説明

プリント配線基板の製造方法

【課題】一枚の基板10から作製できる製品の数を増加させ、生産効率を向上させるプリント配線基板の製造方法を提供する。
【解決手段】絶縁性基材11の両主面に導電層12が形成された基板10の一方主面に、基板10の外縁Pよりも外側にキャリアフィルム20の外縁Qが位置するように、キャリアフィルム20を張り付ける工程と、基板10の他方主面に、基板10の外縁Pよりも外側にレジスト層30の外縁Rが位置するとともに、キャリアフィルム20の外縁Qよりも内側にレジスト層30の外縁が位置するように、レジスト層30を形成する工程と、レジスト層30が形成された基板の導電層12の所定領域をエッチング処理により除去して回路パターン41を形成する工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト形成工程を含むプリント配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁性基材に銅箔を張りあわせた銅張積層板(CCL:Copper Clad Laminated)に層間導通部分を形成する場合において、層間導通部分となる開口部の銅箔をエッチングした後に、絶縁層のみをレーザで開口させるLHV(Laser Via Hole)法が知られている。この手法において、銅箔のエッチングは、銅張積層板の主面にレジストを形成した後に、所定部分のレジストを除去し、露出した銅箔を薬液で除去するサブトラクティブ法により行われている。(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】フジクラ技法第107号,佐々木健紘ら著「微細両面FPC」株式会社フジクラ,2004年10月,p.48〜51
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このサブトラクティブ法におけるレジスト形成工程において、レジストの外縁と銅張積層板の外縁とが揃うようにレジストを形成することは極めて難しく、さらに、銅張積層板からはみ出したレジストが導電性回路や装置に付着すると、不具合を引き起こすため、一般には、レジストの外縁が銅張積層板の外縁よりも内側に位置するように、銅張積層板よりもレジストを小さく形成している。
しかしながら、銅張積層板よりもレジストを小さく形成すると、一枚の銅張積層板から作製できる製品の数が減少し、生産効率が低下するという問題があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、レジストが基板や装置に付着する不具合を防止しつつも銅張積層板の全面にレジストを形成することにより、一枚の基板から作製できる製品の数を増加させ、生産効率を向上させるプリント配線基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、絶縁性基材の両主面に導電層が形成された基板の一方主面に、前記基板の外縁よりも外側にキャリアフィルムの外縁が位置するように、前記キャリアフィルムを張り付ける工程と、前記基板の他方主面に、前記基板の外縁よりも外側にレジスト層の外縁が位置するとともに、前記キャリアフィルムの外縁よりも内側に前記レジスト層の外縁が位置するように、前記レジスト層を形成する工程と、前記レジスト層が形成された基板の導電層の所定領域をエッチング処理により除去して回路パターンを形成する工程と、を有するプリント配線基板の製造方法により、上記課題を解決する。
【0007】
上記発明において、前記エッチング処理により導電層が除去された所定領域の前記絶縁性基材をレーザで除去して層間導通穴を形成する工程をさらに備えることができる。
【0008】
上記発明において、形成された前記層間導通穴にめっき層を形成するめっき工程をさらに備えることができる。
【0009】
上記発明において、前記めっき工程の前に、前記キャリアフィルムを前記基板から除去する工程をさらに備えることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、基板の一方主面に、基板の外縁よりも外側にキャリアフィルムの外縁が位置するようにキャリアフィルムを張り付け、基板の他方主面に、基板の外縁よりも外側にレジスト層の外縁が位置するとともに、キャリアフィルムの外縁よりも内側にレジスト層の外縁が位置するようにレジスト層を形成するので、基板主面の全面にレジストを形成することができる。その結果、一枚の基板から作製できる製品の数を増加させ、生産効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】本発明の実施形態に係るプリント配線板の製造工程図(その1)である。
