説明

プリント配線板及び該プリント配線板の製造方法

【課題】他のプリント配線板の電極等と超音波接続される接続パッド部を備えるプリント配線板において、良好な接続信頼性を実現することができると共に、材料コストを効果的に抑えることができるプリント配線板及び該プリント配線板の製造方法の提供を課題とする。
【解決手段】導電層2の一部を他の電極等との超音波接続を行うための接続パッド部Sとして形成してあるプリント配線板11であって、接続パッド部Sが、銅からなる電極層2aと、電極層2aを被覆する金からなる超音波接続層2bと、超音波接続層2bと電極層2aとの間に介在して、電極層2aを形成する銅が超音波接続層2bへと拡散することを防止するための拡散防止層2cとからなるものにおいて、拡散防止層2cは、1乃至複数層からなると共に、少なくとも1層がパラジウムからなるパラジウム層であるプリント配線板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他のプリント配線板の電極等と超音波接続される接続パッド部を備えるプリント配線板及び該プリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機やハードディスク装置等の電子機器の内部には、用途に合わせて様々なプリント配線板が配設されている。
このようなプリント配線板の中には、導電層の一部に接続パッド部を形成し、この接続パッド部を他のプリント配線板の電極等と超音波接続させることで電気的な導通を図るものがある。
このようなプリント配線板を示す従来技術として、例えば下記特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−49751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示すような、接続パッド部を備える従来のプリント配線板は、銅からなる電極と、電極を被覆する金からなる超音波接続層とで接続パッド部を形成すると共に、超音波接続層を他のプリント配線板の電極等と超音波接続させるものが一般的であった。
またこのようなプリント配線板においては、電極を形成する銅がイオン化して金からなる接続層に移動し、拡散した場合(いわゆるマイグレーション現象が生じた場合)、接続パッド部の密着性が低下して接続不良が発生することから、電極と超音波接続層との間にニッケル等からなる拡散防止層を介在させることで銅イオンの拡散を防止し、接続信頼性の維持を図るものがあった。またこのような拡散防止層を備えるプリント配線板においては、銅のマイグレーション現象を防止することに加えて、超音波接続時に超音波振動の減衰が生じないように、特に金からなる超音波接続層の厚みを厚く形成するもの(一般的には0.5μm以上)が一般的であった。
よってこのような拡散防止層を備える従来のプリント配線板においては、金からなる超音波接続層の厚みを厚く形成するものが一般的であったことから、材料コストが高くなるという問題があった。
【0005】
そこで本発明は上記従来における問題点を解決し、他のプリント配線板の電極等と超音波接続される接続パッド部を備えるプリント配線板において、良好な接続信頼性を実現することができると共に、材料コストを効果的に抑えることができるプリント配線板及び該プリント配線板の製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプリント配線板は、導電層の一部を他の電極等との超音波接続を行うための接続パッド部として形成してあるプリント配線板であって、前記接続パッド部が、銅からなる電極層と、該電極層を被覆する金からなる超音波接続層と、該超音波接続層と前記電極層との間に介在して、前記電極層を形成する銅が前記超音波接続層へと拡散することを防止するための拡散防止層とからなるものにおいて、前記拡散防止層は、1乃至複数層からなると共に、少なくとも1層がパラジウムからなるパラジウム層であることを第1の特徴としている。
【0007】
上記本発明の第1の特徴によれば、プリント配線板は、導電層の一部を他の電極等との超音波接続を行うための接続パッド部として形成してあるプリント配線板であって、前記接続パッド部が、銅からなる電極層と、該電極層を被覆する金からなる超音波接続層と、該超音波接続層と前記電極層との間に介在して、前記電極層を形成する銅が前記超音波接続層へと拡散することを防止するための拡散防止層とからなるものにおいて、前記拡散防止層は、1乃至複数層からなると共に、少なくとも1層がパラジウムからなるパラジウム層であることから、拡散防止層を備える構成とすることで、電極層を形成する銅が金からなる超音波接続層へと拡散することを効果的に防止することができる。よって良好な接続信頼性を維持することができるプリント配線板とすることができる。
