説明

プリント配線板用積層構造体およびプリント配線板の製造方法

【課題】基板上の樹脂絶縁層において、基板に到達するビアホールを紫外線レーザー照射によって形成する際、ビアホール周縁の表層部が変性することなく、かつ、微細で迅速なビアホール形成が可能な、プリント配線板用積層構造体およびそれを用いたプリント配線板の製造方法を提供する。
【解決手段】
基板と、前記基板上に形成された第2の硬化塗膜の層と、前記第2の硬化塗膜の層と前記基板との間に形成された第1の硬化塗膜とを備え、前記第2の硬化塗膜が、(C)多分岐構造を有するポリイミド樹脂および(D)多官能脂環式エポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物より形成され、前記第1の硬化塗膜が、紫外線吸収性を有する成分を少なくとも1種を含む熱硬化性樹脂組成物により形成されることを特徴とするプリント配線板用積層構造体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板等に用いられる積層構造体およびそれを用いたプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信機器をはじめとした電子機器の小型化・高密度化に伴い、プリント配線板においても、小型化や薄型化が進み、それによる配線パターンの高密度化・微細化の要望が高まっている。このような基板上の樹脂絶縁層に対して、直径50から250μm程度の基板に到達するビアホール(貫通孔)を形成する際は、炭酸ガスレーザーを用いるのが一般的である(特許文献1等参照)。
【0003】
また、直径30から50μm程度の微細なビアホールを形成する際は、紫外線レーザーが使用される(特許文献2から4等参照)。その際、紫外線レーザーの加工速度を上げる目的で、樹脂絶縁層の紫外線吸収性を高めるために、樹脂絶縁層の成分中に紫外線吸収剤等を含有させることがある(特許文献5等参照)。
【0004】
このような紫外線レーザー加工の際には、エネルギー密度の高いレーザー光が、樹脂絶縁層に照射され、当該部が除去加工されるが、同時に、エネルギー密度の低いレーザー光も樹脂絶縁層に照射され、特に、紫外線吸収性が高い樹脂絶縁層において、ビアホール周縁の表層部が変性してしまうために、塗膜物性が著しく悪化するという問題があった。これは、樹脂絶縁層が1層のみであるため、所望のビアホールが形成される以外にも、ビアホール周縁の表層部が変性してしまう弊害が生じることによる。
【0005】
また、紫外線レーザーを用いる場合に、樹脂絶縁層の紫外線吸収性が低いと、除去性が悪く照射回数が多くなるため、加工速度は遅く、迅速に加工できないことから適当でない。一方、炭酸ガスレーザーを用いる場合では、樹脂絶縁層の加工速度は速いものの、波長および回折限界から50μm以下のビアホール形成を安定的に形成できないため、適当でない。
【0006】
上記問題に対し、レーザー光の焦点位置を変える(デフォーカス)ことにより、樹脂層を除去する方法が開示されている(特許文献6等参照)。また、樹脂絶縁層上にプラスチックフィルムを積層させ、2層以上の複層にした状態で、紫外線レーザーによって加工する方法が開示されている(特許文献7から8等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開2009−066759号
【特許文献2】特開平11−266068号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献3】特開2004−240233号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献4】国際公開2009−096507号(特許請求の範囲等)
【特許文献5】特開2002−121360号公報(請求項1等)
【特許文献6】特開2006−203074号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献7】特開2004−087991号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献8】特開2001−323075号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献6記載の方法では、レーザー加工の際に発生するスミアと呼ばれる樹脂分解物の発生を低減させることはできるものの、ビアホール周縁の表層部の変性を生じさせないことは示されておらず、上記問題の解決にはならない。また、上記特許文献7および8記載の方法では、レーザー加工後にフィルムを剥離する工程を別途設ける必要があり、また、20μm未満の厚みの薄膜フィルムでは変性を抑える効果が薄く、20μm以上の厚みのフィルムでは、除去するのにレーザーの照射回数が多く必要となり、生産性低下の問題があった。このように従来の方法では、ビアホール周縁の表層部が変性しないことと、微細で迅速なビアホール形成との両立は難しいという問題があった。
【0009】
そこで本発明の目的は、基板上の樹脂絶縁層において、基板に到達するビアホールを紫外線レーザー照射によって形成する際、ビアホール周縁の表層部が変性することなく、かつ、微細で迅速なビアホール形成が可能な、プリント配線板用積層構造体およびそれを用いたプリント配線板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討した結果、紫外線吸収性を有する熱硬化性樹脂組成物を用いた第1の硬化塗膜の層と、紫外線吸収性を有さない熱硬化性樹脂組成物を用いた第2の硬化塗膜の層と、を含むプリント配線板用積層構造体とすることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、プリント配線板用の本発明の積層構造体は、基板と、前記基板上に形成された第2の硬化塗膜の層と、前記第2の硬化塗膜の層と前記基板との間に形成された第1の硬化塗膜の層とを備え、前記第2の硬化塗膜が、(C)多分岐構造を有するポリイミド樹脂および(D)多官能脂環式エポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物より形成され、前記第1の硬化塗膜が、紫外線吸収性を有する成分を少なくとも1種を含む熱硬化性樹脂組成物により形成されることを特徴とするものである。
【0012】
本発明のプリント配線板用積層構造体は、前記第1の硬化塗膜が、(A)線状構造を有するポリイミド樹脂、(B)多環芳香族炭化水素環を有するエポキシ樹脂、及び(E)紫外線吸収剤のうちの少なくともいずれか1種の紫外線吸収性を有する成分を含む熱硬化性樹脂組成物により形成されることが好ましい。
【0013】
本発明のプリント配線板用積層構造体は、前記第1の硬化塗膜および前記第2の硬化塗膜が、絶縁性永久保護膜であることが好ましい。
【0014】
本発明のプリント配線板用積層構造体は、前記(A)線状構造を有するポリイミド樹脂が、反応性官能基を有する芳香族ポリイミド樹脂であることが好ましい。
【0015】
本発明のプリント配線板用積層構造体は、前記(B)多環芳香族炭化水素環を有するエポキシ樹脂が、ナフタレン型エポキシ樹脂およびアントラセン型エポキシ樹脂のうちの少なくともいずれか1種であることが好ましい。