【図1B】図1Aに示す基板のIB-IB線に沿う断面図である。
【図2A】本発明の実施形態に係るプリント配線板の製造工程図(その2)である。
【図2B】図2Aに示す基板のIIB-IIB線に沿う断面図である。
【図3A】本発明の実施形態に係るプリント配線板の製造工程図(その3)である。
【図3B】図3Aに示す基板のIIIB-IIIB線に沿う断面図である。
【図4A】本発明の実施形態に係るプリント配線板の製造工程図(その4)である。
【図4B】図4Aに示す基板のIVB-IVB線に沿う断面図である。
【図5A】本発明の実施形態に係るプリント配線板の製造工程図(その5)である。
【図5B】図5Aに示す基板のVB-VB線に沿う断面図である。
【図6A】本発明の実施形態に係るプリント配線板の製造工程図(その6)である。
【図6B】図6Aに示す基板のVIB-VIB線に沿う断面図である。
【図7A】本発明の実施形態に係るプリント配線板の製造工程図(その7)である。
【図7B】図7Aに示す基板のVIIB-VIIB線に沿う断面図である。
【図8A】本発明の実施形態に係るプリント配線板の製造工程図(その8)である。
【図8B】図8Aに示す基板のVIIIB-VIIIB線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の第1実施形態に係るプリント配線基板の製造方法を説明する。本実施形態のプリント配線基板の製造方法は、少なくともレジスト形成工程を含む。
【0013】
ここでは、レーザビアホール(LHV:Laser Via Hole)を備えたプリント配線基板を製造する方法を例にして説明するが、インタースティシャルビアホールなどの他の態様のビアホールを有するプリント配線基板の製造方法にも適用できる。
【0014】
まず、図1A及び図1Bに示す基板10を準備する。本実施形態で用いる基板10は、厚さが10μm〜250μmの可撓性を有するポリイミド(PI)などの絶縁性基材11の両主面に、3μm〜20μmの銅箔などの導電層12が張り付けられている。絶縁性基材11としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)やポリエステル(PE)のシートも用いることができる。なお、本例では、絶縁性基材11の両主面に導電層12が張り付けられている基板10を用いるが、絶縁性基材11の一方主面に導電層12が張り付けられている基板10を用いてもよい。
【0015】
次に、図2A及び図2Bに示すように、キャリアフィルム20を基板10に貼りつける。本実施形態におけるキャリアフィルム20は、厚さが25μm〜100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリイミド(PI)フィルムの主面に、層厚が10μm〜100μmの熱可塑性の粘着層が形成されているものを用いる。粘着層の粘着性の強さは適宜設定することができる。
【0016】
本実施形態では、基板10の一方主面(図中下側の主面)に、基板10の外縁Pよりも外側にキャリアフィルム20の外縁Qが位置するように、キャリアフィルム20を基板10に張り付ける。つまり、同図に示すように、基板10の外縁Pがキャリアフィルム20の外縁Qの内側に位置し、基板10の外縁Pをキャリアフィルム20の外縁Qが取り囲んでいる。
【0017】
特に限定されないが、キャリアフィルムの外縁Qと基板10の外縁Pとの距離が2mm〜25mmとすることができる。なお、キャリアフィルム20の外縁Qと基板10の外縁Pとの距離は辺ごとに異なるようにしてもよい。
【0018】
続いて、図3A及び図3Bに示すように、レジスト層30を形成する。レジスト層30は、感光性のドライフィルムを用いて形成してもよいし、液状ソルダレジストを用いて形成してもよい。特に限定されないが、レジスト層30の厚さは10μm〜100μmとすることができる。
【0019】
本実施形態では、基板10の他方主面(図中上側の主面)に、基板10の外縁Pよりも外側にレジスト層30の外縁Rが位置するとともに、キャリアフィルム20の外縁Qよりも内側にレジスト層30の外縁Rが位置するように、レジスト層30を形成する。つまり、同図に示すように、レジスト層30の外縁Rがキャリアフィルム20の外縁Qの内側に位置するとともに、基板10の外縁Pがレジスト層30の外縁Rの内側に位置する。このように形成されたレジスト層30は基板10を覆っており、このレジスト層30の外縁Rをキャリアフィルム20が取り囲んでいる。なお、基板10の外縁Pを二点鎖線で示している。
【0020】
