置で最良に実行されるという認識から、従来の考え方の流れに反したものとなっている。よって、印刷装置は論理ページを充分に蓄積可能なメモリを備えており、いくつかの態様では(図示せず)、RIPと保存モジュールの両方を含む。
【0045】
図3は、第1のラスタ画像の蓄積とウォームアップの方法のタイミング図である。図1、図2A−2C、及び図3によると、システム600の一態様において、保存モジュール618は、印字ジョブにおける最終論理ページのレンダリング後に蓄積されたラスタライズ画像を送信し、プリントエンジン622は、第1ラスタライズ画像の論理ページを印刷する前にウォームアップ期間待機する。ウォームアップ期間は、蓄積されたラスタライズ画像の第1ページをプリントエンジンで受信した時からプリントエンジンがウォームアップ期間後に動作温度に達する時までの期間と定義される。この例において、RIPとプリントエンジンの間では通信の遅延はないと仮定する。
【0046】
図4は、第2のラスタ画像の蓄積とウォームアップの方法のタイミング図である。図1、図2A−2C、及び図4によると、システム600の他の態様において、保存モジュール618は、印字ジョブのレンダリングを完了するのに必要な時間と定義されるレンダリング時間を予測する。保存モジュール618は、プリントエンジン622にウォームアップ信号を送信することによってウォームアップ期間(上記で定義)を最小化し、プリントエンジンは、ウォームアップ期間後に動作温度に達する。簡素化するため、ウォームアップ信号はライン610を介して送信されると仮定することができる。しかしながら、ウォームアップ信号は、WiFiリンクなどの他の手段によって送信することもできる。レンダリング時間は、印字ジョブ中の論理ページ数、印字ジョブのファイルサイズ、印字ジョブのグラフィックスの内容などの要因(基準)、及びこれらの基準の組み合わせに基づいて予測される。
【0047】
図5は、第3のラスタ画像の蓄積とウォームアップの方法のタイミング図である。図1、図2A−2C、及び図5によると、システム600の他の態様において、保存モジュール618は、印字ジョブの最終論理ページがレンダリングされる完了時刻を予測し、(完了時刻)−(ウォームアップ時間)に相当する時間にウォームアップ信号を送信する。保存モジュール618は、次に、印字ジョブの最終論理ページがレンダリングされた後に、蓄積されたラスタライズ画像を送信する。この例において、通信の遅延はなく、予測した完了時刻は最終ページが実際にレンダリングされる時間と一致すると仮定する。
【0048】
図6は、第4のラスタ画像の蓄積とウォームアップの方法のタイミング図である。図1、図2A−2C、及び図6によると、システム600の別の一態様において、保存モジュール618は、印字ジョブの最終論理ページがレンダリングされる完了時刻を予測して、ラスタライズ画像における全ての論理ページを印刷するのに必要な期間である印字継続時間を予測する。保存モジュール618は、((完了時刻)−(ウォームアップ時間+印字継続時間))に相当する時刻に、ウォームアップ信号を送信する。保存モジュールは、(完了時刻)−(印字継続時間)に相当する時刻に、ラスタライズ画像が依然蓄積されている間、第1論理ページ(最初の論理ページ)を送信する。この例において、通信の遅延はなく、予測した完了時刻は最終ページが実際にレンダリングされる時間と一致すると仮定する。
【0049】
すなわち、保存モジュール618は、ウォームアップ信号がプリントエンジン622で受信された時からプリントエンジン622が動作温度に達するまでのウォームアップ時間と、印字ジョブのレンダリングが完了するのに必要なレンダリング時間とを予測し、ウォームアップ信号をプリントエンジンに送信する。なお、ここで予測するウォームアップ時間は、前述の説明で定義したウォームアップ期間、つまり、蓄積されたラスタライズ画像の第1ページをプリントエンジン622で受信した時からプリントエンジン622がウォームアップ期間後に動作温度に達する時までの期間と同じであるため、これを用いることができる。また、保存モジュール618は、印字ジョブの最終論理ページがレンダリングされる完了時刻を予測し、ラスタライズ画像の全ての論理ページを印刷するのに必要な印字継続時間を予測し、ウォームアップ信号を、上記のように、((完了時刻)−(ウォームアップ時間+印字継続時間))に相当する時刻に送信し、ラスタライズ画像を蓄積している間であって、((完了時刻)−(印字継続時間))に相当する時刻に、蓄積されたラスタライズ画像の第1論理ページを送信する。
【0050】
上記の例は、プリントエンジンがウォームアップ信号に即座に応答するものと仮定している。他の態様において、図示しないが、ウォームアップ信号は、内蔵された時間基準で送信することもでき、プリントエンジンは、ウォームアップ信号で指定された時間にウォームアップ処理を開始する。
