説明

プリント配線板の製造方法及びプリント配線板

【課題】曲げ半径が小さくても破断を回避することが可能なプリント配線板の製造方法を提供する。
【解決手段】プリント配線板1の製造方法は、ベースフィルム10上に配線パターン20の銅層23を形成するステップS10と、カバーレイ30をベースフィルム10に積層して、銅層23の一部を露出させつつ銅層23をカバーレイ30で覆うステップS20と、カバーレイ30にマスキングテープ40を貼り付けるステップS30と、少なくとも銅層23の露出部分を機械的に研磨するステップS40と、マスキングテープ40をカバーレイ30から除去するステップS50と、銅層23の露出部分に対してめっき処理を行って、銅層23の上にめっき層24を形成するステップS60〜S80と、を備えており、ステップS50は、ステップS40とステップS60〜S80との間、又は、ステップS60〜S80の後に実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子部を有すると共に小さな曲げ半径で折り曲げられるプリント配線板の製造方法及びプリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
他の配線基板等とコネクタ嵌合する配線端子部をめっき処理する前に、酸化膜や有機物等を除去するために、配線端子部の表面に対してバフ研磨処理を行う技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−208400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の技術では、プリント配線板において端子部以外も研磨されてしまうため、配線パターンをラミネートしているカバーレイの表面にも多数の研磨傷が形成される。
【0005】
フレキシブルプリント配線板の折り曲げ半径が一層小さくなると、折り曲げ時にこうした研磨傷を起点としてクラックが進展し、当該フレキシブルプリント配線板が破断する場合があるという問題がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、曲げ半径が小さくても破断を回避することが可能なプリント配線板の製造方法及びプリント配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明に係るプリント配線板の製造方法は、絶縁層上に配線パターンの導体層を形成する第1の工程と、被覆層を前記絶縁層に積層して、前記導体層の一部を前記被覆層から露出させつつ前記導体層を前記被覆層で覆う第2の工程と、前記被覆層の表面に保護層を形成する第3の工程と、少なくとも前記導体層の露出部分を機械的に研磨する第4の工程と、前記保護層を前記被覆層から除去する第5の工程と、前記導体層の露出部分に対してめっき処理を行って、前記導体層の上にめっき層を形成する第6の工程と、を備えており、前記第5の工程は、前記第4の工程と前記第6の工程との間、又は、前記第6の工程の後に実行されることを特徴とする。
【0008】
[2]上記発明において、前記第3の工程は、前記被覆層の表面における折り曲げ予定部分のみに前記保護層を形成することを含んでもよい。
【0009】
[3]上記発明において、前記第3の工程は、前記被覆層の表面にテープ又はドライフィルムを貼り付けることで前記保護層を形成することを含んでもよい。
【0010】
[4]上記発明において、前記第3の工程は、前記被覆層の表面にインクを塗布して硬化させることで前記保護層を形成することを含んでもよい。
【0011】
[5]また、本発明に係るプリント配線板は、絶縁層と、前記絶縁層上に形成され、端子部を有する配線パターンと、前記絶縁層に積層され、前記端子部を露出させつつ前記配線パターンを覆う被覆層と、を備えており、前記被覆層の表面における折り曲げ予定部分は平滑であるのに対し、前記被覆層の表面において前記折り曲げ予定部分以外の部分には、複数の研磨傷が形成されていることを特徴とする。
【0012】
[6]上記発明において、前記プリント配線板は、前記折り曲げ予定部分で折り曲げられていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被覆層の表面に保護層を形成した状態で、導体層の露出部分を機械的に研磨するので、被覆層の表面に研磨傷が形成されない。そのため、プリント配線板を折り曲げた際に研磨傷を起点としてクラックが進展するのを抑制することができ、曲げ半径が小さくてもプリント配線板の破断を回避することができる。
【0014】
