説明

プリント装置およびその制御プログラム

【課題】すべてのプリントが完了するまでの時間をできるだけ短縮できるプリント装置およびその制御プログラムを提供する。
【解決手段】第1プリント部およびその第1プリント部よりプリント速度が速い第2プリント部を備え、レシート用プリントデータのプリントを第1プリント部10に割り当て、ラベル用プリントデータのプリントを第2プリント部20に割り当てる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、2つのプリント部を備えたプリント装置およびその制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
チケットや切手を購入者にその場でプリントして販売する店舗では、2つのプリント部を備えるプリント装置を使用することにより、チケットや切手を一方のプリント部でプリントしながら、その販売に関するレシートを同時に他方のプリント部でプリントすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−123625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
買物客が多量のチケットを一度にまとめてプリントして購入するような場合、レシートのプリントはすぐに完了して買物客に渡せるのに、チケットについてはプリントが完了するまでに時間がかかる。その間、買物客はただ待つことになる。
【0005】
本発明の実施形態の目的は、すべてのプリントが完了するまでの時間をできるだけ短縮できるプリント装置およびその制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態のプリント装置は、所定のプリント速度を有する第1プリント部と、この第1プリント部より速いプリント速度を有する第2プリント部と、レシート用プリントデータのプリントを上記第1プリント部に割り当て、ラベル用プリントデータのプリントを上記第2プリント部に割り当てる制御手段と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】一実施形態の構成を示す図。
【図2】一実施形態の制御回路の構成を示すブロック図。
【図3】一実施形態の制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、プリント装置1は、前面に2つの排出口2,3を有するとともに、その排出口2の内側に第1プリント部10を有し、排出口3の内側に第2プリント部20を有する。
【0009】
第1プリント部10は、ロール状に巻かれた用紙11の先端を上記排出口2に向け搬送する複数の搬送ローラ12、これら搬送ローラ12を駆動するモータ13、搬送される用紙11の表面に文字や画像をプリントするサーマルヘッド14、このサーマルヘッド14に用紙11を押し当てるプラテンローラ15、プリント済みの用紙11をカットするカッタ16を備える。この第1プリント部10の定格プリント速度は、例えば5ips(inch/sec)である。
【0010】
第2プリント部20は、ロール状に巻かれた用紙21の先端を上記排出口3に向け搬送する複数の搬送ローラ22、これら搬送ローラ22を駆動するモータ23、搬送される用紙21の表面に文字や画像をプリントするサーマルヘッド24、このサーマルヘッド24に用紙21を押し当てるプラテンローラ25、プリント済みの用紙21をカットするカッタ26を備える。この第2プリント部20の定格プリント速度は、第1プリント部10より速い例えば10ips(inch/sec)である。
【0011】
第1およびプリント部10,20の一方をレシートプリンタとして使用し他方をラベルプリンタとして使用する用途別使用モードでは、表面全体に感熱層を有するレシート用紙(サーマル用紙)が用紙11として第1プリント部10に装填され、帯状台紙の表面に多数枚のラベルをロール方向に沿って順に貼付した連続ラベル用紙が用紙21として第2プリント部20に装填される。各ラベルは、表面側に感熱層を有する。
【0012】
第1および第2プリント部10,20を共にレシートプリンタとして使用する非用途別使用モードでは、表面全体に感熱層を有するレシート用紙が用紙11として第1プリント部10に装填されるとともに、同じレシート用紙が用紙21として第2プリント部20に装填される。逆に、第1および第2プリント部10,20を共にラベルプリンタとして使用する非用途別使用モードでは、帯状台紙の表面に多数枚のラベルをロール方向に沿って順に貼付した連続ラベル用紙が用紙11として第1プリント部10に装填されるとともに、同じ連続ラベル用紙が第2プリント部20に装填される。
【0013】
制御回路を図2に示す。
第1プリント部10は、CPU30、制御プログラム記憶用のROM31、データ記憶用のRAM32、上記各搬送ローラ12およびモータ13を含む給紙機構33、上記サーマルヘッド14、上記プラテンローラ15を駆動するプラテン駆動機構35、上記カッタ36、第2プリント部20とのデータ送受信を行うインタフェース37、操作部38、表示部39、上位のホスト装置51とのデータ送受信を行う通信インタフェース50を備える。上記CPU30、ROM31、RAM32により、第1プリント部10を制御するマイクロコンピュータが構成される。