また優れた強度を有するパラジウムで拡散防止層を形成することで、金からなる超音波接続層の厚みを薄肉化させても超音波接続時に超音波振動の減衰が生じることがない。よって良好な接続信頼性を実現することができると共に、材料コストの低コスト化を実現することができるプリント配線板とすることができる。
【0008】
また本発明のプリント配線板は、上記本発明の第1の特徴に加えて、前記拡散防止層は、1乃至複数層からなると共に、前記パラジウム層に加えて、少なくとも1層がニッケルからなるニッケル層であることを第2の特徴としている。
【0009】
上記本発明の第2の特徴によれば、上記本発明の第1の特徴による作用効果に加えて、前記拡散防止層は、1乃至複数層からなると共に、前記パラジウム層に加えて、少なくとも1層がニッケルからなるニッケル層であることから、電極層を形成する銅が金からなる超音波接続層へと拡散することを一段と効果的に防止することができる。
【0010】
また本発明のプリント配線板は、上記本発明の第2の特徴に加えて、前記ニッケル層は、前記パラジウム層の下地層であることを第3の特徴としている。
【0011】
上記本発明の第3の特徴によれば、上記本発明の第2の特徴による作用効果に加えて、前記ニッケル層は、前記パラジウム層の下地層であることから、プリント配線板の製造時に、ニッケル層を下地層としてパラジウム層を形成することができる。よってパラジウムを用いた膜形成の精度を向上させることができ、パラジウム層の厚みの均一化を効果的に実現することができる。
【0012】
また本発明のプリント配線板は、上記本発明の第1〜第3の何れか1つの特徴に加えて、前記拡散防止層は、2層からなることを第4の特徴としている。
【0013】
上記本発明の第4の特徴によれば、上記本発明の第1〜第3の何れか1つの特徴による作用効果に加えて、前記拡散防止層は、2層からなることから、良好な接続信頼性と薄肉化とを同時に実現することができる。
【0014】
また本発明のプリント配線板の製造方法は、請求項1に記載のプリント配線板の製造方法であって、絶縁性の樹脂からなる基材層を形成する基材層形成工程と、前記基材層上に導電性金属からなる導電層を形成する導電層形成工程と、前記基材層及び前記導電層を被覆する絶縁性の樹脂からなる絶縁層を形成する絶縁層形成工程とを備えると共に、前記導電層形成工程に他の電極等との超音波接続を行うための接続パッド部を形成する接続パッド部形成工程を備え、且つ該接続パッド部形成工程が、前記基材層上に銅からなる電極層を形成する電極層形成工程と、前記電極層に少なくともパラジウムを被覆させることで拡散防止層を形成する拡散防止層形成工程と、前記拡散防止層に金を被覆させることで超音波接続層を形成する超音波接続層形成工程とからなることを第5の特徴としている。
【0015】
上記本発明の第5の特徴によれば、プリント配線板の製造方法は、請求項1に記載のプリント配線板の製造方法であって、絶縁性の樹脂からなる基材層を形成する基材層形成工程と、前記基材層上に導電性金属からなる導電層を形成する導電層形成工程と、前記基材層及び前記導電層を被覆する絶縁性の樹脂からなる絶縁層を形成する絶縁層形成工程とを備えると共に、前記導電層形成工程に他の電極等との超音波接続を行うための接続パッド部を形成する接続パッド部形成工程を備え、且つ該接続パッド部形成工程が、前記基材層上に銅からなる電極層を形成する電極層形成工程と、前記電極層に少なくともパラジウムを被覆させることで拡散防止層を形成する拡散防止層形成工程と、前記拡散防止層に金を被覆させることで超音波接続層を形成する超音波接続層形成工程とからなることから、拡散防止層を備える構成とすることで、電極層を形成する銅が超音波接続層へと拡散することを効果的に防止することができる。よって良好な接続信頼性を維持することができるプリント配線板の製造方法とすることができる。
また優れた強度を備えるパラジウムで拡散防止層を形成することで、金からなる超音波接続層の厚みを薄肉化させても超音波接続時に超音波振動の減衰が生じることがない。よって良好な接続信頼性を実現することができると共に、材料コストの低コスト化を実現することができるプリント配線板の製造方法とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のプリント配線板によれば、他のプリント配線板の電極等と超音波接続される接続パッド部を備えるプリント配線板において、電極層を形成する銅が金からなる超音波接続層へと拡散することを効果的に防止することができる。よって良好な接続信頼性を維持することができるプリント配線板とすることができる。
