プリント回路板の電子部品分離装置
【課題】過熱水蒸気で加熱することによりプリント回路板の電子部品を分離する装置において、過熱水蒸気の消費量を抑えて、加熱効率を高くでき、かつ電子部品の分離の信頼性を高くできるプリント回路板の電子部品分離装置を提供する。
【解決手段】密閉構造の加熱容器内に、プリント回路板を複数、回転可能に保持するプリント回路板回転保持機構を設置し、この加熱容器内に外部から過熱水蒸気を供給して前記プリント回路板を加熱し、少なくとも前記プリント回路板に電子部品を固定するろう材が溶融するまで加熱されたとこころで、前記プリント回路板回転保持機構を回転駆動し、前記プリント回路板に固定された電子部品を遠心力により分離する。
【解決手段】密閉構造の加熱容器内に、プリント回路板を複数、回転可能に保持するプリント回路板回転保持機構を設置し、この加熱容器内に外部から過熱水蒸気を供給して前記プリント回路板を加熱し、少なくとも前記プリント回路板に電子部品を固定するろう材が溶融するまで加熱されたとこころで、前記プリント回路板回転保持機構を回転駆動し、前記プリント回路板に固定された電子部品を遠心力により分離する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プリント回路板にはんだ等のろう材により結合固定された電子部品を分離して回収するためのプリント回路板の電子部品分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
使用済みとなった携帯電話機やコンピュータを初め各種の電子機器に使用されているプリント回路板には、貴金属や希少金属を含む電子部品が多数搭載されているため、この電子部品をプリント回路板から分離回収して再利用することが要望されている。
【0003】
電子部品の搭載結合されたプリント回路板から電子部品を分離する装置としては、既に、特許文献1に示されるように、プリント回路板に搭載された電子部品を上から加熱ブロックにより取り囲んでこれを加熱し、固定用のろう材が溶融したところで、加熱ブロック内を真空吸引して電子部品をプリント回路板から分離するようにした装置が知られている。
【0004】
この装置は、プリント回路板上の複数の電子部品を個別にしか分離することができないので、多数の電子部品を有するプリント回路板の場合、電子部品の分離処理に時間がかかる不都合がある。
【0005】
特許文献2に示されるような従来装置によれば、このような不都合は解消することができる。
【0006】
図15は、この特許文献2に示された従来の分離装置の構成図である。図15の従来の分離装置は、過熱蒸気発生装置101、蒸気噴射器102、コンベア103、バイブレータ104、加熱容器105等から構成されている。
【0007】
はんだ等によって電子部品107のろう付けされたプリント回路板106は、回収容器108上に載置してコンベア103によって加熱容器内105内を搬送される。蒸気噴射器102は、加熱容器105内に配置され、過熱蒸気発生装置101から供給される過熱水蒸気を、加熱容器105内で、コンベア103によって運ばれているプリント回路板106に噴射してこれを加熱する。バイブレータ104は、加熱容器内105内で、コンベア103を加振して、コンベア103上の回収容器108およびプリント板106に振動を加えるものである。
【0008】
プリント板106が加熱容器105内をコンベア103で搬送される過程で、過熱水蒸気により加熱され、温度が上昇すると、電子部品107をプリント回路に固定しているろう材が軟化溶融する。ろう材が溶融したところで、バイブレータ103によって加えられる振動により、プリント回路板に106に取り付けられた電子部品107がプリント回路板106から分離し、回収容器108内に落下し、この容器内に収容される。プリント回路板106から分離した電子部品107を収容した回収容器108は、電子部品107の分離されたプリント回路板106とともにコンベア103で加熱容器105の外へ搬送され、回収される。
【0009】
このような従来の分離装置によれば、プリント回路板を連続して搬送しがらプリント回路板から電子部品を分離することができるので、大量のプリント回路板106を効率的に処理することができる効果がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭63−318133号公報
【特許文献2】特許第4393576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、前記の従来の分離装置においては、コンベア103が加熱容器105を貫通するため、加熱容器105の両端のコンベア103を通す開口から、過熱水蒸気が漏洩する。このため、加熱容器内105内の過熱水蒸気の濃度を高めることができず、この中を完全な不活性雰囲気することができないことにより、はんだ等のろう材の酸化を防ぐことができない不都合がある、また、過熱水蒸気による加熱効率が低下するとともに、過熱水蒸気の消費量が増大する不都合もある。
【0012】
さらに、プリント回路板に振動を加えてこれに固定された電子部品を分離するようにしているので、各部品の取付け状況によっては、プリント回路板の重心位置がばらつくため、振動によるプリント回路板の運動が不十分となり電子部品の分離が十分に行えない状況が生じ、電子部品の分離の信頼性が損なわれる不都合もある。
【0013】
この発明は、前記のような過熱水蒸気で加熱することによりプリント回路板の電子部品を分離する方法における不都合を解消するため、過熱蒸気濃度を高めて不活性雰囲気を作ってはんだ等のろう材が酸化しないようにし、過熱水蒸気の消費量を抑えて、加熱効率を高くでき、かつ電子部品の分離の信頼性を高くできるプリント回路板の電子部品分離装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような課題を解決するため、この発明は、開閉可能に構成されたプリント回路板の挿入口と取出し口を備えた密閉構造の加熱容器と、この加熱容器内に設置され、前記プリント回路板を複数、遠心力により飛び出さないように回転可能に保持するプリント回路板回転保持機構と、前記プリント回路板回転保持機構を回転駆動する駆動機構とを備え、前記加熱容器内に挿入された電子部品の固定されたプリント回路板を前記プリント回路板回転保持機構により保持した状態で前記加熱容器を密閉し、この密閉された加熱容器内に外部から過熱水蒸気を供給して前記プリント回路板を加熱し、前記プリント回路板回転保持機構を回転駆動し、前記プリント回路板に固定された電子部品を遠心力により分離するようにしたことを特徴とするものである。
【0015】
この発明においては、前記のプリント回路板回転保持機構は、プリント回路板を収容する細い金属条材でかご状に組み上げた周壁および底壁のないプリント回路板保持かごと、このプリント回路板保持かごを円周上に一定の間隔で複数配置して一体に支持する回転保持板と、この回転保持板に、これと一体に回転するとともに、前記各プリント回路板保持かごの底部を開閉可能に可動的取り付けられた底板とで構成することができる。
【0016】
また、前記各プリント回路板保持かごは、複数のプリント回路板を収容可能に構成するのがよい。
【0017】
さらに、前記加熱容器は、プリント回路板取出し口を下にして、傾斜配置された取付板に取付け固定することにより分離された電子部品および電子部品の分離されたプリント回路板の取出しを容易にすることができる。
【0018】
そして、前記加熱容器は、水平位置と傾斜位置の間で傾動可能に構成された可動台上に取付け固定するようにすることができ、この場合、前記前記加熱容器を水平位置に置いた状態して前記プリント回路板から電子部品を分離する分離処理を行い、傾斜位置において分離した電子備品およびプリント回路板を前記加熱容器から排出する排出処理を行うようにするのがよい。
【0019】
また、前記プリント回路板保持かごにより前記プリント回路板を、電子部品の取り付けられた平板面を前記回転保持機構の円周方向に向けて保持することができる。そして、前記プリント回路板保持かごのプリント回路板挿入窓穴の外側の先端部に矢じり状の先細部を形成するのがよい。
【0020】
さらにまた、前記加熱容器の外周には、この加熱容器を誘導加熱する誘導加熱コイルを設置することにより、加熱容器を誘導加熱により予備加熱することができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、回転可能なプリント回路板回転保持機構により保持された複数のプリント回路板を収容する密閉構造の加熱容器に外部から過熱水蒸気を供給することによりプリント回路板を加熱して、電子部品を固定したろう材を溶融し、プリント回路板回転保持機構を回転駆動することにより、遠心力より電子部品をプリント板から分離するようにしているので、プリント回路板に多数の電子部品が搭載されている場合でも多数の電子部品を一同に確実に分離することができ、電子部品の分離処理を短時間で効率よく、かつ信頼性高く行うことができる。このとき、プリント回路板を加熱するための過熱水蒸気は密閉された容器に供給するので、漏洩がほとんどないため、過熱水蒸気の消費を抑えることができとともに加熱熱効率を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の実施例1のプリント回路板の電子部品分離装置の外観構成を示す正面側から見た斜視図である。
【図2】この発明の実施例1のプリント回路板の電子部品分離装置の外観構成を示す側面側から見た斜視図である。
【図3】この発明の実施例1のプリント回路板の電子部品分離装置における加熱容器のプリント回路板の挿入口および取出し口を開放した状態を示す平面図である。
