説明

プリント配線板の製造方法

【課題】
プリント配線板の電気めっきに際して、ビアホールやめっきレジスト等が存在する基板に対しても良好なビアホール充填性とめっき膜の平坦性を再現性良く保証する電気銅めっき法を提供する。
【解決手段】
プリント配線板の電気めっきに際して用いるめっき液に、N−アルキル、N−アラルキル、又はN−アリル基を付加してオニウムとした、ピリジニウム,ビピリジニウム,フェナンスロリニウム,キノリニウム,フェナジニウムの塩から選ばれる物質の少なくとも1種の化合物、および有機色素化合物の少なくとも1種を含ませる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板に電気銅めっきを施して、所望の電気回路を形成したプリント配線基板、特に、ブラインドビアホールを有するプリント配線板のビアホールが電気銅めっきにより充填されたプリント配線板及びその製造方法に関する。又、ブラインドビアホールを有するプリント配線板のビアホールを電気銅めっきする電気銅めっき方法に関する。更に、各種基板に対して電気銅めっきを行うための電気銅めっき液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化・高性能化に対する要求はますます大きくなっており、このような動向に対応して、種々の電子デバイスを実装するプリント配線板に対しても、配線の高密度化・高集積化と高接続信頼性に対する要求が一段と強くなっている。このような要求に応えるべく、べ一ス基板上にフルアディティブプロセスもしくはセミアディティブプロセスを経て導体層と絶縁層を交互に積層して3次元の微細回路を形成する、いわゆるビルドアップと呼ばれる工法が広く用いられるようになっている。
【0003】
このような微細な配線を形成する方法の一例としては、電気絶縁性樹脂層の表面にスパッタリング等によって銅の薄膜を析出させる。次いで、この上に所望のレジストパターンを形成した後、電気銅めっきを施す方法がよく用いられる。この工法においては、絶縁性層の下部に存在する導体層と、この上部に設ける導体層の間の電気的接続を確保する手段として、ビアホールと呼ばれる連絡孔を設けた後、この孔の壁面に導体めっきを施すかあるいは該孔全体を導体で満たす方法が採られるのが一般的である。
【0004】
すなわち、該絶縁性層の連絡路あるいは導通路となるべき部位に炭酸ガスレーザービームを照射したり、あるいはドリルによる機械的手段などによって該絶縁性層を穿孔し、次いで、該穿孔部の壁面に銅などの導体めっきを施すことによって導体層と導体層の間の電気的接続をとることが可能であり、当業者において広く採られている手段である。
【0005】
しかしながら、最も好ましくは、該ビアホールの壁面のみに導体めっきを施すのではなく、該ビアホール全体を電気めっきにより導体で充填することであり、こうすることによって電気的接続の信頼性が飛躍的に向上する。
【0006】
電気めっきによるビアホールの充填のさらなる利点は、絶縁性層を介して3層以上の導体層を利用する際に、第1の導体層と第2の導体層の間のビアホールを、第2の導体層と第3の導体層の間のビアホールの直上に配置することが可能になることである。
【0007】
その結果、ビアホールを設けるために割かれるスペースが全体として減少し、これによって、より高密度な実装が可能になるわけである。このようなビアホールの寸法としては、配線の微細化を反映して通常数十μm程度の直径のものが多く用いられる。
【0008】
ビアホ一ルを充填する電気めっきに際しては、予め電気導体めっきを施すべき部分の表面に無電解銅めっきなどにより薄く導体の膜を形成しておく必要がある。また、これに引き続いて行われる銅の厚付け電気めっきで、ビアホール内をめっきにより導体で充填するためには、特別な工夫が必要である。
【0009】
すなわち、導体回路を形成すべき表面には、ビアホール以外の平坦な上部表面とビアホールの凹部とが共存することになり、その結果、ビアホールを完全に電気めっきにより導体で充填しようとすれば上記上部表面に過度の導体めっき膜が形成されてしまう恐れが生じる。逆に、該上部表面上に適度の厚さの導体膜を電気めっきにより形成しようとすれば、ビアホールの充填が不充分になってしまうことになる。
【0010】
上記したような困難を回避して、ビアホール部を電気めっきにより導体を充填しつつ上部表面にも適度の厚さの導体膜を電気銅めっきなどにより形成する目的で、数種の添加剤を添加した電気めっき浴が広く用いられている。
【0011】
