説明

プリント回路基板、アンテナ、及びその製造方法

【課題】基板材料に樹脂を用いて低損失なプリント回路基板、低損失かつ広帯域なアンテナ、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】成形工程で所定形状の樹脂材101を作製し、発泡工程で樹脂材101を発泡させる。これにより、スキン層111と発泡部112が形成される。スキン層111はメッキを密着させないことから、スキン層除去工程で導体パターン形状にスキン層111を除去して内部の発泡部112を露出させる。導体層形成工程で無電解メッキを行うことにより、アンカー効果を有する発泡部112にメッキが密着されて導体層120が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板材料に樹脂を用いたプリント回路基板、アンテナ、及びその製造方法に関し、特に樹脂の内部を発泡構造として低誘電率に形成されたプリント回路基板、アンテナ、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂を基板としてこれに導体パターンを形成するプリント回路基板の製造方法として、従来より二色成形法やインサートモールド法が知られている。二色成形法では、例えば特許文献1に記載のように、導体パターンに該当する形状を金属が付着しやすい第1の樹脂で射出成形し、第1の樹脂の回路パターン以外の部分の形状を金属が付着しにくい第2の樹脂で射出成形する。その後、第1の樹脂の導体パターンを形成する面をエッチングによる粗化、触媒付与、触媒活性等により活性化して無電解メッキを行うことで導体パターンを形成する。特許文献1では、金属が付着しやすい第1の樹脂としてABS(アクリロニトリル・ブタジエンスチレン)を用い、金属が付着しやすい第1の樹脂としてPC(ポリカーボネイト)を用いている。
【0003】
二色成形法は、回路基板の形状自由度や導体パターンの配線自由度が高いものの、成型金型が2つ必要となり高コストとなる。成形を2回行う点でもコストがかかる。また、設計変更に対応するためには金型を変更する必要があり、設計変更への対応性が低い。
【0004】
また、インサートモールドでは、板金をプレスして形成された回路パターンを成型金型内に配置し、金型内に樹脂を注入することでプリント回路基板を製造する(例えば特許文献2)。インサートモールドは、回路基板の形状や導体パターンの配線に対してやや制約があり、自由度が低下する。また成型金型とプレス金型の2つを必要とするため高コストとなり、設計変更への対応性についても金型を変更する必要があるため低い。
【0005】
樹脂を用いたプリント回路基板のさらに別の製造方法として、LDS(Laser Direct Structuring)法がある。LDS法では、LCP(液晶ポリマー)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等をベースポリマーとして、これにフィラー有機金属を混ぜ合わせたものを所定の形状に成形し、これに所定の回路パターン状にレーザを照射し、レーザ照射部のみにメッキを析出させて回路を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−208859号公報
【特許文献2】特開2007−89109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来のプリント回路基板の製造方法及びこれを用いて製造されるプリント回路基板並びにアンテナは、以下のような問題を有していた。アンテナ特性をさらに良くして広帯域化を図るためには基板の誘電率をさらに小さくする(例えば比誘電率2以下にする)必要があるが、従来の樹脂を用いた回路基板はメッキ性や成形性などで選択されることが多く、誘電率をさらに小さくするのが困難であった。特にLDS法では、フィラーとして金属を含む特殊な樹脂を用いることから、高コストとなるだけでなく、誘電正接(tanδ)が悪化して誘電喪失が増大するといった問題があった。
【0008】
本発明はこれらの問題を解決するためになされたものであり、基板材料に樹脂を用いて低損失なプリント回路基板、低損失かつ広帯域なアンテナ、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のプリント回路基板の製造方法の第1の態様は、所定の樹脂を発泡処理して内部の少なくとも一部に発泡構造を有する発泡部を形成するとともに前記発泡部の外表面に発泡のないスキン層を形成する発泡工程と、前記スキン層の一部を所定のパターン形状に除去して前記発泡部を露出させるスキン層除去工程と、前記露出された発泡部に無電解メッキまたは蒸着により導体層を形成する導体層形成工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明のプリント回路基板の製造方法の他の態様は、前記発泡工程は、前記樹脂を所定の形状に射出成形した後に行われることを特徴とする。
【0011】
