説明

プリント基板および携帯電話装置

【課題】部品が高密度に実装されていても容易にノイズを測定できるプリント基板およびそのプリント基板を備える携帯電話装置を提供する。
【解決手段】プリント基板410は、多層構造のプリント基板であって、プリント基板410の所定の層に形成されるフットプリント411Sと、フットプリント411Sが形成された層とは別の層に形成され、フットプリント411Sと積層方向に重なる位置に形成される平板状導体431Sと、プリント基板410の表面に形成され、平板状導体431Sとビア432Sで接続されるランド433Sと、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板および携帯電話装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話自身の発生させるノイズが携帯電話自身の受信状態を劣化させる、いわゆる自家中毒状態が問題になっている。自家中毒状態を抑制するための対策として、プリント基板上の配線にローパルフィルタ等のノイズ対策素子を挿入することが知られているが、そのためには、配線毎にノイズの周波数成分等を測定して最適な素子定数を決定する必要がある。ノイズを測定するための技術として、特許文献1には、被測定モジュールの任意の位置に検出部付き接触端子を接触させて被測定モジュールから流出するノイズを測定するノイズ評価装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−101760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置でノイズを測定するためには、プリント基板上の配線やランドに直接接触端子で触れる必要がある。しかしながら、携帯電話のプリント基板のように、部品が高密度に実装されたプリント基板では、配線がプリント基板内層に隠れていたり、ランドが背の高い部品で囲まれていたりして、容易にノイズを測定することができない。
【0005】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、部品が高密度に実装されていても容易にノイズを測定できるプリント基板およびそのプリント基板を備える携帯電話装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点にかかるプリント基板は、
多層構造のプリント基板であって、
前記プリント基板の所定の層に形成される配線パターンと、
前記配線パターンが形成された層とは別の層に形成され、前記配線パターンと積層方向に重なる位置に形成される平板状導体と、
前記プリント基板の表面に形成され、前記平板状導体と導体で接続されるランドと、を備える、
ことを特徴とする。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点にかかる携帯電話装置は、
上記プリント基板を備える、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、部品が高密度に実装されていても容易にノイズを測定できるプリント基板およびそのプリント基板を備える携帯電話装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態の携帯電話装置の縦断面図である。
【図2】図1に示す携帯電話装置に搭載された2枚のプリント基板を接続するFPCの斜視図である。
【図3】メイン基板のコネクタ部分を拡大した斜視図である。
【図4】メイン基板のコネクタにFPCのコネクタを接続したときの様子を示す斜視図である。
【図5】メイン基板のフットプリント部分の断面図である。
【図6】メイン基板の内層に縦長形状の複数の平板状導体を設置した様子を示すための図であり、基板表面層を透過して基板内層を見たときの図である。
【図7】メイン基板にプローブを当てるためのパッドを形成した様子を示すための図であり、基板裏面の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態の携帯電話装置について図面を参照しながら説明する。携帯電話装置1は、図1に示すように、外殻部100と、LCD基板200と、FPC300と、メイン基板400とから構成される。
【0011】
外殻部100は、折り曲げ式携帯電話の外殻部分であり、筐体110と、筐体120と、それらを接続するヒンジ130とから構成される。
【0012】
筐体110は、直方体をした箱状のプラスチックであり、その内部にはLCD基板200が格納されている。
【0013】
筐体120は、直方体をした箱状のプラスチックであり、その内部にはメイン基板400が格納されている。
【0014】
ヒンジ130は折曲式携帯電話の蝶番部分であり、筐体110と筐体120とを折り曲げ可能に接続する。
【0015】
LCD基板200は、携帯電話装置1の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)となる部分であり、コネクタ210と、プリント基板220と、LCD230とから構成される。