このようなビアホールを好適に充填するために調合された電気銅めっき液にはポリマー成分,レベラー成分,ブライトナー成分の3種の物質が添加剤として用いられており、このような3種の添加剤によるビアホール充填の手法はすでに広く認識されているところである。これら3種の添加剤の内、レベラー成分としては有機色素が通常用いられる。電気銅めっきによるビアホール充填に際して、これら3種の添加剤成分が作用する機構については未だ十分には理解されていないが、これら3種の添加剤の内、レベラー成分がビアホ一ル内外の銅析出速度を制御する働きを持つとの考えが広く受け入れられており、これについては以下のような説明がなされている。
【0012】
すなわち、レベラー成分を構成する分子は、電気銅めっきされる基板表面に吸着して電気銅めっきを阻害するが、電極(めっきされる基板表面)において、電気化学的に分解されるか、あるいはめっき膜中に取り込まれて消費される。一方、この消費に対応して、濃度が一定と考えられるめっき液バルクからレベラ一成分の分子がめっき基板表面まで拡散することになる。このレベラー成分の拡散速度がめっき速度に影響を与えることになるわけであるが、レベラー成分として用いられる物質は一般に比較的大きい分子量を有するため、ある程度以上早いめっき速度を採用すると、めっき液バルクから基板表面に到る経路(拡散層)にレベラー成分の濃度勾配が生じることになる。ところが、ビアホール凹部では、そうでない平坦な部分に比較してより長い拡散距離を必要とするため、ビアホール底部にはビアホールを含まない平坦な上部表面に比較してレベラー成分の拡散量が少なくなる。このような効果によって、ビアホール底部表面では、平坦部表面に比較して定常的により小さい濃度のレベラー成分しか存在しないこととなり、結果としてビアホール底部の銅めっき膜の成長が、平坦部表面に比較して早くなることになる。このようなメカニズムにより、ビアホールの電気銅めっきによる充填が行われるものと理解されている。
【0013】
ビアホールがめっきにより充填される更に別の機構も存在する。先に述べたブライトナーは基板表面に吸着してめっき反応を促進すると考えられており、めっきが進行するに従ってビアホール部では表面積が縮小するため、ビアホール部でのみブライトナーの表面密度の濃縮が起こることになる。その結果、ビアホール部では、元々平坦であった部位に比較してめっき反応がより促進されるため、ビアホール部がめっきで埋まる傾向が生じる。このようなメカニズムが実際に起こっている証拠としては、ビアホール部が充填された際、さらにめっきを続行すると、ビアホール上部のみ凸型にめっき膜が膨れた構造になることである。
【0014】
特許文献1でめっき液にカチオン性界面活性剤を用いること、特許文献2,3でめっき液にビピリジン類を添加剤として用いることが知られている。
【0015】
【特許文献1】特開平5−230687号公報(〔0044〕,〔0050〕段落等)
【特許文献2】特開2001−152387号公報(〔0021〕段落等)
【特許文献3】特開2000−273684号公報(〔0007〕段落等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記したように、レベラーとブライトナーのいずれの作用によっても基本的にビアホールの充填が可能になるわけであるが、本発明者は、実際の配線基板や半導体装置の配線に適用しようとした際、以下に述べる理由で両者いずれの作用を利用しても実用上不具合が生じる場合が少なくない。
【0017】
本発明者は、レベラーとブライトナーの作用の間には重要な質的相違が存在することを見出している。すなわち、レベラーを使用したビアホールの充填では、レベラーである色素分子の遅い拡散が支配因子となるため、パターンめっきなどに際しては、めっきレジストの近傍で拡散量が低下して、めっきレジストの足元ではレベラーの濃度が他の部位に比較して相対的に小さくなる現象をもたらす。このような効果により、該めっきレジストの近傍でレベラーの作用が小さくなり、めっき膜の成長を抑制する程度も小さくなる結果、めっきレジスト近傍でめっき膜の成長が他の部位より大きくなるわけである。めっき膜が、レベラーの作用によりレジスト形状に依存した断面形状を示す例を図3に掲げた。精密な部品実装の必要から、めっき膜が図3のような断面形状を有するのは好ましくなく、避ける必要がある。
【0018】
一方、ブライトナーの作用に依存しためっきでは、めっきレジスト近傍でのめっき膜の成長が銅イオンの拡散の影響を強く受けるようになるため、レベラーによる場合とは逆に銅イオンの拡散量の相対的に小さいレジスト近傍ではめっき膜厚が低下し、結果として図2に示したよう断面形状を呈するようになる。
