説明

プリント配線基板装置

【考案の詳細な説明】
[考案の目的]
【0001】
【産業上の利用分野】この考案は、密閉形の筐体に収納されるのに好適なプリント配線基板装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、電子機器に収納されるプリント配線基板は、自然空冷あるいは強制空冷によって、基板上に搭載された回路部品の温度上昇を押え、回路が常に正常動作するように構成されている。
【0003】しかし、屋外に設置され風雨にさらされた状態で使用されたり、あるいは航空機や船舶等に搭載され、例えば摂氏−54度から+71度程度までの厳しい環境条件下で使用される電子機器では、図5に示すように電子回路が密閉形筐体内に組込まれ、筐体を強制空冷で冷却することによって、内部回路部品の温度上昇を押えるように構成されている。
【0004】即ち、図5は従来のプリント配線基板装置を搭載した電子機器を示すもので、IC等の回路部品1を搭載した多数のプリント配線基板2はコネクタ21を介して、筐体3内に着脱自在に多数収納される。プリント配線基板2では1枚当り例えば20〜30W程度の電力が消費され、回路部品1で発生した熱は図6(a)及び(b)にも示すように、接触状態にあるアルミニューム製の冷却板4から周縁部に取付けられた基板ホルダー5を経て筐体3へと熱伝導される。筐体3の両側には内部に放熱フィンを有した冷却路31が形成され、強制空冷用のファン6による送風によって冷却される。なお、32は筐体3の上面カバーである。
【0005】基板ホルダー5はプリント配線基板2が筐体3に収納された状態で、冷却ガイド33に密着し、回路部品1からの熱を冷却ガイド33から筐体3全体に伝導する機能を有する。即ち、図7に要部を拡大して示すように、ねじ棒51を回転させることによって、両端側の第1のテーパブロック52と中央で冷却板4に接続固定された第2のテーパブロック53とはテーパ面(摺動面)に沿って相対移動するから、第1のテーパブロック52では冷却ガイド33のレール33aを押圧して固定(ロック)され、熱伝導が行われる。
【0006】このように従来のプリント配線基板装置は、回路部品1で発生する熱は冷却板4を介して基板ホルダー5,冷却ガイド33に順次伝導される。しかしながら、アルミニューム製の冷却板4自体は熱伝導体ではあるものの、図6(a)及び(b)に示すように、プリント配線基板2面に多数搭載された回路部品1の配置パターンに応じて、また回路部品1の各リード線を避けるように複雑な打抜きパターンとなっている。従って、基板ホルダー5までの熱伝導路の中には幅が狭く熱が十分伝導されない通路も発生し、各回路部品1で発生する熱を効率良く基板ホルダー5まで伝導させることは困難であった。従って、回路部品1で発生する熱が部分的にその取付け位置付近に滞留し、異常温度状態を形成し良好な回路動作が保障されなくなるという欠点があった。
【0007】
【考案が解決しようとする課題】従来のプリント配線基板装置は、熱伝導体である冷却板が、複雑な切り欠き形状となることから、回路部品で発生する熱を効率的に基板ホルダーに伝導されないという欠点があり、改善が要望されていた。
【0008】そこでこの発明は、簡単な構成で、回路部品で発生した熱を効率良く基板ホルダーに伝導することによって、効果的な冷却が可能なプリント配線基板装置を提供することを目的とする。
【0009】[考案の構成]
【0010】
【課題を解決するための手段】この考案によるプリント配線基板装置は、一方の面に回路部品が接触して配置された冷却板と、この冷却板の他方の面に接するプリント配線基板とを具備したプリント配線基板装置において、前記冷却板の前記回路部品の下方に位置する部分に溝を形成し、前記回路部品が発生した熱を伝えるヒートパイプを前記溝内を通してループ状に設けたことを特徴とする。
【0011】
【作用】この考案によるプリント配線基板装置は、冷却板の回路部品の下方に位置する部分に溝を形成し、回路部品が発生した熱を伝えるヒートパイプを溝内を通してループ状に設けている。したがって、回路部品で発生した熱をむらなく、速やかに筐体などへ伝導することができ、筐体等を介して効果的に冷却される。また、ヒートパイプの実装が容易で、実装密度が低下するようなこともない。
【0012】