【0016】
本発明のプリント配線板用積層構造体は、前記第1の硬化塗膜の膜厚よりも前記第2の硬化塗膜の膜厚の方が薄いことが好ましい。
【0017】
本発明のプリント配線板の製造方法は、上述したプリント配線板用積層構造体に対して紫外線レーザーを照射して、第1の硬化塗膜および第2の硬化塗膜を除去し、前記基板に到達するビアホールを形成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、基板上の第1の硬化塗膜および第2の硬化塗膜からなる樹脂絶縁層に対して、基板に到達するビアホールを紫外線レーザー照射によって形成する際、ビアホール周縁の表層部が変性することなく、かつ、微細で迅速なビアホール形成が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の積層構造体の紫外線レーザー加工による貫通孔および配線溝形成過程を示す模式断面図である。
【図2】従来の樹脂絶縁層を備えた基板の紫外線レーザー加工による貫通孔形成過程を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のプリント配線板用積層構造体は、基板と、前記基板上に形成された第2の硬化塗膜の層と、前記第2の硬化塗膜の層と前記基板との間に形成された第1の硬化塗膜の層とを備えることを特徴とするものである。第1の硬化塗膜は下記構成を備えることにより紫外線吸収性を有し、第2の硬化塗膜は下記構成を備えることにより紫外線吸収性を有さないか、もしくは紫外線吸収性が著しく低い。ここで、紫外線とは200〜400nmの波長を指す。本発明のプリント配線板用積層構造体は、プリント配線板として有用である。即ち、レーザー加工、好ましくは紫外線レーザー加工により、貫通穴を形成し、めっき処理を施すことで高密度で微細な配線パターンを備えたプリント配線板として用いることができる。
【0021】
本発明者らの検討の結果、本発明の構成を採用することにより、紫外線レーザー照射によって第2の硬化塗膜および第1の硬化塗膜が除去加工され、微細で迅速なビアホール形成が可能となることが明らかとなった。これは、紫外線レーザーを照射すると、レーザー光は第2の硬化塗膜を透過するものの、紫外線吸収性を有する第1の硬化塗膜がレーザー光を吸収する。そして、塗膜が分解および気化して除去加工される際、同時に第2の硬化塗膜も第1の硬化塗膜側から押し出される様に除去されていると考えられる。そして第2の硬化塗膜をレーザー光が透過することから、第2の硬化塗膜の層において貫通穴周縁の変性の発生が抑制される。
【0022】
<第1の硬化塗膜>
第1の硬化塗膜は、紫外線吸収性を有する成分を少なくとも一種含む熱硬化性樹脂組成物により形成されることを特徴とするものである。
第1の硬化塗膜に用いられる熱硬化性樹脂組成物は、(A)線状構造を有するポリイミド樹脂、(B)多環芳香族炭化水素環を有するエポキシ樹脂、及び(E)紫外線吸収剤の少なくとも何れか一種を含むことが好ましい。
なお、紫外線吸収性を有する成分として(E)紫外線吸収剤のみを含む場合は、熱硬化性樹脂組成物中に熱硬化性樹脂成分を含む必要がある。
【0023】
紫外線吸収性を有する成分としての上記(A)線状構造を有するポリイミド樹脂は、樹脂骨格中に環状イミド結合を含むことが好ましく、紫外域に高い吸収性を有するものである。また、反応性官能基を有する芳香族ポリイミド樹脂が好ましく、有機溶剤に可溶なことが好ましい。ここで、芳香族ポリイミド樹脂とは、好ましくは下記一般式で表される構造単位を有する樹脂であり、また分子中に、下記と同様の反応性官能基を有することが好ましい。

(式中、Rは、芳香族環を有する4価の有機基を表し、Rは、芳香族環を有する2価の有機基を表す。)
【0024】
(A)線状構造を有するポリイミド樹脂の具体例としては、V−8005(DIC社製);GPI−NT、−HT(群栄化学工業社製);リカコートSN−20、−PN−20、−CN−20(新日本理化社製)等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
なお、上記(A)線状構造を有するポリイミド樹脂は、紫外線吸収性を有するものであれば、具体例に記載した以外のポリイミド樹脂も使用できる。
【0026】
このような(A)線状構造を有するポリイミド樹脂の組成物中の含有率は、第1の硬化塗膜を形成する為の熱硬化性樹脂組成物の全固形分を基準として、好ましくは10〜90質量%であり、より好ましくは20〜60質量%である。上記(A)線状構造を有するポリイミド樹脂が10質量%未満では、耐熱性が低下するため、本発明の効果が発揮されないことがあり、90質量%を超えると、硬化性が不十分となり、硬化塗膜としての機能が発現されないことがある。
【0027】
紫外線吸収性を有する成分としての上記(B)多環芳香族炭化水素環を有するエポキシ樹脂は、樹脂骨格中に2つ以上の芳香環が縮合した多環芳香族炭化水素環を含むエポキシ樹脂のことである。それら多環芳香族炭化水素環を有するエポキシ樹脂のなかでも、良好な紫外線レーザー加工性を得ることができる点で、特に紫外線領域に高い吸収性を有するナフタレン型エポキシ樹脂またはアントラセン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0028】
上記(B)多環芳香族炭化水素環を有するエポキシ樹脂の具体例としては、ナフタレン型エポキシ樹脂として、HP−4032、HP−4032D、HP−4700、HP−4710、HP−4770、EXA−4700、EXA−4710、EXA−7311、EXA−9900(いずれもDIC社製);ESN−175、ESN−355、ESN−375(いずれも新日鉄化学社製);アントラセン型エポキシ樹脂として、YX−8800(三菱化学社製)等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
(B)多環芳香族炭化水素環を有するエポキシ樹脂の組成物中の含有率は、第1の硬化塗膜を形成する為の熱硬化性樹脂組成物の全固形分を基準として、好ましくは10〜90質量%であり、より好ましくは20〜60質量%である。
【0030】
紫外線吸収性を有する成分としての上記(E)紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、シンナメート誘導体、アントラニレート誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体等が挙げられる。例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−エチルヘキシルサリチレート、フェニルサリチレート、p−t−ブチルフェニルサリチレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)べンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニルトリアジン、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン等が挙げられ、具体例としては、CHIMASSORB81、TINUVIN120、−NP、−234、−320、−326、−327、−328、−329、−1577ED(BASFジャパン社製);スミソープ200、−250、−300、−340、−350(住友化学社製);アデカスタブLA−31、−32、−36(ADEKA社製)等が挙げられる。
