説明

プリント基板の穴明け装置

【目的】 孔の穿設部分を撮像するときにX線のエネルギの一部を吸収するX線フィルタを用いて孔の穿設部分をハレーションを生ずることなく明瞭に撮像し、孔の位置ずれ量の検出精度を向上する。
【構成】 ワークテーブル3に多層基板8を載置し、この状態でX線発生器4を駆動して多層基板8のマーク9をモニタ21に撮像し、この画像情報に基づいて多層基板8を位置決めして多層基板8のマーク9の形成部分にドリル20で孔を穿設できるようになっている。また、孔を穿設後は、シリンダ23を駆動してX線フィルタ7をX線発生器4からのX線の光路Lに進出させ、この状態でX線発生器4を再び駆動して多層基板8の穿孔部分をモニタ21に撮像し、この画像情報に基づいて多層基板8に穿設された孔の位置ずれ量を検出可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プリント基板に孔を穿設する穴明け装置に関する。
【0002】
【従来の技術】プリント基板の穴明け装置としては、プリント基板に形成された穿孔用のマークをX線を用いて撮像し、その画像情報に基づいてプリント基板を位置決めしてプリント基板の所定位置に孔を穿設するとともに、当該孔の穿設部分をX線を用いて撮像し、その画像情報に基づいて孔の位置ずれ量を検出できるようになっているものがある(実公平3−9932号)。
【0003】この種の穴明け装置では、プリント基板を透過したX線のエネルギ損失の多少を信号に変換し、この信号に基づいて穿孔用のマークや孔の穿設部分を撮像し、X線のエネルギ損失が多い部分は画像が暗くなり、X線のエネルギ損失が少ない部分は画像が明るくなる構成となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来構造にあっては、穿孔用のマークを撮像するときには、X線のエネルギが全体的に失われて穿孔用のマークが明瞭に撮像されるが、孔の穿設部分を撮像するときには、孔を穿けた部分でのX線のエネルギの損失がなく、このため孔を穿けた部分の画像が極端に明るくなり、ハレーションを起こして孔の輪郭が不明瞭となり、孔の位置ずれ量を正確に検出できないという問題があった。
【0005】本発明は、孔の穿設部分をハレーションを生ずることなく明瞭に撮像できるプリント基板の穴明け装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、プリント基板に形成された穿孔用のマークをX線を用いて撮像し、その画像情報に基づいてプリント基板を位置決めしてプリント基板の所定位置に孔を穿設するとともに当該孔の穿設部分をX線を用いて撮像し、その画像情報に基づいて孔の位置ずれ量を検出可能な穴明け装置であって、X線のエネルギの一部を吸収するX線フィルタと、X線フィルタをX線の光路に対し進出位置および後退位置へ移動すべくマークを撮像するときおよび孔を穿設するときにはX線フィルタを後退位置に位置させ孔の穿設部分を撮像するときにはX線フィルタを進出位置に位置させるフィルタ駆動手段と、を有していることを特徴としている。
【0007】
【作用】本発明によれば、孔の穿設部分を撮像するときには、フィルタ駆動手段によってX線フィルタがX線の光路への進出位置に位置され、X線フィルタによって孔の穿設部分をハレーションを生ずることなく明瞭に撮像できる。また、穿孔用のマークを撮像するとき、および孔を穿設するときには、フィルタ駆動手段によってX線フィルタがX線の光路からの後退位置に位置され、X線フィルタが穿孔用のマークの撮像動作や孔の穿設動作の妨げとなることはない。
【0008】
【実施例】本発明が適用されたプリント基板の穴明け装置を図面に基づいて説明する。この穴明け装置では、図1に示されるようにフレーム1の上部に機台2が固設され、この機台2の上方にワークテーブル3およびX線発生器4が設けられているとともに機台2の下方に穴明け機構5、X線カメラ6およびX線フィルタ7が設けられている。
【0009】ワークテーブル3は機台2の上面に載置固定されており、このワークテーブル3の上面にプリント基板としての多層基板8を載置して多層基板8の所定の部位に孔を穿設できるようになっている。ワークテーブル3には、図示しないクランプ手段が設けられ、このクランプ手段によって多層基板8を適宜の位置で挟持固定できるようになっている。
【0010】多層基板8は複数枚の基板を重合して構成され、穿孔すべき所定の部位には基板間に図2に示されるような穿孔用のマーク9が銅箔により形成されている。マーク9はリング状のマーク9aの内側に円形のマーク9bがマーク9aと同心的に設けられた構成となっており、マーク9bの中心位置に孔が穿設されるようになっている。
【0011】X線発生器4は支持ブロック10を介してワークテーブル3の上方でワークテーブル3と対向するように機台2に固定され、多層基板8の所定部分にX線を透過できるようになっている。このX線発生器4から多層基板8を透過したX線はエネルギの損失なく機台2の下方に透過されるようになっている。すなわち、ワークテーブル3および機台2には、X線発生器4と対向する部位にそれぞれ透孔3a、2aが形成され、この透孔3a、2aを通してX線が機台2の下方に透過されるようになっている。
