説明

プリント配線板用シールドフィルム及びプリント配線板

【課題】大きな曲げ半径から小さな曲げ半径(1.0mm)になるまでの繰り返し屈曲・摺動に対して、金属層の破壊が起こりにくいプリント配線板用シールドフィルム及びプリント配線板を得る。
【解決手段】プリント配線板用シールドフィルム10は、絶縁層1の片面に形成された金属層2を備え、絶縁層1の片面表面の算術平均粗さ(JIS B 0601(1994年))が0.5〜5.0μmであるとともに、金属層2が、絶縁層1の片面表面に沿って蛇腹構造となるように形成されている。本発明のプリント配線板は、基体フィルムに、プリント配線板用シールドフィルム10が貼付されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータ、通信機器、ビデオカメラなどの装置内等において用いられるプリント配線板用シールドフィルム、及び、プリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属層を用いたプリント配線板用シールドフィルムは公知となっている。例えば、下記特許文献1に開示されるものがある。特許文献1には、合成樹脂シート基材の少なくとも一方の表面に、金属層が積層されており、該金属層と合成樹脂シートとの剥離強度が、5N/cm以下であることを特徴とする、容易にFPCなどに転写可能な転写用金属薄膜シート、及び、該転写用金属薄膜シートの金属層表面に、樹脂組成物に金属粉末及び/又はカーボン粉末を分散してなる導電性接着層を積層させたことを特徴とする、導電性接着層付き転写用金属薄膜シートが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−297714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、コンピュータ、通信機器、ビデオカメラなどの装置において、大きな曲げ半径から小さな曲げ半径(1.0mm)になるまでの繰り返し屈曲・摺動にさらに耐えうるプリント配線板用シールドフィルム、及び、プリント配線板が望まれるようになってきている。
【0005】
しかしながら、特許文献1のものは、ある程度の可撓性を有するものの、大きな曲げ半径から小さな曲げ半径(1.0mm)になるまでの繰り返し屈曲・摺動に対して考慮されているものではなく、このような大きな曲げ半径から小さな曲げ半径(1.0mm)になるまでの繰り返し屈曲・摺動を行うと、金属層の破壊が起こる場合があり、電磁波シールド特性が低下することがあった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、大きな曲げ半径から小さな曲げ半径(1.0mm)になるまでの繰り返し屈曲・摺動に対して、金属層の破壊が起こりにくいプリント配線板用シールドフィルム及びプリント配線板を提供する。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
(1) 本発明のプリント配線板用シールドフィルムは、絶縁層の片面に形成された第1の金属層を備え、前記絶縁層の片面表面の算術平均粗さ(JIS B 0601(1994年))が0.5〜5.0μmであるとともに、前記第1の金属層が、前記絶縁層の片面表面に沿って蛇腹構造となるように形成されているものである。
【0008】
上記構成によれば、金属層が高屈曲性を備えた蛇腹構造であるので、大きな曲げ半径から小さな曲げ半径(1.0mm)になるまでの繰り返し屈曲・摺動に対して、金属層の破壊が起こりにくいプリント配線板用シールドフィルムを提供できる。したがって、電磁波シールド特性が低減しにくいプリント配線板用シールドフィルムを提供できる。また、プリント配線板に貼付して用いた際には、プリント配線板を保護するとともに、プリント配線板が繰り返し屈曲・摺動するものであっても、電磁波シールド特性を維持できる。
【0009】
(2) 上記(1)のプリント配線板用シールドフィルムにおいては、前記第1の金属層の前記絶縁層と反対側の面の算術平均粗さが0.5〜5.0μmであることが好ましい.
【0010】
上記構成によれば、より好ましい形状の蛇腹構造が形成できており、上記(1)の効果をより確実に奏することができる。
【0011】
(3) 上記(1)又は(2)のプリント配線板用シールドフィルムにおいては、前記第1の金属層が、ニッケル、銅、銀、錫、金、パラジウム、アルミニウム、クロム、チタン、亜鉛、及び、これらの材料のいずれか1つ以上を含む合金のうちいずれかの材料を用いた層であることが好ましい。
【0012】
上記構成により、電磁波シールド特性の高い金属層とすることができる。また、該金属層の表面に、異なる材料からなる他の金属層を表面に形成した際には、合金化させやすいものとなる。
【0013】
(4) 上記(1)〜(3)のプリント配線板用シールドフィルムにおいては、前記第1の金属層が、1種以上の鱗片状金属粒子で形成された層であることが好ましい。
【0014】
上記構成により、プリント配線板に、所定温度(例えば、150℃)以上で加圧プレスによって貼付して用いた際には、鱗片状金属粒子間において、間隙部分が形成されるとともに金属間結合も生じて電気的に連続した金属層を形成できるので、より可撓性に富む導電層とすることができる。したがって、上述のようにプリント配線板に利用した際には、大きな曲げ半径から小さな曲げ半径(1.0mm)になるまでの繰り返し屈曲・摺動に対して、より金属層の破壊が起こりにくいプリント配線板用シールドフィルムを提供できる。
【0015】
(5) 上記(1)〜(4)のプリント配線板用シールドフィルムにおいては、前記第1の金属層の前記絶縁層と反対側に導電性接着剤層が形成されていることが好ましい。
【0016】
上記構成により、プリント配線板に容易に貼付することができるとともに、接着剤層として用いる他に、電磁波シールド効果を有する層としても使用できる。さらに、上記(4)のプリント配線板用シールドフィルムにおいては、プリント配線板に加圧プレスして貼付して用いた際、導電性接着剤層が、鱗片状金属粒子間の間隙に充填され、金属層の強度と可撓性とを向上させることができる。
【0017】
(6) また、上記(1)〜(3)のプリント配線板用シールドフィルムにおいては、前記第1の金属層が、孔を複数有する多孔質層であり、前記第1の金属層の前記絶縁層と反対側に導電性接着剤層が形成されているものであってもよい。
【0018】
上記構成によれば、プリント配線板に加圧プレスして貼付して用いた際、導電性接着剤層が、孔の空隙に充填され、金属層の強度と可撓性とを向上させることができる。
【0019】
(7) さらに、上記(1)〜(3)のプリント配線板用シールドフィルムにおいては、前記第1の金属層の前記絶縁層と反対側に、ニッケル、銅、銀、錫、金、パラジウム、アルミニウム、クロム、チタン、亜鉛、及び、これらの材料のいずれか1つ以上を含む合金のうちいずれかの材料を用いた第2の金属層が形成されており、前記第1の金属層と前記第2の金属層とが異なる種類の材料からなるものであってもよい。
【0020】
上記構成によれば、第2の金属層によって第1の金属層を防食する効果が得られる。また、プリント配線板に、所定温度(例えば、150℃)以上で加圧プレスによって貼付して用いた際には、第1の金属層と第2の金属層との間において、金属間化合物を形成することもできる。その結果として、プリント配線板に、所定温度(例えば、150℃)以上で加圧プレスによって貼付して用いた際には、強度及び可撓性が向上したプリント配線板用シールドフィルムとすることができる。
【0021】
(8) 上記(7)のプリント配線板用シールドフィルムにおいては、前記第2の金属層が、1種以上の鱗片状金属粒子で形成された層であることが好ましい。
【0022】
上記構成により、プリント配線板に、所定温度(例えば、150℃)以上で加圧プレスによって貼付して用いた際には、第2の金属層を構成する鱗片状金属粒子間において、間隙部分が形成されるとともに金属間結合も生じて電気的に連続した金属層を形成できるので、より可撓性に富む導電層とすることができる。したがって、大きな曲げ半径から小さな曲げ半径(1.0mm)になるまでの繰り返し屈曲・摺動に対して、より金属層の破壊が起こりにくいプリント配線板用シールドフィルムを提供できる。
【0023】
(9) 上記(8)のプリント配線板用シールドフィルムにおいては、前記第2の金属層の前記絶縁層と反対側に導電性接着剤層が形成されていることが好ましい。
【0024】
上記構成により、プリント配線板に容易に貼付することができるとともに、接着剤層として用いる他に、電磁波シールド効果を有する層としても使用できる。さらに、プリント配線板に加圧プレスして貼付して用いた際、導電性接着剤層が、鱗片状金属粒子間の間隙に充填され、金属層の強度と可撓性とを向上させることができる。
【0025】
(10) また、上記(7)のプリント配線板用シールドフィルムにおいては、前記第2の金属層が、孔を複数有する多孔質層であり、前記第2の金属層の前記絶縁層と反対側に導電性接着剤層が形成されているものであってもよい。
【0026】
上記構成により、プリント配線板に加圧プレスして貼付して用いた際、導電性接着剤層の一部が、第2の金属層における孔の空隙に充填され、第2の金属層の強度と可撓性とを向上させることができる。