また優れた強度を備えるパラジウムで拡散防止層を形成することで、金からなる超音波接続層の厚みを薄肉化させても超音波接続時に超音波振動の減衰が生じることがない。よって良好な接続信頼性を実現することができると共に、材料コストの低コスト化を実現することができるプリント配線板とすることができる。
またプリント配線板の製造時に、ニッケル層を下地層としてパラジウム層を形成することができる。よってパラジウムを用いた膜形成の精度を向上させることができ、パラジウム層の厚みの均一化を効果的に実現することができる。
また良好な接続信頼性と薄肉化とを同時に実現することができる。
また本発明のプリント配線板の製造方法によれば、他のプリント配線板の電極等と超音波接続される接続パッド部を備えるプリント配線板の製造方法において、電極層を形成する銅が金からなる超音波接続層へと拡散することを効果的に防止することができる。よって良好な接続信頼性を維持することができるプリント配線板の製造方法とすることができる。
また優れた強度を備えるパラジウムで拡散防止層を形成することで、金からなる超音波接続層の厚みを薄肉化させても超音波接続時に超音波振動の減衰が生じることがない。よって良好な接続信頼性を実現することができると共に、材料コストの低コスト化を実現することができるプリント配線板の製造方法とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るプリント配線板を備えてなるフレキシャを示す図で、(a)は本発明の実施形態に係るフレキシャが組み込まれるヘッド・スタック・アセンブリを示す平面図、(b)は本発明の実施形態に係るフレキシャを示す平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るプリント配線板を備えてなるフレキシャの要部を示す図で、(a)は平面図、(b)は(a)のa―a線方向における断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るプリント配線板及び該プリント配線板を備えてなるフレキシャの製造方法を簡略化して示す要部の断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るプリント配線板及び該プリント配線板を備えてなるフレキシャの製造方法を簡略化して示す要部の断面図である。
【図5】従来のプリント配線板及び該プリント配線板を備えてなるフレキシャを示す要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の図面を参照して、本発明の実施形態に係るプリント配線板及び該プリント配線板の製造方法を説明し、本発明の理解に供する。しかし、以下の説明は本発明の実施形態であって、特許請求の範囲に記載の内容を限定するものではない。
【0019】
まず図1、図2を参照して、本発明の実施形態に係るプリント配線板及び該プリント配線板を備えてなるフレキシャを説明する。
【0020】
図1に示すように、本発明の実施形態に係るプリント配線板を備えてなるフレキシャ10は、磁気ディスク装置としてのコンピュータのハードディスク装置(図示しない)を構成するヘッド・スタック・アセンブリ(Head Stack Assembly)100を形成するものである。
【0021】
前記ヘッド・スタック・アセンブリ100は、図1(a)に示すように、フレキシャ10と、磁気ヘッド部20と、サスペンション30と、アクチュエータ・アセンブリ(Actuator Assembly)40と、ボイスコイルモータ50とから構成される。
【0022】
前記フレキシャ10は、センス電流、書き込み情報及び読み出し情報等を送受信するためのものである。
より具体的には、図1(b)に示すように、絶縁層3に形成する開口部3aから導電層2の一部に形成する複数の接続パッド部Sを露出させ、これら接続パッド部Sが磁気ヘッド部20若しくは外部配線との接続を行うための固定部60と超音波接続されることで、情報等の送受信が行われる。
このフレキシャ10は、図2(b)に示すように、プリント配線板11と、金属支持基板12とから構成される。
【0023】
