説明

プリント配線板

【課題】部品点数を増加することなく又スイッチ等の設定作業なくして異なる機能を選択できるプリント配線板を実現する。
【解決手段】本発明にかかるプリント配線板は、筐体への固定部と、固定部に設けた回路機能選択部を有し、固定部は、固定部材と機械的に接する領域で画されて、回路機能選択部と筐体との間の電気的接続状態が固定部材によって規定され、この電気的接続状態に対応して、プリント配線板の複数の回路機能から特定の回路機能を選択する構成を有している。従ってプリント配線板を固定部材で筐体に固定すれば、回路機能選択部が固定部材と機械的に接するから、固定部材の導電性あるいは絶縁性によって、回路機能選択部の導体のパターンと筐体間の抵抗値(電気的接続状態)が規定されて、該プリント配線板は、プリント配線板の複数の回路機能から特定の回路機能を選択することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる仕様を共通のプリント配線板を用いて実現することができる電気・電子機器のプリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気・電子機器(本明細書においては、「電子機器」と表示することがある)は、同一機種の電子機器であっても、例えば顧客のニーズの多様化に対応するために、あるいは仕向け地(輸出先)毎に異なる電源電圧に対応するため、異なる仕様(異なる機能)が要求される(例えば電源電圧が仕向け地毎に異なるだけで、外観及び他の仕様が同一な電子機器)。しかし仕様毎に異なる回路設計をして、異なるプリント配線板を製造したのでは、電子機器のコストを低減することができず、また設計期間を短縮することができない。そこで、プリント配線板に設けたスイッチの設定で特定の回路機能を選択し、あるいはプリント配線板に回路機能設定用のコネクタを実装し、異なる回路機能に対応したコネクタの接続ピンの接続関係を規定したうえで、コネクタの接続ピンの接続関係を選択して特定の回路機能を選択するなどして、異なる回路機能を選択的に実現できるプリント配線板を設計して、コストを低減し、また設計期間を短縮している。かかるプリント配線板を電子機器に組み込む際には、作業者が予め指示された手順に従って、回路機能を選択するスイッチを設定する、回路機能を選択するためのコネクタを接続する、あるいはプリント配線板に複数の端子(端子群)を備え端子間を選択的に短絡する(例えば特許文献1)などして、異なる仕様の電子機器として組み立てている。
【特許文献1】特開2001−286168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、回路機能を選択するスイッチ、コネクタあるいは端子群をプリント配線板に実装等すると、プリント配線板の部品点数が増加して、プリント配線板の小型化、しいては電子機器の小型化が阻害され、また材料費が上昇すると共に、スイッチ、コネクタの設定、端子間の短絡作業等の作業時間が増加して、電子機器のコストダウンが阻害される。そこで、本発明は、プリント配線板の部品点数を増加することなく、またスイッチの設定作業等を必要とせずに、異なる回路機能を選択的に実現でき、設計コストを低減できるプリント配線板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため本発明にかかるプリント配線板は、電子機器の筐体に固定されるプリント配線板であって、該プリント配線板を固定部材によって筐体に固定するための固定部と、固定部に設けた回路機能選択部を有し、固定部は固定部材と機械的に接する領域で画され、回路機能選択部と筐体との間の電気的接続状態が固定部材によって規定され、上記電気的接続状態に対応して、プリント配線板の複数の回路機能から特定の回路機能を選択する構成を有している(請求項1)。
【0005】
ここで該プリント配線板を筐体に螺子止めする場合において、固定部が螺子止めのための螺子孔及び回路機能選択部を有し、そして、回路機能選択部が該プリント配線板の表面または裏面に設けられた導体のパターン(例えば印刷された導体パターン)であれば、固定部材として固定部の螺子孔に適合する形状の螺子を用いて、該プリント配線板を固定部材で筐体に固定すると、回路機能選択部の導体のパターンが固定部材と機械的に接することになる。ここで固定部材が全て導体(例えば金属製の雄螺子、雌螺子座および間座等)であれば、回路機能選択部の導体のパターンは筐体と電気的に接続され、固定部材が絶縁体(例えばプラスティック性の雄螺子等)であれば、回路機能選択部の導体のパターンは筐体と電気的に絶縁される。すなわち、固定部材の相違によって、回路機能選択部の導体のパターンと筐体間の抵抗値(電気的接続状態)が規定されるから、この電気的接続状態の違いに基づき、該プリント配線板は、プリント配線板の複数の回路機能から特定の回路機能を選択することができる(請求項1及び3)。
