説明

プリントシステムおよび方法

【課題】様々な基体上に様々なインクがプリントされる際に、線幅のばらつきとして現れる画質のばらつきを軽減する方法を提供する。
【解決手段】基体の組成および基体上のインクの拡散に関連するインクの特性を特定するプリントジョブ情報を受け取り、基体の組成およびインクの特性に基づいてプリントシステムのノズルにより噴出されるべき液滴のサイズを選択する。その際、基体と、インクタイプと、基体およびインクタイプの各組み合わせに対してイメージ品質を最適化対応するプロセス方向解像度とのデータベースを含むルックアップテーブルを用いる。選択された液滴のサイズに基づいてプリントシステムに対する発射指示を生成する。液滴の選択が、細かい規模のレイダウン調節の提供を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリントシステムおよびプリント方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本願は、米国法典第35編第119条(e)の下で、引用によりその全ての内容をここに包含する、2004年9月7日に出願された「プリントシステムおよびプリント方法における可変解像度」と題する米国仮特許出願第60/607753号の優先権を主張するものである。
【0003】
単一パスプリントシステム等のプリントシステムを用いて、その動作寿命の過程において、様々な異なる基体上に様々な異なるインクがプリントされ得る。一般的に、単一パスプリントシステムは、画像の性質(例えば、グラフィックと文字との割合)、基体の組成、および用いられるインクのタイプに関わりなく、プロセス方向において単一解像度で(即ち、固有解像度で)プリントするよう構成される。従って、一部の用途では、解像度が最適な解像度よりも低いことがあり、基体に付着したインクが不十分なことに起因する画像エラーが生じ得る。或いは、別の用途では、システムの固有解像度が、そのプリントジョブに対する最適な解像度より高いことがあり、基体に付着したインクが多過ぎることに起因する画像エラーが生じ得る。例えば、照射によって硬化するまでは液体の状態に保たれるUV硬化インク等といった一部のインクでは、様々なタイプの用紙を用いた場合に線幅のばらつきとして現れる画質のばらつきが生じ得る。様々な基体へのプリントを行う際に伴い得る画質のばらつきを軽減するための1つの手法は、例えば、異なる用紙タイプと関係する異なる線の広がり特性を補償するために、液滴質量を調節することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、可変レイダウンを用いてプリントシステムを操作する方法、それに関連するプリント方法、プリントシステム、およびコントローラを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
概括的に、本発明は第1の態様において、可変レイダウンを用いてプリントシステムを操作する方法であって、システムにプリントジョブ情報を供給する工程と、プリントジョブ情報に基づいてインクレイダウンを選択する工程と、このインクレイダウンに基づいてプリントシステムに対する発射指示を生成する工程と、このインクレイダウンにて基体に画像をプリントする工程と、を備えるプリントシステム操作方法であることを特徴とする。
【0006】
この方法の複数の実施形態は、以下の構成要件および/または他の態様の構成要件の1つ以上を含み得る。インクレイダウンを選択する工程は、プリントジョブ情報に基づいてプリント解像度を選択することおよび/またはプリントジョブ情報に基づいて液滴質量を選択することを含み得る。プリントシステムと通信するクライアントは、該システムにプリントジョブ情報を供給し得る。クライアントは、発射指示を生成し得る。プリントシステムは、プリントジョブ情報から発射指示を生成し得る。発射指示は、プリントジョブ情報にラスタ画像処理を行うことによって生成され得る。発射指示は、選択されたプリント解像度に基づいて生成され得る。発射指示を生成する工程は、複数の解像度に対応する複数のセットの発射指示を生成することを含み得る。発射指示を生成する工程は、複数のセットの発射指示のうち、選択されたプリント解像度に対応する1セットの発射指示を選択することを更に含み得る。
【0007】
インクレイダウンを選択する工程が、プリントジョブ情報に基づいてプリント解像度を選択することを含む実施形態では、選択されたプリント解像度は約100dpi〜2000dpiであり得る。選択されたプリント解像度は、移動方向と直交する方向のプリント解像度とは異なり得る。プリント解像度は、基体上に所定のプリント線幅を設けるよう選択され得る。
【0008】
