説明

プリント配線板

【課題】電磁波シールド機能を有し、かつ信号回路を伝送される電気信号が高周波化されても電気信号の劣化が抑えられるプリント配線板を提供する。
【解決手段】基板12の少なくとも一方の表面に信号回路14およびグランド回路16を有するプリント配線板本体10と、信号回路14およびグランド回路16から離間して対向配置された金属薄膜からなる電磁波シールド層34と、グランド回路16と電磁波シールド層34とを接続する導電性粒子36とを備え、導電性粒子36が、信号回路14と電磁波シールド層34との間に存在しないプリント配線板1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールド機能付きプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板、電子部品等から発生する電磁波ノイズは、他の電気回路や電子部品に影響を与え、誤動作等の原因となることがあるため、電磁波ノイズをシールドする必要がある。そのため、電磁波シールド機能をプリント配線板に付与することが行われている。
【0003】
電磁波シールド機能付きプリント配線板としては、例えば、下記のものが提案されている。
図7に示すような、基板12の片面に信号回路14およびグランド回路16を有するプリント配線板本体10と;基材フィルム22の片面に接着剤層24を有し、プリント配線板本体10の信号回路14およびグランド回路16を有する側の表面を被覆するようにプリント配線板本体10に接着剤層24によって貼着され、グランド回路16の直上に開口部26を有するカバーレイフィルム20と;基材フィルム32の片面に、基材フィルム32の側から順に金属薄膜層33、および導電性粒子36を含む導電性接着剤層37からなる電磁波シールド層35を有し、カバーレイフィルム20の基材フィルム22の側の表面を被覆するように、かつ開口部26において導電性接着剤層37がグランド回路16と接するように、カバーレイフィルム20、および開口部26におけるグランド回路16に導電性接着剤層37によって貼着されたシールドカバーレイフィルム31とを備えたプリント配線板4(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
ところで、近年、信号伝送速度の向上に伴い、信号回路14を伝送される電気信号が高周波化されてきている。しかし、プリント配線板4においては、信号回路14を伝送される電気信号が高周波化され、電磁波シールド層35が信号回路14の近くに敷設された場合、信号回路14のインピーダンスの不整合によりノイズが発生し、また電気信号の劣化が著しくなるという問題を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−269632号公報
【特許文献2】特開2010−177472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電磁波シールド機能を有し、かつ信号回路を伝送される電気信号が高周波化されても電気信号の劣化が抑えられるプリント配線板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプリント配線板は、基板の少なくとも一方の表面に信号回路およびグランド回路を有するプリント配線板本体と、前記信号回路および前記グランド回路から離間して対向配置された金属薄膜からなる電磁波シールド層と、前記グランド回路と前記電磁波シールド層とを接続する導電性粒子とを備え、前記導電性粒子が、前記信号回路と前記電磁波シールド層との間に存在しないことを特徴とする。
【0008】
前記信号回路と前記電磁波シールド層との離間距離は、30〜200μmであることが好ましい。
前記信号回路と前記電磁波シールド層との間に、フッ素樹脂、液晶ポリマーまたは脂環式ポリオレフィンからなる基材フィルムを有するカバーレイフィルムが介在していることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のプリント配線板は、電磁波シールド機能を有し、かつ信号回路を伝送される電気信号が高周波化されても電気信号の劣化が抑えられる。
また、信号回路と前記電磁波シールド層との離間距離が30〜200μmであれば、信号回路を伝送される電気信号が高周波化されても信号回路のインピーダンスの不整合によりノイズが発生しない。
また、信号回路と電磁波シールド層との間に、フッ素樹脂、液晶ポリマーまたは脂環式ポリオレフィンからなる基材フィルムを有するカバーレイフィルムが介在していれば、信号回路を伝送される電気信号が高周波化されても信号回路のインピーダンスの不整合によりノイズが発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のプリント配線板の一例を示す断面図である。