【0027】
(11) 上記(9)又は(10)のプリント配線板用シールドフィルムにおいては、前記第1の金属層が、孔を複数有する多孔質層又は1種以上の鱗片状金属粒子で形成された層であることが好ましい。
【0028】
上記構成により、プリント配線板に加圧プレスして貼付して用いた際、前記第1の金属層が、孔を複数有する多孔質層である場合には孔の空隙に、1種以上の鱗片状金属粒子で形成された層である場合には鱗片状金属粒子間の間隙に、導電性接着剤層の一部が充填され、第1の金属層における強度と可撓性とを向上させることができる。
【0029】
(12) 別の観点として、本発明のプリント配線板用シールドフィルムは、絶縁層の片面に形成された第1の金属層と、前記第1の金属層の前記絶縁層と反対側に形成された第2の金属層とを備え、前記第1の金属層と前記第2の金属層とが、ニッケル、銅、銀、錫、金、パラジウム、アルミニウム、クロム、チタン、亜鉛、及び、これらの材料のいずれか1つ以上を含む合金のうちいずれかの材料を用いた層であるとともに、お互いに異なる種類の材料からなるものであってもよい。
【0030】
上記構成により、第2の金属層によって第1の金属層を防食する効果が得られる。また、プリント配線板に、所定温度(例えば、150℃)以上で加圧プレスによって貼付して用いた際には、第1の金属層と第2の金属層との間において、金属間化合物を形成することもできる。その結果として、プリント配線板に、所定温度(例えば、150℃)以上で加圧プレスによって貼付して用いた際には、強度が向上したプリント配線板用シールドフィルムとすることができる。したがって、大きな曲げ半径から小さな曲げ半径(1.0mm)になるまでの繰り返し屈曲・摺動に対して、より金属層の破壊が起こりにくいプリント配線板用シールドフィルムを提供できる。
【0031】
(13) 上記(12)のプリント配線板用シールドフィルムにおいては、前記第2の金属層が、1種以上の鱗片状金属粒子で形成された層であることが好ましい。
【0032】
上記構成により、プリント配線板に、所定温度(例えば、150℃)以上で加圧プレスによって貼付して用いた際には、第2の金属層を構成する鱗片状金属粒子間において、間隙部分が形成されるとともに金属間結合も生じて電気的に連続した金属層を形成できるので、より可撓性に富む導電層とすることができる。したがって、大きな曲げ半径から小さな曲げ半径(1.0mm)になるまでの繰り返し屈曲・摺動に対して、より金属層の破壊が起こりにくいプリント配線板用シールドフィルムを提供できる。
【0033】
(14) 上記(13)のプリント配線板用シールドフィルムにおいては、前記第2の金属層の前記絶縁層と反対側に導電性接着剤層が形成されていることが好ましい。
【0034】
上記構成により、プリント配線板に容易に貼付することができる。さらに、プリント配線板に加圧プレスして貼付して用いた際、導電性接着剤層が、鱗片状金属粒子間の間隙に充填され、金属層の強度と可撓性とを向上させることができる。
【0035】
(15) また、上記(12)のプリント配線板用シールドフィルムにおいては、前記第2の金属層が、孔を複数有する多孔質層であり、前記第2の金属層の前記絶縁層と反対側に導電性接着剤層が形成されているものであってもよい。
【0036】
上記構成により、プリント配線板に加圧プレスして貼付して用いた際、導電性接着剤層の一部が、第2の金属層における孔の空隙に充填され、第2の金属層の強度と可撓性とを向上させることができる。
【0037】
(16) 上記(14)又は(15)のプリント配線板用シールドフィルムにおいては、前記第1の金属層が、孔を複数有する多孔質層又は1種以上の鱗片状金属粒子で形成された層であることが好ましい。
【0038】
上記構成により、プリント配線板に加圧プレスして貼付して用いた際、前記第1の金属層が、孔を複数有する多孔質層である場合には孔の空隙に、1種以上の鱗片状金属粒子で形成された層である場合には鱗片状金属粒子間の間隙に、導電性接着剤層の一部が第2の金属層を介して充填される箇所が存在するので、第1の金属層における強度と可撓性とを向上させることができる。
【0039】
(17) さらに別の観点として、本発明のプリント配線板用シールドフィルムは、絶縁層の片面に形成された金属層を備え、前記金属層が、1種以上の鱗片状金属粒子で形成された層であってもよい。
【0040】
上記構成により、所定温度(例えば、150℃)以上で加圧プレスによって貼付して用いた際には、鱗片状金属粒子間において、間隙部分が形成されるとともに金属間結合も生じて電気的に連続した金属層を形成できるので、より可撓性に富む導電層とすることができる。したがって、大きな曲げ半径から小さな曲げ半径(1.0mm)になるまでの繰り返し屈曲・摺動に対して、より金属層の破壊が起こりにくいプリント配線板用シールドフィルムを提供できる。
【0041】
(18) 上記(17)のプリント配線板用シールドフィルムにおいては、前記金属層の前記絶縁層と反対側に導電性接着剤層が形成されていることが好ましい。
【0042】
上記構成により、プリント配線板に容易に貼付することができる。また、プリント配線板に加圧プレスして貼付して用いた際、導電性接着剤層が、鱗片状金属粒子間の間隙に充填され、金属層の強度と可撓性とを向上させることができる。
【0043】
(19) さらに他の観点として、本発明のプリント配線板用シールドフィルムは、絶縁層の片面に形成された金属層を備え、前記金属層が、孔を複数有する多孔質層であり、前記金属層の前記絶縁層と反対側に導電性接着剤層が形成されているものであってもよい。
【0044】
上記構成により、プリント配線板に加圧プレスして貼付して用いた際、導電性接着剤層の一部が、金属層における孔の空隙に充填され、金属層の強度と可撓性とを向上させることができる。したがって、大きな曲げ半径から小さな曲げ半径(1.0mm)になるまでの繰り返し屈曲・摺動に対して、より金属層の破壊が起こりにくいプリント配線板用シールドフィルムを提供できる。
【0045】
(20) 上記(1)〜(19)のプリント配線板用シールドフィルムにおいては、曲げ半径の下限が1.0mmまでの繰り返し屈曲・摺動用のシールドフィルムとして用いてもよい。
【0046】
(21) 本発明のプリント配線板は、1層以上のプリント回路を含む基板の少なくとも片面に、上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載のプリント配線板用シールドフィルムが、前記第1の金属薄膜層に塗布された導電性接着剤を介して貼付されてなるものである。
【0047】
(22) 本発明のプリント配線板は、1層以上のプリント回路を含む基板の少なくとも片面に、上記(5)に記載のプリント配線板用シールドフィルムが、前記第1の金属薄膜層に塗布された前記導電性接着剤を介して貼付されてなるものであるとともに、前記導電性接着剤層の一部が、前記鱗片状金属粒子の間隙に充填されているものである。
【0048】
(23) 本発明のプリント配線板は、1層以上のプリント回路を含む基板の少なくとも片面に、上記(6)に記載のプリント配線板用シールドフィルムが、前記第1の金属薄膜層に塗布された前記導電性接着剤を介して貼付されてなるものであるとともに、前記導電性接着剤層の一部が、前記孔の空隙に充填されているものである。
【0049】
(24) 本発明のプリント配線板は、1層以上のプリント回路を含む基板の少なくとも片面に、上記(7)又は(12)に記載のプリント配線板用シールドフィルムが、前記第2の金属薄膜層に塗布された導電性接着剤を介して貼付されてなるとともに、前記第1の金属薄膜層と前記第2の金属薄膜層との間に、前記第1の金属薄膜層を形成する材料と前記第2の金属薄膜層を形成する材料との金属間化合物層を備えているものである。
【0050】
(25) 本発明のプリント配線板は、1層以上のプリント回路を含む基板の少なくとも片面に、上記(8)又は(13)に記載のプリント配線板用シールドフィルムが、前記第2の金属薄膜層に塗布された導電性接着剤を介して貼付されてなるとともに、前記第2の金属薄膜層が、1種以上の鱗片状金属粒子同士の金属間結合層である。
【0051】
(26) 本発明のプリント配線板は、1層以上のプリント回路を含む基板の少なくとも片面に、上記(9)又は(14)に記載のプリント配線板用シールドフィルムが、前記第2の金属薄膜層に塗布された前記導電性接着剤を介して貼付されてなるものであるとともに、前記導電性接着剤層の一部が、前記鱗片状金属粒子の間隙に充填されているものである。
【0052】
(27) 本発明のプリント配線板は、1層以上のプリント回路を含む基板の少なくとも片面に、上記(10)又は(15)に記載のプリント配線板用シールドフィルムが、前記第2の金属薄膜層に塗布された前記導電性接着剤を介して貼付されてなるものであるとともに、前記導電性接着剤層の一部が、前記孔の空隙に充填されているものである。
【0053】
(28) 本発明のプリント配線板は、1層以上のプリント回路を含む基板の少なくとも片面に、上記(11)に記載のプリント配線板用シールドフィルムが、前記第2の金属薄膜層に塗布された前記導電性接着剤を介して貼付されてなるものであるとともに、前記導電性接着剤層の一部が、前記第1の金属薄膜層における前記鱗片状金属粒子の間隙又は前記孔の空隙に充填されているものである。
