説明

プリンヌクレオシド生産菌及びプリンヌクレオシド製造法

【課題】プリンヌクレオシド及びプリンヌクレオチドなどのプリン系物質の発酵生産の効率を向上させる製造方法、および製造に使用される微生物の提供。
【解決手段】高浸透圧下で耐性を有するように突然変異処理等により改変され、かつプリンヌクレオシド生産能を有するバチルス属細菌。この細菌を培養し、細菌または培地からイノシン、キサントシン、およびグアノシンのようなプリンヌクレオシドを回収するプリンヌクレオシドの製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5′−イノシン酸、5′−キサンチル酸、5′−グアニル酸の合成のための原料として重要であるイノシン、キサントシン、およびグアノシンといったプリンヌクレオシドを製造するための方法、および製造に使用される新規な微生物に関する。
【背景技術】
【0002】
イノシン、グアノシン、キサントシン等のプリンヌクレオシドは、アデニン栄養要求性や、またはプリン類似体、サルファ剤、メチオニン類似体、抗葉酸剤、ポリミキシンといった種々の薬剤に対する薬剤耐性が付与されたバチルス(Bacillus)属(特許文献1〜11、非特許文献1)、またはエシェリヒア(Escherichia)属(特許文献12)およびその他の微生物を利用した発酵法によって工業的に製造されてきた。
【0003】
ヌクレオシド生産用の発酵培地は、高濃度のグルコース、リン酸ナトリウム、およびMgSOを含有しており、自然界に比べて浸透圧は極めて高い。また、発酵生産過程で培地中に著量のプリンヌクレオシドを蓄積する。蓄積されたヌクレオシドは、培地の浸透強度(浸透圧)をさらに増大させる。高い浸透圧は、全体的な細胞活性に負の影響を及ぼし、ヌクレオシド生合成を抑制することがある。
【0004】
高い浸透圧における増殖に反応して、細胞は浸透保護剤(osmoprotectant)、すなわち、細胞の生理機能に高度に適合するオスモライト(osmolyte)を蓄積することが知られている(非特許文献2 非特許文献3)。浸透圧バランスに対する貢献とあわせて、浸透圧保護剤は、高イオン強度の有害作用に対し、酵素および細胞成分の安定化剤として役立つと考えられる。浸透圧保護剤の中でも、環状アミノ酸L−プロリンは、高浸透圧に対する細菌の適応反応において、非常に重要な役割を果たしていると考えられ、多量のL−プロリンは、高浸透圧下における増殖に反応し、デノボ合成(de novo synthesis)を通して細胞によって蓄積されることが報告されている。(非特許文献2〜4)。さらに、バチルス種はプロリン生合成に多数の酵素が関与している考えられ、それらの酵素をコードする遺伝子のいくつかは、高濃度の塩によって誘導されるという報告がある。(非特許文献5)。さらに、高浸透圧は、L−プロリンの取込みを誘導し、細胞内のプロリン蓄積により、増殖が阻害される浸透圧条件下での細胞増殖を可能にする(非特許文献3〜6)。
【0005】
しかし現在は、高浸透圧に対して耐性のバチルス属に属する細菌を用いた、イノシン、アデノシン、キサントシン、およびグアノシンのようなプリンヌクレオシド製造の報告はない。
【特許文献1】特公昭38−23039号公報
【特許文献2】特公昭54−17033号公報
【特許文献3】特公昭55−2956号公報
【特許文献4】特公昭55−45199号公報
【特許文献5】特開昭56−162998号公報
【特許文献6】特公昭57−14160号公報
【特許文献7】特公昭57−41915号公報
【特許文献8】特開昭59−42895号公報
【特許文献9】特開2003−259861号公報
【特許文献10】特公昭第51−5075号公報
【特許文献11】特公昭58−17592号公報
【特許文献12】国際公開9903988号パンフレット
【非特許文献1】Agric. Biol. Chem.1978年、第42巻、p.399
【非特許文献2】チョンカ(Csonka)著、Microbiol. Rev.、1989年、第53巻、p.121−147;
【非特許文献3】ケンプおよびブレマー(Kempf & Bremer)著、Arch. Microbiol.、1998年、第170巻、p.319−30
【非特許文献4】ガリンスキおよびトゥルーパー(Galinski & Truper)著、FEMS Microbiol. Rev.、1994年、第29巻、p.95−108
【非特許文献5】ヤンシー(Yancey, P. H.)著、「Cellular and Molecular Physiology of Cell Volume Regulation(細胞体積調節の細胞および分子生理学)」
【非特許文献6】ストレインジ(Strange, K.)編、CRCプレス、米国、ボカラトン、1994年、p.81−109、
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、発酵法によってプリンヌクレオシドを製造するための好適なバチルス属細菌を創生すること、及び同細菌を用いたプリンヌクレオシド、プリンヌクレオチドの製造法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意研究を行った。その結果、 バチルス属に属し、かつ高浸透圧に対する耐性を付与した微生物が、培地中に多くのプリンヌクレオシドを産生および蓄積することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)高浸透圧下で耐性を有し、かつプリンヌクレオシド生産能を有するバチルス属細菌。