【図4】この発明の実施例1のプリント回路板の電子部品分離装置の内部構成を示す側面断面図である。
【図5】この発明の実施例1のプリント回路板の電子部品分離装置におけるプリント回路板回転保持機構の底板の閉塞状態を示す表面から見た斜視図である。
【図6】この発明の実施例の1プリント回路板の電子部品分離装置におけるプリント回路板回転保持機構の底板の閉塞状態を示す裏面から見た斜視図である。
【図7】この発明の実施例1のプリント回路板の電子部品分離装置におけるプリント回路板回転保持機構の底板の開放状態を示す表面から見た斜視図である。
【図8】この発明の実施例1のプリント回路板の電子部品分離装置におけるプリント回路板回転保持機構の構成を示す部分的な斜視図である。
【図9】この発明の実施例2のプリント回路板の電子部品分離装置の外観構成を示す正面側から見た斜視図である。
【図10】この発明の実施例2のプリント回路板の電子部品分離装置の外観構成を示す背面側から見た斜視図である。
【図11】この発明の実施例2のプリント回路板の電子部品分離装置の形状状態における外観構成を示す正面側から見た斜視図である。
【図12】この発明の実施例2のプリント回路板の電子部品分離装置に使用するプリント回路板保持かごの外観構成を示す裏面側から見た斜視図である。
【図13】この発明の実施例2のプリント回路板の電子部品分離装置におけるプリント回路板保持かごの回転保持板への取付け状態を示す斜視図である。
【図14】この発明の実施例2のプリント回路板の電子部品分離装置に使用するプリント回路板保持かごの変形例を示す斜視図である。
【図15】従来のプリント回路板の電子部品分離装置の構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明の実施の形態を図に示す実施例について説明する。
【実施例1】
【0024】
図1〜図8にこの発明の第1の実施例を示す。
図1および図2は、この発明の第1の実施例のプリント回路板の電子部品分離装置の全体の外観を示す構成図である。
【0025】
図1および図2に示すように、架台10上に、使用済みの電子部品を搭載したプリント回路板Pを収容して電子部品の分離処理を行う分離機本体20が、取付け板11を介して、30°傾斜して載置されている。この分離機本体20は、例えばステンレス鋼のような磁性を有する導電性金属製の密閉構造の円筒状容器で構成された加熱容器21を備える。
この加熱容器21の上壁には、プリント回路板Pを挿入するための挿入口22が設けられ、これを閉じるときは、開閉可能な開閉蓋23で閉塞し、鎖錠機構23aで鎖錠して気密を保つようにする。加熱容器21の周壁には分離された電子部品およびプリント回路板を取出すための取出し口24が設けられ、これも同様に、開閉蓋25により閉塞し、鎖錠機構25aにより鎖錠することにより気密を保つっている。加熱容器21の上壁上には、開放された挿入口22から容器内へプリント回路板Pを挿入する手段として、挿入シュータ27が設けられている。加熱容器21上壁および、蒸気供給管28には、図3に示すようにそれぞれの内部の温度検出するための温度検出器21a〜21dが設けられている。
【0026】
さらに、加熱容器21の周壁を取り囲んで、この加熱容器21を電磁誘導加熱して予備加熱する誘導加熱コイル26が設けられている。そして加熱容器21の周壁のほぼ対向する位置に、図3に示すように容器内へ図示しない蒸気発生装置から過熱水蒸気を供給する蒸気供給管28と、加熱容器21内の過熱水蒸気を外部へ排出する蒸気排出管29が容器壁に容器内部と連通するように設けられる。蒸気供給管28は、容器の周壁の接線方向に向けて取り付けられている。これにより、加熱容器21内に供給された過熱水蒸気は、容器21の周壁に沿って循環して流れるようになるため、容器内に滞留する時間が長くなる。
蒸気排出管29は、加熱容器21の周壁の直径方向に向けて結合されている。
【0027】
架台10の加熱容器21の取出し口24のほぼ直下の位置には、ここから取出された処理済みのプリント回路板および電子部品を回収する回収容器12が設けられている。架台10の背面側には、この分離装置を制御する制御装置や電源の収められた制御盤18が、そして架台10の取付け板11上には分離装置の運転操作を行うための操作盤19が設けられている。
【0028】
加熱容器21の内部には、図4に示すように、プリント回路板Pの電子部品の分離処理を行うために、プリント回路板Pを保持して回転するプリント回路板回転保持機構30が設けられている。この回転保持機構30は、サーボモータからなる駆動モータ41、伝動ベルト42および駆動軸43を備えた回転駆動装置40に結合され、これによって回転駆動される。
【0029】
プリント回路板回転保持機構30は、図5および図6に示すように構成されている。
【0030】
すなわち、それぞれプリント回路板Pを2枚ずつ収容し保持する保持かご31を複数備える。保持かご31は、図8に、より具体的に示すように、細い金属条材31cで極めて粗目のかご状に枠組みされ、周囲および底部は閉じられた壁がなく、開放されている。この保持かご31の上部には、これを覆うように、プリント回路板Pの挿入窓穴31b、31bの設けられた係止板31aを結合している。さらに、保持かご31の後端側には、これを固定するための固定金具31dが結合されている。
【0031】
保持かご31の上部を覆う窓穴付の係止板31aは、プリント回路板Pの挿入保持された保持かご31が回転した際に、プリント回路板Pの上端を係止してこれが遠心力等によりこの容器の上方へ飛び出すのを防止する働きをする。
【0032】
このように構成された保持かご31は、図5に示すように円形の回転支持板32の外周に一定の間隔で複数配置され、固定金具31dを介してこの回転支持板32に固定される。回転支持板32の下側にはこれと重ねて、図6に示すように、回転支持板32に取り付けた複数の保持かご31の取付け間隔と同じピッチで形成された保持かご31と同数のプリント回路板を排出するための排出窓穴34を有する底板33が配設される。この底板33は、その中心よりに設けた2個の取付け溝37に結合ピン36を挿通して回転支持板32に結合される。底板33の取付け溝37の長さは、保持かご31の取付けピッチに等しい長さに設定されているため、底板33は、回転支持板32に対して、保持かご31の取付けピッチ、したがって、底板33のプリント回路板排出窓穴34の配設ピッチの1ピッチ分だけ回動可能に結合される。
【0033】
底板33に固定的に結合された排出操作レバー35は、これを手動操作して底板33を回動するものである。底板33を回動可能な範囲で回動することにより、底板33が、図8に示すように保持かご31の底部の直下に底板33の閉塞部分(排出窓穴以外の部分)を置いて保持かご31の底部を閉じる位置と、保持かご31の底部の直下に底板33の排出窓穴34の部分を置いて保持かごの底部を開放する位置とに変更されるので、この底板33により保持かご31の底部を開閉することができる。
【0034】
次に、このように構成されたこの発明の分離装置によるプリント回路板の電子部品の分離処理動作について説明する。
【0035】
まず、使用済みの電子部品の結合されたプリント回路板Pを分離機本体20の加熱容器21に挿入するために、プリント回路板挿入口22を閉じている開閉蓋23の鎖錠機構23aの鎖錠を外して、これを開き、挿入口22を開放する。次いで、駆動モータ41により、回転支持機構30を保持かご31の取付け間隔の1ピッチ単位で駆動して、加熱容器21内のプリント回路板回転保持機構30の回転位置を調整し、空の保持かご31が1個ずつ挿入口22の直下に置かれ、係止板31aのプリント回路板挿入窓穴31b、31bがこれに臨むようにする。そして、予め操作レバー35を手動で操作して底板33が、その挿入窓穴34でない閉塞部分が保持かご31の底部の直下に置かれ、保持かご31に挿入されたプリント回路板Pの下端を支持する位置となるように調整しておく。
【0036】
そこで、図3に示すように、プリント回路板挿入シュータ27をプリント回路板挿入口22の上部まで回転移動させ、手動または自動で分離処理を行うプリント回路板Pをこのシュータ27をガイドにして挿入口22から加熱容器21内の保持かご31に挿入する。
保持かご31に挿入されたプリント回路板は、電子部品の搭載結合された面を外側(加熱容器21の外周側)に向けられている。シュータ27に案内されて挿入されたプリント回路板Pは、図8に示すように保持かご31の係止板31aの挿入窓穴31bから保持かご内に挿入され、下端を底板33によって支持される。各保持かご31には、プリント回路板Pを2枚ずつ挿入される。
【0037】
1つの保持かご31へのプリント回路板Pの挿入が終わるごとに回転支持機構30は、駆動モータ41によって保持かご21の取付けピッチの1ピッチずつ回動され、この回動動作が全部の保持かご31にプリント回路板Pの挿入が終わるまで継続される。
【0038】
全部の保持かご31にプリント回路板Pの挿入を終えると、シュータ27を回動して元の待機位置(図1参照)に戻し、プリント回路板挿入口22および取出し口24のそれぞれ開閉蓋23および25を閉じて、鎖錠機構23aおよび25aにより厳重に鎖錠する。
これにより、プリント回路板挿入口22および取出し口24がそれぞれ開閉蓋23および25により気密的に閉塞される。
【0039】
ここで、蒸気供給管28から加熱容器21に過熱水蒸気を供給する前に、誘導加熱コイル26に通電して加熱容器21を誘導加熱により予備加熱する。この予備加熱により、加熱容器21の中の温度を、過熱水蒸気を供給したとき、これが凝縮して凝縮水となることのないように、100℃を超えてプリント回路板に電子部品を結合するろう材の融点(約230℃)を超えない範囲の温度まで高めておく。