【0019】
上記したようなレベラー成分を用いたビアホールの充填に際しても、また、ブライトナーの作用を利用したビアホールの充填においても、めっきレジスト近傍で膜厚の異常が起こり、その結果めっき膜の平坦性が低下して精密な電子部品の実装に支障を来すことになる。従って、上記したようなレベラー成分やブライトナー成分に依存したビアホール充填が示す弊害を実質的に除き、ビアホール部の充填とともに、それ以外の部位においても膜厚均一性の良好なめっき膜を与えるめっき方法を提供することが重要である。
【0020】
レベラーとして用いる有機色素物質は一般に高価であることから、レベラー成分を全く使用しないか、あるいは限られた小さい量しか使用しなくてもビアホールを充填することができれば、低コスト化につながるという別の利点もある。レベラーを用いることによる問題点をプリント配線板を例にして述べてきたが、同様の問題はより微細なビアホールを有する半導体基板の電気銅めっきの場合についても生じている。
【0021】
本発明の目的は、回路基板に電気銅めっきを施して所望の電気回路を形成したプリント配線板のビアホールが、電気銅めっきにより充填されたプリント配線基板を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者は、上記課題の解決法を鋭意検討した結果、レベラーとブライトナーによるビアホールの充填がめっきレジスト近傍で互いに逆方向の膜厚異常を引き起こすことに着目し、両者の作用を重ね合わせることによって平坦でビアホールが充填された良好なめっき膜が得られることを見出した。
【0023】
この平坦性を与えるメカニズムは、以下のようなものである。めっきレジスト壁の近傍で、一方はめっき膜の成長を過剰にし、他方はめっき膜の成長が抑えられるという互いに逆方向の作用を同時に惹起させることにより、両者の効果を相殺して平坦なめっき膜を得るという原理に基づいている。言い換えると、銅イオンの場合、レベラー成分の拡散の場合とは異なり、拡散量が多い程めっきされる量が多くなることである。溶質の拡散性を制限する同一の幾何学的条件のもとで起こる、このような両者の逆方向性を利用すると、めっき膜の膜厚均一性を高度に達成することが可能となる。
【0024】
このようなレベラーとブライトナー両者の作用を調節することにより、レジスト壁近傍で好ましい形状を得ることができるわけである。この両者の作用の調節は、両者の成分の濃度を相対的に変えることにより可能であり、このようにしてビアホールの充填とめっきレジスト近傍での平坦性の両方が獲得できるわけである。
【0025】
配線板の用途によっては、レジスト壁とレジスト壁の間を上部が凸型の形状をしためっき膜で充填することが所望される場合がある。このような場合には、レベラーとブライトナーの濃度関係を中立的な位置からブライトナーがやや優勢な方向の濃度に意図的にずらすことによって達成可能である。逆に、表面がやや凹型のめっき膜が必要な際には、レベラーの作用をブライトナーの作用よりも強くなるように濃度を調節すれば良い。
【0026】
ブライトナーとしては、有機ジスルフィドや有機チオール化合物があり、例えば、式
(NaO3S−CH2−CH2−CH2−S−)2 で示されるビス−(3−スルフォプロピル)ジスルフィドナトリウム塩(以下SPSと略す)や、式NaO3S−CH2−CH2−CH2−S−Hで示される3−スルフォプロピルチオール(以下MPSと略す)などを用いることができる。しかし、本発明の趣旨に照らして、本発明で使用するブライトナーが上記に限定されることがないのは言うまでもない。
【0027】
前記したようなブライトナーによるビアホール充填の作用は、ブラノトナー単独では効率が低く、ビアホールの充填に十分な結果をもたらすことができない。本発明は、この問題に対して複素環を有するオニウム化合物をブライトナーに共存させれば、上記したブライトナーの表面密度濃縮を効率よく起こさせることが可能となり、その結果、ビアホールの良好な充填性を得ることができることを見出した。上述の複素環オニウム化合物の例としては、N−アルキル、N−アラルキル、又はN−アリル基を付加してオニウムとした、ピリジニウム,ビピリジニウム,フェナンスロリニウム,キノリニウム,フェナジニウムの塩が挙げられる。
【0028】
本発明において、N−アルキル、N−アラルキル、又はN−アリル基を付加してオニウムとした、ピリジニウム,ビピリジニウム,フェナンスロリニウム,キノリニウム,フェナジニウムの塩とは、下記一般式
【0029】
【化1】