(2)バチルス属に属する親株から誘導された変異株であって、浸透圧を上昇させる物質を含有する培地中で培養したときに、親株よりも生育が良好である、(1)の細菌。
(3)前期浸透圧を上昇させる物質が塩化ナトリウムである、(1)または(2)の細菌。
(4)前記培地が2.0Mの塩化ナトリウムを含有する、(1)〜(3)の細菌。
(5)前記バチルス属細菌が、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)または、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)から選択される細菌である、(1)〜(4)に記載の細菌。
(6)前記プリンヌクレオシドが、イノシン、キサントシン、アデノシン、およびグアノシンからなる群より選択される、(1)〜(5)に記載の細菌。
(7)(1)〜(6)に記載のバチルス属細菌を培地で培養し、同細菌または培地中にプリンヌクレオシドを蓄積せしめ、同細胞又は培地からプリンヌクレオシドを回収することを特徴とする、プリンヌクレオシドの製造法。
(8)前記プリンヌクレオシドが、イノシン、キサントシン、アデノシン、およびグアノシンからなる群より選ばれる、(7)の方法。
(9)(7)または(8)に記載の方法によりプリンヌクレオシドを製造し、該プリンヌクレオシドに、ポリ燐酸、フェニル燐酸、及びカルバミル燐酸からなる群より選択される燐酸供与体と、ヌクレオシド−5’−燐酸エステルを生成する能力を有する微生物又は酸性フォスファターゼを作用させて、プリンヌクレオチドを生成せしめ、該プリンヌクレオチドを採取することを特徴とするプリンヌクレオチドの製造法。
(10)前記プリンヌクレオチドが、5′−イノシン酸、5′−キサンチル酸、5′−グアニル酸、5′−アデニル酸からなる群より選択される、(9)に記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の微生物を用いることにより、効率よくプリンヌクレオシド、プリンヌクレオチドを発酵生産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(1)本発明のバチルス属細菌
本発明の細菌は、高浸透圧下で耐性を有するように改変され、かつプリンヌクレオシド生産能を有するバチルス属細菌である。
本発明において「プリンヌクレオシド生産能」は、本発明のバチルス属細菌を培地中で培養したときに、プリンヌクレオシドを細胞または培地から回収できる程度に細胞内または培地中に生成、分泌、蓄積できる能力をいう。通常、培地中に50mg/lを下回らない、好ましくは0.5g/lを下回らないプリンヌクレオシドを蓄積する能力を意味する。
【0010】
本発明において「プリンヌクレオシド」は、イノシン、キサントシン、アデノシン、およびグアノシンを含む。なお、本発明のバチルス属細菌は、上記プリンヌクレオシドのうち、2種類以上の生産能を有するものであってもよい。
【0011】
本発明において「バチルス属に属する細菌」とは、分類法に従って、バチルス属として分類されることを意味する。本発明において使用されるバチルス属に属する細菌の代表例は、バチルス・スブチリス(B. subtilis)、およびバチルス・アミロリケファシエンス(B. amyloliquefaciens)であるが、これに制限されない。
【0012】
バチルス属に属する細菌の具体例としては、バチルス・スブチリス168 Marburg 株(ATCC6051)、バチルス・スブチリスPY79(Plasmid、1984年、第12巻、p.1−9)が挙げられ、バチルス・アミロリケファシエンスの実例は、バチルス・アミロリケファシエンスT(ATCC23842)、バチルス・アミロリケファシエンスN(ATCC23845)およびその他同様のものを含むがこれに制限されない。これらの菌株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)住所P.O BOX1549 Manassas VA 20108 USA)から入手することができる。
【0013】
プリンヌクレオシド生産能を有するバチルス属細菌は、上記のようなバチルス属細菌に例えば、プリンヌクレオシド要求性、又はさらにプリンアナログ等の薬剤に耐性を付与することにより、取得することができる。
例えば、このような方法で取得された菌株として、バチルス・スブチリス株AJ12707(FERM P−12951)(特開昭61−13876)、バチルス・スブチリス株AJ3772(FERM−P 2555)(特開昭62−014794)、バチルス・プミルス株NA−1102(FERM BP−289)、バチルス・スブチリスNA−6011(FERM BP−291)、バチルス・アミロリケファシエンス(「バチルス・スブチリス」)G1136A(ATCC No.19222)(米国特許3,575,809号)、バチルス・スブチリスNA−6012(FERM BP−292)(米国特許4,701,413号)、バチルス.プミリス・ゴテイル(B. pumilis Gottheil)No.3218(ATCC No.21005)(米国特許3,616,206)バチルス.アミロリケファシエンス株AS115−7(VKPM B−6134)(ロシア特許第2003678号)等が挙げられる。
【0014】
