説明

プリント配線板の製造方法及びプリント配線板

【課題】曲げ半径が小さくても破断を回避可能なプリント配線板の製造方法を提供する。
【解決手段】プリント配線板1の製造方法は、ベースフィルム10上に配線パターン20の銅層23を形成する工程と、カバーレイ30をベースフィルム10に積層して、銅層23の一部をカバーレイ30から露出させつつ銅層23をカバーレイ30で覆うことで、基板中間体2を形成する工程と、基板中間体2を治具40に取り付ける工程と、基板中間体2を治具40に取り付けたまま、少なくとも銅層23の露出部分を機械的に研磨する工程と、基板中間体2を治具40から取り外す工程と、銅層23の露出部分に対してめっき処理を行って、銅層23の上にめっき層24を形成する工程と、を備え、治具40は、カバーレイ30の折り曲げ予定部分に対応する領域に凹部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子部を有すると共に小さな曲げ半径で折り曲げられるプリント配線板の製造方法及びプリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
他の配線基板等とコネクタ嵌合する配線端子部をめっき処理する前に、酸化膜や有機物等を除去するために、配線端子部の表面に対してバフ研磨処理を行う技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−208400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の技術では、プリント配線板において端子部以外も研磨されてしまうため、配線パターンをラミネートしているカバーレイの表面にも多数の研磨傷が形成される。
【0005】
フレキシブルプリント配線板の折り曲げ半径が一層小さくなると、折り曲げ時にこうした研磨傷を起点としてクラックが進展し、当該フレキシブルプリント配線板が破断するという問題がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、曲げ半径が小さくても破断を回避することが可能なプリント配線板の製造方法及びプリント配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明に係るプリント配線板の製造方法は、絶縁層上に配線パターンの導体層を形成する第1の工程と、被覆層を前記絶縁層に積層して、前記導体層の一部を前記被覆層から露出させつつ前記導体層を前記被覆層で覆うことで、基板中間体を形成する第2の工程と、前記基板中間体を治具に取り付ける第3の工程と、前記基板中間体を前記治具に取り付けたまま、少なくとも前記導体層の露出部分を機械的に研磨する第4の工程と、前記基板中間体を前記治具から取り外す第5の工程と、前記導体層の露出部分に対してめっき処理を行って、前記導体層の上にめっき層を形成する第6の工程と、を備えており、前記治具は、前記被覆層の折り曲げ予定部分に対応する領域に凹部を有することを特徴とする。
【0008】
[2]上記発明において、前記凹部の深さは、前記基板中間体の総厚以上であってもよい。
【0009】
[3]また、本発明に係るプリント配線板は、絶縁層と、前記絶縁層上に形成され、端子部を有する配線パターンと、前記絶縁層に積層され、前記端子部を露出させつつ前記配線パターンを覆う被覆層と、を備えたプリント配線板であって、前記被覆層の表面に複数の研磨傷が形成されており、前記被覆層の表面における折り曲げ予定部分に形成された前記研磨傷は、前記被覆層の表面における前記折り曲げ予定部分以外の部分に形成された研磨傷よりも浅いことを特徴とする。
【0010】
[4]上記発明において、前記プリント配線板は、前記折り曲げ予定部分で折り曲げられていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、導体層の露出部分を研磨する際に、治具に形成された凹部内に基板中間体が退避するので、被覆層の折り曲げ予定部分に形成される研磨傷を浅くすることができる。このため、プリント配線体を折り曲げ線で折り曲げた際に、研磨傷を起点としてクラックが進展するのを抑制することができ、曲げ半径が小さくてもプリント配線板の破断を回避することができる。
【0012】