【0051】
[機能的記載]
一般的な印刷装置は、スリープ待機モードで13ワット、アウェイク待機モードで70ワットの電力を消費し、動作温度に達するために70ワットから900ワットまで増加させる。定着装置は、レンダリングを待機するためにクールダウンすると、その後ウォームアップする必要がある。最大ページウォームアップ時間は、定着装置が室温から印刷温度になるのに要する時間である。この時間がページウォームアップとクールダウンにかかる時間よりも短ければ重要でない。ページのレンダリングにかかる時間が、最大ページクールダウン時間及びウォームアップ時間よりも長ければ、計測可能である。1ページのレンダリングに30秒かかるが、クールダウンやウォームアップに5秒ずつかかるとする。すると、ページのクールダウン及びウォームアップ以外に20秒かかることになる。
【0052】
レンダリングは、データのサイズに大きく影響し、これは伝送時間にとって重要である。つまり、未処理のグラフィックスは最終ラスタよりも、かなり小さくなり得るので、MFPにおける処理には、無視し得る伝送時間と膨大なレンダリング時間を要する。ラスタ印刷はページをかなり高速でレンダリングすることができるが、伝送時間については劣っている。よって、図3−4のグラフをより現実的にするため、伝送時間の影響をウォームアップ期間に加えることができる。同様に、伝送時間の影響を図5−6の予測(レンダリング)完了時刻に加えることができる。
【0053】
タイミングの効率化に伴う、もう1つの問題は、ジョブのサイズを事前に知ることができないことである。しかしながら、この方法を用いることによる節約は、この事前知識にかかっている。ページ数に加えて、グラフィックスの内容又はデータのサイズに関するいくつかの統計により、より正確な予測が可能になる。このことは、Windowsの印刷において、OSのグラフィックスや(高レベルのPDLのための)PDLのグラフィックスをスプールする際、ドライバにおいて行うことができる。
【0054】
図7A及び7Bは、それぞれ従来のレンダリング方法と蓄積レンダリング方法によって行われる印字ジョブの対比を示す図である。図7Aに示すように、従来のレンダリング方法は、データが使用可能になり次第、処理のスケジュールを立てて、レンダリング−印刷−レンダリング−印刷のサイクル、又は(ラスタドライバに対する)受信−印刷−受信−印刷のサイクルで印刷を行う。ページの時間変更(図7B)は、サイクルをレンダリング−レンダリング−印刷−印刷、又は受信−受信−印刷−印刷に切り替えることからなる。
【0055】
例えば、ユーザが、テキスト、グラフィックス、及び画像を含む4ページのカラー文書を印刷する必要があるとする。図7Aに示すエネルギサイクルとは対照的に、ユーザは「節約」モードを選択する(又はプリントドライバが予め節約用に構成されている)。これは複雑な文書であるため、MFPが完了ジョブのレンダリングを開始すると、ジョブが印刷を開始する前に、顕著な遅延が生じる。ジョブ全体がレンダリングされた後、印刷のためMFPに送信される。MFPはウォームアップする。レンダリングが完了し、MFPがウォームアップすると、MFPはエンジン速度で印刷を行う。プリンタドライバのUIは「エコ」の選択を備えていなければならず、プリンタドライバは「エコ遅延」のPJL命令を発する。MFPはエコ遅延命令を識別し、ウォームアップと印刷の前にジョブのレンダリングが完了するまで待機する。
【0056】
最も単純なスキームでは、レンダリングされたページは、レンダリングが完了するまで保存される。次に、プリントエンジンはウォームアップを開始する。この方法は単純であるという利点があるが、印字ジョブに伴い全体の完了時間が長くなる。その他の点では、ジョブのレンダリングが完了する前にウォームアップを開始するために、予測技術を用いることができる。
【0057】
対話型ページ遅延技術により、ユーザは個々のページ又は残りのジョブのタイミングを無効にすることができる。このことは、一度に1ページを校正するためか、又はユーザがエネルギ消費と引き換えにジョブの高速化を所望する場合に行われる。対話型ページ遅延は、N番目のページの印刷時間に影響する。これは、印刷前にページを閲覧するための良好なディスプレイが利用できない場合のモバイル印刷又はUSBスティックからの印刷において特に有益である。
【0058】
ページの時間変更の管理がMFPの外部で行われる場合、例えば、レンダリング及びページのペースの制御がホスト又はクラウドで行われる場合、MFPは、MFP自体が省エネモードで動作していることを認識していない。あるいは、レンダリングはMFPの内部で行われる場合、MFPはページのペースを制御する。さらに、レンダリングはホスト又はクラウドで行われるが、MFPがページのペースを制御する。ハイブリッドの管理技術では、レンダリングはMFPで行われるが、MFPはページのペースの制御に役立つ統計を受信する。ここでもレンダリングはホスト又はクラウドでも行われるが、MFPがページのペースを制御するのに役立つよう、統計は極力早くMFPに送信される。