【0054】
(29) 本発明のプリント配線板は、1層以上のプリント回路を含む基板の少なくとも片面に、請求項16に記載のプリント配線板用シールドフィルムが、前記第2の金属薄膜層に塗布された前記導電性接着剤を介して貼付されてなるものであるとともに、前記導電性接着剤層の一部が、前記第1の金属薄膜層における前記鱗片状金属粒子の間隙又は前記孔の空隙に充填されているものである。
【0055】
(30) 本発明のプリント配線板は、1層以上のプリント回路を含む基板の少なくとも片面に、上記(17)に記載のプリント配線板用シールドフィルムが、前記金属薄膜層に塗布された導電性接着剤を介して貼付されてなるものであるとともに、前記金属薄膜層が、1種以上の鱗片状金属粒子同士の金属間結合層である。
【0056】
(31) 本発明のプリント配線板は、1層以上のプリント回路を含む基板の少なくとも片面に、請求項18に記載のプリント配線板用シールドフィルムが、前記金属薄膜層に塗布された導電性接着剤を介して貼付されてなるものであるとともに、前記導電性接着剤層の一部が、前記鱗片状金属粒子の間隙に充填されているものである。
【0057】
(32) 本発明のプリント配線板は、1層以上のプリント回路を含む基板の少なくとも片面に、請求項19に記載のプリント配線板用シールドフィルムが、前記金属薄膜層に塗布された導電性接着剤を介して貼付されてなるものであるとともに、前記導電性接着剤層の一部が、前記孔の空隙に充填されているものである。
【0058】
上記(21)〜(32)の構成によれば、上記(1)〜(19)のプリント配線板用シールドフィルムのそれぞれの効果を有したプリント配線板を提供できる。特に、大きな曲げ半径から小さな曲げ半径(1.0mm)になるまでの繰り返し屈曲・摺動に対しても、電磁波シールド特性が低減せず、且つ、物理的に保護されたプリント配線板を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係るプリント配線板用シールドフィルムについて説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るプリント配線板用シールドフィルムの模式断面図である。
【0060】
図1に示すプリント配線板用シールドフィルム10は、絶縁層1の片面(表面の算術平均粗さ(JIS B 0601(1994年))が0.5〜5.0μm)に、蛇腹構造の金属層2を設けてなるものである。
【0061】
絶縁層1は、カバーフィルム又は絶縁樹脂のコーティング層からなる。カバーフィルムの場合は、エンジニアリングプラスチックからなる。例えば、ポリプロピレン、架橋ポリエチレン、ポリエステル、ポリベンツイミダゾール、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などが挙げられる。あまり耐熱性を要求されない場合は、安価なポリエステルフィルムが好ましく、難燃性が要求される場合においては、ポリフェニレンサルファイドフィルム、さらに耐熱性が要求される場合にはポリイミドフィルムが好ましい。絶縁樹脂の場合は、絶縁性を有する樹脂であればよく、例えば、熱硬化性樹脂又は紫外線硬化性樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂、アクリル変性シリコン樹脂などが挙げられる。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、エポキシアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、及びそれらのメタクリレート変性品などが挙げられる。なお、硬化形態としては、熱硬化、紫外線硬化、電子線硬化などどれでもよく、硬化するものであればよい。
【0062】
絶縁層1の表面粗さの調整方法としては、絶縁層1の表面自体を砂などの粒子で荒らすサンドブラスト法、絶縁層1の表面に、微粒子が分散混入された合成樹脂を塗布して凹凸をつけるケミカルマット法、硬化前の樹脂材料自体に予め微粒子を混入しておいて硬化させて絶縁層1を成形する練り込み法、酸性薬剤又はアルカリ性薬剤などの薬剤によるエッチング法、プラズマエッチング法などが挙げられる。
【0063】
金属層2の絶縁層と反対側の面の算術平均粗さは、0.5〜5.0μmであって、所望する形状の蛇腹構造が形成されている。金属層2を形成する金属材料としては、ニッケル、銅、銀、錫、金、パラジウム、アルミニウム、クロム、チタン、亜鉛、及び、これらの材料のいずれか1つ以上を含む合金などを挙げることができるが、金属材料及び厚みは、求められる電磁波シールド特性及び繰り返し屈曲・摺動耐性に応じて適宜選択すればよいが、厚さにおいては、0.1μm〜8μm程度の厚さとすればよい。なお、金属層2の形成方法としては、電解メッキ法、無電解メッキ法、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、真空蒸着法、CVD法、メタルオーガニックなどがある。
【0064】
なお、図示していないが、絶縁層1の外側には、離型層とセパレートフィルムとが順に形成されていてもよい。また、金属層2の外側に接着剤層が形成されていてもよい。これらにより、プリント配線板に接着剤層を介して貼付した後、プリント配線板用シールドフィルム10をプレス機で加熱・加圧しつつ接合することができ、この接合後には、離型層とともにセパレートフィルムを剥がすことで、シールド付のプリント配線板を得ることができる。
【0065】
ここで、接着剤層としては、ポリスチレン系、酢酸ビニル系、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリアミド系、ゴム系、アクリル系などの熱可塑性樹脂や、フェノール系、エポキシ系、ウレタン系、メラミン系、アルキッド系などの熱硬化性樹脂が用いられる。耐熱性が特に要求されない場合は、保管条件等に制約を受けないポリエステル系の熱可塑性樹脂が望ましく、耐熱性もしくはよりすぐれた可撓性が要求される場合においては、シールド層を形成した後の信頼性の高いエポキシ系の熱硬化性樹脂が望ましい。また、そのいずれにおいても熱プレス時のにじみ出し(レジンフロー)の小さいものが望ましいことはいうまでもない。
【0066】
また、接着剤層は、導電性フィラーを含有する上記樹脂で構成されるものが好ましい。接着剤層として用いる他に、電磁波シールド効果を有する層としても使用できるからである。導電性フィラーとしては、カーボン、銀、銅、ニッケル、ハンダ、アルミ及び銅粉に銀メッキを施した銀コート銅フィラー、さらには樹脂ボールやガラスビーズ等に金属メッキを施したフィラー又はこれらのフィラーの混合体が用いられる。銀は高価であり、銅は耐熱の信頼性に欠け、アルミは耐湿の信頼性に欠け、さらにハンダは十分な導電性を得ることが困難であることから、比較的安価で優れた導電性を有し、さらに信頼性の高い銀コート銅フィラー又はニッケルを用いるのが好ましい。
【0067】
導電性フィラーの接着性樹脂への配合割合は、フィラーの形状等にも左右されるが、銀コート銅フィラーの場合は、接着性樹脂100重量部に対して10〜400重量部とするのが好ましく、さらに好ましくは20〜150重量部とするのがよい。400重量部を超えると、グランド回路(銅箔)への接着性が低下し、プリント配線板等の可撓性が悪くなる。また、10重量部を下回ると導電性が著しく低下する。また、ニッケルフィラーの場合は、接着性樹脂100重量部に対して40〜400重量部とするのが好ましく、さらに好ましくは100〜350重量部とするのがよい。400重量部を超えると、グランド回路(銅箔)への接着性が低下し、シールドFPC等の可撓性が悪くなる。また、40重量部を下回ると導電性が著しく低下する。金属フィラーの形状は、球状、針状、繊維状、フレーク状、樹脂状のいずれであってもよい。また、上記導電性フィラーが、低融点金属であることが好ましい。
【0068】
本実施形態によれば、金属層2が高屈曲性を備えた蛇腹構造であるので、大きな曲げ半径から小さな曲げ半径(1.0mm)になるまでの繰り返し屈曲・摺動に対して、金属層2の破壊が起こりにくいプリント配線板用シールドフィルム10を提供できる。したがって、電磁波シールド特性が低減しにくいプリント配線板用シールドフィルムを提供できる。また、プリント配線板に貼付して用いた際には、プリント配線板を保護するとともに、プリント配線板が繰り返し屈曲・摺動するものであっても、電磁波シールド特性を維持できる。
【0069】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係るプリント配線板用シールドフィルムについて説明する。図2は、本発明の第2実施形態に係るプリント配線板用シールドフィルムの模式断面図である。なお、第1実施形態の符号1、2と同様の部分には、順に符号11、12を付し、その説明を省略することがある。
【0070】
本実施形態に係るプリント配線板用シールドフィルム20は、金属層12(第1の金属層)の絶縁層11と反対側の面に、蛇腹構造の金属層13(第2の金属層)を備えている点が、第1実施形態と異なっている。