【0006】
請求項2にかかるプリント配線板は、電子機器の筐体に固定されるプリント配線板であって、該プリント配線板を固定部材によって筐体に固定するための固定部と、固定部に設けた回路機能選択部を有し、固定部は固定部材と機械的に接する領域で画され、回路機能選択部は複数の電極を備え、複数の電極間の電気的接続状態が固定部材によって規定され、上記電気的接続状態に対応して、プリント配線板の複数の回路機能から特定の回路機能を選択する構成を有している(請求項2)。
【0007】
ここで該プリント配線板を筐体に螺子止めする場合において、固定部が螺子止めのための螺子孔及び回路機能選択部を有し、そして、回路機能選択部が該プリント配線板の表面または裏面に設けられた導体のパターンであれば、固定部材として固定部の螺子孔に適合する螺子を用いて、該プリント配線板を固定部材で筐体に固定すると、回路機能選択部の導体のパターンが固定部材と機械的に接することになる。ここで固定部材が全て導体であれば、回路機能選択部の複数の電極は相互に電気的に接続されると共に筐体とも電気的に接続され、固定部材が全て絶縁体であれば、回路機能選択部の複数の電極は相互に電気的に絶縁されると共に筐体とも電気的に絶縁される。また間座だけを導体とし雄螺子及び雌螺子座を絶縁体とする固定部材であれば、間座によって、回路機能選択部の複数の電極間が電気的に接続される。すなわち、固定部材の相違によって、回路機能選択部の複数の電極間、及び電極と筐体間の抵抗値(電気的接続状態)が規定されるから、該プリント配線板は、より多くの回路機能から特定の回路機能を選択することができる(請求項2及び3)。
【発明の効果】
【0008】
以上のべたとおり、本発明にかかるプリント配線板は、スイッチ等の部品を用いることなく(プリント配線板の部品点数を増加することなく)、プリント配線板を筐体に固定する際の固定部材の選択(導体か絶縁体かの選択)によって、多くの回路機能から特定の回路機能を選択できる。かくして、本発明にかかるプリント配線板は、プリント配線板の設計コスト低減、設計期間短縮を実現しつつ、プリント配線板の小型化、材料費低減、製造作業時間短縮という効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明にかかるプリント配線板を説明する。
【実施例】
【0010】
図1及び図2に基づき、本発明にかかるプリント配線板の一実施例を説明する。長方形状を有するプリント配線板10は、プリント配線板10の4つのコーナーの近傍に穿設した螺子孔11に、プリント配線板10の表面10aの側から、雄螺子31の螺子部31aを挿通したうえで(図1は、プリント配線板10の1つのコーナーの概略構成を示す斜視図である)、雄螺子31を筐体20の雌螺子座32に締結することで、筐体20に取り付けられる。この取り付けに際し、雄螺子31の頭部31bとプリント配線板10との間に間座(ワッシャ)33が位置づけられる(図1では、固定部材30は、雄螺子31、雌螺子座32及び間座33で構成される)。なお筐体20は、プリント配線板10を電子機器に収容し固定するための構造体又はその一部であればよく、例えば電子機器の外筐、該外筐を構成する柱状部材又は板状部材等、更には外筐等に取り付けられるアース板(グランドプレーン)又は放熱板等であってもよい。
【0011】
固定部12は、間座33がプリント配線板10の表面10aと機械的に接する領域で画され、固定部12の外郭は、図2(a)中、破線円33aで示される(破線円33aは、間座33がプリント配線板10の表面10aと機械的に接する領域の外郭を画する)。固定部12では、円環を略2等分した形状の導体パターン13a及び13bが、固定部12の中央部に穿設された螺子孔11の外側に位置づけられて、回路機能選択部13を構成している。従って、固定部材30を用いてプリント配線板10を筐体20に固定すると、導体パターン13a及び13bが間座33と機械的に接する。ここで、導体パターン13a及び13bは、それぞれ配線パターン14a及び14bを介し、例えば論理回路(図示せず)の入力端子等に接続されている。なお導体パターン13a及び13bは、図2(a)に示す破線円33aの内側及び外側に位置づけられていてもよい(回路機能選択部13は、少なくとも破線円33aの内側の領域に導体パターン13a及び13bを有していればよい)。
【0012】
