説明

プリーツが形成された布帛及びその製造方法

【課題】ハンドプリーツ加工に最適な剛性を有し、1枚の型紙を用いてハンドプリーツ加工を行えるので複雑なデザインを容易に形成でき、さらに形態維持性に優れるプリーツが形成された積層粗目布帛とその製造方法を提供する。
【解決手段】第1の粗目布帛1と第2の粗目布帛2との間にシート状の熱融着性合成樹脂3を挿入し、加熱加圧することで積層粗目布帛を作成する。次に、積層粗目布帛を1枚の型紙と共に折り曲げ加工することによりプリーツを付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剛性が不十分で2枚の型紙を使用しないとハンドプリーツ加工できない粗目布帛を積層して接着させた積層粗目布帛とすることにより1枚のみの型紙と共に折り込んでハンドプリーツ加工できる最適な剛性を付与し、1枚の型紙でプリーツを形成させた積層粗目布帛及びプリーツを形成させた積層粗目布帛の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「プリーツ加工」とは布地にプリーツ(折り目)を付与する加工であり、アイロンや寝押しによる一時的なプリーツ付けは古くから行われている。一方、形態維持性に優れ、洗濯等により容易にプリーツが崩れないという特性を有するプリーツの加工方法の開発は、プリーツを形成させる布地の開発と密接な関係があり、1948年頃に熱可塑性に優れたアセテート繊維の布地が出現したことにより形態維持性に優れたプリーツ加工品が提供され、その後、アセテート繊維の布地より強くて、より安価なポリエステル繊維の布地が開発されたことにより、形態維持性に優れたプリーツ加工製品が安価に提供されるようになって、衣料品業界にプリーツ加工製品が定着したという歴史がある。
【0003】
現在では、様々な種類の布地が開発されると共にプリーツ加工方法も種々存在し、その中の一つに「ハンドプリーツ加工」がある。
【0004】
周知のとおり、ハンドプリーツ加工は、2枚の型紙でサンドイッチ状に布地を挟んで折り込んだ後、プリーツ加工を施すという工程がとられている。これは、布地に剛性がなく、1枚の型紙では折り込む際に布地が型紙から浮き上がり、折り込めない部分が発生して布地にプリーツが形成されない部分ができるためである。
【0005】
従って、本発明者が知る限り、剛性がない布地にハンドプリーツ加工によってプリーツを形成する際には必ず2枚の型紙が使用されているのが現状である。
【0006】
次に本発明に関する先行技術文献を挙げる。
【0007】
特許文献1には、離型紙上に熱融着性合成樹脂系接着剤を印捺した上に、第1、第2の各粗目薄布を該離型紙に積層した状態で、接着剤を融解軟化させて、第1の粗目薄布の布目を通して第2の粗目薄布目内に流動させ接着させた粗目薄布が記載されている。当該積層された粗目薄布であれば、2枚の粗目薄布が積層され合成樹脂系接着剤によって一体化しているため、粗目薄布1枚の時に比べて十分な剛性が付与されている。
【0008】
特許文献2には繊維等のシート状物の裏面に合成樹脂類等の溶液を含浸、吹付、塗工することで剛性を付与して型押皺付加工をすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭63−85183号公報
【特許文献2】特開平3−119172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ハンドプリーツ加工では前記のとおり、一つのデザインに対して2枚の型紙を必要とするため、2枚の型紙を寸分違わず作成しなければならず、熟練した技術を要する。上記の理由から、複雑なデザインのプリーツの型紙を作成することは大変困難であり、2枚の型紙では形成できないデザインも存在する。
【0011】
また、デザイン上プリーツの折り目を丸くする際には、型紙の折り目が鋭角にならないように、型紙に切り込みを入れる手法があるが、2枚の型紙であると、2枚とも同じ個所に切り込みを入れなければならず、より熟練した技術が必要とされる。
【0012】
前記のとおり、型紙の作成には熟練技術を必要とするため型紙製作費用は高額である。従来のように一つのデザインに対して2枚必要な場合と、1枚の型紙で足りる場合とを比較すると、型紙に必要な費用は単純計算で2倍ということになる。
【0013】
