説明

プリント配線板用樹脂組成物、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板及び半導体装置

【課題】基材への含浸性が良好で、低熱膨張性、ドリル加工性、及び信頼性に優れるプリプレグを作製できるプリント配線板用エポキシ樹脂組成物を提供する。さらに、前記プリント配線板用樹脂組成物を用いて作製したプリプレグ、前記プリント配線板用エポキシ樹脂組成物、又は前記プリプレグを用いて作製した金属張積層板、前記金属張積層板、前記プリプレグ、及び前記プリント配線板用樹脂組成物のうち少なくともいずれか1つを用いて作製したプリント配線板、及び前記プリント配線板を用いて作製した性能に優れる半導体装置を提供する。
【解決手段】(A)熱可塑性樹脂、(B)無機充填材、(C)平均粒径5〜100nmの微粒子を必須成分とするプリント配線板用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
プリント配線板用樹脂組成物、プリプレグ、積層板、樹脂シート、プリント配線板及び半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高機能化等の要求に伴い、電子部品の薄型化、高密度集積化、更には高密度実装化等が進んでいる。そのため、これらに使用される薄型化、高密度実装対応のプリント配線板等は、従来にも増して、小型化かつ高密度化が進んでいる。このプリント配線板の絶縁材料としては、ガラス織布等の基材にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させて得られるプリプレグを積層して加熱加圧硬化させた積層板が広く使用されているが、特にフリップチップ型の半導体装置等の場合は、半導体素子とプリント配線板とを半田バンプ等で接続させた場合に、高密度化に伴い絶縁接続信頼性低下の問題が顕在化してきている。
【0003】
また近年、プリント配線板上への部品実装が高密度化しているため、プリント配線板の材料に要求される諸特性の中でも、低線膨張化、高剛性化、高耐熱化が特に要求されるようになった。
半導体素子は、熱膨張率が3〜6ppm/℃であり、一般的なプリント配線板の熱膨張率より小さい。そのため特にインターポーザと呼ばれる小型・薄型化のプリント配線板に半導素子を搭載した半導体装置は、熱衝撃が加わったときに、半導体素子とプリント配線板の熱膨張率差により、プリント配線板に反りが発生しやすく、また半導体素子をプリント配線板に搭載する際の実装不良や、熱衝撃による半導体素子とプリント配線板との間のクラックが生じ接続不良が生じることがある。
そのため、反りを小さくして接続信頼性を確保するためには、熱膨張率が小さい積層板の開発が必要である。また、プリント配線板は、部品や他の基板との接続および部品の実装等に適した、部分的あるいは全体的に高剛性も要求される。また、電気・電子部品の信頼性という面からはプリプレグの耐熱性が要求されている。
【0004】
積層板の熱膨張率を小さくする方法としては、無機充填材を配合する方法がある(特許文献1)。しかし、無機充填材の配合量が多くなると、樹脂ワニスを調製したさいに、樹脂ワニス中で、無機充填材の沈降が生じ、均一に塗布することが難しく、また、多量の無機充填材をガラス繊維基材等への含浸する場合、基材に含侵しないという不良が生じ、乾燥時の基材への付着が困難であることなどにより、基材へ付着する無機充填材量にバラツキが生じ、均一なプリプレグが得られない。そこで、無機充填材の沈降を防止するためにワニスの濃度を高くすると、樹脂組成物の基材への含浸性がさらに低下してしまうという問題がある。
また前記のようなプリプレグを用いると、銅張積層板を作製した場合、銅箔との接着力が弱く、また、得られるプリプレグが脆くなる場合があり、プリント配線板用の材料としては好ましくなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−224269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、無機充填材を従来よりも多量に添加したプリント配線板用樹脂組成物を用いた、絶縁層中に無機充填材が均一に分散したプリプレグ、および樹脂シート。また当該プリント配線板用樹脂組成物を用いて得られる積層板、およびプリント配線板は、線熱膨張率が低いので、当該プリント配線板を用いて得られる半導体装置は、反りが小さく、また信頼性に優れる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は、下記[1]〜[8]項に記載の本発明により達成される。
[1](A)熱可塑性樹脂、(B)無機充填材、(C)平均粒径5〜100nmの微粒子を含むプリント配線板用樹脂組成物であって、(B)無機充填材と、(C)平均粒径5〜100nmの微粒子との総量がプリント配線板用樹脂組成物中に70〜95重量%であり、かつ(C)平均粒径5〜100nmの微粒子がプリント配線板用樹脂組成物中に1〜15重量%であることを特徴とするプリント配線板用樹脂組成物。
[2]前記(A)熱可塑性樹脂は、動的粘弾性測定における、ガラス転移温度が220℃以上である[1]項に記載のプリント配線板用樹脂組成物。
[3]前記(A)熱可塑性樹脂は、イミド骨格を有する熱可塑性樹脂である上記[1]、または[2]項に記載のプリント配線板用樹脂組成物。
[4][1]乃至[3]項のいずれか一に記載のプリント配線板用樹脂組成物を基材に含浸させてなるプリプレグ。
[5][4]項に記載のプリプレグ、又は当該プリプレグを2枚以上重ね合わせた積層体の少なくとも片面に金属箔を有することを特徴とする積層板。
[6][1]乃至[3]項のいずれか一に記載の樹脂組成物よりなる絶縁層をフィルム上、又は金属箔上に形成してなる樹脂シート。
[7][4]項に記載のプリプレグ、[5]項に記載の積層板、及び[6]項に記載の樹脂シートよりなる群から選ばれる少なくとも一を用い製造されてなることを特徴とするプリント配線板。
[8][7]項に記載のプリント配線板に半導体素子を搭載してなることを特徴とする半導体装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明プリント配線板用樹脂組成物によれば、プリント配線板用樹脂組成物を用いたプリプレグ、および樹脂シートは、絶縁層中に無機充填材が均一に分散し、銅箔との接着力が高い。また当該プリント配線板用樹脂組成物を用いて得られる積層板、プリント配線板は、線熱膨張率が低く、当該プリント配線板を用いて得られる半導体装置は、反りが小さく、また信頼性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のプリプレグの製造に用いられる含浸塗布設備の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の積層板の製造方法の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の積層板の製造方法の他の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(プリント配線板用樹脂組成物)
まず、プリント配線板用樹脂組成物について説明する。
