説明

プリント配線板の製造方法及びプリント配線板

【課題】特別な装置や工程を追加することなく外形加工精度を検査することができ、更に、外形加工の不具合要因を特定し、その不具合の程度を調査することができるプリント配線板の製造方法及びプリント配線板を提供する。
【解決手段】コの字状の複数の導体10,20を、開口部10f,20fを同じ方向にして入れ子状に配置した導体回路100を形成し、前記導体10,20のそれぞれの開口部側の両端に配置された端子用パッド12,22を設ける配線パターン形成工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板の加工後に効率的に検査可能となるプリント配線板の製造方法及びプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機、デジタル家電などの電子機器の小型化を実現するために、プリント配線板の高密度実装技術が不可欠となっている。様々な部品への対応、他の基板又は部品との勘合など各種の要求に応えるために、プリント配線板への外形寸法、外形と導体回路との位置、外形と穴との位置などの外形加工精度の向上が必要となっている。
【0003】
プリント配線板の外形加工後の仕上がり検査は、実際に仕上がり寸法を3次元測定機などで測定することで図面寸法を満たしているかを確認する方法がある。また、外形に対する位置ずれを電気的に検査する方法が提案されている(例えば、特許文献1、2又は3を参照。)。
【0004】
特許文献1には、1箇所にスリットをもつ環状の導電パターンと、この導電パターンの両端部にそれぞれ電気検査用の端子を備えた検査用導体部が提案されている。正しく打ち抜かれた場合は、環状の導電パターンを残して小孔が形成され、端子間で電気が流れる。打ち抜き位置が許容誤差を越えてずれた場合は、導電パターンが破断され、端子間で電流が流れない。
【0005】
特許文献2には、電気検査部の形状が異なる2種類のチェックパターンを形成しており、2種類のチェックパターンの電気検査部の通電状態を合わせて合否判定を行う検査方法が提案されている。
【0006】
特許文献3には、中央部に平行幅の非導電部を有し、該非導電部の両側に2つの導電パターンを平行に配置して、それぞれの導電パターンの上下位置に電気検査用の端子を設け、2回の打ち抜き工程での相対的なずれが許容範囲にあるかどうかを判別することができる検査用ターゲットが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭61−53964号公報
【特許文献2】特開2002−232105号公報
【特許文献3】特開2008−124327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
プリント配線板の外形加工では、外形加工精度は、外形の仕上がり寸法(以下、外形寸法と称す)、外形と導体回路との位置、外形と穴との位置、導体回路と穴との位置などの複数の要素を含んでおり、これらの要素について検査を行い、合否判定を行う必要がある。また、外形加工の初期の段階では、合否判定の他に、外形加工装置の調整を行うことを目的として、外形加工の不具合要因を特定し、その不具合の程度を調査する必要がある。
【0009】
特許文献1、2又は3に記載の発明は、外形加工の位置ずれを検出することができるが、外形寸法の異常を検出することができないという問題点があった。また、外形加工の不具合要因を特定し、その不具合の程度を検出できるものではない。外形寸法の異常を検出するためには、外形加工装置の他に前述の3次元測定機などの測定装置が必要であり、更には、製品ごとに検査プログラムを準備する必要がある。
【0010】
本発明の目的は、上述した課題である特別な装置や工程を追加することなく外形加工精度を検査することができ、更に、外形加工の不具合要因を特定し、その不具合の程度を調査することができるプリント配線板の製造方法及びプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るプリント配線板の製造方法は、コの字状の複数の導体を、開口部を同じ方向にして入れ子状に配置した導体回路の配線パターンを形成し、前記導体のそれぞれの開口部側の両端に配置された端子用パッドを設ける配線パターン形成工程を有する。
【0012】
本発明に係るプリント配線板の製造方法は、さらに、前記導体を形成する隣接する2つの辺の間に貫通孔を形成する貫通孔形成工程を前記配線パターン形成工程の後に有する。
【0013】
本発明に係るプリント配線板の製造方法は、前記貫通孔形成工程において、前記貫通孔は、最内側の前記導体のコの字状の対向する辺の間に形成されている。
【0014】