また、本発明では、被覆層の折り曲げ予定部分に形成された研磨傷が浅くなっているので、プリント配線体を折り曲げ線で折り曲げた際に、研磨傷を起点としてクラックが進展するのを抑制することができ、曲げ半径が小さくてもプリント配線板の破断を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施形態におけるプリント配線板を示す平面図である。
【図2】図2(a)は、図1のIIA-IIA線に沿った断面図であり、図2(b)は、図2(a)のIIB部の拡大図である。
【図3】図3(a)は、図1のIIIA-IIIA線に沿った断面図であり、図3(b)は、図3(a)のIIIB部の拡大図である。
【図4】図4(a)は、図1のIVA-IVA線に沿った断面図であり、図4(b)は、図4(a)のIVB部の拡大図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態におけるプリント配線板の製造方法を示すフローチャートである。
【図6】図6(a)〜図6(c)は、図5の各ステップにおけるプリント配線板を示す図であり、図6(a)は図5のステップS10における側面図であり、図6(b)は図5のステップS20における側面図であり、図6(c)は図5のステップS30における平面図である。
【図7】図7(a)及び図7(b)は、図5の各ステップにおけるプリント配線板を示す断面図であり、図7(a)は図5のステップS40を示す図であり、図7(b)は図5のステップS80を示す図である。
【図8】図8(a)は、本発明の実施形態で使用する治具の平面図であり、図8(b)は、図8(a)のVIIIB-VIIIB線に沿った断面図である。
【図9】図9(a)は、実施例2におけるサンプルの平面図であり、図9(b)は、実施例2で使用する治具の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は本発明の実施形態におけるプリント配線板を示す平面図、図2(a)は図1のIIA-IIA線に沿った断面図、図2(b)は図2(a)のIIB部の拡大図、図3(a)は図1のIIIA-IIIA線に沿った断面図、図3(b)は図3(a)のIIIBの拡大図、図4(a)は図1のIVA-IVA線に沿った断面図、図4(b)は図4(a)のIVBの拡大図である。
【0016】
本実施形態におけるプリント配線板1は、例えば、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)、スマートフォン、ノート型パソコン、タブレット型情報端末、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、及びデジタルオーディオカメラ等の電子機器に組み込まれるフレキシブルプリント配線板(FPC)である。このプリント配線板1は、図1〜図4に示すように、ベースフィルム10、配線パターン20、及びカバーレイ30を備えており、全体としてL型形状を有している。なお、プリント配線板の平面形状は、特にこれに限定されず、任意の形状を選択することができる。
【0017】
ベースフィルム10は、例えばポリイミド(PI)から構成されたフレキシブルな絶縁性フィルムである。なお、このベースフィルム10を、例えば、液晶ポリマ(LCP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエステル(PE)、又はアラミド等で構成してもよい。本実施形態におけるベースフィルム10が本発明における絶縁層の一例に相当する。
【0018】
このベースフィルム10上には複数の配線パターン20が形成されている。本実施形態では、図1に示すように、複数の配線パターン20が等間隔で平行に配置されており、ベースフィルム10上にL型に延在している。なお、配線パターン20の形状や配置等は特に限定されない。また、ベースフィルム10の両面に配線パターンを形成したり、配線パターンにバイアホール等を含めてもよい。
【0019】
この配線パターン20の両端には端子部22がそれぞれ設けられている。この端子部22には、例えば他のプリント配線板やケーブル等に設けられたコネクタが接続されて、この端子部22を介してプリント配線板1が外部の電子回路と接続される。なお、端子部が形成される位置は、配線パターンの端部に限定されず、配線パターンにおける任意の位置を選択することができる。また、配線パターンにおける端子部の数も特に限定されない。