【0040】
この予備加熱に続いて、蒸気排出管29から加熱容器21内の水蒸気を吸引排出しながら図示しない蒸気発生装置から蒸気供給管28を通して加熱容器21内に過熱水蒸気を供給して、加熱容器21内のプリント回路板Pを加熱する工程へ移る。この加熱工程により加熱容器21内の温度を、プリント回路板Pにおける電子部品を結合したろう材が溶融し、プリント回路板Pからガスが発生する270℃以下の温度まで上昇させる。蒸気供給管28は、加熱容器21の周壁にその接線方向に結合されているので、この管28を通して供給された過熱水蒸気は加熱容器21の内周壁に沿ってこの中を循環するように流れ、全体に拡散するようになるので、加熱容器21内における過熱水蒸気の滞留時間が長くなり、プリント回路板Pの加熱を効率よく良好に行うことができる。このとき、過熱水蒸気は加熱容器21が密閉されていることにより、不要な漏れがないため、過熱水蒸気の消費量を抑えることができる。
【0041】
加熱容器21内の温度が、プリント回路板Pの電子部品結合用のろう材の溶融温度(約230℃)以上で、プリント回路板Pからガスが発生する270℃以下の温度に達すると、回転支持機構30を、駆動モータ41により回転駆動する。ここでは、加熱容器21内の温度が、ろう材の溶融温度に達する前から回転支持機構30を回転させるようにすると、回転支持機構30の回転に伴ってプリント回路板Pを保持する保持かご31が回転して、加熱容器21内の過熱水蒸気を撹拌することにより内部の温度がより均一化され加熱容器内の加熱を速くすることができる。
【0042】
加熱容器21内の温度がプリント回路板Pの電子部品を結合するろう材の溶融温度に達したところで、プリント回路板回転保持機構30が回転すると、プリント回路板Pを保持する保持かご31がとともに回転されることにより、これに保持されたプリント回路板Pに遠心力が作用する。電子備品を固定するろう材が溶融すると、この遠心力がろう材による結合力より勝り、電子部品が遠心力によりプリント回路板Pから分離され、加熱容器21の周壁方向に飛散する。加熱容器21内に飛散した電子回路部品は、加熱容器21がプリント回路板取出し口24を下にして傾斜されているので、加熱容器21内を自重により滑り落ちて、取出し口24付近に集積される。
【0043】
回転支持機構30を回転する時間は、予め、プリント回路板Pの全部から電子部品が分離するのに必要な見込まれた時間に設定しておく。回転支持機構30の回転時間がこの設定時間を経過したところで、駆動モータ41による駆動を停止するとともに過熱水蒸気の供給を停止する。そして底板33に結合したプリント回路板排出操作レバー35が加熱容器21の挿入口22に臨む位置に到達したところで、回転支持機構30の回転を停止させる。
【0044】
加熱容器21内の過熱水蒸気が蒸気排出管29から排出されたところで、加熱容器21のプリント回路板排出口24の開閉蓋25および挿入口22の開閉蓋23の鎖錠機構25aおよび22aを解いて開閉蓋をそれぞれ開き、排出口25および挿入口22を開放する。排出口24が開放されると、この付近に集積されていたプリント回路板Pから分離された電子部品がここから自重により排出されて、回収容器12に集積収容される。
【0045】
このとき、電子部品の分離されたプリント回路板Pは、まだ、保持かご31内に保持されているので、排出操作レバー35により底板33を、底板33の排出窓穴34が保持かご31の底部の直下に来るように排出窓穴34の設置間隔の1ピッチ分回動させる。これにより、図7に示すように、底板33の排出窓穴34が、それぞれ保持かご31の底部と対向する位置に来るので、保持かご31の底部が開放され、保持かご31により保持されていたプリン回路板Pは、底板33による支持がなくなり、この排出窓穴34を通して加熱容器21内に落下し、保持かご31から排出される。加熱容器21内に落下したプリント回路板Pは、自重により容器21内を排出口24側へ滑降し、この排出口24から容器21の外に排出されて、回収容器12内に集積される。
【0046】
回収容器12に集められた分離処理の済んだプリント回路板Pおよび電子部品は、後の貴金属、希少金属の回収処理工程へ送られる。
【0047】
これで、1回の分離処理が完了するので、加熱容器21の排出口24を開閉蓋25により閉じて、プリント回路板挿入機構のシュータ27を挿入口22の上方へ回動させて、プリント回路板の加熱容器への挿入に備える。加熱容器21内の回転支持機構30を1ピッチずつ回動させながらシュータ27をガイドにして全部の保持かご31へのプリント回路板Pの挿入が完了すると、シュータ27を待機位置に戻して、挿入口22を開閉蓋23により閉塞して、前記と同様の分離処理を行う。以後この動作を繰り返すことによりプリント回路板から電子部品を分離する処理を継続的に行うことができ、処理するプリント回路板の量を増やすことができる。
【0048】
前記の第1の実施例では、加熱容器20を30°傾斜して架台に取付けた例を示したが、この加熱容器の取付け傾斜角度は、分離した電子部品およびプリント回路板を自重で加熱容器の下方に滑り落として取出し口付近に集積することができれば、何度であっても構わない。
【実施例2】
【0049】
次に、図9〜図14に示すこの発明の第2の実施例について説明する。
図9〜図11に、この発明の第2の実施例によるプリント回路板の電子部品分離装置の外観を示す。図9は、装置の正面側から見た分離処理状態の斜視図、図10は図9における本体カバー17を外して装置の背面側から見た分離処理状態の斜視図、図11は、装置の正面側から見た分離処理後の排出処理状態の斜視図である。
【0050】
前記の実施例1の装置では、分離機本体20が支持架台10に、取付け板11とともに傾斜して固定的取り付けられているが、この実施例2の装置では、分離機本体20は、支持架台10に回動軸受機構14aを介して傾動可能に取り付けられた可動台14上に直立して固定的に取り付けられ、可動台14とともに傾動する。支持枠台10の背面側には油圧アクチュエータにより構成された傾動駆動機構15が設けられている。傾動駆動機構15の駆動軸15aが可動台14の背面枠14bに連結され、傾動駆動機構15の本体が支持枠台10に連結される(図10参照)。傾動駆動機構15は、空気圧を油圧に変換するエアハイドロコンバータ16を介して空気圧から変換された油圧により駆動され、駆動軸15aを伸縮する。
【0051】
傾動駆動機構15は、駆動軸15aを伸縮することにより、可動台14の背面枠14bを押し上げたり、引き下げたりする。傾動駆動機構15の駆動軸15aが縮んだ状態では、可動台14は図9および図10に示すように水平位置を保ち、分離機本体20が直立した状態にある、傾動駆動機構15の駆動軸15aが伸長すると、可動台14の背面枠14bが押し上げられ、可動台14は、正面側の回動軸受機構14aを支点にして回動し、図11に示すような所定の傾斜角度まで傾動する。この傾斜角度は任意に選定できる。
【0052】
分離機本体20は、実施例1と同様に磁性を有する導電性金属により形成された密閉構造の円筒状容器からなる加熱容器21を備える。加熱容器21の上壁に設けられたプリント回路板Pを挿入するための挿入口22は、実施例1の場合より大きく開口し、これを閉じるための開閉蓋23もこれに対応して大きく形成されている。
【0053】
加熱容器21の周壁の正面に、処理されたプリント回路板および電子部品を取出すための取出し口24aが設けられているが、この取出し口24aは、加熱容器21の周壁から前方へくちばし状に突出した角筒により形成されており、その前端の開口部は2分割構成の開閉蓋25aおよび25bにより気密的に閉じられる構成となっている。加熱容器21が可動台14とともに所定の傾斜角度まで傾動されると、この取出し口24aの前端は、図11に示すように支持枠台10の正面に設けられた回収容器12の入口と対向する位置まで移動する。
【0054】
加熱容器21内は、過熱水蒸気供給管28を通して外部から供給される過熱水蒸気により加熱される。加熱容器21の外周にこれを予備加熱するための誘導加熱コイルを設置してもよいが、ここでは省略されている。
また、加熱容器21内には、図11に示されるように、開放されたプリン回路板挿入口22から覗き見ることができるが、プリント回路板回転保持機構30が収容されている。
【0055】
この実施例2におけるプリント回路板回転保持機構30は、実施例1のプリント回路板回転保持機構30と同じく、複数のプリント回路板を収容保持する保持かご36を固定支持する回転支持板32と、保持かごと同数のこれに収容されたプリント回路板を排出するための排出窓穴34を有し、回転支持板32の下方に可動的に重ね合わせられた底板33とを備える(図13参照)。なお、図13には、代表的な保持かご36が1個しか示されていない。
ただ、回転支持板32に固定支持される保持かご36の構成は、実施例1の保持かご31とは次の点で相違する。
【0056】
すなわち、第1は、保持かご36は、図12に示すように、実施例1と同様に、細い金属条材36cと、プリント回路板Pの挿入窓穴36bの設けられた係止板36aとで構成されているが、プリント回路板Pの挿入窓穴36bが3個設けられ、3枚のプリント回路板Pを保持することができる点である。
第2は、プリント回路板Pの挿入窓穴36bは、その長手方向が、図13に示すように保持かご36の取り付けられる回転支持板32の半径方向に延び、円周方向に並べられている点である。
【0057】
このような保持かご36は、図13に示すように、回転保持板32の外周部に固定金具36dを介して固定される。回転保持板32には、同様にして、複数の保持かご36が円周方向に一定の間隔で固定配置される。
【0058】