従って、雄螺子31、雌螺子座32及び間座33が全て導体で形成された固定部材30を用いて、プリント配線板10を筐体20に固定すると、導体パターン13a及び13bは、相互に電気的に接続されると共に、筐体20(グランド電位)に電気的に接続される(図2(b))。また導体の間座33と、絶縁体の雄螺子31を有する固定部材30を用いて、プリント配線板10を筐体20に固定すると、導体パターン13a及び13bは、相互に電気的に接続されるが、筐体20との間が電気的に絶縁される(図2(c))。もちろん間座33が絶縁体であるときには、導体パターン13a及び13bは、相互に電気的に絶縁されると共に、筐体20からも電気的に絶縁される。
【0013】
こうして、プリント配線板10は、固定部材30の構成によって、導体パターン13a及び13b(回路機能選択部13)と筐体20との間の電気的接続状態、及び導体パターン13a、13b(複数の電極)間の電気的接続状態が規定される。従って、導体パターン13a及び13bが、配線パターン14a及び14bを介し、例えばルックアップテーブルを構成する論理回路等(図示せず)に接続されていれば、プリント配線板10は、導体パターン13a及び13bと筐体20との電気的接続状態に応じて、複数の回路機能から特定の回路機能を選択して、プリント配線板10を実装する電子機器の回路動作(機能・仕様等)を設定できる。ここでプリント配線板10の4つのコーナー近傍の固定部12が、全て回路機能選択部13を有するときには、4箇所の固定部12を固定する4つの固定部材30について、それぞれ導体か絶縁体かを選択することで、回路機能選択部13に関する電気的接続状態を定めることができるから、より多くの回路機能から特定の回路機能を選択することができる。
【0014】
図3は、回路機能選択部13を構成する電極の変形例を示す図である。図3(a)では、円環を略4等分した導体パターン13c、13d、13e及び13f(複数の電極)が、螺子孔11の外側に位置づけられて、回路機能選択部13を構成している。このようにプリント配線板10では、回路機能選択部13の電極数を増やすことで、回路機能をより柔軟に選択することができる(回路機能の選択数を増やすことができる)。また図3(b)では、同心の円環形状の導体パターン13g、13h(複数の電極)が、螺子孔11の外側に位置づけられて、回路機能選択部13を構成している。なお同心内側の導体パターン13gは、例えばプリント配線板10が多層プリント配線板であれば、プリント配線板内部の配線パターンを介して図示しない論理回路等に接続される。もちろん回路機能選択部13が1つの円環形状の電極で構成されていてもよく、このときには、回路機能選択部13が筐体20に電気的に接続されるか否かで回路機能の選択が行われる。
(変形例)
次に、図4及び図5に基づき、プリント配線板10の変形例(プリント配線板10’)について説明する。なおプリント配線板10と同様の機能を有する構成要素には、同一の符号を附しその説明を省略する。長方形状を有するプリント配線板10’は、図4(a)に示すように、コーナー近傍領域15aに固定部12a、12bを、コーナー近傍領域15bに固定部12c、12dを、コーナー近傍領域15cに固定部12eを、そしてコーナー近傍領域15dに固定部12fを有している。ここで固定部12aないし12dには、それぞれ回路機能選択部13を構成する導体パターン13a及び13bが設けられているが(図5は、コーナー近傍領域15aの斜視図である)、固定部12e及び12fには、回路機能選択部13が設けられていない。
【0015】
かかるプリント配線板10’において、コーナー近傍領域15a、15b、15c及び15dをそれぞれ1つの固定部材30で固定する場合には、固定部12e及び12fが必ず固定され、そして固定部12a、12bのいずれか一方、及び固定部12c、12dのいずれか一方が固定されることになる。従って、固定の仕方は、図4(b)に示すとおり4通りとなる(図4(b)中、丸印は、固定部材30で固定される固定部を示す)。従って例えば、全ての構成要素が導体で構成される固定部材30で固定する場合における、固定部12aないし12dと筐体20の電気的接続の仕方は4通りになる。また固定部12aないし12dのうち、3つの固定部を固定部材30で固定する固定の仕方は、4個の中から3個を取る組み合わせで4通りになる。さらに固定部12aないし12dの全を固定することもできるから、プリント配線板10’は、より多くの回路機能の中から特定の回路機能を選択できる。しかもこれらの螺子止めの仕方は、目視で判別できるから、誤設定(螺子止めの仕方の誤り)の発見が容易であるという利点がある(例えば、回路機能選択状態を画像処理で自動判別・検査することが容易である)。
【0016】