本発明のプリント配線板用樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」という場合がある。)は、(A)熱可塑性樹脂、(B)無機充填材、(C)平均粒径5〜100nmの微粒子を含むプリント配線板用樹脂組成物であって、(B)無機充填材と、(C)平均粒径5〜100nmの微粒子との総量がプリント配線板用樹脂組成物中に70〜95重量%であり、かつ(C)平均粒径5〜100nmの微粒子がプリント配線板用樹脂組成物中に1〜15重量%である。これにより、プリント配線板用樹脂組成物を用いたプリプレグ、および樹脂シートは、絶縁層中に無機充填材が均一に分散し、銅箔との接着力が高い。また当該プリント配線板用樹脂組成物を用いて得られる積層板、プリント配線板は、線熱膨張率が低く、当該プリント配線板を用いて得られる半導体装置は、信頼性に優れる。
【0011】
前記(A)熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、例えばポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂(ポリアミドイミド樹脂も含む)、ポリエステル樹脂、液晶ポリマー等が挙げられる。これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用することもでき、1種類または2種類以上のポリマーを併用することもできる。 前記、重量分子量は、 1.0×10〜1.0×10の範囲が好ましく、1.5×10〜8.0×10が特に好ましい。この範囲内にすると、成形性と、機械強度に優れる。尚、前記、重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(例えばTOSHO社製、HLC−8型装置)を用いポリスチレン換算で測定することができる。
これら熱可塑性樹脂の中でも特に、ポリイミド樹脂(ポリアミドイミド樹脂も含む)が好ましい。これにより、機械強度に優れ、熱膨張率を低くすることができる。また、動的粘弾性測定(DMA測定)によるガラス転移温度は、220℃以上が好ましい。より好ましくは、250〜330℃が好ましい。これにより、耐熱性および難燃性を向上させることができる。この範囲の下限値を下回ると、耐熱性、難燃性が悪化する恐れがあり、上限値を上回ると、プレス成形性の悪化、歪み応力の増大により反りが大きくなる恐れがある。尚、JIS C−6481に準拠して、周波数1Hzで、30〜350℃の範囲で測定して算出することができる。
【0012】
前記ポリイミド樹脂としては、特に限定されず、例えば、公知のテトラカルボン酸二無水物とジアミンを原料にした脱水縮合法で得ることができる。また、テトラカルボン酸二無水物とジイソシアネートによるイソシアネート法で得ることができる。ポリイミド樹脂とは分子中にイミド骨格を有する下記一般式(1)で表わされる化合物であればよい。
【0013】
【化1】


(式中、Xはテトラカルボン酸二水和物由来の骨格、Yはジアミンまたはジイソシアネート由来の骨格を示す。)
【0014】
また、溶剤可溶となりワニス化できる点から、下記一般式(2)で表わされるシリコーン変性ポリイミド樹脂を用いることが好ましい。
【化2】



(式中、R、Rは炭素数1〜4で二価の脂肪族基または芳香族基、R、R、R、およびRは一価の脂肪族基または芳香族基、A、Bは三価または四価の脂肪族基または芳香族基、Rは二価の脂肪族基または芳香族基を示す。また、k、m、nは繰り返し単位数を表し、5〜5000の整数である。)
【0015】
また、ポリイミドブロック内にアミド骨格を有するポリアミドイミド樹脂も溶剤可溶となり好ましい。
【0016】
前記、脱水縮合法の場合は、有機溶剤に可溶なポリイミドを得る必要があり、ポリイミド樹脂の重合に使用する酸二無水物としては、例えば3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等のテトラカルボン酸ニ無水物;、
4,4’−ビスフェノールAカルボン酸二無水物、エチレングリコールビストリメリット酸二無水物、無水ピロメリット酸、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)フタル酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物等のフタル酸ニ無水物等、またはこれらの水素化してえられる脂肪族、脂環型が挙げられ、これらを単独あるいは2種以上混合して用いられる。
【0017】
前記有機溶剤に可溶なポリイミド樹脂の重合に使用するジアミン成分としては、芳香族ジアミンでは、例えば2,2−ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘキサフルオロプロパン、ビス−4−(4−アミノフェノキシ)フェニルスルフォン、ビス−4−(3−アミノフェノキシ)フェニルスルフォン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル等が挙げられる。特に2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパンを用いるとガラス転移温度を高く維持したまま溶解性を向上させることが可能である。また1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンを用いると接着性を向上させる事が可能である。
【0018】
また、脂肪族ジアミンでは、例えば1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,12−ジアミノドデカン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチル−ジシクヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−ジシクヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチル−ジシクヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラエチル−ジシクヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−5,5’−ジメチル−ジシクヘキシルメタン、4,4’− ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシル、4,4’− ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチルジシクロヘキシル、4,4’−ジアミノジシクヘキシルエーテルなどが挙げられる。
【0019】