本発明に係るプリント配線板の製造方法は、前記貫通孔形成工程において、前記貫通孔は、隣接する2つの前記導体の対向する辺の間に形成されている。
【0015】
本発明に係るプリント配線板の製造方法は、前記貫通孔形成工程において、前記最内側の前記導体のコの字状の対向する辺の間に前記貫通孔を形成し、前記隣接する2つの前記導体の対向する辺の間に前記貫通孔を形成する。
【0016】
本発明に係るプリント配線板の製造方法は、前記貫通孔形成工程において、前記貫通孔の形成と同時にプリント配線板の外形加工を行う。
【0017】
本発明に係るプリント配線板の製造方法は、さらに、テスターで抵抗値を測定する抵抗値測定工程と、前記抵抗値に基づいて、外形加工精度及び外形加工の合否を判定する判定工程と、を前記貫通孔形成工程の後に順に有する。
【0018】
本発明に係るプリント配線板の製造方法は、さらに、前記導体回路部を切り離す切離し工程を前記判定工程の後に有する。
【0019】
本発明に係る電子機器の製造方法は、本発明に係るプリント配線板の製造方法で製造したプリント配線板を、電子機器に組み込む電子機器組立工程を有する。
【0020】
本発明に係るプリント配線板は、コの字状の複数の導体を、開口部を同じ方向にして入れ子状に配置した導体回路と、前記導体のそれぞれの開口部側の両側に配置された端子用パッドと、を備える。
【0021】
本発明に係るプリント配線板は、前記コの字状の導体の対向する辺が、平行である。
【0022】
本発明に係るプリント配線板は、前記コの字状の導体の対向する辺が、隣接する導体同士で平行である。
【0023】
本発明に係るプリント配線板は、前記導体の線幅が、外形加工の許容誤差以上である。
【0024】
本発明に係るプリント配線板は、さらに、前記導体を形成する隣接する2つの辺の間に貫通孔を備える。
【0025】
本発明に係るプリント配線板は、前記貫通孔の個数が、少なくとも2以上であり、他の貫通孔と対向する辺が直線部を有する。
【0026】
本発明に係るプリント配線板は、前記貫通孔は、最内側の前記導体のコの字状の対向する辺の間に形成されている。
【0027】
本発明に係るプリント配線板は、前記貫通孔は、隣接する2つの前記導体の対向する辺の間に形成されている。
【0028】
本発明に係るプリント配線板は、前記貫通孔の幅が、前記導体の線幅以上である。
【0029】
本発明に係るプリント配線板は、前記導体回路と、端子用パッドとが、テストクーポンに形成されている。
【0030】
本発明に係る電子機器は、本発明に係るプリント配線板を搭載する。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、特別な装置や工程を追加することなく外形加工精度を検査することができ、更に、外形加工の不具合要因を特定し、その不具合の程度を調査することができるプリント配線板の製造方法及びプリント配線板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施形態に係るプリント配線板の製造方法の一例を示す流れ図である。
【図2】本実施形態に係るプリント配線板の製造方法の一例を示す流れ図である。
【図3】本実施形態に係るプリント配線板の製造方法の一例を示す流れ図である。
【図4】本実施形態に係るプリント配線板の製造方法の一例を示す流れ図である。
【図5】本実施形態に係る電子機器の製造方法の一例を示す流れ図である。
【図6】本実施形態に係るプリント配線板の一例を示す正面図である。
【図7】本実施形態に係るプリント配線板の別の例を示す正面図である。
【図8】貫通孔を最内側の導体のコの字状の対向する辺の間に形成した図である。
【図9】貫通孔を隣接する2つの導体の対向する辺の間に形成した図である。
【図10】貫通孔を隣接する2つの導体の接続部導体パターンとの間に形成した図である。
【図11】貫通孔を最内側の導体のコの字状の対向する辺の間及び隣接する2つの導体の対向する辺の間に形成した図である。
【図12】外形が小さい場合の形態である。
【図13】外形が大きい場合の形態である。
【図14】外形加工の位置がずれた場合の形態である。
【図15】外形に対して第一の貫通孔の位置がずれた場合の形態である。
【図16】電子機器の一例としての携帯電話機である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。また、発明の効果を奏する限り、実施形態を変形してもよい。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0034】
図1は、本実施形態に係るプリント配線板の製造方法の一例を示す流れ図である。本実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、配線パターン形成工程S1を有する。
【0035】