また固定部12aないし12dが有する回路機能選択部13の導体パターン13a、13b間の電気的接続を規定することで、プリント配線板10’における回路機能の選択を行う場合には、固定部材30を雄螺子31、雌螺子座32及び間座33で構成し、雄螺子31を絶縁体、間座33を導体とすればよい。
なお本発明における回路機能の選択は、同一機種の電子機器における電源電圧仕様の設定、あるいは顧客のニーズに合わせた仕様の選択等に止まらず、プリント配線板が有する複数の回路機能から特定の回路機能を選択するもの全てを含むものである。例えば、電子機器の製造工程における調整、あるいは保守のため試験等において、特定の回路動作を選択するものであれば、全てプリント配線板における回路機能選択に含まれる。
【0017】
また本発明は上記各実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形し実施できる。たとえば、回路機能選択部をプリント配線板の表面ではなく裏面に設け、回路機能選択部が、雌螺子座、又は雌螺子座とプリント配線板裏面との間に位置づけられる間座と機械的に接するようにしてもよい。この場合には、固定部は、プリント配線板の裏面が雌螺子座又は間座と機械的に接する領域で画される部分となり、雌螺子座と間座が、回路機能選択部と筐体との間の電気的接続状態、及び回路機能選択部の複数の電極間の電気的接続状態を規定する。固定部材についても、プリント配線板を筐体に固定するものであれば、螺子止めによる固定部材に限定されるものではない(例えば、ばねによってプリント配線板を筐体に押さえつけるようにして固定するものなどでもよい)。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明にかかるプリント配線板のコーナーの概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示すプリント配線板が有する固定部近傍の概略構成を示す平面図(a)、及び回路機能選択部が有する複数の電極と筐体との間の電気的接続を示す図である(b)(c)。
【図3】回路機能選択部が有する電極形状の変形例を示す図である。
【図4】本発明にかかるプリント配線板の変形例における各コーナーに設けられた固定部を示す平面図であり(a)、各コーナーを1つの固定部材で固定する固定の仕方の組み合わせ図である(b)。
【図5】本発明にかかるプリント配線板の変形例におけるコーナーの概略構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0019】
10、10’ プリント配線板
10a プリント配線板の表面
11 螺子孔
12 固定部
13 回路機能選択部
13a、13b 導体パターン(電極)
20 筐体
30 固定部材
31 雄螺子
32 雌螺子座
33 間座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の筐体に固定されるプリント配線板であって、
該プリント配線板を固定部材によって前記筐体に固定するための固定部と、
前記固定部に設けた回路機能選択部を有し、
前記固定部は前記固定部材と機械的に接する領域で画され、
前記回路機能選択部と前記筐体との間の電気的接続状態が前記固定部材によって規定され、
前記電気的接続状態に対応して、該プリント配線板の複数の回路機能から特定の回路機能を選択することを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】
電子機器の筐体に固定されるプリント配線板であって、
該プリント配線板を固定部材によって前記筐体に固定するための固定部と、
前記固定部に設けた回路機能選択部を有し、
前記固定部は前記固定部材と機械的に接する領域で画され、
前記回路機能選択部は複数の電極を備え、
前記複数の電極間の電気的接続状態が前記固定部材によって規定され、
前記電気的接続状態に対応して、該プリント配線板の複数の回路機能から特定の回路機能を選択することを特徴とするプリント配線板。
【請求項3】
前記固定部は、該プリント配線板を螺子止めするための螺子孔、及び該プリント配線板の表面または裏面に設けられた導体のパターンを備えた回路機能選択部を有することを特徴とする請求項1または2の何れかに記載のプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−140844(P2008−140844A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−323488(P2006−323488)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000000181)岩崎通信機株式会社 (133)
【Fターム(参考)】