インクレイダウンは、基体の組成および/または画像のプリントに用いられるインクの組成に基づいて選択され得る。インクレイダウンは、画像の構成に基づいて選択され得る。インクレイダウンは、ルックアップテーブルに従って選択され得る。画像は、固有解像度を有するエンコーダからの基体追跡信号に従ってプリントされ得る。固有解像度はプリント解像度とは異なり得る。
【0009】
概括的に、本発明は別の態様において、基体とプリントヘッドとの相対移動を生じさせる工程と、固有解像度を有するエンコーダを用いて、基体とプリントヘッドとの相対的な位置に基づく基体追跡信号を生成する工程と、基体の組成に基づきインクレイダウンを選択する工程と、基体追跡信号およびインクレイダウンに基づき画素トリガ信号を生成する工程と、プリントヘッドを用いてこのインクレイダウンにて基体上へのプリントを行う工程とを備える方法であることを特徴とする。
【0010】
この方法の複数の実施形態は、以下の構成要件および/または他の態様の構成要件の1つ以上を含み得る。インクレイダウンは、固有解像度とは異なるプリント解像度に対応し得る。画素トリガ信号は、位相ロックループを用いて生成され得る。
【0011】
概括的に、本発明は更に別の態様において、クライアントから受け取ったプリントジョブを実行するプリントシステムであることを特徴とする。このシステムは、プリントヘッドを有するプリントステーションと、プリントステーションと基体との相対移動を生じさせる基体移送装置と、プリントステーションおよびクライアントと通信するシステムコントローラとを備え、動作中に、システムコントローラが、クライアントから受け取ったプリントジョブに基づいてインクレイダウンを選択し、このインクレイダウンに基づいて発射指示を生成し、プリントヘッドに、このインクレイダウンにて基体上に画像をプリントさせる。
【0012】
本システムの複数の実施形態は、以下の構成要件および/または他の態様の構成要件の1つ以上を含み得る。システムコントローラは、基体とプリントヘッドとの相対的な位置に基づいて基体追跡信号を生成するよう構成され固有解像度を有するエンコーダを更に備え得る。システムコントローラは、プリントヘッドに、固有解像度とは異なる移動方向のプリント解像度にて基体上へのプリントを行わせるよう構成され得る。システムコントローラは、クライアントから受け取ったプリントジョブ情報に従ってプリントヘッドに駆動パルスを供給するよう構成された駆動パルスコントローラを更に備え得る。駆動パルスコントローラは、基体追跡信号に基づいて駆動パルスを変調し得る。駆動パルスコントローラは、基体追跡信号周波数とは異なる周波数を有する画素トリガ信号を用いて駆動パルスを変調し得る。駆動パルスコントローラは、基体追跡信号に基づいて画素トリガ信号を生成する位相ロックループを備え得る。システムコントローラは、プリントジョブ情報に基づいて駆動パルスコントローラに対する発射指示を生成するラスタ画像処理プロセッサを備え得る。システムコントローラは、駆動パルスコントローラに対する発射指示を格納するメモリバッファを備え得る。メモリバッファは、複数のプリント解像度に対応する発射指示を格納するのに十分なメモリを有し得る。複数の解像度は約100dpi〜2000dpiであり得る。
【0013】
概括的に、本発明は別の実施形態において、プリントヘッドに基体上へのプリントを行わせるよう構成されたコントローラであって、メモリバッファを有するコントローラであることを特徴とする。
【0014】
このコントローラは、上記システムに含まれ得るものであり、且つ/または、上記方法の一方または両方を実施するために用いられ得る。
【0015】
本発明の複数の実施形態は、以下の長所の1つ以上を有し得る。複数の実施形態は、1つのプリント装置に対して、広い範囲のインクレイダウンを提供し得る。従って、複数の実施形態は、プリント品質を落とすことなく、様々なタイプの基体およびインクを単一のプリント装置で用いることを可能にし得る。プリントされる画像の構成に基づいてレイダウンを調節し、異なる画像構成に対して一貫した画質を提供することができる。ベタを含む画像については、所望に応じて基体に連続した被覆が設けられるように、レイダウンを調節できる。透けおよび/または反転文字の埋まりを低減(即ち、解消)するように、レイダウンを調節できる。ハードウェアを変更せずとも、ソフトウェアに変更を行うことにより、レイダウンを変えることができる。液滴質量を調節せずとも、レイダウンを変えることができる。広い範囲のインクレイダウンにより、他のプリントエラー原因に対するプリント装置の許容度を高めることができる。様々な組み合わせのインクおよび基体に対して、ノミナル線幅を維持することができる。
【0016】
添付の図面および以下の記載において、本発明の1つ以上の実施形態を詳細に説明する。これらの説明および図面から、本発明の他の特徴および長所が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】連続ウェブプリントシステムの模式図。