【0030】
で示される有機ピリジニウムカチオン(式中A1 はアルキル基,フェニル基,アラルキル基から選ばれる有機基を示す)、
【0031】
【化2】

【0032】
で示される有機ビピリジニウムカチオン(式中A2,A3は、それぞれ独立してアルキル基,フェニル基,アラルキル基から選ばれる有機基を示す)、
【0033】
【化3】

【0034】
で示される有機フェナンスロリニウムカチオン(式中A4 はアルキレン基,アラルキレン基から選ばれる有機基を示す)、
【0035】
【化4】

【0036】
で示される有機キノリニウムカチオン(式中A5 はアルキル基,フェニル基,アラルキル基から選ばれる有機基を示す)、
【0037】
【化5】

【0038】
で示される有機フェナジニウムカチオン(式中A6 はアルキル基,フェニル基,アラルキル基から選ばれる有機基を示す)、
の塩を言う。
【0039】
これら5種類のカチオンの塩の中でも、有機ビピリジニウムカチオンの塩が、ビアホール充填性に優れていることと、市場で容易に入手できることから特に好ましい。
【0040】
ここで、前記A1〜A6で示されるN−アルキル基、N−フェニル基、N−アラルキル基は、無置換であっても種々の置換基で置換されていても良い。しかし、多くの場合、銅めっき液中にスルホン酸アニオンが含まれることから、スルホン酸アニオンとの構造類似性から、置換基としてはスルホン酸基が好ましい。
【0041】
上記した、N−アルキル、N−アラルキル、又はN−アリル基を付加してオニウムとした、ピリジニウム,ビピリジニウム,フェナンスロリニウム,キノリニウム,フェナジニウムの塩は、従来レベラー成分として用いられてきた有機色素とは明確に区別されるものである。
【0042】
一方、前記レベラーの例としては、下式で示されるヤヌスグリーンB、
【0043】
【化6】

【0044】
【化7】

【0045】
および、下記一般式で示されるシアニン色素(R1,R2は炭素数10以下のアルキル基またはアラルキル基、R3,R4はアルキル基,ベンゾ基,フェニル基、またはアラルキル基、X- はハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン、Y1,Y2は酸素原子または硫黄原子、nは0〜5の整数を表す)、および、下記一般式
【0046】
【化8】

【0047】
で示されるシアニン色素(R5,R6は炭素数10以下のアルキル基またはアラルキル基、R3,R4はアルキル基,ベンゾ基,フェニル基、またはアラルキ基、X- はハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン、mは0〜5の整数を表す)、および、下記一般式
【0048】
【化9】

【0049】
で示されるシアニン色素(R9,R10は炭素数10以下のアルキル基またはアラルキル基、R11,R12はアルキル基,ベンゾ基,フェニル基、またはアラルキ基、X- はハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン、Y3,Y4は酸素原子または硫黄原子を表す)、および、下記一般式
【0050】
【化10】

【0051】
で示されるシアニン色素(R13,R14は炭素数10以下のアルキル基またはアラルキル基、R15,R16はアルキル基,ベンゾ基,フェニル基、またはアラルキ基、X- はハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン、Y5,Y6は酸素原子または硫黄原子を表す)、および、下式
【0052】
【化11】