【0071】
金属層13は、ニッケル、銅、銀、錫、金、パラジウム、アルミニウム、クロム、チタン、亜鉛、及び、これらの材料のいずれか1つ以上を含む合金のうちいずれかの材料であって、金属層12と異なる材料で形成されているが、金属材料及び厚みは、求められる電磁波シールド特性及び繰り返し屈曲・摺動耐性に応じて適宜選択すればよい。なお、厚さにおいては、0.1μm〜8μm程度の厚さとすればよい。また、金属層13の形成方法としては、電解メッキ法、無電解メッキ法、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、真空蒸着法、CVD法、メタルオーガニックなどがある。また、金属層13の絶縁層と反対側の面の算術平均粗さは、0.5〜5.0μmであって、所望する形状の蛇腹構造が形成されている。ここで、一変形例として、金属層13が、錫などの比較的柔軟度の高い金属材料からなる場合には、外部側の面が蛇腹構造となっていなくてもよい。
【0072】
なお、図示していないが、絶縁層11の外側には、離型層とセパレートフィルムとが順に形成されていてもよい。また、金属層13の外側に第1実施形態と同様の接着剤層が形成されていてもよい。これらにより、プリント配線板に接着剤層を介して貼付した後、プリント配線板用シールドフィルム20をプレス機で加熱・加圧しつつ接合することができ、この接合後には、離型層とともにセパレートフィルムを剥がすことで、シールド付のプリント配線板を得ることができる。
【0073】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。また、金属層13によって金属層12を防食する効果が得られる。また、プリント配線板に、所定温度(例えば、150℃)以上で加圧プレスによって貼付して用いた際には、金属層12と金属層13との間において、金属間化合物を形成することもできる。その結果として、プリント配線板に、所定温度以上で加圧プレスによって貼付して用いた際には、強度が向上するので、大きな曲げ半径から小さな曲げ半径(1.0mm)になるまでの繰り返し屈曲・摺動に対して、より金属層の破壊が起こりにくいプリント配線板用シールドフィルムを提供できる。
【0074】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係るプリント配線板用シールドフィルムについて説明する。図3は、本発明の第3実施形態に係るプリント配線板用シールドフィルムの模式断面図である。
【0075】
図3に示すプリント配線板用シールドフィルム30は、絶縁層21のほぼフラットな片面に、1種以上の鱗片状金属粒子を堆積させることによって形成した金属層22を設けてなるものである。
【0076】
金属層22は、図4の模式図に示すように、多数の鱗片状金属粒子を堆積させることによって形成されるものである。この鱗片状金属粒子の平均粒子径は1μm〜100μm、厚さは0.1μm〜8μmであるが、厚さが8μmを超えるものは、金属層22が厚すぎることになり、所望する厚さのフィルムを得ることができなくなってしまうので、好ましくない。また、鱗片状金属粒子の材料としては、ニッケル、銅、銀、錫、金、パラジウム、アルミニウム、クロム、チタン、亜鉛、及び、これらの材料のいずれか1つ以上を含む合金などが挙げられるが、求められる電磁波シールド特性及び繰り返し屈曲・摺動耐性に応じて1種以上の材料が適宜選択される。なお、このような鱗片状金属粒子が堆積した金属層においては、所定温度以上の加熱下での加圧により、鱗片状金属粒子間において間隙部分が形成されるとともに金属間結合も生じ、電気的に連続した層とすることができる。なお、このときの金属層22は、該金属層22を含むシールドフィルムをプリント配線板に所定温度(例えば、150℃)以上で加圧プレスによって貼付した際、0.1μm〜8μmの厚さとなるような厚さに予め調整されている。
【0077】
また、図示していないが、絶縁層21の外側には、離型層とセパレートフィルムとが順に形成されていてもよい。また、金属層22の外側に第1実施形態と同様の接着剤層が形成されていてもよい。これらにより、プリント配線板に接着剤層を介して貼付した後、プリント配線板用シールドフィルム30をプレス機で加熱・加圧しつつ接合することができ、この接合後には、離型層とともにセパレートフィルムを剥がすことで、シールド付のプリント配線板を得ることができる。このとき、特に、加熱・加圧によって鱗片状金属粒子間に形成された間隙部分に、接着剤層の一部が充填され、金属層の強度と可撓性とを向上させることができる。
【0078】
本実施形態によれば、プリント配線板に、所定温度(例えば、150℃)以上で加圧プレスによって貼付して用いた際には、鱗片状金属粒子間において、間隙部分が形成されるとともに金属間結合も生じて電気的に連続した金属層を形成できるので、より可撓性に富む導電層とすることができる。したがって、上述のようにプリント配線板に利用した際には、大きな曲げ半径から小さな曲げ半径(1.0mm)になるまでの繰り返し屈曲・摺動に対して、より金属層の破壊が起こりにくいプリント配線板用シールドフィルムを提供できる。
【0079】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態に係るプリント配線板用シールドフィルムについて説明する。図5は、本発明の第4実施形態に係るプリント配線板用シールドフィルムの模式断面図である。
【0080】
本実施形態に係るプリント配線板用シールドフィルム40は、絶縁層31のほぼフラットな片面に、金属層32(第1の金属層)、金属層33(第2の金属層)を順次設けてなるものである。
【0081】
金属層33は、ニッケル、銅、銀、錫、金、パラジウム、アルミニウム、クロム、チタン、亜鉛、及び、これらの材料のいずれか1つ以上を含む合金のうちいずれかの材料であって、金属層32と異なる材料で形成されているが、金属材料及び厚みは、求められる電磁波シールド特性及び繰り返し屈曲・摺動耐性に応じて適宜選択すればよい。なお、金属層32、33の厚さは、0.1μm〜8μm程度の厚さとしてもよい。また、金属層32、33の形成方法としては、電解メッキ法、無電解メッキ法、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、真空蒸着法、CVD法、メタルオーガニックなどがある。
【0082】
また、図示していないが、絶縁層31の外側には、離型層とセパレートフィルムとが順に形成されていてもよい。また、金属層32の外側に第1実施形態と同様の接着剤層が形成されていてもよい。これらにより、プリント配線板に接着剤層を介して貼付した後、プリント配線板用シールドフィルム40をプレス機で加熱・加圧しつつ接合することができ、この接合後には、離型層とともにセパレートフィルムを剥がすことで、シールド付のプリント配線板を得ることができる。
【0083】
本実施形態によれば、金属層33によって金属層32を防食する効果が得られる。また、プリント配線板に、所定温度(例えば、150℃)以上で加圧プレスによって貼付して用いた際には、金属層32と金属層33との間において、金属間化合物(図示せず)を形成することもできる。その結果として、プリント配線板に、所定温度以上で加圧プレスによって貼付して用いた際には、強度が向上するので、大きな曲げ半径から小さな曲げ半径(1.0mm)になるまでの繰り返し屈曲・摺動に対して、より金属層の破壊が起こりにくいプリント配線板用シールドフィルムを提供できる。
【0084】
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態に係るプリント配線板について説明する。図6は、本発明の第5実施形態に係るプリント配線板の製造方法の工程を順に示す模式断面図である。図7は、第5実施形態のプリント配線板用のシールドフィルム体である。なお、第1実施形態の符号1、2、10と同様の部分には、順に符号41、42、50を付し、その説明を省略することがある。
【0085】
本実施形態に係るプリント配線板100は、図6(c)に示すように、第1実施形態と同様のプリント配線板用シールドフィルム50と基体フィルム46とが、接着剤層47によって接着されてなるものである。基体フィルム46は、ベースフィルム43と、ベースフィルム43上に形成されたプリント回路44(信号回路44a及びグランド回路44b)と、少なくとも一部(非絶縁部)44cを除いてプリント回路44上に形成された絶縁フィルム45とを備えている。
【0086】
ベースフィルム43、絶縁フィルム45はいずれもエンジニアリングプラスチックからなる。例えば、ポリプロピレン、架橋ポリエチレン、ポリエステル、ポリベンツイミダゾール、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂が挙げられる。あまり耐熱性を要求されない場合は、安価なポリエステルフィルムが好ましく、難燃性が要求される場合においては、ポリフェニレンサルファイドフィルム、さらに耐熱性が要求される場合にはポリイミドフィルムが好ましい。
【0087】