また、他のジアミン成分としては、例えば4,4’−メチレンジ−o−トルイジン、4,4’−メチレンジ−2,6−キシリジン、4,4’−メチレンジ−2,6−ジエチルアニリン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルメタン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘキサフルオロプロパン、ビス−4−(4−アミノフェノキシ)フェニルスルフォン、ビス−4−(3−アミノフェノキシ)フェニルスルフォン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、3,4−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4ジアミノジフェニルスルフォン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,5ジアミノトルエン、2,4ジアミノトルエン、4,6−ジメチル−m−フェニレンジアミン、2,5−ジメチル−p−フェニレンジアミン、2,4,6−トリメチル−m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル等を挙げることができる。
【0020】
さらに、前記有機溶剤に可溶なポリイミド樹脂のジアミン成分の一つとして、下記式(3)で表されるジアミノポリシロキサンを用いることが好ましい。これにより、有機溶剤への溶解性を特に向上することができる。
【0021】
【化3】

【0022】
前記(B)無機充填材は、特に限定されないが、例えばタルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩、酸化チタン、アルミナ、シリカ、溶融シリカ等の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素等の窒化物、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等のチタン酸塩等を挙げることができる。これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併用することもできる。これらの中でも、低熱膨張性、および絶縁信頼性の点で特にシリカが好しく、更に好ましくは、球状の溶融シリカである。
【0023】
前記(B)無機充填材の粒径は、特に限定されないが、平均粒子径が単分散の無機充填材を用いることもできるし、平均粒子径が多分散の無機充填材を用いることができる。さらに平均粒子径が単分散及び/または、多分散の無機充填材を1種類または2種類以上併用したりすることもできる。これらの中でも、多層プリント配線板の導体回路幅と導体回路間の幅(L/S)が、15μm/15μm未満の場合は、絶縁信頼性の観点から、平均粒径1.2μm以下0.1μm以上で且つ5μm以上の粗粒カットされたものが好ましい。L/Sが15μm/15μm以上の場合は、平均粒径が5μm以下0.2μm以上で且つ20μm以上の粗粒が0.1%以下であることが好ましい。平均粒径が、前記下限値未満であると、流動性が著しく悪化し成形性が低下したりする。また、前記上限値を超えると、導体回路の絶縁性が低下したりする場合がある。尚、平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(島津製作所SALD−7000等の一般的な機器)を用いて測定することができる。
【0024】
前記(B)無機充填材は、特に限定されないが、平均粒子径が0.2〜3μmの無機粒子を含むことが好ましく、特に0.3〜2.5μmが好ましく、最も0.4〜1.5μmが好ましい。
前記平均粒子径が0.2〜3μmの無機粒子の平均粒子径の最大粒子径は特に限定されないが、10μm以下であることが好ましく、特に5μm以下であることが好ましい。これにより、ドリル加工時のビット折損率を低減することができる。
【0025】
また、前記球状シリカの製造方法は、特に限定されることなく、公知の方法によって得ることができる。前記球状シリカの製造方法としては、例えば、乾式シリカ法、湿式シリカ法、ゾル-ゲル法によるシリカ製造方法等を挙げることができる。
【0026】
前記(B)無機充填材は、予め官能基含有シラン類及び/又はアルキルシラザン類で表面処理して用いてもよい。表面処理を予め施すことで、本発明の樹脂組成物中にシリカを良好に分散させることができる。また、(A)熱可塑性樹脂と(B)無機充填材の表面とにおける密着性が向上するため、機械強度に優れる絶縁層が得られる。
【0027】
前記官能基含有シラン類及び/又はアルキルシラザン類の官能基含有シラン類としては、特に限定されないが、例えば、エポキシシラン、スチリルシラン、メタクリロキシシラン、アクリロキシシラン、メルカプトシラン、N−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(N−アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、(シクロヘキシルアミノメチル)トリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルメトキシルジエトキシシラン、(フェニルアミノメチル)メチルジメトキシシラン、N−フェニルアミノメチルトリエトキシシラン、N−メチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルシラン、イソシアネートシラン、スルフィドシラン、クロロプロピルシラン、ウレイドシラン化合物等を挙げることができる。
【0028】
前記アルキルシラザン類としては、例えばヘキサメチルジシラザン(HMDS)、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、オクタメチルトリシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザンなどを挙げることができる。これらの中でもアルキルシラザン類としてはヘキサメチルジシラザン(HMDS)が好ましい。
【0029】
前記(B)無機充填材へ予め表面処理する官能基含有シラン類及び/又はアルキルシラザン類の量は、特に限定しないが、前記(B)無機充填材100重量部に対して0.01重量部以上、5重量部以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.1重量部以上、3重量部以下が好ましい。カップリング剤の含有量が前記上限値を超えると、多層プリント配線板製造時において絶縁層にクラックが入る場合があり、前記下限値未満であると、樹脂成分と第3無機充填剤との結合力が低下する場合がある。
【0030】
前記(B)無機充填材を予め官能基含有シラン類及び/又はアルキルシラザン類で表面処理する方法は、特に限定されないが、湿式方式または乾式方式が好ましい。特に好ましくは湿式方式が好ましい。湿式方式の方が、乾式方式と比較した場合、前記(B)無機充填材の表面へ均一に処理することができる。
【0031】
前記(C)平均粒径5〜100nmの微粒子は、プリント配線板用樹脂組成物を基材に含侵させプリプレグを製造する際、多量の無機充填材を含むプリント配線板用樹脂組成物であっても、基材中に無機充填材を均一に含浸させることができる。