【図2】連続ウェブ上へのプリントを行う複数のプリントヘッドを収容したプリントバーを示す図。
【図3】システムコントローラのブロック図。
【図4】複数の異なるプロセス方向解像度でプリントシステムを動作させるための制御プロセスの実施形態のフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面中、同一参照番号は同一要素を表す。
【0019】
或る態様において、本発明は、プリントシステムを用いる様々なプリントジョブに対して、可変インクレイダウン(ink laydown)でプリントを行うことを特徴とする。これにより、システムで様々な組み合わせの基体およびインクを用いた場合に生じ得る、最適でないインクレイダウンと関係するプリントエラーを低減できる。
【0020】
図1を参照すると、連続ウェブプリントシステム10は、移動するウェブ14上に複数の異なる色をプリントするための一続きのステーションまたはプリントタワー12を含む。ウェブ14は、スタンド16上の供給ロール15から、プリントステーション12へと導く用紙経路へと駆動される。4つのプリントステーションがプリントゾーン18を定め、そこで基体にインクが適用される。最後のプリントステーションの後に、光学硬化ステーション17(例えば、オーブンまたはUV源)が配置され得る。プリント後、ウェブは各シートに裁断され、それらはステーション19でスタックされる。新聞紙面等といった、幅広のフォーマットのウェブをプリントするために、プリントステーションは、一般的に、約25〜30インチ(約63〜76センチメートル)以上のウェブ幅に対応する。インクジェット印刷用に適合可能なオフセット平版印刷用の一般的なレイアウトは、その全内容を参照して本願明細書に組み込む米国特許第5,365,843号明細書で更に説明されている。
【0021】
更に図2を参照すると、各プリントステーションはプリントバー24を含む。プリントバー24は、ウェブ14上に所望の画像を描画するためにインクを射出するアレイ状に配列された複数のプリントヘッド30を取り付けるための構造である。プリントヘッド30は、プリントヘッドのインク射出面(図2には図示せず)がプリントバー24の下面から露出するようにして、プリントバーの受容部21に取り付けられる。プリントヘッド30を、複数のノズル開口がオフセットされるようアレイ状に配列することで、プリント解像度またはプリント速度を高めることができる。
【0022】
プリントヘッド30は、微細に離間された複数の小さいノズル開口部(オリフィスとも呼ばれる)のアレイを有するドロップ・オン・デマンド型インクジェットプリントヘッド等といった様々なタイプであり得る。各オリフィスを個別に制御して、インクを画像の所望の位置、即ち画素に、選択的に射出することができる。例えば、1つのインクジェットヘッドは、少なくとも100画素(ドット)・パー・インチ(dpi)、場合によってはそれを遥かに上回るプリント解像度に対応して離間された、256個のオリフィスを有し得る。この複数のオリフィスの密なアレイにより、複雑で非常に精密な画像を生成することがきる。高性能プリントヘッドでは、ノズル開口の直径は一般的に50ミクロン以下(例えば、25ミクロン前後)であり、ノズル開口は25〜300ノズル/インチのピッチで離間され、100〜3000dpi以上の解像度を有し、約2〜50ピコリットル以下の液滴サイズを提供する。液滴の射出周波数は一般的に10kHz以上である。ドロップ・オン・デマンド型圧電プリントヘッドの例は、フィッシュベックら(Fishbeck et al.)の米国特許第4,825,227号、ホイシントン(Hoisington)の米国特許第5,265,315号、ハイン(Hine)の米国特許第4,937,598号、ビブルら(Bibl et al.)の米国特許出願公開第2004−0004649号、およびチェンら(Chen et al.)の米国特許仮出願第60/510,459号の各明細書に記載されており、これら全ての全内容を参照して本願明細書に組み込む。例えば、インクの加熱によって射出を行うサーマルインクジェット・プリントヘッド等といった他のタイプのプリントヘッドを用いることもできる。インク液滴の連続流を偏向することによる連続型インクジェットヘッドを用いることもできる。一般的な構成では、ウェブ経路とプリントバーとの離間距離は約0.1〜1ミリメートルである。
【0023】