ここで、ベースフィルム43とプリント回路44との接合は、接着剤によって接着しても良いし、接着剤を用いない、所謂、無接着剤型銅張積層板と同様に接合しても良い。また、絶縁フィルム45は、可撓性絶縁フィルムを接着剤を用いて張り合わせても良いし、感光性絶縁樹脂の塗工、乾燥、露光、現像、熱処理などの一連の手法によって形成しても良い。また、更には、基体フィルム46は、ベースフィルムの一方の面にのみプリント回路を有する片面型プリント配線板、ベースフィルムの両面にプリント回路を有する両面型プリント配線板、この様なプリント配線板が複数層積層された多層型プリント配線板、多層部品搭載部とケーブル部を有するフレクスボード(登録商標)や、多層部を構成する部材を硬質なものとしたフレックスリジッド基板、或いは、テープキャリアパッケージの為のTABテープ等を適宜採用して実施することができる。
【0088】
接着剤層47は、接着性樹脂として、ポリスチレン系、酢酸ビニル系、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリアミド系、ゴム系、アクリル系などの熱可塑性樹脂や、フェノール系、エポキシ系、ウレタン系、メラミン系、アルキッド系などの熱硬化性樹脂で構成されている。また、これら接着性樹脂に金属、カーボン等の導電性フィラーを混合し、導電性を持たせた導電性接着剤を使用することもできる。また、導電性フィラーの量を少なくする等して異方性導電層を形成することもできる。耐熱性が特に要求されない場合は、保管条件等に制約を受けないポリエステル系の熱可塑性樹脂が望ましく、耐熱性もしくはより優れた可撓性が要求される場合においては、シールド層を形成した後の信頼性の高いエポキシ系の熱硬化性樹脂が望ましい。また、そのいずれにおいても加熱・加圧時のにじみ出し(レジンフロー)の小さいものが望ましいことはいうまでもない。
【0089】
導電性フィラーとしては、カーボン、銀、銅、ニッケル、ハンダ、アルミ及び銅粉に銀メッキを施した銀コート銅フィラー、さらには樹脂ボールやガラスビーズ等に金属メッキを施したフィラー又はこれらのフィラーの混合体が用いられる。銀は高価であり、銅は耐熱の信頼性に欠け、アルミは耐湿の信頼性に欠け、さらにハンダは十分な導電性を得ることが困難であることから、比較的安価で優れた導電性を有し、さらに信頼性の高い銀コート銅フィラー又はニッケルを用いるのが好ましい。
【0090】
金属フィラー等の導電性フィラーの接着性樹脂への配合割合は、フィラーの形状等にも左右されるが、銀コート銅フィラーの場合は、接着性樹脂100重量部に対して10〜400重量部とするのが好ましく、さらに好ましくは20〜150重量部とするのがよい。400重量部を超えると、グランド回路(銅箔)44bへの接着性が低下し、プリント配線板100の可撓性が悪くなる。また、10重量部を下回ると導電性が著しく低下する。また、ニッケルフィラーの場合は、接着性樹脂100重量部に対して40〜400重量部とするのが好ましく、さらに好ましくは100〜350重量部とするのがよい。400重量部を超えると、グランド回路(銅箔)44bへの接着性が低下し、プリント配線板100の可撓性が悪くなる。また、40重量部を下回ると導電性が著しく低下する。金属フィラー等の導電性フィラーの形状は、球状、針状、繊維状、フレーク状、樹脂状のいずれであってもよい。
【0091】
接着剤層47の厚さは、前述のように、金属フィラー等の導電性フィラーを混合した場合は、これらフィラーの分だけ厚くなり、20±5μm程度となる。また、導電性フィラーを混合しない場合は、1μm〜10μmである。このため、シールド層(金属層42及び接着剤層47)の全体厚さを薄くすることが可能となり、薄いプリント配線板100とすることができる。
【0092】
次に、図7を用いて、本発明の第5実施形態に係るプリント配線板の製造に用いるシールドフィルム体について説明する。図7のシールドフィルム体は、第1実施形態と同様のプリント配線板用シールドフィルム50と、プリント配線板用シールドフィルム50における絶縁層41の金属層42と反対側の表面に順に形成されている、離型層48b、セパレートフィルム48aと、金属層42の絶縁層41と反対側の表面に形成されている上述の接着剤層47とを有している。なお、接着剤層47が、導電性接着剤層である場合には、金属層42とともにシールド層を形成していることになる。
【0093】
セパレートフィルム48aには、ベースフィルム43、絶縁フィルム45、絶縁層41と同様のエンジニアリングプラスチックが用いられるが、製造過程で除去されるものであるから、安価なポリエステルフィルムが好ましい。
【0094】
離型層48bは、絶縁層41に対して剥離性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、シリコンがコーティングされたPETフィルム等を使用することができる。
【0095】
次に、本発明の第5実施形態に係るプリント配線板の製造方法について説明する。まず、基体フィルム46上に、上述した図7のシールドフィルム体を載置し、プレス機49(49a、49b)で加熱しつつ、加圧する。加熱により軟かくなった接着剤層47の一部は加圧により、絶縁除去部45aに矢印のように流れ込む(図6(a)参照)。
【0096】
こうして、接着剤層47の一部がグランド回路44bの非絶縁部44c及び絶縁フィルム45と十分に接着したのち、形成されたプリント配線板10をプレス機49から取り出し、プリント配線板用シールドフィルム50のセパレートフィルム48aを離型層48bとともに剥離fする(図6(b)参照)と、プリント配線板100が得られる(図6(c)参照)。
【0097】
本実施形態によれば、第1実施形態のプリント配線板用シールドフィルムの効果を奏することができる。特に、大きな曲げ半径から小さな曲げ半径(1.0mm)になるまでの繰り返し屈曲・摺動に対しても、電磁波シールド特性が低減せず、且つ、物理的に保護されたプリント配線板100を提供できる。
【0098】
<第6実施形態>
次に、本発明の第6実施形態に係るプリント配線板について説明する。図8は、本発明の第6実施形態に係るプリント配線板の模式断面図である。なお、第2実施形態の符号11、12、13、20と同様の部分には、順に符号51、52、53、50を付し、その説明を省略することがある。また、第5実施形態の符号43〜47と同様の部分には、順に符号54〜58を付し、その説明を省略することがある。
【0099】
本実施形態に係るプリント配線板101は、プリント配線板用シールドフィルム50の代わりに、第2実施形態と同様のプリント配線板用シールドフィルム60を備えている点が、第5実施形態と異なっている。なお、プリント配線板101は、第5実施形態と同様の製造方法で製造することができる。
【0100】
本実施形態によれば、第5実施形態のプリント配線板と同様の効果を奏することができる。なお、変形例として、プリント配線板用シールドフィルム60の代わりに、第3又は第4実施形態のプリント配線板用シールドフィルムを、本実施形態と同様に貼付したプリント配線板としてもよい。
【0101】
<第7実施形態>
次に、本発明の第7実施形態に係るプリント配線板について説明する。図9は、本発明の第7実施形態に係るプリント配線板の模式断面図である。なお、第3実施形態の符号21、22、30と同様の部分には、順に符号61a、62a、70a(61b、62b、70b)を付し、その説明を省略することがある。また、第5実施形態の符号44〜47と同様の部分には、順に符号64〜67を付し、その説明を省略することがある。
【0102】
本実施形態に係るプリント配線板102は、(1)接着剤層67、68を介して、第3実施形態と同様のプリント配線板用シールドフィルム70a、70bが、基体フィルム66の両面にそれぞれ貼付されているものである点、(2)グランド回路64b上下の絶縁フィルム65及びベースフィルム63側に、絶縁除去部65a及び絶縁除去部63aが設けられ、グランド回路64bの上下面の非絶縁部64cにおいて、接着剤層67、68のそれぞれとグランド回路64bとが接続されている点が、第5実施形態と異なっている。なお、接着剤層68には、接着剤層67と同様の材料が使用されている。また、プリント配線板102は、第5実施形態と同様の製造方法を用いて製造することができる。
【0103】
本実施形態によれば、第5実施形態のプリント配線板100と同様の効果を、基体フィルム66の両面において奏することができるプリント配線板102を提供できる。
【0104】
なお、変形例として、プリント配線板用シールドフィルム70a、70bの代わりに、第1、第2、又は第4実施形態のプリント配線板用シールドフィルムを、本実施形態と同様にそれぞれ貼付したプリント配線板としてもよい。また、第1〜第4実施形態の各プリント配線板用シールドフィルムを、適宜組み合わせて使用してもよい。
【0105】
<第8実施形態>
次に、本発明の第8実施形態に係るプリント配線板について説明する。図10は、本発明の第8実施形態に係るプリント配線板の模式断面図である。なお、第4実施形態の符号31、32、33、40と同様の部分には、順に符号71a、72a、73a、80a(71b、72b、73b、80b)を付し、その説明を省略することがある。また、第5実施形態の符号45〜47と同様の部分には、順に符号76〜78を付し、その説明を省略することがある。