【0012】透孔3a、2aは穴明け機構5による多層基板8への穿孔用としても用いられるようになっており、この透孔3a、2aを通して機台2の下方から穴明け機構5によって多層基板8に孔を穿設できるようになっている。
【0013】穴明け機構5は支持ブラケット11を介してフレーム1に取り付けられている。穴明け機構5には、支持ブラケット11にワークテーブル3と平行に図1の左右方向へスライド可能に取り付けられたベース12と、支持ブラケット11に取り付けられてベース12をスライド駆動するシリンダ13と、ベース12に図1の左右方向へスライド可能に取り付けられたXテーブル14と、Xテーブル14をスライド駆動する図示しないモータと、Xテーブル14に図1の紙面直角方向へスライド可能に取り付けられたYテーブル15と、Yテーブル15をスライド駆動する図示しないモータと、Yテーブル15に昇降可能に取り付けられたスライダ16と、スライダ16をスライド駆動するシリンダ17と、スライダ16に取り付けられたスピンドルモータ18と、スピンドルモータ18の上端駆動軸にコレットチャック19を介して取り付けられたドリル20と、が設けられている。
【0014】そして、ベース12、Xテーブル14およびYテーブル15のスライド駆動により、ドリル20を図1に二点鎖線で示されるように機台2の下方でワークテーブル3の透孔3aと対向する位置に移動できるようになっている。また、ドリル20が機台2の下方でワークテーブル3の透孔3aと対向した状態からは、スライダ16のスライド駆動およびスピンドルモータ18の駆動によりドリル20を回転させつつ透孔3a、2aを通して多層基板8を貫通する位置に進退可能となっているとともにベース12のスライド駆動によりドリル20およびスピンドルモータ18をX線発生器4からのX線の光路Lに位置しないように側方に退避した位置(図1の実線位置)に後退可能となっている。
【0015】X線カメラ6は穴明け機構5の下方でフレーム1に固定されている。このX線カメラ6はワークテーブル3の透孔3aと対向し、X線発生器4からのX線を受光できるようになっている。また、X線カメラ6はモニタ21と接続され、X線発生器4からX線が放射されたときにX線のエネルギ損失の多少を信号に変換し、この信号に基づいて多層基板8の透孔3aとの対向部分をモニタ21に撮像できるようになっている。モニタ21には、X線のエネルギ損失が多い部分は画像が暗くなり、X線のエネルギ損失が少ない部分は、画像が明るくなる構成となっている。
【0016】X線フィルタ7はX線のエネルギの一部を吸収するものであり、例えばアルミニウム板等が適用可能である。このX線フィルタ7は機台2と穴明け機構5との間で支持ブラケット22を介してフレーム1に取り付けられている。支持ブラケット22はフレーム1に固定されているとともにX線フィルタ7をワークテーブル3と平行にスライド可能に支持し、X線フィルタ7をスライド動作でX線発生器4からのX線の光路Lに進退可能としている。この支持ブラケット22には、X線フィルタ7をスライド駆動するフィルタ駆動手段としてのシリンダ23が取り付けられ、このシリンダ23によってX線フィルタ14をX線発生器4からのX線の光路Lへの進出位置(図1に二点鎖線で図示の位置)および後退位置(図1に実線で図示の位置)にスライド駆動できるようになっている。
【0017】次に作用を説明する。多層基板8に孔を穿設するときには、あらかじめ穴明け機構5を駆動してドリル20およびスピンドルモータ18を機台2の下方でワークテーブル3の透孔3aと対向する位置からその側方に退避した位置(図1の実線位置)に位置させるとともに、シリンダ23を駆動してX線フィルタ14をX線発生器4からのX線の光路Lからの後退位置(図1に実線で図示の位置)に位置させ、この状態でワークテーブル3に多層基板8を載置し、その後にX線発生器4を駆動して多層基板8のマーク9をモニタ21に撮像し、この画像情報に基づいて多層基板8のマーク9がワークテーブル3の透孔3aと対向するように多層基板8を位置決めする。
【0018】多層基板8の位置決め後は、クランプ手段によって多層基板8をワークテーブル3に挟持固定し、この状態で穴明け機構5を駆動してドリル20を図1に二点鎖線で示されるようにワークテーブル3の透孔3aと対向する位置に移動し、その後にドリル20を回転させつつ透孔3a、2aを通して多層基板8を貫通する位置に移動すれば、多層基板8のマーク9bの中心位置に孔が穿設される。
【0019】孔の穿設後は、穴明け機構5を駆動してドリル20を機台2の下方位置(図1に二点鎖線で図示の位置)に後退させ、その後にドリル20およびスピンドルモータ18をワークテーブル3の透孔3aと対向する位置からその側方に退避した位置(図1に実線で図示の位置)に後退させ、この状態でシリンダ23を駆動してX線フィルタ7をX線の光路Lへの進出位置(図1に二点鎖線で図示の位置)にスライド駆動し、その後にX線発生器4を再び駆動して多層基板8の穿孔部分をモニタ21に撮像すれば、この画像情報に基づいて多層基板8に穿設された孔の位置ずれ量を検出できる。