従って得られるプリプレグ、または金属張積層板の熱膨張係数を小さくすることができる。(C)平均粒径5〜100nmの微粒子は、特に限定されないが、例えば、タルク、焼成タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩、酸化チタン、アルミナ、シリカ、溶融シリカ等の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、窒化アルミニウムニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素等の窒化物、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等のチタン酸塩等を挙げることができる。これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併用したりすることもできる。
この中でもシリカ、酸化チタン、硫酸バリウム等が、比較的球状で入手しやすく、また金属張積層板の線熱膨張率を下げる点で好ましい。また、分散性の観点から、シリカであることが更に好ましい。
【0032】
前記(C)平均粒径5〜100nmの微粒子の形状は、球状であることが好ましい。これにより、含浸性を向上させることができる。球状にする方法は特に限定されないが、例えば、シリカの場合は、燃焼法などの乾式の溶融シリカや沈降法やゲル法などの湿式のゾルゲルシリカなどにより球状にすることができる。
【0033】
前記(C)平均粒径5〜100nmの無機微粒子の配合量は、プリント配線板用樹脂組成物中に1〜15重量%であり、(B)無機充填材と、(C)平均粒径5〜100nmの微粒子との総量がプリント配線板用樹脂組成物中に70〜95重量%である。
これによりリント配線板用樹脂組成物を基材に含侵させプリプレグを製造する際、多量の無機充填材を含むプリント配線板用樹脂組成物であっても、基材中に無機充填材を均一に含浸させることができる。
【0034】
尚、(B)無機充填材、(C)平均粒径5〜100nmの微粒子の平均粒子径は、例えば、レーザー回折散乱法により測定することができる。粒子を水中で超音波により分散させ、動的光散散乱式粒度分布測定装置(HORIBA製、LB−550)により、粒子の粒度分布を体積基準で測定し、そのメディアン径(D50)を平均粒子径とする。
【0035】
また、前記シリカ粒子としては、NSS−5N(トクヤマ(株)製)、Sicastar43−00−501(Micromod社製)等の市販品を用いることもできる。
【0036】
本発明のプリント配線板用樹脂組成物は、必要に応じて、上記成分以外の添加物を、特性を損なわない範囲で添加することができる。上記成分以外の成分は、例えば、エポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオイル型カップリング剤等のカップリング剤、イミダゾール類、トリフェニルホスフィン、及び4級ホスホニウム塩等の硬化促進剤、アクリル系重合物等の表面調整剤、染料及び顔料等の着色剤等を挙げることができる。
【0037】
本発明のプリント配線板用樹脂組成物は、プリプレグの調製の際に、溶媒に溶解させてワニスとして用いられる。前記ワニスの調製方法は、特に限定されないが、例えば、前記(B)無機充填剤を溶媒に分散したスラリーを調製し、当該スラリーにその他のプリント配線板用樹脂組成物の成分を添加し、さらに前記溶媒を加えて溶解・混合させる方法等が挙げられる。(C)平均粒径5〜100nmの無機微粒子は、凝集し易く、樹脂組成物に配合する際に2次凝集等を形成してしまうことが多いが、予めスラリー状のものを用いることで、このような2次凝集を防止することができ、分散性が向上される。
【0038】
前記溶媒としては、特に限定されないが、前記プリント配線板用樹脂組成物に対して良好な溶解性を示す溶媒が好ましく、例えば、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。尚、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。
【0039】
前記ワニスが含むプリント配線板用樹脂組成物は、特に限定されないが、30〜80重量%が好ましく、特に40〜70重量%が好ましい。これにより、プリント配線板用樹脂組成物の基材への含浸性を向上できる。
【0040】
(プリプレグ)
次に、プリプレグについて説明する。
本発明のプリプレグは、前記樹脂組成物を基材に含浸してなるものである。本発明の樹脂組成物は、ワニス化の際に低粘度の状態で前記の充填材および微粒子を多量に含むことができると共に、基材へ十分含浸したプリプレグを得ることができる。
【0041】
前記基材としては、例えばガラス繊布、ガラス不繊布等のガラス繊維基材、あるいはガラス以外の無機化合物を成分とする繊布又は不繊布等の無機繊維基材、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂等の有機繊維で構成される有機繊維基材等が挙げられる。
これらの基材は単独又は併用して使用してもよい。
これら基材の中でも強度、吸水率の点でガラス織布に代表されるガラス繊維基材が好ましい。ガラス繊維基材は、Eガラス、Tガラス、Sガラス、NEガラス等が挙げられるが、機械強度、低熱膨張の観点から、Tガラス、Sガラスが特に好ましい。
【0042】
前記樹脂組成物を前記基材に含浸させる方法は、例えば基材を樹脂組成物のワニスに浸漬する方法、各種コーターにより塗布する方法、スプレーにより吹き付ける方法等が挙げられる。これらの中でも、基材を樹脂組成物のワニスに浸漬する方法が好ましい。これにより、基材に対する樹脂組成物の含浸性が向上する。尚、基材を樹脂組成物のワニスに浸漬する場合、通常の含浸塗布設備を使用することができる。前記基材に前記樹脂組成物を含浸させ、所定温度、例えば80〜200℃で乾燥させることによりプリプレグを得ることができる。
【0043】
前記樹脂ワニスに用いられる溶媒は、熱可塑性樹脂組成物に対して良好な溶解性を示すことが望ましいが、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。良好な溶解性を示す溶媒としては、例えばジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶剤が挙げられる。
前記樹脂ワニス中の固形分は、特に限定されないが、前記樹脂組成物の固形分30〜70重量%が好ましく、特に30〜50重量%が好ましい。これにより、樹脂ワニスの基材への含浸性を更に向上できる。
【0044】
(積層板)
次に、積層板について説明する。
本発明の積層板は、基材に上記の樹脂組成物を含浸してなる樹脂含浸基材層の少なくとも片面に金属箔を有するものである。
本発明の積層板は、例えば、上記のプリプレグ又は当該プリプレグを2枚以上重ね合わせた積層体の少なくとも片面に金属箔を張り付けることで製造できる。
プリプレグ1枚のときは、その上下両面もしくは片面に金属箔を重ねる。また、プリプレグを2枚以上積層することもできる。プリプレグ2枚以上積層するときは、積層したプリプレグの最も外側の上下両面もしくは片面に金属箔あるいはフィルムを重ねる。次に、プリプレグと金属箔とを重ねたものを加熱加圧成形することで金属箔を有する積層板を得ることができる。
【0045】
前記加熱する温度は、特に限定されないが、250〜400℃が好ましく、特に280〜360℃が好ましい。さらに、熱可塑性樹脂のガラス転移温度から10℃から70℃高い温度がより好ましく、特に、ポリイミド樹脂の場合は、ポリイミド樹脂のガラス転移温度より30℃から50℃高い温度が好ましい。