【0031】
また、上記(E)紫外線吸収剤として、フォトレジスト用として一般的に用いられている光重合開始剤も使用できる。そのような光重合開始剤としては、α−アミノアルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、オキシムエステル化合物、ベンゾフェノン化合物等が挙げられる。光重合開始剤の具体例としては、例えば、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン−9−オン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、1−(9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル)、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。また、市販品の具体例としては、イルガキュア−369、−379、−907、−OXE01、−OXE02、CGI−242(BASFジャパン社製);N−1919(ADEKA社製);EAB(保土谷化学社製)等が挙げられる。
上記の(E)紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
(E)紫外線吸収剤の含有率は、第1の硬化塗膜を形成する為の熱硬化性樹脂組成物の全固形分を基準として、好ましくは0.5〜10質量%であり、より好ましくは3〜7質量%である。紫外線吸収剤が0.5質量%未満では、レーザー加工性が十分に向上しないことがあり、10質量%を超えると、樹脂絶縁層としての物性が低下してくることがある。
【0033】
なお、紫外線吸収性を有する成分として(A)線状構造を有するポリイミド樹脂と(B)多環芳香族炭化水素環を有するエポキシ樹脂を併用する場合、第1の硬化塗膜を形成する為の熱硬化性樹脂組成物全体における配合量は、(A)線状構造を有するポリイミド樹脂と(B)多環芳香族炭化水素環を有するエポキシ樹脂の合計量で、第1の硬化塗膜に用いる熱硬化性樹脂組成物100質量部に対して、40質量部から80質量部であることが好ましい。配合量が40質量部未満である場合、組成物全体における樹脂量が低いため、組成物の流動性の制御が難しく、印刷性が悪くなることがある。一方、配合割合が80質量部を超える場合、無機充填剤等の配合量が相対的に低下し、樹脂絶縁層の機械的強度が低下することがある。
また、紫外線吸収性を有する成分として(E)紫外線吸収剤のみを含む場合、熱硬化性樹脂成分としては、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、または熱硬化性ポリイミド樹脂等の公知慣用の熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0034】
上記熱硬化性樹脂組成物を用いた第1の硬化塗膜の膜厚は、10〜30μmであることが好ましく、より好ましくは10〜20μmである。また、硬化塗膜はレベリング(平滑化)されていることが望ましい。膜厚が10μm未満である場合、レーザー照射によりクラック等の損傷を受けやすくなるため、好ましくない。また、膜厚が30μmを超える場合、基板としての厚みが増してしまい、基板の薄型化に対応できない。
【0035】
<第2の硬化塗膜>
第2の硬化塗膜に用いられる熱硬化性樹脂組成物は、(C)多分岐構造を有するポリイミド樹脂および(D)多官能脂環式エポキシ樹脂を含むことを特徴とするものである。
上記の(C)多分岐構造を有するポリイミド樹脂は、樹脂骨格中にイソシアヌレート環を有し、該イソシアヌレート環から分岐が生じている構造を有し、紫外線吸収性がないか、もしくは著しく低いポリイミド樹脂である。また、ナフタレン環やアントラセン環等の多環芳香族といった紫外線吸収性をもたらすような構造を樹脂構造中に含まず、好ましくは、ウレタン結合と、イミド環と、イソシアヌレート環とを有し、かつ、エポキシ基と反応する反応性官能基を有する。反応性官能基を有することで、加熱による硬化が可能となる。さらに、有機溶剤に可溶であることが好ましい。前記反応性官能基にはカルボキシル基、アミノ基、水酸基等の活性水素を有する官能基が挙げられる。イミド構造を有する為に、耐熱性が高い硬化塗膜が得られる。その為、レーザー加工に起因する発熱による分解、溶解、膨張、変性を抑制することが期待できる。
【0036】
上記の(C)多分岐構造を有するポリイミド樹脂のうち、好適なものの具体例としては、例えば、下記一般式(1)で示される構造単位と下記一般式(2)で示される構造単位を有し、かつ、下記一般式(3)、(4)及び(5)で示される末端構造のいずれか1種以上を有するものが挙げられる。

(式中、Rは炭素原子数6〜13の環式脂肪族構造を有する有機基を示し、Rは数平均分子量700〜4,500の線状炭化水素構造を示す。)

【0037】
(C)多分岐構造を有するポリイミド樹脂の具体例としては、V−8000(DIC社製)等が挙げられる。
なお、上記(C)多分岐構造を有するポリイミド樹脂は、紫外線吸収性がないか、もしくは著しく低いものであれば、具体例に記載した以外のポリイミド樹脂も使用できる。
【0038】
このような(C)ポリイミド樹脂の含有率は、第2の硬化塗膜を形成する為の熱硬化性樹脂組成物の全固形分(組成物全体から、溶剤を除いた分)を基準として、好ましくは50〜90質量%であり、より好ましくは50〜75質量%である。上記(C)多分岐構造を有するポリイミド樹脂が50質量%未満では、耐熱性が低下するため、本発明の効果が発揮されないことがあり、90質量%を超えると、熱硬化性が悪いため、樹脂絶縁層としての物性が低下してくることがある。
【0039】
上記(D)多官能脂環式エポキシ樹脂は、骨格に不飽和結合を有さない炭素環を含み、官能基としてエポキシ基を2以上有する構造の樹脂である。
上記(D)多官能脂環式エポキシ樹脂の具体例としては、セロキサイド2021、−2021P、−2080、−2081、−2083、−2085、エポリードGT−301、−302、−401、−403、EHPE−3150(ダイセル化学工業社製);サイラキュアUVR−6105、−6107、−6110、−6128(ダウ・ケミカル社製);YX8000、YX8034(三菱化学社製);HBE−100(新日本理化社製)等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
(D)多官能脂環式エポキシ樹脂の含有率は、第2の硬化塗膜を形成する為の組成物の全固形分を基準として、好ましくは10〜40質量%であり、より好ましくは10〜25質量%である。
【0041】