インクレイダウンとは、基体の単位面積当たりのインクの体積(または質量でも同等である)のことである。プリント解像度および/または液滴質量を変えることにより、インクレイダウンを変えることができる。ウェブ横断方向のプリント解像度は、基体上において隣接するプリントラインをプリントするノズルの間隔によって決定される(即ち、機能上隣接するノズル)。機能上隣接するノズルは、同じまたは異なるプリントヘッドに存在し得る。一般的なウェブ横断方向の解像度は、約100dpi〜1000dpi(例えば、約300dpi以上、400dpi以上、500dpi以上、600dpi以上、700dpi以上、800dpi以上)であり得る。プロセス方向の解像度は、ジェット射出周波数およびウェブ速度によって異なる。多くの実施形態では、ジェット射出周波数は、エンコーダによってウェブ速度に固定される(これについては後述する)。プロセス方向解像度は、各プリントジョブ毎に同じであってもよく、または、異なるプリントジョブ毎に異なっていてもよい。一般的に、プロセス方向解像度は、約100dpi〜2000dpi(例えば、約300dpi〜1000dpiであり、約600dpi等)である。異なるプロセス方向解像度を実現する方法については後述する。
【0024】
プリントヘッドの駆動波形(例えば、駆動波形の振幅および/または形状)を変更することにより、および/または、1つの画素位置に複数の液滴を射出することにより、液滴質量を変えることができる。例えば、一般的には、パルスの振幅が大きいほど、射出される液滴の質量が大きくなる。幾つかの実施形態では、所望のレイダウンに応じて液滴質量を約5%以上(例えば、約10%以上、約15%以上、約20%以上)変えることができる。
【0025】
幾つかの実施形態では、インクレイダウンを変えるために、液滴質量とプロセス方向解像度との両方を変える。プロセス方向解像度を変えることにより、大規模なレイダウン調節(例えば、約100%以上、約200%以上、約300%以上、約500%以上)を行うことができ、液滴質量を変えることにより、細かい規模のレイダウン調節(例えば、約50%以下、約25%以下、約10%以下、約5%以下)を行うことができる。
【0026】
図3を参照すると、システムコントローラ300は、プリントシステム100の動作を制御する。システムコントローラ300はクライアント310と通信し、クライアント310は、コントローラにプリントジョブ情報を提供する。一般的に、クライアントは、プリントジョブのコンパイルに用いられる、例えば、デスクトップパブリッシング機能を有するリモートコンピュータである。システムコントローラは、プリントヘッド301に対する発射指示を生成するラスタ画像処理(RIP)プロセッサ320を含む。システムコントローラは、駆動パルスコントローラ311(ヘッドデータ経路およびヘッド駆動回路を含む)を介して、プリントヘッド301に発射指示を送る。駆動パルスコントローラ311は、画素トリガ信号を用いて、プリントヘッド301に発射指示を送る。システムコントローラ300は、エンコーダ330も含む。エンコーダ330は、プリントヘッド301に対するウェブの位置を追跡し、駆動パルスコントローラ311に基体追跡信号を供給する。駆動パルスコントローラ311は、基体追跡信号に基づいて画素トリガ信号を生成する。エンコーダ330は、プリントシステムを通るウェブの相対移動を制御するウェブコントローラ340と通信する。ウェブコントローラ340およびRIPプロセッサ320は、ユーザインターフェイス350と通信する。オペレータは、ユーザインターフェイス350から、システムコントローラ300に対する指示を入力できる。
【0027】
上述したように、プロセス方向解像度は、ジェット射出周波数およびウェブ速度に関係し、これらは共に、システムコントローラによって制御される。具体的には、プロセス方向解像度は、ウェブ速度に対するジェット射出周波数の比率に比例する。上述したように、エンコーダは、プリントヘッドに対するウェブの位置を追跡して、基体追跡信号を生成する。システムコントローラは基体追跡信号を用いて、プリントヘッドに送られる発射指示をゲート制御する。エンコーダは、基体追跡信号パルス間のウェブ変位に対応する固有解像度を有する。例えば、光源と検出器との間でビームを遮断するよう構成された複数の放射状のスリットを有するウェブ駆動軸を有する光エンコーダが、ビームが遮断される度に基体追跡信号パルスを生成する。従って、各パルスは、ウェブの変位(これは軸の半径に依存する)に対応する。システムが、基体追跡信号パルスを用いて発射指示をゲート制御する場合には、ウェブ方向解像度はこの変位に対応する。
【0028】
プロセス方向解像度は固有解像度に固定されない。この解像度は、プリントジョブに応じて変化し得る。固有解像度とは異なる解像度に対応するために、システムコントローラは、基体追跡信号および選択された解像度に基づいて画素トリガ信号を生成する。次に、画素トリガ信号を用いて発射指示をゲート制御することにより、プリント画素の横列間に適切な遅延を設けることで、選択された解像度でのプリントを行う。