プリーツを形成させる布の剛性については、特許文献1に記載の方法では、プリーツ形成に十分な剛性はあるが、第1の粗目薄布の布目を通して第2の粗目薄布目内に接着剤を流し込んで積層しているため、必然的に第1の粗目薄布の表面に接着剤が残留しており、該積層された粗目薄布を型紙に折り込んでプリーツ加工を行えば、粗目薄布と型紙が接着して剥がれなくなる虞があるため、型紙を使用するハンドプリーツ加工に使用することはできない。
【0014】
特許文献2には、繊維等のシート状物の裏面に合成樹脂類等の溶液を含浸、吹付、塗工することで剛性を付与したビニルレザーや合成皮革等の加工シート状物が記載されている。しかし、光沢を有する等の意匠性に富んだ粗目布帛に対して合成樹脂類等の溶液を含浸、吹付、塗工を行うと、合成樹脂類が布帛の目から浸出するため、布帛の柔らかさが損なわれて手触りがごわついたものとなり、また、光沢等の意匠性が損なわれると共に、型紙に折り込んでハンドプリーツ加工を行う場合は、型紙と接着して剥がれなくなる虞がある。
【0015】
さらに、特許文献2に記載の発明では自然な歪(皺)を形成するために行われるものであってそれぞれの繊維等シートに形成される歪(皺)は異なり、同じ歪(皺)を有する繊維等シートを大量に製造することはできない。
【0016】
本発明は前記諸問題に鑑みてなされたものであり、剛性が不十分で2枚の型紙を使用しないとハンドプリーツ加工によってプリーツを形成することが極めて困難な粗目布帛を積層してシート状の熱融着性樹脂によって接着させた積層粗目布帛とすることで、積層粗目布帛の表面に大量の接着剤が残留することがなく、手触りや意匠性を損なわずに剛性を付与し、この剛性のため型紙に折り込む際に布帛が浮きあがることがなく1枚の型紙を用いてハンドプリーツ加工を行うことができるため、複雑なプリーツのデザインであっても容易に形成することができ、さらに、加工されたプリーツの形態維持性に優れる積層粗目布帛及び該積層粗目布帛の製造方法を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1に記載の発明は、第1の粗目布帛と第2の粗目布帛との間にシート状の熱融着性合成樹脂を積層して加熱加圧にて接着した積層粗目布帛を、1枚の型紙と共に折り込みプリーツ状に折り曲げ加工することによってプリーツが形成されていることを特徴とする積層粗目布帛に関する。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のプリーツ加工をするための第1の粗目布帛と第2の粗目布帛との間にシート状の熱融着性合成樹脂を積層して加熱加圧にて接着した積層粗目布帛に関する。
【0019】
請求項3に記載の発明は、積層する第1及び第2の各粗目布帛がオーガンジー(organdie)である請求項1または2に記載の積層粗目布帛に関する。
【0020】
請求項4に記載の発明は、少なくとも一部の布帛が請求項1乃至3いずれか記載の積層粗目布帛であるスカーフ、マフラー、コサージュ、帽子、リボン、ベルト、手袋、袋物、カーテン、壁紙、文具から選択される繊維製品に関する。
【0021】
請求項5に記載の発明は、第1の粗目布帛と第2の粗目布帛との間にシート状の熱融着性合成樹脂を積層した後に加熱加圧にて接着して積層粗目布帛を作る第1の工程と、前記積層粗目布帛を1枚の型紙と共に折り込む第2の工程と、1枚の型紙と共に折り込まれた前記積層粗目布帛をプリーツ状に折り曲げ加工する第3の工程を含むことを特徴とするプリーツが形成された積層粗目布帛の製造方法に関する。
【0022】
請求項6に記載の発明は、前記第3の工程が、1枚の型紙と共に折り込まれた前記積層粗目布帛を、処理釜に投入して該処理釜内を真空雰囲気と成した後に蒸気を供給して加熱処理し、続いて真空乾燥する工程であることを特徴とする請求項5記載のプリーツが形成された積層粗目布帛の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に係る発明によれば、第1の粗目布帛と第2の粗目布帛との間にシート状の熱融着性合成樹脂を積層して加熱加圧にて接着した積層粗目布帛であるため、粗目布帛の表面に大量の接着剤が残留することがないので粗目布帛の手触りが損なわれず、2枚の粗目布帛を積層することで、粗目布帛にハンドプリーツ加工に最適な剛性を与えることができる。この剛性により1枚の型紙であっても、型紙に折り込む際に上から押さえつけずとも布が浮き上がることがなくプリーツ状に折り曲げ加工することができ、積層粗目布帛全体に形態維持性に優れたプリーツが形成された積層粗目布帛となる。
【0024】