配線パターンの形状について、図6を用いて説明する。図6は、本実施形態に係るプリント配線板の一例を示す正面図である。配線パターンを、コの字状の複数の導体10、20及び30を、開口部10fを同じ方向(+Y方向)にして入れ子状に形成する。また、導体10、20、30のそれぞれの開口部側10d、20d、30dの両端には、端子用パッド12、22、32を設ける。
【0036】
コの字状とは、図6の導体10で説明すると、導体の対向する辺10aと、導体の対向する辺10aの対向する一端部同士を導体パターンで接続した接続部導体パターン10cとを有する形状である。ここで、コの字状は、略コの字状を包含する。すなわち、対向する辺10a、20a、30aをY軸に対して平行に配置(導体10を参照。)にしてもよいし、傾斜に配置(導体20及び導体30を参照。)していてもよい。また、接続部導体パターン10c、20c、30cを直線(導体10及び導体30を参照。)としてもよいし、湾曲(導体20を参照。)としてもよい。
【0037】
コの字状の導体10は、接続部導体パターン10cと対向する側に開口部10fを有する。この開口部10fでは、開口部側導体パターン10dが、入れ子の外側に開くように配置されていることが好ましい。このように配置することで、開口部側導体パターン10dの両端に配置された端子用パッド12間の距離を確保することができ、導体10の通電状態を検査することができる。
【0038】
導体の個数は、本発明の効果を奏する限り、複数であれば、その個数に制限されない。形成する導体の個数が増えると、後述する貫通孔を形成した時、導体及び貫通孔の位置関係に基づいて、複数の外形加工の不具合要因を特定することができる。
【0039】
本実施形態に係るプリント配線板の製造方法では、配線パターン形成工程は、その方式、プロセスに制限されない。更に、プリント配線板の材料は、本発明の効果を奏する限り制限されない。導体は、銅、金、ニッケル、はんだなどの公知の導電材料を使用することができる。基材は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエステル樹脂などの樹脂、紙又はガラスに前記樹脂をコーティングして導体箔と共に硬化した積層板など公知の絶縁基板を使用することができる。導体の線幅aは、外形加工の許容誤差以上とすることが好ましい。
【0040】
図2は、本実施形態に係るプリント配線板の製造方法の一例を示す流れ図である。本実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、貫通孔形成工程S2を配線パターン形成工程S1の後に有する。
【0041】
貫通孔形成工程S2では、貫通孔を、導体を形成する隣接する2つの辺の間に形成する。導体を形成する隣接する2つの辺の間とは、例えば、図6において、最内側の導体10のコの字状の対向する辺10aと10aとの間、隣接する2つの導体10、20の対向する辺10aと20aとの間、隣接する2つの導体10、20の接続部導体パターン10cと20cとの間、隣接する2つの導体20、30の対向する辺20aと30aとの間である。
【0042】
図8は、貫通孔を最内側の導体のコの字状の対向する辺の間に形成した図である。本実施形態に係るプリント配線板の製造方法では、貫通孔形成工程S2において、第一の貫通孔51を、最内側の導体10のコの字状の対向する辺10aの間に形成することが好ましい。このように形成することにより、導体10と第一の貫通孔51との位置関係に基づいて、外形加工の位置ずれを検出することができる。また、第一の貫通孔51は、プリント配線板を筐体などの装置に固定するための取り付け穴や部品実装位置を割り出すための基準穴としてもよい。
【0043】
図9は、貫通孔を隣接する2つの導体の対向する辺の間に形成した図である。本実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、貫通孔形成工程S2において、第二の貫通孔52(52a、52b)を、隣接する2つの導体10及び20の対向する辺10a及び20aの間に1つずつ形成することが好ましい。このように形成することにより、コの字状の導体の対向する辺10a及び20aと貫通孔52a及び52bとの位置関係に基づいて、外形寸法の異常及び外形加工の位置ずれの度合いを検出し、外形加工精度をより確実に判別することができる。
【0044】
図10は、貫通孔を隣接する2つの導体の接続部導体パターンの間に形成した図である。第三の貫通孔53を、隣接する2つの導体10及び20の接続部導体パターン10c及び20cの間に形成してもよい。これにより、Y軸方向のずれを検出することができる。第三の貫通孔と、第一及び第二の貫通孔とを組み合わせることで、外形加工の不具合要因を特定することができる。
【0045】