【0016】
コネクタ210は、コネクタ基板320上に搭載されたコネクタを挿入するためのコネクタ受部であり、メイン基板400からFPC300を介して映像データまたは画像データを受信する。
【0017】
プリント基板220は、メイン基板400から受信した映像データまたは画像データをLCD230に伝達するための基板であり、基板上にはコネクタ210およびLCD230が実装されている。
【0018】
LCD230は、携帯電話装置1の液晶ディスプレイとなる部分であり、プリント基板220から受け取った映像データまたは画像データを映し出す。
【0019】
FPC300は、LCD基板200とメイン基板400とを接続して、映像データや画像データを伝達するためのフレキシブルプリント基板(FPC:Flexible Printed Circuits)であり、フラットケーブル310と、コネクタ基板320と、コネクタ基板330とから構成される。
【0020】
フラットケーブル310は、例えば、複数の信号線が平行に配置されたフラットケーブルから構成され、図2に示すように、その両端にはコネクタ基板320とコネクタ基板330とが接続されている。
【0021】
コネクタ基板320は、LCD基板200とフラットケーブル310との間で電気信号を中継する基板であり、その基板上には、コネクタ210と嵌合させるためのコネクタ321が設置されている。
【0022】
コネクタ基板330は、メイン基板400とフラットケーブル310との間で電気信号を中継する基板であり、その基板上には、コネクタ420と嵌合させるためのコネクタ331が設置されている。
【0023】
メイン基板400は、LCD230に映し出す映像データや画像データ等を生成する部分であり、プリント基板410と、コネクタ420とから構成される。
【0024】
プリント基板410は、表裏2面の表面層と複数の内層とを備える多層プリント基盤であり、表面層にはプロセッサ、抵抗、コンデンサ等が高密度に実装されている。また、プリント基板410には、図3に示すように、プリント基板410上の配線と接続され、長方形をしたフットプリント411a〜t(基板表面に部品を実装するためのはんだ付け用のランド)が形成されている。
【0025】
コネクタ420は、コネクタ基板330上のコネクタ331を挿入するためのコネクタ受部であり、フットプリント411上にはんだ付けされ固定されている。なお、コネクタ420付近は、図3に示すように、配線が密集しており、配線間をノイズが伝播し易い状態となっている。また、コネクタ420は、配線のインピーダンスが変化する箇所であるために、インピーダンスミスマッチングによる信号の反射が発生しやすい箇所となっている。反射により放射された信号はアンテナ(図示せず)と直接結合し、携帯電話装置1の受信状態を劣化させるため、コネクタ420付近のノイズレベルを落とすことがノイズ対策上重要なポイントとなる。しかし、コネクタ420にコネクタ331を嵌合させた状態では、図4に示すように、コネクタ420がコネクタ基板330と周囲の部品に囲まれるため、ノイズ測定装置のプローブをあてることが困難になる。
【0026】
そこで、本実施形態では、メイン基板400に図5に示すようなノイズ計測機構430(図5ではノイズ計測機構430s)を設けることで、配線のインピーダンスに影響を与えることなく、容易にノイズを測定できるようにする。以下、ノイズ計測機構430について説明する。
【0027】
ノイズ計測機構430(ノイズ計測機構430a〜ノイズ計測機構430t)は、平板状導体431a〜tと、ビア432a〜tと、ランド433a〜tとから構成される。
【0028】
平板状導体431(平板状導体431a〜平板状導体431t)は、コネクタ420のフットプリント411に流れるノイズを容量結合により検出するための平板状の導体である。ここで、「容量結合」とは、接触していない複数の導体同士が静電容量を介して電気的に結合することをいう。容量結合された導体は、コンデンサと同様に、電気信号の直流成分がカットされ交流成分のみが他方の導体に伝達される。平板状導体431a〜tは、図6に示すように、フットプリント411a〜tとは異なる層に、上下重なる位置に配置される。また、平板状導体431は、フットプリント411と同様に縦長の形状をしており、フットプリント411と長手方向が一致するよう配置される。
【0029】
ビア432(ビア432a〜ビア432t)は、平板状導体431で捕らえたノイズや信号をランド433に伝えるためのものであり、図5に示すように、平板状導体431とランド433とを層をまたいで接続する。
【0030】
ランド433(ランド433a〜ランド433t)は、スペクトラムアナライザ等のプローブを当てるためのパッド(基板表面の銅箔等)であり、図7に示すように、あまり部品が実装されていないメイン基板400の裏面に形成されている。
【0031】