【0014】
第2プリント部20は、CPU40、制御プログラム記憶用のROM41、データ記憶用のRAM42、上記各搬送ローラ22およびモータ23を含む給紙機構43、上記サーマルヘッド24、上記プラテンローラ25を駆動するプラテン駆動機構45、上記カッタ46を備える。上記CPU40、ROM41、RAM42により、第2プリント部20を制御するマイクロコンピュータが構成される。
【0015】
この第1プリント部10のマイクロコンピュータおよび第2プリント部20のマイクロコンピュータは、ROM31,41内の制御プログラムに基づく主要な機能として、次の(1)〜(3)の手段を有する。
(1)用途別使用モードが操作部38で設定されている場合、ホスト装置51から入力されるレシート用プリントデータのプリントを第1プリント部10に割り当て、ホスト装置51から入力されるラベル用プリントデータのプリントを第2プリント部20に割り当てる第1制御手段。
【0016】
(2)用途別使用モードの非設定時に第1プリント部10を指定するコマンドがホスト装置51から入力された場合、ホスト装置51から入力されるプリントデータのデータ量を検出し、その検出データ量が一定量未満であればそのプリントデータのプリントを第1プリント部10に割り当て、その検出データ量が一定量以上であれば上記プリントデータのプリントを第2プリント部20に割り当てる第2制御手段。
【0017】
(3)用途別使用モードの非設定時に第2プリント部20を指定するコマンドがホスト装置51から入力された場合、ホスト装置51から入力されるプリントデータのプリントを第2プリント部20に割り当てる第3制御手段。
【0018】
つぎに、図3のフローチャートを参照しながら制御について説明する。
ホスト装置51からプリントデータが入力されると、そのプリントデータを第1プリント部10のRAM32に取り込む(ステップ101)。このとき、操作部38で用途別使用モードが設定されていれば(ステップ102のYES)、上記取り込んだプリントデータのうち、レシート用プリントデータを第1プリント部10のRAM32に残し、ラベル用プリントデータを第2プリント部20のRAM42に転送する(ステップ103)。そして、第1プリント部10のRAM32内のレシート用プリントデータを同第1プリント部10でサーマル用紙11にプリントするとともに(ステップ104)、第2プリント部20のRAM42内のラベル用プリントデータを同第2プリント部20で連続ラベル用紙21にプリントする。
【0019】
すなわち、第1プリント部10は、RAM32内のレシート用プリントデータをサーマル用紙11にプリントし、そのプリント後のサーマル用紙11をカッタ36でカットして排出口2から排出する。この排出される紙片がレシートとして、買物客に渡される。第2プリント部20は、RAM42内のラベル用プリントデータを連続ラベル用紙21にプリントし、そのプリント後の連続ラベル用紙21をカットして排出口3から排出する。この排出される紙片に貼付されているラベルが例えばチケットとして買物客に渡される。
【0020】
第1プリント部10で1枚分のレシートをプリントするのに要する時間は、レシート長が5インチであれば、5インチ×5ips=1秒となる。この時間は、第2プリント部20によるラベルのプリント枚数にかかわらずほぼ一定である。
【0021】
第2プリント部20でのラベルプリントに要する時間は、2インチの長さのラベルを1枚分プリントする場合は2インチ×1枚×10ips=0.2秒、2インチの長さのラベルを20枚分プリントする場合は2インチ×20枚×10ips=4秒となる。レシートプリント完了からラベルプリント完了までの待ち時間は、約3秒である。
【0022】
仮に、第2プリント部20の定格プリント速度が第1プリント部10と同じ5ips(inch/sec)であれば、1枚のラベルをプリントするのに要する時間は2インチ×1枚×5ips=0.4秒、20枚のラベルのプリントに要する時間は2インチ×20枚×5ips=8秒となる。レシートプリント完了からラベルプリント完了までの待ち時間は約7秒と長い。
【0023】
以上のように、レシートプリントを第1プリント部10に割り当て、ラベルプリントをプリント速度が速い方の第2プリント部20に割り当てることにより、すべてのプリントが完了するまでの時間をできるだけ短縮できる。例えば買物客が多量のチケット等を一度にまとめて購入する場合でも、買物客がチケット等を受け取るまでの待ち時間を大幅に短縮できる。この待ち時間の短縮は、商品販売処理の効率向上にもつながる。
【0024】
レシートプリントに使用する第1プリント部10としては、1枚分のレシートをプリントするだけなので、定格プリント速度がそれほど速くないもので十分であり、その分だけプリント装置のコストを低減できる。
【0025】