図11は、貫通孔を最内側の導体のコの字状の対向する辺の間及び隣接する2つの導体の対向する辺の間に形成した図である。図11に示すように、貫通孔形成工程S2において、最内側の導体10のコの字状の対向する辺10aの間に第一の貫通孔51を形成し、隣接する2つの導体10及び20の対向する辺10a及び20aの間に第二の貫通孔52を形成することが好ましい。ここで、第一の貫通孔51と、第二の貫通孔52(52a、52b)とを形成する順は問わない。同時に形成してもよいし、外形加工を2回に分けて行うときには、1回目に第一の貫通孔51を形成し、2回目に第二の貫通孔52を形成してもよく、1回目に第二の貫通孔52を形成し、2回目に第一の貫通孔51を形成してもよい。
【0046】
このように形成することで、それぞれの貫通孔の検出する対象を分担させて、複数の外形加工精度を検出することができる。例えば、第一の貫通孔51は外形加工の位置ずれを検出することを対象とし、第二の貫通孔52は外形寸法の異常を検出することを対象とすることで、プリント配線板の外形寸法の異常及び外形加工の位置ずれを同時に検出することができる。また、外形加工を2回以上で行う場合においても、導体及び貫通孔の位置関係に加えて、貫通孔同士の位置関係に基づいて、相対的なずれを検出することができる。
【0047】
第一の貫通孔51を、円形として最内側の導体10のコの字状の対向する辺10aに接するように形成し、かつ、第二の貫通孔52を、導体の対向する辺と平行な辺を有した形状として導体10、20の対向する辺10a、20aに沿うように形成することが特に好ましい。導体の対向する辺と平行な辺を有した形状は、例えば、長軸を導体の対向する辺と平行な辺とした長円形、矩形である。このように形成することで、第一の貫通孔51と、導体10との位置関係に基づいて、外形加工の位置精度及び穴加工の位置精度を検出し、第二の貫通孔52と、導体10及び20との位置関係に基づいて、外形寸法の精度を検出することができる。これにより、効率的に外形加工精度の複数の要素を検出することができ、更に、外形加工の不具合要因を特定することができる。
【0048】
また、2組の導体回路100を、それぞれのコの字の開口部の方向が直交するよう配置すると、X軸方向、Y軸方向のずれをそれぞれ独立に検出することができる。
【0049】
貫通孔形成工程S2において、貫通孔の形成と同時にプリント配線板の外形加工を行うことが好ましい。これにより、プリント配線板の外形精度を向上させることができる。なお、本実施形態では貫通孔を形成する方式、装置に制限されない。例えば、プリント配線板の外形加工を行うルーター装置、プレス装置などの公知の外形加工装置を使用することができる。
【0050】
図3は、本実施形態に係るプリント配線板の製造方法の一例を示す流れ図である。本実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、抵抗値測定工程S3と、判定工程S4と、を貫通孔形成工程S2の後に順に有する。
【0051】
抵抗値測定工程S3では、端子用パッドにテスターを接続し、抵抗を測定する。本実施形態では、テスターは、所定値以上の抵抗変化を確認できるものであれば、抵抗値を測定する測定方式、測定器を問わないが、4端子測定可能な測定装置を用いることが、作業効率の点から好ましい。
【0052】
判定工程S4では、抵抗値測定工程S3の測定した抵抗値に基づいて外形加工精度及び外形加工の合否を判定する。
【0053】
本実施形態では、抵抗値の絶対値が確認できればよく、判定の基準となる導体の抵抗値である基準値R0の設定方法は問わない。例えば、基準値R0は次のように設定することができる。
【0054】
基準値R0は、プリント配線板の設計値から算出した導体の抵抗の絶対値Rとしてもよい。導体の抵抗の絶対値Rは、当該導体の抵抗率ρ、当該導体の長さL、当該導体の幅W及び当該導体の厚さtを用いて式(1)によって算出することができる。
【0055】
また、導体の抵抗の基準値R0は、貫通孔を形成する前に測定した導体の抵抗値としてもよい。貫通孔を形成する前の導体の抵抗値を利用する場合には、配線パターン形成工程S1と貫通孔形成工程S2との間に基準値測定工程を設けて各導体の抵抗値を測定して各導体の抵抗の基準値R0とする。この場合は、抵抗の相対値、すなわち、抵抗値の変化を測定してもよい。
【0056】
抵抗値Rはプリント配線板の設計値から求める場合は、以下の式から算出できる。
R=ρ×L/(W×t) (1)
(式中Rは抵抗[Ω]、ρは導体の抵抗率[Ωm]、Lは導体の長さ、Wは導体の幅[m]、tは導体の厚さ[m]を示す。)
【0057】
