説明

プレキャストコンクリート用型枠及びプレキャストコンクリート部材の製造方法

【課題】 プレキャストコンクリート部材を製造するにあたり、作業量とコストとを低減することができる反復利用可能な軽量の型枠を提供する。
【解決手段】 打設されるコンクリートに面するせき板21と、せき板21の背面に取り付けられ、枠体に保持されせき板21を面支持する格子状リブを有する格子状リブ枠22と、格子状リブ枠22の背面に取り付けられた保温板材23とで構成された側面型枠1を用いて、ベッド上11に、製造予定のプレキャストコンクリート部材に倣った側面型枠1を組み立て、ベッド11に組み立てられた型枠の下端を固定する。組み立てられた状態の側面型枠1の周囲を締付ベルト16で拘束し、型枠組立状態の形状を保持する。型枠内にコンクリートを打設し、コンクリート硬化後に、側面型枠1を脱型する。また、締付ベルト16の型枠締め付け力を増すために、型枠押さえ材18を用いることも好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプレキャストコンクリート用型枠及びプレキャストコンクリート部材の製造方法に係り、特に軽量化した型枠及びその型枠を用いたプレキャストコンクリート部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、柱や梁等のプレキャストコンクリート部材を製造するに当たり、型枠は繰り返し利用されることから、耐久性を有する鋼製型枠が用いられている。鋼製型枠は、耐久性で優れる上、寸法精度が高く、規格製品を連結して使用することができる等の利便性を有している。しかし、大型型枠として用いる場合は重量が重くなり、組立や脱型、運搬にクレーン等の重機を必要とし作業が大掛かりなものとなりやすい。また、規格品の鋼製型枠で大型型枠を組み立てるためには、多数の連結ボルトや連結治具を用いなければならず、多大な労力を必要とする。さらに、鋼製型枠は木製型枠等と比べて高価であり、プレキャストコンクリート部材の製造コストが高くなりやすい。
【0003】
先行技術として、外側に開いた傾斜面を有した側枠をベッド上に設置したプレキャストコンクリート用型枠が特許文献1に開示されている。このプレキャスト用型枠を用いると、プレキャストコンクリート部材の脱型時において、側枠を取り外す必要がないため作業量を大幅に低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−50656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたプレキャストコンクリート用型枠は、側枠が斜めに傾斜しているため、製造されるプレキャストコンクリート部材も斜めに形成された部分(テーパー部)を有することとなる。ところが、一般に製造される断面形状が長方形の柱、梁には、特許文献1に開示されたプレキャストコンクリート用型枠を適用することは難しい。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、柱や梁等のプレキャストコンクリート部材を製造するにあたり、作業量とコストとを低減することができるプレキャストコンクリート用型枠及びプレキャストコンクリート部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、第1の発明は、打設されるコンクリートに面するせき板と、該せき板の背面に取り付けられ、枠体に保持され前記せき板を面支持する格子状リブを有する格子状リブ枠と、該格子状リブ枠の背面に取り付けられた保温板材とを備え、製造されるプレキャストコンクリート部材の側面型枠として用いられるプレキャストコンクリート用型枠とした。
【0008】
第2の発明は、打設されるプレキャストコンクリート部材の側面型枠のうち、隣接する2面の側面型枠が請求項1に記載されたプレキャストコンクリート用型枠であって、側面型枠のうちの他の2面の側面型枠が、重量型枠部材であり、前記各側面型枠が組み立てられるプレキャストコンクリート用型枠とした。
【0009】