本発明のプリント回路基板の製造方法の他の態様は、前記発泡工程は、前記樹脂に所定の気体を浸透させたペレットを射出成形すると同時に行われることを特徴とする。
【0012】
本発明のプリント回路基板の製造方法の他の態様は、前記スキン層除去工程では、前記スキン層の一部にレーザーを照射して溶解させることで前記発泡部を露出させることを特徴とする。
【0013】
本発明のプリント回路基板の製造方法の他の態様は、前記スキン層除去工程では、前記スキン層の一部を機械的に除去することで前記発泡部を露出させることを特徴とする。
【0014】
本発明のプリント回路基板の製造方法の他の態様は、前記樹脂は、PPSであることを特徴とする。
【0015】
本発明のプリント回路基板の製造方法の他の態様は、前記発泡部は、発泡径が10μm以下の気泡からなることを特徴とする。
【0016】
本発明のプリント回路基板の製造方法の他の態様は、前記発泡部は、比誘電率が2以下であることを特徴とする。
【0017】
本発明のプリント回路基板の第1の態様は、所定の樹脂を用いて形成されるプリント回路基板であって、前記樹脂の内部の少なくとも一部に形成された発泡構造を有する発泡部と、前記発泡部の外表面に形成された発泡構造を有さないスキン層と、前記スキン層が除去された前記発泡部の表面に密着された導体層と、を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明のプリント回路基板の他の態様は、前記樹脂の一方の面に形成された前記導体層と、他方の面に形成された前記スキン層と、前記発泡部とを貫通する貫通孔をさらに備えることを特徴とする。
【0019】
本発明のプリント回路基板の他の態様は、前記樹脂の対向する面にそれぞれ形成された2つの前記導体層と前記発泡部とを貫通して前記2つの導体層を電気的に接続するように内面に導体層を有するスルーホールをさらに備えることを特徴とする。
【0020】
本発明のアンテナの第1の態様は、所定の樹脂を用いて形成されるアンテナであって、前記樹脂の内部の少なくとも一部に形成された発泡構造を有する発泡部と、前記発泡部の外表面に形成された発泡構造を有さないスキン層と、前記スキン層が所定のアンテナパターン形状に除去された前記発泡部の表面に密着された導体層と、を備え、前記導体層がアンテナ素子として動作することを特徴とする。
【0021】
本発明のアンテナの他の態様は、前記樹脂の一部がRFケーブルのシースと密接するように形成されたケーブルホルダ部をさらに備え、前記シースと密接する前記ケーブルホルダ部の位置に前記導体層が形成され、前記シースと前記導体層とが半田付けされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、基板材料に樹脂を用いて低損失なプリント回路基板、低損失かつ広帯域なアンテナ、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態のプリント回路基板の製造方法を説明する処理工程図である。
【図2】第1実施形態のプリント回路基板の一例を示す上面図、断面図、及び底面図である。
【図3】本発明の第2実施形態のプリント回路基板の製造方法を説明する処理工程図である。
【図4】本発明の第3実施形態のプリント回路基板の製造方法を説明する処理工程図である。
【図5】本発明の第4実施形態のアンテナの製造方法を説明する処理工程図である。
【図6】本発明の第5実施形態のアンテナ及びアンテナ用プリント回路基板の概略構成図である。
【図7】本発明の第5実施形態の別のアンテナ用プリント回路基板の概略構成図である。
【図8】本発明の第6実施形態のプリント回路基板の製造方法を説明する処理工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の好ましい実施の形態におけるプリント回路基板、アンテナ、及びその製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。なお、同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。
【0025】
本発明のプリント回路基板、アンテナ、及びその製造方法では、低損失かつ広帯域を実現するために、誘電率の低い樹脂製の基板を提供している。
【0026】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るプリント回路基板及びその製造方法を、図1、2を用いて以下に説明する。図1は、本実施形態のプリント回路基板の製造方法を説明する処理工程図であり、図2は、本実施形態のプリント回路基板の一例を示す上面図(同図(a))、断面図(同図(b))、及び底面図(同図(c))である。同図(b)に示す断面図は、同図(a)、(c)に示す切断面A―Aで切断したときの断面図である。
【0027】