前記加圧する圧力は、特に限定されないが、0.1〜5MPaが好ましく、特に0.5〜3MPaが好ましい。また、必要に応じて高温槽等で200〜400℃の温度で後硬化を行っても構わない
【0046】
また、本発明の積層板を製造する別の方法として、図2に示す樹脂付き金属箔を用いた積層板の製造方法が挙げられる。まず、金属箔11に均一な絶縁樹脂層12をコーターで塗工した樹脂付き金属箔10を準備し、ガラス繊維等の基材20の両側に、樹脂付き金属箔10を絶縁樹脂層を内側にして配し(図2(a))、真空中で加熱250〜400℃、加圧0.1〜5MPaでラミネート含浸させる方法により、金属箔付きプリプレグ41を得る(図2(b))。次いで、金属箔付きプリプレグ41を直接加熱加圧成形することで、金属箔を有する積層板51を得ることができる(図2(c))。
【0047】
さらに、本発明の積層板を製造する別の方法として、図3に示す樹脂付き高分子フィルムシートを用いた積層板の製造方法も挙げられる。まず、高分子フィルムシート31に、均一な絶縁樹脂層32をコーターで塗工した樹脂付き高分子フィルムシート30を準備し、基材20の両側に樹脂付き高分子フィルムシート30を絶縁樹脂層を内側にして配し(図3(a))、真空中で加熱250〜400℃、加圧0.1〜5MPaでラミネート含浸させる方法により、高分子フィルムシート付きプリプレグ42を得ることができる(図3(b))。次いで、高分子フィルムシート付きプリプレグ42の少なくとも片面の高分子フィルムシート31を剥離後(図3(c))、高分子フィルムシート31を剥離した面に金属箔11を配し(図3(d))、加熱加圧成形することで金属を有する積層板52を得ることができる(図3(e))。さらに、両面の高分子フィルムシートを剥離する場合は、前述のプリプレグ同様に、2枚以上積層することもできる。プリプレグを2枚以上積層するときは、積層したプリプレグの最も外側の上下両面もしくは片面に金属箔または高分子フィルムシートを配し、加熱加圧成形することで積層板を得ることができる。前記加熱加圧成形する条件としては、温度は、特に限定されないが、250〜400℃が好ましく、特に280〜360℃が好ましい。前記加圧する圧力は、特に限定されないが、0.1〜5MPaが好ましく、特に0.5〜3MPaが好ましい。
また、必要に応じて高温槽等で200〜400℃の温度で後硬化を行ってもかまわない。
この様な製造方法では、基材付きでプリプレグを作製するため、プリプレグは、面内で厚みが均一で、表面平滑性が高く、低圧成形が可能となり、厚み精度が高く、成形歪の小さい積層板とすることができる。そのため、プリント配線板、および半導体装置の反りや反りばらつきを低減し、歩留り良く製造することができる。
【0048】
図2〜3等の積層板は、特に限定されないが、例えば、樹脂付き金属箔を製造する装置及び積層板を製造する装置を用いて製造される。
前記樹脂付き金属箔を製造する装置において、金属箔は、例えば長尺のシート品を巻物形態にしたもの等を用い、連続的に巻き出すことにより供給することができる。ワニス状の樹脂組成物は、供給装置により、所定量が連続的に金属箔上に供給される。ここでワニス状の樹脂組成物とは、本発明の樹脂組成物を溶剤に溶解、分散させた塗布液をいう。ワニス状の樹脂組成物の塗工量は、コンマロールと、当該コンマロールのバックアップロールとのクリアランスにより制御することができる。所定量の樹脂が塗工された金属箔は、横搬送型の熱風乾燥装置の内部を移送され、液状の樹脂中に含有される有機溶剤等を実質的に乾燥除去することで、必要に応じて、硬化反応を途中まで進めた樹脂付き金属箔とすることができる。樹脂付き金属箔は、そのまま巻き取ることもできるがラミネートロールにより絶縁樹脂層が形成された側に保護フィルムを重ね合わせ、当該保護フィルムがラミネートされた樹脂付き金属箔を巻き取って、巻物形態の樹脂付き金属箔を得ている。
【0049】
この様な製造方法では、溶剤中に溶解、分散させたワニスではなく、樹脂組成物を直接繊維基材へ含浸させることを考慮する必要がある。本発明の樹脂組成物は、平均粒径5〜100nmの微粒子を配合することで含浸性を向上させることができる。また、加熱加圧成形時に、積層板内における樹脂組成物のフローを抑え、溶融樹脂の不均一な移動が抑制され、積層板表面のスジ状のムラを防止し、且つ均一な厚みとすることができる。
【0050】
(樹脂シート)
次に、樹脂シートについて説明する。
本発明の樹脂シートは、前記樹脂組成物からなる絶縁層を金属箔上、またはフィルム上に形成してなるものである。
ここで、プリント配線板用樹脂組成物からなる絶縁層を金属箔、またはフィルム上に形成する方法としては特に限定されないが、例えば、プリント配線板用樹脂組成物を溶剤などに溶解・分散させて樹脂ワニスを調製して、各種塗工装置を用いて樹脂ワニスを基材に塗工した後、これを乾燥する方法、樹脂ワニスをスプレー装置にて基材に噴霧塗工した後、これを乾燥する方法などが挙げられる。
【0051】
前記樹脂ワニスに用いられる溶媒は、前記樹脂組成物中の樹脂成分に対して良好な溶解性を示すことが望ましいが、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。良好な溶解性を示す溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、セルソルブ系、カルビトール系等が挙げられる。
【0052】
前記樹脂ワニス中の固形分含有量としては特に限定されないが、10〜70重量%が好ましく、特に20〜55重量%が好ましい。
【0053】
本発明の樹脂シートは、絶縁層を2層以上有する場合、そのうちの少なくとも1層が本発明の樹脂組成物であることが好ましい。また本発明のプリント配線板用樹脂組成物よりなる絶縁層は、金属箔、またはフィルム上に直接本発明の樹脂組成物よりなる樹脂層を形成することが好ましい。こうすることでプリント配線板製造時において、本発明の樹脂組成物からなる絶縁層が外層回路導体と高いめっきピール強度を発現することができる。
【0054】
前記本発明の樹脂組成物からなる絶縁層の厚さは、0.5μm〜10μmの厚みであることが好ましい。前記範囲の絶縁層の厚さにすることにより、導体回路との間で高い密着性を得ることができる。
【0055】
本発明の樹脂シートに用いるフィルムは、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂などの耐熱性を有した熱可塑性樹脂フィルムなどを用いることができる。
【0056】
本発明の樹脂シートに用いる金属箔は、特に限定されないが、例えば、銅及び/又は銅系合金、アルミ及び/又はアルミ系合金、鉄及び/又は鉄系合金、銀及び/又は銀系合金、金及び金系合金、亜鉛及び亜鉛系合金、ニッケル及びニッケル系合金、錫及び錫系合金等の金属箔などを用いることができる。なお、本発明の樹脂シートを製造するにあたっては、絶縁層を積層する金属箔表面の凹凸は、表面粗さ(Rz)が2μm以下であることが好ましい。表面粗さ(Rz)が、2μm以下の金属箔表面上に、本発明の樹脂組成物からなる絶縁層を形成することにより、表面粗さが小さく、かつ、密着性(めっきピール強度)に優れるものとすることができる。
尚、金属の表面粗さ(Rz)は、10点測定を行い、その平均値とした。表面粗さは、JISB0601に基づいて測定した。
【0057】
(プリント配線板)
次に、本発明のプリント配線板について説明する。