【図2】本発明のプリント配線板の他の例を示す断面図である。
【図3】本発明のプリント配線板の他の例を示す断面図である。
【図4】図1のプリント配線板の製造工程を示す断面図である。
【図5】図2のプリント配線板の製造工程を示す断面図である。
【図6】図3のプリント配線板の製造工程を示す断面図である。
【図7】従来のプリント配線板の一例を示す断面図である。
【図8】実施例1および比較例1の0.1GHz〜40GHzにおける透過減衰量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<プリント配線板>
図1は、本発明のプリント配線板の一例を示す断面図である。
プリント配線板1は、基板12の片面に信号回路14およびグランド回路16を有するプリント配線板本体10と;基材フィルム22の片面に接着剤層24を有し、プリント配線板本体10の信号回路14およびグランド回路16を有する側の表面を被覆するようにプリント配線板本体10に接着剤層24によって貼着され、グランド回路16の直上に開口部26を有するカバーレイフィルム20と;基材フィルム32の片面に、基材フィルム32の側から順に、金属薄膜からなる電磁波シールド層34および接着剤層38を有し、カバーレイフィルム20の基材フィルム22の側の表面を被覆するように、かつ開口部26において接着剤層38がグランド回路16と接するように、カバーレイフィルム20、および開口部26におけるグランド回路16に接着剤層37によって貼着されたシールドカバーレイフィルム30と;開口部26における接着剤層38内に存在し、グランド回路16と電磁波シールド層34とを接続する導電性粒子36とを備えたものである。
【0012】
プリント配線板1においては、電磁波シールド層34が、開口部26を除いて、カバーレイフィルム20および接着剤層38を介して信号回路14およびグランド回路16から離間して対向配置される。なお、本明細書において「対向」しているとは、上面から見たときに少なくとも一部が重なり合う状態をいう。
また、プリント配線板1においては、導電性粒子36が、開口部26以外の接着剤層38内に存在しない、すなわち信号回路14と電磁波シールド層34との接着剤層38内に存在しない。
信号回路14と電磁波シールド層34との離間距離は、間に介在する接着剤層24、基材フィルム22、接着剤層38の厚さの和である。
【0013】
図2は、本発明のプリント配線板の他の例を示す断面図である。
プリント配線板2は、基板12の一方の表面に信号回路14およびグランド回路16を有し、他方の表面にグランド層18を有するプリント配線板本体10と;基材フィルム22の片面に接着剤層24を有し、プリント配線板本体10の信号回路14およびグランド回路16を有する側の表面を被覆するようにプリント配線板本体10に接着剤層24によって貼着され、グランド回路16の直上に開口部26を有するカバーレイフィルム20と;基材フィルム22の片面に接着剤層24を有し、プリント配線板本体10のグランド層18の側の表面を被覆するようにプリント配線板本体10に接着剤層24によって貼着されたカバーレイフィルム20と;基材フィルム32の片面に、基材フィルム32の側から順に、金属薄膜からなる電磁波シールド層34および接着剤層38を有し、カバーレイフィルム20の基材フィルム22の側の表面を被覆するように、かつ開口部26において接着剤層38がグランド回路16と接するように、カバーレイフィルム20、および開口部26におけるグランド回路16に接着剤層37によって貼着されたシールドカバーレイフィルム30と;開口部26における接着剤層38内に存在し、グランド回路16と電磁波シールド層34とを接続する導電性粒子36とを備えたものである。
【0014】
プリント配線板2においては、電磁波シールド層34が、開口部26を除いて、カバーレイフィルム20および接着剤層38を介して信号回路14およびグランド回路16から離間して対向配置される。
また、プリント配線板2においては、導電性粒子36が、開口部26以外の接着剤層38内に存在しない、すなわち信号回路14と電磁波シールド層34との接着剤層38内に存在しない。
【0015】
図3は、本発明のプリント配線板の他の例を示す断面図である。