さらに、型紙が1枚であるので、型紙が2枚の場合と比べてプリーツのデザインが容易となる。また、デザイン上プリーツの折り目を丸くするために型紙の折り目が鋭角にならないように切り込みを入れる場合も、型紙が2枚の時と比べて容易になり、型紙を2枚使用する従来のハンドプリーツ加工では、高度な技術を必要としたデザインのプリーツであっても容易に形成させることができると共に、2枚の型紙であると不可能なデザインのプリーツを形成させることができるため、格段に多くのデザインのプリーツが形成された積層粗目布帛とすることができる。
【0025】
請求項2に係る発明によれば、積層粗目布帛の表面に大量の接着剤が残留することないため、手触りや粗目布帛自体の意匠性が損なわれず、1枚の型紙でプリーツ加工するために最適な剛性を有する積層粗目布帛となる。
【0026】
請求項3に係る発明によれば、積層する第1及び第2の各粗目布帛がオーガンジー(organdie)であることにより、積層粗目布帛にモアレ効果によるモアレ調模様を付加することができる。
【0027】
請求項4に係る発明によれば、スカーフ、マフラー、コサージュ、帽子、リボン、ベルト、手袋、袋物、カーテン、壁紙、文具から選択される繊維製品の少なくとも一部の布帛が請求項1乃至3いずれかに記載の積層粗目布帛であるため、デザイン性及び形態維持性に富んだ繊維製品を提供できる。
【0028】
請求項5に記載の発明は、第1の粗目布帛と第2の粗目布帛との間にシート状の熱融着性合成樹脂を積層した後に加熱加圧にて接着して積層粗目布帛を作る第1の工程と、前記積層粗目布帛を1枚の型紙と共に折り込む第2の工程と、1枚の型紙と共に折り込まれた前記積層粗目布帛をプリーツ状に折り曲げ加工する第3の工程を含むことを特徴とするプリーツが形成された積層粗目布帛の製造方法であるので、デザイン性に富み、形態維持性に優れたプリーツが形成された積層粗目布帛を製造することができる。
【0029】
請求項6に係る発明によれば、前記第3の工程が、1枚の型紙と共に折り込まれた前記積層粗目布帛を、処理釜に投入して該処理釜内を真空雰囲気と成した後に蒸気を供給して加熱処理し、続いて真空乾燥する工程であることにより、一枚の型紙とともに折り込んだ積層粗目布帛の繊維に高温の蒸気が浸透しやすくなり、積層粗目布帛に残留する接着剤を融解して繊維密度をより高くすることができ、その後真空乾燥することで繊維密度に強度を与え、形態維持性に優れたプリーツが形成された積層粗目布帛を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る積層粗目布帛の拡大断面図である。
【図2】粗目布帛を積層してローラーで熱融着させている説明図である。
【図3】ハンドプリーツ法を比較した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、剛性がないため2枚の型紙を用いなければハンドプリーツ加工によってプリーツを形成させることが極めて困難であるため、繊維製品等として使用する際にデザインが限定されてしまっていた粗目布帛を、積層してシート状の熱融着性合成樹脂によって接着させた積層粗目布帛とすることで、接着剤が表面に大量に残留しないため手触りや粗目布帛自体の意匠性を損なわずハンドプリーツ加工に最適な剛性を付与することができ、適度な剛性があるため、型紙に折り込む際に押さえつけずとも布帛が浮きあがることがなく、1枚の型紙のみでハンドプリーツ加工を行うことができるのでデザイン性に富み、形態維持性に優れるプリーツを形成した積層粗目布帛及び該積層粗目布帛の製造方法である。
以下、本発明について詳しく説明する。
【0032】
(材料)
本発明の粗目布帛とは、天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維、無機繊維、その他の繊維よりなる細糸を縦糸、横糸に使用した薄地の織物、編物、不織布であって、肉眼で透視可能な目あきを有するものである。
【0033】
天然繊維にはウール、モヘヤ、カシミヤ、アルパカ、アンゴラ、キャメル、ビキューナ、シルク等の動物性繊維及び綿、カポック、亜麻(リネン)、苧麻(ラミー)、大麻(ヘンプ)、黄麻(ジュード)、マニラ麻、サイザル麻、ニュージーランド麻、羅布麻(ロープマ)等の植物繊維が含まれる。
再生繊維の例としてはレーヨン、キュプラ、ポリノジック、リオセル、カゼイン繊維、落花生タンパク繊維、とうもろこしタンパク繊維、大豆タンパク繊維、再生絹糸、アルギン繊維、キチン繊維、マンナン繊維を挙げることができる。