【0029】
幾つかの実施形態では、位相ロックループを用いて、基体追跡信号から画素トリガ信号を生成できる。位相ロックループは、基体追跡信号の周波数を増減して、選択された解像度に対応する周波数を有する画素トリガ信号を供給する。
【0030】
幾つかの実施形態では、固有解像度は、選択された解像度の範囲より大きい(例えば、5〜20倍大きい)ことがあり得る。例えば、選択された解像度が一般的に約100〜1000dpiである場合に、固有解像度は約5000、10000、20000dpi以上に対応し得る。
【0031】
或いは、基体追跡信号とは異なる画素トリガ信号を生成する代わりに、幾つかの実施形態では、複数のエンコーダ(各エンコーダは異なる固有解像度を有する)を用いることができる。例えば、1つのシステムが、3つ(以上)の固有解像度を提供する3つ(以上)の異なるエンコーダを含むことができる。システムコントローラは、発射指示をゲート制御するために、選択された解像度に対応する基体追跡信号を選択して用いることができる。
【0032】
幾つかの実施形態では、システムコントローラは、様々なインク/用紙の組み合わせに対して最適な画質を提供する、用紙およびインクのタイプと対応するプロセス方向解像度とのデータベースを有する。この情報は、例えば、ルックアップテーブルの形式で格納できる。システムコントローラは、このデータベースを参照して最適なレイダウンを決定でき、各プリントジョブに対して最適なレイダウンを提供するためのプロセス方向解像度および/または液滴質量を選択できる。
【0033】
用いられる基体およびインクに応じて、並びに画像の構成に応じて、レイダウンを変えることができる。一般的に、画像は、ベタ、グラフィックおよび/または文字で構成され得るものであり、プリントされた画像におけるベタの品質、グラフィックの品質、および文字の品質の間の所望のバランスに応じてレイダウンを変えることができる。インクレイダウンは、付着したインクの線のウェブ横断方向の物理的な寸法であるプリント線幅に影響し得る。良好なベタ画像をプリントするには、例えば、プリント線幅は、隣接する画素にプリントされたインクどうしがつながって、基体に連続したインクの被覆が設けられるように、画素幅以上(例えば、画素幅の約1.5倍以上、画素幅の約2倍以上、画素幅の約2.5倍以上、画素幅の約3倍以上)であるべきである。或る実施形態では、プリント線幅は、異なるノズル間の(例えば、ノズル位置、ノズルの位置決めの)ばらつきや基体の移動品質(例えば、ウェブの進み方のブレ)に起因するエラー等といったプリントエラーを隠すために、十分に大きくすべきである。プリント線幅に、連続した被覆を設けるための十分な大きさがない場合には、画像に筋が入ることがある。一方、例えば、細かい文字、小さいバーコード、または反転文字(即ち、インクが背景を構成し、文字はインクが無い領域によって定められる)をプリントする必要がある用途では、プリント線幅が大きい(例えば、画素サイズ以上)と、プリントされない領域まで埋めてしまうことにより、文字品質が悪くなることがある。
【0034】
基体が異なると、所与のインクレイダウンに対して得られる線幅に大きなばらつきが生じ得る。例えば、吸収性の基体(例えば、コピー用紙やマット用紙)は、非吸収性の基体(例えば、光沢紙)と比較して、同じ液滴体積およびプロセス方向解像度に対して、より大きい(例えば、約50%〜200%大きい)線幅を生じ得る。従って、同程度の線幅にするには、プリント装置は、非吸収性の基体に対しては、吸収性の基体に対するプロセス方向解像度よりも高いプロセス方向解像度でプリントを行うべきである。しかし、基体が異なると、同程度の線幅であっても、画質にばらつきが生じ得ることを留意されたい。例えば、同程度の線幅を有する場合に、光沢紙上の画像の光学濃度は、コピー用紙上の画像の光学濃度よりかなり高くなり得る。従って、インク/基体の組み合わせおよびプリントされる画像のタイプ(例えば、文字の量vsグラフィックの量vsベタの量)に基づいて、レイダウンを選択できる。
【0035】
幾つかの実施形態では、基体およびインクの異なる組み合わせに対して、プリント線幅が略一定のノミナル値に維持され得る。例えば、プリント線幅を、ノミナル線幅の約20%以下(例えば、約15%以下、約10%以下、約5%以下)の範囲内に維持できる。ノミナル線幅は、画素幅にほぼ等しいかまたはそれ以上(例えば、画素幅の約1.5倍以上、画素幅の約2倍以上、画素幅の約2.5倍以上、画素幅の約3倍以上)であり得る。幾つかの実施形態では、ノミナル線幅は、約30μm以上(例えば、約50μm以上、約80μm以上、約100μm以上、約150μm以上、約200μm以上)であり得る。
【0036】