図2に示す本実施形態のプリント回路基板100は、所定の樹脂材の内部を発泡させて形成した発泡部112を有し、表面がスキン層111と導体層120で覆われている。ここで、上面側の導体層を120aとし、底面側の導体層を120bとしており、両者を合わせて示すときは単に導体層120とする。スキン層111は、樹脂材を発泡させたときに、表面から所定の深さまで発泡されずに残る表面層であり、発泡構造を有していない。また、導体層120は、スキン層111を除去した後に所定の金属をメッキまたは蒸着させて形成したものであり、所定の金属の層が発泡層112に密着されている。
【0028】
発泡部112は、樹脂材の内部に所定の気体を浸透させて発泡処理した構造を有しており、気体が大きな体積比率を占めている。気体の誘電率は樹脂材の誘電率に比べて低いことから、発泡部112の誘電率を樹脂材に比べて小さくすることができる。そこで、これを低誘電率のプリント回路基板として用いることができる。誘電率を低くすることで、広帯域化を図ることができる。また、誘電率とともに誘電正接(tanδ)も低くなり、低損失な回路基板を提供することができる。このような低誘電率、低損失なプリント回路基板100を高周波用のアンテナに用いることで、広帯域で高効率なアンテナを作製することができる。発泡部112は、比誘電率が2以下となるように形成されるのがよい。
【0029】
導体層120は、発泡部112に例えば銅をメッキまたは蒸着させて形成する。図2に示すプリント回路基板100は、例えば1mm厚程度のシート状に形成することができる。あるいは、任意の形状の成形体としてもよい。なお、図2では上面(同図(a))に導体層120aが形成され、底面(同図(c))にスキン層111と導体層120bが形成された構成としているが、これに限らず、スキン層111及び導体層120を上面及び底面のそれぞれに適宜形成することができる。
【0030】
本実施形態のプリント回路基板100を作製するのに好適な樹脂材として、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)、PP(ポリプロピレン樹脂)、PC(ポリカーボネート樹脂)等がある。特に、PPSは耐熱性が高く、半田付けを行う基板に必要な半田耐熱性を有している。耐熱性を有する樹脂としては、PPSに加えてSPS(シンジオタクチックポリスチレン)やPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等を用いることができる。
【0031】
次に、本実施形態のプリント回路基板製造方法について、図1に示す工程図を用いて以下に説明する。図1に示す工程図は、一例として図2に示すプリント回路基板100を製造する工程を示している。ここでは、本実施形態と同様の発泡構造を有する樹脂に対し、従来よりABS樹脂のメッキに用いられている一般的な方法を適用した例を示している。
【0032】
まず、図1(a)に示す成形工程では、回路基板100の製造に用いるPPS等の樹脂を射出成形することで、樹脂材101を作製する。樹脂材101は、例えば所定厚さのシート状に形成される。あるいは、所定形状の成形体に形成してもよい。樹脂を用いることで、任意の形状に射出成形することができる。
【0033】
次の図1(b)に示す発泡工程では、樹脂材101の内部に所定のガス(例えば二酸化炭素)を溶解させて気泡を形成させる。これにより、内部に発泡構造の発泡部112を有する発泡樹脂材102を作製する。発泡部112の気泡の大きさは、例えば10μm以下とするのがよく、より好ましくは1〜3μm以下とするのがよい。これにより、メッキ処理を行ったときにメッキをよく密着させるアンカー効果が得られる。また、発泡部112の比誘電率を2以下とすることができる。このような微細構造を有する発泡樹脂材102を作製する方法として、例えばMC(マイクロセルラー)の製造方法を用いることができる。
【0034】
なお、図1では成形工程で射出成形により樹脂材101を作製し、その後発泡工程でその内部を発泡させて発泡樹脂材102を作製しているが、これに限らず別の方法を用いて発泡樹脂材102を作製することができる。一例として、所定の樹脂に所定の気体を浸透させたペレットを用い、これを射出成形すると同時にその内部を発泡させることが可能である。このような方法によって発泡樹脂材102を作製してもよい。
【0035】
上記のような方法で樹脂材101を発泡させたとき、その表面には気泡が形成されないスキン層111が残る。このスキン層111は、気泡を有していないため、その表面にメッキを密着させるのが難しい構造となっている。そこで、図1(c)のスキン層除去工程では、導体パターンに従って、スキン層111を除去して内部の発泡部112を露出させる。スキン層除去工程でスキン層111が除去された発泡樹脂材を、以下ではパターン化発泡樹脂材103とする。
【0036】
発泡部112は、多数の気泡を有していることから、金属を密着させるアンカー効果が得られる。スキン層111を除去する方法として、レーザーを照射してスキン層111を溶解させることで除去する方法がある。この方法では、レーザー光の照射位置を高精度に制御することができ、所定の導体パターンを高精度でかつ安定的に形成することができる。また、スキン層111を除去する別の方法として、ドリル等を用いてスキン層111を機械的に除去することもできる。