また、プリンヌクレオシド生合成に関与する酵素の細胞内の活性を増大させることによってもプリンヌクレオシド生産能を付与することができる。(米国特許出願2004−0166575)。「細胞内の活性を増大させること」は、活性を野生型のバチルス細菌のような改変されていないバチルス細菌より高いレベルに増大させることを意味する。実例は、これに制限されないが、細胞あたりの酵素分子の数を増大させること、酵素分子当たりの比活性を増大させること、およびその他同様のものを含む。
【0015】
プリンヌクレオシド生合成に関与する酵素としては、たとえば、ホスホリボシルピロリン酸(PRPP)アミドトランスフェラーゼ、ホスホリボシルピロリン酸(PRPP)シンセターゼ、アデノシンデアミナーゼ等が挙げられる。
【0016】
また、プリンオペロンの発現量増加によっても、プリンヌクレオシド生合成に関与する酵素の細胞内の活性を増大させることができる。具体的には、イノシン生合成に関与する酵素のフィードバック阻害のレギュレーションを解除する方法により、プリンオペロンの発現量が増大され、プリンヌクレオシド生産能を向上させることができる。(WO99/03988)。プリンヌクレオシド生合成に関与している上記のような酵素のレギュレーション解除としては、たとえば、プリンリプレッサーの欠失が挙げられる。(米国特許第6,284,495号)。プリンリプレッサーを欠失する方法の実例は、プリンリプレッサーをコードしている遺伝子(purR 配列番号5、GenBankアクセッション番号Z99104)の破壊が挙げられる。(米国特許第6,284,495号)
【0017】
さらに、プリンヌクレオシド産生能はイノシン生合成から分岐している生合成系をブロックすることにより、イノシン以外の代謝産物(副生物)の産生量を減少させることによっても付与することができる(WO99/03988)。プリンヌクレオシド生合成から分枝し、結果として別の代謝産物を生じる反応の実例は、たとえば、スクシニルアデノシン一リン酸(AMP)シンターゼ(purA 配列番号5)、イノシン−グアノシンキナーゼ、6−ホスホグルコン酸脱水素酵素、ホスホグルコイソメラーゼ等が挙げられる。スクシニル−アデノシン一リン酸(AMP)シンターゼは、purA(GenBankアクセッション番号Z99104 配列番号5)によりコードされている。
【0018】
さらに、プリンヌクレオシド産生能は、プリンヌクレオシド分解活性を低減または除去することにより増大されることも可能である(WO99/03998)。プリンヌクレオシドの分解活性を低減または除去する方法は、プリンヌクレオシドホスホリラーゼをコードする遺伝子(deoD 配列番号3)を破壊する方法を含む。(特開2004-242610)
【0019】
目的の酵素活性の低下は、以下のような方法で達成できる。
バチルス属細菌の細胞内の目的酵素の活性を低下させるには、例えば、バチルス属細菌を紫外線照射またはN−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)もしくはEMS(エチルメタンスルフォネート)等の通常変異処理に用いられている変異剤によって処理し、目的酵素の活性が低下した変異株を選択する方法が挙げられる。また、目的酵素の活性が低下したバチルス属細菌は、変異処理の他に、例えば、遺伝子組換え法を用いた相同組換え法(Experiments in Molecular Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory press (1972); Matsuyama, S. and Mizushima, S., J. Bacteriol., 162, 1196(1985))により、染色体上の目的酵素をコードする遺伝子を、正常に機能しない遺伝子(以下、「破壊型遺伝子」ということがある)で置換することによって行うことができる。
【0020】
破壊型遺伝子を、宿主染色体上の正常遺伝子と置換するには、例えば以下のようにすればよい。以下の例では、purR遺伝子を例として説明するが、他の遺伝子、例えばpurA又はdeoDについても、同様にして遺伝子破壊を行うことができる。
相同組換えは、染色体上の配列と相同性を有する配列を持つプラスミド等が菌体内に導入されると、ある頻度で相同性を有する配列の箇所で組換えを起こし、導入されたプラスミド全体が染色体上に組み込まれる。この後さらに染色体上の相同性を有する配列の箇所で組換えを起こすと、再びプラスミドが染色体上から抜け落ちるが、この時組換えを起こす位置により破壊された遺伝子の方が染色体上に固定され、元の正常な遺伝子がプラスミドと一緒に染色体上から抜け落ちることもある。このような菌株を選択することにより、破壊型purR遺伝子が染色体上の正常なpurR遺伝子と置換された菌株を取得することができる。
【0021】
このような相同組換えによる遺伝子破壊技術は既に確立しており、直鎖DNAを用いる方法、温度感受性プラスミドを用いる方法等が利用できる。また、薬剤耐性等のマーカー遺伝子が内部に挿入されたpurR遺伝子を含み、かつ、目的とする微生物細胞内で複製できないプラスミドを用いることによっても、purR遺伝子の破壊を行うことができる。すなわち、前記プラスミドで形質転換され、薬剤耐性を獲得した形質転換体は、染色体DNA中にマーカー遺伝子が組み込まれている。このマーカー遺伝子は、その両端のpurR遺伝子配列と染色体上のpurR遺伝子との相同組換えによって組み込まれる可能性が高いため、効率よく遺伝子破壊株を選択することができる。
【0022】