前記プリント配線板11は、主としてフレキシャ10の配線部を形成するもので、図2(b)に示すように、基材層1と、導電層2と、絶縁層3とから構成される。なお本実施形態においては、プリント配線板11の構成を基材層1の片面にのみ導電層2を備える、いわゆる片面フレキシブルプリント配線板とする構成としてある。
【0024】
前記基材層1は、絶縁性の樹脂からなり、プリント配線板11の基台となるものである。なお本実施形態においては、基材層1を絶縁性の樹脂フィルムで形成してある。
絶縁性の樹脂フィルムとしては、柔軟性に優れた樹脂材料からなるものが使用される。例えばポリイミドフィルムやポリエステルフィルム等、プリント配線板の基材層を形成する絶縁性の樹脂フィルムとして通常用いられるものであれば、如何なるものであってもよい。
また特に、柔軟性に加えて高い耐熱性をも有しているものが望ましい。例えばポリアミド系の樹脂フィルムや、ポリイミド、ポリアミドイミドなどのポリイミド系の樹脂フィルムや、ポリエチレンナフタレートを好適に用いることができる。
また耐熱性樹脂としては、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等、プリント配線板の基材層を形成する耐熱性樹脂として通常用いられるものであれば、如何なるものであってもよい。
また基材層1の厚みは、5μm〜20μm程度とすることが望ましい。
【0025】
前記導電層2は、基材層1上に積層され、主としてプリント配線板11の配線回路や電極等を形成する導電性金属からなる層である。
本実施形態に係るフレキシャ10においては、図1(b)に示すように、複数本の配線回路Wと、絶縁層3の開口部3aから露出されて他のプリント配線板の電極等と超音波接続される複数の接続パッド部Sとを備える構成としてある。
また本実施形態においては、詳しくは図示していないが、導電性金属からなる単層で配線回路Wを形成すると共に、導電性金属からなる複数層で接続パッド部Sを形成する構成としてある。
より具体的には、配線回路Wは銅(Cu)からなる単層で形成してある。
また接続パッド部Sは、図2(b)に示すように、接続パッド部Sの最内層を形成する電極層2aと、電極層2aを被覆すると共に接続パッド部Sの最外層を形成する超音波接続層2bと、超音波接続層2bと電極層2aとの間に介在して電極層2aを形成する導電性金属が超音波接続層2bへと拡散することを防止するための拡散防止層2cとで形成する構成としてある。
更に具体的には、電極層2aは配線回路Wと同一層となる銅で形成し、超音波接続層2bは金(Au)で形成してある。
また拡散防止層2cは電極層2aを被覆する第1拡散防止層2c−1と、第1拡散防止層2c−1を被覆する第2拡散防止層2c−2との2層で形成する構成としてある。また第2拡散防止層2c−2の下地層となる第1拡散防止層2c−1はニッケル(Ni)からなるニッケル層で形成し、第2拡散防止層2c−2はパラジウム(Pd)からなるパラジウム層で形成してある。
なお銅からなる配線回路W及び電極層2aの厚みは、5μm〜20μm程度、より好適には10μm〜15μm程度とすることが望ましい。
また金からなる超音波接続層2bの厚みは、0.05μm〜0.5μm程度、より好適には0.05μm〜0.1μm程度とすることが望ましい。
またニッケルからなる第1拡散防止層2c−1の厚みは、2μm〜5μm程度、より好適には2μm〜3μm程度とすることが望ましい。2μm未満の場合では拡散防止層としての役割を果たすことができないからであり、5μmを超える場合ではプリント配線板11の柔軟性がなくなるからである。
またパラジウムからなる第2拡散防止層2c−2の厚みは、0.05μm〜0.2μm程度、より好適には0.05μm〜0.1μm程度とすることが望ましい。0.05μm未満の場合では第2拡散防止層2c−2にピンホールが発生して拡散防止層としての役割を果たすことができないからであり、0.2μmを超える場合では層(膜)の形成が困難になると共に、層(膜)の応力が高くなり第2拡散防止層2c−2にクラックが発生して拡散防止層としての役割を果たすことができないからである。
なお配線回路W及び電極層2aは、めっきを用いて基材層1に銅を積層したり(いわゆるアディティブ法)、基材層1に予め積層される銅をエッチングしたり(いわゆるサブトラクティブ法)等の公知の形成方法を用いて形成することができる。
また第1拡散防止層2c−1及び第2拡散防止層2c−2は、めっきを用いてそれぞれ電極層2a、第1拡散防止層2c−1にニッケル、パラジウムを被覆させることで形成することができる。
また超音波接続層2bは、めっきを用いて第2拡散防止層2c−2に金を被覆させることで形成することができる。