また、(C)多分岐構造を有するポリイミド樹脂と(D)多官能脂環式エポキシ樹脂の、第2の硬化塗膜を形成する為の熱硬化性樹脂組成物全体における配合量は、(C)多分岐構造を有するポリイミド樹脂と(D)多官能脂環式エポキシ樹脂の合計量で、第2の硬化塗膜に用いる熱硬化性樹脂組成物100質量部に対して、40質量部から95質量部であることが好ましい。配合量が40質量部未満である場合、組成物全体における樹脂量が低いため、組成物の流動性の制御が難しく、印刷性が悪くなることがある。また、配合割合が95質量部を超える場合、塗膜物性を強化するための添加剤類の配合量が相対的に低下するため、樹脂絶縁層の機械的強度が低下することがある。
【0042】
上記熱硬化性樹脂組成物を用いた第2の硬化塗膜の膜厚は、5〜20μmであることが好ましく、より好ましくは、5〜10μmである。膜厚が5μm未満である場合、レーザー照射によりビアホール周縁の表層部の変性を抑える効果が薄れるため、好ましくない。また、膜厚が20μmを超える場合、基板としての厚みが増してしまい、基板の薄型化に対応できない。また、第2の硬化塗膜の膜厚の方が、第1の硬化塗膜の膜厚よりも薄いことが好ましい。
【0043】
本発明に用いる第1の硬化塗膜に用いる熱硬化性樹脂組成物を構成する(A)線状構造を有するポリイミド樹脂、(B)多環芳香族炭化水素環を有するエポキシ樹脂、第2の硬化塗膜に用いる熱硬化性樹脂組成物を構成する(C)多分岐構造を有するポリイミド樹脂、(D)多官能脂環式エポキシ樹脂は、液状であることが好ましいが、常温で固形または結晶性固体であってもよい。その際は、有機溶剤に溶解させ樹脂ワニスとして使用される。
有機溶剤は、上記のように樹脂ワニスを調整するために用いる他、組成物の印刷適性を得るための粘度調整をする際等にも適宜使用できる。
【0044】
有機溶剤としては、公知のものをいずれも使用することができる。そのような溶剤として、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤、等を用いることができる。より具体的には、メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどのエステル類;γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤が挙げられ、特に、(A)線状構造を有するポリイミド樹脂に対しては、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、(C)多分岐構造を有するポリイミド樹脂に対しては、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル類、は溶解性が良好であり、好ましい。これら有機溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0045】
本発明に用いる第1の硬化塗膜および第2の硬化塗膜に用いられる熱硬化性樹脂組成物は、さらに、熱硬化触媒、無機充填剤、着色剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤等の公知慣用の添加剤類を含有することができる。ただし、第2の硬化塗膜に用いられる熱硬化性樹脂組成物中には、紫外線吸収性を有する添加剤類を使用することはできない。
【0046】
上記熱硬化触媒は、熱硬化性樹脂組成物の熱硬化特性をさらに向上させるために使用され、例えば、ジシアンジアミド、芳香族アミンなどのアミン化合物、イミダゾール類、リン化合物、酸無水物、二環式アミジン化合物などを使用できる。具体的には、イミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、トリフェニルホスフィン等のリン化合物等を用いることができる。より具体的には、イミダゾール類化合物として、1B2PZ、2E4MZ、2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4MHZ(四国化成工業社製);ジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物として、U−CAT3503N、−3502T(サンアプロ社製);二環式アミジン化合物およびその塩として、DBU、DBN、U−CAT SA102、U−CAT5002(サンアプロ社製)等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、あるいは2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0047】
上記熱硬化触媒の含有率は、通常の配合割合で充分であり、例えば、熱硬化成分であるエポキシ樹脂成分100質量部に対して、0.1質量部から10質量部が好ましい。
上記無機充填剤は、樹脂絶縁層の硬化収縮を抑制し、密着性、硬度などの特性を向上させるために使用される。無機充填剤としては、例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、あるいは2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0048】
次に、上述した熱硬化性樹脂組成物を用いて、本発明にかかるプリント配線板用積層構造体を作製し、紫外線レーザー加工によりビアホールを形成するプリント配線板の製造方法の好適例について説明する。温度や時間、塗布膜厚等の製造条件は、下記に限定されること無く所望に応じて適宜変更することができる。
【0049】
基板はバフロール研磨、化学研磨等の前処理を施した後、印刷塗布方法に適した粘度に有機溶剤で調整した第1の硬化塗膜用の熱硬化性樹脂組成物を、乾燥膜厚で10μm〜20μmとなるように印刷する。次いで、40℃〜100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発、乾燥させる。さらに、170℃〜230℃の温度で30分〜120分間加熱硬化させて、第1の硬化塗膜を形成することができる(図1(a)参照)。
【0050】
次いで、同様に調整した第2の硬化塗膜用の熱硬化性樹脂組成物を、乾燥膜厚で5μm〜10μmとなるように印刷する。次いで、40℃〜100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発、乾燥させる。さらに、150℃〜230℃の温度で30分〜120分間加熱硬化させて、第2の硬化塗膜を形成することができる。この時、第2の硬化塗膜はレベリング(平滑化)され、基板上に第1の硬化塗膜が、第1の硬化塗膜上に第2の硬化塗膜が形成されたプリント配線板用積層構造体が完成する(図1(b)参照)。
【0051】
上記基板としては、主として、予め回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙−フェノール樹脂、紙−エポキシ樹脂、ガラス布−エポキシ樹脂、ガラス−ポリイミド、ガラス布/不繊布−エポキシ樹脂、ガラス布/紙−エポキシ樹脂、合成繊維−エポキシ樹脂、フッ素樹脂・ポリエチレン・PPO・シアネートエステル等の複合材を用いた全てのグレード(FR−4等)の銅張積層板を用いることができる。
【0052】
上記印刷方法としては、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等などがある。また、キャリアフィルム上に塗布、乾燥させてフィルムとして巻き取ってドライフィルムとし、基板上にラミネートすることにより、製膜することも可能である。また、塗布時に、配線ないしは実装部分を設けるために、マスク等を使用することで部分印刷を行っても良い。