遺伝子破壊に用いる破壊型purR遺伝子は、具体的には、制限酵素消化及び再結合によるpurR遺伝子の一定領域の欠失、purR遺伝子への他のDNA断片(マーカー遺伝子等)の挿入、または部位特異的変異法(Kramer, W. and Frits, H. J.,
Methods in Enzymology, 154, 350 (1987))や次亜硫酸ナトリウム、ヒドロキシルアミン等の化学薬剤による処理(Shortle, D. and Nathans, D., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 75, 270(1978))によって、purR遺伝子のコーディング領域またはプロモーター領域等の塩基配列の中に1つまたは複数個の塩基の置換、欠失、挿入、付加または逆位を起こさせることにより、コードされるリプレッサーの活性を低下又は消失させるか、又はpurR遺伝子の転写を低下または消失させることにより、取得することができる。これらの態様の中では、制限酵素消化及び再結合によりpurR遺伝子の一定領域を欠失させる方法、又はpurR遺伝子へ他のDNA断片を挿入する方法が、確実性及び安定性の点から好ましい。
【0023】
purR遺伝子は、プリンオペロンを持つ微生物の染色体DNAから、公知のpurR遺伝子の塩基配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプライマーとするPCR法によって取得することができる。また、プリンオペロンを持つ微生物の染色体DNAライブラリーから、公知のpurR遺伝子の塩基配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプローブとするハイブリダイゼーション法によって、purR遺伝子を取得することができる。バチルス・ズブチリス168 Marburg株では、purR遺伝子の塩基配列が報告されている(GenBank accession No.D26185(コード領域は塩基番号118041〜118898)、DDBJ Accession No.Z99104(コード領域は塩基番号54439〜55296))。purR遺伝子の塩基配列及び同遺伝子によってコードされるアミノ酸配列を、配列表の配列番号1及び2に示す。PCRに用いるプライマーとしては、purR遺伝子を増幅することができるものであればよい。
【0024】
本発明に用いるpurRは、それぞれの破壊型遺伝子の作製に用いるため、必ずしも全長を含む必要はなく、遺伝子破壊を起こすのに必要な長さを有していればよい。また、各遺伝子の取得に用いる微生物は、同遺伝子が、遺伝子破壊株の創製に用いる微生物の相同遺伝子と相同組換えを起こす程度の相同性を有していれば特に制限されない。しかし、通常は、目的とするバチルス属細菌と同じ細菌に由来する遺伝子を用いることが好ましい。
【0025】
バチルス属細菌のpurR遺伝子と相同組換えを起こし得るDNAとしては、配列番号2に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含むアミノ酸配列をコードするDNAが挙げられる。前記「数個」は、例えば2〜50個、好ましくは、2〜30個、より好ましくは2〜10個である。
【0026】
前記バチルス属細菌のpurR遺伝子と相同組換えを起こし得るDNAとしては具体的には、配列番号1に示す塩基配列を有するDNAと、例えば70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上の相同性を有するDNAが挙げられる。より具体的には、配列番号1に示す塩基配列を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAが挙げられる。ストリンジェントな条件としては、60℃、1×SSC,0.1%SDS、好ましくは、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度で洗浄が行われる条件が挙げられる。
【0027】
前記マーカー遺伝子としては、スペクチノマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子等の薬剤耐性遺伝子が挙げられる。エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)由来のスペクチノマイシン耐性遺伝子は、バチルス ジェネチック ストック センター(BGSC)より市販されているエシェリヒア・コリ ECE101株から、プラスミドpDG1726を調製し、該プラスミドからカセットとして取り出すことにより、取得することができる。また、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)のエリスロマイシン耐性遺伝子は、バチルス ジェネチック ストック センター(BGSC)より市販されているエシェリヒア・コリECE91株から、プラスミドpDG646を調製し、該プラスミドからカセットとして取り出すことにより、取得することができる。さらに、カナマイシン耐性遺伝子は、ストレプトコッカス・フェカリス(Streptococcus faecalis)由来カナマイシン耐性遺伝子を含むpDG783プラスミド(バチルス・ジェネティック・ストック・センターより市販されているエシェリヒア・コリECE94株から調製できる)を鋳型とし、PCRを行うことによって、取得することができる。
【0028】