【0026】
前記絶縁層3は、プリント配線板11の絶縁を確保するための絶縁性の樹脂からなる層である。
本実施形態においては、絶縁層3は感光性のポリイミド樹脂で形成する構成としてある。勿論、このような構成に限るものではなく、プリント配線板の絶縁層に用いられるものであれば、如何なるものを用いてもよい。
また図1(b)、図2(a)に示すように、絶縁層3には導電層2の一部を露出させるための開口部3aを設けてある。
なお絶縁層3の厚みは、1μm〜10μm程度とすることが望ましい。
【0027】
前記金属支持基板12は、平板状の金属箔や金属薄板からなり、フレキシャ10の剛性を確保すると共に、電気的なグランドを形成するものである。
なお本実施形態においては、金属支持基板12を形成する金属としてステンレス(SUS)を用いる構成としてある。
勿論、金属支持基板12を形成する金属は、ステンレスに限るものではなく、アルミ(Al)等、フレキシャの金属支持基板を形成する金属として通常用いられるものであれば、如何なる金属を用いてもよい。
なお金属支持基板12の厚みは、金属支持基板12を形成する金属としてステンレスを用いた場合は1μm〜30μm程度、より好適には15μm〜25μm程度とすることが望ましい。
また金属支持基板12は図示しない接着剤層を介してプリント配線板11に取り付けられている。
【0028】
前記磁気ヘッド部20は、情報の書き込み及び読み出しを行うためのもので、図示しないヘッドコアを備える。
このヘッドコアは、図1(a)には詳しくは図示していないが、サスペンション30に沿って設けられるフレキシャ10に接続されており、このフレキシャ10を介して情報がやりとりされる。
【0029】
前記サスペンション30は、磁気ヘッド部20を支持すると共に、磁気ヘッド部20に対して図示しないハードディスク装置の磁気ディスク方向に弾性力を加える機能を有するものである。
【0030】
前記アクチュエータ・アセンブリ40は、主として磁気ヘッド部20及びサスペンション30を揺動可能に保持するためのものである。
このアクチュエータ・アセンブリ40は、図1(a)に示すように、主として、磁気ヘッド部20及びサスペンション30を揺動可能に保持するためのアクチュエータユニット41と、ボイスコイルモータ50の回転力を伝達させるためのピボット軸42とから構成される。
【0031】
前記ボイスコイルモータ50は、アクチュエータユニット41に保持される磁気ヘッド部20及びサスペンション30を揺動するためのモータである。
【0032】
このような構成からなる本発明の実施形態に係るプリント配線板11及びプリント配線板11を備えてなるフレキシャ10は、以下の効果を奏する。
拡散防止層2cを備える構成とすることで、電極層2aを形成する銅がイオン化して金からなる超音波接続層2bへと移動して拡散すること(いわゆるマイグレーション現象)を効果的に防止することができる。
よって電極層2aを形成する銅が超音波接続層2bに拡散することに伴い、他のプリント配線板の電極等に対する接続パッド部Sの密着強度が低下し、接続パッド部Sが剥離すること等による接続不良が発生することを効果的に防止することができる。従って良好な接続信頼性を維持することができるプリント配線板11及びプリント配線板11を備えてなるフレキシャ10とすることができる。
また超音波接続層2bの下層(下地層)となる第2拡散防止層2c−2を、優れた強度を備えるパラジウムで形成することで、超音波接続層2bの厚みを薄肉化させても超音波接続時に超音波振動の減衰が生じることがない。よって金からなる超音波接続層2bの厚みを薄肉化させることができる。従って良好な接続信頼性を実現することができると共に、材料コストの低コスト化を実現することができるプリント配線板11及びプリント配線板11を備えてなるフレキシャ10とすることができる。
また拡散防止層2cをニッケルからなる第1拡散防止層2c−1と、パラジウムからなる第2拡散防止層2c−2の2層で形成する構成とすることで、電極層2aを形成する銅がイオン化して金からなる超音波接続層2bへと移動して拡散することを一段と効果的に防止することができる。よって良好な接続信頼性と薄肉化とを同時に実現することができるプリント配線板11及びプリント配線板11を備えてなるフレキシャ10とすることができる。