【0037】
次の図1(d)に示す導体層形成工程では、パターン化発泡樹脂材103に対し、表面処理、触媒付与、及び触媒活性化の処理を行った後、所定の金属で無電解メッキする。スキン層111は金属を密着させることができず、ここには導体層120が形成されない。これに対し、スキン層111が除去されて露出した発泡部112には多数の気泡が形成されていることから、金属がよく密着して導体層120を形成することができる。なお、無電解メッキだけでは十分な厚さの導体層120が形成できない場合には、さらに電解メッキを行ってもよい。また、導体層120を厚く形成する必要がない場合には、導体層形成工程において蒸着により導体層120を形成してもよい。
【0038】
上記説明のように、本実施形態のプリント回路基板製造方法によれば、スキン層除去工程において、導体パターンに合わせてスキン層111を除去して発泡部112を露出させておくことで、導体層形成工程で発泡部112の露出部分のみに金属を密着させることができ、所望パターンの導体層120を形成することが可能となる。
【0039】
本実施形態のプリント回路基板製造方法では、所定の導体パターンに合わせてスキン層111を除去することで、無電解メッキにより発泡部112に導体層120を直接形成することができる。発泡部112が有するアンカー効果により、導体層120は発泡部112に強く密着される。本実施形態によれば、導体層120を不要とする部分にスキン層111を残すことで、所定パターンの導体層120を無電解メッキだけで形成することができる。これにより、本実施形態ではエッチングを行う必要がなくなる。
【0040】
上記説明のように、本実施形態によれば、基板材料に樹脂を用いて低損失かつ広帯域なプリント回路基板及びその製造方法を提供することができる。また、本実施形態の発泡部112が低誘電率になることを利用して、誘電損失を低減して効率を高めるとともに使用帯域を広帯域化することができる。本実施形態では、導体パターンに従ってスキン層111を除去することで、露出された発泡部112のみに金属を直接密着させて導体層120を形成することができ、エッチング処理を不要とすることができる。本実施形態のプリント回路基板の製造方法は、回路基板の形状自由度や導体パターンの配線自由度が高く、成型金型が1つで済むので低コストとなる。また、回路パターンの設計変更を製造装置のプログラム変更で対応することができ、設計変更への対応性が高い。基板材料の樹脂も、PPS等の一般的なものを使用することができる。発泡部112は、比誘電率が2以下となるように形成されるのがよい。
【0041】
(第2実施形態)
本発明のプリント回路基板及びその製造方法の第2の実施形態について、図3を用いて以下に説明する。図3は、第2実施形態のプリント回路基板の製造方法を説明する処理工程図である。本実施形態では、貫通孔が形成されたプリント回路基板及びその製造方法を提供する。図3(a)は、第1の実施形態と同様の成形工程及び発泡工程により作製された、内部全体が発泡構造に形成されたシート状の発泡樹脂材102を示す。発泡樹脂材102を形成する樹脂には、第1の実施形態と同様にPPSを用いるのがよい。
【0042】
次の図3(b)では、第1実施形態のスキン層除去工程と同様に、導体パターンに合わせてスキン層111を除去する。これにより、導体パターンを形成する位置に発泡部112を露出させる。そして、図3(c)の導体層形成工程では、第1実施形態と同様に、所定の金属で無電解メッキする。これにより、露出された発泡部112のみがメッキされ、所定の導体パターンの導体層120が形成される。
【0043】
本実施形態では、さらに図3(d)に示す穴あけ工程において、除去されずに残されたスキン層111を垂直に貫通する貫通孔201を形成している。貫通孔201は、例えばドリルを用いて機械的に形成することができる。これにより、本実施形態のプリント回路基板200が形成される。このような貫通孔201は、たとえば、プリント回路基板200の底面側から、導体層120bに電気的に接続されることなく、上面側の導体層120aに電気的に接続される線路を配置するのに用いることができる。
【0044】
(第3実施形態)
本発明のプリント回路基板及びその製造方法の第3の実施形態について、図4を用いて以下に説明する。図4は、第3実施形態のプリント回路基板の製造方法を説明する処理工程図である。本実施形態では、スルーホールが形成されたプリント回路基板及びその製造方法を提供する。図4(a)は、第1の実施形態と同様の成形工程及び発泡工程により作製された、内部全体が発泡構造に形成されたシート状の発泡樹脂材102を示す。発泡樹脂材102を形成する樹脂には、第1の実施形態と同様にPPSを用いるのがよい。
【0045】