前記重量型枠部材は、鉄筋コンクリート製板とすることが好ましい。
【0010】
前記側面型枠は、組み立てられた際に、打設されたコンクリートの側圧による型枠変形を防止する外周拘束部材が取り囲まれるようにすることが好ましい。
【0011】
前記外周拘束部材は、締め付け部を有する帯状ベルトとすることが好ましい。また、前記帯状ベルトと側面型枠外面との間に、型枠押さえ材を挿入し、前記帯状ベルトの張力を増加させ、型枠の外周拘束を高めることも好ましい。
【0012】
前記側面型枠の内の前記せき板と、前記格子状リブ枠と、前記保温板材とに囲まれた空間に位置するように、前記保温板材に断熱材を取り付けることが好ましい。
【0013】
プレキャストコンクリート部材を製造するのに、上述のプレキャストコンクリート用型枠を用いて、固定ベッド上に、製造予定のプレキャストコンクリート部材に側面型枠を組み立て、前記ベッドに組み立てられた型枠の下端を固定するとともに、前記組み立てられた状態の側面型枠の周囲を外周拘束部材で締め付けて、前記プレキャストコンクリート部材の外形形状を保持し、側面型枠内部にコンクリートを打設し、コンクリート硬化後に、前記側面型枠を脱型してプレキャストコンクリート部材を製造することを特徴とする。
【0014】
あるいは、上述のプレキャストコンクリート用型枠と重量型枠部材とを用いて、固定ベッド上に、製造予定のプレキャストコンクリート部材に側面型枠を組み立て、前記ベッドに組み立てられた型枠の下端を固定するとともに、前記組み立てられた状態の側面型枠の周囲を外周拘束部材で締め付けて、前記プレキャストコンクリート部材の外形形状を保持し、側面型枠内部にコンクリートを打設し、コンクリート硬化後に、前記側面型枠のうち重量型枠部材を前記ベッド上に残置して脱型してプレキャストコンクリート部材を製造することを特徴とする。
【0015】
前記外周拘束部材は、締め付け部を有する帯状ベルトであり、前記組み立てられた状態の側面型枠の周囲を前記外周拘束部材で締め付ける際に、前記側面型枠と前記外周拘束部材との間に型枠押さえ材を挿入し、前記型枠押さえ材により、前記外周拘束部材に発生する張力を前記側面型枠の押さえ力に変換して、該側面型枠の変形を防止することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、第1の発明によれば、柱や梁等のプレキャストコンクリート部材を製造するにあたり、作業量とコストとを低減することができ、さらに第2の発明によれば、型枠組み立て作業、脱型作業も省力化することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の発明の実施形態に係るプレキャストコンクリート用型枠の斜視図。
【図2】軽量型枠の分解斜視図。
【図3】軽量型枠の詳細を示した図面で、(a)は図1中の矢視III−IIIで示した断面図、図3(b)は図3(a)中の破線bで囲んだ部分の拡大図。
【図4】プレキャストコンクリート部材を型にいれた第1の実施形態に係るプレキャストコンクリート用型枠の斜視図。
【図5】第2の発明の実施形態に係るプレキャストコンクリート用型枠の斜視図。
【図6】図5中の矢視VI−VIで示した断面図。
【図7】第2の発明の実施形態に係るプレキャストコンクリート用型枠によりプレキャストコンクリート部材が製造されている様子を示した図で、(a)はPCa用型枠の斜視図、(b)は軽量型枠が外されたPCa用型枠の斜視図。
【図8】コンクリートの横打ちに対応させたプレキャストコンクリート用型枠の図面で、(a)は第1の発明に係るPCa用型枠の斜視図、(b)は第2の発明に係るPCa用型枠の斜視図。
【図9】第2の発明の実施形態に係るプレキャスト用コンクリート型枠が拘束された状態を示しており、(a)はコンクリートを縦打ちした場合の斜視図、(b)はコンクリートを横打ちした場合の斜視図。
【図10】型枠押さえ材の断面形状の変形例を示した部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
