説明

プリント基板押さえ構造

【課題】プリント基板実装筐体に実装されたプリント基板をより確実に押さえて、コネクタとの接触不良が起きるのを防止または軽減するプリント基板押さえ構造を提供する。
【解決手段】プリント基板1を支持する支持板2と、プリント基板と対向する位置において該支持板に穿孔されたスリットと、該スリットを通って突出する突起部13を有するプリント基板押さえ部材4を有する。プリント基板押さえ部材は、突起部がプリント基板と対向する位置に位置合わせされた後、取り付けビス5a、5bにより支持板に固着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリント基板押さえ構造に関し、特に交換機や主装置などに装着されたプリント基板を確実に押さえて、プリント基板がコネクタと接触不良等の不具合を起こすのを極力防止するプリント基板押さえ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプリント基板押さえ構造の一例として、例えば下記の特許文献1に記されているものがある。このプリント基板押さえ構造は、図5、図6に示すように、棚板Aの正面開口部30の左、右側部位30C,30Dにねじ孔37を設け、また、左右両端にねじ挿入孔38を有する長尺な押さえ部材39を用意する。
【0003】
そして、棚板Aの上下のガイドレール35にプリント基板32の上、下端部32a、32bを挿入し、棚板Aの奥側に押し込んだ時点で、押さえ部材39の左右端部のねじ挿入孔38にねじ部材40を挿入する。次いで、ねじ部材40を前記ねじ孔37にねじ込み、押さえ板39でプリント基板32を棚板Aに固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−307272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記した従来のプリント基板押さえ構造は、長尺な押さえ部材39をその左右両端で2個のねじ部材40により左右部位30C,30Dに固定するものであるので、ねじ止め部から離れた中央付近は、プリント基板を引き出そうとする力で押さえ部材39がたわみ、押さえが不十分になるという課題があった。また、棚板Aに大きな振動や衝撃が加わっても、棚板Aの上下のガイドレールに挿入されているプリント基板が前方に動き、棚板Aに固定されているコネクタとの接触不良が起きやすいという恐れがあった。また、長尺な押さえ部材39をその左右両端で左、右側部位30C,30Dのねじ孔37にねじ止めする際に、一端のねじ止め時に他端が落下するので、一方の手でこの落下を防ぎながら他方の手でねじ止めしなければならず、作業性が悪いという課題もあった。
【0006】
本発明の目的は、前記した従来技術の課題を解決し、プリント基板実装筐体に実装されたプリント基板をより確実に押さえて、コネクタとの接触不良が起きるのを防止するプリント基板押さえ構造を提供することにある。また、他の目的は、作業性良くプリント基板実装筐体に取り付けることのできるプリント基板押さえ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した目的を達成するために、本発明は、プリント基板実装筐体に実装されたプリント基板を押さえるプリント基板押さえ構造であって、プリント基板を支持する支持板と、前記プリント基板の実装位置と対向する位置において該支持板に穿孔されたスリットと、前記スリットを通って突出する突起部を有するプリント基板押さえ部材とを具備し、前記突起部は、前記プリント基板と対向する位置に位置合わせできるように前記スリット内をスライドでき、前記突起部により前記プリント基板を押さえるようにした点に特徴がある。
【0008】
また、前記突起部は屈曲突起部を含み、前記スリットは該屈曲突起部を挿通する形状のスリットを含むようにした点に他の特徴がある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プリント基板と対向する位置において該プリント基板の支持板に穿孔されたスリットを通って突出する突起部によりプリント基板を押さえることができ、その突起部のたわみはスリットにより阻止されるので、プリント基板を従来のプリント基板押さえより確実に押さえることができるようになる。また、このため、プリント基板とコネクタとの接続がゆるむことがなくなり、接触不良が起きるのを防止できるようになる。また、信頼性の高いプリント基板押さえ構造を提供できるようになる。
【0010】