また、本発明によれば、被覆層の表面の折り曲げ予定部分に研磨傷が形成されておらず平滑であるので、プリント配線板を折り曲げた際に研磨傷を起点としてクラックが進展するのを抑制することができ、曲げ半径が小さくてもプリント配線板の破断を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の実施形態におけるプリント配線板を示す平面図である。
【図2】図2(a)は、図1のIIA-IIA線に沿った断面図であり、図2(b)は、図2(a)のIIB部の拡大図であり、図2(c)は、図2(b)のIIC部の拡大図である。
【図3】図3は、図1のIIIA-IIIA線に沿った断面図であり、図3(b)は、図3(a)のIIIB部の拡大図であり、図3(c)は図3(a)のIIIC部の拡大図である。
【図4】図4は、図1のIVA-IVA線に沿った断面図であり、図4(b)は、図4(a)のIVB部の拡大図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態におけるプリント配線板の製造方法を示すフローチャートである。
【図6】図6(a)は、図5のステップS10におけるプリント配線板の側面図であり、図6(b)は、図5のステップS20におけるプリント配線板の側面図である。
【図7】図7(a)は、図5のステップS30におけるプリント配線板の平面図であり、図7(b)は、図7(a)のVIIB-VIIB線に沿った断面図である。
【図8】図8(a)は、図5のステップS40におけるプリント配線板の側面図であり、図8(b)は、図5のステップS50におけるプリント配線板の側面図であり、図8(c)は、図5のステップS80におけるプリント配線板の側面図である。
【図9】図9は、保護層の第1変形例を示す平面図である。
【図10】図10は、保護層の第2変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は本発明の実施形態におけるプリント配線板を示す平面図、図2(a)は図1のIIA-IIA線に沿った断面図、図2(b)は図2(a)のIIB部の拡大図、図2(c)は図2(b)のIIC部の拡大図、図3(a)は図1のIIIA-IIIA線に沿った断面図、図3(b)は図3(a)のIIIB部の拡大図、図3(c)は図3(a)のIIIC部の拡大図、図4(a)は図1のIVA-IVA線に沿った断面図、図4(b)は図4(a)のIVB部の拡大図である。
【0018】
本実施形態におけるプリント配線板1は、例えば、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)、スマートフォン、ノート型パソコン、タブレット型情報端末、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、及びデジタルオーディオカメラ等の電子機器に組み込まれるフレキシブルプリント配線板(FPC)である。このプリント配線板1は、図1〜図4に示すように、ベースフィルム10、配線パターン20、及びカバーレイ30を備えており、全体としてL型形状を有している。なお、プリント配線板の平面形状は、特にこれに限定されず、任意の形状を選択することができる。
【0019】
ベースフィルム10は、例えばポリイミド(PI)から構成されたフレキシブルな絶縁性フィルムである。なお、このベースフィルム10を、例えば、液晶ポリマ(LCP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエステル(PE)、又はアラミド等で構成してもよい。本実施形態におけるベースフィルム10が本発明における絶縁層の一例に相当する。
【0020】
このベースフィルム10上には複数の配線パターン20が形成されている。本実施形態では、図1に示すように、複数の配線パターン20が等間隔で平行に配置されており、ベースフィルム10上にL型に延在している。なお、配線パターン20の形状や配置等は特に限定されない。また、ベースフィルム10の両面に配線パターンを形成したり、配線パターンにバイアホール等を含めてもよい。
【0021】
この配線パターン20の両端には端子部22がそれぞれ設けられている。この端子部22には、例えば他のプリント配線板やケーブル等に設けられたコネクタが接続されて、この端子部22を介してプリント配線板1が外部の電子回路と接続される。なお、端子部が形成される位置は、配線パターンの端部に限定されず、配線パターンにおける任意の位置を選択することができる。また、配線パターンにおける端子部の数も特に限定されない。
【0022】