このため、プリント回路板保持かご36には、プリント回路板Pが、その電子部品の取り付けられた平板面を回転支持板32の半径と並行に向けて挿入されるようになる。ちなみに、実施例1においては、プリント回路板Pは、その電子部品の取り付けられた平板面を回転保持板32の半径と直交する向きにしてプリント回路板保持かご31に挿入されるようになる。
【0059】
プリント回路板回転保持機構30は、実施例1と同様に、加熱容器21内に回転可能に設置され、加熱容器21の外に設置された駆動モータ41を備えた回転駆動装置40により駆動される構成となっている。
【0060】
このように構成された実施例2の分離装置によるプリント回路板の電子部品の分離処理動作は、基本的には実施例1同じである。
【0061】
すなわち、加熱容器21内のプリント回路板回転保持機構30の保持かご36に使用済みのプリント回路板Pが挿入された状態で加熱容器21を密閉し、この密閉された加熱容器21内に過熱水蒸気を供給することにより内部に収容されたプリント回路板Pを加熱する。プリント回路板Pの電子部品を結合したろう材が溶融されたところで、回転駆動装置40によりプリント回路板回転保持機構30を回転駆動して、その遠心力により電子部品をプリント回路板Pから分離する処理を行う。
【0062】
ただ、この処理のときは、傾動駆動機構15の駆動軸15aを縮めておいて可動台14を水平状態にして、加熱容器21を直立させておく。これにより、加熱容器21内のプリント回路板回転保持機構30が回転駆動されるとき、このプリント回路板回転保持機構30が直立状態に置かれるため、回転中に回転保持機構30に加わる偏荷重が低減され、回転保持機構30の回転を安定に保つことができる。
【0063】
プリント回路板Pから電子部品が分離されたところで、回転保持機構30の回転駆動を停止して分離処理が終了する。分離処理が終了したところで、可動台14を水平にした状態で、プリント回路板挿入口22の開閉蓋23を開いて、実施例1と同様に、回転保持機構30のプリント回路板排出操作レバー35により底板33を所定のピッチ回転させて、保持かご36に保持された電子部品の分離されたプリント回路板Pを加熱容器21内に落下させる処理を行う。
【0064】
次いで、プリント回路板排出口24aの開閉蓋25a,25bを開いた上で、傾動駆動機構15の駆動軸15aを伸長して、可動台14を図11に示すように所定の傾斜角度の位置まで傾動して、加熱容器21を傾斜させて分離された電子部品およびプリント回路板Pの排出処理を行う。加熱容器21が傾斜されることにより、前の分離処理工程で加熱容器21内に落下集積された、プリント板Pから分離された電子部品および電子部品の分離されたプリント回路板Pが加熱容器21の底壁上を正面側の排出口24aに向かって自重により滑落し、ここから回収容器12内に排出される。全部の電子備品およびプリント回路板Pの排出が終わったところで排出処理を終了する。
【0065】
排出処理が終わると、再びプリント回路板の挿入、分離処理工程に戻るために、傾動駆動機構15により可動台14および加熱容器21を図9および図10に示すような水平位置に戻す。水平位置に戻ったところで、排出口24aの開閉蓋25a,26bを閉じて、開放された挿入口22から分離処理を行う新たなプリント回路板Pを回転保持機構30の保持かご36に挿入して、再び分離処理を実行する。
【0066】
このように、実施例2の分離装置は、処理機本体20を固定された支持枠台10上に傾動可能に取り付け、この処理機本体20を、プリント回路板の電子部品を分離する分離処理工程においては水平に保ち、分離された電子部品およびプリント回路板を処理機本体から排出する排出処理工程においては傾斜させるようにし、そしてプリント回路板を回転保持機構30の保持かご36にプリント回路板の電子部品の取り付けられた平板面が回転保持機構30の回転保持機構の半径と平行に向けて挿入するようにしたところに特徴を有する。
【0067】
実施例1の分離装置では、プリント回路板の電子部品の取り付けられた平板面が回転保持機構30の半径と直交する方向に向けられているので、プリント回路板Pの外側を向いた平板面に取り付けられた電子部品の分離は問題ないが、プリント回路板Pの内側を向いた平板面に取り付けられた電子部品の分離が困難となるため、実施例1の分離装置は、表裏両面に電子部品を取り付けた両面実装のプリント回路板の分離処理には適さない。
【0068】
これに対して、実施例2の分離装置では、プリント回路板Pが、電子部品の取り付けられた(実装された)平板面を半径方向と平行する向きにして分離処理されるので、表裏両面に電子部品を取り付けた、両面実装のプリント回路板Pであっても良好に電子部品を分離することができる。
【0069】
また、実施例2の分離装置における回転保持機構の保持かご36は、図14に示すように変形することができる。図14の保持かご37には、係止板37aに設けるプリント回路板の挿入用の窓穴37bの外周側の先端部に三角形状の先細部37fを有する。ここでは、このような形状の挿入窓穴を備えた同一形状の3枚の係止板37aを間隔をおいて重ねて配置し、周囲を金属細条36cにより連結し、基端側に固定金具37dを結合することにより保持かご37が形成される。
【0070】
このように構成された保持かご37を用いると、保持かご37の係止37aの挿入窓穴37bにプリント回路板Pを挿入すると、分離処理時に回転保持機構20が回転駆動装置によって回転されたとき、保持かご37内のプリント回路板Pに作用する半径方向の遠心力によりプリント回路板Pが、挿入窓穴37b内を先端側へ移動する際に、先細部36fの傾斜面に沿って挿入窓穴36bの幅方向の中心部に寄せられるため、保持かご37に挿入されたプリント回路板Pが自動的に係枠36eの挿入窓穴36bの中心部で保持され、回転保持機構30の回転をより安定させることができる。
【符号の説明】
【0071】
P:プリント回路板
1:プリント回路板の電子部品分離装置、10:支持架台11、:取付け板、12:回収容器、14:可動台、15:傾動駆動機構、18:制御盤1、9:操作盤、20:分離機本体、21:加熱容器、22:プリント回路板挿入口、23:プリント回路板挿入口開閉蓋、24,24a:プリント回路板取出し口、25,25a,25b:プリント回路板取出し口開閉蓋、26:誘導加熱コイル、27:プリント回路板挿入機構(シュータ)、28:過熱水蒸気供給管、29:過熱水蒸気排出管、30:プリン回路板回転保持機構、31,36,37:保持かご、32:回転保持板、33:回転底板、34:プリント回路板排出窓穴、35:プリント回路板排出操作レバー、40:回転駆動装置、41:駆動モータ、42:伝動ベルト、43:駆動軸
【技術分野】
【0001】
この発明は、プリント回路板にはんだ等のろう材により結合固定された電子部品を分離して回収するためのプリント回路板の電子部品分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
使用済みとなった携帯電話機やコンピュータを初め各種の電子機器に使用されているプリント回路板には、貴金属や希少金属を含む電子部品が多数搭載されているため、この電子部品をプリント回路板から分離回収して再利用することが要望されている。
【0003】
電子部品の搭載結合されたプリント回路板から電子部品を分離する装置としては、既に、特許文献1に示されるように、プリント回路板に搭載された電子部品を上から加熱ブロックにより取り囲んでこれを加熱し、固定用のろう材が溶融したところで、加熱ブロック内を真空吸引して電子部品をプリント回路板から分離するようにした装置が知られている。
【0004】
この装置は、プリント回路板上の複数の電子部品を個別にしか分離することができないので、多数の電子部品を有するプリント回路板の場合、電子部品の分離処理に時間がかかる不都合がある。
【0005】
特許文献2に示されるような従来装置によれば、このような不都合は解消することができる。
【0006】
図15は、この特許文献2に示された従来の分離装置の構成図である。図15の従来の分離装置は、過熱蒸気発生装置101、蒸気噴射器102、コンベア103、バイブレータ104、加熱容器105等から構成されている。
【0007】
はんだ等によって電子部品107のろう付けされたプリント回路板106は、回収容器108上に載置してコンベア103によって加熱容器内105内を搬送される。蒸気噴射器102は、加熱容器105内に配置され、過熱蒸気発生装置101から供給される過熱水蒸気を、加熱容器105内で、コンベア103によって運ばれているプリント回路板106に噴射してこれを加熱する。バイブレータ104は、加熱容器内105内で、コンベア103を加振して、コンベア103上の回収容器108およびプリント板106に振動を加えるものである。
【0008】
プリント板106が加熱容器105内をコンベア103で搬送される過程で、過熱水蒸気により加熱され、温度が上昇すると、電子部品107をプリント回路に固定しているろう材が軟化溶融する。ろう材が溶融したところで、バイブレータ103によって加えられる振動により、プリント回路板に106に取り付けられた電子部品107がプリント回路板106から分離し、回収容器108内に落下し、この容器内に収容される。プリント回路板106から分離した電子部品107を収容した回収容器108は、電子部品107の分離されたプリント回路板106とともにコンベア103で加熱容器105の外へ搬送され、回収される。
【0009】
このような従来の分離装置によれば、プリント回路板を連続して搬送しがらプリント回路板から電子部品を分離することができるので、大量のプリント回路板106を効率的に処理することができる効果がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭63−318133号公報