【0020】
配線パターン20において端子部22以外の部分21(以下単に、配線部21と称する。)は、例えば、ベースフィルム10に積層された銅箔を所定形状にエッチングすることで形成されており、図3(a)や図4(a)に示すように、銅層23のみで構成されている。これに対し、配線パターン20の端子部22は、図2(a)に示すように、配線部21から延在する銅層23と、当該銅層23の表面に電解めっき処理によって形成されためっき層24と、から構成されている。
【0021】
このめっき層24は、図2(b)に示すように、ニッケル(Ni)層241を下地として有していると共に、そのニッケル層241の表面に形成された金(Au)層242を有している。このニッケル層241は、銅層23への金層242の拡散を抑制するためのバリア層として機能する。なお、めっき層24の構成は特に上記に限定されない。例えば、ニッケル層を省略して、銅層23の上に金層242を直接形成してもよい。また、めっき層24を無電解めっき処理によって形成してもよい。
【0022】
カバーレイ30は、図3(a)及び図4(a)に示すように、配線パターン20の配線部21を保護するための樹脂層31と、この樹脂層31をベースフィルム10に接着する接着層32と、を有しており、図1に示すように、配線パターン20の配線部21を覆うようにベースフィルム10上に積層されている。一方、同図に示すように、配線パターン20の端子部22は、このカバーレイ30から露出している。本実施形態におけるカバーレイ30が、本発明における被覆層の一例に相当する。
【0023】
このカバーレイ30の樹脂層31は、例えばポリイミド(PI)から構成されたフレキシブルな絶縁性基材である。なお、この樹脂層31を、例えば、液晶ポリマ(LCP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエステル(PE)、又はアラミド等で構成してもよい。
【0024】
一方、カバーレイ30の接着層32は、例えば、エポキシ系接着剤やアクリル系接着剤から構成されている。なお、ベースフィルム10を液晶ポリマ(LCP)で構成すると共に、カバーレイ30の樹脂層31も液晶ポリマ(LCP)で構成する場合には、熱融着によってこれらを相互に貼り付けることができるので、接着層32が不要となる。
【0025】
なお、このカバーレイ30を、例えば、ポリエステル、エポキシ、アクリル、ポリイミド、ポリウレタン等を用いた感光性カバーレイ材料からなるドライフィルムで構成してもよい。或いは、ポリイミドやエポキシをベースとしたカバーレイインクや、液状の感光性カバーレイ材料を、ベースフィルム10上にスクリーン印刷することで、カバーレイ30を形成してもよい。
【0026】
このフレキシブルプリント配線板1は、図1に示すように、例えば、第1の折り曲げ線Cを中心として、曲げ半径0.3[mm]以下で折り曲げられると共に、第2の折り曲げ線Cを中心として、曲げ半径0.3[mm]以下で折り曲げられた状態で、電子機器に組み込まれる。因みに、本実施形態におけるプリント配線板1は、屈曲が繰り返される電子機器の可動部に組み込まれるのではなく、極小の曲げ半径で折り曲げた(塑性変形させた)状態で電子機器に恒久的に組み込まれる。このため、本実施形態のプリント配線板1には、屈曲耐久性よりも、極小曲げ半径に対する強靭性が要求される。なお、第1及び第2の折り曲げ線C,Cはいずれも仮想上の直線である。また、上記のプリント配線板の折り曲げ位置や曲げ半径は一例に過ぎず、特にこれに限定されない。
【0027】
ところで、本実施形態では、後述するように、端子部22のめっき層24を形成する前に、銅層23上に存在する酸化物や有機物等の異物を除去するために、当該銅層23の表面に対してバフ研磨処理が行われている。この際に、カバーレイ30の樹脂層31の表面311もバフ研磨に曝されてしまうため、図3(b)や図4(b)に示すように、樹脂層31の表面311に多数の研磨傷312a,312bが形成されている。この研磨傷312a,312bは、カバーレイ311において第1及び第2の折り曲げ予定部分313,314や非折り曲げ予定部分315(何れも図1参照)を含む表面311全体に形成されている。