図4Aには、システム100の動作を示すフローチャートが示されている。まず、クライアント310がシステムコントローラ300にプリントジョブ情報を送る。システムコントローラは、そのプリントジョブの特性(例えば、文字とグラフィックとの割合や、用いられる基体およびインクのタイプ等といった、プリントされる画像の性質)に基づいて、プロセス方向解像度を決定する。ウェブ方向解像度が決定されたら、システムコントローラは、プリントジョブ情報にRIPを行って、発射指示を供給する。最後に、システムが、画素トリガ信号を用いてゲート制御される発射指示を用いてプリントを行うことで、プリントジョブが実行される。
【0037】
上述の実施形態では、システムコントローラはプリントジョブ情報にRIPを行って発射指示を生成する。しかし、クライアントとシステムコントローラとの間でタスクを分割すると、上述の動作モードとは異なるものになり得る。例えば、幾つかの実施形態では、システムコントローラにプリントジョブ情報を送る代わりに、クライアントがプリントジョブ情報にRIPを行って、発射指示を送ることができる。
【0038】
図4Bにはこの動作モードの一例が示されており、ここでは、クライアントがシステムコントローラにプリントジョブ情報を送る。システムコントローラは、プリントジョブデータにRIPを行う代わりに、用いる解像度を決定すし、この情報をクライアントに供給する。クライアントは、選択された解像度に従ってプリントジョブ情報にRIPを行うことにより、発射指示を生成し、これがシステムコントローラに送られる。システムコントローラは、発射指示に従ってプリントジョブを実行する。
【0039】
図4Cのフロー図には、別の動作モードの更に別の例が示されている。この実施形態では、クライアントはシステムコントローラにプリントジョブ情報を供給すると共に、プリントジョブ情報にRIPを行って、複数のプリント解像度における複数のセット(例えば、3、4、5セット以上)の発射指示を供給する。例えば、クライアントは、プリントジョブ情報にRIPを行って、300dpi、600dpi、および900dpiでプリントするための発射指示を供給してもよい。システムコントローラは、プリントジョブ情報に基づいて、そのプリントジョブに対する適切な解像度を選択し、クライアントから対応する発射指示を受け取る。対応する発射指示を用いて、選択された解像度でプリントジョブが実行される。
【0040】
或いは、プリントジョブ情報と共に、複数のセットの発射指示が、システムコントローラに送られてもよい。複数のセットの発射指示はメモリにバッファされる。プリントジョブを実行するために、選択された解像度に対応する発射指示のみがアクセスされる。この場合には、システムコントローラ内のメモリバッファは、複数のセット(例えば、2セット、3セット、4セット、5セット以上)の発射指示を格納するために十分な大きさを有するべきである。例えば、画像が約10メガバイトのメモリに対応し、3セットの発射指示が生成される場合には、メモリバッファの容量は約30メガバイト以上であるべきである。幾つかの実施形態では、メモリバッファは、約1ギガバイト以上(例えば、約3ギガバイト以上、約5ギガバイト以上、約10ギガバイト以上、約20ギガバイト以上、約50ギガバイト以上)であり得る。
【0041】
ジェット射出周波数は、システムコントローラによって画素トリガ信号を介して制御され、一般的に、これらの電子的要素および/またはプリントヘッドの物理的および電気的特性によって制限される。ジェット射出周波数は、例えば約5kHzから約100kHzまで変化させることができる。幾つかの実施形態では、ジェット射出周波数は約15kHz〜25kHzである。
【0042】
ウェブ速度も、システムコントローラによってウェブコントローラを介して制御される。最小ウェブ速度は、一般的に、ウェブ操作装置がウェブを安定に保つ能力によって制限される。非常に低速である場合には、ウェブ操作装置が、ウェブに、液滴配置エラーを生じるような動きを生じさせ得る。そのような振動は、非常に高速である場合にも生じ得るが、最大ウェブ速度は、1つのステーションにおけるウェブの最小滞留時間等のように、プロセス工程の1つによって決定されることが多い。この一例として、UV硬化インクについては、インクを適切に硬化させるのに必要な最小露光に従って最大ウェブ速度が決定され得る。幾つかの実施形態では、ウェブ速度を約0.1ms−1〜10ms−1の範囲(例えば、約1ms−1〜3ms−1の範囲)で変えることができる。
【0043】
本発明の複数の実施形態を説明した。しかし、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変形が行われ得ることを理解されたい。他の実施形態も特許請求の範囲の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリントシステムが、基体の組成、および基体上でのインクの拡散に関連するインクの特性を特定する、プリントジョブに関する情報を受け取る工程と、