半合成繊維の例としてはアセテート、ジアセテート、トリアセテート、酸化アセテート、プロミックスを挙げることができる。
合成繊維の例としてはナイロン、ナイロン6、ナイロン66、芳香族ナイロン、アラミド、ビニロン、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアクリロニトリル繊維、アクリルモダクリル繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリウレタン繊維、ベンゾエート、ポリクラール、アラミド、フッ素系、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリイミドを挙げることができる。
無機繊維の例としては、金糸、銀糸、耐熱合金繊維、テンセル、リヨセルを挙げることができる。
【0034】
本発明の粗目布帛は肉眼で透視可能な目あきを有しているものであればよいが、繊維の直径は、好ましくは10〜200μm、より好ましくは20〜100μmである。目付は、好ましくは10〜50g/平方メートル、より好ましくは20〜40g/平方メートルである。打ち込み本数は、好ましくは30×30本/インチ〜150×150本/インチ、より好ましくは50×50本/インチ〜100×100本/インチである。
繊維の直径が10マイクロメートル未満、目付が10g/平方メートル未満、打ち込み本数が30×30本/インチ未満であると、積層しても適度な剛性が得られず、繊維の直径が200μより太く、目付が50g/平方メートルより大きく、打ち込み本数が150×150本/インチより大きければ、いずれも目が詰まって見えるのでデザイン上このましくないからである。
【0035】
本発明の粗目布帛として、オーガンジーを好適に用いることができる。
オーガンジーとは、JIS繊維用語によると「経糸、横糸に細糸を使用した平織等の目の透いた手触りのこわい薄地織物」と示され、一般に経糸、横糸に無撚りまたは片撚りの糸を使用した薄地平組織の生織物で精練しないためやや硬い感触と光沢を特徴とするものまたは軽く精練した後に織り上げたものである。
【0036】
本発明の積層する第1と第2の粗目布帛は、同一又は異なった粗目布帛を用いることができる。同一の粗目布帛を用いた場合には、モアレ効果によりモアレ調模様を積層粗目布帛に付加することができる。異なった粗目布帛を用いた時は表面と裏面の色彩や模様等が異なった積層粗目布帛を製造することができるため、多種多様の積層粗目布帛を製造することができ、繊維製品等に好適に用いることができる。
【0037】
本発明の第1と第2の粗目布帛の間に積層する熱融着性合成樹脂系接着剤はシート状のものであれば特に限定されず、ポリオレフィン系樹脂系接着剤、酢酸ビニル系樹脂系接着剤、ポリエステル系樹脂系接着剤、スチレン系樹脂系接着剤、ポリウレタン系樹脂系接着剤、アクリル系樹脂系接着剤、ポリアミド系樹脂系接着剤が例として挙げられる。中でもポリアミド系樹脂系接着剤、ポリエステル樹脂系接着剤、ポリオレフィン樹脂系接着剤を好適に用いることができる。
【0038】
(積層粗目布帛の製造方法)
積層粗目布帛を加熱加圧にて接着する方法としては特に限定されないが、ローラープレスによって接着する方法が好ましい。接着に要する時間が短くて済むため、作業効率が良いからである。
【0039】
まず、第1の粗目布帛(1)と第2の粗目布帛(2)の間に熱融着性合成樹脂系接着剤のシート(以下熱融着用シートと称する)(3)を積層する。その後、積層した粗目布帛(4)の上下を耐熱フィルム(8)で挟み加熱ロール(6)及び加圧ロール(5)の間に通して熱接着加工を施す。
【0040】
上下を耐熱フィルム(8)で挟むことで、積層粗目布帛(4)の布目から浸出した接着剤が再度粗目布帛の繊維に浸透し、積層粗目布帛(4)に剛性を与えることができ、また、一工程で熱接着加工を行うことができる。さらに、加熱ロール(6)及び加圧ロール(5)に接着剤が溶着することがないため、連続して熱接着加工を施すことができ、耐熱シートは再利用可能であるため廃材を出すこともない。
【0041】
加熱ロール(6)の温度は、積層する粗目布帛及び熱融着シートの組み合わせにより適宜調整することができるが、120℃〜180℃に設定して熱融着加工を実施することが好ましい。120℃より低ければ熱融着シートが十分に融解しない虞があり、180℃より高ければ接着剤が硬化する虞があるからである。
【0042】