配線パターン20において端子部22以外の部分21(以下単に、配線部21と称する。)は、例えば、ベースフィルム10に積層された銅箔を所定形状にエッチングすることで形成されており、図3(a)や図4(a)に示すように、銅層23のみで構成されている。これに対し、配線パターン20の端子部22は、図2(a)に示すように、配線部21から延在する銅層23と、当該銅層23の表面に電解めっき処理によって形成されためっき層24と、から構成されている。
【0023】
このめっき層24は、図2(b)に示すように、ニッケル(Ni)層241を下地として有していると共に、そのニッケル層241の表面に形成された金(Au)層242を有している。このニッケル層241は、銅層23への金層242の拡散を抑制するためのバリア層として機能する。
【0024】
なお、めっき層24の構成は特に上記に限定されない。例えば、ニッケル層を省略して、銅層23の上に金層242を直接形成してもよい。また、めっき層24を無電解メッキ処理によって形成してもよい。
【0025】
本実施形態では、後述するように、端子部22のめっき層24を形成する前に、銅層23上に存在する酸化物や有機物等の異物を除去するために、端子部22の銅層23の表面に対してバフ研磨処理が行われている。そのため、図2(c)に示すように、端子部22における銅層23の上面231には多数の研磨傷232が形成されている。
【0026】
これに対し、図3(c)に示すように、端子部22の銅層23をバフ研磨処理する際に、配線部21はカバーレイ30に覆われているため、当該配線部21における銅層23の上面231は平滑となっており研磨傷は形成されていない。
【0027】
カバーレイ30は、図3(a)及び図4(a)に示すように、配線パターン20の配線部21を保護するための樹脂層31と、この樹脂層31をベースフィルム10に接着する接着層32と、を有しており、図1に示すように、配線パターン20の配線部21を覆うようにベースフィルム10上に積層されている。一方、同図に示すように、配線パターン20の端子部22は、このカバーレイ30から露出している。本実施形態におけるカバーレイ30が、本発明における被覆層の一例に相当する。
【0028】
このカバーレイ30の樹脂層31は、例えばポリイミド(PI)から構成されたフレキシブルな絶縁性基材である。なお、この樹脂層31を、例えば、液晶ポリマ(LCP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエステル(PE)、又はアラミド等で構成してもよい。
【0029】
一方、カバーレイ30の接着層32は、例えば、エポキシ系接着剤やアクリル系接着剤から構成されている。なお、ベースフィルム10を液晶ポリマ(LCP)で構成すると共に、カバーレイ30の樹脂層31も液晶ポリマ(LCP)で構成する場合には、熱融着によってこれらを相互に貼り付けることができるので、接着層32が不要となる。
【0030】
なお、このドライフィルム30を、例えば、ポリエステル、エポキシ、アクリル、ポリイミド、ポリウレタン等を用いた感光性カバーレイ材料からなるドライフィルムで構成してもよい。或いは、ポリイミドやエポキシをベースとしたカバーレイインクや、液状の感光性カバーレイ材料を、ベースフィルム10上にスクリーン印刷することで、カバーレイ30を形成してもよい。
【0031】
本実施形態におけるプリント配線板1は、図1に示すように、例えば、第1の折り曲げ線Cを中心として、曲げ半径0.3[mm]以下で折り曲げられると共に、第2の折り曲げ線Cを中心として、曲げ半径0.3[mm]以下で折り曲げられた状態で、電子機器に組み込まれる。因みに、本実施形態のプリント配線板1は、屈曲が繰り返される電子機器の可動部に組み込まれるのではなく、極小の曲げ半径で折り曲げた(塑性変形させた)状態で電子機器に恒久的に組み込まれる。このため、本実施形態のプリント配線板1には、屈曲耐久性よりも極小曲げ半径に対する強靭性が要求される。
【0032】
一方、上述の銅層23の表面に対するバフ研磨処理の際に、カバーレイもバフ研磨に曝されてしまうと、当該カバーレイの表面に多数の研磨傷が形成される。こうした研磨傷を有するプリント配線板を曲げ半径0.3[mm]以下で折り曲げると、この研磨傷を起点としてクラックが進展して、プリント配線板が破断して、配線パターンが断線してしまう場合がある。
【0033】
これに対し、本実施形態では、後述するように、端子部22の銅層23のバフ研磨処理の際に、カバーレイ30の表面311における第1の折り曲げ予定部分313を、マスキングテープ40(図7(a)及び図7(b)参照)で覆っているので、図4(b)に示すように、カバーレイ30の第1の折り曲げ予定部分313には研磨傷が形成されておらず、当該第1の折り曲げ予定部分313は平滑となっている。
【0034】