本発明のプリント配線板は、上記のプリプレグ、または積層板を内層回路基板に用いてなる。
また、本発明のプリント配線板は、内層回路上に、上記のプリプレグ、および/または樹脂シートを絶縁層に用いて製造することができる。
また、本発明のプリント配線板は、上記の樹脂組成物を絶縁層に用いることにより製造される。
【0058】
本発明においてプリント配線板とは、絶縁層の上に金属箔等の導電体で回路を形成したものであり、片面プリント配線板(一層板)、両面プリント配線板(二層板)、及び多層プリント配線板(多層板)のいずれであってもよい。多層プリント配線板とは、メッキスルーホール法やビルドアップ法等により3層以上に重ねたプリント配線板であり、内層回路基板に絶縁層を重ね合わせて加熱加圧成形することによって得ることができる。
前記内層回路基板としては、例えば、本発明の金属箔を有する積層板の金属層に、エッチング等により所定の導体回路を形成し、導体回路部分を黒化処理したものを好適に用いることができる。
前記絶縁層としては、本発明のプリプレグ、又は本発明の樹脂組成物からなる樹脂フィルムを用いることができる。尚、前記絶縁層として、前記プリプレグ又は前記樹脂組成物からなる樹脂フィルムを用いる場合は、前記内層回路基板は本発明の積層板からなるものでなくてもよい。
【0059】
以下、本発明のプリント配線板の代表例として、本発明の積層板を内層回路基板として用い、本発明のプリプレグを絶縁層として用いる場合の多層プリント配線板について説明する。
前記積層板の片面又は両面に回路を形成し、内層回路基板を作製する。場合によっては、ドリル加工、レーザー加工によりスルーホールを形成し、メッキ等で両面の電気的接続をとることもできる。この内層回路基板に前記プリプレグを重ね合わせて加熱加圧成形することで絶縁層を形成する。同様にして、エッチング等で形成した導体回路層と絶縁層とを交互に繰り返し成形することにより、多層プリント配線板を得ることができる。
【0060】
具体的には、前記プリプレグと前記内層回路基板とを合わせて、真空加圧式ラミネーター装置などを用いて真空加熱加圧成形させ、その後、熱風乾燥装置等で絶縁層を加熱硬化させる。ここで加熱加圧成形する条件としては、特に限定されないが、一例を挙げると、温度250〜400℃、圧力0.2〜3MPaで実施することができる。また、加熱硬化させる条件としては、特に限定されないが、一例を挙げると、温度280〜360℃、時間30〜120分間で実施することができる。
【0061】
尚、次工程においてレーザーを照射し、絶縁層に開口部を形成するが、その前に基材を剥離する必要がある。基材の剥離は、絶縁層を形成後、加熱硬化の前、又は加熱硬化後のいずれに行っても特に問題はない。
【0062】
次に、絶縁層にレーザーを照射して、開孔部を形成する。前記レーザーは、エキシマレーザー、UVレーザー及び炭酸ガスレーザー等が使用できる。
【0063】
レーザー照射後の樹脂残渣等(スミア)は過マンガン酸塩、重クロム酸塩等の酸化剤等により除去する処理、すなわちデスミア処理を行うことが好ましい。デスミア処理が不十分で、デスミア耐性が十分に確保されていないと、開孔部に金属メッキ処理を行っても、スミアが原因で上層金属配線と下層金属配線との通電性が十分に確保されなくなるおそれがある。また、平滑な絶縁層の表面を同時に粗化することができ、続く金属メッキにより形成する導電配線回路との密着性を上げることができる。
【0064】
次に、外層回路を形成する。外層回路の形成は、金属メッキにより絶縁樹脂層間の接続を図り、エッチングにより外層回路パターン形成を行う。
【0065】
さらに絶縁層を積層し、前記同様回路形成を行っても良いが、多層プリント配線板では、回路形成後、最外層にソルダーレジストを形成する。ソルダーレジストの形成方法は、特に限定されないが、例えば、ドライフィルムタイプのソルダーレジストを積層(ラミネート)し、露光、及び現像により形成する方法、又は液状レジストを印刷したものを露光、及び現像により形成する方法によりなされる。尚、得られた多層プリント配線板を半導体装置に用いる場合、半導体素子を実装するため接続用電極部を設ける。接続用電極部は、金メッキ、ニッケルメッキ及び半田メッキ等の金属皮膜で適宜被覆することができる。
【0066】
前記金メッキの代表的な方法の1つとして、ニッケル−パラジウム−金無電解メッキ法がある。この方法では、接続用電極部に、クリーナー等の適宜の方法により前処理を行った後、パラジウム触媒を付与し、その後さらに、無電解ニッケルメッキ処理、無電解パラジウムメッキ処理、及び無電解金メッキ処理を順次行う。
ENEPIG法は、前記ニッケル−パラジウム−金無電解メッキ法の無電解金メッキ処理段階において、置換金メッキ処理を行う方法である。下地メッキとしての無電解ニッケルメッキ皮膜と、無電解金メッキ皮膜との間に無電解パラジウムメッキ皮膜を設けることによって、接続用電極部における導体材料の拡散防止性、耐食性が向上する。下地ニッケルメッキ皮膜の拡散防止を図ることができるので、Au−Au接合の信頼性が向上し、また金によるニッケル酸化を防止することができるので、熱負荷の大きい鉛フリー半田接合の信頼性も向上する。ENEPIG法では、通常、無電解パラジウムメッキ処理を行う前に表面処理を行って、メッキ工程での導通不良の発生を防ぐ必要があり、導通不良が甚だしい場合には隣接する端子間でショートを起こす原因となる。一方、本発明のプリント配線板は、表面処理を行わなくても上記のような導通不良がなく、簡単にメッキ処理を行うことができる。
【0067】
(半導体装置)
次に、本発明の半導体装置について説明する。
前記で得られたプリント配線板に半田バンプを有する半導体素子を実装し、半田バンブを介して、前記プリント配線板との接続を図る。そして、プリント配線板と半導体素子との間には液状封止樹脂を充填し、半導体装置を形成する。半田バンプは、錫、鉛、銀、銅、ビスマス等からなる合金で構成されることが好ましい。
【0068】
半導体素子とプリント配線板との接続は、フリップチップボンダー等を用いて、基板上の接続用電極部と半導体素子の半田バンプとの位置合わせを行ったあと、IRリフロー装置、熱板、その他加熱装置を用いて半田バンプを融点以上に加熱し、プリント配線板と半田バンプとを溶融接合することにより行う。尚、接続信頼性を良くするため、予めプリント配線板上の接続用電極部に半田ペースト等、比較的融点の低い金属の層を形成しておいてもよい。この接合工程に先んじて、半田バンプ及び/又はプリント配線板上の接続用電極部の表層にフラックスを塗布することで接続信頼性を向上させることもできる。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0070】
実施例、比較例及び参考例において用いた原材料は以下の通りである。
(1)ポリイミド樹脂A:DIC社製、V−8003、Tg=280℃
(2)ポリイミド樹脂B:合成例1、Tg=220℃
(3)ポリイミド樹脂C:合成例2、Tg=245℃
(4)シリカ:アドマテック社製、球状シリカ、SO−31R、平均粒径1.0μm
(5)平均粒径5〜100nmの微粒子:シリカ、トクヤマ社製、球状 NSS−5N、平均粒径70nm
(6)アニリドシラン:信越化学工業社製、KBM−573
【0071】
合成例1(ポリイミド樹脂B)