一方、第1および第2プリント部10,20に互いに同じ種類の用紙11,21を装填する非用途別使用モード時は(ステップ102のNO)、第1プリント部10を指定するコマンドがホスト装置51から入力された場合に(ステップ106のYES)、同ホスト装置51から入力されるプリントデータ(RAM32内のプリントデータ)のデータ量を検出する(ステップ109)。この検出データ量が一定量未満であれば(ステップ110のYES)、プリント遅れの心配はないとの判断の下に、RAM32内のプリントデータのプリントを第1プリント部10でサーマル用紙11にプリントする(ステップ111)。ただし、検出データ量が一定量以上であれば(ステップ110のNO)、できるだけ早期にプリントを完了したいとの判断の下に、RAM32内のプリントデータを第2プリント部20のRAM42に転送する(ステップ107)。そして、RAM42内のプリントデータを第2プリント部20で連続ラベル用紙21にプリントする(ステップ108)。
【0026】
また、非用途別使用モード時(ステップ102のNO)、第2プリント部20を指定するコマンドがホスト装置51から入力された場合には(ステップ106のNO)、第1プリント部10のRAM32内のプリントデータを第2プリント部20のRAM42に転送する(ステップ107)。そして、RAM42内のプリントデータを第2プリント部20で連続ラベル用紙21にプリントする(ステップ108)。
【0027】
以上のように、非用途別使用モード時はできるだけ速度優先のプリントを行うことができる。速度優先といっても、データ量が少なければ第1プリント部10によるプリントも行うので、第2プリント部20の用紙21だけでなく第1プリント部10の用紙11も無駄なく使用することができる。第2プリント部20の用紙21のみ頻繁に補充しなければならないといった面倒な作業を回避できる。
【0028】
なお、上記実施形態および各変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態や変形は、発明の範囲は要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0029】
1…プリント装置、2,3…排出口、10…第1プリント部、11…用紙、12…搬送ローラ、14…サーマルヘッド、15…プラテンローラ、16…カッタ、20…第2プリント部、21…用紙、22…搬送ローラ、24…サーマルヘッド、25…プラテンローラ、26…カッタ、30…CPU、40…CPU、51…ホスト装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のプリント速度を有する第1プリント部と、
前記第1プリント部より速いプリント速度を有する第2プリント部と、
レシート用プリントデータのプリントを前記第1プリント部に割り当て、ラベル用プリントデータのプリントを前記第2プリント部に割り当てる制御手段と、
を備えることを特徴とするプリント装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第1および第2プリント部を用途別に使用する用途別使用モードの設定時、前記レシート用プリントデータのプリントを前記第1プリント部に割り当て、前記ラベル用プリントデータのプリントを前記第2プリント部に割り当てる、
ことを特徴とする請求項1記載のプリント装置。
【請求項3】
前記第1プリント部は、前記レシート用プリントデータをサーマル用紙にプリントし、そのプリント後のサーマル用紙をカットして排出する、
前記第2プリント部は、前記ラベル用プリントデータを連続ラベル用紙にプリントし、そのプリント後の連続ラベル用紙をカットして排出する、
ことを特徴とする請求項2記載のプリント装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記用途別使用モードの非設定時、前記第1プリント部が指定された場合に、プリントデータのデータ量を検出し、その検出データ量が一定量未満であればそのプリントデータのプリントを前記第1プリント部に割り当て、前記検出データ量が前記一定量以上であれば前記プリントデータのプリントを前記第2プリント部に割り当てるとともに、前記第2プリント部が指定された場合は前記プリントデータのプリントを前記第2プリント部に割り当てる、
ことを特徴とする請求項2記載のプリント装置。
【請求項5】
前記制御手段は、第1プリント部のマイクロコンピュータおよび第2プリント部のマイクロコンピュータである、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか記載のプリント装置。
【請求項6】
所定のプリント速度を有する第1プリント部、この第1プリント部より速いプリント速度を有する第2プリント部、およびコンピュータを備えたプリント装置において、
前記コンピュータに、
レシート用プリントデータのプリントを前記第1プリント部に割り当て、ラベル用プリントデータのプリントを前記第2プリント部に割り当てる機能、
を実現させることを特徴とするプリント装置の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−52646(P2013−52646A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193821(P2011−193821)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】