説明

プリント基板の信号監視装置及びプリント基板の信号監視方法

【課題】 試作プリント基盤上のデバイス間及びデバイス内部の電気信号線の状態を柔軟に監視して,ハードウエア並びにソフトウエアの設計機能検証を行うことができるプリント基板の信号監視装置及び方法を提供すること。
【解決手段】 プリント基板200上に配置された信号線211,212…の信号状態を監視する信号監視装置220において,前記信号線211,212…から引き出された監視線231,232,233,234…から監視を必要とする監視線を選択する設定ジャンパスイッチ224,設定レジスタ221と,選択した信号線からの監視信号を出力する切替手段222とを備えるものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,プリント基板の信号監視装置及びプリント基板の信号監視方法に係り,特にプリント基板上に配置された微細な信号線の高速動作する信号状態を監視し電子システムのデバッグを行うことができる信号監視装置及びプリント基板の信号監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板(PCB)には,所定の信号処理を行うため,多数のLSIや電子素子が実装され,これらの素子の端子間は,微細な信号線で連結されている。このようなプリント基板では,論理設計されその論理が検証されていたとしても,プリント基板を試作して,所定のプログラムを実行したときには,信号線の断線,信号の遅延,素子からの雑音,プログラムのバグなどの影響で試作プリント基板が正常に動作しないことがある。また,信号処理の内容もプログラムにより様々で,信号処理の状態によって特定の障害が発生したりすることがある。
【0003】
このため,回路設計されたPCBで所定のプログラムを実行したとき信号が設計通り処理されているかを監視しデバッグを行うことが必要となる。このような監視は,信号線に流れる信号から監視信号を取り出し,この監視信号をオシログラフやロジックアナライザで表示することにより行われる。このようにして,試作されたPCBの各信号線において,信号が適正状態で,適正なタイミングで伝達されているかを調べ開発したシステム(ソフトウェアおよびハードウェア)にバグがないかのデバッグ(設計機能検証)を行うのである。
【0004】
上記検査は,各信号線や,各信号線から引き出したパッドにプローブ針を接触させたり,予め入力端子からの試験信号を選択的に取り込んだりして表示することにより行う。
【0005】
このような設計機能検証とは異なるが,完成品の検査を各信号線の信号を検出する事により行う技術がある。
【0006】
特許文献1には,バウンダリスキャンテストを行うプリント配線板において,バウンダリスキャンテストデータを入力するためのプローブ接続用パッドを,プリント配線板上の固定した個所に設け,VIAとして配置し,ロジックアナライザ等信号入出力装置からの基板実装部品への接続を簡単にしたものが開示されている。
【0007】
特許文献2には,複数個のLSIが実装され場合のプリント基板の配線結果を検査するため,少なくともLSIの数だけの検査箇所について信号検査を行うようにし,選択回路が入力端子の試験信号を選択的に取り込み,セレクタを介してカウンタ制御回路に上記試験信号を与え,制御回路は,試験信号の特定期間を検出してカウンタを駆動し,試験信号と同様な試験信号を内部で発生させ,比較回路は,入力試験信号と内部発生試験信号が同じか否かにより,配線の正常,異常を判定した結果を得るものが記載されている。
【0008】
【特許文献1】特開平9−186418号公報
【0009】
【特許文献2】特開平5−215821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年プリント基板上の配線パターンが微細化(例えば1mm以下)かつその信号動作が高速(例えば100MHz以上)になってきている。このため,外部から各信号線の信号状態を観測するための電気的観測のための物理的手段即ち,ジャンパー線引き出し,観測ポストパッド等を施すことや,被測定機器の測定持における負荷状況を回避するための電気的処理を行うことが困難となっている。
【0011】
このような測定は,上記特許文献1及び特許文献2のように完成品検査として行う必要があるほか,設計に基づいて試作したプリント基板が設計通りの信号処理を実際に行えるかを,ハードウエア及びソフトウエアで検証する場合(デバッグ:設計機能検査)に特に必要となる。即ち,試作されたプリント基板は最新の技術が用いられ,配線パターンがより微細で高速になっているほか,プログラムも新規なものであるため,完成品検査より細かい検査が必要となる。
【0012】
このとき,論理設計,回路設計上確認された動作が,試作ハードウエアで試作プログラムを実行した際実現されているか,プリント基盤上のデバイス間及びデバイス内部の特定個所での信号の状態を測定手段,例えばロジックアナライザ等で詳細に観測する。このように観察を行うことによりハードウエア及びソフトウエアのバグを発見でき,設計機能が発揮できるかが検証できる。そして,このような観測は,プリント基板回路の一定の個所から行うだけでは足りず,処理の種類により異なった個所からの信号を所定の組み合わせで観測する必要がある。
【0013】
本発明は,上述した従来の問題点に鑑みなされたものであり,試作プリント基盤上のデバイス間及びデバイス内部の電気信号線の状態を柔軟に監視して,ハードウエア並びにソフトウエアの設計機能検証を行うことができるプリント基板の信号監視装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の発明は,プリント基板上に配置された信号線の信号状態を監視する信号監視装置において,前記信号線から引き出された監視線から監視を必要とする監視線を選択する選択手段と,選択した信号線からの監視信号を出力する信号線切替手段とを備えたプリント基板の信号監視装置である。
【0015】
請求項2の発明は,請求項1のプリント基板の信号監視装置において,監視線はバッファを介して切替回路に接続されていることを特徴とする。
【0016】