【0028】
そして、本実施形態では、カバーレイ30の表面311における第1の折り曲げ予定部分313に形成された研磨傷312aの深さd(図3(b)参照)が、カバーレイ30の表面311における非折り曲げ予定部分315に形成された研磨傷312bの深さd(図3(b)参照)よりも浅くなっている(d<d)。具体的には、研磨傷312aの深さdは、例えば1[mm]未満であり、研磨傷312bの深さdは、例えば1[μm]以上である。なお、研磨傷312aの深さdには0[mm]も含まれ、カバーレイ30の表面311における第1及び第2の折り曲げ予定部分314,315に、研磨傷が形成されない領域が生じる場合もある。
【0029】
特に図示しないが、同様に、カバーレイ30の表面311における第2の折り曲げ予定部分314に形成された研磨傷の深さも、カバーレイ30の表面311における非折り曲げ予定部分315に形成された研磨傷312bの深さより浅くなっている。
【0030】
なお、第1の折り曲げ予定部分313は、カバーレイ30において第1の折り曲げ線Cを中心とした折り曲げが予定されている部分であり、カバーレイ30の表面311において、第1の折り曲げ線C自体と、当該第1の折り曲げ線Cの近傍と、を含む領域である。同様に、第2の折り曲げ予定部分314も、カバーレイ30において第2の折り曲げ線Cを中心として折り曲げが予定されている部分であり、カバーレイ30の表面311において、第2の折り曲げ線C自体と、当該第2の折り曲げ線Cの近傍と、を含む領域である。また、非折り曲げ予定部分315は、カバーレイ30の表面311において第1及び第2の折り曲げ予定部分313,314以外の部分315である。
【0031】
多数の研磨傷が形成されたプリント配線板を曲げ半径0.3[mm]以下で折り曲げると、この研磨傷を起点としてクラックが進展して、プリント配線板が破断して、配線パターンが断線してしまう場合がある。
【0032】
これに対し、本実施形態では、上述のように、折り曲げ予定部分313,314に形成された研磨傷312aの深さdが、非折り曲げ予定部分315に形成された研磨傷312bの深さdよりも浅くなっているので(d<d)、プリント配線板1を折り曲げ線C,Cで折り曲げた際に、研磨傷312aを起点としてカバーレイ30にクラックが進展するのを抑制することができ、曲げ半径が小さくてもプリント配線板1の破断を回避することができる。
【0033】
以下に、本実施形態におけるプリント配線板の製造方法について、図5〜図8を参照しながら説明する。
【0034】
図5は本実施形態におけるプリント配線板の製造方法を示すフローチャート、図6(a)〜図7(b)は図5の各ステップにおけるプリント配線板を示す図、図8(a)及び図8(b)は本実施形態で使用する治具を示す図である。なお、図6(a)及び図6(b)は、バフ研磨方向に沿ってプリント配線板の端面を見た図であり、図6(c)はプリント配線板の平面図であり、図7(a)及び図7(b)はバフ研磨方向に沿ったプリント配線板の断面図である。
【0035】
先ず、図5のステップS10において、図6(a)に示すように、ベースフィルム10上に配線パターン20をサブトラクティブ法によって形成する。具体的には、銅張積層板の銅箔上に、配線パターン20に対応した形状のマスクを用いてレジストパターンを形成した後、塩化鉄エッチング液、塩化銅エッチング液、又はアルカリエッチャント等を用いて銅箔に対してエッチング処理を行う。これにより、ベースフィルム10上に配線パターン20の配線部21が形成される。なお、端子部22については、このステップS10において銅層23のみが形成される。本実施形態における銅層23が本発明における導体層の一例に相当する。
【0036】
なお、配線パターン20の形成方法は、特に上記に限定されない。例えば、セミアディティブ法のように、めっき処理によって配線パターンを形成してもよい。或いは、銀ペーストや銅ペースト等の導電性ペーストをベースフィルム上にスクリーン印刷することで、配線パターンを形成してもよい。
【0037】
次いで、図5のステップS20において、図6(b)に示すように、カバーレイ30をベースフィルム10上に積層し、ホットプレスによってこれらを加熱及び加圧することで、カバーレイ30をベースフィルム10に貼り付ける。この際、配線パターン20の配線部21は、カバーレイ30に全て覆われるが、当該配線パターン20の両端に位置する端子部22の銅層23は、カバーレイ30から露出している。