【0053】
上記乾燥および加熱方法としては、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等、蒸気による加熱方式の熱源を備えたものを用い、乾燥機内の熱風を向流接触させる方法、およびノズルより支持体に吹き付ける方法が適用できる。
【0054】
次いで、樹脂絶縁層に紫外線レーザー加工を行い、第2の硬化塗膜および第1の硬化塗膜を除去し基板の導体層が露出したビアホールを形成する(図1(c)参照)。
【0055】
上記紫外線レーザーは、紫外線領域(波長200nmから400nmまでを指す)を発振波長とするレーザーであり、本発明においては、YLF結晶が媒体の第3高調波レーザー(351nm)、YAGまたはYVO結晶が媒体の第3高調波レーザー(355nm)であることが特に好ましい。
【0056】
上記紫外線レーザーの照射方法としては、パルス(pulse)照射と連続照射があるが、パルス照射の方が、ビアホール周縁の損傷が少ないため、好ましい。また、パルス照射の繰返し周波数は、1kHz〜500kHzまでが好ましく、より好ましくは、10kHz〜100kHzである。
【0057】
1kHz未満であると、レーザー加工に長時間を要するため、生産性の低下につながりうる。一方、500kHzを超えると、例えばナノ秒レーザーの場合、1パルス当たりの照射時間が短くなるため、第2の硬化塗膜のビアホール周縁にクラック等の損傷を受けることがある。また、紫外線レーザーの焦点位置は、第2の硬化塗膜表面とするのが好ましい。焦点位置を第2の硬化塗膜の内部または、塗膜より離した位置にすると、所望の加工形状が得られないことがある。
【0058】
上記紫外線レーザーの照射エネルギーは、1パルス当たりの照射エネルギー[μJ/pulse]として示され、本発明においては、0.5μJ/pulse〜50μJ/pulseが好ましく、より好ましくは、1μJ/pulse〜10μJ/pulseである。また、その際のパルス幅は1マイクロ秒以下とする。0.5μJ/pulse未満であると、樹脂絶縁層がほとんど除去されないため、ビアホールを形成するのが困難となり、好ましくない。一方、50μJ/pulseを超えると、樹脂絶縁層を貫通するだけでなく、基板面まで除去されたり、所望の加工径よりも大きく加工されたりすることがある。
【0059】
上記紫外線レーザーの照射回数は、ビアホールが形成できるまで行う必要があり、照射回数は樹脂絶縁層の膜厚に比例する。具体的に、ビアホールを形成する場合、膜厚5〜10μmの第2の硬化塗膜および膜厚10〜20μmの第1の硬化塗膜を除去し導体層に到達するのに必要なレーザーの照射回数は、1回〜100回が好ましく、より好ましくは、1〜50回である。照射回数が多すぎると、第2の硬化塗膜、導体層に対しクラック等の損傷が起こることがある。
【0060】
上記紫外線レーザーにより形成されるビアホールの形状は、第2の硬化塗膜表面の直径Dと導体層表面(ビアホール底面)の直径dとの比率、つまり、式(d/D)×100[%]で示される。本発明においては、50%以上が好ましく、より好ましくは70%以上である。50%未満であると、ビアホール底面が細すぎて、はんだや金属めっきの密着不良の問題が起こりうる。また、100%を超えるとビアホールが逆テーパー状になるため、好ましくない。
【0061】
また、上記紫外線レーザーにより形成されるビアホールの直径は、第2の硬化塗膜表面の直径Dにおいて、10μm〜70μmが好ましく、より好ましくは、10μm〜45μmである。紫外線レーザーおよび本発明のプリント配線板用積層構造体を使用することで、例えば汎用に使用される炭酸ガスレーザーおよびそれに用いる組成物では対応できない、狭ピッチ回路配線に対応したプリント配線板が提供できる。
【0062】
上記紫外線レーザーにより形成されたビアホールは、ソルダーレジストのパターンとして利用でき、過マンガン酸塩溶液等のデスミア処理の薬液を用いて紫外線レーザー加工後の残留成分を分解除去するデスミア処理を行い、プリント配線板を製造する。なお、両面基板、多層基板においても、同様にして熱硬化性樹脂組成物を用いて樹脂絶縁層を形成し、紫外線レーザーによりビアホールを形成後、デスミア処理される。
【0063】
このようにして製造したプリント配線板に対し、ビアホールは、金属めっきを施し、あるいはプリフラックス処理した後、実装される半導体チップなどの電子部品が金バンプやはんだバンプにより接合されて搭載される。
【実施例】
【0064】
以下に、実施例および比較例を示して本発明について具体的に説明する。なお、各成分の配合量を示す値は、特に断りのない限り、全て質量基準である。
【0065】
<実施例1>
(紫外線吸収性を有する樹脂組成物の調製(第1の硬化塗膜用))
紫外線吸収性を有する線状ポリイミド樹脂(V−8005・DIC社製)を不揮発分15%になるようにジメチルアセトアミドで溶かしたワニス333部、アントラセン型エポキシ樹脂(YX−8800・三菱化学社製)を不揮発分30%になるようにジメチルアセトアミドで溶かしたワニス167部、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール(1B2PZ・四国化成工業社製)1部、シリカ30部、硫酸バリウム15部、シリコーン系表面張力調整剤(BYK−310・ビックケミー社製)0.05部、をそれぞれ配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルを用いて混練し、第1の硬化塗膜用の熱硬化性樹脂組成物を調製した。
上記第1の硬化塗膜用の熱硬化性樹脂組成物の調製により、エポキシ樹脂およびポリイミド樹脂自体に高い紫外線吸収性を有しているため、紫外線吸収剤等を添加しなくとも、紫外線吸収性を有する熱硬化性樹脂組成物が調製できた。
【0066】
(紫外線吸収性を有さない樹脂組成物の調製(第2の硬化塗膜用))
分岐状ポリイミド樹脂(V−8000・DIC社製)を不揮発分40%になるようにジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートで溶かしたワニス188部、脂環式エポキシ樹脂(セロキサイド2021・ダイセル化学社製)25部、をそれぞれ配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルを用いて混練し、第2の硬化塗膜用の熱硬化性樹脂組成物を調製した。
【0067】
(プリント配線板用積層構造体の製造)
上記第1の硬化塗膜用の熱硬化性樹脂組成物を、バフロール研磨した0.8mm厚の銅張り積層板上に塗布し、熱風循環式乾燥炉中、80℃で30分乾燥後、230℃で1時間、加熱により硬化させて第1の硬化塗膜を形成した。この後、上記第2の硬化塗膜用の熱硬化性樹脂組成物を、第1の硬化塗膜上に塗布し、熱風循環式乾燥炉中、80℃で30分乾燥後、170℃で1時間、加熱により硬化させ、第2の硬化塗膜を第1の硬化塗膜上に積層させプリント配線板用積層構造体の試験片を作製した。この時、基板上の硬化塗膜はレベリングされており、紫外線レーザー照射前における硬化塗膜の凹凸は見られないものとする。