【0053】
で示されるクリスタルバイオレット、および、下式
【0054】
【化12】

【0055】
で示されるブリリアントグリーン
などを用い得る。
【発明の効果】
【0056】
本発明の方法を採用することにより、ビアホールを有する基板に電気銅めっきを施す際、良好なビア充填性が得られるばかりでなく、めっきレジスト壁近傍においてもめっき膜厚の過大や過小などの異常が生じず、めっき膜の高い平坦性を実現することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
本発明で対象とするビアホールの一般的なサイズは、プリント配線板の場合、深さが
10〜600μm、径が5〜800μmである。このようなビアホールは、二つの導通層の間に介在する絶縁性樹脂層をレーザー光の照射などで穿孔することによって形成することができる。なお、本発明よる銅めっき方法を半導体基板に適用する場合には、上記ビアホールのサイズはより微細なものとなることは言うまでもない。
【0058】
次いで底部と側面に無電解めっき法やスパッタリング法などで導電化処理を施すことにより、これに引き続いて電気めっき法によりビアホール部に電気めっきを施すことが可能となる。上記絶縁性層が銅などの金属膜上に形成されている場合は、底部はビアホ一ルの穿孔によって導電性を有する表面となる。この場合も、穿孔に際して該金属膜表面に有機化合物の残渣などが付着することが多いことから、穿孔後、デスミア処理を行うことが好ましい。この他、ビアホールの外部に銅による回路を形成する際には、所望の部位を同様の手段で導電化処理して電気めっきできるようにしておくことが必要である。
【0059】
本発明の方法による電気銅めっき法を用いてビアホールを充填する際に用いる電気銅めっき液の代表的な組成は、硫酸銅五水和物を55g/L〜240g/L、濃硫酸を60g/L〜260g/L、塩素イオン濃度50〜100ppm である。しかしながら、この範囲をもし逸脱したとしても、直ちに本発明の実施が困難になるわけではない。
【0060】
こうして調製した電気銅めっき液のべ一ス組成に対して、ポリマー成分としてポリエチレングリコールを10〜500mg/L、ブライトナー成分として、SPSを1〜30mg/Lを加える。このめっき液に、さらに上記5種類のカチオン、即ち、N−アルキル、N−アラルキル、又は、N−アリル基を付加してオニウムとした、ピリジニウム,ビピリジニウム,フェナンスロリニウム,キノリニウム,フェナジニウムの塩の群から選ばれる化合物のうち、少なくとも1種類を2μmol/L〜2000μmol/Lめっき液に加えてめっきに供する。
【0061】
先に述べたように、このめっき液組成に対して前記一群のレベラー物質のうち、少なくとも一種を0.5mg /L〜30mg/L加えることができるが、先にも述べたように、レジスト端部の形状を所望のものにするために、その濃度は前記ブライトナー成分の濃度との兼ね合いで決めることが重要である。
【0062】
前記した有機カチオン並びにレベラーの対イオンとなるべきアニオンとしては、塩素などのハロゲンイオンの他に、スルホニウムイオンなども好適に用いることができる。これらイオン性化合物の添加は、母体のめっき液成分に比較して通常極めて微量であるため、対イオンがめっき液のイオン濃度に大きく影響を及ぼすことはない。元々、めっき液の基本的成分の中に含まれる塩素イオンやスルホン酸イオンを対イオンとして用いるならば、対イオンによる障害の発生する可能性が小さくなる。
【0063】
電気めっきに際して行う陰極と陽極との間の通電は、定電位法、あるいは定電流法のいずれを用いても本発明の目的を達成しうる。このうち、定電流法による電気鋼めっきに際しては、印加する電流密度は好ましくは2.5A/dm-2 であるが、0.5〜6.0A/
dm-2の範囲でも本発明の効果を発現することが可能である。
【0064】
以下、本発明の実施例に従い説明する。
【0065】
(実施例1)
表面に銅箔を有するべ一ス基板に、通常ビルドアップ工法に用いられる公知のエポキシ樹脂絶縁層を15μmの厚さでコートし、次いでこの表面に炭酸ガスレーザーを照射することによって、開口部80μmΦ,底部60μmΦ,深さ25μmのビアホールを形成した。この基板を過マンガン酸溶液に浸すことによってデスミヤ処理を施したのち、公知の触媒付与処理を行って、厚さ0.6μm の無電解銅めっき膜を形成した。この基板を、ビアホール部を含むように100mm×100mmに裁断したのち、下記表1に示す組成のめっき液に垂直に浸して、電流密度2.5A/dm-2 で25分間通電し、電気めっきを施した。該電気めっきに供しためっき槽の内寸法は、幅350mm,奥行き300mm,高さ500mmであり、電気めっきに際してはエアリングによりめっき液の撹拌を行った。
【0066】
電気めっきにより得たビアホール部を含む基板を透明樹脂に埋め込んで硬化させた後、切断し、研磨することによってビアホール部の断面を観察した。図1に本実施例に基づいて電気銅めっきを施した基板の断面顕微鏡写真の模式図を掲げる。同図より、ビアホールが銅めっきにより充填されていることが分かる。また、レジスト近傍においても±2μm程度の凹凸しかなく、平坦性が良好であった。
【0067】
【表1】