プリント配線板3は、基板12の両面に信号回路14およびグランド回路16を有するプリント配線板本体10と;基材フィルム22の片面に接着剤層24を有し、プリント配線板本体10の信号回路14およびグランド回路16を被覆するようにプリント配線板本体10の両面に接着剤層24によって貼着され、グランド回路16の直上に開口部26を有する2枚のカバーレイフィルム20と;基材フィルム32の片面に、基材フィルム32の側から順に、金属薄膜からなる電磁波シールド層34および接着剤層38を有し、カバーレイフィルム20の基材フィルム22の側の表面を被覆するように、かつ開口部26において接着剤層38がグランド回路16と接するように、カバーレイフィルム20、および開口部26におけるグランド回路16に接着剤層37によって貼着された2枚のシールドカバーレイフィルム30と;開口部26における接着剤層38内に存在し、グランド回路16と電磁波シールド層34とを接続する導電性粒子36とを備えたものである。
【0016】
プリント配線板3においては、電磁波シールド層34が、開口部26を除いて、カバーレイフィルム20および接着剤層38を介して信号回路14およびグランド回路16から離間して対向配置される。
また、プリント配線板3においては、導電性粒子36が、開口部26以外の接着剤層38内に存在しない、すなわち信号回路14と電磁波シールド層34との接着剤層38内に存在しない。
【0017】
〔プリント配線板本体〕
プリント配線板本体10は、銅張積層板の銅箔を公知のエッチング法により所望のパターンに加工して信号回路14、グランド回路16、グランド層18等の配線回路としたものである。
銅張積層板としては、基板12の片面または両面に接着剤層(図示略)を介して銅箔を貼り合わせたもの;銅箔の表面に基板12を形成する樹脂溶液等をキャストしたもの等が挙げられる。
【0018】
(基板)
基板12の材料としては、ガラス繊維強化エポキシ樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート等)、ポリビニリデン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー、ポリスチレン等が挙げられる。
プリント配線板1〜3がフレキシブルプリント配線板の場合、基板12としては、ポリマーフィルムが好ましい。
【0019】
ポリマーフィルムの表面抵抗は、1×10Ω以上が好ましい。
ポリマーフィルムとしては、耐熱性を有するフィルムが好ましく、ポリイミドフィルム、液晶ポリマーフィルム等がより好ましい。
ポリマーフィルムの厚さは、5〜200μmが好ましく、屈曲性の点から、6〜25μmがより好ましく、10〜25μmが特に好ましい。
【0020】
(配線回路)
配線回路(信号回路14、グランド回路16、グランド層18等)を構成する銅箔としては、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられ、屈曲性の点から、圧延銅箔が好ましい。
銅箔の厚さは、1〜50μmが好ましく、18〜35μmがより好ましい。
配線回路の長さ方向の端部(端子)は、ハンダ接続、コネクター接続、部品搭載等のため、カバーレイフィルム20やシールドカバーレイフィルム30に覆われていない。
【0021】
(接着剤層)
基板12に銅箔(配線回路)を貼り合わせる接着剤層の材料としては、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、フェノール樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
接着剤層の厚さは、0.5〜30μmが好ましい。
【0022】
〔カバーレイフィルム〕
カバーレイフィルム20は、基材フィルム22の片面に、接着剤の塗布、接着シートの貼着等によって接着剤層24を形成したものである。
【0023】
(基材フィルム)
基材フィルム22の表面抵抗は、1×10Ω以上が好ましい。
基材フィルム22の材料としては、ポリイミド、液晶ポリマー、フッ素樹脂、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、脂環式ポリオレフィン、ポリフェニレンエーテル等が挙げられ、耐熱性もあり、誘電率が低く、誘電損失が低いため信号回路を劣化させることがなく、また信号回路14のインピーダンス調整にも有利に働く点から、液晶ポリマー、フッ素樹脂、脂環式ポリオレフィンまたはポリフェニレンエーテルが好ましく、液晶ポリマー、フッ素樹脂または脂環式ポリオレフィンが特に好ましい。
基材フィルム22の厚さは、1〜100μmが好ましく、可とう性の点から、3〜25μmがより好ましい。
【0024】
(接着剤層)
接着剤層24の材料としては、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、フェノール樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン、ポリオレフィン等が挙げられる。エポキシ樹脂は、可とう性付与のためのゴム成分(カルボキシル変性ニトリルゴム等)を含んでいてもよい。