【0038】
なお、以下において、図5のステップS20でカバーレイ30を貼り終えたプリント配線板1の半製品(中間製品)を、基板中間体2と称する。すなわち、この基板中間体2は、ベースフィルム10と、ベースフィルム10上に形成された配線パターン20と、ベースフィルム10に積層され、配線パターン20の両端部を露出させつつ配線パターン20を覆うカバーフィルム30と、を備えているが、配線パターン20の両端部では銅層23が露出しており、配線パターン20の端子部22が未完成となっている状態である。
【0039】
図5のステップS30において、図6(c)に示すように、バフ研磨処理用の治具40に基板中間体2を取り付ける。具体的には、当該治具40の上に基板中間体2を位置決めして載置した後、基板中間体2の端部を粘着テープ等で治具40に貼り付けることで、基板中間体2を治具40に固定する。
【0040】
ここで、本実施形態における治具40は、図8(a)及び図8(b)に示すように、基板中間体2の全体を支持する平板状の支持体41を有している。この支持体41は、例えば、フェノール樹脂やポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等から構成されている。
【0041】
この支持体41には、上述したプリント配線板1のカバーレイ30の第1及び第2の折り曲げ予定部分313,314に対応する部分に、凹部42がそれぞれ形成されている。この凹部42は、基板中間体2の幅よりも広い幅を有していると共に、図8(b)に示すように基板中間体2の総厚hよりも大きな深さdを有しており(h<d)、基板中間体2がこの凹部42の内部に部分的に入り込むことが可能となっている。具体的には、この凹部42の深さは、例えば0.5[mm]以上、好ましくは1[mm]以上である。
【0042】
また、この凹部42の開口縁部には曲面状の面取り部43が形成されている。このため、凹部42内に基板中間体2が入り込む際に、当該凹部42の開口によって、基板中間体2が傷つくのを防止することができる。
【0043】
次いで、図5のステップS40において、図7(a)に示すように、バフ研磨機のバフロール50を回転させながら基板中間体2に対して相対的に移動させて、配線パターン20の端子部22における銅層23の表面を研磨する。この研磨によって、銅層23上に存在する酸化物や有機物等の異物が除去される。また、端子部22のみならず、カバーレイ30の樹脂層31の表面311もバフ研磨機のバフロール60によって研磨される。
【0044】
この際、本実施形態では、基板中間体2において折り曲げ予定部分313,314に対応する部分が、治具40の凹部42の内部に入り込み、バフロール50からカバーレイ30に対して印加される押圧力が緩和される。このため、カバーレイ30の表面313における折り曲げ予定部分313,314には、1[mm]未満の深さを有する浅い研磨傷312aが形成される。
【0045】
一方、カバーレイ30の表面311における非折り曲げ予定部分315には、バフロール50によって、1[μm]以上の深さを有する深い研磨傷312bが形成される。
【0046】
なお、このステップS40で使用されるバフロール50は、研磨剤を均一に付着させた布をロールに巻き付けて構成されている。研磨剤としては、例えば、酸化アルミ(Al)等のセラミックス微粒子やダイヤモンド微粒子を例示することができる。また、この研磨剤が付着される布としては、例えば、ナイロン製の布やポリプロピレン製の布等を例示することができる。
【0047】
なお、カバーレイ30の表面311に形成された多数の研磨傷312a,312bは、回転するバフロール50の前進/後退方向(図1における「バフ研磨方向」を参照)に対して実質的に平行に配置されており、相互に平行に配置されている。また、本実施形態では、図1に示すように、第1の折り曲げ線Cが、バフロール50の前進/後退方向に対して直交しているのに対し、第2の折り曲げ線Cが、バフロール50の前進/後退方向に対して実質的に平行となっている。
【0048】