判定工程S4では、設定した基準値R0と抵抗値測定工程S3で測定した抵抗値Rとの差に基づいて外形加工精度及び外形加工の合否を判定することができる。例えば、導体の線幅と外形加工の許容誤差とを同等にした場合は、外形加工精度が外形加工の許容誤差を超えると、通電がなくなることで不合格の判定となる。導体の線幅を外形加工の許容誤差より太くした場合は、抵抗値Rが、基準値R0と比較して一定値以上上昇することで不合格の判定となる。
【0058】
以下、判定工程について図7及び図11〜15を用いて詳細に説明する。
【0059】
説明に用いるプリント配線板は、図7に示すプリント配線板のように導体を2個とした。ここで、外形寸法公差を設計値±0.10mm、外形加工の位置ずれ許容値を0.10mm、第一の貫通孔51と外形とのずれ許容値を0.15mmとする。さらに、導体10及び20は、材質を銅とし、抵抗率ρを1.67×10−8Ωm、厚さtを30μmとした。また、導体10及び20の線幅aは、第一の貫通孔51と外形とのずれ許容値である0.15mm以上とするため、ここでは0.20mmとした。
【0060】
第2の貫通孔52(52a、52b)の外周と導体10及び20とが接する長さbは、ここでは、導体10、20の線幅aが、外形加工の許容誤差の半分を削ったときに、基準値R0と比較して、約50mΩ上昇する長さとする。すなわち、式(1)により算出し、貫通孔52の外周と、導体10、20とが接する長さbを20mmとした。これにより、基準値R0より100mΩ以上上昇した時又は通電がなくなった時、許容誤差を超えて異常が発生したと判定することができる。
【0061】
図11は、正常状態の場合である。正常状態では、第一貫通孔51及び第二の貫通孔52が、導体10、20のいずれの辺も削らないように形成されている。この時の抵抗値R1は、基準値R0と同等(R0=R1)となり、合格と判定する。
【0062】
図12は、外形が小さい場合の形態である。第二の貫通孔52a及び52bが、導体10のコの字状の対向する辺10aを削る。この時、テスター15の測定値R2は、基準値R0と比較して上昇する。これにより、外形寸法に異常が発生したことを検出することができる。外形が、許容誤差(外形寸法公差)を超えて小さくなった時、テスター15の測定値R2が基準値R0と比較して100mΩ以上上昇し、不合格の判定となる。
【0063】
図13は、外形が大きい場合の形態である。第二の貫通孔52a及び52bが、導体20のコの字状の対向する辺20aを削る。この時、テスター25の測定値R3が基準値R0と比較して上昇する。これにより、外形寸法に異常が発生したことを検出することができる。外形が許容誤差(外形寸法公差)を超えて大きくなった時、テスター25の測定値R3が基準値R0と比較して100mΩ以上上昇し、不合格の判定となる。
【0064】
図14は、外形加工の位置がずれた場合の形態である。第二の貫通孔52aが、導体10のコの字状の対向する辺10aを削り、第二の貫通孔52bが、導体20のコの字状の対向する辺20aを削る。この時、テスター15及び25の測定値R4及びR5が基準値R0と比較して上昇する。これにより、外形加工位置に異常が発生したことを検出することができる。外形加工の位置ずれの度合いが許容値を超えた時、テスター15及び25の測定値R4及びR5が基準値と比較して100mΩ以上上昇し、不合格の判定となる。
【0065】
図15は、外形に対して第一の貫通孔51の位置がずれた場合の形態である。第一の貫通孔51が、導体10のコの字状の対向する辺10aを削る。この時、テスター15の測定値R6が正常状態と比較して上昇する。これにより、第一の貫通孔51の位置に異常が発生したことを検出できる。第一の貫通孔51と外形とのずれが許容値を超えた時、第一の貫通孔51が導体10を切断することでテスター15の測定値がOPENになり、不合格の判定となる。
【0066】
以上のように、本発明に係るプリント配線板は、外形加工精度が設定した許容範囲以上になったとき、テスターの測定値に基づいて、外形加工の合否判定を行うことができる。更に、外形加工の不具合要因を特定することができる。
【0067】
図4は、本実施形態に係るプリント配線板の製造方法の一例を示す流れ図である。本実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、切り離し工程S5を判定工程S4の後に有する。
【0068】
本実施形態に係るプリント配線板の導体回路を、製品捨て板部、テストクーポンなどの製品となる導体回路に影響しない部分に形成することが好ましい。これにより、様々な形状の導体回路の外形加工検査に対応することができる。さらには、形成されたプリント配線板の外形加工精度を、特別な装置や工程を追加することなく、電気的検査で検出することができ、効率的なプリント配線板の外形加工が実現可能となる。
【0069】