基体と、インクタイプと、基体およびインクタイプの各組み合わせに対してイメージ品質を最適化する対応するプロセス方向解像度とのデータベースを含むルックアップテーブルを用い、基体の組成およびインクの特性に基づいてプリントシステムのノズルにより噴出されるべき液滴のサイズを選択する工程と、
選択された液滴のサイズに基づいてプリントシステムに対する発射指示を生成する工程であって、液滴の選択が細かい規模のレイダウン調節の提供を含む工程と、
を有してなることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記プリントジョブに関する情報に基づいてプリント解像度を選択する工程を更に有し、前記プリント解像度は大規模なインクレイダウン調整のために選択され、前記液滴のサイズは、細かい規模のインクレイダウン調整のために選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記発射指示を生成する工程が、プリンタがプリント可能な異なる解像度に対応する異なる発射指示を生成することを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記プリンタが、100dpi〜2000dpiの範囲内の複数の解像度でプリント可能であることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記プリントジョブに関する情報が前記画像の構成を特定する情報を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記液滴のサイズを選択する工程が、前記基体の吸収特性に基づいて選択することを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
基体の組成および基体上のインクの拡散に関連するインクの特性を特定する情報が、使用されたインクおよび基体の組み合わせを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
プリントヘッド、
前記プリントヘッドと基体との相対移動を生じさせる移送装置と、
前記プリントヘッドと通信し、かつ、前記プリントヘッドのノズルから射出されるインクの液滴のサイズを、基体の組成およびインクの特性に基づいて選択し、選択された液滴のサイズに基づいて発射指示を生成するように構成された射出コントローラであって、基体と、インクタイプと、基体およびインクタイプの各組み合わせに対してイメージ品質を最適化する対応するプロセス方向解像度とのデータベースを含む射出コントローラとを備えたことを特徴とするプリントシステム。
【請求項9】
前記射出コントローラが、固有解像度を有し、前記基体と前記プリントヘッドとの相対的な位置に基づく基体追跡信号を生成するように構成されたエンコーダを含むことを特徴とする請求項8記載のプリントシステム。
【請求項10】
前記射出コントローラが、プリントジョブに関する情報に従って前記プリントヘッドに駆動パルスを供給するよう構成された駆動パルスコントローラを更に含むことを特徴とする請求項9記載のプリントシステム。
【請求項11】
前記駆動パルスコントローラが、前記基体追跡信号に基づいて前記駆動パルスを変調することを特徴とする請求項記載10のプリントシステム。
【請求項12】
前記駆動パルスコントローラが、前記基体追跡信号に基づいて画素トリガ信号を生成する位相ロックループを含むことを特徴とする請求項10記載のプリントシステム。
【請求項13】
前記射出コントローラが、前記プリントジョブに関する情報に基づいて前記駆動パルスコントローラに対する発射指示を生成するラスタ画像処理プロセッサを含むことを特徴とする請求項10記載のプリントシステム。
【請求項14】
前記射出コントローラが、基体の組成およびインクの特性に関する情報を含むデータベースを更に含むことを特徴とする請求項8記載のプリントシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−60019(P2013−60019A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−262140(P2012−262140)
【出願日】平成24年11月30日(2012.11.30)
【分割の表示】特願2007−531271(P2007−531271)の分割
【原出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(502122794)フジフィルム ディマティックス, インコーポレイテッド (73)
【Fターム(参考)】