また第2拡散防止層2c−2の下地層となる第1拡散防止層2c−1をニッケルで形成することで、めっきによるパラジウムを用いた膜形成の精度を向上させることができ、パラジウムからなる第2拡散防止層2c−2の厚みの均一化を効果的に実現することができる。よって電極層2aを形成する銅がイオン化して金からなる超音波接続層2bへと移動して拡散することを一段と確実に防止することができると共に、超音波接続時に超音波振動の減衰が生じることを一段と防止することができる。従って一段と良好な接続信頼性を実現することができるプリント配線板11及びプリント配線板11を備えてなるフレキシャ10とすることができる。
【0033】
つまり図5に示すように、他のプリント配線板の電極等と超音波接続される接続パッド部Sを有する従来のプリント配線板74及びプリント配線板74を備えてなるフレキシャ70においては、基材層71上に銅からなる電極層72aを形成し、電極層72aをニッケルからなる拡散防止層72cで被覆し、更に拡散防止層72cを金からなる超音波接続層72bで被覆することで接続パッド部Sを形成するものがあった。
このような構成においては、電極層72aを形成する銅のマイグレーション現象を防止すると共に、超音波接続時に超音波振動の減衰が生じないように、特に金からなる超音波接続層72bの厚みを厚く形成するもの(一般的には0.5μm以上のもの)が一般的であった。
よってこのような構成のプリント配線板74及びプリント配線板74を備えてなるフレキシャ70においては、金からなる超音波接続層72bの厚みを厚くする構成であることから、材料コストが高いという問題があった。
なお従来のプリント配線板74及びプリント配線板74を備えてなるフレキシャ70を構成する基材層71、電極層72a、超音波接続層72b、絶縁層73、金属支持基板75は既述した本発明の実施形態に係るプリント配線板11及びプリント配線板11を備えてなるフレキシャ10を構成する電極層2a、超音波接続層2b、絶縁層3、金属支持基板12と同一部材であることから、以下の詳細な説明は省略するものとする。
【0034】
従って本発明の実施形態に係るプリント配線板11、プリント配線板11を備えてなるフレキシャ10の構成とすることで、良好な接続信頼性を実現することができると共に、材料コストを効果的に抑えることができるプリント配線板11、プリント配線板11を備えてなるフレキシャ10とすることができる。
【0035】
次に図3、図4を参照して、本発明の実施形態に係るプリント配線板11及びプリント配線板11を備えてなるフレキシャ10の製造方法を説明する。
【0036】
まず図3(a)を参照して、基材層形成工程Eにより、絶縁性の樹脂フィルムを用いて基材層1を形成する。
次に図3(a)を参照して、金属支持基板取り付け工程Fにより、基材層1の下面に図示しない接着剤層を介して金属支持基板12を取り付ける。
次に図3(b)を参照して、導電層形成工程Gにより、基材層1の上面に銅をめっきすることで導電層2を形成する。
次に図3(c)を参照して、接続パッド部形成工程Hにおける電極層形成工程H1により、エッチングレジスト(図示しない)を用いて電極層2aを形成しない領域の銅をエッチング除去することで電極層2aを形成する(いわゆるセミアディティブ法)。
なお図示していないが、電極層2aを形成する際に、エッチングレジストを用いて配線回路Wを形成しない領域の銅をエッチング除去することで、配線回路Wを電極層2aと同時に形成する。つまり電極層2aと配線回路Wとは、銅からなる同一層をエッチング処理することで形成することができる。
次に図4(a)を参照して、接続パッド部形成工程Hにおける拡散防止層形成工程H2により、電極層2aの表面にめっきを用いてニッケルを被覆させることで第1拡散防止層2c−1を形成する。
次に図4(b)を参照して、接続パッド部形成工程Hにおける拡散防止層形成工程H2により、第1拡散防止層2c−1の表面にめっきを用いてパラジウムを被覆させることで第2拡散防止層2c−2を形成する。
次に図4(c)を参照して、接続パッド部形成工程Hにおける超音波接続層形成工程H3により、第2拡散防止層2c−2の表面にめっきを用いて金を被覆させることで、超音波接続層2bを形成する。これにより導電層2の一部に接続パッド部Sが形成される。
次に図4(c)を参照して、絶縁層形成工程Iにより、基材層1及び導電層2の表面に感光性のポリイミド樹脂を被覆させ、露光処理、現像処理、熱硬化処理を経ることで絶縁層3を形成する。なおこの際、絶縁層3に接続パッド部Sを露出させるための開口部3aを形成する。
以上の工程を経ることで、本発明の実施形態に係るプリント配線板11及びプリント配線板11を備えてなるフレキシャ10が製造される。