【0059】
オープンエンドのジョブを既知のジョブにアップグレードするために、ページの時間変更のタイミング予測を用いることができる。ドライバは、スプールの際、ページ及びグラフィックスの統計を蓄積し、印字ジョブの一部として、又は別個のWindowsカラーシステム(WCS)のメッセージとして、MFPに提供することができる。予測は、実時間エネルギ計測、履歴エネルギ計測、実時間タイミング計測、履歴タイミング計測に基づき、テーブル駆動することができる。
【0060】
図8は、物理媒体に経済的に印刷する方法を示すフロー図である。この方法を明確に示すため、番号を付した一連のステップとして示しているが、必ずしもこの番号がステップの順序を決定するものではない。これらのステップの一部は省略しても、並行して行っても、厳密に順序を守る必要なく行ってもよいと理解されるべきである。しかしながら、一般的には、この方法は、ステップの番号順に行われる。この方法はステップ1300から始まる。
【0061】
ステップ1302は、グラフィックス命令(例えば、DDI又はPDL)としてフォーマットされた複数の論理ページを有する印字ジョブを受信する。ステップ1304で、ラスタ画像プロセッサ(RIP)が印字ジョブをレンダリングしてラスタライズ画像にする。ステップ1306は、印字ジョブのレンダリング中に、ラスタライズ画像の論理ページをメモリに蓄積する。ステップ1308では、RIPが蓄積されたラスタライズ画像の論理ページを印刷装置のプリントエンジンに送信する。あるいは、図1に示すように、別個の保存モジュールが論理ページを蓄積し、この蓄積されたページを印刷装置に送信する。ステップ1310は、蓄積されたラスタライズ画像の論理ページの受信に応じて、プリントエンジンを動作温度に温める。一態様において、印刷装置の定着ローラはトナーを物理媒体上で溶融するのに充分な温度にまで温められる。ステップ1312は、ラスタライズ画像の論理ページを物理媒体上に印刷し、各論理ページの印刷と印刷の間、プリントエンジンを動作温度で維持する。
【0062】
一態様において、ステップ1306における印字ジョブの受信は、ハードウェア又はコンピュータ読み取り可能な媒体に記憶されてプロセッサにより実行される、少なくとも部分的に論理ページを蓄積するソフトウェア命令として実現可能なコンピュータ(クライアントコンピュータ又は印字サーバ)内蔵の保存モジュールを含む。次に、ステップ1308における蓄積されたラスタライズ画像の論理ページをプリントエンジンに送信することは、印刷装置のプリントエンジンに蓄積されたラスタライズ画像を送信するコンピュータ内蔵のRIPを含む。異なる態様において、ステップ1306は、ハードウェア又はコンピュータ読み取り可能な媒体に記憶されてプロセッサにより実行される、少なくとも部分的に論理ページを蓄積するソフトウェア命令として実現可能な印刷装置内蔵の保存モジュールを含む。
【0063】
一態様において、ステップ1308における蓄積されたラスタライズ画像の論理ページをプリントエンジンに送信することは、印字ジョブにおける最終論理ページのレンダリング後に蓄積されたラスタライズ画像を送信することを含む。次に、ステップ1312におけるラスタライズ画像の論理ページの印刷は、第1(最初の)ラスタライズ画像の論理ページの印刷前にウォームアップ期間を待機することを含み、ここでウォームアップ期間は、蓄積されたラスタライズ画像の第1ページがプリントエンジンで受信された時からプリントエンジンが動作温度に達するまでの期間と定義される。
【0064】
異なる態様では、ステップ1303aは、印字ジョブのレンダリングを完了するのに必要な時間と定義されるレンダリング時間を予測する。レンダリング時間の予測は、印字ジョブ中の論理ページ数、印字ジョブのファイルサイズ、印字ジョブのグラフィックスの内容などの基準、及びこれらの基準の組み合わせに基づいて行うことができる。
【0065】
例えば、ステップ1303aは、印字ジョブの最終論理ページがレンダリングされる完了時刻を予測し、ステップ1303bは、(完了時刻)−(ウォームアップ時間)と同じ時間にウォームアップ信号を送信する。次に、ステップ1308は、印字ジョブの最終論理ページがレンダリングされた後に、蓄積されたラスタライズ画像を送信する。
【0066】
別の例として、ステップ1303aは、印字ジョブの最終論理ページがレンダリングされる完了時刻を予測して、ラスタライズ画像における全ての論理ページを印字するのに必要な期間である印字継続時間を予測する。ステップ1303bは((完了時刻)−(ウォームアップ時間+印字継続時間))と同じ時間にウォームアップ信号を送信し、ステップ1308は、(完了時刻)−(印字継続時間)と同じ時刻に、ラスタライズ画像が依然蓄積されている間、第1論理ページを送信する。