【0068】
上記プリント配線板用積層構造体の硬化塗膜上に対し垂直となるよう、紫外線レーザー(YVOレーザーの三倍高調波、波長:355nm、繰返し周波数:50kHz、パルスエネルギー:0.4μJ/pulse、パルス幅:30ns、ビーム形状:ガウシアン)を照射した。
【0069】
<実施例2>
第1の硬化塗膜および第2の硬化塗膜の膜厚を下記表1に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にして試験片を作製し、紫外線レーザー照射を行った。
【0070】
<実施例3>
第1の硬化塗膜用樹脂組成物の調製を下記の様に変更した以外は、上記実施例1と同様の方法にてプリント配線板用積層構造体の試験片を作製し、紫外線レーザーの照射を実施した。
【0071】
(紫外線吸収性を有する樹脂組成物の調製(第1の硬化塗膜用))
紫外線吸収性を有する線状ポリイミド樹脂(V−8005・DIC社製)を不揮発分15%になるようにジメチルアセトアミドで溶かしたワニス333部、ナフタレン型エポキシ樹脂(HP−4032・DIC社製)を不揮発分50%になるようにジメチルアセトアミドで溶かしたワニス100部、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール(1B2PZ・四国化成工業社製)1部、シリカ30部、硫酸バリウム15部、シリコーン系表面張力調整剤(BYK−310・ビックケミー社製)0.05部、をそれぞれ配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルを用いて混練し、第1の硬化塗膜用の熱硬化性樹脂組成物を調製した。
【0072】
<実施例4>
第1の硬化塗膜および第2の硬化塗膜の膜厚を下記表1に記載のように変更した以外は、実施例3と同様にして試験片を作製し、紫外線レーザー照射を行った。
【0073】
<実施例5>
第1の硬化塗膜用樹脂組成物の調製を下記の様に変更した以外は、上記実施例1と同様の方法にてプリント配線板用積層構造体の試験片を作製し、紫外線レーザーの照射を実施した。
【0074】
(紫外線吸収性を有する樹脂組成物の調製(第1の硬化塗膜用))
紫外線吸収性を有する線状ポリイミド樹脂(V−8005・DIC社製)を不揮発分15%になるようにジメチルアセトアミドで溶かしたワニス333部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(E828・三菱化学社製)50部、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール(1B2PZ・四国化成工業社製)1部、シリカ30部、硫酸バリウム15部、シリコーン系表面張力調整剤(BYK−310・ビックケミー社製)0.05部、をそれぞれ配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルを用いて混練し、第1の硬化塗膜用の熱硬化性樹脂組成物を調製した。
上記第1の硬化塗膜用の熱硬化性樹脂組成物の調製により、エポキシ樹脂に紫外線吸収性を有さない場合でも、線状ポリイミド樹脂を含んでいるため、高い紫外線吸収性を有する熱硬化性樹脂組成物が調製できた。
【0075】
<実施例6>
第1の硬化塗膜および第2の硬化塗膜の膜厚を下記表1に記載のように変更した以外は、実施例5と同様にして試験片を作製し、紫外線レーザー照射を行った。
【0076】
<実施例7>
第1の硬化塗膜用樹脂組成物の調製と、プリント配線板用積層構造体の硬化温度を変更した以外は、上記実施例1と同様の方法にてプリント配線板用積層構造体の試験片を作製し、紫外線レーザーの照射を実施した。
【0077】
(紫外線吸収性を有する樹脂組成物の調製(第1の硬化塗膜用))
アントラセン型エポキシ樹脂(YX−8800・三菱化学社製)を不揮発分30%になるようにジメチルアセトアミドで溶かしたワニス67部、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂(EPPH−501H・日本化薬社製)を不揮発分80%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで溶かしたワニス63部、フェノキシ樹脂(YX8100H30・三菱化学社製)67部、シリカ70部、硫酸バリウム35部、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール(1B2PZ・四国化成工業社製)1部、フェノールノボラック樹脂(HF−1M・明和化成社製)を不揮発分65%になるようにジエチレングリコールモノエチルエーテルで溶かしたワニス62部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc・大伸化学社製)30部、シリコーン系表面張力調整剤(BYK−310・ビックケミー社製)0.05部、をそれぞれ配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルを用いて混練し、第1の硬化塗膜用の熱硬化性樹脂組成物を調製した。
【0078】
上記第1の硬化塗膜用の熱硬化性樹脂組成物の調製により、アントラセン型エポキシ樹脂に紫外線吸収性を有しているため、高い紫外線吸収性を有する熱硬化性樹脂組成物が調製できた。
【0079】
(プリント配線板用積層構造体の製造)
上記第1の硬化塗膜用の熱硬化性樹脂組成物を、170℃で1時間、加熱により硬化させた以外は、実施例1と同様の方法にて、プリント配線板用積層構造体の試験片を作製し、紫外線レーザーを照射した。
【0080】
<実施例8>
第1の硬化塗膜および第2の硬化塗膜の膜厚を下記表1に記載のように変更した以外は、実施例7と同様にして試験片を作製し、紫外線レーザー照射を行った。
【0081】
<実施例9>
第1の硬化塗膜用樹脂組成物の調製を下記の様に変更した以外は、上記実施例1と同様の方法にてプリント配線板用積層構造体の試験片を作製し、紫外線レーザーの照射を実施した。
【0082】
(紫外線吸収性を有する樹脂組成物の調製(第1の硬化塗膜用))
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(E828・三菱化学社製)50部、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂(EPPH−501H・日本化薬社製)を不揮発分80%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで溶かしたワニス63部、フェノキシ樹脂(YX8100H30・三菱化学社製)67部、シリカ70部、硫酸バリウム35部、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール(1B2PZ・四国化成工業社製)1部、フェノールノボラック樹脂(HF−1M・明和化成社製)を不揮発分65%になるようにジエチレングリコールモノエチルエーテルで溶かしたワニス62部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc・大伸化学社製)30部、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(EAB・保土谷化学工業社製)15部、シリコーン系表面張力調整剤(BYK−310・ビックケミー社製)0.05部、をそれぞれ配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルを用いて混練し、第1の硬化塗膜用の熱硬化性樹脂組成物を調製した。