次いで、図5のステップS50において、基板中間体2を治具40から取り外した後、図5のステップS60において、配線パターン20の端子部22における銅層23に対して前処理を行う。具体的には、先ず、端子部22の銅層23に対して脱脂洗浄処理を行うことで、銅層23の表面上の油性物質を除去する。次いで、端子部22の銅層23に対して酸処理を行うことで、銅層23上の酸化膜を除去する。なお、このステップS60における前処理の内容は一例に過ぎず、特にこれに限定されない。
【0049】
次いで、図5のステップS70において、電解ニッケルめっき処理によって、端子部22における銅層23の表面にニッケル層241(図2(b)参照)を形成する。次いで、図5のステップS80において、電解金めっき処理によって、ニッケル層241の表面に金層242(図2(b)参照)を形成する。これにより、図7(b)に示すように、銅層23上にめっき層24が形成され、端子部22が完成する。
【0050】
因みに、ステップS40において端子部22の銅層23の表面を研磨せずに、ステップS70において銅層23に対してめっき処理を行ってしまうと、銅層23とめっき層24との間の界面の密着性が低くなる場合がある。このため、端子部22における接触抵抗が高くなったり、コネクタ挿抜の繰り返しに対する端子部22の耐摩耗性が低下する場合がある。
【0051】
以上のように、本実施形態では、配線パターン20の両端から露出する銅層23をバフ研磨処理する際に、治具40の凹部42内に基板中間体2が退避するので、カバーレイ30の表面311において折り曲げ予定部分313,314に形成される研磨傷312aを浅くすることができる。このため、プリント配線板1を折り曲げ線C,Cで折り曲げた際に、研磨傷312aを起点としてクラックが進展するのを抑制することができ、曲げ半径が小さくてもプリント配線板1の破断を回避することができる。
【0052】
本実施形態における図5のステップS10が本発明における第1の工程の一例に相当し、本実施形態における図5のステップS20が本発明における第2の工程の一例に相当し、本実施形態における図5のステップS30が本発明における第3の工程の一例に相当し、本実施形態における図5のステップS40が本発明における第4の工程の一例に相当し、本実施形態における図5のステップS50が本発明における第5の工程の一例に相当し、本実施形態における図5のステップS60〜S80が本発明における第6の工程の一例に相当する。
【0053】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0054】
以下に、本発明をさらに具体化した実施例及び比較例により本発明の効果を確認した。以下の実施例及び比較例は、上述した実施形態におけるプリント配線板の破断抑制効果を確認するためのものである。
【実施例】
【0055】
<実施例1>
実施例1では、実施形態において説明した図1に示すようなL型形状のプリント配線板をサンプルとして10個作製した。
【0056】
具体的には、先ず、厚さ25[μm]のポリイミドフィルム(ベースフィルム)に厚さ18[μm]の銅箔が積層され、図1中のS,Sがいずれも50[mm]、w,wが何れも10[mm]のL型形状の片面銅箔積層板を準備し、この銅箔上にレジストパターンを形成してから当該銅箔に対してエッチング処理を行うことで、0.1[mm]間隔で平行に配置されたL型の配線パターンを30本形成した。それぞれの配線パターンの幅は0.1[mm]とした。
【0057】
次いで、厚さ12.5[μm]のポリイミドフィルムに、厚さ30[μm]の熱硬化型接着剤を塗布したカバーレイを、配線パターンの両端がそれぞれ3[mm]露出するように、ベースフィルム上に積層し、ホットプレスにて165℃で70分間キュア処理することで、カバーレイをベースフィルムに貼り合わせてプリント配線板(基板中間体)を形成した。なお、この実施例1では配線パターンの端子部のめっき処理は省略した。
【0058】
次いで、上述の図8(a)及び図8(b)で説明した構成の治具にプリント配線板を貼り付けた後、当該プリント配線板の全面に対してバフ研磨処理を行い、バフ研磨終了後にプリント配線板を治具から取り外した。治具の凹部の深さd(図8(b)参照)は1[mm]とした。また、バフロールの前進/後退方向(バフ研磨方向)は、第2の折り曲げ線(図1における符号Cに相当)に対して平行とした。