【0020】ここで、孔の穿設部分をモニタ21に撮像するときには、X線フィルタ7がX線の光路Lへの進出位置(図1に二点鎖線で図示の位置)に位置されるので、孔の穿設部分でX線のエネルギの一部が損失されることとなり、これによって孔の穿設部分をモニタ21にハレーションを生ずることなく明瞭に撮像できる。すなわち、X線フィルタ7がない場合には、孔を穿けた部分での信号量が図3に二点鎖線で示されるように極端に多くなって孔を穿けた部分の画像が極端に明るくなり、孔を穿けた部分でハレーションを起こして孔の輪郭が不明瞭となるが、X線フィルタ7がある場合には、X線フィルタ7によって孔の穿設部分でX線のエネルギの一部が損失されることとなり、この結果、孔を穿けた部分での信号量が図3に実線で示されるように低下し、孔を穿けた部分でのハレーションが防止されて孔の輪郭が明瞭となる。
【0021】また、多層基板8のマーク9をモニタ21に撮像するとき、および多層基板8に孔を穿設するときには、X線フィルタ7がX線の光路Lからの後退位置(図1に実線で図示の位置)に位置されるので、X線フィルタ7が多層基板8のマーク9の撮像動作や孔の穿設動作の妨げとなることがなく、これによりマーク9の形成部分での信号量が図4に示されるように変位して多層基板8のマーク9を明瞭に撮像でき、且つ多層基板8に孔を確実に穿設できる。
【0022】なお、図3および図4中、符号30はモニタ21に撮像された画像であり、そのリング状部30aはマーク9aと対応し、リング状部30aの内側の円形部30bはマーク9bと対応し、円形部30bの内側の白抜き部分30cは多層基板8に穿設された孔と対応するものである。
【0023】したがって、多層基板8の位置決め時には、多層基板8のマーク9がモニタ21に明瞭に撮像されて多層基板8を精度良く位置決めでき、孔の位置ずれ量の検出時には、孔の穿設部分がモニタ21に明瞭に撮像されて孔の位置ずれ量の検出精度が向上する。
【0024】また、孔の穿設部分をモニタ21に撮像するときのハレーションが防止されるので、X線カメラ6の耐久寿命が向上し、経済的である。
【0025】なお、上記実施例では、X線フィルタ7を機台2と穴明け機構5との間に設けたが、これに限らず、X線フィルタ7をワークテーブル3とX線発生器4との間、あるいは穴明け機構5とX線カメラ6との間に設けるようにしてもよい。
【0026】また、上記実施例では、X線フィルタ7をスライド駆動させるようにしたが、これに限らず、X線フィルタ7を回転駆動させてX線発生器4からのX線の光路Lへの進出位置および後退位置へ移動させるようにしてもよい。
【0027】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係るプリント基板の穴明け装置によれば、孔の穿設部分をハレーションを生ずることなく明瞭に画像処理でき、これによって孔の位置ずれ量の検出精度が向上し、またX線カメラ等の耐久寿命も向上するという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されたプリント基板の穴明け装置の縦断面図である。
【図2】多層基板の平面図である。
【図3】孔の穿設部分を撮像するときの信号量の変位を示すグラフである。
【図4】多層基板のマークを撮像するときの信号量の変位を示すグラフである。
【符号の説明】
7 X線フィルタ
8 多層基板
23 シリンダ(フィルタ駆動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 プリント基板に形成された穿孔用のマークをX線を用いて撮像し、その画像情報に基づいて上記プリント基板を位置決めして上記プリント基板の所定位置に孔を穿設するとともに、当該孔の穿設部分をX線を用いて撮像し、その画像情報に基づいて上記孔の位置ずれ量を検出可能な穴明け装置であって、上記X線のエネルギの一部を吸収するX線フィルタと、上記X線フィルタを上記X線の光路に対し進出位置および後退位置へ移動すべく、上記マークを撮像するときおよび上記孔を穿設するときには上記X線フィルタを上記後退位置に位置させ、上記孔の穿設部分を撮像するときには上記X線フィルタを上記進出位置に位置させるフィルタ駆動手段と、を有していることを特徴とするプリント基板の穴明け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平6−114695
【公開日】平成6年(1994)4月26日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−270194
【出願日】平成4年(1992)10月8日
【出願人】(000002381)株式会社精工舎 (8)