【特許文献2】特許第4393576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、前記の従来の分離装置においては、コンベア103が加熱容器105を貫通するため、加熱容器105の両端のコンベア103を通す開口から、過熱水蒸気が漏洩する。このため、加熱容器内105内の過熱水蒸気の濃度を高めることができず、この中を完全な不活性雰囲気することができないことにより、はんだ等のろう材の酸化を防ぐことができない不都合がある、また、過熱水蒸気による加熱効率が低下するとともに、過熱水蒸気の消費量が増大する不都合もある。
【0012】
さらに、プリント回路板に振動を加えてこれに固定された電子部品を分離するようにしているので、各部品の取付け状況によっては、プリント回路板の重心位置がばらつくため、振動によるプリント回路板の運動が不十分となり電子部品の分離が十分に行えない状況が生じ、電子部品の分離の信頼性が損なわれる不都合もある。
【0013】
この発明は、前記のような過熱水蒸気で加熱することによりプリント回路板の電子部品を分離する方法における不都合を解消するため、過熱蒸気濃度を高めて不活性雰囲気を作ってはんだ等のろう材が酸化しないようにし、過熱水蒸気の消費量を抑えて、加熱効率を高くでき、かつ電子部品の分離の信頼性を高くできるプリント回路板の電子部品分離装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような課題を解決するため、この発明は、開閉可能に構成されたプリント回路板の挿入口と取出し口を備えた密閉構造の加熱容器と、この加熱容器内に設置され、前記プリント回路板を複数、遠心力により飛び出さないように回転可能に保持するプリント回路板回転保持機構と、前記プリント回路板回転保持機構を回転駆動する駆動機構とを備え、前記加熱容器内に挿入された電子部品の固定されたプリント回路板を前記プリント回路板回転保持機構により保持した状態で前記加熱容器を密閉し、この密閉された加熱容器内に外部から過熱水蒸気を供給して前記プリント回路板を加熱し、前記プリント回路板回転保持機構を回転駆動し、前記プリント回路板に固定された電子部品を遠心力により分離するようにしたことを特徴とするものである。
【0015】
この発明においては、前記のプリント回路板回転保持機構は、プリント回路板を収容する細い金属条材でかご状に組み上げた周壁および底壁のないプリント回路板保持かごと、このプリント回路板保持かごを円周上に一定の間隔で複数配置して一体に支持する回転保持板と、この回転保持板に、これと一体に回転するとともに、前記各プリント回路板保持かごの底部を開閉可能に可動的取り付けられた底板とで構成することができる。
【0016】
また、前記各プリント回路板保持かごは、複数のプリント回路板を収容可能に構成するのがよい。
【0017】
さらに、前記加熱容器は、プリント回路板取出し口を下にして、傾斜配置された取付板に取付け固定することにより分離された電子部品および電子部品の分離されたプリント回路板の取出しを容易にすることができる。
【0018】
そして、前記加熱容器は、水平位置と傾斜位置の間で傾動可能に構成された可動台上に取付け固定するようにすることができ、この場合、前記前記加熱容器を水平位置に置いた状態して前記プリント回路板から電子部品を分離する分離処理を行い、傾斜位置において分離した電子備品およびプリント回路板を前記加熱容器から排出する排出処理を行うようにするのがよい。
【0019】
また、前記プリント回路板保持かごにより前記プリント回路板を、電子部品の取り付けられた平板面を前記回転保持機構の円周方向に向けて保持することができる。そして、前記プリント回路板保持かごのプリント回路板挿入窓穴の外側の先端部に矢じり状の先細部を形成するのがよい。
【0020】
さらにまた、前記加熱容器の外周には、この加熱容器を誘導加熱する誘導加熱コイルを設置することにより、加熱容器を誘導加熱により予備加熱することができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、回転可能なプリント回路板回転保持機構により保持された複数のプリント回路板を収容する密閉構造の加熱容器に外部から過熱水蒸気を供給することによりプリント回路板を加熱して、電子部品を固定したろう材を溶融し、プリント回路板回転保持機構を回転駆動することにより、遠心力より電子部品をプリント板から分離するようにしているので、プリント回路板に多数の電子部品が搭載されている場合でも多数の電子部品を一同に確実に分離することができ、電子部品の分離処理を短時間で効率よく、かつ信頼性高く行うことができる。このとき、プリント回路板を加熱するための過熱水蒸気は密閉された容器に供給するので、漏洩がほとんどないため、過熱水蒸気の消費を抑えることができとともに加熱熱効率を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の実施例1のプリント回路板の電子部品分離装置の外観構成を示す正面側から見た斜視図である。
【図2】この発明の実施例1のプリント回路板の電子部品分離装置の外観構成を示す側面側から見た斜視図である。
【図3】この発明の実施例1のプリント回路板の電子部品分離装置における加熱容器のプリント回路板の挿入口および取出し口を開放した状態を示す平面図である。
【図4】この発明の実施例1のプリント回路板の電子部品分離装置の内部構成を示す側面断面図である。
【図5】この発明の実施例1のプリント回路板の電子部品分離装置におけるプリント回路板回転保持機構の底板の閉塞状態を示す表面から見た斜視図である。
【図6】この発明の実施例の1プリント回路板の電子部品分離装置におけるプリント回路板回転保持機構の底板の閉塞状態を示す裏面から見た斜視図である。
【図7】この発明の実施例1のプリント回路板の電子部品分離装置におけるプリント回路板回転保持機構の底板の開放状態を示す表面から見た斜視図である。
【図8】この発明の実施例1のプリント回路板の電子部品分離装置におけるプリント回路板回転保持機構の構成を示す部分的な斜視図である。
【図9】この発明の実施例2のプリント回路板の電子部品分離装置の外観構成を示す正面側から見た斜視図である。
【図10】この発明の実施例2のプリント回路板の電子部品分離装置の外観構成を示す背面側から見た斜視図である。
【図11】この発明の実施例2のプリント回路板の電子部品分離装置の形状状態における外観構成を示す正面側から見た斜視図である。
【図12】この発明の実施例2のプリント回路板の電子部品分離装置に使用するプリント回路板保持かごの外観構成を示す裏面側から見た斜視図である。
【図13】この発明の実施例2のプリント回路板の電子部品分離装置におけるプリント回路板保持かごの回転保持板への取付け状態を示す斜視図である。
【図14】この発明の実施例2のプリント回路板の電子部品分離装置に使用するプリント回路板保持かごの変形例を示す斜視図である。
【図15】従来のプリント回路板の電子部品分離装置の構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明の実施の形態を図に示す実施例について説明する。
【実施例1】
【0024】
図1〜図8にこの発明の第1の実施例を示す。
図1および図2は、この発明の第1の実施例のプリント回路板の電子部品分離装置の全体の外観を示す構成図である。
【0025】
図1および図2に示すように、架台10上に、使用済みの電子部品を搭載したプリント回路板Pを収容して電子部品の分離処理を行う分離機本体20が、取付け板11を介して、30°傾斜して載置されている。この分離機本体20は、例えばステンレス鋼のような磁性を有する導電性金属製の密閉構造の円筒状容器で構成された加熱容器21を備える。
この加熱容器21の上壁には、プリント回路板Pを挿入するための挿入口22が設けられ、これを閉じるときは、開閉可能な開閉蓋23で閉塞し、鎖錠機構23aで鎖錠して気密を保つようにする。加熱容器21の周壁には分離された電子部品およびプリント回路板を取出すための取出し口24が設けられ、これも同様に、開閉蓋25により閉塞し、鎖錠機構25aにより鎖錠することにより気密を保つっている。加熱容器21の上壁上には、開放された挿入口22から容器内へプリント回路板Pを挿入する手段として、挿入シュータ27が設けられている。加熱容器21上壁および、蒸気供給管28には、図3に示すようにそれぞれの内部の温度検出するための温度検出器21a〜21dが設けられている。
【0026】
さらに、加熱容器21の周壁を取り囲んで、この加熱容器21を電磁誘導加熱して予備加熱する誘導加熱コイル26が設けられている。そして加熱容器21の周壁のほぼ対向する位置に、図3に示すように容器内へ図示しない蒸気発生装置から過熱水蒸気を供給する蒸気供給管28と、加熱容器21内の過熱水蒸気を外部へ排出する蒸気排出管29が容器壁に容器内部と連通するように設けられる。蒸気供給管28は、容器の周壁の接線方向に向けて取り付けられている。これにより、加熱容器21内に供給された過熱水蒸気は、容器21の周壁に沿って循環して流れるようになるため、容器内に滞留する時間が長くなる。
蒸気排出管29は、加熱容器21の周壁の直径方向に向けて結合されている。
【0027】
架台10の加熱容器21の取出し口24のほぼ直下の位置には、ここから取出された処理済みのプリント回路板および電子部品を回収する回収容器12が設けられている。架台10の背面側には、この分離装置を制御する制御装置や電源の収められた制御盤18が、そして架台10の取付け板11上には分離装置の運転操作を行うための操作盤19が設けられている。