次に、本実施形態では、図4(b)に示す穴あけ工程において、所定の位置に貫通孔301を形成する。貫通孔301は、例えばドリルを用いて機械的に形成することができる。図4(c)に示すスキン層除去工程では、第1実施形態と同様に導体パターンに合わせてスキン層111を除去する。本実施形態では、貫通孔301周辺のスキン層111を除去している。そして、図4(d)に示す導体層形成工程において、第1実施形態と同様に所定の金属で無電解メッキする。これにより、本実施形態のプリント回路基板300が形成される。
【0046】
本実施形態の製造方法により作製されたプリント回路基板300では、貫通孔301の内面がメッキされてスルーホール302に形成されている。すなわち、本実施形態では、導体層形成工程の前に貫通孔301を形成していることから、導体層形成工程では貫通孔301の内面にも所定の金属がメッキされる。貫通孔301の内面は発泡層112となっていることから、発泡層112によるアンカー効果が得られる。これにより、プリント回路基板300の上面側に形成された導体層120aと底面側に形成された導体層120bを電気的に接続するスルーホール302が形成される。
【0047】
本実施形態のプリント回路基板300は、これを複数積層することで多層基板を作製することができる。この場合、各層に形成されたスルーホール302が電気的に接続されることで、多層基板全体を貫通するスルーホールとすることができる。あるいは、所定の層の基板から多層基板の底面までを貫通するスルーホールに形成することも可能である。
【0048】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態であるアンテナ及びその製造方法について、図5を用いて以下に説明する。本実施形態では、チップアンテナを搭載したアンテナ400を作製する。図5は、第4実施形態のアンテナ400の製造方法を説明する処理工程図であり、各工程を上面図(図面左側)及び側面図(図面右側)を用いて説明している。
【0049】
図5(a)は、内部に発泡構造の発泡部412が形成され、表面全体がスキン層411で覆われた発泡樹脂材402を示している。発泡樹脂材402は、第1の実施形態と同様の成形工程で所定形状の成形体に成形され、これを発泡工程で内部全体を発泡させて作製したものである。あるいは、所定の樹脂に所定の気体を浸透させたペレットを用い、これを射出成形すると同時にその内部を発泡させて発泡樹脂材402を作製してもよい。発泡樹脂材402を形成する樹脂には、第1の実施形態と同様にPPSを用いるのが好ましい。
【0050】
次に、図5(b)に示すスキン層除去工程において、所定のアンテナパターンに沿って上面のスキン層411にレーザーを照射する。これにより、アンテナパターンの形状にスキン層411を溶融して除去する。また、側面にもレーザーを照射して給電線路の形状にスキン層411を除去する。その結果、アンテナパターン及び給電線路と同形状に発泡部412が露出される。図5(c)に示す導体層形成工程では、無電解メッキにより露出された発泡部412に導体層420を形成する。これにより、所定のアンテナパターン(符号420aで示す)及び給電線路(符号420bで示す)の導体層420を備えるアンテナ400が作製される。
【0051】
上記のようにして作成される本実施形態のアンテナ400は、チップアンテナとして用いることができる。チップアンテナを製造する方法として、LDS法を用いることもできるが、この方法では、金属フィラー等を混ぜ合わせた特殊な樹脂を用いる必要があり、高コストになるといった問題があった。これに対し本実施形態のアンテナ400の製造方法では、特殊な樹脂を用いる必要はなく、例えばPPSを用いて作製することができる。そして、低誘電率の発泡部412上にアンテナパターンの導体層420を形成することから、広帯域で低損失なチップアンテナを実現することができる。さらに、本実施形態のアンテナ400を、プリント回路基板等に表面実装させることも可能である。
【0052】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態であるアンテナ、アンテナ用プリント回路基板、及びその製造方法について、図6、7を用いて以下に説明する。図6は、第5実施形態のアンテナ及びアンテナ用プリント回路基板の概略構成図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は底面図、(d)は本実施形態のアンテナ用プリント回路基板に設けられたケーブルホルダ部の拡大側面図、をそれぞれ示す。また、図7は、チップアンテナを搭載可能に構成した本実施形態のアンテナ用プリント回路基板の概略構成図であり、(a)は上面図、(b)は底面図、をそれぞれ示す。
【0053】
図6に示す本実施形態のアンテナ500は、プリント回路基板501の上面にアンテナパターン511を形成し、底面にグランド(GND)パターン512を形成している。アンテナパターン511の給電線路511aは、プリント回路基板501の上面において、チップ部品及び配線パターンを備えるマッチング回路部513を経由してパッド514に接続されている。プリント回路基板501の上面には、さらに外部の同軸ケーブル50を容易に接続できるようにケーブルホルダ部520が設けられている。ケーブルホルダ部520に配設されたRFケーブル50の芯線は、パッド514に半田付けされる。