【0067】
別の態様では、ステップ1302における印字ジョブの受信は、複数の印字ジョブの受信を含み、ステップ1304で印字ジョブをレンダリングしてラスタライズ画像にすることは、複数の印字ジョブをレンダリングして、複数の結合ラスタ画像を含むラスタライズ画像群にすることを含む。
【0068】
図9は、物理媒体に経済的に印刷する方法を示すフロー図である。この方法はステップ1400から開始する。ステップ1402で、コンピュータ読み取り可能な媒体に記憶されてプロセッサにより実行されるソフトウェア命令として実現可能なRIPドライバアプリケーションは、複数の論理ページを含みグラフィックス命令としてフォーマットされた印字ジョブを受信する。ステップ1404で、RIPは印字ジョブをレンダリングして、ラスタライズ画像にする。ステップ1406で、コンピュータ読み取り可能なメモリに記憶されてプロセッサにより実行されるソフトウェア命令として実現可能な保存モジュールは、プリントエンジンがラスタライズ画像の論理ページを物理媒体に印刷するのに必要な最小電力を算出する。一態様では、印刷装置のプリントエンジンがラスタライズ画像を印刷するのに必要な定着装置の最小電力を算出する。ステップ1408では、保存モジュールが、最小電力の消費を確実にするため、RIPとプリントエンジンの間のインターフェースを管理する。あるいは、上記のように、この機能は、修正されたRIPにより作成してもよい。
【0069】
一態様では、ステップ1406でプリントエンジンがラスタライズ画像の論理ページを印刷するのに必要な最小電力を算出することは、サブステップを含む。ステップ1406aは、印字ジョブのレンダリング中に、ラスタライズ画像の論理ページをメモリに蓄積する。ステップ1406bは、蓄積されたラスタライズ画像の論理ページの受信に応じて、プリントエンジンを動作温度まで温める。次に、ステップ1410は、各論理ページの印刷と印刷の間、プリントエンジンを動作温度に維持しつつ、ラスタライズ画像の論理ページを物理媒体に印刷する。
【0070】
印刷装置を経済的に管理するシステムと方法を提供する。本発明を例示するために特定のモジュール及び処理のステップの例を挙げたが、本発明は、これらの例にのみ限定されるものではない。当業者は本発明の他の変形形態及び実施形態に想到すると思われる。
【符号の説明】
【0071】
600…システム、602…RIP、604,620,610,704…ライン、608…クライアントコンピュータ、612…印刷装置、614…メモリ、616…プロセッサ、617…OS、618…保存モジュール、622…プリントエンジン、700…サーバ、706…インタープリタ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理媒体に印刷する方法であって、
グラフィックス命令としてフォーマットされた複数の論理ページを有する印字ジョブを受信する工程と、
ラスタ画像プロセッサが前記印字ジョブをラスタライズ画像にレンダリングする工程と、
前記印字ジョブのレンダリング中に、ラスタライズ画像の論理ページをメモリに蓄積する工程と、
ウォームアップ信号の受信に応じて、前記印刷装置のプリントエンジンを温めて動作温度にする工程と、
前記ラスタ画像プロセッサが前記蓄積されたラスタライズ画像の論理ページを前記プリントエンジンに送信する工程と、
各論理ページの印刷と印刷の間、前記プリントエンジンを動作温度に維持して、前記ラスタライズ画像の論理ページを物理媒体に印刷する工程とを含み、
さらに、前記ウォームアップ信号が前記プリントエンジンで受信された時から前記プリントエンジンが動作温度に達するまでのウォームアップ時間と前記印字ジョブのレンダリングが完了するのに必要なレンダリング時間とを予測する工程と、
前記ウォームアップ信号を前記プリントエンジンに送信する工程とを含み、
前記レンダリング時間を予測する工程は、前記印字ジョブの最終論理ページがレンダリングされる完了時刻を予測すること、及び、前記ラスタライズ画像の全ての論理ページを印刷するのに必要な期間である印字継続時間を予測することを含み、
前記ウォームアップ信号を前記プリントエンジンに送信する工程は、
((前記完了時刻)−(前記ウォームアップ時間+前記印字継続時間))
に相当する時刻に、前記ウォームアップ信号を送信することを含み、
前記蓄積されたラスタライズ画像の論理ページを前記プリントエンジンに送信する工程は、前記ラスタライズ画像を蓄積している間であって、
((前記完了時刻)−(前記印字継続時間))