接着剤層24の厚さは、1〜100μmが好ましく、1.5〜60μmがより好ましい。
【0025】
信号回路14と電磁波シールド層34との離間距離は、基材フィルム24の厚さとカバーレイフィルム20の接着剤層24の厚さと以下のシールドカバーレイフィルム30の接着剤層38の厚さの総和である。離間距離は、30〜200μmが好ましい。離間距離が30μmより小さいと、信号回路14のインピーダンスが低くなるため、100Ω等の特性インピーダンスを有するためには、信号回路14の線幅を小さくしなければならず、線幅のバラツキが特性インピーダンスのバラツキとなって、インピーダンスのミスマッチによる反射共鳴ノイズが電気信号に乗りやすくなるという不利がある。離間距離が200μmより大きいと、プリント配線板が厚くなり、可とう性が不足するという問題がある。離間距離は、60〜200μmがより好ましい。
【0026】
〔シールドカバーレイフィルム〕
シールドカバーレイフィルム30は、基材フィルム32の片面に、物理蒸着(真空蒸着、スパッタリング、イオンビーム蒸着等)、CVD等によって金属薄膜からなる電磁波シールド層34を形成し、電磁波シールド層34の表面に、接着剤の塗布、接着シートの貼着等によって接着剤層38を形成したものである。
【0027】
(基材フィルム)
基材フィルム32の表面抵抗は、1×10Ω以上が好ましい。
基材フィルム32の材料としては、ポリイミド、液晶ポリマー、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリフェニレンエーテル等が挙げられる。
基材フィルム32の厚さは、1〜100μmが好ましく、可とう性の点から、3〜25μmがより好ましい。
【0028】
(電磁波シールド層)
電磁波シールド層34を構成する金属薄膜の材料としては、銀、アルミニウム、銅、金等が挙げられる。
電磁波シールド層34の厚さは、0.01〜1μmが好ましい。
電磁波シールド層34の表面粗さは、Rzで0.01〜3μmが好ましく、0.01〜1μmがより好ましい。表面粗さが3μmより大きいと、表面抵抗が大きく抵抗損によりエネルギーが消失してしまう。一方、表面粗さを0.01μmより小さく表面を平滑にすることは経済的に困難である。
【0029】
(接着剤層)
接着剤層38の材料としては、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、フェノール樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン、ポリオレフィン等が挙げられる。エポキシ樹脂は、可とう性付与のためのゴム成分(カルボキシル変性ニトリルゴム等)を含んでいてもよい。
接着剤層24の厚さは、2〜100μmが好ましい。
【0030】
〔導電性粒子〕
導電性粒子36としては、金属フィラー、カーボン等の公知の導電性粒子が挙げられる。
金属フィラーとしては、銀、白金、金、銅、ニッケル、パラジウム、アルミニウム、ハンダ等が挙げられる。
金属フィラーの平均粒子径は、グランド回路16と電磁波シールド層34との電気的接続の点から、プリント配線板本体10にカバーレイフィルム20を貼着した後の接着剤層24の厚さとほぼ同程度であることが好ましい。
【0031】
導電性粒子36を、開口部26における接着剤層38内に存在させ、開口部26以外の接着剤層38内に存在させない方法としては、(i)接着剤層38を形成するための接着剤として、導電性粒子36を含む接着剤と導電性粒子36を含まない接着剤とを用意し、開口部26に対応する位置の接着剤層38を、導電性粒子36を含む接着剤の塗布によって形成し、それ以外の接着剤層38を、導電性粒子36を含まない接着剤の塗布によって形成する方法;(ii)導電性粒子36を含まない接着剤の塗布によって接着剤層38を形成した後、開口部26に対応する位置の接着剤層38に導電性粒子36を埋め込む方法;(iii)接着剤層38を形成する前に、導電性粒子36を電磁波シールド層34の表面に固定、一体化させ、電磁波シールド層34の表面に導電性粒子36からなる複数の突起を形成した後、その表面に接着剤層38を形成する方法等が挙げられる。
【0032】
〔プリント配線板の製造方法〕
(プリント配線板1の製造方法)
プリント配線板1は、例えば、以下のようにして製造される。