同様に、端子部22の銅層23のバフ研磨処理の際に、カバーレイ30の表面311における第2の折り曲げ予定部分314も、マスキングテープ40で覆っているので、カバーレイ30の第2の折り曲げ予定314には研磨傷が形成されておらず、当該第2の折り曲げ予定部分314は平滑となっている。
【0035】
なお、図3(b)に示すように、カバーレイ30の樹脂層31の表面311において折り曲げ予定部分313,314以外の部分には、多数の研磨傷312が形成されている。この研磨傷312は、例えば1[μm]以上の深さを有している。
【0036】
このように、本実施形態では、カバーレイ30の表面311における折り曲げ予定部分313,314が平滑となっており研磨傷が形成されていない。このため、プリント配線板1を折り曲げ線C,Cで折り曲げた際に、研磨傷を起点としてカバーレイにクラックが進展することがなく、曲げ半径を小さくしてもプリント配線板1の破断を回避することができる。
【0037】
なお、第1及び第2の折り曲げ線C,Cはいずれも仮想上の直線である。また、第1の折り曲げ予定部分313は、カバーレイ30において第1の折り曲げ線Cを中心とした折り曲げが予定されている部分であり、カバーレイ30の表面311において、第1の折り曲げ線C自体と、当該第1の折り曲げ線Cの近傍と、を含む領域である。同様に、第2の折り曲げ予定部分314も、カバーレイ30において第2の折り曲げ線Cを中心とした折り曲げが予定されている部分であり、カバーレイ30の表面311において、第2の折り曲げ線C自体と、当該第2の折り曲げ線Cの近傍と、を含む領域である。また、上述のプリント配線板の折り曲げ位置や曲げ半径は一例に過ぎず、特にこれに限定されない。
【0038】
以下に、本実施形態におけるプリント配線板の製造方法について、図5〜図8を参照しながら説明する。
【0039】
図5は本実施形態におけるプリント配線板の製造方法を示すフローチャートである。また、図6(a)及び図6(b)は図5のステップS10,S20におけるプリント配線板をそれぞれ示す側面図、図7(a)は図5のステップS30におけるプリント配線板の平面図、図7(b)は図7(a)のVIIB-VIIB線に沿った断面図、図8(a)〜図8(c)は図5のステップS40,S50,S80におけるプリント配線板をそれぞれ示す側面図である。また、図9及び図10は保護層の変形例をそれぞれ示す図である。なお、図6(a)〜図6(b)及び図8(a)〜図8(c)は、プリント配線板1を図1のA方向から見た図である。
【0040】
先ず、図5のステップS10において、図6(a)に示すように、ベースフィルム10上に配線パターン20をサブトラクティブ法によって形成する。具体的には、銅張積層板の銅箔上に、配線パターン20に対応した形状のマスクを用いてレジストパターンを形成した後、塩化鉄エッチング液、塩化銅エッチング液、又はアルカリエッチャント等を用いて銅箔に対してエッチング処理を行う。これにより、ベースフィルム10上に配線パターン20の配線部21が形成される。なお、端子部22については、このステップS10において銅層23のみが形成される。本実施形態における銅層23が本発明における導体層の一例に相当する。
【0041】
なお、配線パターン20の形成方法は、特に上記に限定されない。例えば、セミアディティブ法にように、めっき処理によって配線パターンを形成してもよい。或いは、銀ペーストや銅ペースト等の導電性ペーストをベースフィルム上にスクリーン印刷することで、配線パターンを形成してもよい。
【0042】
次いで、図5のステップS20において、図6(b)に示すように、カバーレイ30をベースフィルム10上に積層し、ホットプレスによってこれらを加熱及び加圧することで、カバーレイ30をベースフィルム10に貼り付ける。この際、配線パターン20の配線部21は、カバーレイ30に全て覆われるが、当該配線パターン20の端子部22における銅層23は、カバーレイ30から露出している。
【0043】
次いで、図5のステップS30において、図7(a)及び図7(b)に示すように、カバーレイ30の表面311における第1の折り曲げ予定部分313にマスキングテープ40を貼り付ける。同様に、カバーレイ30の表面311における第2の折り曲げ予定部分314にマスキングテープ40を貼り付ける。
【0044】
このマスキングテープ40は、基材41と、当該基材41の一方の主面に塗布された粘着層42と、を備えている。基材41の具体例としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエステル等の合成樹脂材料で構成されるフィルムや、クレープ紙等を例示することができる。また、粘着層42の具体例としては、例えばアクリル系粘着剤(アクリル系感圧型接着剤)等を例示することができる。なお、本実施形態におけるマスキングテープ40が、本発明における保護層の一例に相当する。