【0028】
加熱容器21の内部には、図4に示すように、プリント回路板Pの電子部品の分離処理を行うために、プリント回路板Pを保持して回転するプリント回路板回転保持機構30が設けられている。この回転保持機構30は、サーボモータからなる駆動モータ41、伝動ベルト42および駆動軸43を備えた回転駆動装置40に結合され、これによって回転駆動される。
【0029】
プリント回路板回転保持機構30は、図5および図6に示すように構成されている。
【0030】
すなわち、それぞれプリント回路板Pを2枚ずつ収容し保持する保持かご31を複数備える。保持かご31は、図8に、より具体的に示すように、細い金属条材31cで極めて粗目のかご状に枠組みされ、周囲および底部は閉じられた壁がなく、開放されている。この保持かご31の上部には、これを覆うように、プリント回路板Pの挿入窓穴31b、31bの設けられた係止板31aを結合している。さらに、保持かご31の後端側には、これを固定するための固定金具31dが結合されている。
【0031】
保持かご31の上部を覆う窓穴付の係止板31aは、プリント回路板Pの挿入保持された保持かご31が回転した際に、プリント回路板Pの上端を係止してこれが遠心力等によりこの容器の上方へ飛び出すのを防止する働きをする。
【0032】
このように構成された保持かご31は、図5に示すように円形の回転支持板32の外周に一定の間隔で複数配置され、固定金具31dを介してこの回転支持板32に固定される。回転支持板32の下側にはこれと重ねて、図6に示すように、回転支持板32に取り付けた複数の保持かご31の取付け間隔と同じピッチで形成された保持かご31と同数のプリント回路板を排出するための排出窓穴34を有する底板33が配設される。この底板33は、その中心よりに設けた2個の取付け溝37に結合ピン36を挿通して回転支持板32に結合される。底板33の取付け溝37の長さは、保持かご31の取付けピッチに等しい長さに設定されているため、底板33は、回転支持板32に対して、保持かご31の取付けピッチ、したがって、底板33のプリント回路板排出窓穴34の配設ピッチの1ピッチ分だけ回動可能に結合される。
【0033】
底板33に固定的に結合された排出操作レバー35は、これを手動操作して底板33を回動するものである。底板33を回動可能な範囲で回動することにより、底板33が、図8に示すように保持かご31の底部の直下に底板33の閉塞部分(排出窓穴以外の部分)を置いて保持かご31の底部を閉じる位置と、保持かご31の底部の直下に底板33の排出窓穴34の部分を置いて保持かごの底部を開放する位置とに変更されるので、この底板33により保持かご31の底部を開閉することができる。
【0034】
次に、このように構成されたこの発明の分離装置によるプリント回路板の電子部品の分離処理動作について説明する。
【0035】
まず、使用済みの電子部品の結合されたプリント回路板Pを分離機本体20の加熱容器21に挿入するために、プリント回路板挿入口22を閉じている開閉蓋23の鎖錠機構23aの鎖錠を外して、これを開き、挿入口22を開放する。次いで、駆動モータ41により、回転支持機構30を保持かご31の取付け間隔の1ピッチ単位で駆動して、加熱容器21内のプリント回路板回転保持機構30の回転位置を調整し、空の保持かご31が1個ずつ挿入口22の直下に置かれ、係止板31aのプリント回路板挿入窓穴31b、31bがこれに臨むようにする。そして、予め操作レバー35を手動で操作して底板33が、その挿入窓穴34でない閉塞部分が保持かご31の底部の直下に置かれ、保持かご31に挿入されたプリント回路板Pの下端を支持する位置となるように調整しておく。
【0036】
そこで、図3に示すように、プリント回路板挿入シュータ27をプリント回路板挿入口22の上部まで回転移動させ、手動または自動で分離処理を行うプリント回路板Pをこのシュータ27をガイドにして挿入口22から加熱容器21内の保持かご31に挿入する。
保持かご31に挿入されたプリント回路板は、電子部品の搭載結合された面を外側(加熱容器21の外周側)に向けられている。シュータ27に案内されて挿入されたプリント回路板Pは、図8に示すように保持かご31の係止板31aの挿入窓穴31bから保持かご内に挿入され、下端を底板33によって支持される。各保持かご31には、プリント回路板Pを2枚ずつ挿入される。
【0037】
1つの保持かご31へのプリント回路板Pの挿入が終わるごとに回転支持機構30は、駆動モータ41によって保持かご21の取付けピッチの1ピッチずつ回動され、この回動動作が全部の保持かご31にプリント回路板Pの挿入が終わるまで継続される。
【0038】
全部の保持かご31にプリント回路板Pの挿入を終えると、シュータ27を回動して元の待機位置(図1参照)に戻し、プリント回路板挿入口22および取出し口24のそれぞれ開閉蓋23および25を閉じて、鎖錠機構23aおよび25aにより厳重に鎖錠する。
これにより、プリント回路板挿入口22および取出し口24がそれぞれ開閉蓋23および25により気密的に閉塞される。
【0039】
ここで、蒸気供給管28から加熱容器21に過熱水蒸気を供給する前に、誘導加熱コイル26に通電して加熱容器21を誘導加熱により予備加熱する。この予備加熱により、加熱容器21の中の温度を、過熱水蒸気を供給したとき、これが凝縮して凝縮水となることのないように、100℃を超えてプリント回路板に電子部品を結合するろう材の融点(約230℃)を超えない範囲の温度まで高めておく。
【0040】
この予備加熱に続いて、蒸気排出管29から加熱容器21内の水蒸気を吸引排出しながら図示しない蒸気発生装置から蒸気供給管28を通して加熱容器21内に過熱水蒸気を供給して、加熱容器21内のプリント回路板Pを加熱する工程へ移る。この加熱工程により加熱容器21内の温度を、プリント回路板Pにおける電子部品を結合したろう材が溶融し、プリント回路板Pからガスが発生する270℃以下の温度まで上昇させる。蒸気供給管28は、加熱容器21の周壁にその接線方向に結合されているので、この管28を通して供給された過熱水蒸気は加熱容器21の内周壁に沿ってこの中を循環するように流れ、全体に拡散するようになるので、加熱容器21内における過熱水蒸気の滞留時間が長くなり、プリント回路板Pの加熱を効率よく良好に行うことができる。このとき、過熱水蒸気は加熱容器21が密閉されていることにより、不要な漏れがないため、過熱水蒸気の消費量を抑えることができる。
【0041】
加熱容器21内の温度が、プリント回路板Pの電子部品結合用のろう材の溶融温度(約230℃)以上で、プリント回路板Pからガスが発生する270℃以下の温度に達すると、回転支持機構30を、駆動モータ41により回転駆動する。ここでは、加熱容器21内の温度が、ろう材の溶融温度に達する前から回転支持機構30を回転させるようにすると、回転支持機構30の回転に伴ってプリント回路板Pを保持する保持かご31が回転して、加熱容器21内の過熱水蒸気を撹拌することにより内部の温度がより均一化され加熱容器内の加熱を速くすることができる。
【0042】
加熱容器21内の温度がプリント回路板Pの電子部品を結合するろう材の溶融温度に達したところで、プリント回路板回転保持機構30が回転すると、プリント回路板Pを保持する保持かご31がとともに回転されることにより、これに保持されたプリント回路板Pに遠心力が作用する。電子備品を固定するろう材が溶融すると、この遠心力がろう材による結合力より勝り、電子部品が遠心力によりプリント回路板Pから分離され、加熱容器21の周壁方向に飛散する。加熱容器21内に飛散した電子回路部品は、加熱容器21がプリント回路板取出し口24を下にして傾斜されているので、加熱容器21内を自重により滑り落ちて、取出し口24付近に集積される。
【0043】
回転支持機構30を回転する時間は、予め、プリント回路板Pの全部から電子部品が分離するのに必要な見込まれた時間に設定しておく。回転支持機構30の回転時間がこの設定時間を経過したところで、駆動モータ41による駆動を停止するとともに過熱水蒸気の供給を停止する。そして底板33に結合したプリント回路板排出操作レバー35が加熱容器21の挿入口22に臨む位置に到達したところで、回転支持機構30の回転を停止させる。
【0044】
加熱容器21内の過熱水蒸気が蒸気排出管29から排出されたところで、加熱容器21のプリント回路板排出口24の開閉蓋25および挿入口22の開閉蓋23の鎖錠機構25aおよび22aを解いて開閉蓋をそれぞれ開き、排出口25および挿入口22を開放する。排出口24が開放されると、この付近に集積されていたプリント回路板Pから分離された電子部品がここから自重により排出されて、回収容器12に集積収容される。
【0045】
このとき、電子部品の分離されたプリント回路板Pは、まだ、保持かご31内に保持されているので、排出操作レバー35により底板33を、底板33の排出窓穴34が保持かご31の底部の直下に来るように排出窓穴34の設置間隔の1ピッチ分回動させる。これにより、図7に示すように、底板33の排出窓穴34が、それぞれ保持かご31の底部と対向する位置に来るので、保持かご31の底部が開放され、保持かご31により保持されていたプリン回路板Pは、底板33による支持がなくなり、この排出窓穴34を通して加熱容器21内に落下し、保持かご31から排出される。加熱容器21内に落下したプリント回路板Pは、自重により容器21内を排出口24側へ滑降し、この排出口24から容器21の外に排出されて、回収容器12内に集積される。
【0046】
回収容器12に集められた分離処理の済んだプリント回路板Pおよび電子部品は、後の貴金属、希少金属の回収処理工程へ送られる。
【0047】