【0068】
(比較例1)
表1に示すめっき液組成のうち、ヤヌスグリーンBを用いなかった他は、実施例1と同様の操作で電気めっきを実施した。電気めっきにより得られたビアホール部を含む基板を切断し、研磨することによってビアホール部の断面を観察した。図2に本比較例に基づいて電気銅めっきを施した基板の断面の顕微鏡写真の模式図を掲げた。同図に示したように、めっきレジスト3の側壁に接する付近では、めっき膜の膜厚が減少し、全体として凸型のめっき膜断面形状となった。その結果、めっき膜は最大±6μm程度の膜厚差を生じる結果となった。
【0069】
(比較例2)
表1に示すめっき液組成のうち、ベンジルビオローゲンクロライドを用いなかった他は、実施例1と同様の操作で電気めっきを実施した。電気めっきにより得られたビアホール部を含む基板を切断し、研磨することによってビアホール部の断面を観察した。図3に本比較例に基づいて電気銅めっきを施した基板の断面の顕微鏡写真の模式図を掲げた。同図に示したように、めっきレジスト3の側壁に接する付近では、めっき膜は該めっきレジスト3の側壁から隔たった部位よりも相対的に膜厚が大きくなり、全体として凹型のめっき膜断面形状となった。その結果、めっき膜は最大±7μm程度の膜厚差を生じる結果となった。
【0070】
(実施例2)
実施例1で用いためっき液組成に替えて、表2に示すめっき液組成を用いた点を除けば、実施例1と同様の操作で電気めっきを実施した。電気めっきにより得られたビアホール部を含む基板を切断し、研磨することによってビアホール部の断面を顕微鏡により観察した。その結果、ビアホールが銅めっきにより充填されているばかりでなく、レジスト壁近傍において銅めっき膜の膜厚が異常になる現象もなく、平坦性が高いことが分かった。
【0071】
【表2】

【0072】
(比較例3)
表2に示すめっき液組成のうち、クリスタルバイオレットを用いなかった他は、実施例1と同様の操作で電気銅めっきを実施した。電気めっきを施したビアホール部を含む基板を切断し、研磨することによってビアホール部の断面を顕微鏡により観察した。その結果、ビアホール部はほぼ銅めっきにより充填されてはいるものの、レジスト壁近傍で膜厚が低下し、その結果全体としてめっき膜は±5μm以上の膜厚差を生じる結果となった。
【0073】
(実施例3)
実施例1で用いためっき液組成に替えて、表3に示すめっき液組成を用いた点を除けば、実施例1と同様の操作で電気めっきを実施した。電気めっきにより得られたビアホール部を含む基板を切断し、研磨することによってビアホール部の断面を顕微鏡により観察した。その結果、ビアホールが銅めっきにより充填されているばかりでなく、レジスト近傍において銅めっき膜厚が大きくなる現象もなく、平坦性の高いことが分かった。
【0074】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】実施例1により電気銅めっきを施したプリント配線板のビアホール部を含む部位の断面顕微鏡写真に基づいて作成した図である。
【図2】比較例1により電気銅めっきを施したプリント配線板のビアホール部を含む部位の断面顕微鏡写真に基づいて作成した図である。
【図3】比較例2により電気銅めっきを施したプリント配線板のビアホール部を含む部位の断面顕微鏡写真に基づいて作成した図である。
【符号の説明】
【0076】
1…基体、2…銅箔層、3…めっきレジスト、4…エポキシ樹脂層、5…銅めっき膜。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気銅めっきによりめっきされたビアホールを有するプリント配線板において、前記ビアホールが、N−アルキル、N−アラルキル、又はN−アリル基を付加してオニウムとした、ピリジニウム,ビピリジニウム,フェナンスロリニウム,キノリニウム,フェナジニウムの塩から選ばれる物質の少なくとも1種を含有し、
さらに有機硫黄化合物の少なくとも1種を含有し、
さらに下記一般式(1)
【化6】