【0045】
なお、図9に示すように、折り曲げ予定部分313,314のみならず、カバーレイ30の全面にマスキングテープ40を貼り付けてもよい。この場合には、マスキングテープ40をカバーレイ30の表面311に予め貼り付けておいて、当該カバーレイ30をベースフィルム10の貼り付けてもよい。すなわち、この場合には、図5のステップS20の前に、ステップS30を実行してもよい。
【0046】
また、マスキングテープ40に代えて、図10に示すように、カバーレイ30の表面311上にマスキングインクをスクリーン印刷して硬化させたり、或いは、カバーレイ30の表面311にドライフィルムを積層することで、カバーレイ30上に保護層60を形成してもよい。
【0047】
マスクキングインクの具体例としては、例えば、フェノール樹脂を主成分とする回路形成用のマスキングインク等を例示することができる。また、ドライフィルムの具体例としては、例えば、ポリエステル、エポキシ、アクリル、ポリイミド、ポリウレタン等を用いた感光性材料カバーレイ材料から構成されるものを例示することができる。
【0048】
次いで、図5のステップS40において、図8(a)に示すように、バフ研磨機のバフロール60を回転させながらプリント配線板に対して相対的に移動させて、配線パターン20の端子部22における銅層23の表面を研磨することで、銅層23上に存在する酸化物や有機物等の異物を除去する。この研磨によって、端子部22における銅層23の上面231に多数の研磨傷232(図2(c)参照)が形成される。
【0049】
また、端子部22のみならず、カバーレイ30の樹脂層31の表面311においてマスキングテープ40で覆われている部分313,314以外の部分もバフ研磨機のバフロール60によって研磨され、当該樹脂層31の表面311に、1[μm]以上の深さを有する研磨傷312(図3(b)参照)が多数形成される。
【0050】
一方、カバーレイ30の表面311における第1及び第2の折り曲げ予定部分313,314は、マスキングテープ40に覆われているため、研磨傷が形成されることなく平滑となっている(図4(b)参照)。
【0051】
このステップS40で使用されるバフロール60は、研磨剤を均一に付着させた布をロールに巻き付けて構成されている。研磨剤としては、例えば、酸化アルミ(Al)等のセラミック微粒子やダイヤモンド微粒子を例示することができる。また、この研磨剤が付着される布としては、例えば、ナイロン製の布やポリプロピレン製の布等を例示することができる。
【0052】
なお、カバーレイ30の表面311に形成された多数の研磨傷312は、回転するバフロール60の前進/後退方向(図1における「バフ研磨方向」を参照)に対して実質的に平行に配置されており、相互に平行に配置されている。同様に、端子部22における銅層23の上面231に形成された多数の研磨傷232も、バフロール60の前進/後退方向に対して実質的に平行に配置されており、相互に平行に配置されている。
【0053】
また、本実施形態では、図1に示すように、第1の折り曲げ線Cが、バフロール60の前進/後退方向に対して直交しているのに対し、第2の折り曲げ線Cが、バフロール60の前進/後退方向に対して実質的に平行となっている。
【0054】
次いで、図5のステップS50において、図8(b)に示すように、カバーレイ30の表面311からマスキングテープ40を剥離する。これにより、第1及び第2の折り曲げ予定部分313,314の平滑な表面が露出する。
【0055】
次いで、図5のステップS60において、配線パターン20の端子部22における銅層23に対して前処理を行う。具体的には、先ず、端子部22の銅層23に対して、脱脂洗浄処理を行うことで、銅層23の表面上の油性物質を除去する。次いで、端子部22の銅層23に対して酸処理を行うことで、銅層23上の酸化膜を除去する。なお、このステップS40における前処理の内容は一例に過ぎず、特にこれに限定されない。
【0056】
次いで、図5のステップS70において、電解ニッケルめっき処理によって、ニッケル層241(図2(b)参照)を端子部22の銅層23の表面に形成する。次いで、図5のステップS80において、電解金めっき処理によって、金層242(図2(b)参照)をニッケル層241の表面に形成する。これにより、図8(c)に示すように、銅層23上にめっき層24が形成され、端子部22が完成する。
【0057】