マーカー遺伝子として薬剤耐性遺伝子を用いる場合は、該遺伝子をプラスミド中のpurR遺伝子の適当な部位に挿入し、得られるプラスミドで微生物を形質転換し、薬剤耐性となった形質転換体を選択すれば、purR遺伝子破壊株が得られる。染色体上のpurR遺伝子が破壊されたことは、サザンブロッティングやPCR法により、染色体上のpurR遺伝子又はマーカー遺伝子を解析することによって、確認することができる。前記スペクチノマイシン耐性遺伝子、エリスロマイシン耐性遺伝子又はカナマイシン耐性遺伝子が染色体DNAに組み込まれたことの確認は、これらの遺伝子を増幅することができるプライマーを用いたPCRにより、行うことができる。
【0029】
このような方法で、プリンヌクレオシド生合成能が高められた株として、
バチルス・ズブチルス KMBS16(特開2004−242610)
バチルス・ズブチルス SB112K(特開平11−346778)
等が挙げられる。

(2)バチルス属に属する細菌において高浸透圧下での耐性を付与する方法
【0030】
本発明において「高浸透圧下での耐性を有するように改変された」は、(1)に記載するバチルス属に属し、プリンヌクレオシド生産能を有する親株から誘導された変異株であって、浸透圧を上昇させる物質を含有する培地中で培養したときに親株より生育が良好であるように改変された細菌を意味する。また親株は野生株でもよく、高浸透圧下での耐性を付与することにより、プリンヌクレオシド生産能が付与された株でもよい。
本発明において、「浸透圧を上昇させる物質」とは、培地中に添加することで、培地の浸透圧を高くする(高浸透圧)にする物質を意味し、塩化ナトリウム、マンニトール、ソルビトール等が挙げられる。
本発明において高浸透圧下とは、浸透圧が2osm/L以上、好ましくは 3 osm/L以上、さらに好ましくは4osm/L以上の条件を意味する。
【0031】
ここで、高浸透圧下での耐性を付与する為に用いられる培地は、固形培地が好ましい。すなわち、高浸透圧下で耐性を有しない親株は、浸透圧を上昇させる物質を含まない培地で培養した場合と比べて生育しないか、またか生育は遅くなる。具体的には例えば、固体培地で一定時間培養した場合、浸透圧を上昇させる物質を含む培地では、浸透圧を上昇させる物質を含まない培地と比べてコロニーの直径が小さくなる。これに対し、本発明のバチルス属細菌は、高浸透圧下での生育阻害が低減されるように改変されており、NaClまたはマンニトールまたはソルビトールといった浸透圧活性物質を含有する培地中で培養された場合、親株に比べてより良好な増殖を示し、非改変株が生育できない高浸透圧下の培地で生育できる、あるいはコロニーの直径が大きくなる。
たとえば、2.0MのNaClを含有するM9最少培地あるいは、2Mのソルビトールを含有するM9最少培地上で、34℃における40時間以内の培養でコロニーを形成することが可能な細菌は、高浸透圧による増殖阻害に対し耐性であるといえる。
【0032】
前記選択培地は、最小培地が好ましく、例えば以下の組成を有する培地が挙げられる。(グルコース20g/L、塩化アンモニウム5g/L、リン酸二水素カリウム4g/L、硫酸鉄0.01g/L、硫酸マンガン0.01g/L、クエン酸ナトリウム0.5g/L (サンブルック(Sambrook, J.)、フリッチ(Fritsch, E. F.)、およびマニアティス(Maniatis T.)著「Molecular clonig : a laboratory manual(分子クローニング:研究室マニュアル)」第2版、コールドスプリンブハーバーラボラトリープレス、ニューヨーク州、コールドスプリングハーバー、1989年参照)
【0033】
なお、本明細書において最小培地は必要に応じて生育に必須な栄養素を含んでいてもよい。例えば、イノシン生産菌の多くがアデニン要求株であり、培地には増殖に必要な程度のアデニンを含有させる。しかしアデニン量が多すぎると、ある種のプリンアナログでは、その生育阻害効果が減少するので、アデニン量は制限することが好ましい。具体的には0.1g/L程度の濃度が好ましい。
【0034】
本発明の細菌は、紫外線照射、X線照射、放射線照射、および化学的突然変異誘発物質による処理および、それに続くレプリカ法による選択のような、通常の突然変異誘発を用いた突然変異により取得されることが可能である。好ましい突然変異誘発物質は、N−ニトロ−N′−メチル−N−ニトロソグアニジン(以後NTGと呼ばれる)である。また、自然突然性変異によっても取得することが可能である。
【0035】
さらに、液体培地によっても、高浸透圧下で耐性を有するように改変されたことを確認できる。改変株および親株の細胞懸濁液を浸透圧を上昇させる物質を含有する液体培地へ各々接種され、細胞は最適増殖温度付近の、たとえば34℃の温度において、数時間〜1日、好ましくは約18時間培養する。改変株が、少なくとも対数増殖期または定常期の、少なくともいずれかにおいて、親株に比較してより高い培地の光学密度(OD)または濁度を示したなら、増殖が改善していると推察される。特に、もし改変株が、非改変株あるいは親株と比べ対数増殖期に達するか、またはもしODの最大値がより高ければ、増殖は改善していると推察される。前述の対数増殖期は、増殖曲線上で細胞数が対数的に増加する期間を指す。定常期は、対数増殖期が終わり、細胞分裂および増殖が停止し、細胞数の増加がもはや見られない期間を指す(生化学事典、第3版、東京化学同人)。