このように製造されるフレキシャ10は、ヘッド・スタック・アセンブリ100に組み込まれ、更に図示しない磁気ディスク装置に組み込まれる。
【0037】
このような構成からなる本発明の実施形態に係るプリント配線板11の製造方法及びプリント配線板11を備えてなるフレキシャ10の製造方法は、以下の効果を奏する。
拡散防止層2cを設ける構成とすることで、電極層2aを形成する銅がイオン化して金からなる超音波接続層2bへと移動して拡散すること(いわゆるマイグレーション現象)を効果的に防止することができる。
よって電極層2aを形成する銅が超音波接続層2bに拡散することに伴い、他のプリント配線板の電極等に対する接続パッド部Sの密着強度が低下し、接続パッド部Sに剥離等の接続不良が発生することを効果的に防止することができる。従って良好な接続信頼性を維持することができるプリント配線板11及びプリント配線板11を備えてなるフレキシャ10の製造方法とすることができる。
また超音波接続層2bの下層(下地層)となる第2拡散防止層2c−2を、優れた強度を備えるパラジウムで形成することで、超音波接続層2bの厚みを薄肉化させても超音波接続時に超音波振動の減衰が生じることがない。よって金からなる超音波接続層2bの厚みを薄肉化させることができる。従って良好な接続信頼性を実現することができると共に、材料コストの低コスト化を実現することができるプリント配線板11及びプリント配線板11を備えてなるフレキシャ10の製造方法とすることができる。
また拡散防止層2cをニッケルからなる第1拡散防止層2c−1と、パラジウムからなる第2拡散防止層2c−2の2層で形成する構成とすることで、電極層2aを形成する銅がイオン化して金からなる超音波接続層2bへと移動して拡散することを一段と効果的に防止することができる。よって良好な接続信頼性と薄肉化とを同時に実現することができるプリント配線板11及びプリント配線板11を備えてなるフレキシャ10とすることができる。
また第2拡散防止層2c−2の下地層となる第1拡散防止層2c−1を、ニッケルからなるニッケル層で形成することで、めっきによるパラジウムを用いた膜形成の精度を向上させることができ、パラジウムからなる第2拡散防止層2c−2の厚みの均一化を効果的に実現することができる。よって電極層2aを形成する銅がイオン化して金からなる超音波接続層2bへと拡散することを一段と確実に防止することができると共に、超音波接続時に超音波振動の減衰が生じることを一段と防止することができる。従って一段と良好な接続信頼性を実現することができるプリント配線板11及びプリント配線板11を備えてなるフレキシャ10の製造方法とすることができる。
【0038】
なお本実施形態においては、拡散防止層2cの構成をニッケルからなる第1拡散防止層2c−1とパラジウムからなる第2拡散防止層2c−2との2層で形成する構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではない。
例えばパラジウムからなるパラジウム層の1層だけで拡散防止層2cを形成する構成としてもよい。このような構成とすることで、薄肉化を一段と実現することができると共に、一段と材料コストの低コスト化を実現することができるプリント配線板11及びプリント配線板11を備えてなるフレキシャ10とすることができる。また接続パッド部Sの製造工程(具体的には拡散防止層2cの製造工程)を簡略化することができ、製造効率の良いプリント配線板11及びプリント配線板11を備えてなるフレキシャ10の製造方法とすることができる。
なおこの際、パラジウム層の厚みは0.05μm〜0.2μm程度、より好適には0.05μm〜0.1μm程度とすることが望ましい。
また本発明の実施形態においては、プリント配線板11の構成を基材層1の片面にのみ導電層2を備える、いわゆる片面フレキシブルプリント配線板とする構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、基材層1の両面に導電層2を備える、いわゆる両面フレキシブルプリント配線板とする構成としてもよい。
またプリント配線板11の構成もフレキシブルプリント配線板に限るものではなく、リジットフレキシブルプリント配線板等、他のプリント配線板とする構成としてもよい。
また本実施形態に係るフレキシャ10の製造方法においては、導電層2、絶縁層3を形成する前に基材層1に金属支持基板12を取り付ける構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、フレキシブルプリント配線板11を形成した後に、接着剤層を介して金属支持基板12を取り付ける構成としてもよい。