【0054】
ケーブルホルダ部520は、図6(d)に示すように、その表面にGNDパターン521が形成されている。このGNDパターン521は、底面に形成されているGNDパターン512に電気的に接続されている。ケーブルホルダ部520にRFケーブル50のシース部51が直付けされ、シース部51とGNDパターン521とが半田付けされる。
【0055】
本実施形態では、成形工程において所定の樹脂をケーブルホルダ部520の形状を有する所定形状に射出成形する。そして、発泡工程により内部全体を発泡させる。あるいは、所定の樹脂に所定の気体を浸透させたペレットを用い、これをケーブルホルダ部520の形状を有する所定形状に射出成形すると同時にその内部を発泡させて作製してもよい。所定の樹脂として、PPSを用いるのが好ましい。
【0056】
次に、スキン層除去工程において、所定位置のスキン層503にレーザーを照射することでこれを溶融して除去する。ここでは、上面のアンテナパターン511、給電線路511a、パッド514、ケーブルホルダ部520表面のGNDパターン521、及び底面のGNDパターン512、のそれぞれの位置のスキン層503を除去している。また、マッチング回路部513についても、配線パターン等の必要な形状にスキン層503を除去することができる。スキン層除去工程に続く導体層形成工程において、無電解メッキを行うことでスキン層503が除去された位置にアンテナパターン511、給電線路511a、パッド514、ケーブルホルダ部510表面のGNDパターン521、及び底面のGNDパターン512、が形成される。上記のように作製されたアンテナ500は、別のプリント回路基板等に表面実装させることも可能である。
【0057】
図7に示す本実施形態の別のアンテナ用プリント回路基板502も、上記のプリント回路基板501と同様にして製造することができる。但し、本実施形態のプリント回路基板502では、アンテナパターン511を形成する代わりに、チップアンテナを実装するためのパッド531、532を形成している。ここでは、パッド532が給電線路533に接続されるように形成されている。これらは、いずれもスキン層503にレーザーを照射してそれぞれのパターンを形成し、その後に無電解メッキを行うことで形成することができる。所定のチップアンテナが、パッド531、532に表面実装される。
【0058】
(第6実施形態)
本発明の第6実施形態であるプリント回路基板及びその製造方法について、図8を用いて以下に説明する。図8は、本発明の第6実施形態のプリント回路基板600の製造方法を説明する処理工程図である。本実施形態では、発泡構造の発泡部612をメッキのアンカーとしてのみ利用する構造としている。すなわち、メッキにより導体層620が形成される領域だけを発泡させて発泡部612を作製するようにしている。
【0059】
図8(a)は、成形工程により作製された樹脂材601を示している。樹脂材601を形成する樹脂には、PPSやPC(ポリカーボネート樹脂)を用いるのがよい。次の図8(b)に示す発泡工程では、導体層620が形成される樹脂材601の上面側のみを発泡させて発泡樹脂材602を作製する。上面側のスキン層611の下に、例えば厚さ数十μm程度の発泡部612を作製するのがよい。
【0060】
図8(c)に示すスキン層除去工程では、導体パターンに合わせてスキン層611を除去する。これにより、導体パターンを形成する位置に発泡部612が露出される。続く図8(d)の導体層形成工程では、所定の金属で無電解メッキする。これにより、露出された発泡部612のみがメッキされ、所定の導体パターンの導体層620が形成される。
【0061】
上記の発泡工程において、樹脂材601を部分的に発泡させる方法を以下に説明する。樹脂材601の表面近傍のみを発泡させる第1の方法として、樹脂材601を所定のガス(二酸化炭素)内に入れてガスを浸透させる時間を制御する方法がある。ガスは、樹脂材601の表面側から浸透していくことから、ガスを浸透させる時間を短くすることで、樹脂材601の表面近傍だけにガスを浸透させて発泡させることができる。また第2の方法として、樹脂材601の全体にガスを浸透させるが、発泡時間を短くすることで樹脂材601の表面近傍だけ発泡させることができる。
【0062】
本実施形態のプリント回路基板600では、発泡部612が薄く形成されるため、基板の強度低下を抑制することができる。また、基板の誘電率低下の効果は比較的小さいことから、低誘電率を必要としないアンテナ以外に利用するのに好適である。
【0063】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係るプリント回路基板、アンテナ、及びその製造方法の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態におけるプリント回路基板、アンテナ、及びその製造方法の細部構成及び詳細な動作等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0064】