液体培地が使用される場合、固形培地が使用される場合に比べ、高浸透圧による増殖阻害における差異を検出することがより難しいことがある。本発明においては、液体培地を用いることでは高浸透圧による増殖阻害の差異が検出されない場合であっても、固形培地上で親株に比較してより好適な増殖を示すことが評価される限り、本発明の微生物に含まれる。
【0036】
さらに、高浸透圧による増殖阻害の程度はまた、突然変異株の懸濁液を、浸透圧活性物質を含有する固形培地、および浸透圧活性物質を含有しない固形培地上へ適用すること、および、同じ条件下での培養の後に現れるコロニーのサイズを、上述のように比較することにより評価されることも可能である。たとえば、バチルス・スブチリス168マルブルグ株に由来する、purR、purA、およびdeoDにおける三重欠損性株KMBS16を培地中の高い浸透圧において培養された場合、相対増殖度は、約18時間の培養時間では5%を超えないのに対し、実施例の節において得られた突然変異株は、約18時間の培養時間および同じ含有量の浸透圧活性物質により、30%を下回らない相対増殖度を示した。それゆえ、相対増殖度を指標として用いることにより、高浸透圧による増殖阻害は親株との比較なしに評価されることが可能である。しかしながら、高浸透圧による増殖阻害はまた、親株と突然変異株との相対増殖度を比較することによっても評価されることが可能である。
【0037】
上記手法によって得た代表的な実例は、バチルス・スブチリス51−53H(VKPM B−8997)、バチルス・アミロリケファシエンス23−68H(VKPM B−8996)である。本発明に使用される細菌は、高浸透圧に対する耐性と、より高い収量のプリンヌクレオシドを産生する能力とを除いて、親株と同じ細菌学的性質を有する。バチルス・スブチリス51−53Hおよびバチルス・アミロリケファシエンス23−68Hは、2005年3月10日に、ロシア・ナショナル・コレクション・オブ・インダストリアル・マイクロオーガニズムス(Russian National Collection of Industrial Microorganisms)(VKPM)(ロシア、モスクワ市117545、第1ドロジニーPr.1(Russia, 117545 Moscow, 1st Dorozhny proezd,1))に、各々アクセッション番号VKPM B−8997、およびVKPM B−8996で寄託されている。
(3)プリンヌクレオシド及びプリンヌクレオチドの製造法
【0038】
本発明のバチルス属細菌は、プリンヌクレオシドを効率よく生産する。従って、本発明のバチルス属細菌を好適な培地で培養することによって、細菌の細胞内または培地中にプリンヌクレオシドを生成蓄積せしめることができる。
【0039】
プリンヌクレオシド産生に使用されるべき培地は、炭素源、窒素源、無機イオン、および、必要な他の有機成分を含有する通常の培地でよい。炭素源としては、グルコース、ラクトース、ガラクトース、フルクトース、アラビノース、マルトース、キシロース、トレハロース、リボース、および、デンプンの加水分解物のような糖質;グリセロール、マンニトール、およびソルビトールのようなアルコール;グルコン酸、フマル酸、クエン酸、およびコハク酸のような有機酸、およびその他同様のものが使用可能である。窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、およびリン酸アンモニウムのような無機アンモニウム塩;ダイズ加水分解物のような有機窒素;アンモニアガス;アンモニア水およびその他同様のものが使用可能である。ビタミンB1のようなビタミン類、必要な物質、たとえば、アデニンおよびRNAのような核酸、または酵母抽出物およびその他同様のものが、微量の有機栄養素として適量含まれていることが望ましい。これら以外に、必要であれれば少量のリン酸カルシウム、硫酸マグネシウム、鉄イオン、マンガンイオン、およびその他同様のものが添加されてもよい。
【0040】
培養は、好ましくは好気的条件下に16〜72時間行なわれ、培養の間の培養温度は、30〜45℃以内に、pHは5〜8以内に調節される。pHは、無機または有機の、酸性またはアルカリ性物質、ならびにアンモニアガスの使用により調節されることが可能である。
【0041】
プリンヌクレオシドは、イオン交換樹脂および沈殿析出を利用する技術のような、通常の方法のいずれか、または任意の組合せにより、発酵液から回収されることが可能である。
また、本発明の微生物を用いて生産されたプリンヌクレオシドに、ホスホトランスフェラーゼを作用させることによってリン酸化し、プリンヌクレオチド(ヌクレオシド−5’−燐酸エステル)を生産することも可能である。(特開2000-295996)例えば、エシェリヒア・コリのイノシングアノシンキナーゼをコードする遺伝子を導入したエシェリヒア属細菌を用いるプリンヌクレオチドの製造法(WO91/08286号パンフレット)、エキシグオバクテリウム・アセチリカムのイノシングアノシンキナーゼをコードする遺伝子を導入したコリネバクテリウム・アンモニアゲネスを用いたプリンヌクレオチドの製造法(WO96/30501号パンフレット)を採用することができる。
【0042】
また、本発明の微生物を用いて生産されたプリンヌクレオシドに、ポリ燐酸、フェニル燐酸、カルバミル燐酸からなる群より選択された燐酸供与体と、ヌクレオシド−5’−燐酸エステルを生成する能力を有する微生物や、酸性フォスファターゼ(EC 3.1.3.2)を作用させることによって、プリンヌクレオチド(ヌクレオシド−5’−燐酸エステル)を生産することも可能である。ヌクレオシド−5’−燐酸エステルを生成する能力を有する微生物は、プリンヌクレオシドをプリンヌクレオチドに変換する能力を有するものであれば特に制限されないが、例えば、国際公開パンフレットWO9637603号に記載されたような微生物が挙げられる。