に相当する時刻に、前記蓄積されたラスタライズ画像の第1論理ページを送信することを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記プリントエンジンを温めて動作温度にする工程は、トナーを前記物理媒体上で溶融するのに充分な温度まで前記印刷装置の定着ローラを温めることを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レンダリング時間を予測する工程は、前記印字ジョブ中の論理ページの数、前記印字ジョブのファイルのサイズ、前記印字ジョブのグラフィックスの内容からなる群から選択された基準、及び該基準の組み合わせに基づいて、前記レンダリング時間を予測することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記印字ジョブを受信する工程は、複数の印字ジョブを受信することを含み、
前記印字ジョブをラスタライズ画像にレンダリングする工程は、前記複数の印字ジョブをレンダリングして複数の結合したラスタライズ画像を有するラスタライズ画像群にすることを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ラスタライズ画像の論理ページを蓄積する工程は、コンピュータ読み取り可能な媒体に記憶されプロセッサにより実行される、ソフトウェア命令として使用可能な、コンピュータ内蔵の保存モジュールアプリケーションが、少なくとも部分的に前記論理ページを蓄積することを含み、
前記蓄積されたラスタライズ画像の論理ページを前記プリントエンジンに送信する工程は、コンピュータが前記印刷装置のプリントエンジンに前記蓄積されたラスタライズ画像を送信することを含むこと特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ラスタライズ画像の論理ページを蓄積する工程は、コンピュータ読み取り可能な媒体に記憶されプロセッサにより実行される、ソフトウェア命令として使用可能な、前記印刷装置内蔵の保存モジュールアプリケーションが、少なくとも部分的に前記論理ページを蓄積することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
印刷装置を動作させるシステムであって、
コンピュータ読み取り可能なメモリと、
グラフィックス命令としてフォーマットされた、複数の論理ページを有する印字ジョブを受信するインターフェース及びラスタライズ画像にレンダリングされた前記印字ジョブを供給するインターフェースを備えるラスタ画像プロセッサと、
該ラスタ画像プロセッサに接続されたインターフェースを備える保存モジュールと、
該保存モジュールに接続されたインターフェースを備える印刷装置のプリントエンジンとを備え、
前記保存モジュールは、前記印字ジョブのレンダリング中に、ラスタライズ画像の論理ページを前記メモリに蓄積し、前記蓄積されたラスタライズ画像の論理ページを印字のために送信するインターフェースを備え、
前記プリントエンジンは、ウォームアップ信号の受信に応じて、前記プリントエンジン自体を温めて動作温度にし、各論理ページの印刷と印刷の間、前記動作温度で維持して、前記ラスタライズ画像の論理ページを物理媒体に印刷し、
前記保存モジュールは、前記ウォームアップ信号が前記プリントエンジンで受信された時から前記プリントエンジンが前記動作温度に達するまでのウォームアップ時間と前記印字ジョブのレンダリングが完了するのに必要なレンダリング時間とを予測し、前記ウォームアップ信号を前記プリントエンジンに送信し、さらに、
前記保存モジュールは、前記印字ジョブの最終論理ページがレンダリングされる完了時刻を予測し、前記ラスタライズ画像の全ての論理ページを印刷するのに必要な印字継続時間を予測し、前記ウォームアップ信号を、
((前記完了時刻)−(前記ウォームアップ時間+前記印字継続時間))
に相当する時刻に送信し、前記ラスタライズ画像を蓄積している間であって、
((前記完了時刻)−(前記印字継続時間))
に相当する時刻に、前記蓄積されたラスタライズ画像の第1論理ページを送信することを特徴とするシステム。
【請求項8】
前記プリントエンジンは、トナーを前記物理媒体上で溶融するのに充分な温度まで定着ローラを温めることを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記保存モジュールは、前記印字ジョブ中の論理ページの数、前記印字ジョブのファイルのサイズ、前記印字ジョブのグラフィックスの内容からなる群から選択される基準、及び該基準の組み合わせに基づいて、前記レンダリング時間を予測することを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記ラスタ画像プロセッサは、複数の印字ジョブを受信し、前記複数の印字ジョブをレンダリングして複数の結合したラスタライズ画像を有する1つのラスタライズ画像群にすることを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