さらに、屈曲突起部を屈曲スリットに差し込んで横方向にスライドさせることにより、プリント基板押さえが支持板に保持されて落下することがないので、2個のビスによるプリント基板押さえ部材の支持板への装着作業が簡単になり作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態の要部の斜視図を示す。
【図2】プリント基板押さえ部材の斜視図を示す。
【図3】プリント基板実装筐体の下板にプリント基板押さえ部材を装着した時の斜視図を示す。
【図4】図3のA−A’線断面図である。
【図5】従来のプリント基板押さえ構造の説明図である。
【図6】従来のプリント基板押さえ構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照して、本発明を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態のプリント基板実装筐体に実装された複数のプリント基板の一部の斜視図である。
【0013】
図示されているように、プリント基板実装筐体のプリント基板の支持板、例えば上板および下板2のガイドレール3(上板および上側のガイドレールは不図示)に複数のプリント基板1が実装されている。下板2の左右に延びる前方壁2aには、長尺のプリント基板押さえ部材4が配置され、その左右両端の起立部は取り付けビス5aおよび5bで前記前方壁2aに止められる。
【0014】
前記プリント基板押さえ部材4の構造の一例を図2を参照して説明する。プリント基板押さえ部材4は好ましくは一枚の長尺の板材から一体成型されており、中央部に左右に延びる長尺溝10が形成され、該溝10の前側の左右の端部には起立部11a、11bが形成され、該溝10の奥側には奥壁部12が形成されている。そして、全体的には、ほぼ逆コ字状になっている。
【0015】
前記溝10は、下板2の前方壁2aの厚みよりやや大きい幅を有し、該溝10の前記起立部材11a、11bには、溝10方向に長い長孔13a、13bが形成されている。また、一方の起立部材11aには、つまみ16が形成されている。
【0016】
前記奥壁部12の上辺には、プリント基板押さえ部材4を下板2の前方壁2aに装着したときに、下板に設けられたスリットから突出する高さの複数の突起部14と、屈曲突起部15a、15bが形成されている。突起部14は平らな舌状の突起であるが、屈曲突起部15a,15bは、例えば90°に折れ曲がった屈曲片であり、好ましくはプリント基板押さえ部材4の長さ方向の中央の両側に1個ずつ形成されている。各突起部14、屈曲突起部15a、15bの間隔は、プリント基板実装筐体のプリント基板実装間隔、つまりガイドレール3間の間隔とほぼ等しくされている。
【0017】
図3に、プリント基板押さえ部材4をプリント基板実装筐体に装着した時の要部の斜視図、図4に図3のA−A’線断面図を示す。図3、図4において、図1、図2と同じ符号は同一または同等物を示す。
【0018】
プリント基板実装筐体の下板2には、プリント基板押さえ部材4の突起部14および屈曲突起部15a、15bを通すスリット21および屈曲スリット22a、22bが前方壁2aと平行に形成されている。これらのスリットは、突起部14の幅および屈曲突起部15a、15bの突起部14と同方向の幅より長い長さを有しており、該スリット21および屈曲スリット22a、22bに突起部14および屈曲突起部15a、15bが挿通された時には、プリント基板押さえ部材4が前記スリット方向に少しスライドできるようになっている。
【0019】
さて、プリント基板押さえ部材4をプリント基板実装筐体に装着する時には、屈曲突起部15a、15bが屈曲スリット22a、22bと位置合わせされ、プリント基板押さえ部材4が下板2と密着するように持ち上げられる。これにより、突起部14および屈曲突起部15a、15bがスリット21および屈曲スリット22a、22bに挿通される。続いて、プリント基板押さえ部材4は前記スリット方向に少しスライドされ、下板2上に保持される。次いで、取り付けビス5a、5bを前記起立部材11a、11bの長孔13a、13bを通って下板2に途中まで螺入し、プリント基板押さえ部材4を下板2に仮着する。
【0020】
なお、スリット21及び屈曲スリット22a、22bに挿通された時には、ビス取付穴が長孔13a、13bから隠れた位置で嵌合させ、その後スライドさせることでビス取付穴が長孔13a、13bの位置と合うことで取り付けビス5a、5bで固着できる。このように構成することで、取り付けビス5a、5bで仮着した状態で長孔幅一杯にプリント基板押さえ部材4を左右にスライドさせた時にも、スリット部から誤って抜け落ちることを防止する構造である。
【0021】