判定工程S4の判定結果に基づいて、例えば、良品のみの導体回路部を切り離し、不良品を生産ラインから排除した場合には、次工程へ不良品が流出することがない。たとえ流出したとしても、導体回路部の有無で良品か否かを確認することができる。安全性の高い検査を行うことが可能となる。
【0070】
図5は、本実施形態に係る電子機器の製造方法の一例を示す流れ図である。本実施形態に係る電子機器の製造方法は、本実施形態に係るプリント配線板の製造方法で製造したプリント配線板を、電子機器に組み込む電子機器組立工程S6を切り離し工程S5の後に有する。
【0071】
電子機器組立工程S6は、例えば、本実施形態に係るプリント配線板の製造方法で製造したプリント配線板を、携帯電話機、テレビ、ゲーム機、音楽プレーヤーなどのデジタル家電に組み込んで組み立てる工程である。
【0072】
図6は、本実施形態に係るプリント配線板の一例を示す正面図である。本実施形態に係るプリント配線板は、コの字状の複数の導体10、20、30を、開口部を同じ方向(+Y方向)にして入れ子状に配置した導体回路100と、導体10、20、30のそれぞれの開口部10d、20d、30d側の両側に配置された端子用パッド12、22、32と、を備える。
【0073】
コの字状とは、図6の導体10で説明する。導体の対向する辺10aと、導体の対向する辺10aの対向する一端部同士を導体パターンで接続した接続部導体パターン10cとを有する。ここで、コの字状は、略コの字状を包含する。すなわち、対向する辺10a、20a、30aをY軸に対して平行に配置(導体10を参照。)としてもよいし、傾斜に配置(導体20及び導体30を参照。)してもよい。また、接続部導体パターン10c、20c、30cを、直線(導体10及び導体30を参照。)としてもよいし、湾曲(導体20を参照。)してもよい。
【0074】
コの字状の導体10は、接続部導体パターン10cと対向する側に開口部10fを有する。この開口部10fでは、開口部側導体パターン10dが、入れ子の外側に開くように配置されていることが好ましい。このように配置することで、開口部側導体パターン10dの両端に配置された端子用パッド12間の距離を確保することができ、導体10の通電状態を検査することができる。
【0075】
導体の個数は、図6では導体10、20及び30の3つである場合について説明するが、本発明の効果を奏する限り、その個数に制限されない。形成する導体の個数が増えると、後述する貫通孔を形成した時、導体及び貫通孔の位置関係に基づいて、複数の外形加工の不具合要因を特定することができる。
【0076】
図7は、本実施形態に係るプリント配線板の別の例を示す正面図である。図7に示すように、配線パターンは、コの字状の導体の対向する辺10aと20aとが平行であることが好ましい。さらに、隣接する導体10及び20同士で対向する辺10aと20aとが平行であることが、プリント配線板の省スペース化及び後述する外形加工検査の観点からより好ましい。
【0077】
プリント配線板の材料は、本発明の効果を奏する限り制限されない。導体は、銅、金、ニッケル、はんだなどの公知の導電材料を使用することができる。基材は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリエステル樹脂などの樹脂、紙又はガラスに前記樹脂をコーティングして導体箔と共に硬化した積層板など公知の絶縁基板を使用することができる。
【0078】
本実施形態に係るプリント配線板は、更に、前記導体を形成する隣接する2つの辺の間に貫通孔を備える。導体を形成する隣接する2つの辺の間とは、例えば、最内側の導体10のコの字状の対向する辺10aと10aとの間(図8を参照。)、隣接する2つの導体10、20の対向する辺10aと20aとの間(図9を参照。)、隣接する2つの導体10、20の接続部導体パターン10cと20cとの間(図10を参照。)である。
【0079】
本実施形態では、貫通孔の個数に制限されないが、導体を挟んで2個以上であることが好ましい。このようにすることで、導体と貫通孔との位置関係及び貫通孔同士の位置関係に基づいて、外形加工の加工精度をより詳細に検出することができる。
【0080】
本実施形態では、本発明の効果を奏する限り、貫通孔の形状に制限されないが、貫通を2個以上設けた場合では、他の貫通孔と対向する辺が直線部を有することが好ましい。他の貫通孔と対向する辺が直線部を有することで、外形加工精度をより確実に検査することができる。また、複数の貫通孔を形成したときは、異なる形状としてもよい。
【0081】
図8に示すように第一の貫通孔51を、最内側の導体10のコの字状の対向する辺10aの間に配置することが好ましい。この時、最内側の導体10のコの字状の対向する辺10aは、平行であることが好ましい。これにより、貫通孔と導体の対向する辺10aとの位置関係に基づいて、外形寸法の異常及び外形加工の位置ずれの度合いをより確実に検査し、外形加工精度をより確実に判別することができる。第一の貫通孔51は、プリント配線板を筐体などの装置に固定するための取り付け穴や部品実装位置を割り出すための基準穴としてもよい。