で示されるヤヌスグリーンB、
下記一般式(2)
【化7】

で示されるシアニン色素(R1,R2は炭素数10以下のアルキル基またはアラルキル基、R3,R4はアルキル基,ベンゾ基,フェニル基、またはアラルキル基、X- はハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン、Y1,Y2は酸素原子または硫黄原子、nは0〜5の整数を表す)、
下記一般式(3)
【化8】

で示されるシアニン色素(R5,R6は炭素数10以下のアルキル基またはアラルキル基、R7,R8はアルキル基,ベンゾ基,フェニル基、またはアラルキル基、X- はハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン、mは0〜5の整数を表す)、
下記一般式(4)
【化9】

で示されるシアニン色素(R9,R10は炭素数10以下のアルキル基またはアラルキル基、R11,R12はアルキル基,ベンゾ基,フェニル基、またはアラルキル基、X- はハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン、Y3,Y4は酸素原子または硫黄原子を表す)、
下記一般式(5)
【化10】

で示されるシアニン色素(R13,R14は炭素数10以下のアルキル基またはアラルキル基、R15,R16はアルキル基,ベンゾ基,フェニル基、またはアラルキル基、X- はハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン、Y5,Y6は酸素原子または硫黄原子を表す)、
下記一般式(6)
【化11】

で示されるクリスタルバイオレット、
下記一般式(7)
【化12】

で示されるブリリアントグリーン、
の一般式(1)〜(7)の有機色素化合物のうち少なくとも1種を含有する電気銅めっき液を使用した電気銅めっきによってほぼ充填されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】
電気銅めっきによりめっきされたビアホールを有するプリント配線板を製造する方法において、前記電気銅めっきを施すに際して用いるめっき液が、N−アルキル基、N−アラルキル基、又はN−アリル基を付加してオニウムとした、ピリジニウム,ビピリジニウム,フェナンスロリニウム,キノリニウム,フェナジニウムの塩から選ばれる物質の少なくとも1種を含有し、
さらに有機硫黄化合物の少なくとも1種を含有し、
さらに下記一般式(1)
【化6】

で示されるヤヌスグリーンB、
下記一般式(2)
【化7】

で示されるシアニン色素(R1,R2は炭素数10以下のアルキル基またはアラルキル基、R3,R4はアルキル基,ベンゾ基,フェニル基、またはアラルキル基、X- はハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン、Y1,Y2は酸素原子または硫黄原子、nは0〜5の整数を表す)、
下記一般式(3)
【化8】

で示されるシアニン色素(R5,R6は炭素数10以下のアルキル基またはアラルキル基、R7,R8はアルキル基,ベンゾ基,フェニル基、またはアラルキル基、X- はハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン、mは0〜5の整数を表す)、
下記一般式(4)
【化9】

で示されるシアニン色素(R9,R10は炭素数10以下のアルキル基またはアラルキル基、R11,R12はアルキル基,ベンゾ基,フェニル基、またはアラルキル基、X- はハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン、Y3,Y4は酸素原子または硫黄原子を表す)、
下記一般式(5)
【化10】

で示されるシアニン色素(R13,R14は炭素数10以下のアルキル基またはアラルキル基、R15,R16はアルキル基,ベンゾ基,フェニル基、またはアラルキル基、X- はハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン、Y5,Y6は酸素原子または硫黄原子を表す)、
下記一般式(6)
【化11】

で示されるクリスタルバイオレット、
下記一般式(7)
【化12】

で示されるブリリアントグリーン、
の一般式(1)〜(7)の有機色素化合物のうち少なくとも1種を含有することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
前記有機色素化合物がヤヌスグリーンBであることを特徴とする請求項2に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
前記オニウム塩がベンジルビオローゲンクロライドであることを特徴とする請求項2に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
電気めっき方法において、前記電気めっきを施すに際して用いるめっき液が、N−アルキル、N−アラルキル、又はN−アリル基を付加してオニウムとした、ピリジニウム,ビピリジニウム,フェナンスロリニウム,キノリニウム,フェナジニウムの塩から選ばれる物質の少なくとも1種を含有し、さらに有機硫黄化合物の少なくとも1種を含有し、
さらに下記一般式(1)
【化6】

で示されるヤヌスグリーンB、
下記一般式(2)
【化7】

で示されるシアニン色素(R1,R2は炭素数10以下のアルキル基またはアラルキル基、R3、R4はアルキル基,ベンゾ基,フェニル基、またはアラルキル基、X- はハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン、Y1,Y2は酸素原子または硫黄原子、nは0〜5の整数を表す)、
下記一般式(3)
【化8】