【0106】
本実施形態に係るプリント配線板103は、(1)接着剤層78、79を介して、第4実施形態と同様のプリント配線板用シールドフィルム80a、80bが、基体フィルム77の両面にそれぞれ貼付されているものである点、(2)グランド回路75b上下の絶縁フィルム76及びベースフィルム74側に、絶縁除去部76a及び絶縁除去部74aが設けられているととともに、グランド回路75bに、絶縁除去部76aと絶縁除去部74aとを連通させる貫通孔75dが設けられ、この貫通孔75d内において接着剤層78、79が位置78aにおいて接触している点が、第5実施形態と異なっている。なお、接着剤層79には、接着剤層78と同様の材料が使用されている。また、プリント配線板103は、第5実施形態と同様の製造方法を用いて製造することができる。
【0107】
本実施形態によれば、第5実施形態のプリント配線板と同様の効果を、基体フィルム77の両面において奏することができるプリント配線板103を提供できる。
【0108】
なお、変形例として、プリント配線板用シールドフィルム70a、70bの代わりに、第1、第2、又は第4実施形態のプリント配線板用シールドフィルムを、本実施形態と同様にそれぞれ貼付したプリント配線板としてもよい。また、第1〜第4実施形態の各プリント配線板用シールドフィルムを、適宜組み合わせて使用してもよい。
【0109】
<第9実施形態>
次に、本発明の第9実施形態に係るプリント配線板について説明する。図11は、本発明の第8実施形態に係るプリント配線板の模式断面図である。なお、第1実施形態の符号1、2、10と同様の部分には、順に符号81、82、90を付し、その説明を省略することがある。また、第5実施形態の符号43〜47と同様の部分には、順に符号83〜87を付し、その説明を省略することがある。
【0110】
本実施形態に係るプリント配線板104は、基体フィルム86の片面にプリント配線板用シールドフィルム90を、接着剤層87を介して被覆し、その端部に矩形状のグランド部材93を設けているものである。
【0111】
グランド部材93は、幅Wの矩形状の金属箔91の片面に接着性樹脂層92を設けたものである。グランド部材93の幅Wは、大きいほど接地インピーダンスが小さくなるので好ましいが、取り扱い性と経済性の観点から適宜選定される。また、この例では幅Wのうち幅W1が露出し、幅W2が接着剤層87と接着されている。この幅W1の露出部分を適宜の導電部材を用いて近傍のグランド部に接続すれば確実に接地することができる。また、接着が確実におこなわれるならば幅W2をもっと小さくしてもよい。そして、グランド部材93の長さはこの例では加工を容易にするため、シールドフィルム90や基体フィルム86の幅と一致させたが、それより短くても長くてもよく、導電性接着剤層92に接続される部分と、露出して近傍のグランド部に接続できるようにしたものであればよい。
【0112】
同様に、グランド部材93の形状も、矩形状に限定されるものではなく、その一部が接着剤層87に接続され、他の一部が近傍のグランド部に接続できる形状のものであればよい。
【0113】
また、その配設位置は、必ずしもプリント配線板104の端部に限らず、図11(a)に仮想線で示すように端部以外の位置93aであっても良い。ただし、この場合は近傍のグランド部に接続可能にするため、グランド部材93aは、シールドフィルム90から側部へはみ出して露出するようにする。両側へのはみ出し長さL1,L2は、機器の筺体などの近傍のグランド部に接続可能な長さであればよく、このはみ出し部は片端だけでもよい。グランド部へは金属層82の表面が接するようにして、ビス止め又ははんだ付けなどにより接続する。
【0114】
グランド部材93の金属箔91の材料は、導電性、可撓性、経済性などの点で銅箔が好ましいがそれに限定されるものではない。また、金属箔に代えて、導電性樹脂とすることもできるが導電性の点で金属箔が好ましい。
【0115】
また、接着性樹脂層92としては、ポリスチレン系、酢酸ビニル系、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリアミド系、ゴム系、アクリル系などの熱可塑性樹脂や、フェノール系、エポキシ系、ウレタン系、メラミン系、ポリイミド系、アルキッド系などの熱硬化性樹脂が用いられ、グランド部材93を構成する金属箔、接着性樹脂層や基体フィルム86の絶縁フィルム85に対して接着性のよいものが好ましい。さらに、グランド部材93は、それを端部以外の位置に設けてシールド層(金属層82であるが、接着剤層87が導電性接着剤層である場合には、接着剤層87も含む)で覆ってしまう場合は、金属箔や金属線だけで構成してもよい。
【0116】
上記のように、シールドフィルム90のシールド層(金属層82であるが、接着剤層87が導電性接着剤層である場合には、接着剤層87も含む)はグランド部材93によって接地されるので、プリント回路の一部として幅の広いグランド線を設ける必要はなくなり、その分信号線の配線密度を高くすることができる。しかも、グランド部材93の接地インピーダンスを従来のプリント配線板のグランド線の接地インピーダンスに比べ小さくすることが容易であり、したがってシールド層の電磁波シールド効果も大きくなる。
【0117】
また、従来同様幅の広いグランド線を設けてシールド層(金属層82であるが、接着剤層87が導電性接着剤層である場合には、接着剤層87も含む)と接続したプリント配線板にグランド部材を設けたものも当然本発明に含まれる。この場合、幅の広いグランド線による基板接地と、グランド部材によるフレーム接地との効果が加算されるから電磁波シールド効果はより優れ、より安定したものとなる。
【0118】
基体フィルム86の先端部は、幅t1だけ露出しており、プリント回路84が露出している。また、この例では、グランド部材93は、その幅方向の片端が絶縁フィルム85の端部から幅t2だけ隔てられるように接着されており、この幅t2によって信号線との間の絶縁抵抗が確保される。
【0119】
なお、グランド部材は、図11に示した形態以外に様々な形態とすることもできる。例えば、グランド部材は銅、銀、アルミニウム等からなる金属箔であって、金属箔の片面から突出する複数の導電性バンプがカバーフィルムを貫いてシールド層に接続され、露出した金属箔がその近傍のグランド部に接続される形態であっても良い。
【0120】
また、グランド部材は、複数の突起が片面に形成された銅、銀、アルミニウム等からなる金属板であって、突起がカバーフィルムを貫いてシールド層に接続され、露出した金属板がその近傍のグランド部に接続される形態も考えられる。
【0121】
また、グランド部材は、銅、銀、アルミニウム等からなる金属箔であって、金属箔の片面から突出する複数の金属フィラーがカバーフィルムを貫いてシールド層の接着剤層及び金属層に接続され、露出した金属箔がその近傍のグランド部に接続される形態も考えられる。
【0122】
また、エキシマレーザを用いてカバーフィルムが除去されることによってシールドフィルムの所定の位置に窓部が形成され、窓部に導電性フィラーが混合された導電性接着剤を介して導体であるグランド部材の一端が接続される形態であっても良い。グランド部材の他端は近くにあるグランド部へ接続される。或いは、グランド部材を介さずに、近くにあるグランド部がこの窓部に直接接続されてもよい。
【0123】
なお、変形例として、プリント配線板用シールドフィルム90の代わりに、第2〜第4実施形態のプリント配線板用シールドフィルムを、本実施形態と同様にそれぞれ貼付したプリント配線板としてもよい。
【実施例】
【0124】
(実施例1)
まず、図1に示すプリント配線板用シールドフィルム10と同様の構成のプリント配線板用シールドフィルムを作製した(金属層の詳細は、下記表1の実施例1参照)。このとき作製されたプリント配線板用シールドフィルムのSEM写真を図13(a)に示す。また、図13(a)のSEM写真の撮影方向を示す模式図を図13(b)に示す。このような蛇腹構造の金属層を有するプリント配線板用シールドフィルムを作製した後、このプリント配線板用シールドフィルムを、接着剤を介してプリント配線板にプレス機で加熱・加圧しつつ接合し、シールド付のプリント配線板(幅10mm、長さ170mm)を作製した。ここで、本実施例のプリント配線板用シールドフィルムの絶縁層としては、厚さが12.5μmのポリイミド樹脂層とした。接着剤層には、厚さが17μmのエポキシ樹脂を用いた。このようにして作製した、プリント配線板を実施例1の試料とした。
【0125】
(実施例2)
次に、図1に示すプリント配線板用シールドフィルム10と同様の構成のプリント配線板用シールドフィルムを作製した(金属層の詳細は、下記表1の実施例2参照)。その後、このプリント配線板用シールドフィルムを、接着剤を介してプリント配線板にプレス機で加熱・加圧しつつ接合し、シールド付のプリント配線板(幅10mm、長さ170mm)を作製した。なお、絶縁層及び接着剤には実施例1と同様のものを用いた。このようにして作製した、プリント配線板を実施例2の試料とした。
【0126】
(実施例3)