【0082】
図9に示すように第二の貫通孔52(52a、52b)を、隣接する2つの導体10、20の対向する辺10a及び20aの間に形成することが好ましい。この時、隣接する導体同士10及び20で、コの字状の導体の対向する辺10a及び20aが、平行であることが好ましい。これにより、コの字状の導体の対向する辺10a及び20aと貫通孔52(52a、52b)との位置関係に基づいて、外形寸法の異常及び外形加工の位置ずれの度合いをより確実に検出し、外形加工精度をより確実に判別することができる。
【0083】
図10に示すように、第三の貫通孔53を、隣接する2つの導体10及び20の接続部導体パターン10c及び20cの間に形成してもよい。Y軸方向のずれを検出することができる。第一及び第二の貫通孔と組み合わせることで、外形加工の不具合要因を特定することができる。この時、隣接する導体同士10及び20で、接続部導体パターン10c及び20cが、平行であることがより好ましい。
【0084】
第一の貫通孔51を、円形として最内側の導体10のコの字状の対向する辺10aに接するように形成し、かつ、第二の貫通孔52(52a、52b)を、導体の対向する辺と平行な辺を有した形状として導体10、20の対向する辺10a、20aに沿うように形成することが特に好ましい。導体の対向する辺と平行な辺を有した形状は、例えば、長軸を導体の対向する辺と平行な辺とした長円形、矩形である。このように形成することで、第一の貫通孔51と、導体10との位置関係に基づいて、外形加工の位置精度及び穴加工の位置精度を検出し、第二の貫通孔52と、導体10及び20との位置関係に基づいて、外形寸法の精度を検出することで、効率的に外形加工精度の複数の要素を検出することができる。さらに、外形加工の不具合要因を特定することができる。
【0085】
2組の導体回路100を、それぞれのコの字の開口部の方向が直交するよう配置すると、X軸方向、Y軸方向のずれをそれぞれ独立に検出することができる。
【0086】
本実施形態に係るプリント配線板では、導体の線幅aを、外形加工の許容誤差以上とし、貫通孔の幅を、外形加工の導体の線幅以上とすることで、外形加工精度をより確実に判別することができる。図11を用いて以下に説明する。貫通孔51,52を、それらの外周と導体10又は20とが接するように形成することで、外形加工精度を更に詳細に検出することができる。導体10、20の線幅aが、外形加工の許容誤差と同等である場合は、外形加工精度が外形加工の許容誤差を超えると、通電がなくなることで不合格の判定となる。また、導体10、20の線幅aが、外形加工の許容誤差を超える幅である場合は、抵抗値が所定の値より一定値以上上昇することで不合格の判定となる。例えば、貫通孔52の外周と導体10及び20とが接する長さbを、導体10及び20の線幅aが、外形加工の許容誤差の半分を削ったときに、所定の値よりxΩ上昇する長さとする。この時、外形加工精度が許容誤差を超えると、抵抗値が、所定の値より2xΩを超えて上昇し、不合格の判定となる。
【0087】
本実施形態に係るプリント配線板は、前記導体回路と、端子用パッドとが、製品捨て板部、テストクーポンなどの製品となる導体回路に影響しない部分に形成されていることが好ましい。様々な形状の導体回路の外形加工検査に対応することができる。更には、形成されたプリント配線板の外形加工精度を、特別な装置や工程を追加することなく、電気的検査で検出することができ、効率的なプリント配線板の外形加工が実現可能となる。
【0088】
本実施形態に係る電子機器は、本発明に係るプリント配線板を搭載する。ここで、電子機器とは、携帯電話機、テレビ、ゲーム機、音楽プレーヤーなどのデジタル家電を含む。
【0089】
図16は、電子機器の一例としての携帯電話機である。本実施形態に係るプリント配線板100が、携帯電話機200に組み込まれている。本実施形態にかかるプリント配線板は、外形加工精度の高いため、搭載した電子機器の品質を保証できるものである。
【符号の説明】
【0090】
100:導体回路
200:携帯電話機
10、20、30:導体
10:最内側の導体
10a、20a、30a:コの字状の導体の対向する辺
10c、20c、30c:接続部導体パターン
10d、20d、30d:開口部側導体パターン
10f、20f:開口部
12、22、32:端子用パッド
15、25:テスター
51、52、53:貫通孔
51:第一の貫通孔
52(52a、52b):第二の貫通孔
a:導体の線幅
b:第二の貫通孔の外周と、導体とが接する長さ
S1:配線パターン形成工程