因みに、ステップS40において端子部22の銅層23の表面を研磨せずに、ステップS70において銅層23に対してめっき処理を行ってしまうと、銅層23とめっき層24との間の界面の密着性が低くなる場合がある。このため、端子部22における接触抵抗が高くなったり、コネクタ挿抜の繰り返しに対する端子部22の耐摩耗性が低下する場合がある。
【0058】
以上のように、本実施形態では、カバーレイ30の表面311における第1及び第2の折り曲げ予定部分313,314にマスキングテープ40を貼り付けた状態で、配線パターン20の端子部22における銅層23をバフ研磨処理するので、カバーレイ30の第1及び第2の折り曲げ予定部分313,314に研磨傷が形成されない。このため、プリント配線板1を第1及び第2の折り曲げ線C,Cで折り曲げた際に研磨傷を起点としてクラックが進展するのを抑制することができ、曲げ半径が小さくてもプリント配線板1の破断を回避することができる。
【0059】
また、本実施形態では、図5のステップS30において、カバーレイ30の全面にマスキングテープ40を貼り付けるのではなく、カバーレイ30の表面311において第1及び第2の折り曲げ予定部分313,314のみにマスキングテープ40を貼り付けるので、マスキングテープの使用量を減らすことができ、プリント配線板1の高コスト化を抑制することもできる。
【0060】
なお、上述のように、第1の折り曲げ線Cはバフロール60の前進/後退方向に対して非平行であるのに対し、第2の折り曲げ線Cはバフロール60の前進/後退方向に対して平行となっていることから、第1の折り曲げ予定部分313へのマスキングテープ40の貼り付けを省略して、第2の折り曲げ予定部分314のみにマスキングテープ40を貼り付けてもよい。すなわち、カバーレイ30の表面311において、研磨傷312と実質的に同一の向きの折り曲げ線Cを含む折り曲げ予定部分314のみに、マスキングテープ40を貼り付けてもよい。
【0061】
また、めっき処理の後(すなわちステップS80の後)に、ステップS50を行ってもよい。
【0062】
なお、本実施形態における図5のステップS10が本発明における第1の工程の一例に相当し、本実施形態における図5のステップS20が本発明における第2の工程の一例に相当し、本実施形態における図5のステップS30が本発明における第3の工程の一例に相当し、本実施形態における図5のステップS40が本発明における第4の工程の一例に相当し、本実施形態における図5のステップS50が本発明における第5の工程の一例に相当し、本実施形態における図5のステップS60〜S80が本発明における第6の工程の一例に相当する。
【0063】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0064】
以下に、本発明をさらに具体化した実施例及び比較例により本発明の効果を確認した。以下の実施例及び比較例は、上述した実施形態におけるプリント配線板の破断抑制効果を確認するためのものである。
【実施例】
【0065】
<実施例1>
実施例1では、実施形態において説明した図1に示すようなL型形状のプリント配線板をサンプルとして10個作製した。
【0066】
具体的には、先ず、厚さ25[μm]のポリイミドフィルム(ベースフィルム)に厚さ18[μm]の銅箔が積層され、図1中のS,Sがいずれも50[mm]、w,wが何れも10[mm]のL型形状の片面銅張積層板を準備し、この銅箔上にレジストパターンを形成してから当該銅箔に対してエッチング処理を行うことで、0.1[mm]間隔で平行に配置されたL型の配線パターンを30本形成した。それぞれの配線パターンの幅は0.1[mm]とした。
【0067】
次いで、厚さ12.5[μm]のポリイミドフィルムに、厚さ30[μm]の熱硬化型接着剤を塗布したカバーレイを、配線パターンの両端がそれぞれ3[mm]露出するように、ベースフィルム上に積層し、ホットプレスにて165℃で70分間キュア処理することで、カバーレイをベースフィルムに貼り合わせた。
【0068】
次いで、カバーレイの第1及び第2の折り曲げ予定部分にマスキングテープを貼り付けた。このマスキングテープは、厚さ25[μm]のポリ塩化ビニル製のフィルムに、厚さ30[μm]のアクリル系粘着剤を塗布したテープである。
【0069】
次いで、当該プリント配線板の全面に対してバフ研磨処理を行った後、カバーレイの第1及び第2の折り曲げ予定部分からマスキングテープを剥がした。なお、バフ研磨処理では、粒度#1000の酸化アルミをナイロン布に付着させたバフロールを使用し、バフロールの前進/後退方向(バフ研磨方向)を、第2の折り曲げ線(図1における符号Cに相当)に対して平行とした。また、バフロールの回転数を1450[rpm]とし、送り速度を1.65[m/min]とし、バフロールの押圧力は、1.5〜2.0[mm]のフットマークが形成されるように設定した。