温度計、攪拌機、原料投入口を備えた四つ口のセパラブルフラスコ中に、酸成分として4,4’-ビスフェノールA酸二無水物43.48g(83.3mmol)をアニソール220.24g、トルエン55.06gに縣濁させた。そして、ジアミン成分としては2,2-ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン32.75g(70mmol)とα,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(平均分子量836)11.12g(13.3mmol)をアニソール164.2gに溶解させる。次いで、ディーンスターク還流冷却管を取り付け、オイルバスにより加熱すると縣濁溶液が溶解し透明になった。加熱還流が始まったらジアミン溶液を0.5時間ゆっくり滴下した。この際、イミド化に伴い発生する水をトルエンとの共沸により系外へ除去した。滴下終了後2時間加熱還流したところで反応を終了した。冷却後、大量のメタノール中に投入しポリイミド樹脂を析出させた。固形分を濾過後、70〜80℃で12時間減圧乾燥し溶剤を除き固形のポリイミド樹脂Bを得る。尚、動的粘弾性測定(DMA測定)により得られたガラス転移温度(Tg)は、220℃であった。
【0072】
合成例2(ポリイミド樹脂C)
温度計、攪拌機、原料投入口を備えた四つ口のセパラブルフラスコ中に、酸成分として3,4−3‘、4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物29.42g(100mmol)をアニソール220.24g、トルエン55.06gに縣濁させる。そして、ジアミン成分としては1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン14.61g(50mmol)と2,2−ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}プロパン20.53g(50mmol)を164.2gに溶解させる。次いで、ディーンスターク還流冷却管を取り付け、オイルバスにより加熱すると縣濁溶液が溶解し透明になった。加熱還流が始まったらジアミン溶液を0.5時間ゆっくり滴下した。この際、イミド化に伴い発生する水をトルエンとの共沸により系外へ除去した。滴下終了後2時間加熱還流したところで反応を終了した。冷却後、大量のメタノール中に投入しポリイミド樹脂を析出させた。固形分を濾過後、70〜80℃で12時間減圧乾燥し溶剤を除き固形のポリイミド樹脂Cを得る。尚、動的粘弾性測定(DMA測定)により得られたガラス転移温度(Tg)は、245℃であった。
【0073】
(実施例)
1.樹脂ワニスの調製
(A)熱可塑性樹脂としてポリイミド樹脂Aを29重量%、(B)無機充填材として球状シリカ(アドマテックス社製、SO−31R、平均粒子径1.0um)を67重量%、(C)平均粒径5〜100nmの微粒子としてシリカナノ粒子(トクヤマ社製、NSS−5N、平均粒径70nm)を3重量%、カップリング剤としてアニリドシラン(信越化学工業社製、KBM−573)を1重量%とをジメチルアセトアミドに溶解・混合し、不揮発分が40%の無機充填材を含む熱可塑性樹脂組成物ワニスを調製した。
【0074】
2.プリプレグの作製
前記ワニスをガラス織布(厚さ94μm、日東紡績製Tガラス織布、WTX−116E,坪量104g)に含浸し、170℃の加熱炉で15分間乾燥して、0.1mmのプリプレグを得た。
【0075】
3.積層板の作製
前記プリプレグを4枚重ね、その両面に12μmの銅箔(三井金属鉱業社製、3EC−VLP箔)を重ねて、圧力4MPa、温度340℃で2時間加熱加圧成形し、絶縁樹脂層の厚み0.4mmの両面に銅箔を有する積層板を得た。
【0076】
4.プリント配線板の製造
両面に銅箔を有する前記積層板を用い、ドリル機で開孔しスルーホールを形成後、無電解メッキで上下銅箔間の導通を図った。
なお、スルーホール壁間は、スルーホール壁間絶縁信頼性を評価するため、スルーホール壁間0.2mmの部分を有する。
両面の銅箔をエッチングすることにより内層回路を両面に形成した(L(導体回路幅(μm))/S(導体回路間幅(μm))=50/50)。
次に、内層回路に過酸化水素水と硫酸を主成分とする薬液(旭電化工業(株)製、テックSO−G)をスプレー吹き付けすることにより、粗化処理による凹凸形成を行った。
次に前記プリプレグを内層回路上に真空積層装置を用いて積層し、温度340℃、時間60分間加熱硬化し、積層体を得た。
その後、得られた積層体が有するプリプレグに、炭酸レーザー装置(日立ビアメカニクス(株)製:LG−2G212)を用いてφ60μmの開孔部(ブラインド・ビアホール)を形成し、70℃の膨潤液(アトテックジャパン社製、スウェリングディップ セキュリガント P)に5分間浸漬し、さらに80℃の過マンガン酸カリウム水溶液(アトテックジャパン社製、コンセントレートコンパクト CP)に15分浸漬後、中和して粗化処理を行った。
次に、脱脂、触媒付与、活性化の工程を経た後、無電解銅メッキ皮膜による約0.5μmの給電層を形成した。この給電層表面に、厚さ25μmの紫外線感光性ドライフィルム(旭化成社製、AQ−2558)をホットロールラミネーターにより貼り合わせ、最小線幅/線間が20/20μmのパターンが描画されたクロム蒸着マスク(トウワプロセス社製)を使用して、位置を合わせ、露光装置(ウシオ電機社製UX−1100SM−AJN01)にて露光、炭酸ソーダ水溶液にて現像し、めっきレジストを形成した。
【0077】
次に、給電層を電極として電解銅めっき(奥野製薬社製81−HL)を3A/dm2、30分間行って、厚さ約25μmの銅配線を形成した。ここで2段階剥離機を用いて、前記めっきレジストを剥離した。各薬液は、1段階目のアルカリ水溶液層にはモノエタノールアミン溶液(三菱ガス化学社製R−100)、2段階目の酸化性樹脂エッチング剤には過マンガン酸カリウムと水酸化ナトリウムを主成分とする水溶液(日本マクダーミッド社製、マキュダイザー9275、9276)、中和には酸性アミン水溶液(日本マクダーミッド社製マキュダイザー9279)をそれぞれ用いた。
【0078】
そして、給電層を過硫酸アンモニウム水溶液(メルテックス(株)製、AD−485)に浸漬処理することで、エッチング除去し、配線間の絶縁を確保した。次に、絶縁層を温度340℃、時間60分で最終硬化させ、最後に回路表面にソルダーレジスト(太陽インキ社製、PSR4000/AUS308)を形成し、プリント配線板を得た。
前記プリント配線板の半導体素子の半田バンプ配列に相当する接続用電極部には、ENEPIG処理を施した。ENEPIG処理は、[1]クリーナー処理、[2]ソフトエッチング処理、[3]酸洗処理、[4]プレディップ処理、[5]パラジウム触媒付与、[6]無電解ニッケルメッキ処理、[7]無電解パラジウムメッキ処理、[8]無電解金メッキ処理の工程で行われた。
【0079】
(5)半導体装置の製造
前記半導体装置用のENEPIG処理を施されたプリント配線板に半田バンプを有する半導体素子(TEGチップ、サイズ8mm×8mm、厚み0.1mm)を、フリップチップボンダー装置により、加熱圧着し搭載した。
次に、IRリフロー炉で半田バンプを溶融接合した後、液状封止樹脂(住友ベークライト社製、CRP−4152S)を充填し、液状封止樹脂を硬化させることで得た。