クライアントコンピュータと前記印刷装置に接続されたネットワークインターフェースを備えるネットワークサーバを更に含み、
前記保存モジュールは、前記ネットワークサーバに内蔵されたアプリケーションであって、コンピュータ読み取り可能な媒体に記憶されプロセッサにより実行される、ソフトウェア命令として使用可能とし、少なくとも部分的に前記論理ページを蓄積することを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
前記保存モジュールは、前記印刷装置に内蔵されたアプリケーションであって、コンピュータ読み取り可能な媒体に記憶されプロセッサにより実行される、ソフトウェア命令として使用可能とし、少なくとも部分的に前記論理ページを蓄積することを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項1】
物理媒体に印刷する方法であって、
グラフィックス命令としてフォーマットされた複数の論理ページを有する印字ジョブを受信する工程と、
ラスタ画像プロセッサが前記印字ジョブをラスタライズ画像にレンダリングする工程と、
前記印字ジョブのレンダリング中に、ラスタライズ画像の論理ページをメモリに蓄積する工程と、
ウォームアップ信号の受信に応じて、前記印刷装置のプリントエンジンを温めて動作温度にする工程と、
前記ラスタ画像プロセッサが前記蓄積されたラスタライズ画像の論理ページを前記プリントエンジンに送信する工程と、
各論理ページの印刷と印刷の間、前記プリントエンジンを動作温度に維持して、前記ラスタライズ画像の論理ページを物理媒体に印刷する工程とを含み、
さらに、前記ウォームアップ信号が前記プリントエンジンで受信された時から前記プリントエンジンが動作温度に達するまでのウォームアップ時間と前記印字ジョブのレンダリングが完了するのに必要なレンダリング時間とを予測する工程と、
前記ウォームアップ信号を前記プリントエンジンに送信する工程とを含み、
前記レンダリング時間を予測する工程は、前記印字ジョブの最終論理ページがレンダリングされる完了時刻を予測すること、及び、前記ラスタライズ画像の全ての論理ページを印刷するのに必要な期間である印字継続時間を予測することを含み、
前記ウォームアップ信号を前記プリントエンジンに送信する工程は、
((前記完了時刻)−(前記ウォームアップ時間+前記印字継続時間))
に相当する時刻に、前記ウォームアップ信号を送信することを含み、
前記蓄積されたラスタライズ画像の論理ページを前記プリントエンジンに送信する工程は、前記ラスタライズ画像を蓄積している間であって、
((前記完了時刻)−(前記印字継続時間))
に相当する時刻に、前記蓄積されたラスタライズ画像の第1論理ページを送信することを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記プリントエンジンを温めて動作温度にする工程は、トナーを前記物理媒体上で溶融するのに充分な温度まで前記印刷装置の定着ローラを温めることを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レンダリング時間を予測する工程は、前記印字ジョブ中の論理ページの数、前記印字ジョブのファイルのサイズ、前記印字ジョブのグラフィックスの内容からなる群から選択された基準、及び該基準の組み合わせに基づいて、前記レンダリング時間を予測することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記印字ジョブを受信する工程は、複数の印字ジョブを受信することを含み、
前記印字ジョブをラスタライズ画像にレンダリングする工程は、前記複数の印字ジョブをレンダリングして複数の結合したラスタライズ画像を有するラスタライズ画像群にすることを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ラスタライズ画像の論理ページを蓄積する工程は、コンピュータ読み取り可能な媒体に記憶されプロセッサにより実行される、ソフトウェア命令として使用可能な、コンピュータ内蔵の保存モジュールアプリケーションが、少なくとも部分的に前記論理ページを蓄積することを含み、
前記蓄積されたラスタライズ画像の論理ページを前記プリントエンジンに送信する工程は、コンピュータが前記印刷装置のプリントエンジンに前記蓄積されたラスタライズ画像を送信することを含むこと特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ラスタライズ画像の論理ページを蓄積する工程は、コンピュータ読み取り可能な媒体に記憶されプロセッサにより実行される、ソフトウェア命令として使用可能な、前記印刷装置内蔵の保存モジュールアプリケーションが、少なくとも部分的に前記論理ページを蓄積することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