【0043】
また、特開平07−231793に開示されているようなエシェリヒア・ブラッタエ(Escherichia blattae)JCM 1650、セラチア・フィカリア(Serratia ficaria)ATCC 33105、クレブシエラ・プランティコラ(Klebsiella planticola)IFO 14939 (ATCC 33531)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)IFO 3318 (ATCC 8724)、クレブシエラ・テリゲナ(Klebsiella terrigena)IFO 14941 (ATCC 33257)、モルガネラ・モルガニ(Morganella morganii)IFO 3168、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)IFO 12010、エンテロバクター・アエロゲネス IFO 13534 (ATCC 13048)、クロモバクテリウム・フルヴィアティレ(Chromobacterium fluviatile)IAM 13652、クロモバクテリウム・ヴィオラセウム(Chromobacterium violaceum)IFO 12614、セデセア・ラパゲイ(Cedecea lapagei)JCM 1684、セデセア・ダヴィシエ(Cedecea davisiae)JCM 1685、セデセア・ネテリ(Cedecea neteri)JCM 5909などを用いることもできる。
【0044】
酸性フォスファターゼとしては、例えば、特開2002−000289に開示されているようなものを用いることができ、より好ましくはヌクレオシドに対する親和性が上昇した酸性フォスファターゼ(特開平10−201481参照)やヌクレオチダーゼ活性が低下した変異型酸性フォスファターゼ(WO9637603参照)、燐酸エステル加水分解活性が低下した変異型酸性フォスファターゼ(特開2001−245676)などを用いることができる。
【0045】
本発明の微生物を用いて生産されたプリンヌクレオシドを化学的にリン酸化することにより、プリンヌクレオチドを得ることも可能である。(Bulletin of the Chemical Society of Japan 42,3505)また、微生物が有しているATP再生系を利用して、本発明のXMP生産能を有する微生物とXMPアミナーゼ活性を共役させることによってGMPを得る方法、イノシンキナーゼを共役させることによってIMPを得る方法も採用できる(Biosci.Biotech.Biochem.,51,840(1997) 特開昭63-230094)
[実施例]
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
【実施例1】
【0046】
高浸透圧下で耐性のバチルス属細菌の取得
バチルス・スブチリスKMBS16(特開2004-242610号公報)の細胞を、200μg/mlのN−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)で15分間処理し、変異を誘発した。次いで処理した細胞を、1.8M、2.2M、または2.4MのNaClを含有する、L−ブロス(サンブルック(Sambrook, J.)、フリッチ(Fritsch, E. F.)、およびマニアティス(Maniatis T.)著「Molecular cloning : a laboratory manual(分子クローニング:研究室マニュアル)」第2版、コールドスプリンブハーバーラボラトリープレス、ニューヨーク州、コールドスプリングハーバー、1989年)寒天プレート(寒天20g/lを含む)上にプレートした。接種したプレートは、34℃において5日間インキュベートされた。現れた突然変異体のコロニーの中から、バチルス・スブチリス株51−53H(VKPM B−8997)が選択された。
バチルス・スブチリス51−53H株と親株であるKMBS16株の塩化ナトリウムに対する耐性を、以下の方法によって評価した。異なる塩化ナトリウム濃度を添加することによって調製された、50mg/lのトリプトファンを含有するM9グルコース最少培地3mlを含有する試験管に微生物を接種し、L−ブロス中で18時間、振盪により増殖した。約10細胞/mlの試験株が接種され、振盪培養は37℃において18時間行なわれた。結果として得られたブロスは水で適宜希釈され、540nmにおける希釈物の吸光度を測定した(SCOD540)。NaClを含まないM9培地上での同じ株の増殖度(D540)を100として、NaCl含有培地上での相対増殖は、(SCOD540)/(D540)×100によって示した。(表1)
【0047】
【表1】

【0048】
表1から、バチルス・スブチリス51−53Hが、高濃度の塩化ナトリウムに対しより耐性があること:NaClの高い濃度でも親株と比べて増殖可能であることが分かった。
【実施例2】
【0049】
高浸透圧耐性株のイノシン生産の確認