これで、1回の分離処理が完了するので、加熱容器21の排出口24を開閉蓋25により閉じて、プリント回路板挿入機構のシュータ27を挿入口22の上方へ回動させて、プリント回路板の加熱容器への挿入に備える。加熱容器21内の回転支持機構30を1ピッチずつ回動させながらシュータ27をガイドにして全部の保持かご31へのプリント回路板Pの挿入が完了すると、シュータ27を待機位置に戻して、挿入口22を開閉蓋23により閉塞して、前記と同様の分離処理を行う。以後この動作を繰り返すことによりプリント回路板から電子部品を分離する処理を継続的に行うことができ、処理するプリント回路板の量を増やすことができる。
【0048】
前記の第1の実施例では、加熱容器20を30°傾斜して架台に取付けた例を示したが、この加熱容器の取付け傾斜角度は、分離した電子部品およびプリント回路板を自重で加熱容器の下方に滑り落として取出し口付近に集積することができれば、何度であっても構わない。
【実施例2】
【0049】
次に、図9〜図14に示すこの発明の第2の実施例について説明する。
図9〜図11に、この発明の第2の実施例によるプリント回路板の電子部品分離装置の外観を示す。図9は、装置の正面側から見た分離処理状態の斜視図、図10は図9における本体カバー17を外して装置の背面側から見た分離処理状態の斜視図、図11は、装置の正面側から見た分離処理後の排出処理状態の斜視図である。
【0050】
前記の実施例1の装置では、分離機本体20が支持架台10に、取付け板11とともに傾斜して固定的取り付けられているが、この実施例2の装置では、分離機本体20は、支持架台10に回動軸受機構14aを介して傾動可能に取り付けられた可動台14上に直立して固定的に取り付けられ、可動台14とともに傾動する。支持枠台10の背面側には油圧アクチュエータにより構成された傾動駆動機構15が設けられている。傾動駆動機構15の駆動軸15aが可動台14の背面枠14bに連結され、傾動駆動機構15の本体が支持枠台10に連結される(図10参照)。傾動駆動機構15は、空気圧を油圧に変換するエアハイドロコンバータ16を介して空気圧から変換された油圧により駆動され、駆動軸15aを伸縮する。
【0051】
傾動駆動機構15は、駆動軸15aを伸縮することにより、可動台14の背面枠14bを押し上げたり、引き下げたりする。傾動駆動機構15の駆動軸15aが縮んだ状態では、可動台14は図9および図10に示すように水平位置を保ち、分離機本体20が直立した状態にある、傾動駆動機構15の駆動軸15aが伸長すると、可動台14の背面枠14bが押し上げられ、可動台14は、正面側の回動軸受機構14aを支点にして回動し、図11に示すような所定の傾斜角度まで傾動する。この傾斜角度は任意に選定できる。
【0052】
分離機本体20は、実施例1と同様に磁性を有する導電性金属により形成された密閉構造の円筒状容器からなる加熱容器21を備える。加熱容器21の上壁に設けられたプリント回路板Pを挿入するための挿入口22は、実施例1の場合より大きく開口し、これを閉じるための開閉蓋23もこれに対応して大きく形成されている。
【0053】
加熱容器21の周壁の正面に、処理されたプリント回路板および電子部品を取出すための取出し口24aが設けられているが、この取出し口24aは、加熱容器21の周壁から前方へくちばし状に突出した角筒により形成されており、その前端の開口部は2分割構成の開閉蓋25aおよび25bにより気密的に閉じられる構成となっている。加熱容器21が可動台14とともに所定の傾斜角度まで傾動されると、この取出し口24aの前端は、図11に示すように支持枠台10の正面に設けられた回収容器12の入口と対向する位置まで移動する。
【0054】
加熱容器21内は、過熱水蒸気供給管28を通して外部から供給される過熱水蒸気により加熱される。加熱容器21の外周にこれを予備加熱するための誘導加熱コイルを設置してもよいが、ここでは省略されている。
また、加熱容器21内には、図11に示されるように、開放されたプリン回路板挿入口22から覗き見ることができるが、プリント回路板回転保持機構30が収容されている。
【0055】
この実施例2におけるプリント回路板回転保持機構30は、実施例1のプリント回路板回転保持機構30と同じく、複数のプリント回路板を収容保持する保持かご36を固定支持する回転支持板32と、保持かごと同数のこれに収容されたプリント回路板を排出するための排出窓穴34を有し、回転支持板32の下方に可動的に重ね合わせられた底板33とを備える(図13参照)。なお、図13には、代表的な保持かご36が1個しか示されていない。
ただ、回転支持板32に固定支持される保持かご36の構成は、実施例1の保持かご31とは次の点で相違する。
【0056】
すなわち、第1は、保持かご36は、図12に示すように、実施例1と同様に、細い金属条材36cと、プリント回路板Pの挿入窓穴36bの設けられた係止板36aとで構成されているが、プリント回路板Pの挿入窓穴36bが3個設けられ、3枚のプリント回路板Pを保持することができる点である。
第2は、プリント回路板Pの挿入窓穴36bは、その長手方向が、図13に示すように保持かご36の取り付けられる回転支持板32の半径方向に延び、円周方向に並べられている点である。
【0057】
このような保持かご36は、図13に示すように、回転保持板32の外周部に固定金具36dを介して固定される。回転保持板32には、同様にして、複数の保持かご36が円周方向に一定の間隔で固定配置される。
【0058】
このため、プリント回路板保持かご36には、プリント回路板Pが、その電子部品の取り付けられた平板面を回転支持板32の半径と並行に向けて挿入されるようになる。ちなみに、実施例1においては、プリント回路板Pは、その電子部品の取り付けられた平板面を回転保持板32の半径と直交する向きにしてプリント回路板保持かご31に挿入されるようになる。
【0059】
プリント回路板回転保持機構30は、実施例1と同様に、加熱容器21内に回転可能に設置され、加熱容器21の外に設置された駆動モータ41を備えた回転駆動装置40により駆動される構成となっている。
【0060】
このように構成された実施例2の分離装置によるプリント回路板の電子部品の分離処理動作は、基本的には実施例1同じである。
【0061】
すなわち、加熱容器21内のプリント回路板回転保持機構30の保持かご36に使用済みのプリント回路板Pが挿入された状態で加熱容器21を密閉し、この密閉された加熱容器21内に過熱水蒸気を供給することにより内部に収容されたプリント回路板Pを加熱する。プリント回路板Pの電子部品を結合したろう材が溶融されたところで、回転駆動装置40によりプリント回路板回転保持機構30を回転駆動して、その遠心力により電子部品をプリント回路板Pから分離する処理を行う。
【0062】
ただ、この処理のときは、傾動駆動機構15の駆動軸15aを縮めておいて可動台14を水平状態にして、加熱容器21を直立させておく。これにより、加熱容器21内のプリント回路板回転保持機構30が回転駆動されるとき、このプリント回路板回転保持機構30が直立状態に置かれるため、回転中に回転保持機構30に加わる偏荷重が低減され、回転保持機構30の回転を安定に保つことができる。
【0063】
プリント回路板Pから電子部品が分離されたところで、回転保持機構30の回転駆動を停止して分離処理が終了する。分離処理が終了したところで、可動台14を水平にした状態で、プリント回路板挿入口22の開閉蓋23を開いて、実施例1と同様に、回転保持機構30のプリント回路板排出操作レバー35により底板33を所定のピッチ回転させて、保持かご36に保持された電子部品の分離されたプリント回路板Pを加熱容器21内に落下させる処理を行う。
【0064】
次いで、プリント回路板排出口24aの開閉蓋25a,25bを開いた上で、傾動駆動機構15の駆動軸15aを伸長して、可動台14を図11に示すように所定の傾斜角度の位置まで傾動して、加熱容器21を傾斜させて分離された電子部品およびプリント回路板Pの排出処理を行う。加熱容器21が傾斜されることにより、前の分離処理工程で加熱容器21内に落下集積された、プリント板Pから分離された電子部品および電子部品の分離されたプリント回路板Pが加熱容器21の底壁上を正面側の排出口24aに向かって自重により滑落し、ここから回収容器12内に排出される。全部の電子備品およびプリント回路板Pの排出が終わったところで排出処理を終了する。
【0065】
排出処理が終わると、再びプリント回路板の挿入、分離処理工程に戻るために、傾動駆動機構15により可動台14および加熱容器21を図9および図10に示すような水平位置に戻す。水平位置に戻ったところで、排出口24aの開閉蓋25a,26bを閉じて、開放された挿入口22から分離処理を行う新たなプリント回路板Pを回転保持機構30の保持かご36に挿入して、再び分離処理を実行する。
【0066】
このように、実施例2の分離装置は、処理機本体20を固定された支持枠台10上に傾動可能に取り付け、この処理機本体20を、プリント回路板の電子部品を分離する分離処理工程においては水平に保ち、分離された電子部品およびプリント回路板を処理機本体から排出する排出処理工程においては傾斜させるようにし、そしてプリント回路板を回転保持機構30の保持かご36にプリント回路板の電子部品の取り付けられた平板面が回転保持機構30の回転保持機構の半径と平行に向けて挿入するようにしたところに特徴を有する。
【0067】
実施例1の分離装置では、プリント回路板の電子部品の取り付けられた平板面が回転保持機構30の半径と直交する方向に向けられているので、プリント回路板Pの外側を向いた平板面に取り付けられた電子部品の分離は問題ないが、プリント回路板Pの内側を向いた平板面に取り付けられた電子部品の分離が困難となるため、実施例1の分離装置は、表裏両面に電子部品を取り付けた両面実装のプリント回路板の分離処理には適さない。