第1発明の実施形態に係るプレキャストコンクリート用型枠の構成について以下の実施例を、添付図面を参照して説明する。図1は、第1発明の実施形態に係るプレキャストコンクリート(以下、PCaと記載する)用型枠の斜視図を示している。
【実施例】
【0019】
図1に示すPCa用型枠1は、たとえば各種のPCa部材を製造する工場等では、あらかじめ床スラブ(図示せず)上に型枠固定用のボルト孔(図示せず)が縦横に所定ピッチで形成されたベッド11が敷設されている。このベッド11に立設され、ベッド11上に打設されるPCa柱部材(図示せず)の外周を取り囲むように配置された4枚の軽量型枠20と、立設された軽量型枠20の初期形状を保持するとともに、型枠内にコンクリートが打設された際に、まだ硬化しないコンクリートによって作用する側圧による軽量型枠20の変形を拘束する外周拘束部材12と下端拘束部材13と、隣接する軽量型枠間の取り合い部(打設された柱の出隅部に相当)に配された面木14とを備えている。
【0020】
ベッド11は、PCa用型枠1のベース部材であり、ベッド11の表面には、後述するように、下端拘束部材13を締着するためのボルト孔や、軽量型枠20を据え付けるための溝が形成されている。
【0021】
たとえば軽量型枠20は、PCa柱部材を製造する場合(図1)には、図1に示したように、4枚の軽量型枠20の各端部が直交するように、柱形状寸法に合わされた状態で、ベッド11上に組み立てられ、製造されるPCa柱部材の側面型枠として機能する。このように、PCa部材の型枠として機能する軽量型枠20は、3つの主要な部材から構成されている。以下、軽量型枠20の詳細構成について、図2を参照して説明する。
【0022】
図2は、軽量型枠20の分解斜視図である。同図に示すように、軽量型枠20は、打設されるコンクリートに面するせき板21と、せき板の変形を防止するとともに軽量型枠20全体の剛性を確保する格子状リブ枠22と、コンクリートの硬化時の水和熱を軽量型枠20内に保持するための保温用板材23とから構成されている。
【0023】
せき板21は、薄肉の平板からなり、打設されるコンクリートに面し、硬化するコンクリートの形状を規定するとともに、打設直後のコンクリートのノロ(セメントペースト分)がPCa用型枠1から漏出するのを防止する。せき板21の図中の下辺には、所定量突出した爪21aが形成されており、爪21aがベッド11(図1)の表面に形成された図示しない溝に嵌め込むことで、せき板21はベッド11の所定位置に立設される。せき板21には、例えば、既製の繊維強化プラスチック板(以下、FRPと記す。)や合板(木製板)を用いることができる。板厚は、格子状リブ枠等との一体化が図れるため、従来の型枠のせき板より薄くできる。格子状リブ枠の格子の目合い寸法にもよるが、板厚3〜5mm程度まで薄くすることができる。
【0024】
格子状リブ枠22は、例えば、FRP板や木製合板からなる帯状板を、格子内法寸法(目合い寸法)が約175mm□の格子状に組み立てたもので、せき板21の背面(PCa用型枠1の外側)に取り付けられる。このように、FRP板等が格子状に組み立てられた格子状リブ枠22は、その重量と比較して高い曲げ剛性を有する。そのため、せき板21は、その背面で細かく仕切られた各格子板材に面支持されるとともに、全体剛性の高いリブ枠に支持される。このように、格子状リブ枠22は、PCa用型枠1内に打設されたコンクリートによる側圧が作用したせき板21の変形を確実に防止し、せき板21に発生する曲げ応力を低減する。
【0025】
保温用板材23は、例えば、FRP板や木製合板の平板からなり、格子状リブ枠22の背面に取り付けられ、コンクリート養生時に発生する水和熱がPCa用型枠1から外部に発散するのを防止する。この作用を具体的に説明すると、せき板21と格子状リブ枠22と保温用板材23とが重ね合わされると、図3(a)に示すように軽量型枠20内にこれら3部材に囲まれた空間部24が形成される。なお、図3(a)は図1中の矢視III−IIIで示した断面図、図3(b)は図3(a)中の破線bで囲んだ部分の拡大図である。そして、後述するように、軽量型枠20が打設されたコンクリートの側圧を受けるとともに、この側圧に抵抗するように、外周拘束部材12(図1)が保温面材23を押圧することで、空間部24は密閉状態となる。そして、密閉状態となった空間部24は、コンクリートから発生した水和熱の発散を抑制する。なお、FRP板や木製合板の平板と、格子状リブ枠22の格子形状を除いた空間部24の平面形状に合わせて取り付けられたポリスチレンフォーム等の断熱材(保温材)との合成部材とすることで、PCa用型枠1の保温性をさらに高めることができる。