以上述べたように、平板状導体431は、フットプリント411に近接して(つまり、隣接する層に)設置されており、フットプリント411と非常に容量結合しやすい構造となっている。そのため、配線を通じてフットプリント411に入力された電気信号は、交流成分のみが効率よく平板状導体431に伝わる。そして、平板状導体431に伝わった交流成分はビア432を介してランド433に伝わる。ランド433は、あまり部品が密集していない箇所に設置されているので、ユーザは、コネクタや実装部品に邪魔されることなく、配線に流れるノイズ(ノイズの周波数成分やノイズの強度等)を測定することができる。
【0032】
本実施形態によれば、高密度実装で困難であったノイズの計測(特に、コネクタ周辺の配線に伝搬するノイズの計測)が容易になる。
【0033】
また、平板状導体431とフットプリント411とは容量結合であり、直接接触していないので、配線のインピーダンスに影響を与えることなく(つまり、配線に流れる電気信号を劣化させることなく)、ノイズを計測することができる。
【0034】
また、フットプリント411と平板状導体431は一定距離で固定されているので、時間を置いてノイズを計測したとしても、安定した測定結果を得ることができる。しかも、フットプリント411と平板状導体431との距離は全て一定距離を保っているために、配線同士のノイズレベルの比較が容易になる。
【0035】
また、はんだ付けするなどして、ランド433に銅線を取り付けるなどの対応も容易であるため、ランド433に取り付けた銅線を筐体外部に引き出せば、アンテナの特性を実使用環境と同等に保った上で、配線に流れるノイズを容易に測定することができる。
【0036】
なお、本実施形態では配線に流れるノイズを測定するためにフットプリント411近くに平板状導体431を設けたが、平板状導体431を設ける位置はフットプリント以外の、例えば、配線、ランド、ビア、抵抗、コンデンサ、インダクタ等の近くであってもよい。
【0037】
また、ランド433を形成する場所は、プリント基板410の裏面側に限られない。プローブを当て易い場所であれば、プリント基板410の表面側であってもよい。
【0038】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0039】
(付記1)
多層構造のプリント基板であって、
前記プリント基板の所定の層に形成される配線パターンと、
前記配線パターンが形成された層とは別の層に形成され、前記配線パターンと積層方向に重なる位置に形成される平板状導体と、
前記プリント基板の表面に形成され、前記平板状導体と導体で接続されるランドと、を備える、
ことを特徴とするプリント基板。
【0040】
(付記2)
前記配線パターンと前記平板状導体は、それぞれ隣接する層に形成される、
ことを特徴とする付記1に記載のプリント基板。
【0041】
(付記3)
前記配線パターンは、前記プリント基板にコネクタを設置するための縦長形状のフットプリントであり、
前記平板状導体は縦長形状であって、前記配線と長手方向が一致するように配置される、
ことを特徴とする付記1または2に記載のプリント基板。
【0042】
(付記4)
付記1乃至3のいずれか1つに記載のプリント基板、を備える、
ことを特徴とする携帯電話装置。
【符号の説明】
【0043】
1 携帯電話装置
100 外殻部
110、120 筐体
130 ヒンジ
200 LCD基板
210 コネクタ
220 プリント基板
230 LCD
300 FPC
310 フラットケーブル
320、330 コネクタ基板
321、331 コネクタ
400 メイン基板
410 プリント基板
411 フットプリント
420 コネクタ
430 ノイズ計測機構
431 平板状導体
432 ビア
433 ランド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層構造のプリント基板であって、
前記プリント基板の所定の層に形成される配線パターンと、
前記配線パターンが形成された層とは別の層に形成され、前記配線パターンと積層方向に重なる位置に形成される平板状導体と、
前記プリント基板の表面に形成され、前記平板状導体と導体で接続されるランドと、を備える、
ことを特徴とするプリント基板。
【請求項2】
前記配線パターンと前記平板状導体は、それぞれ隣接する層に形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のプリント基板。
【請求項3】
前記配線パターンは、前記プリント基板にコネクタを設置するための縦長形状のフットプリントであり、
前記平板状導体は縦長形状であって、前記配線と長手方向が一致するように配置される、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のプリント基板。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプリント基板、を備える、
ことを特徴とする携帯電話装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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