次に、図1に示すプリント配線板用シールドフィルム10と同様の構成のプリント配線板用シールドフィルムを作製した(金属層の詳細は、下記表1の実施例3参照)。その後、このプリント配線板用シールドフィルムを、接着剤を介してプリント配線板にプレス機で加熱・加圧しつつ接合し、シールド付のプリント配線板(幅10mm、長さ170mm)を作製した。なお、絶縁層及び接着剤には実施例1と同様のものを用いた。このようにして作製した、プリント配線板を実施例3の試料とした。
【0127】
(比較例1)
実施例1における2層の金属層の代わりに、厚さが0.1μmの1層の銀薄膜層を形成したプリント配線板用シールドフィルムを作製した。その後、このプリント配線板用シールドフィルムを、接着剤を介してプリント配線板にプレス機で加熱・加圧しつつ接合し、シールド付のプリント配線板(幅10mm、長さ170mm)を作製した。なお、絶縁層及び接着剤には実施例1と同様のものを用いた。このようにして作製した、プリント配線板を比較例1の試料とした。
【0128】
(比較例2)
実施例1における2層の金属層の代わりに、厚さが20μmの1層の銀ペースト層を形成したプリント配線板用シールドフィルムを作製した。その後、このプリント配線板用シールドフィルムを、接着剤を介してプリント配線板にプレス機で加熱・加圧しつつ接合し、シールド付のプリント配線板(幅10mm、長さ170mm)を作製した。なお、絶縁層及び接着剤には実施例1と同様のものを用いた。このようにして作製した、プリント配線板を比較例2の試料とした。
【0129】
[耐屈曲性試験]
IPC規格に則り、図12に示すように、固定板121と摺動板122との間にシールド付のプリント配線板111(上記実施例1及び比較例1、2の試料のいずれかである)を、曲率を1.0mmとした状態でU字型に屈曲させて装着し、試験雰囲気23℃において、摺動板122を30mmのストローク、摺動速度100回/分で上下に摺動させたときのプリント配線板用シールドフィルムにおける金属層の耐性(電磁シールド性の維持)及びプリント配線板を保護できているかどうかについて検証した。なお、上記実施例1及び比較例1、2の試料における各プリント配線板のプリント回路は、ライン数が6本で、ライン幅が0.12mm、スペース幅が0.1mmのものを使用した。また、プリント配線板用シールドフィルムにおける金属層の耐性(電磁シールド性の維持)及びプリント配線板を保護できているかどうかについては、各試料の金属層又はプリント回路における通電量を測定することによって検証した。検証結果を下記表1に示す。
【0130】
【表1】

【0131】
表1より、実施例1〜3の試料は、金属層に耐性があるとともに、プリント配線板を保護できていることが分かる。これに対し、比較例1においては、プリント配線板を保護できているものの、銀薄膜層における電磁シールド性が維持できずに低下している(通電量が低下している)ことがわかった。また、比較例2においては、銀ペースト層における電磁シールド性を維持できているものの、プリント配線板を保護できていない(断線している)ことがわかった。
【0132】
なお、本発明は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で設計変更できるものであり、上記実施形態や実施例に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、金属層が2層の場合を示したが、金属層が3層以上であってもよい。
【0133】
また、上記実施形態における各金属層には、孔又は空隙を複数有する多孔質(ポーラス)のものを用いてもよい。孔を複数有する多孔質の金属層である場合においては、孔の径が0.1μm〜10μmであり、空隙を複数有する多孔質の金属層である場合においては、空隙のサイズが0.1μm〜10μm、空隙率が1〜50%のものである。なお、空隙率が1%未満であると、後述する効果を有することがほとんどできず、50%を超えると、導電性がかなり低下してしまう。なお、このときの金属層は、該金属層を含むシールドフィルムをプリント配線板に所定温度(例えば、150℃)以上で加圧プレスによって貼付した際、0.1μm〜8μmの厚さとなるような厚さに予め調整されている。また、複数の金属層について用いたとしても、第2又は第4実施形態と同様に、プリント配線板に、所定温度(例えば、150℃)以上で加圧プレスによって貼付して用いた際には、金属層12と金属層13との間において、金属間化合物を形成することもできる。これらにより、プリント配線板に加圧プレスして貼付して用いた際、導電性接着剤層の一部が、金属層における孔の空隙に充填され、金属層の強度と可撓性とを向上させることができる。したがって、大きな曲げ半径から小さな曲げ半径(1.0mm)になるまでの繰り返し屈曲・摺動に対して、より金属層の破壊が起こりにくいプリント配線板用シールドフィルム及びこのフィルムが貼付されたプリント配線板を提供できる。
【0134】
また、プリント配線板用シールドフィルムの各実施形態の各層を適宜組み合わせたようなプリント配線板用シールドフィルムとしてもよい。また、各実施形態のプリント配線板用シールドフィルムにおいては、絶縁層の片面側に金属層を設けたものを示しただけであるが、絶縁層の両面に設けたものであってもよい。
【0135】
また、本発明のプリント配線板用シールドフィルムは、FPC、COF(チップオンフレキ)、RF(フレックスプリント板)、多層フレキシブル基板、リジット基板などに利用できるが、必ずしもこれらに限られない。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプリント配線板用シールドフィルムの模式断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係るプリント配線板用シールドフィルムの模式断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係るプリント配線板用シールドフィルムの模式断面図である。
【図4】図3に示したプリント配線板用シールドフィルムの金属層を形成する鱗片状金属粒子群の模式図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係るプリント配線板用シールドフィルムの模式断面図である。
【図6】本発明の第5実施形態に係るプリント配線板の製造方法の工程を順に示す模式断面図である。
【図7】第5実施形態のプリント配線板用のシールドフィルム体である。
【図8】本発明の第6実施形態に係るプリント配線板の模式断面図である。
【図9】本発明の第7実施形態に係るプリント配線板の模式断面図である。
【図10】本発明の第8実施形態に係るプリント配線板の模式断面図である。
【図11】本発明の第9実施形態に係るプリント配線板の模式断面図である。
【図12】耐屈曲性試験の試験方法を示す図である。
【図13】(a)が本発明の実施例1に係るプリント配線板用シールドフィルムのSEM写真であり、(b)が(a)のSEM写真の撮影方向を示す模式図である。
【符号の説明】
【0137】
1、11、21、31、41、61a、71a、71b、81 絶縁層
2、12、13、22、32、33、42、62a、62b、82 金属層
10、20、30、40、50、60、70a、70b、80a、80b、90 プリント配線板用シールドフィルム
43、63、74 ベースフィルム
44、84 プリント回路
44a 信号回路
44b、64b、75b グランド回路
44c、64c 非絶縁部
45、65、76、85 絶縁フィルム
45a、63a、65a、74a、76a 絶縁除去部
46、66、77、86 基体フィルム
47、67、68、78、79、87 接着剤層
48a セパレートフィルム
48b 離型層
49 プレス機
75d 貫通孔
91 金属箔
92 接着性樹脂層
93、93a グランド部材
78a、93a 位置
100、101、102、103、104、111 プリント配線板
121 固定板
122 摺動板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層の片面に形成された第1の金属層を備え、
前記絶縁層の片面表面の算術平均粗さ(JIS B 0601 (1994年))が0.5〜5.0μmであるとともに、
前記第1の金属層が、前記絶縁層の片面表面に沿って蛇腹構造となるように形成されていることを特徴とする請求項1記載のプリント配線板用シールドフィルム。
【請求項2】
前記第1の金属層の前記絶縁層と反対側の面の算術平均粗さが0.5〜5.0μmであることを特徴とするプリント配線板用シールドフィルム。
【請求項3】
前記第1の金属層が、ニッケル、銅、銀、錫、金、パラジウム、アルミニウム、クロム、チタン、亜鉛、及び、これらの材料のいずれか1つ以上を含む合金のうちいずれかの材料を用いた層であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプリント配線板用シールドフィルム。
【請求項4】
前記第1の金属層が、1種以上の鱗片状金属粒子で形成された層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプリント配線板用シールドフィルム。
【請求項5】