【0070】
以上のように作製された10個のプリント配線板を、直径0.6[mm]のマンドレル(曲げ半径=0.3[mm])を用いて、第1の折り曲げ線(図1におけるCに相当)を中心としてそれぞれ1〜10回折り曲げた後に、顕微鏡を用いて、カバーレイの第1の折り曲げ予定部分(図1における符号313に相当)を目視により観察した。
【0071】
また、第1の折り曲げ線と同様の条件で、10個のプリント配線板を第2の折り曲げ線を中心としてそれぞれ1〜10回折り曲げた後に、カバーレイの第2の折り曲げ予定部分(図1における符号314に相当)を観察した。
【0072】
この実施例1のサンプルでは、第1及び第2の折り曲げ予定部分のいずれについても、プリント配線板を10回折り曲げてもカバーレイの表面にクラックは発生していなかった。
【0073】
<実施例2>
実施例2では、実施形態において説明した図9に示すようなL型形状のプリント配線板をサンプルとして10個作製した。
【0074】
この実施例2では、マスキングテープをカバーレイの全面に貼り付けたこと以外は、実施例1と同様である。但し、この実施例2では、マスキングテープをカバーレイに予め貼り付けておき、当該カバーレイをベースフィルムに貼り付けた。
【0075】
この実施例2のサンプルについても、実施例1と同様の条件で、10個のプリント配線板を第1の折り曲げ線(図9における符号Cに相当)を中心としてそれぞれ1〜10回折り曲げた後に、カバーレイの第1の折り曲げ予定部分(図9における符号313に相当)を観察した。
【0076】
同様に、実施例1と同様の条件で、10個のプリント配線板を第2の折り曲げ線(図9における符号Cに相当)を中心として1〜10回折り曲げた後に、カバーレイの第2の折り曲げ予定部分(図9における符号314に相当)を観察した。
【0077】
この実施例2のサンプルでも、第1及び第2の折り曲げ予定部分のいずれについても、プリント配線板を10回折り曲げてもカバーレイの表面にクラックは発生していなかった。
【0078】
<実施例3>
実施例3では、ストレートな形状のプリント配線板をサンプルとして10個作製した。
【0079】
この実施例3では、プリント配線板の全体形状を、全長が100[mm]、幅が10[mm]の短冊形状とし、配線パターンの形状も直線形状としたこと以外は、実施例1と同様である。但し、この実施例3では、カバーレイにおける折り曲げ予定部分を、当該カバーレイにおいて長手方向の中央部の1箇所のみとし、カバーレイの中央部分のみにマスキングテープを貼り付けた。また、バフロールの前進/後退方向(バフ研磨方向)をプリント配線板の幅方向に対して平行とした。
【0080】
この実施例3のサンプルについても、実施例1と同様の条件で、10個のプリント配線板を長手方向の中央でそれぞれ1〜10回折り曲げた後に、カバーレイの折り曲げ予定部分(すなわち、カバーレイの中央部分)を観察した。この実施例3のサンプルでも、プリント配線板を10回折り曲げてもカバーレイの折り曲げ予定部分にクラックは発生していなかった。
【0081】
<実施例4>
実施例4では、マスキングテープをカバーレイの全面に貼り付けたこと以外は、実施例3と同様のサンプルを作製した。但し、この実施例4では、マスキングテープをカバーレイに予め貼り付けておき、当該カバーレイをベースフィルムに貼り付けた。
【0082】
この実施例4のサンプルについても、実施例1と同様の条件で、10個のプリント配線板を長手方向の中央でそれぞれ1〜10回折り曲げた後に、カバーレイの折り曲げ予定部分(すなわち、カバーレイの中央部分)を観察した。この実施例4のサンプルでも、プリント配線板を10回折り曲げてもカバーレイの折り曲げ予定部分にクラックは発生していなかった。
【0083】
<比較例1>
比較例1では、マスキングテープをカバーレイに貼り付けなかった点を除いて、実施例1と同様のプリント配線板をサンプルとして10個作製した。
【0084】
この比較例1のサンプルについても、実施例1と同様の条件で、10個のプリント配線板を第1の折り曲げ線を中心としてそれぞれ1〜10回折り曲げた後に、カバーレイの第1の折り曲げ予定部分を観察した。
【0085】
同様に、実施例1と同様の条件で、10個のプリント配線板を第2の折り曲げ線を中心としてそれぞれ1〜10回折り曲げた後に、カバーレイの第2の折り曲げ予定部分を観察した。
【0086】
第1の折り曲げ予定部分については、第1の折り曲げ線の方向に対して、バフ研磨処理におけるバフロールの前進/後退方向が直交していたため、プリント配線板を10回折り曲げてもカバーレイの表面にクラックは発生していなかった。