その後、つまみ16を用いて、プリント基板押さえ部材4をスリット21および屈曲スリット22a、22bに沿って再度スライドさせ、突起部14および屈曲突起部15a、15bが、複数のプリント基板1の位置と対向するように位置合わせした所で、取り付けビス5a、5bをさらに螺入して、プリント基板押さえ部材4を下板2に固着する。なお、プリント基板押さえ部材4をスライドさせて長孔13a、13bの一方の端に当接させた位置で突起部14をプリント基板1の位置と対向するようにすれば、ビス止めによる突起部14をプリント基板1の位置に対向させるための微調整作業が必要なくなる。
【0022】
上記のことから明らかなように、プリント基板押さえ部材4は、前記仮着後は、屈曲突起部15a、15bと屈曲スリット22a、22bの働きにより、下板2から落下することがないので、取り付けビス5a、5bによるプリント基板押さえ部材4の下板2への固着作業が簡単になり作業性が向上する。
【0023】
図1は、プリント基板1が実装された支持板(下板2)に、プリント基板押さえ部材4を仮着した斜視図を示している。取り付けビス5a、5bで仮止めされたプリント基板押さえ部材4は、図の左方向に少しスライドされて突起部14および屈曲突起部15a、15bがプリント基板1と対向する位置に移動され、その位置で取り付けビス5a、5bを強く螺入して下板2に固着される。
【0024】
以上のような構成を有する本実施形態では、図1から明らかなように、下板2のスリット21,屈曲スリット22a、22bから突出したプリント基板押さえ部材4の突起部14および屈曲突起部15a、15bが、個々のプリント基板1の前方への移動を強く押さえる。また、突起部14および屈曲突起部15a、15bのたわみはスリット21、屈曲スリット22a、22bにより阻止される。よって、該プリント基板1を引き出そうとする力が働いても、突起部14および屈曲突起部15a、15bは強固にプリント基板1の移動を阻止する。また、プリント基板1に大きな振動や衝撃が加わっても、プリント基板実装筐体の上板および下板のガイドレールに挿入されているプリント基板が前方に動くのを阻止し、コネクタとの接触が緩んで接触不良が起きる等の不具合を防止することができる。
【0025】
前記実施形態では、プリント基板押さえ構造をプリント基板実装筐体の下板に装着したが、その上板に装着することも可能である。また、前記実施形態では、縦方向に実装されたプリント基板の押さえ構造について説明したが、本発明はこれに限定されず、横方向に実装されたプリント基板の押さえにも適用できることは明らかである。この場合には、前記下板は、側板に配置されることは明らかである。
【0026】
また、取り付けビス5a、5bは2カ所で説明したが、2カ所である必要はなく、任意の位置(例えば、中央付近)に1カ所あれば機能上は何の問題もなく対応できるものである。
【符号の説明】
【0027】
1・・・プリント基板、2・・・支持板(下板)、2a・・・前方壁、3・・・ガイドレール、4・・・プリント基板押さえ部材、5a、5b・・・取り付けビス、10・・・溝、11a、11b・・・起立部、12・・・奥壁部、13a、13b・・・長孔、14・・・突起部、15a、15b・・・屈曲突起部、16・・・つまみ、21・・・スリット、22a、22b・・・屈曲スリット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板実装筐体に実装されたプリント基板を押さえるプリント基板押さえ構造であって、
プリント基板を支持する支持板と、
前記プリント基板の実装位置と対向する位置において該支持板に穿孔されたスリットと、
前記スリットを通って突出する突起部を有するプリント基板押さえ部材とを具備し、
前記突起部は、前記プリント基板と対向する位置に位置合わせできるように前記スリット内をスライドでき、前記突起部により前記プリント基板を押さえることを特徴とするプリント基板押さえ構造。
【請求項2】
前記突起部は屈曲突起部を含み、前記スリットは該屈曲突起部を挿通する形状のスリットを含むことを特徴とする請求項1に記載のプリント基板押さえ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−278230(P2010−278230A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129242(P2009−129242)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000000181)岩崎通信機株式会社 (133)
【出願人】(399040405)東日本電信電話株式会社 (286)
【出願人】(399041158)西日本電信電話株式会社 (215)
【Fターム(参考)】