また本実施形態に係るフレキシャ10の製造方法においては、いわゆるセミアディティブ法により配線回路W及び電極層2aを形成する構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、プリント配線板の配線回路や電極を形成する方法として公知の如何なる形成方法(アディティブ法やサブトラクティブ法等)を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によれば、他のプリント配線板の電極等と超音波接続される接続パッド部を備えるプリント配線板において、良好な接続信頼性を実現することができると共に、材料コストを効果的に抑えることができることから、他のプリント配線板の電極等と超音波接続される接続パッド部を備えるプリント配線板の分野における産業上の利用性が高い。
【符号の説明】
【0040】
1 基材層
2 導電層
2a 電極層
2b 超音波接続層
2c 拡散防止層
2c−1 第1拡散防止層
2c−2 第2拡散防止層
3 絶縁層
3a 開口部
10 フレキシャ
11 フレキシブルプリント配線板
12 金属支持基板
20 磁気ヘッド部
30 サスペンション
40 アクチュエータ・アセンブリ
41 アクチュエータユニット
42 ピボット軸
50 ボイスコイルモータ
60 固定部
70 フレキシャ
71 基材層
72 導電層
72a 電極層
72b 超音波接続層
72c 拡散防止層
73 絶縁層
74 フレキシブルプリント配線板
75 金属支持基板
100 ヘッド・スタック・アセンブリ
E 基材層形成工程
F 金属支持基板取り付け工程
G 導電層形成工程
H 接続パッド部形成工程
H1 電極層形成工程
H2 拡散防止層形成工程
H3 超音波接続層形成工程
I 絶縁層形成工程
S 接続パッド部
W 配線回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電層の一部を他の電極等との超音波接続を行うための接続パッド部として形成してあるプリント配線板であって、前記接続パッド部が、銅からなる電極層と、該電極層を被覆する金からなる超音波接続層と、該超音波接続層と前記電極層との間に介在して、前記電極層を形成する銅が前記超音波接続層へと拡散することを防止するための拡散防止層とからなるものにおいて、前記拡散防止層は、1乃至複数層からなると共に、少なくとも1層がパラジウムからなるパラジウム層であることを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】
前記拡散防止層は、1乃至複数層からなると共に、前記パラジウム層に加えて、少なくとも1層がニッケルからなるニッケル層であることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項3】
前記ニッケル層は、前記パラジウム層の下地層であることを特徴とする請求項2に記載のプリント配線板。
【請求項4】
前記拡散防止層は、2層からなることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のプリント配線板。
【請求項5】
請求項1に記載のプリント配線板の製造方法であって、絶縁性の樹脂からなる基材層を形成する基材層形成工程と、前記基材層上に導電性金属からなる導電層を形成する導電層形成工程と、前記基材層及び前記導電層を被覆する絶縁性の樹脂からなる絶縁層を形成する絶縁層形成工程とを備えると共に、前記導電層形成工程に他の電極等との超音波接続を行うための接続パッド部を形成する接続パッド部形成工程を備え、且つ該接続パッド部形成工程が、前記基材層上に銅からなる電極層を形成する電極層形成工程と、前記電極層に少なくともパラジウムを被覆させることで拡散防止層を形成する拡散防止層形成工程と、前記拡散防止層に金を被覆させることで超音波接続層を形成する超音波接続層形成工程とからなることを特徴とするプリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−48172(P2013−48172A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186172(P2011−186172)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(500400216)住友電工プリントサーキット株式会社 (197)
【Fターム(参考)】