【0087】
一方、第2の折り曲げ予定部分については、プリント配線板を3回折り曲げた時点でカバーレイの樹脂層が破断し、プリント配線板を8回折り曲げた時点でカバーレイの接着層も破断して配線パターンが露出した。
【0088】
<比較例2>
比較例2では、マスキングテープをカバーレイに貼り付けなかった点を除いて、実施例3と同様のプリント配線板をサンプルとして10個作製した。
【0089】
この比較例2のサンプルについても、実施例1と同様の条件で、10個のプリント配線板を長手方向の中央でそれぞれ1〜10回折り曲げた後に、カバーレイの折り曲げ予定部分(すなわち、カバーレイの中央部分)を観察した。
【0090】
この比較例2のサンプルでは、上述の比較例1における第2の折り曲げ予定部分と同様に、プリント配線板を3回折り曲げた時点でカバーレイの樹脂層が破断し、プリント配線板を8回折り曲げた時点でカバーレイの接着層も破断して配線パターンが露出した。
【0091】
以上のように、マスキングテープでカバーレイを保護した実施例1〜4では、折り曲げに伴うクラックの発生を抑制することができた。これに対し、マスキングテープを貼り付けていない比較例1及び2では、カバーレイの表面においてバフロールの前進/後退方向に沿った折り曲げ線を含む折り曲げ予定部にクラックが発生した。
【符号の説明】
【0092】
1…プリント配線板
10…ベースフィルム
20…配線パターン
21…配線部
211…上面
22…端子部
23…銅層
231…上面
232…研磨傷
24…めっき層
241…ニッケル層
242…金層
30…カバーレイ
31…樹脂層
311…表面
312…研磨傷
313,314…折り曲げ予定部分
32…接着層
40…マスキングテープ
41…基材
42…接着層
50…ドライフィルム
60…バフロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層上に配線パターンの導体層を形成する第1の工程と、
被覆層を前記絶縁層に積層して、前記導体層の一部を前記被覆層から露出させつつ前記導体層を前記被覆層で覆う第2の工程と、
前記被覆層の表面に保護層を形成する第3の工程と、
少なくとも前記導体層の露出部分を機械的に研磨する第4の工程と、
前記保護層を前記被覆層から除去する第5の工程と、
前記導体層の露出部分に対してめっき処理を行って、前記導体層の上にめっき層を形成する第6の工程と、を備えており、
前記第5の工程は、前記第4の工程と前記第6の工程との間、又は、前記第6の工程の後に実行されることを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプリント配線板の製造方法であって、
前記第3の工程は、前記被覆層の表面における折り曲げ予定部分のみに前記保護層を形成することを含むことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプリント配線板の製造方法であって、
前記第3の工程は、前記被覆層の表面にテープ又はドライフィルムを貼り付けることで前記保護層を形成することを含むことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のプリント配線板の製造方法であって、
前記第3の工程は、前記被覆層の表面にインクを塗布して硬化させることで前記保護層を形成することを含むことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
絶縁層と、
前記絶縁層上に形成され、端子部を有する配線パターンと、
前記絶縁層に積層され、前記端子部を露出させつつ前記配線パターンを覆う被覆層と、を備えており、
前記被覆層の表面における折り曲げ予定部分は平滑であるのに対し、前記被覆層の表面において前記折り曲げ予定部分以外の部分には、複数の研磨傷が形成されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項6】
請求項5に記載のプリント配線板であって、
前記プリント配線板は、前記折り曲げ予定部分で折り曲げられていることを特徴とするプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−84775(P2013−84775A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223749(P2011−223749)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】