バチルス・スブチリス51−53H株、および親株バチルス・スブチリスKMBS16は、各々34℃において20時間にわたり、18時間の通気を用いて、L−ブロスにおいて培養された。次いで、0.3mlの得られた培養物を、20x200mmの試験管内で、3mlの実施例2の発酵培地中へ接種し、34℃で72時間、ロータリーシェーカーを用いて培養された。
【0050】
培養の後、培地中に蓄積されたイノシンの量は、HPLCにより測定された。培地の試料(500μl)は15,000rpmで5分間遠心分離され、上清はHOで100倍希釈され、HPLCによって分析された。
分析条件
カラム:Luna C18(2)2503mm,5u(フェノメネックス(Phenomenex)、米国)
緩衝液:2%COH、0.8%(v/v)トリエチルアミン、0.55(v/v)酢酸(氷)、pH4.5
温度:30℃
流速:0.3ml/分
検出:UV250nm
保持時間(分)
キサントシン 13.7
イノシン 9.6
ヒポキサンチン 5.2
グアノシン 11.4
アデノシン 28.2
結果を、表2に示した。

表2に示されたように、バチルス・スブチリス株51−53Hは親株よりも多量のイノシンを蓄積した。
【0051】
【表2】

【実施例3】
【0052】
NaClに耐性のバチルス・アミロリケファシエンス株の取得と評価
バチルス・アミロリケファシエンスAJ1991(ATCC19222)の細胞を、200μg/mlのNTGで処理し、2M、2.2M、または2.4MのNaClを含有するLB寒天プレート上にプレートした。接種されたプレートは、34℃で5日間インキュベートされた。現れた突然変異体のコロニーの中から、バチルス・アミロリケファシエンス株23−68H(VKPM B−8996)が選択された。
【0053】
バチルス・アミロリケファシエンス株23−68Hおよび親株、バチルス・アミロリケファシエンスAJ1991は、各々34℃において18時間、L−ブロス中で培養された。次いで、0.3mlの得られた培養物は、20x200mm試験管内で、3mlの発酵培地中に接種され、34℃で72時間、ロータリーシェーカーを用いて培養された。
発酵培地の組成:(g/l)
グルコース 80.0
KHPO 1.0
MgSO 0.4
FeSO7H 0.01
MnSO5H 0.01
NHCl 15.0
アデニン 0.3
大豆加水分解物(窒素量) 0.8
CaCO 25.0
培養の後、培地中に蓄積されたイノシンおよびグアノシンの量は、上記のようにHPLCによって測定された。結果は表3に示した。
【0054】
【表3】

【0055】
表に示されたように、高浸透圧に耐性のバチルス・アミロリケファシエンス23−68H株は、親株よりもより多くのイノシンおよびグアノシンを蓄積した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高浸透圧下で耐性を有するように改変され、かつプリンヌクレオシド生産能を有するバチルス属細菌。
【請求項2】
バチルス属に属する親株から誘導された改変株であって、浸透圧を上昇させる物質を含有する培地中で培養したときに、親株よりも生育が良好であるように改変されたことを特徴とする、請求項1の細菌。
【請求項3】
前期浸透圧を上昇させる物質が塩化ナトリウムである、請求項1または2の細菌。
【請求項4】
前記培地が2.0Mの塩化ナトリウムを含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の細菌。
【請求項5】
前記バチルス属細菌が、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)または、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)から選択される細菌である、請求項1から4のいずか一項に記載の細菌。
【請求項6】
前記プリンヌクレオシドが、イノシン、キサントシン、アデノシン、およびグアノシンからなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の細菌。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のバチルス属細菌を培地で培養し、同細菌または培地中にプリンヌクレオシドを蓄積せしめ、同細胞又は培地からプリンヌクレオシドを回収することを特徴とする、プリンヌクレオシドの製造法。
【請求項8】
前記プリンヌクレオシドが、イノシン、キサントシン、アデノシン、およびグアノシンからなる群より選ばれる、請求項7の方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の方法によりプリンヌクレオシドを製造し、該プリンヌクレオシドに、ポリ燐酸、フェニル燐酸、及びカルバミル燐酸からなる群より選択される燐酸供与体と、ヌクレオシド−5’−燐酸エステルを生成する能力を有する微生物又は酸性フォスファターゼを作用させて、プリンヌクレオチドを生成せしめ、該プリンヌクレオチドを採取することを特徴とするプリンヌクレオチドの製造法。
【請求項10】
前記プリンヌクレオチドが、5′−イノシン酸、5′−キサンチル酸、5′−グアニル酸、5′−アデニル酸からなる群より選択される、請求項9に記載の方法。

【公開番号】特開2007−75109(P2007−75109A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243926(P2006−243926)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】