まず、図4に示すように、基板12の片面に信号回路14およびグランド回路16を有するプリント配線板本体10と、基材フィルム22の片面に接着剤層24を有し、グランド回路16に対応する位置に開口部26を有するカバーレイフィルム20とを、プリント配線板本体10の信号回路14およびグランド回路16を有する側の表面と、カバーレイフィルム20の接着剤層24とが接するように重ね、プレス機(図示略)等によって熱プレスして、プリント配線板本体10表面にカバーレイフィルム20を接着剤層24によって貼着する。
【0033】
ついで、図4に示すように、カバーレイフィルム20付きプリント配線板本体10と、基材フィルム32の片面に、基材フィルム32の側から順に、金属薄膜からなる電磁波シールド層34および接着剤層38を有し、開口部26に対応する接着剤層38内に導電性粒子36が存在するシールドカバーレイフィルム30とを、カバーレイフィルム20の基材フィルム22と、シールドカバーレイフィルム30の接着剤層38とが接するように重ね、プレス機(図示略)等によって熱プレスして、開口部26において接着剤層38内の導電性粒子36によってグランド回路16と電磁波シールド層34とが接続されるように、カバーレイフィルム20の表面にシールドカバーレイフィルム30を接着剤層38によって貼着する。
【0034】
(プリント配線板2の製造方法)
プリント配線板2は、例えば、以下のようにして製造される。
まず、図5に示すように、基材フィルム22の片面に接着剤層24を有し、開口部26を有さないカバーレイフィルム20と、基板12の一方の表面に信号回路14およびグランド回路16を有し、他方の表面にグランド層18を有するプリント配線板本体10とを、カバーレイフィルム20の接着剤層24と、プリント配線板本体10のグランド層18の側の表面とが接するように重ねる。また、前記プリント配線板本体10と、基材フィルム22の片面に接着剤層24を有し、グランド回路16に対応する位置に開口部26を有するカバーレイフィルム20とを、プリント配線板本体10の信号回路14およびグランド回路16を有する側の表面と、カバーレイフィルム20の接着剤層24とが接するように重ねる。これらを、プレス機(図示略)等によって熱プレスして、プリント配線板本体10の両面にカバーレイフィルム20を接着剤層24によって貼着する。
【0035】
ついで、図5に示すように、カバーレイフィルム20付きプリント配線板本体10と、基材フィルム32の片面に、基材フィルム32の側から順に、金属薄膜からなる電磁波シールド層34および接着剤層38を有し、開口部26に対応する接着剤層38内に導電性粒子36が存在するシールドカバーレイフィルム30とを、開口部26を有するカバーレイフィルム20の基材フィルム22と、シールドカバーレイフィルム30の接着剤層38とが接するように重ね、プレス機(図示略)等によって熱プレスして、開口部26において接着剤層38内の導電性粒子36によってグランド回路16と電磁波シールド層34とが接続されるように、カバーレイフィルム20の表面にシールドカバーレイフィルム30を接着剤層38によって貼着する。
【0036】
(プリント配線板3の製造方法)
プリント配線板3は、例えば、以下のようにして製造される。
まず、図6に示すように、基材フィルム22の片面に接着剤層24を有し、グランド回路16に対応する位置に開口部26を有するカバーレイフィルム20と、基板12の両面に信号回路14およびグランド回路16を有するプリント配線板本体10と、基材フィルム22の片面に接着剤層24を有し、グランド回路16に対応する位置に開口部26を有するカバーレイフィルム20とを、プリント配線板本体10の表面と、カバーレイフィルム20の接着剤層24とが接するように重ねる。これらを、プレス機(図示略)等によって熱プレスして、プリント配線板本体10の両面にカバーレイフィルム20を接着剤層24によって貼着する。
【0037】
ついで、図6に示すように、基材フィルム32の片面に、基材フィルム32の側から順に、金属薄膜からなる電磁波シールド層34および接着剤層38を有し、開口部26に対応する接着剤層38内に導電性粒子36が存在するシールドカバーレイフィルム30と、カバーレイフィルム20付きプリント配線板本体10と、基材フィルム32の片面に、基材フィルム32の側から順に、金属薄膜からなる電磁波シールド層34および接着剤層38を有し、開口部26に対応する接着剤層38内に導電性粒子36が存在するシールドカバーレイフィルム30とを、カバーレイフィルム20の基材フィルム22と、シールドカバーレイフィルム30の接着剤層38とが接するように重ね、プレス機(図示略)等によって熱プレスして、開口部26において接着剤層38内の導電性粒子36によってグランド回路16と電磁波シールド層34とが接続されるように、カバーレイフィルム20の表面にシールドカバーレイフィルム30を接着剤層38によって貼着する。