S2:貫通孔形成工程
S3:抵抗値測定工程
S4:判定工程
S5:切り離し工程
S6:携帯電話機組立工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コの字状の複数の導体を、開口部を同じ方向にして入れ子状に配置した導体回路の配線パターンを形成し、前記導体のそれぞれの開口部側の両端に配置された端子用パッドを設ける配線パターン形成工程を有するプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
さらに、前記導体を形成する隣接する2つの辺の間に貫通孔を形成する貫通孔形成工程を前記配線パターン形成工程の後に有することを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
前記貫通孔形成工程において、前記貫通孔は、最内側の前記導体のコの字状の対向する辺の間に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
前記貫通孔形成工程において、前記貫通孔は、隣接する2つの前記導体の対向する辺の間に形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
前記貫通孔形成工程において、前記最内側の前記導体のコの字状の対向する辺の間に前記貫通孔を形成し、前記隣接する2つの前記導体の対向する辺の間に前記貫通孔を形成することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
前記貫通孔形成工程において、前記貫通孔の形成と同時にプリント配線板の外形加工を行うことを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項7】
さらに、テスターで抵抗値を測定する抵抗値測定工程と、前記抵抗値に基づいて、外形加工精度及び外形加工の合否を判定する判定工程と、を前記貫通孔形成工程の後に順に有することを特徴とする請求項2〜6のいずれか1つに記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項8】
さらに、前記導体回路部を切り離す切離し工程を前記判定工程の後に有することを特徴とする請求項7に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のプリント配線板の製造方法で製造したプリント配線板を、電子機器に組み込む電子機器組立工程を有する電子機器の製造方法。
【請求項10】
コの字状の複数の導体を、開口部を同じ方向にして入れ子状に配置した導体回路と、前記導体のそれぞれの開口部側の両側に配置された端子用パッドと、を備えるプリント配線板。
【請求項11】
前記コの字状の導体の対向する辺が、平行であることを特徴とする請求項10に記載のプリント配線板。
【請求項12】
前記コの字状の導体の対向する辺が、隣接する導体同士で平行であることを特徴とする請求項10又は11に記載のプリント配線板。
【請求項13】
前記導体の線幅が、外形加工の許容誤差以上であることを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載のプリント配線板。
【請求項14】
さらに、前記導体を形成する隣接する2つの辺の間に貫通孔を備えることを特徴とする請求項10〜13のいずれかに記載のプリント配線板。
【請求項15】
前記貫通孔の個数が、少なくとも2以上であり、他の貫通孔と対向する辺が直線部を有することを特徴とする請求項14に記載のプリント配線板。
【請求項16】
前記貫通孔は、最内側の前記導体のコの字状の対向する辺の間に形成されていることを特徴とする請求項14又は15に記載のプリント配線板。
【請求項17】
前記貫通孔は、隣接する2つの前記導体の対向する辺の間に形成されていることを特徴とする請求項14〜16のいずれかに記載のプリント配線板。
【請求項18】
前記貫通孔の幅が、前記導体の線幅以上であることを特徴とする請求項14〜17のいずれかに記載のプリント配線板。
【請求項19】
前記導体回路と、端子用パッドとが、テストクーポンに形成されていることを特徴とする請求項10〜18のいずれか記載のプリント配線板。
【請求項20】
請求項10〜19のいずれかに記載のプリント配線板を搭載する電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−108988(P2011−108988A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264841(P2009−264841)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】