尚、液状封止樹脂は、温度150℃、120分の条件で硬化させた。尚、前記半導体素子の半田バンプは、Sn/Pb組成の共晶で形成されたものを用いた。最後に14mm×14mm角のサイズにルーターで個片化し、半導体装置を得た。
【0080】
<実施例2〜5、比較例1〜4>
表1の配合量に従い、実施例1と同様にプリプレグ、積層板、プリント配線板、および半導体装置を得た。
【0081】
前記で得られたプリプレグ、積層板、多層プリント配線板、及び半導体装置について、表1に示す結果を得るために行った評価項目の内容を以下に示す。
また、実施例、及び比較例の樹脂組成物の配合組成、各物性値、評価結果を表1、及び2に示す。尚、表中において、各配合量は「重量部」を示す。
【0082】
【表1】

【0083】
(1)線熱膨張係数
線熱膨張係数の測定は、TMA(熱機械的分析)装置(TAインスツルメント社製、Q400)を用いて、4mm×20mmの試験片を作製し、温度範囲30〜300℃、10℃/分、荷重5gの条件で行った。
線膨張係数の値は、30〜300℃まで昇温し、一旦30℃まで降温した後、再び、300℃まで10℃/分で昇温させる際の50〜100℃における線膨張係数の平均値(α1)と270〜285℃における線膨張係数の平均値(α2)とした。
尚、4mm×20mmの試験片は、各実施例および比較例で得られたプリプレグを2枚用いて、第2樹脂層を向かい合わせて、温度340℃、圧力4MPa、時間120分の条件でプレス積層した後、銅箔を除去したものを用いた。
【0084】
(2)半導体装置の反り評価
上記作製した半導体装置を用いて、半導体装置の反りを評価した。
反りについては、上記の両面板およびプリント配線板の反り評価と同様に、レーザ3次元形状測定機((株)日立テクノロジーアンドサービス LS220−MT)を用いて、常温における反りの測定を行った。測定範囲は半導体チップサイズと同じ15mm×15mmの範囲で、半導体チップ搭載面とは反対側のBGA面にレーザを当てて測定を行い、レーザヘッドからの距離が、最遠点と最近点の差を反り値とした。以下のように判定した。
○:反り値が、200μm未満であった場合。
△:反り値が、200μm以上、250μm以下であった場合。
×:反り値が、250μmより大きい値あった場合。
【0085】
(3)接続信頼性
前記で得られた半導体装置の接続部不良の有無を評価した。接続部不良の有無の評価結果は、得られた半導体装置10個を、IPC/JEDECのJ−STD−20に準拠し、半導体装置の表面最高到達温度が、260℃となるリフロー炉に、10回通した。
その後に、超音波深傷検査装置で半導体装置の絶縁層の剥離、クラック、半導体素子裏面の剥離、および半田バンプの欠損、及び125℃の熱板上で銅通不良を評価した。
○:接続部不良がない場合
×:1つでも不良があった場合
ここで、不良とは、半導体装置の絶縁層の剥離、クラック、半導体素子裏面の剥離、および半田バンプの欠損、または125℃の熱板上で導通不良がある場合をいう。
【0086】
(4)熱衝撃性試験
得られた半導体装置をフロリナート中で−55℃10分、125℃10分、−55℃10分を1サイクルとして、1000サイクル処理し、半導体装置にクラックが発生していないか目視で確認した。
各符号は以下の通りである。
○:クラックが発生しなかった場合。
×:クラック発生した場合。
【0087】
表1に記載されている評価結果からわかるように、実施例1〜5では、前記(1)〜(4)の評価において良好な結果が得られた。つまり、実施例1〜5では、多量の無機充填材を添加したにも関わらず、無機充填剤が均一に含浸し、50〜100℃における線膨張係数の平均値(α1)、270〜285℃における線膨張係数の平均値(α2)ともに低い値となった。
従って、半導体装置の反りが小さく、接続信頼性および熱衝撃性に優れる結果となったと考えられる。
一方、比較例1、4では、無機充填材量が少ないため、線熱膨張係数が大きく、半導体装置の反り、接続信頼性および熱衝撃性に劣る結果となった。
比較例2では、線熱膨張率は低いが、5〜100nmの微粒子が多いため、微粒子の凝集がおこり、また多量の無機充填剤が均一に含浸されず成形性が悪化し基板の厚み精度が低下した。
従って、半導体装置の反り、および信頼性、熱衝撃性が劣る結果となった。
比較例3では、平均粒子径5〜100nmの微粒子を用いなかったため、無機充填剤が均一に含浸されず成形性が悪化し基板の厚み精度が悪い結果、半導体装置の反り、接続信頼性、および熱衝撃性が劣る結果となった。
【符号の説明】
【0088】
1…基材
2…含浸槽
3…樹脂ワニス
4…ディップロール
5…スクイズロール
6…乾燥機
7…プリプレグ
8…上部ロール
10…樹脂付き金属箔
11…金属箔
12…絶縁樹脂層
20…基材
30…樹脂付き高分子フィルムシート
31…高分子フィルムシート
32…絶縁樹脂層
40…プリプレグ
41…金属箔付きプリプレグ
42…高分子フィルムシート付きプリプレグ
51…金属張積層板
52…金属張積層板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱可塑性樹脂、(B)無機充填材、(C)平均粒径5〜100nmの微粒子を含むプリント配線板用樹脂組成物であって、(B)無機充填材と、(C)平均粒径5〜100nmの微粒子との総量がプリント配線板用樹脂組成物中に70〜95重量%であり、かつ(C)平均粒径5〜100nmの微粒子がプリント配線板用樹脂組成物中に1〜15重量%であることを特徴とするプリント配線板用樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)熱可塑性樹脂は、動的粘弾性測定における、ガラス転移温度が220℃以上である請求項1に記載のプリント配線板用樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)熱可塑性樹脂は、イミド骨格を有する熱可塑性樹脂である請求項1、または2に記載のプリント配線板用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のプリント配線板用樹脂組成物を基材に含浸させてなるプリプレグ。
【請求項5】
請求項4に記載のプリプレグ、又は当該プリプレグを2枚以上重ね合わせた積層体の少なくとも片面に金属箔を有することを特徴とする積層板。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の樹脂組成物よりなる絶縁層をフィルム上、又は金属箔上に形成してなる樹脂シート。
【請求項7】
請求項4に記載のプリプレグ、請求項5に記載の積層板、及び請求項6に記載の樹脂シートよりなる群から選ばれる少なくとも一を用いてなることを特徴とするプリント配線板。
【請求項8】
請求項7に記載のプリント配線板に半導体素子を搭載してなることを特徴とする半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−138484(P2012−138484A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290216(P2010−290216)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】