上記第1の硬化塗膜用の調製により、エポキシ樹脂に紫外線吸収性を有さない場合でも、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を含んでいるため、高い紫外線吸収性を有する熱硬化性樹脂組成物が調製できた。
【0083】
<実施例10>
第1の硬化塗膜および第2の硬化塗膜の膜厚を下記表1に記載のように変更した以外は、実施例9と同様にして試験片を作製し、紫外線レーザー照射を行った。
【0084】
<比較例1>
第2の硬化塗膜用樹脂組成物の調製を下記の様に変更した以外は、上記実施例1と同様の方法にてプリント配線板用積層構造体の試験片を作製し、紫外線レーザーの照射を実施した。
【0085】
(紫外線吸収性を有さない樹脂組成物の調製(第2の硬化塗膜用))
多官能脂環式エポキシ樹脂(セロキサイド2021・ダイセル化学社製)50部、多官能脂環式エポキシ樹脂(水素化エポキシ・YX−8000・三菱化学社製)25部、トリアリールスルホニウム塩系光酸発生剤(CPI−100P・サンアプロ社製)1部、シリコーン系表面張力調整剤(BYK−310・ビックケミー社製)0.05部、をそれぞれ配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルを用いて混練し、第1の硬化塗膜用の熱硬化性樹脂組成物を調製した。
【0086】
<比較例2>
第1の硬化塗膜および第2の硬化塗膜の膜厚を下記表2に記載のように変更した以外は、比較例1と同様にして試験片を作製し、紫外線レーザー照射を行った。
【0087】
<比較例3>
熱硬化性樹脂組成物の調製において、第2の硬化塗膜用として紫外線吸収性を有する熱硬化性樹脂組成物を調製したこと以外は、上記実施例1と同様の方法にて、プリント配線板用積層構造体の試験片を作製し、紫外線レーザーを照射した。
【0088】
(紫外線吸収性を有する樹脂組成物の調製(第1の硬化塗膜用))
線状ポリイミド樹脂(V−8005・DIC社製)を不揮発分15%になるようにジメチルアセトアミドで溶かしたワニス167部、アントラセン型エポキシ樹脂(YX−8800・三菱化学社製)を不揮発分30%になるようにジメチルアセトアミドで溶かしたワニス83部、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール(1B2PZ・四国化成工業社製)0.5部、シリコーン系表面張力調整剤(BYK−310・ビックケミー社製)0.02部、をそれぞれ配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルを用いて混練し、第1の硬化塗膜用の熱硬化性樹脂組成物を調製した。
【0089】
<比較例4>
第1の硬化塗膜および第2の硬化塗膜の膜厚を下記表2に記載のように変更した以外は、比較例3と同様にして試験片を作製し、紫外線レーザー照射を行った。
【0090】
<比較例5>
プリント配線板用積層構造体の製造において、第2の硬化塗膜の代わりにプラスチックフィルムを使用する方法にて、プラスチックフィルムを含むプリント配線板用積層構造体の試験片を作製した。紫外線レーザーの照射は、上記実施例1と同様の条件にて行なった。
【0091】
(プリント配線板用積層構造体の製造)
実施例1記載の、第1の硬化塗膜用の熱硬化性樹脂組成物を、乾燥塗膜(硬化塗膜)の厚みが20μmになるようにポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(G2−16・帝人デュポンフィルム社製、フィルム厚み16μm)上に塗布し、80℃で30分、乾燥して乾燥塗膜付フィルムを得た。乾燥塗膜付フィルムを、バフロール研磨した0.8mm厚の銅張り積層板に真空ラミネーター(MVLP−500・名機製作所社製)を用いて、5kgf/cm、1Torr、120℃で1分、加熱ラミネートし、次いで熱板プレス機で10kgf/cm、130℃で1分、レベリングした後、熱風循環式乾燥機中、170℃で1時間、加熱により硬化させて、銅張り積層板上に第1の硬化塗膜が、第1の硬化塗膜上にPETフィルムが、それぞれ形成されたプリント配線板用積層構造体の試験片を作製した。
【0092】
<比較例6>
比較例5のプラスチックフィルムの厚みを変更した以外は、同様にプラスチックフィルムを含むプリント配線板用積層構造体の試験片を作製した。紫外線レーザーの照射は、上記実施例1と同様の条件にて行った。
【0093】
(プリント配線板用積層構造体の製造)
PETフィルムを変更(ルミラー38R75・東レ社製、フィルム厚み38μm)したこと以外は、比較例5と同様にプリント配線板用積層構造体の試験片を作製した。
【0094】
<比較例7>
プリント配線板用積層構造体の製造において、紫外線吸収性を有する熱硬化性樹脂組成物を用いた第1の硬化塗膜のみ形成し、プリント配線板用積層構造体の試験片を作製した。ここで、紫外線吸収性を有する熱硬化性樹脂組成物は、上記実施例1の「紫外線吸収性を有する樹脂組成物の調製」と同様の方法にて調製した。なお、紫外線レーザーの照射は、上記実施例1と同様の条件にて行った。
【0095】
(プリント配線板用積層構造体の製造)
実施例1記載の、第1の硬化塗膜の形成において、硬化塗膜の厚みが20μmとなるようにすること以外は、同様の方法にて銅張り積層板上に第1の硬化塗膜を形成し、プリント配線板用積層構造体の試験片を作製した。
【0096】
<比較例8>
プリント配線板用積層構造体の製造において、紫外線吸収性を有さない熱硬化性樹脂組成物を用いた第1の硬化塗膜のみ形成し、プリント配線板用積層構造体の試験片を作製した。ここで、紫外線吸収性を有さない熱硬化性樹脂組成物は、上記実施例1の「紫外線吸収性を有さない樹脂組成物の調製」と同様の方法にて調製し、第1の硬化塗膜用とした。なお、紫外線レーザーの照射は、上記実施例1と同様の条件にて行った。
【0097】
(プリント配線板用積層構造体の製造)
実施例1記載の、第2の硬化塗膜の形成において、硬化塗膜の厚みが20μmとなるようにすること以外は、同様の方法にて銅張り積層板上に第2の硬化塗膜を形成し、プリント配線板用積層構造体の試験片を作製した。
【0098】
(実施例1〜10および比較例1〜8にかかる試験片の性能評価)
(密着性試験)
JIS K5600−5−6:1999に準拠して、試験片の樹脂絶縁層にクロスカットを入れ、硬化塗膜にセロハンテープを貼り付け、これを引き剥がすというピーリングテストを行った後、樹脂絶縁層の剥がれの状態を目視観察し、以下の基準で評価した。
○:剥がれ無し(基板と塗膜間および塗膜間の密着性が良好)
△:樹脂絶縁層の一部分に剥がれあり
×:樹脂絶縁層の大部分に剥がれあり
結果を下記表1および表2に示す。
【0099】
(耐溶剤性試験)
常温常圧下、イソプロピルアルコールに60分間浸漬後、密着性試験と同様のピーリングテストを行った後、樹脂絶縁層の剥がれの状態を目視観察し、以下の基準で評価した。