前記第1の金属層の前記絶縁層と反対側に導電性接着剤層が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプリント配線板用シールドフィルム。
【請求項6】
前記第1の金属層が、孔を複数有する多孔質層であり、
前記第1の金属層の前記絶縁層と反対側に導電性接着剤層が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプリント配線板用シールドフィルム。
【請求項7】
前記第1の金属層の前記絶縁層と反対側に、ニッケル、銅、銀、錫、金、パラジウム、アルミニウム、クロム、チタン、亜鉛、及び、これらの材料のいずれか1つ以上を含む合金のうちいずれかの材料を用いた第2の金属層が形成されており、
前記第1の金属層と前記第2の金属層とが異なる種類の材料からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプリント配線板用シールドフィルム。
【請求項8】
前記第2の金属層が、1種以上の鱗片状金属粒子で形成された層であることを特徴とする請求項7に記載のプリント配線板用シールドフィルム。
【請求項9】
前記第2の金属層の前記絶縁層と反対側に導電性接着剤層が形成されていることを特徴とする請求項8に記載のプリント配線板用シールドフィルム。
【請求項10】
前記第2の金属層が、孔を複数有する多孔質層であり、
前記第2の金属層の前記絶縁層と反対側に導電性接着剤層が形成されていることを特徴とする請求項7に記載のプリント配線板用シールドフィルム。
【請求項11】
前記第1の金属層が、孔を複数有する多孔質層又は1種以上の鱗片状金属粒子で形成された層であることを特徴とする請求項9又10に記載のプリント配線板用シールドフィルム。
【請求項12】
絶縁層の片面に形成された第1の金属層と、
前記第1の金属層の前記絶縁層と反対側に形成された第2の金属層とを備え、
前記第1の金属層と前記第2の金属層とが、ニッケル、銅、銀、錫、金、パラジウム、アルミニウム、クロム、チタン、亜鉛、及び、これらの材料のいずれか1つ以上を含む合金のうちいずれかの材料を用いた層であるとともに、お互いに異なる種類の材料からなることを特徴とするプリント配線板用シールドフィルム。
【請求項13】
前記第2の金属層が、1種以上の鱗片状金属粒子で形成された層であることを特徴とする請求項12に記載のプリント配線板用シールドフィルム。
【請求項14】
前記第2の金属層の前記絶縁層と反対側に導電性接着剤層が形成されていることを特徴とする請求項13に記載のプリント配線板用シールドフィルム。
【請求項15】
前記第2の金属層が、孔を複数有する多孔質層であり、
前記第2の金属層の前記絶縁層と反対側に導電性接着剤層が形成されていることを特徴とする請求項12に記載のプリント配線板用シールドフィルム。
【請求項16】
前記第1の金属層が、孔を複数有する多孔質層又は1種以上の鱗片状金属粒子で形成された層であることを特徴とする請求項14又は15に記載のプリント配線板用シールドフィルム。
【請求項17】
絶縁層の片面に形成された金属層を備え、
前記金属層が、1種以上の鱗片状金属粒子で形成された層であることを特徴とするプリント配線板用シールドフィルム。
【請求項18】
前記金属層の前記絶縁層と反対側に導電性接着剤層が形成されていることを特徴とする請求項17に記載のプリント配線板用シールドフィルム。
【請求項19】
絶縁層の片面に形成された金属層を備え、
前記金属層が、孔を複数有する多孔質層であり、
前記金属層の前記絶縁層と反対側に導電性接着剤層が形成されていることを特徴とするプリント配線板用シールドフィルム。
【請求項20】
曲げ半径の下限が1.0mmまでの繰り返し屈曲・摺動用のものであることを特徴とする請求項1〜19のいずれか1項に記載のプリント配線板用シールドフィルム。
【請求項21】
1層以上のプリント回路を含む基板の少なくとも片面に、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプリント配線板用シールドフィルムが、前記第1の金属層に塗布された導電性接着剤を介して貼付されてなることを特徴とするプリント配線板。
【請求項22】
1層以上のプリント回路を含む基板の少なくとも片面に、請求項5に記載のプリント配線板用シールドフィルムが、前記第1の金属層に塗布された前記導電性接着剤を介して貼付されてなるものであるとともに、
前記導電性接着剤層の一部が、前記鱗片状金属粒子の間隙に充填されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項23】
1層以上のプリント回路を含む基板の少なくとも片面に、請求項6に記載のプリント配線板用シールドフィルムが、前記第1の金属層に塗布された前記導電性接着剤を介して貼付されてなるものであるとともに、
前記導電性接着剤層の一部が、前記孔の空隙に充填されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項24】
1層以上のプリント回路を含む基板の少なくとも片面に、請求項7又は12に記載のプリント配線板用シールドフィルムが、前記第2の金属層に塗布された導電性接着剤を介して貼付されてなるとともに、
前記第1の金属層と前記第2の金属層との間に、前記第1の金属層を形成する材料と前記第2の金属層を形成する材料との金属間化合物層を備えていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項25】
1層以上のプリント回路を含む基板の少なくとも片面に、請求項8又は13に記載のプリント配線板用シールドフィルムが、前記第2の金属層に塗布された導電性接着剤を介して貼付されてなるとともに、
前記第2の金属層が、1種以上の鱗片状金属粒子同士の金属間結合層であることを特徴とするプリント配線板。
【請求項26】
1層以上のプリント回路を含む基板の少なくとも片面に、請求項9又は14に記載のプリント配線板用シールドフィルムが、前記第2の金属層に塗布された前記導電性接着剤を介して貼付されてなるものであるとともに、
前記導電性接着剤層の一部が、前記鱗片状金属粒子の間隙に充填されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項27】
1層以上のプリント回路を含む基板の少なくとも片面に、請求項10又は15に記載のプリント配線板用シールドフィルムが、前記第2の金属層に塗布された前記導電性接着剤を介して貼付されてなるものであるとともに、
前記導電性接着剤層の一部が、前記孔の空隙に充填されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項28】
1層以上のプリント回路を含む基板の少なくとも片面に、請求項11に記載のプリント配線板用シールドフィルムが、前記第2の金属層に塗布された前記導電性接着剤を介して貼付されてなるものであるとともに、
前記導電性接着剤層の一部が、前記第1の金属層における前記鱗片状金属粒子の間隙又は前記孔の空隙に充填されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項29】
1層以上のプリント回路を含む基板の少なくとも片面に、請求項16に記載のプリント配線板用シールドフィルムが、前記第2の金属層に塗布された前記導電性接着剤を介して貼付されてなるものであるとともに、
前記導電性接着剤層の一部が、前記第1の金属層における前記鱗片状金属粒子の間隙又は前記孔の空隙に充填されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項30】
1層以上のプリント回路を含む基板の少なくとも片面に、請求項17に記載のプリント配線板用シールドフィルムが、前記金属層に塗布された導電性接着剤を介して貼付されてなるものであるとともに、
前記金属層が、1種以上の鱗片状金属粒子同士の金属間結合層であることを特徴とするプリント配線板。
【請求項31】
1層以上のプリント回路を含む基板の少なくとも片面に、請求項18に記載のプリント配線板用シールドフィルムが、前記金属層に塗布された導電性接着剤を介して貼付されてなるものであるとともに、
前記導電性接着剤層の一部が、前記鱗片状金属粒子の間隙に充填されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項32】
1層以上のプリント回路を含む基板の少なくとも片面に、請求項19に記載のプリント配線板用シールドフィルムが、前記金属層に塗布された導電性接着剤を介して貼付されてなるものであるとともに、
前記導電性接着剤層の一部が、前記孔の空隙に充填されていることを特徴とするプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−38278(P2009−38278A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202709(P2007−202709)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(503346913)タツタ システム・エレクトロニクス株式会社 (31)
【Fターム(参考)】