【実施例】以下、この考案によるプリント配線基板装置の一実施例を図1ないし図4を参照し説明する。なお、図5ないし図7に示した従来の構成と同一構成には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0013】即ち、図1及び図2に示すように、プリント配線基板2上の回路部品1で発生した熱は、アルミニューム製の冷却板4及びプリント配線基板2に配線されたヒートパイプ7を介して、基板2の周縁部に取付けられた基板ホルダー5に伝導されるように構成配置される。従って、回路部品1で発生した熱はその下層の冷却板4を介して直ちにヒートパイプ7に伝導され、ヒートパイプ7は周知のように、極めて良好な熱移動機能を有するので、冷却板4からの熱は速やかに基板ホルダー5に伝導される。なお、この実施例では、ヒートパイプ7と回路部品1との間は従来と同様に、冷却板4を介在させたことによって、部品1と冷却板5との接触面積は確保されて良好な熱伝導が行われる。
【0014】また、ヒートパイプ7は図3に拡大して示したように、回路部品1下の冷却板4に形成された溝内に配管され、はんだ付けあるいは熱伝導性接着剤で固定される。ヒートパイプ7が取付けられた冷却板4は表面全体を絶縁処理すべく例えばアルマイト処理により酸化膜が形成される。ヒートパイプ7は冷却対象の回路部品1の大きさ等に応じてその太さや種類を選択使用できる。しかし、発熱部からの熱を効率良く周縁部の基板ホルダー5に伝導させるためには、図4に示すようにループを形成するように配設し、ヒートパイプ7内の作動液が受熱部で気化して蒸気になり、それが循環して放熱部で冷却されて液化し、再び受熱部で気化するように、複数の逆止弁71を設け回路部品1側部分の受熱部と基板ホルダー5に接続部分の放熱部の部分との間をフロン等の冷媒が円滑に循環作動するように構成される。
【0015】もっとも、基板ホルダー5の放熱部では作動液が凝縮して液化するときに、吸引力を生じ負の蒸気圧となることから、この蒸気圧及び吸引力と前記逆止弁71との相互作用により、ヒートパイプ7内の作動液は配設されたパイプ内を効果的に巡回する。
【0016】以上のように、この考案によるプリント配線基板装置は、簡単な構成により、電子部品等で発生する熱が効果的に基板ホルダーまで伝導されるので、例えば密閉形電子機器等に収納使用して、顕著な効果が得られる。
【0017】
【考案の効果】この考案によるプリント配線基板装置は、簡単な構成で効果的な熱伝導が可能となり、良好に放熱されるものであるから、実用に際し顕著な効果が得られる。また、ヒートパイプの実装が容易で、実装密度が低下するようなこともない。
【図面の簡単な説明】
【図1】この考案によるプリント配線基板装置の一実施例を示す一部切り欠き平面図である。
【図2】図1に示す装置のA−A線断面図である。
【図3】図2に符号Bで示す部分の拡大図である。
【図4】図1に示す装置のヒートパイプの配設状態を示す平面図である。
【図5】従来のプリント配線基板装置を搭載した電子機器を示す分解斜視図である。
【図6】図6(a)は図5に示すプリント配線基板装置の平面図、図6(b)は図6(a)のC−C線断面図である。
【図7】図5に示すプリント配線基板装置の基板ホルダーを示す拡大斜視図である。
【符号の説明】
1…回路部品
2…プリント配線基板
3…筐体
4…冷却板
5…基板ホルダー
7…ヒートパイプ

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 一方の面に回路部品が接触して配置された冷却板と、この冷却板の他方の面に接するプリント配線基板とを具備したプリント配線基板装置において、前記冷却板の前記回路部品の下方に位置する部分に溝を形成し、前記回路部品が発生した熱を伝えるヒートパイプを前記溝内を通してループ状に設けたことを特徴とするプリント配線基板装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【登録番号】第2551821号
【登録日】平成9年(1997)6月27日
【発行日】平成9年(1997)10月27日
【考案の名称】プリント配線基板装置
【国際特許分類】
【出願番号】実願平3−37844
【出願日】平成3年(1991)3月29日
【公開番号】実開平4−117483
【公開日】平成4年(1992)10月21日
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【参考文献】
【文献】実開 昭51−6461(JP,U)
【文献】実開 昭62−4191(JP,U)
【文献】実開 昭58−180692(JP,U)