○:剥がれ無し
△:樹脂絶縁層の一部に剥がれあり
×:樹脂絶縁層の大部分に剥がれあり
結果を下記表1および表2に示す。
【0100】
(耐熱性試験)
試験片を260℃のはんだ槽に10秒間浸漬し、これを3回繰り返した後、密着性試験と同様のピーリングテストを行った後、樹脂絶縁層の剥がれの状態を目視観察し、以下の基準で評価した。
○:剥がれ無し
△:樹脂絶縁層の一部に剥がれあり
×:樹脂絶縁層の大部分に剥がれあり
結果を下記表1および表2に示す。
【0101】
(レーザー加工性1(紫外線レーザー照射回数))
ビアホールを形成した際の紫外線レーザーの照射回数を、以下の基準で評価した。
基準:樹脂絶縁層表面のビアホール径Dと銅張り積層板表面(ビアホール底面)のビアホール径dとの比率[式(d/D)×100[%]]が、70%を越えるために要する照射回数とした。ただし、樹脂絶縁層(またはPETフィルムおよび樹脂絶縁層)のみを加工し銅張り積層板を損傷しないこととした。また、ビアホールの形状は、レーザー顕微鏡を用いて測長した。
○:照射回数40回以下
△:照射回数40回を超え100回以下
×:照射回数100回を超えても基準に満たない
結果を下記表1および表2に示す。なお、照射回数40回以下で形成された樹脂絶縁層表面のビアホール径Rは30μmであった。
【0102】
(レーザー加工性2(ビアホール周縁の表層部における変質の有無))
ビアホールを形成した際のビアホール周縁の表層部における変質の有無を、以下の基準で評価した。
基準:ビアホール周縁に厚み0.5μm以上の凹みおよび膨らみ(凹凸)の有無を確認した。観察および測長は、デジタルマイクロスコープ(KH−1300・ハイロックス社製)、レーザー顕微鏡(VK−8500・キーエンス社製)を用いた。
○:変質(凹凸)無し
×:変質(凹凸)有り
結果を下記表1および表2に示す。
【0103】
(デスミア耐性)
酸化剤処理液(ATOTECH社製)を用い、Swelling Dip Securiganth P(NaOH含有)により80℃で10分間の膨潤処理、Concentrate Compact CP(KMnO含有)により80℃で10分間の粗化処理、及びReduction Solution Securiganth P500(HSO含有)により40℃で5分間の還元処理を行った。その後、第2の硬化塗膜表面(ビアホール周縁)をレーザー顕微鏡にて観察し、以下の基準で評価した。結果を表1および表2に示す。
○:ビアホール周縁の塗膜の剥離無し
△:ビアホール周縁の塗膜の剥離が一部分に見られる
×:ビアホール周縁の塗膜の剥離が大部分に見られる
【0104】
【表1】

【0105】
【表2】

*1:硬化塗膜の代わりにプラスチックフィルムを使用。
*2:硬化塗膜が第1の硬化塗膜(一層)のみから形成。
【0106】
表1に示す結果から明らかなように、紫外線吸収性を有さない多官能脂環式エポキシ樹脂を用いた比較例1および2では、第2の硬化塗膜の耐熱性が劣り、ビアホール周縁の表層部における変質が起きていた。また、第2の硬化塗膜に用いられる樹脂組成物に紫外線吸収性を有する比較例3、4では、いずれもがビアホール周縁の表層部における変質が起きていた。また、第2の硬化塗膜の代わりにプラスチックフィルムを用いた比較例5、6、紫外線吸収性を有さない樹脂組成物を用いた第1の硬化塗膜のみ形成した比較例8では、紫外線レーザーの照射回数を多く必要とした。
【0107】
ビアホール周縁に凹みおよび膨らみといった変性が認められるのは、紫外線吸収性の高い樹脂組成物を用いた硬化塗膜を樹脂絶縁層表面に用いて紫外線レーザーを照射した際、エネルギー密度の低いレーザー光が周縁部に当たって変性したためである。
【0108】
それに対して、実施例1〜10においては、紫外線レーザー照射することで、樹脂絶縁層が除去加工され基板に到達し、その際、ビアホール周縁の表層部が、凹みおよび膨らみ等の変性することなく、かつ、ビアホール径30μm程度の微細で迅速なビアホールが形成されたことで、レーザー加工性が良好で、かつ、密着性、耐熱性も優れたものであった。
したがって、本発明のプリント配線板およびその製造方法は、ビアホール周縁の表層部が変性することなく、かつ、微細で迅速なビアホール形成が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、高密度化・微細化の要求に応え得る狭ピッチ回路に対応したプリント配線板等として利用可能である。
【符号の説明】
【0110】
1 基板(銅張積層板)
1a 導体層(回路配線)
1b 絶縁層
2 第1の硬化塗膜(樹脂絶縁層)
3 第2の硬化塗膜(樹脂絶縁層)
4 レーザー光
5 ビアホール
6 表層部の変性箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された第2の硬化塗膜の層と、
前記第2の硬化塗膜の層と前記基板との間に形成された第1の硬化塗膜の層とを備え、
前記第2の硬化塗膜が、(C)多分岐構造を有するポリイミド樹脂および(D)多官能脂環式エポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物より形成され、
前記第1の硬化塗膜が、紫外線吸収性を有する成分を少なくとも1種を含む熱硬化性樹脂組成物により形成されることを特徴とするプリント配線板用積層構造体。
【請求項2】
前記第1の硬化塗膜が、(A)線状構造を有するポリイミド樹脂、(B)多環芳香族炭化水素環を有するエポキシ樹脂、及び(E)紫外線吸収剤のうちの少なくともいずれか1種を含む熱硬化性樹脂組成物により形成されることを特徴とする請求項1記載のプリント配線板用積層構造体。
【請求項3】
前記第1の硬化塗膜および前記第2の硬化塗膜が、絶縁性永久保護膜である請求項1又は2記載のプリント配線板用積層構造体。
【請求項4】
前記(A)線状構造を有するポリイミド樹脂が、反応性官能基を有する芳香族ポリイミド樹脂である請求項2記載のプリント配線板用積層構造体。
【請求項5】
前記(B)多環芳香族炭化水素環を有するエポキシ樹脂が、ナフタレン型エポキシ樹脂およびアントラセン型エポキシ樹脂のうちの少なくともいずれか1種である請求項2記載のプリント配線板用積層構造体。
【請求項6】
前記第1の硬化塗膜の膜厚よりも前記第2の硬化塗膜の膜厚の方が薄い請求項1から5までのいずれか一項記載のプリント配線板用積層構造体。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項記載のプリント配線板用積層構造体に対して紫外線レーザーを照射して、前記第1の硬化塗膜および前記第2の硬化塗膜を除去し、前記基板に到達するビアホールを形成することを特徴とするプリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−80757(P2013−80757A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218762(P2011−218762)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(591021305)太陽ホールディングス株式会社 (327)
【Fターム(参考)】