【0038】
〔作用効果〕
以上説明したプリント配線板1〜3にあっては、基板12の少なくとも一方の表面に信号回路14およびグランド回路16を有するプリント配線板本体10と、信号回路14およびグランド回路16から離間して対向配置された金属薄膜からなる電磁波シールド層38と、グランド回路16と電磁波シールド層34とを接続する導電性粒子36とを備えているため、電磁波シールド機能を有する。
また、導電性粒子36が、信号回路14と電磁波シールド層34との間に存在しないため、後述する理由から、信号回路14を伝送される電気信号が高周波化されても(例えば1GHz以上とされても)信号回路14の特性インピーダンスのバラツキが少なく、インピーダンスの不整反射によるノイズが低減され、また電気信号の劣化が抑えられる。
【0039】
(理由)
図7に示す従来のプリント配線板4においては、信号回路14に高周波電流が流れると、電磁結合によって電磁波シールド層35内にも高周波電流が流れる。電磁波シールド層35内を流れる高周波電流は、表皮効果によって電磁波シールド層35の表面、すなわち金属薄膜層33および導電性粒子36の表面に集中して流れる。ここで、電磁波シールド層35の表面は、導電性粒子36によって粗面化されていると見ることができるため、表面抵抗が高い。そのため、電磁誘導の原理に基づき電磁波シールド層35の表面に集中して流れ、熱損失し、それに伴い、これと電磁結合している信号回路14に流れる高周波電流が減衰し、信号回路14を伝送される電気信号が劣化する。また、電磁波シールド層35と信号回路14が強く電磁結合していると、信号回路の特性インピーダンスを調整するためには、信号回路の線幅を細くする必要があるが、エッチングムラからくる線幅のバラツキが大きくなり、特性インピーダンスも安定せず、インピーダンスの不整反射によるノイズも大きいといえる。
【0040】
一方、図1〜3に示すプリント配線板1〜3にあっては、導電性粒子36が信号回路14と電磁波シールド層34との間に存在しないため、電磁波シールド層34の表面抵抗は低い。そのため、電磁結合によって電磁波シールド層34の表面に集中して流れる高周波電流は、熱損失しにくく、その結果、これと電磁結合している信号回路14に流れる高周波電流が減衰しにくく、信号回路14を伝送される電気信号が劣化しにくい。また、電磁波シールド層34と、これと電磁結合している信号回路14とは適切に離間され、低誘電性および低誘電損失の基材フィルムを介在させることから、電磁結合は弱まり、電気信号の劣化はなく、インピーダンスの不整反射によるノイズも小さく抑えられる。
【0041】
〔他の形態〕
なお、本発明のプリント配線板は、基板の少なくとも一方の表面に信号回路およびグランド回路を有するプリント配線板本体と、信号回路およびグランド回路から離間して対向配置された金属薄膜からなる電磁波シールド層と、グランド回路と電磁波シールド層とを接続する導電性粒子とを備え、導電性粒子が、信号回路と電磁波シールド層との間に存在しないものであればよく、図示例のプリント配線板1〜3に限定はされない。
例えば、カバーレイフィルム20を設けることなく、シールドカバーレイフィルム30をプリント配線板本体10の表面に直接貼着しても構わない。この場合、信号回路14と電磁波シールド層34との離間距離は、間に介在するシールドカバーレイフィルム30の接着剤層38の厚さである。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を示す。なお、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0043】
〔実施例1〕
図1に示す構造を有するプリント配線板1を以下のように製造した。
まず、厚さ10μmのポリイミドフィルム(基材フィルム22)の表面に、ニトリルゴム変性エポキシ樹脂からなる絶縁性接着剤を、乾燥膜厚が20μmになるように塗布し、接着剤層24を形成し、カバーレイフィルム20を得た。カバーレイフィルム20には、グランド回路16に対応する位置に開口部26を形成した。
【0044】
ついで、厚さ12μmのポリイミドフィルム(基板12)の片面に、信号回路14およびグランド回路16が形成されたプリント配線板本体10を用意した。
プリント配線板本体10にカバーレイフィルム20を熱プレスにより貼着した。
【0045】
厚さ3μmのポリフェニレンサルファイドフィルム(基材フィルム32)の表面に、イオンビーム蒸着法にてアルミニウムを物理的に蒸着させ、厚さ0.1μmのアルミニウム蒸着膜(電磁波シールド層34)を形成した。
【0046】
ついで、ニトリルゴム変性エポキシ樹脂からなる絶縁性接着剤に、平均粒径が10μmのニッケル粒子(導電性粒子36)を5体積%分散させた導電性接着剤を用意した。