50 同軸ケーブル
100、200、300、501、502、600 プリント回路基板
101、601 樹脂材
102、402、602 発泡樹脂材
103 パターン化発泡樹脂材
111、411、503、611 スキン層
112、412、612 発泡部
120、420、620 導体層
201、301 貫通孔
400、500 アンテナ
511 アンテナパターン
512、521 GNDパターン
513 マッチング回路部
514、531、532 パッド
520 ケーブルホルダ部
532 整合回路エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の樹脂を発泡処理して内部の少なくとも一部に発泡構造を有する発泡部を形成するとともに前記発泡部の外表面に発泡のないスキン層を形成する発泡工程と、
前記スキン層の一部を所定のパターン形状に除去して前記発泡部を露出させるスキン層除去工程と、
前記露出された発泡部に無電解メッキまたは蒸着により導体層を形成する導体層形成工程と、を有する
ことを特徴とするプリント回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記発泡工程は、前記樹脂を所定の形状に射出成形した後に行われる
ことを特徴とする請求項1に記載のプリント回路基板の製造方法。
【請求項3】
前記発泡工程は、前記樹脂に所定の気体を浸透させたペレットを射出成形すると同時に行われる
ことを特徴とする請求項1に記載のプリント回路基板の製造方法。
【請求項4】
前記スキン層除去工程では、前記スキン層の一部にレーザーを照射して溶解させることで前記発泡部を露出させる
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプリント回路基板の製造方法。
【請求項5】
前記スキン層除去工程では、前記スキン層の一部を機械的に除去することで前記発泡部を露出させる
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプリント回路基板の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂は、PPSである
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のプリント回路基板の製造方法。
【請求項7】
前記発泡部は、発泡径が10μm以下の気泡からなる
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のプリント回路基板の製造方法。
【請求項8】
前記発泡部は、比誘電率が2以下である
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のプリント回路基板の製造方法。
【請求項9】
所定の樹脂を用いて形成されるプリント回路基板であって、
前記樹脂の内部の少なくとも一部に形成された発泡構造を有する発泡部と、
前記発泡部の外表面に形成された発泡構造を有さないスキン層と、
前記スキン層が除去された前記発泡部の表面に密着された導体層と、を備える
ことを特徴とするプリント回路基板。
【請求項10】
前記樹脂の一方の面に形成された前記導体層と、他方の面に形成された前記スキン層と、前記発泡部とを貫通する貫通孔をさらに備える
ことを特徴とする請求項9に記載のプリント回路基板。
【請求項11】
前記樹脂の対向する面にそれぞれ形成された2つの前記導体層と前記発泡部とを貫通して前記2つの導体層を電気的に接続するように内面に導体層を有するスルーホールをさらに備える
ことを特徴とする請求項9または10に記載のプリント回路基板。
【請求項12】
所定の樹脂を用いて形成されるアンテナであって、
前記樹脂の内部の少なくとも一部に形成された発泡構造を有する発泡部と、
前記発泡部の外表面に形成された発泡構造を有さないスキン層と、
前記スキン層が所定のアンテナパターン形状に除去された前記発泡部の表面に密着された導体層と、を備え、
前記導体層がアンテナ素子として動作する
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項13】
前記樹脂の一部がRFケーブルのシースと密接するように形成されたケーブルホルダ部をさらに備え、
前記シースと密接する前記ケーブルホルダ部の位置に前記導体層が形成され、
前記シースと前記導体層とが半田付けされている
ことを特徴とする請求項12に記載のアンテナ。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−258609(P2011−258609A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129339(P2010−129339)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】