本実施形態においては、レジスト層30の外縁Rがキャリアフィルム30の外縁Qの内側に位置するので、レジスト層30がはみだして回路パターン41や図外の装置などに付着することが防止できる。その結果、レジスト層30を基板10の全体を覆うように形成することができるので、基板10全体を用いて回路を作成することができる。
【0021】
特に限定されないが、レジスト層30の外縁Rと基板10の外縁Pとの距離を2mm〜20mmとすることができる。なお、レジスト層30の外縁Rと基板10の外縁Pとの距離は辺ごとに異なるようにしてもよい。
【0022】
次に、図4A及び図4Bに示すように、まず、層間導通穴40を設ける位置にレーザのマスクとなる穴パターン(コンフォーマルマスク)をエッチング法で作成する。具体的に、所望の穴パターンが描画されたフォトマスクフィルムなどの部材を、基板10の上又は下に載置し、紫外線で露光し、アルカリ性水溶液で現像処理することによりレジスト層30の所定部分を除去する。フォトマスクフィルムは、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂製又はガラス製である。
【0023】
次に、図5A及び図5Bに示すように、所定の薬液を用いたエッチング処理により、層間導通穴40に対応する所定領域の導電層12を除去する。
【0024】
続いて、図6A及び図6Bに示すように、レジスト層30を除去する。
【0025】
その後、図7A及び図7Bに示すように、LVH(Laser Via Hole)法を用いて、エッチング処理により導電層12が除去された所定領域の絶縁性基材11をレーザで除去して層間導通穴40を形成する。具体的には、フォトリソグラフィー処理により導電層12に形成した層間導通穴40用の窓穴を、導電層12(銅箔)をマスクとしてレーザ加工により絶縁性基材11(ポリイミド層)の穴加工を行う。
【0026】
後述するめっき工程を開始する前に、キャリアフィルム20を基板10から除去する。キャリアフィルム20にめっき層50が形成されるのを防止するためである。キャリアフィルム20を除去する手法は特に限定されず、ローラにキャリアフィルム20を巻き取りながら除去してもよい。
【0027】
最後に、図8A及び図8Bに示すように、層間導通穴40内部を含む基板10の表面にめっき層50を形成する。めっき層50の形成手法は特に限定されず、パネルめっき法やパターンめっき法を用いることができる。
【0028】
なお、本実施形態では、層間導通のめっき工程後に層間導通穴40用のランドを含む所望の回路パターンの形成が通常の手法により行われる。
【0029】
めっき形成後に回路パターンを形成する場合においても、層間導通穴40の穴パターンを形成する場合と同様に、上述の手法に従いキャリアフィルム20を基板に貼り付け、基板10の外縁Pよりも外側にレジスト層30の外縁Rが位置するとともに、キャリアフィルム20の外縁Qよりも内側にレジスト層30の外縁Rが位置するようにレジスト層30を形成してもよい。
【0030】
以上に説明した本実施形態に係るプリント配線基板の製造方法によれば、基板10の一方主面に、基板10の外縁Pよりも外側にキャリアフィルム20の外縁Qが位置するようにキャリアフィルム20を張り付け、基板10の他方主面に、基板10の外縁Pよりも外側にレジスト層30の外縁Rが位置するとともに、キャリアフィルム20の外縁Qよりも内側にレジスト層30の外縁Rが位置するようにレジスト層30を形成するので、レジスト層30の外縁Rが基板10の外縁Pよりはみ出してもキャリアフィルム20の外縁Qの近傍で受容でき、これにより、基板主面の全面にレジストを形成することができる。その結果、一枚の基板から作製できる製品の数を増加させ、生産効率を向上させることができる。
【0031】
また、本実施形態のように、層間導通穴40の形成位置に合せてエッチング処理により導電層12の所定領域を除去し、この所定領域の絶縁性基材11をレーザで除去して層間導通穴40を形成する工程を有する場合には、導電層11と絶縁性基材12に穴をあける工程とを別々に行う必要がある。具体的には、層間導通穴40を回路形成に先立ってフォトリソグラフィー処理による穴パターン(コンフォーマルパターン)を形成する必要があるが、フォトリソグラフィー処理において形成されたレジスト層30がはみ出すと、基板10や装置に付着して不具合の原因となる。本実施形態では、キャリアフィルム20の外縁Qよりも内側にレジスト層30の外縁Rが位置するようにレジスト層30を形成するので、上述のとおり生産効率を向上させつつ、さらに不具合の原因となるレジスト層30のはみ出しによる歩留まりの悪化を防止することができる。
【0032】