積層した粗目布帛を加熱ロール(6)と加圧ロール(5)の間に通す速度は積層する粗目布帛及び熱融着シートの組み合わせにより適宜調整することができるが、1m/min〜3m/minで実施することが好ましい。3m/minより早ければ、熱融着シートが十分に融解しない虞があり、1m/minより遅くても接着効果は変わらないからである。
【0043】
加熱ロール(6)と加圧ロール(5)間の線圧は積層する粗目布帛及び熱融着シートの組み合わせにより適宜調整することができるが、1〜10kg/cmであることが好ましい。1kg/cmより小さければ接着が弱く剥がれる虞があり、10kg/cmより大きな線圧であっても接着効果は変わらないからである。
【0044】
(プリーツ加工方法)
一般的なハンドプリーツ加工方法と本発明に係るハンドプリーツ加工方法を比較して説明する。
一般的なハンドプリーツ加工方法は、所望のデザインの型紙(10(a))を広げその上にプリーツを形成させる布地(11)を配置する。さらにこの布地(11)の上に、もう一枚の型紙(10(b))をのせて押さえつけてから折り込んだ後、プリーツ加工を行う。(図3(a)参照)。
【0045】
一方、本発明に係るハンドプリーツ法では、熱融着シートによって接着した前記の積層粗目布帛(4)を所望のデザインの型紙(10)の上に配置し、押さえつけずにそのまま折り込んだ後、プリーツ加工を行うため、型紙1枚でプリーツを形成できる点で一般的なハンドプリーツ加工方法とは異なるものである。これは前記の積層粗目布帛にプリーツ加工に最適な剛性が付与されていることによって初めて可能となる(図3(b)参照)。
【0046】
プリーツを定着させる加工方法としては、形態維持性に優れるプリーツの加工方法であれば限定されないが、処理釜を用いる方法が好ましい。
処理釜とは釜内に蒸気を供給する蒸気発生装置及び釜内を真空減圧する真空ポンプを装備してなる釜のことをいう。
【0047】
処理釜を用いた方法では、前記の型紙1枚と共に折り込んで固定した積層粗目布帛に、水滴が直接かからず蒸気がかかるようにするために紙又は布のカバーをかけてから、処理釜内に投入し、その後、処理釜内を真空減圧して真空雰囲気とする。次に真空雰囲気の処理釜内に高温の蒸気を供給して設定温度まで加熱することで蒸煮する。この真空雰囲気とした後に蒸気を供給して蒸煮する工程を1回又は2回〜3回繰り返し、最後に処理釜内を真空減圧して真空乾燥を行う。
【0048】
真空雰囲気とした後に蒸気を供給して蒸煮することにより、蒸気が繊維に浸透しやすくなる。また、蒸煮によって積層粗目布帛に残留している接着剤が融解して、積層粗目布帛の繊維密度がより高くなりその後、真空減圧することで、更に繊維の密度を高めることになるので形態維持性が増したプリーツが形成される。さらには、真空減圧の工程により積層粗目布帛から水分が十分に取り除かれるため、処理釜から積層粗目布帛を取り出す際に水分は残らず、すぐに裁断・縫製などを行うことができる。
【0049】
プリーツが形成された積層粗目布帛は裁断・縫製することでスカーフ、マフラー、コサージュ、帽子、リボン、ベルト、手袋、袋物、カーテン、壁紙、文具等の繊維製品を製造できるし、一部に本発明に係る積層粗目布帛を有する上記の繊維製品とすることもできる。
なお、本発明に係る積層粗目布帛は裁断しても裁ち端から繊維の糸がほどけることがないため裁断したままの状態で繊維製品として使用することができる。
【0050】
また、プリーツを形成する前の積層粗目布帛を予め繊維製品等に加工した後、1枚の型紙に折り込んでプリーツ加工を施してもよい。これによって、プリーツを形成した布帛から製造した繊維製品とは異なるデザインのプリーツが形成された粗目布帛の繊維製品を製造することができる。
【実施例】
【0051】
(実施例1:オーガンジー)
2枚のオーガンジー(商品名:ヌーベルマリエ、品番5580、目付30g/平方メートル、打ち込み本数99×92本/インチ:株式会社サンコロナ製)の間にポリアミド系樹脂シート(商品名:ノーブン:東洋化成工業株式会社製)を積層し、加熱温度150℃、線圧5kg/cm、速度1.5m/minで接着した。その後、型紙の上に前記オーガンジーを積層して接着した布帛を配置して、1枚の型紙と共に折り込み、折り込んだ状態を固定した後、布製のカバーをかけて処理釜に入れ、処理釜内を真空状態にして蒸気をかけて90℃にした。その後、再度真空状態とし、蒸気をかけて90℃とし、最後に真空状態として乾燥させてプリーツが形成されたオーガンジーの積層粗目布帛を得た。