請求項3の発明は,請求項1または請求項2のいずれかに記載のプリント基板の信号監視装置において,前記選択手段は,設定レジスタを備えてなることを特徴とする。
【0017】
請求項4の発明は,請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のプリント基板の信号監視装置において,前記選択手段は,設定ジャンパスイッチを備えてなることを特徴とする。
【0018】
請求項5の発明は,請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のプリント基板の信号監視装置において,前記信号線切替回路の出力は増幅器を介してプリント基板外に出力されることを特徴とする。
【0019】
請求項6の発明は,請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のプリント基板の信号監視装置において,前記信号切替回路の出力信号を出力する専用ポートを備えたことを特徴とする。
【0020】
請求項7の発明は,プリント基板上に配置された信号線の信号状態を監視する信号監視方法において,前記信号線から引き出された監視線から監視を必要とする監視線を選択し,選択した信号線から取得した監視信号を出力し,プログラム実行中における該監視信号を監視するプリント基板の信号監視方法である。
【0021】
請求項8の発明は,請求項7に記載のプリント基板の信号監視方法において,監視線からの監視信号をバッファを介して取得することを特徴とする。
【0022】
請求項9の発明は,請求項7または請求項8のいずれかに記載のプリント基板の信号監視方法において,信号線の選択を設定レジスタで行うことを特徴とする。
【0023】
請求項10の発明は,請求項7乃至請求項9のいずれかに記載のプリント基板の信号監視方法において,信号線の選択をディップスイッチで行うことを特徴とする。
【0024】
請求項11の発明は,請求項7乃至請求項10のいずれかのプリント基板の信号監視方法において,選択された監視信号を増幅して出力することを特徴とする。
【0025】
請求項12の発明は,請求項7乃至請求項11のいずれかに記載のプリント基板の信号監視方法において,出力信号を専用ポートから出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
請求項1及び請求項7に記載の発明によれば,監視を必要とする信号線を選択して,該選択に基づいて,監視する信号線からの監視信号を出力するように切替ることができ,監視を必要とする任意の信号線の信号を監視することができる。これにより,所定のプログラム処理を実行したとき論理設計,回路設計上確認された動作が試作されたプリント基板上で成されているか,プリント基盤上のデバイス間及びデバイス内部の特定個所での信号の状態を測定手段,例えばロジックアナライザ等で観測することができ,設計に基づいて試作したプリント基板が試作プログラムを実行した際設計通りの信号処理を行っているかの設計機能検証を行える。
【0027】
請求項2及び請求項8に記載の発明によれば,監視信号はバッファを介して外部に出力されるので,プリント基板に形成された回路の状態に影響を与えることなくプリント基板の信号監視を行うことができる。このため,実際に信号処理を行っている状態で観測を行うことができる。
【0028】
請求項3及び請求項9に記載の発明によれば,設定レジスタで観測すべき信号線を選択することができるので設定レジスタの状態を変更することにより自由に観測する信号線を選択することができる。このため,信号処理の種類,内容に応じて任意の個所の信号線の信号監視をおこなうことができる。
【0029】
請求項4及び請求項10に記載の発明によれば,ディップスイッチで観測すべき信号線を選択することができるのでディップスイッチの状態を変更することにより自由に観測する信号線を選択することができる。このため,信号処理の種類,内容に応じて任意の個所の信号線の信号監視をおこなうことができる。
【0030】
請求項5及び請求項11に記載の発明によれば,観測信号は直ちに増幅されプリント基板外に出力されるので,外部の雑音に影響されることがなく外部の観測手段での信号観測が容易なものとなる。このため,観測には特別の機材を準備する必要がない。
【0031】
請求項6及び請求項12に記載の発明によれば,観測信号は専用ポートから出力されるので,外部の測定手段を確実に接続して観測信号を測定手段に入力することができる。このため,観測手段の取り付け,取り外しを確実かつ容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下,本発明を実施するための最良の形態を,図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0033】
図1は実施例に係るプリント基板の信号監視装置を示すブロック図,図2は係るプリント基板の信号監視装置でプリント基板を監視する状態を示すブロック図である。
【0034】
本例において,試作されたハードウエアであるプリント基板200には,図1に示すように各種LSI201,202,203,204…が実装され,各LSIの端子間は必要に応じてプリント基板200に形成された信号線211,212…によって連結されている。また,本例では,プリント基板200に形成された各信号線には,必要な個所から信号線の信号状態を取り出す監視線231,232,233,234…が形成されている。
【0035】
そして,このプリント基板200では,所定の機能を発揮するように構成された試作プログラムが実行され,プログラムの実行中に監視が行われる。
【0036】
信号監視装置220は,設定レジスタ221と,切替手段222と,設定ジャンパスイッチ224と,論理的には何もせず信号監視装置220の影響を信号線211に与えないようにするため挿入されるバッファ225,226,227と,観測信号の外部出力用のポート228とを備える。なお,バッファ225,226,227は増幅作用をなすものとして構成している。
【0037】
本例によれば,図2に示すように,このポート228には,ロジックアナライザ300が接続される。本例ではポート228にはコネクタ301が接続され,ケーブル302を介してコネクタ303からロジックアナライザ300に観測信号が出力される。