印刷装置を動作させるシステムであって、
コンピュータ読み取り可能なメモリと、
グラフィックス命令としてフォーマットされた、複数の論理ページを有する印字ジョブを受信するインターフェース及びラスタライズ画像にレンダリングされた前記印字ジョブを供給するインターフェースを備えるラスタ画像プロセッサと、
該ラスタ画像プロセッサに接続されたインターフェースを備える保存モジュールと、
該保存モジュールに接続されたインターフェースを備える印刷装置のプリントエンジンとを備え、
前記保存モジュールは、前記印字ジョブのレンダリング中に、ラスタライズ画像の論理ページを前記メモリに蓄積し、前記蓄積されたラスタライズ画像の論理ページを印字のために送信するインターフェースを備え、
前記プリントエンジンは、ウォームアップ信号の受信に応じて、前記プリントエンジン自体を温めて動作温度にし、各論理ページの印刷と印刷の間、前記動作温度で維持して、前記ラスタライズ画像の論理ページを物理媒体に印刷し、
前記保存モジュールは、前記ウォームアップ信号が前記プリントエンジンで受信された時から前記プリントエンジンが前記動作温度に達するまでのウォームアップ時間と前記印字ジョブのレンダリングが完了するのに必要なレンダリング時間とを予測し、前記ウォームアップ信号を前記プリントエンジンに送信し、さらに、
前記保存モジュールは、前記印字ジョブの最終論理ページがレンダリングされる完了時刻を予測し、前記ラスタライズ画像の全ての論理ページを印刷するのに必要な印字継続時間を予測し、前記ウォームアップ信号を、
((前記完了時刻)−(前記ウォームアップ時間+前記印字継続時間))
に相当する時刻に送信し、前記ラスタライズ画像を蓄積している間であって、
((前記完了時刻)−(前記印字継続時間))
に相当する時刻に、前記蓄積されたラスタライズ画像の第1論理ページを送信することを特徴とするシステム。
【請求項8】
前記プリントエンジンは、トナーを前記物理媒体上で溶融するのに充分な温度まで定着ローラを温めることを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記保存モジュールは、前記印字ジョブ中の論理ページの数、前記印字ジョブのファイルのサイズ、前記印字ジョブのグラフィックスの内容からなる群から選択される基準、及び該基準の組み合わせに基づいて、前記レンダリング時間を予測することを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記ラスタ画像プロセッサは、複数の印字ジョブを受信し、前記複数の印字ジョブをレンダリングして複数の結合したラスタライズ画像を有する1つのラスタライズ画像群にすることを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
クライアントコンピュータと前記印刷装置に接続されたネットワークインターフェースを備えるネットワークサーバを更に含み、
前記保存モジュールは、前記ネットワークサーバに内蔵されたアプリケーションであって、コンピュータ読み取り可能な媒体に記憶されプロセッサにより実行される、ソフトウェア命令として使用可能とし、少なくとも部分的に前記論理ページを蓄積することを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
前記保存モジュールは、前記印刷装置に内蔵されたアプリケーションであって、コンピュータ読み取り可能な媒体に記憶されプロセッサにより実行される、ソフトウェア命令として使用可能とし、少なくとも部分的に前記論理ページを蓄積することを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−207224(P2011−207224A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56036(P2011−56036)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
2.WINDOWS
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
2.WINDOWS
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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