【0068】
これに対して、実施例2の分離装置では、プリント回路板Pが、電子部品の取り付けられた(実装された)平板面を半径方向と平行する向きにして分離処理されるので、表裏両面に電子部品を取り付けた、両面実装のプリント回路板Pであっても良好に電子部品を分離することができる。
【0069】
また、実施例2の分離装置における回転保持機構の保持かご36は、図14に示すように変形することができる。図14の保持かご37には、係止板37aに設けるプリント回路板の挿入用の窓穴37bの外周側の先端部に三角形状の先細部37fを有する。ここでは、このような形状の挿入窓穴を備えた同一形状の3枚の係止板37aを間隔をおいて重ねて配置し、周囲を金属細条36cにより連結し、基端側に固定金具37dを結合することにより保持かご37が形成される。
【0070】
このように構成された保持かご37を用いると、保持かご37の係止37aの挿入窓穴37bにプリント回路板Pを挿入すると、分離処理時に回転保持機構20が回転駆動装置によって回転されたとき、保持かご37内のプリント回路板Pに作用する半径方向の遠心力によりプリント回路板Pが、挿入窓穴37b内を先端側へ移動する際に、先細部36fの傾斜面に沿って挿入窓穴36bの幅方向の中心部に寄せられるため、保持かご37に挿入されたプリント回路板Pが自動的に係枠36eの挿入窓穴36bの中心部で保持され、回転保持機構30の回転をより安定させることができる。
【符号の説明】
【0071】
P:プリント回路板
1:プリント回路板の電子部品分離装置、10:支持架台11、:取付け板、12:回収容器、14:可動台、15:傾動駆動機構、18:制御盤1、9:操作盤、20:分離機本体、21:加熱容器、22:プリント回路板挿入口、23:プリント回路板挿入口開閉蓋、24,24a:プリント回路板取出し口、25,25a,25b:プリント回路板取出し口開閉蓋、26:誘導加熱コイル、27:プリント回路板挿入機構(シュータ)、28:過熱水蒸気供給管、29:過熱水蒸気排出管、30:プリン回路板回転保持機構、31,36,37:保持かご、32:回転保持板、33:回転底板、34:プリント回路板排出窓穴、35:プリント回路板排出操作レバー、40:回転駆動装置、41:駆動モータ、42:伝動ベルト、43:駆動軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能に構成されたプリント回路板の挿入口と取出し口を備えた密閉構造の加熱容器と、この加熱容器内で前記プリント回路板を複数回転可能に保持するプリント回路板回転保持機構と、このプリント回路板回転保持機構を回転駆動する回転駆動装置とを備え、前記加熱容器内に挿入された電子部品の固定されたプリント回路板を前記プリント回路板回転保持機構により保持した状態で密閉された前記加熱容器内に外部から過熱水蒸気を供給して前記プリント回路板を加熱した状態で前記プリント回路板回転保持機構を回転駆動し、前記プリント回路板に固定された電子部品を遠心力により分離するようにしたことを特徴とするプリント回路板の電子部品分離装置。
【請求項2】
請求項1に記載の分離装置において、前記のプリント回路板回転保持機構は、プリント回路板を収容する、細い金属条材等でかご状に組み上げた周壁および底壁のないプリント回路板保持かごと、このプリント回路板保持かごを円周上に一定の間隔で複数配置して一体に支持する回転保持板と、この回転保持板に、これと一体で回転するとともに、前記各プリント回路板保持かごの底部を開閉可能に可動的取り付けられた底板とで構成したことを特徴とするプリント回路板の電子部品分離装置。
【請求項3】
請求項2に記載の分離装置において、前記各プリント回路板保持かごは、複数のプリント回路板を収容可能に構成したことを特徴とするプリント回路板の電子部品分離装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の分離装置において、前記プリント回路板保持かごにより前記プリント回路板を、電子部品の取り付けられた平板面を前記回転保持機構の円周方向に向けて保持したことを特徴とするプリント回路板の電子部品分離装置。
【請求項5】
請求項4に記載の分離装置において、前記プリント回路板保持かごのプリント回路板挿入窓穴の外周側の先端部に三角形状の先細部を形成したことを特徴とするプリント回路板の電子部品分離装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の分離装置おいて、前記加熱容器は、プリント回路板の取出し口を下にして、傾斜配置された取付板に取付け固定したことを特徴とするプリント回路板の電子部品分離装置。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1つに記載の分離装置おいて、前記加熱容器は、水平位置と傾斜位置の間で傾動可能に構成された可動台上に取付け固定されたことを特徴とするプリント回路板の電子部品分離装置。
【請求項8】
請求項7に記載の分離装置おいて、前記前記加熱容器を水平位置に置いた状態して前記プリント回路板から電子部品を分離する分離処理を行い、傾斜位置において分離した電子備品およびプリント回路板を前記加熱容器から排出する排出処理を行うことを特徴とするプリント回路板の電子部品分離装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つに記載の分離装置おいて、前記加熱容器の外周にこの加熱容器を誘導加熱する誘導加熱コイルを設置したことを特徴とするプリント回路板の電子部品分離装置。
【請求項1】
開閉可能に構成されたプリント回路板の挿入口と取出し口を備えた密閉構造の加熱容器と、この加熱容器内で前記プリント回路板を複数回転可能に保持するプリント回路板回転保持機構と、このプリント回路板回転保持機構を回転駆動する回転駆動装置とを備え、前記加熱容器内に挿入された電子部品の固定されたプリント回路板を前記プリント回路板回転保持機構により保持した状態で密閉された前記加熱容器内に外部から過熱水蒸気を供給して前記プリント回路板を加熱した状態で前記プリント回路板回転保持機構を回転駆動し、前記プリント回路板に固定された電子部品を遠心力により分離するようにしたことを特徴とするプリント回路板の電子部品分離装置。
【請求項2】
請求項1に記載の分離装置において、前記のプリント回路板回転保持機構は、プリント回路板を収容する、細い金属条材等でかご状に組み上げた周壁および底壁のないプリント回路板保持かごと、このプリント回路板保持かごを円周上に一定の間隔で複数配置して一体に支持する回転保持板と、この回転保持板に、これと一体で回転するとともに、前記各プリント回路板保持かごの底部を開閉可能に可動的取り付けられた底板とで構成したことを特徴とするプリント回路板の電子部品分離装置。
【請求項3】
請求項2に記載の分離装置において、前記各プリント回路板保持かごは、複数のプリント回路板を収容可能に構成したことを特徴とするプリント回路板の電子部品分離装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の分離装置において、前記プリント回路板保持かごにより前記プリント回路板を、電子部品の取り付けられた平板面を前記回転保持機構の円周方向に向けて保持したことを特徴とするプリント回路板の電子部品分離装置。
【請求項5】
請求項4に記載の分離装置において、前記プリント回路板保持かごのプリント回路板挿入窓穴の外周側の先端部に三角形状の先細部を形成したことを特徴とするプリント回路板の電子部品分離装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の分離装置おいて、前記加熱容器は、プリント回路板の取出し口を下にして、傾斜配置された取付板に取付け固定したことを特徴とするプリント回路板の電子部品分離装置。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1つに記載の分離装置おいて、前記加熱容器は、水平位置と傾斜位置の間で傾動可能に構成された可動台上に取付け固定されたことを特徴とするプリント回路板の電子部品分離装置。
【請求項8】
請求項7に記載の分離装置おいて、前記前記加熱容器を水平位置に置いた状態して前記プリント回路板から電子部品を分離する分離処理を行い、傾斜位置において分離した電子備品およびプリント回路板を前記加熱容器から排出する排出処理を行うことを特徴とするプリント回路板の電子部品分離装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つに記載の分離装置おいて、前記加熱容器の外周にこの加熱容器を誘導加熱する誘導加熱コイルを設置したことを特徴とするプリント回路板の電子部品分離装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−110379(P2013−110379A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−131067(P2012−131067)
【出願日】平成24年6月8日(2012.6.8)
【出願人】(502165300)富士電機サーモシステムズ株式会社 (33)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月8日(2012.6.8)
【出願人】(502165300)富士電機サーモシステムズ株式会社 (33)
【Fターム(参考)】
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