【0038】
本例では,プリント基板200上に配置された信号線211,212…から観測の対象となる信号線を設定ジャンパスイッチ224もしくは設定レジスタ221で選択する。設定ジャンパスイッチ224で測定対象とする信号線を選択する場合,オペレータは,設定ジャンパスイッチ224が複数備えるスイッチをオン・オフ設定してどの信号線を選択するかを指定する。
【0039】
また,設定レジスタ221で測定対象とする信号線を選択する場合,オペレータは,外部に設けた入力手段から設定レジスタ221に信号線のアドレス等を入力することによりどの信号線を選択するかを指定する。この場合入力手段としては,このプリント基板を配置する情報処理装置,またはプリント基板に接続した入力手段を用いることができる。
【0040】
切替手段は,上述した設定ジャンパスイッチ224または設定レジスタ221からの信号線選択信号を受け,接続された監視線231,232,233,234…から所定の監視線を接続し,その監視信号を出力する。切替手段222は公知のスイッチ手段で構成される。
【0041】
本例に係るプリント基板の信号監視装置を用いてプリント基板の監視を行うには,まずプリント基板を動作可能状態とする。即ち,プリント基板に所定の処理を行わせるのに必要な外部装置,例えば画像入力装置,画像出力装置を接続し,プリント基板が動作するのに必要な試作ソフトウエアを導入し,実行する。
【0042】
このような状態において,プリント基板200の信号監視装置のポート228にロジックアナライザ300を接続する。そして,設定ジャンパスイッチ224を設定するか設定レジスタ221を設定する。これにより切替手段222が作動し,所定の信号線からの監視線の出力が当該監視線に接続されたバッファを経て切替手段222から出力される状態となる。そして,所定のプログラム処理実行中に所定の信号線から出力された監視信号はバッファ227を経てポート228から出力される。
【0043】
監視を行う場合,オペレータは,プリント基板200に所定のデータ処理,例えば画像処理プログラムを実行させながら,所定の処理中に出力された監視信号をロジックアナライザ300で監視し,所定の信号処理が成されているかを監視する。これによりプリント基板が所定処理をなすとき,設計通りの信号処理を行っているかどうかを監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施例1に係るプリント基板の信号監視装置を示すブロック図である。
【図2】図1に係るプリント基板の信号監視装置でプリント基板を監視する状態を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0045】
10 電子機器システム検証装置
200 プリント基板
201,202,203,204 LSI
211,212… 信号線
220 信号監視装置
221 設定レジスタ(選択手段)
222 切替手段
224 設定ジャンパスイッチ(選択手段)
225,226,227 バッファ
228 ポート
231,232,233,234 監視線
300 ロジックアナライザ
301 コネクタ
302 ケーブル
303 コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板上に配置された信号線の信号状態を監視する信号監視装置において,
前記信号線から引き出された監視線から監視を必要とする監視線を選択する選択手段と,選択した信号線からの監視信号を出力する信号線切替手段とを備えたことを特徴とするプリント基板の信号監視装置。
【請求項2】
監視線はバッファを介して切替回路に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のプリント基板の信号監視装置。
【請求項3】
前記選択手段は,設定レジスタを備えてなることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のプリント基板の信号監視装置。
【請求項4】
前記選択手段は,設定ジャンパスイッチを備えてなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のプリント基板の信号監視装置。
【請求項5】
前記信号線切替回路の出力は増幅器を介してプリント基板外に出力されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のプリント基板の信号監視装置。
【請求項6】
前記信号切替回路の出力信号を出力する専用ポートを備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のプリント基板の信号監視装置。
【請求項7】
プリント基板上に配置された信号線の信号状態を監視する信号監視方法において,
前記信号線から引き出された監視線から監視を必要とする監視線を選択し,選択した信号線から取得した監視信号を出力し,プログラム実行中における該監視信号を監視することを特徴とするプリント基板の信号監視方法。
【請求項8】
監視線からの監視信号をバッファを介して取得する事を特徴とする請求項7に記載のプリント基板の信号監視方法。
【請求項9】
信号線の選択を設定レジスタで行うことを特徴とする請求項7または請求項8のいずれかに記載のプリント基板の信号監視方法。
【請求項10】
信号線の選択をディップスイッチで行うことを特徴とする請求項7乃至請求項9のいずれかに記載のプリント基板の信号監視方法。
【請求項11】
選択された監視信号を増幅して出力することを特徴とする請求項7乃至請求項10のいずれかに記載のプリント基板の信号監視方法。
【請求項12】
出力信号を専用ポートから出力することを特徴とする請求項7乃至請求項11のいずれかに記載のプリント基板の信号監視方法。

【図1】
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【図2】
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