で示されるシアニン色素(R5,R6は炭素数10以下のアルキル基またはアラルキル基、R7,R8はアルキル基,ベンゾ基,フェニル基、またはアラルキル基、X- はハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン、mは0〜5の整数を表す)、
下記一般式(4)
【化9】

で示されるシアニン色素(R9,R10は炭素数10以下のアルキル基またはアラルキル基、R11,R12はアルキル基,ベンゾ基,フェニル基、またはアラルキル基、X- はハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン、Y3,Y4は酸素原子または硫黄原子を表す)、
下記一般式(5)
【化10】

で示されるシアニン色素(R13,R14は炭素数10以下のアルキル基またはアラルキル基、R15,R16はアルキル基,ベンゾ基,フェニル基、またはアラルキル基、X- はハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン、Y5,Y6は酸素原子または硫黄原子を表す)、
下記一般式(6)
【化11】

で示されるクリスタルバイオレット、
下記一般式(7)
【化12】

で示されるブリリアントグリーン、
の一般式(1)〜(7)の有機色素化合物のうち少なくとも1種を含有する電気銅めっき液を使用して電気銅めっきを施すことを特徴とする電気めっき方法。
【請求項6】
前記有機色素化合物がヤヌスグリーンBであることを特徴とする請求項5に記載の電気めっき方法。
【請求項7】
前記オニウム塩がベンジルビオローゲンクロライドであることを特徴とする請求項5に記載の電気めっき方法。
【請求項8】
前記N−アルキル基、N−アラルキル基、N−アリル基が、スルホン酸基を有していることを特徴とする請求項5に記載の電気めっき方法。
【請求項9】
電気銅めっきを施すに際して用いられるめっき液において、N−アルキル、N−アラルキル、又はN−アリル基を付加してオニウムとした、ピリジニウム,ビピリジニウム,フェナンスロリニウム,キノリニウム,フェナジニウムの塩から選ばれる物質の少なくとも1種を含有し、さらに有機硫黄化合物の少なくとも1種を含有し、
さらに下記一般式(1)
【化6】

で示されるヤヌスグリーンB、
下記一般式(2)
【化7】

で示されるシアニン色素(R1,R2は炭素数10以下のアルキル基またはアラルキル基、R3,R4はアルキル基,ベンゾ基,フェニル基、またはアラルキル基、X-はハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン、Y1,Y2は酸素原子または硫黄原子、nは0〜5の整数を表す)、
下記一般式(3)
【化8】

で示されるシアニン色素(R5,R6は炭素数10以下のアルキル基またはアラルキル基、R7,R8はアルキル基,ベンゾ基,フェニル基、またはアラルキル基、X-はハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン、mは0〜5の整数を表す)、
下記一般式(4)
【化9】

で示されるシアニン色素(R9,R10は炭素数10以下のアルキル基またはアラルキル基、R11,R12はアルキル基,ベンゾ基,フェニル基、またはアラルキル基、X-はハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン、Y3,Y4は酸素原子または硫黄原子を表す)、
下記一般式(5)
【化10】

で示されるシアニン色素(R13,R14は炭素数10以下のアルキル基またはアラルキル基、R15,R16はアルキル基,ベンゾ基,フェニル基、またはアラルキル基、X-はハロゲンイオンまたは擬ハロゲンイオン、Y5,Y6は酸素原子または硫黄原子を表す)、
下記一般式(6)
【化11】

で示されるクリスタルバイオレット、
下記一般式(7)
【化12】

で示されるブリリアントグリーン、
の一般式(1)〜(7)の有機色素化合物のうち少なくとも1種を含有することを特徴とする電気銅めっき液。
【請求項10】
前記有機色素化合物がヤヌスグリーンBであることを特徴とする請求項9に記載の電気めっき方法。
【請求項11】
前記オニウム塩がベンジルビオローゲンクロライドであることを特徴とする請求項9に記載の電気めっき方法。
【請求項12】
前記N−アルキル基、N−フェニル基、N−アラルキル基が、スルホン酸基を有していることを特徴とする請求項9に記載の電気銅めっき液。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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