【0059】
このバフ研磨処理では、粒度#1000の酸化アルミをナイロン布に付着させたバフロールを使用し、バフロールの回転数を1450[rpm]とし、送り速度が1.65[m/min]とした。さらに、バフロールの押圧力は、1.5〜2.0[mm]のフットマークが形成されるように設定した。
【0060】
以上のように作製された10個のプリント配線板を、直径0.6[mm]のマンドレル(曲げ半径:0.3[mm])を用いて、第1の折り曲げ線(図1における符号Cに相当)を中心としてそれぞれ1〜10回折り曲げた後に、顕微鏡を用いて、カバーレイの第1の折り曲げ予定部分(図1における符号313に相当)を目視により観察した。
【0061】
また、第1の折り曲げ線と同様の条件で、10個のプリント配線板を第2の折り曲げ線(図1における符号Cに相当)を中心としてそれぞれ1〜10回折り曲げた後に、カバーレイの第2の折り曲げ予定部分(図1における符号314に相当)を観察した。
【0062】
この実施例1のサンプルでは、第1及び第2の折り曲げ予定部分のいずれについても、プリント配線板を10回折り曲げてもカバーレイの表面にクラックは発生していなかった。
【0063】
<実施例2>
実施例2では、図9(a)に示すようなストレートな形状のプリント配線板をサンプルとして10個作製した。なお、図9(a)は実施例2におけるサンプルの平面図を示す。図9(a)において、上述の実施形態におけるプリント配線板と同様の構成である部分について同一の符号を付している。
【0064】
具体的には、先ず、厚さ25[μm]のポリイミドフィルム(ベースフィルム)に厚さ18[μm]の銅箔が積層され、図9(a)中のSが100[mm]、wが10[mm]の短冊形状の片面銅張積層板を準備し、この銅箔上にレジストパターンを形成してから当該銅箔に対してエッチング処理を行うことで、0.1[mm]間隔で平行に配置された直線形状の配線パターンを30本形成した。それぞれの配線パターンの幅は0.1[mm]とした。また、同図に示すように、プリント配線板の長手方向の中央部の1箇所のみに折り曲げ線Cを設定した。
【0065】
次いで、厚さ12.5[μm]のポリイミドフィルムに、厚さ30[μm]の熱硬化型接着剤を塗布したカバーレイを、配線パターンの両端部がそれぞれ3[mm]露出するように、ベースフィルム上に積層し、ホットプレスにて165℃で70分間キュア処理することで、カバーレイをベースフィルムに貼り合わせた。
【0066】
次いで、図9(b)に示す治具にプリント配線板を貼り付けた後、実施例1と同様の条件で、当該プリント配線板の全面に対してバフ研磨処理を行い、バフ研磨終了後にプリント配線板を治具から取り外した。この実施例2では、バフロールの前進/後退方向(バフ研磨方向)を、第3の折り曲げ線Cに対して平行とした。
【0067】
実施例2で使用した治具には、図8(a)及び図8(b)を参照しながら実施形態で説明した治具40と同様に、図9(b)に示すように、カバーレイの折り曲げ予定部分316に対応する領域に凹部を形成した。なお、図9(b)は実施例2で使用する治具の平面図であり、同図において上述の実施形態における治具と同様の構成である部分に同一の符号を付している。
【0068】
この実施例2のサンプルについても、実施例1と同様の条件で、10個のプリント基板を長手方向の中央でそれぞれ1〜10回折り曲げた後に、カバーレイの折り曲げ予定部分(すなわちカバーレイの中央部分)を観察した。この実施例2のサンプルでも、プリント配線板を10回折り曲げてもカバーレイの折り曲げ予定部分にクラックは発生していなかった。
【0069】
<比較例1>
比較例1では、凹部が形成されていない板状部材を治具として用いたことを除いて、実施例1と同様のプリント配線板をサンプルとして10個作製した。
【0070】
この比較例1のサンプルについても、実施例1の同様の条件で、10個のプリント配線板を第1の折り曲げ線を中心としてそれぞれ1〜10回折り曲げた後に、カバーレイの第1の折り曲げ予定部分を観察した。
【0071】
同様に、実施例1と同様の条件で、10枚のプリント配線板を第2の折り曲げ線を中心としてそれぞれ1〜10回折り曲げた後に、カバーレイの第2の折り曲げ予定部分を観察した。