作成されたオーガンジーの積層粗目布帛は手触りもよく光沢性も失われていなないまま、プリーツが形成されていた。
【0052】
(実施例2:オーガンジー)
2枚のオーガンジー(商品名:ヌーベルマリエ、品番2440、目付25g/平方メートル、打ち込み本数99×92本/インチ:株式会社サンコロナ製)の間にポリアミド系樹脂シート(商品名:ノーブン:東洋化成工業株式会社製)を積層し、加熱温度150℃、線圧5kg/cm、速度1.5m/minで接着した。
プリーツ加工の方法は実施例1と同じ方法で行った。
作成されたオーガンジーの積層粗目布帛は手触りもよく光沢性も失われていないままプリーツが形成された。
【0053】
(実施例3:麻の粗目布帛)
2枚の麻の布帛(滋賀麻工業株式会社製)の間にポリアミド系樹脂シート(商品名:ノーブン:東洋化成工業株式会社製)を積層し、加熱温度150℃、線圧5kg/cm、速度1.5m/minで接着した。
プリーツ加工の方法は実施例1と同じ方法で行った。
作成された麻の積層粗目布帛は麻の手触りは残ったままでプリーツが形成されていた。
【0054】
(実施例4:オーガンジーと麻)
オーガンジ−(商品名:ヌーベルマリエ、:株式会社サンコロナ製)と麻の布帛(滋賀麻工業株式会社製)の間にポリアミド系樹脂シート(商品名:ノーブン:東洋化成工業株式会社製)を積層し、加熱温度150℃、線圧5kg/cm、速度1.5m/minで接着した。
プリーツ加工の方法は実施例1と同じ方法で行った。
作成されたオーガンジーと麻の積層粗目布帛は手触りもよくオーガンジーの光沢性と麻の手触りは残ったままでプリーツが形成されていた。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、ハンドプリーツ加工により、粗目布帛の手触りや意匠性を損なわずに、豊富なデザインで、形態維持性に優れたプリーツが形成された積層粗目布帛及び該積層粗目布帛の製造方法を提供することができる。従って、本発明の産業利用性は大きいといえる。
【符号の説明】
【0056】
1 第1の粗目布帛
2 第2の粗目布帛
3 シート状の熱融着性合成樹脂
4 本発明に係る積層粗目布帛
5 加圧ロール
6 加熱ロール
7 ヒーター
8 耐熱フィルム
10 ハンドプリーツ用型紙
10(a) 2枚組の型紙の内の一つ
10(b) 2枚組の型紙の内の一つ
11 布帛



【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の粗目布帛と第2の粗目布帛との間にシート状の熱融着性合成樹脂を積層して加熱加圧にて接着した積層粗目布帛を、1枚の型紙と共に折り込みプリーツ状に折り曲げ加工することによってプリーツが形成されていることを特徴とする積層粗目布帛。
【請求項2】
請求項1に記載のプリーツ加工をするための第1の粗目布帛と第2の粗目布帛との間にシート状の熱融着性合成樹脂を積層して加熱加圧にて接着した積層粗目布帛。
【請求項3】
積層する第1及び第2の各粗目布帛がオーガンジー(organdie)である請求項1または2に記載の積層粗目布帛。
【請求項4】
少なくとも一部の布帛が請求項1乃至3いずれか記載の積層粗目布帛であるスカーフ、マフラー、コサージュ、帽子、リボン、ベルト、手袋、袋物、カーテン、壁紙、文具から選択される繊維製品。
【請求項5】
第1の粗目布帛と第2の粗目布帛との間にシート状の熱融着性合成樹脂を積層した後に加熱加圧にて接着して積層粗目布帛を作る第1の工程と、前記積層粗目布帛を1枚の型紙と共に折り込む第2の工程と、1枚の型紙と共に折り込まれた前記積層粗目布帛をプリーツ状に折り曲げ加工する第3の工程を含むことを特徴とするプリーツが形成された積層粗目布帛の製造方法。
【請求項6】
前記第3の工程が、1枚の型紙と共に折り込まれた前記積層粗目布帛を、処理釜に投入して該処理釜内を真空雰囲気と成した後に蒸気を供給して加熱処理し、続いて真空乾燥する工程であることを特徴とする請求項5記載のプリーツが形成された積層粗目布帛の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−19080(P2013−19080A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154772(P2011−154772)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(511171143)株式会社三協 (1)
【Fターム(参考)】