電磁波シールド層34の表面のうち、グランド回路16に対応する位置に導電性接着剤を、乾燥膜厚が12μmになるように塗布し、これ以外に絶縁性接着剤を、乾燥膜厚が12μmになるように塗布して、接着剤層38を形成し、シールドカバーレイフィルム30を得た。
【0047】
ついで、カバーレイフィルム20の表面にシールドカバーレイフィルム30を熱プレスにより貼着し、プリント配線板1を得た。この際、電磁波シールド層34は、開口部26において導電性粒子36によってグランド回路に接地した。
プリント配線板1について、信号回路14の両端とネットワークアナライザーとをケーブルを介して接続した後、S21パラメータを評価した。0.1GHz〜40GHzにおける透過減衰量を図8に示す。
【0048】
〔比較例1〕
図7に示す構造を有するプリント配線板4を以下のように製造した。
まず、厚さ10μmのポリイミドフィルム(基材フィルム22)の表面に、ニトリルゴム変性エポキシ樹脂からなる絶縁性接着剤を、乾燥膜厚が20μmになるように塗布し、接着剤層24を形成し、カバーレイフィルム20を得た。カバーレイフィルム20には、グランド回路16に対応する位置に開口部26を形成した。
【0049】
ついで、厚さ12μmのポリイミドフィルム(基板12)の片面に、信号回路14およびグランド回路16が形成されたプリント配線板本体10を用意した。
プリント配線板本体10にカバーレイフィルム20を熱プレスにより貼着した。
【0050】
厚さ3μmのポリフェニレンサルファイドフィルム(基材フィルム32)の表面に、イオンビーム蒸着法にてアルミニウムを物理的に蒸着させ、厚さ0.1μmのアルミニウム蒸着膜(金属薄膜層33)を形成した。
【0051】
ついで、ニトリルゴム変性エポキシ樹脂からなる絶縁性接着剤に、平均粒径が10μmのニッケル粒子(導電性粒子36)を5体積%分散させた導電性接着剤を用意した。
電磁波シールド層34の表面に導電性接着剤を、乾燥膜厚が12μmになるように塗布し、導電性接着剤層37を形成し、金属薄膜層33および導電性接着剤層37からなる電磁波シールド層35を有するシールドカバーレイフィルム31を得た。
【0052】
ついで、カバーレイフィルム20の表面にシールドカバーレイフィルム31を熱プレスにより貼着し、プリント配線板4を得た。この際、電磁波シールド層35は、開口部26において導電性粒子36によってグランド回路に接地した。
プリント配線板4について、信号回路14の両端とネットワークアナライザーとをケーブルを介して接続した後、S21パラメータを評価した。0.1GHz〜40GHzにおける透過減衰量を図8に示す。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のプリント配線板は、光モジュール、携帯電話、デジタルカメラ、ゲーム機、ノートパソコン、医療器具等の電子機器用のフレキシブルプリント配線板として有用である。
【符号の説明】
【0054】
1 プリント配線板
2 プリント配線板
3 プリント配線板
10 プリント配線板本体
12 基板
14 信号回路
16 グランド回路
20 カバーレイフィルム
26 開口部
34 電磁波シールド層
36 導電性粒子
38 接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の少なくとも一方の表面に信号回路およびグランド回路を有するプリント配線板本体と、
前記信号回路および前記グランド回路から離間して対向配置された金属薄膜からなる電磁波シールド層と、
前記グランド回路と前記電磁波シールド層とを接続する導電性粒子と
を備え、
前記導電性粒子が、前記信号回路と前記電磁波シールド層との間に存在しない、プリント配線板。
【請求項2】
前記信号回路と前記電磁波シールド層との離間距離が、30〜200μmである、請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項3】
前記信号回路と前記電磁波シールド層との間に、フッ素樹脂、液晶ポリマーまたは脂環式ポリオレフィンからなる基材フィルムを有するカバーレイフィルムが介在している、請求項1または2に記載のプリント配線板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−26322(P2013−26322A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157873(P2011−157873)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】