【0072】
第1の折り曲げ予定部分については、第1の折り曲げ線の方向に対して、バフ研磨処理におけるバフロールの前進/後退方向が直交していたため、プリント配線板を10回折り曲げてもカバーレイの表面にクラックは発生していなかった。
【0073】
一方、第2の折り曲げ予定部分については、プリント配線板を3回折り曲げた時点でカバーレイの樹脂層が破断し、プリント配線板を8回折り曲げた時点でカバーレイの接着層も破断して配線パターンが露出した。
【0074】
<比較例2>
比較例2では、凹部が形成されていない板状部材を治具として用いたことを除いて、実施例2と同様のプリント配線板をサンプルとして10個作製した。
【0075】
この比較例2のサンプルについても、実施例1と同様の条件で、10個のプリント配線板を長手方向の中央でそれぞれ1〜10回折り曲げた後に、カバーレイの折り曲げ予定部分(すなわちカバーレイの中央部分)を観察した。
【0076】
この比較例2のサンプルでは、上述の比較例1における第2の折り曲げ予定部分と同様に、プリント配線板を3回折り曲げた時点でカバーレイの樹脂層が破断し、プリント配線板を8回折り曲げた時点でカバーレイの接着層も破断して配線パターンが露出した。
【0077】
以上のように、凹部を有する治具を用いてバフ研磨処理を行った実施例1及び実施例2では、折り曲げに伴うクラックの発生を抑制することができた。これに対し、凹部を有しない治具を用いてバフ研磨処理を行った比較例1及び比較例2では、カバーレイの表面においてバフロールの前進/後退方向に沿った折り曲げ線を含む折り曲げ予定部分にクラックが発生した。
【符号の説明】
【0078】
1…プリント配線板
2…基板中間体
10…ベースフィルム
20…配線パターン
21…配線部
22…端子部
23…銅層
24…めっき層
241…ニッケル層
242…金層
30…カバーレイ
31…樹脂層
311…表面
312a,312b…研磨傷
313,314…折り曲げ予定部分
315…非折り曲げ予定部分
40…治具
41…支持体
42…凹部
43…面取り部
50…バフロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層上に配線パターンの導体層を形成する第1の工程と、
被覆層を前記絶縁層に積層して、前記導体層の一部を前記被覆層から露出させつつ前記導体層を前記被覆層で覆うことで、基板中間体を形成する第2の工程と、
前記基板中間体を治具に取り付ける第3の工程と、
前記基板中間体を前記治具に取り付けたまま、少なくとも前記導体層の露出部分を機械的に研磨する第4の工程と、
前記基板中間体を前記治具から取り外す第5の工程と、
前記導体層の露出部分に対してめっき処理を行って、前記導体層の上にめっき層を形成する第6の工程と、を備えており、
前記治具は、前記被覆層の折り曲げ予定部分に対応する領域に凹部を有することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプリント配線板の製造方法であって、
前記凹部の深さは、前記基板中間体の総厚以上であることを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
絶縁層と、
前記絶縁層上に形成され、端子部を有する配線パターンと、
前記絶縁層に積層され、前記端子部を露出させつつ前記配線パターンを覆う被覆層と、を備えたプリント配線板であって、
前記被覆層の表面に複数の研磨傷が形成されており、
前記被覆層の表面における折り曲げ予定部分に形成された前記研磨傷は、前記被覆層の表面における前記折り曲げ予定部分以外の部分に形成された研磨傷よりも浅いことを特徴とするプリント配線板。
【請求項4】
請求項3に記載のプリント配線板であって、
前記プリント配線板は、前記折り曲げ予定部分で折り曲げられていることを特徴とするプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−84776(P2013−84776A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223750(P2011−223750)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】