ところで、従来の手法のように、レジスト層の外縁が基板の外縁よりも内側に位置するように、レジスト層を基板よりも小さく形成した場合は、レジスト層の外縁と基板の外縁の間は基板の導電層(銅箔)が露出している。この露出した導電層(銅箔)はエッチング処理で除去されるため、この領域では下層の絶縁性基材が露出している。その後、層間導通のため又は導電性皮膜の付与のためにめっき処理を行うと、露出していた絶縁性基材の表面にめっき層が形成される。絶縁性基材上に形成されためっき層は不安定であり、めっき金属が剥がれて散乱するという不都合が生じる。また、部分的に絶縁性基材が露出した状態でめっき処理を行うと、基板10の端部などの粗部に電流が集中するため、基板の端部のめっき膜厚が厚くなり、めっき膜厚が不均一となるなどの不都合が生じる。
【0033】
これに対し、本実施形態では、基板10の他方主面に、基板10の外縁Pよりも外側にレジスト層30の外縁Rが位置するとともに、キャリアフィルム20の外縁Qよりも内側にレジスト層30の外縁Rが位置するようにレジスト層30を形成するので、工程中において絶縁性基材が露出することがないため、めっき工程において均等な膜厚のめっき層50を形成することができる。
【0034】
また、従来の手法では、不具合の原因となるレジスト層の外縁と基板の外縁に挟まれた部分(基板)を切り落とすことが行われている。このように切り落とされるレジスト層の外縁と基板の外縁に挟まれた部分(基板)からは製品を作製することができない。その結果、一枚の基板から作製できる製品の数が減少し、生産効率を低下させていた。
【0035】
これに対し、本実施形態では、レジスト層30の外縁Rが、キャリアフィルム20の外縁Qと基板10の外縁Pとの間に位置するようにしたため、不具合の原因となるレジスト層30の外縁Rと基板の外縁に挟まれた部分(基板)を切り落とすことなく、一枚の基板から作製できる製品の数を増加させ、生産効率を向上させることができる。
【0036】
さらに、本実施形態では、不具合の原因となるレジスト層30の外縁Rと基板10の外縁Pに挟まれた部分がそもそも発生しないので、従来の手法のように、この部分をエッチングするための薬液、及びこの部分をめっきするためのめっき液の浪費を防止することができる。
【0037】
また、本実施形態では、めっき工程の前にキャリアフィルム20を基板10から除去するので、キャリアフィルム20にめっき層が形成されることによるめっき液の浪費を防止することができる。
【0038】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0039】
10…基板
11…絶縁性基材
12…導電層
20…キャリアフィルム
30…レジスト層,ドライレジスト
40…層間導通穴
50…めっき層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基材の両主面に導電層が形成された基板の一方主面に、前記基板の外縁よりも外側にキャリアフィルムの外縁が位置するように、前記キャリアフィルムを張り付ける工程と、
前記基板の他方主面に、前記基板の外縁よりも外側にレジスト層の外縁が位置するとともに、前記キャリアフィルムの外縁よりも内側に前記レジスト層の外縁が位置するように、前記レジスト層を形成する工程と、
前記レジスト層が形成された基板の導電層の所定領域をエッチング処理により除去して回路パターンを形成する工程と、を有することを特徴とするプリント配線基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプリント配線基板の製造方法において、
前記エッチング処理により導電層が除去された所定領域の前記絶縁性基材をレーザで除去して層間導通穴を形成する工程をさらに有することを特徴とするプリント配線基板の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のプリント配線基板の製造方法において、
形成された前記層間導通穴にめっき層を形成するめっき工程をさらに有するプリント配線基板の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のプリント配線基板の製造方法において、
前記めっき工程の前に、前記キャリアフィルムを前記基板から除去する工程をさらに有するプリント配線基板の製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【公開番号】特開2011−129614(P2011−129614A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284847(P2009−284847)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】