【0026】
外周拘束部材12は、例えば単管パイプから構成され、図1に示すように、4本の外周拘束部材12で軽量型枠20の外周を取り囲んで組み立てられ、軽量型枠20の初期形状が保持される。具体的には、各々の外周拘束部材12は、その交差部においてクランプ等で連結されて柱部材等の寸法が高精度に保持され、さらに型枠内に打設されたコンクリートの側圧を受けた際に軽量型枠20が変位しないように、軽量型枠20を拘束支持する。また、公知の型枠拘束部材であるカラムクランプ等の既製品を利用しても良い。
【0027】
下端拘束部材12は、例えばL型鋼から構成され、ベッド11と、ベッド11に接触した下端拘束部材12の一面とは図示しないボルトにより連結されている。そして、下端拘束部材13の他面が軽量型枠20の下部と接触することで、下端拘束部材13はコンクリートの側圧を受けた軽量型枠20の外側への変形を防止できる。
【0028】
面木14は、図1及び図3(a)に示すように、隣接する軽量型枠20同士が接続する隅角部と、ベッド11と軽量型枠20とが接続するPCa用型枠内部の図示しない隅角部とに取り付けられている。本実施例では面木14はプラスチック製が用いられ、製造されたPCa柱部材の面取り部材としても機能する。これにより、PCa部材の角欠け等の損傷を防ぐことができる。
【0029】
次に、PCa用型枠1の構造詳細について説明する。図3(a)に示すように、ベッド11上に立設された格子状リブ枠22は、隣接する格子状リブ枠22とボルト25で連結されるとともに、その下端は、ベッド11と図示しないボルトで連結されている。これにより、各格子状リブ枠22は一体化されて、一体化した格子状リブ枠22はベッド11上に固着する。
【0030】
また、格子状リブ枠22の内側に配されたせき板21は、図3(b)に示すように、隣接するせき板21との間に隙間が形成されるように、幅方向に調整代Lが設定されている。これにより、隣接するせき板21同士を接触させることなく、せき板21をベッド11上の所定位置に配置できる。なお、調整代Lにより発生したせき板21間の隙間は、図3(b)に示すように面木14とガスケット15により塞がれ、打設されたコンクリートのモルタル分の漏出が防止される。なお、ガスケット15としては、シリコーンゴム製、軟質合成ゴム製等の公知のシール部材を用いることができる。
【0031】
上述したPCa用型枠1を組立て、その内部に鉄筋を配筋しコンクリートを打設することで、図4に示すようにPCa用型枠1内に鉄筋コンクリートを形成することができる。そして、コンクリート25を打設してから所定の期間養生した後、脱型することで、所望のPCa部材が製造される。なお、PCa用型枠1の脱型の際に、PCa部材との剥離を容易にするために、コンクリート26と接触するせき板11、面木14、及びベッド11の表面に剥離材を塗布することが好ましい。
【0032】
以上のように、本発明に係るプレキャストコンクリート用型枠を用いてPCa部材を製造することで、次のような効果を得ることができる。
(1)せき板、格子状リブ枠、及び保温用板材から構成された軽量型枠は、容易にこれらの部品ごとに分解することができる。また、軽量型枠を構成するせき板等の部品自体も木材やFRP等の軽量な材料から形成されている。そのため、人力によるPCa用型枠の組み立て・解体・搬送が可能となる。これにより、従来は重機の使用が必要であった従来の方法と比較して、作業の省力化を図ることができる。
(2)軽量型枠は、従来採用されている鋼製型枠と比べて安価であるため、PCa部材の製造コストを低減することができる。
(3)軽量型枠内に形成された空間部を密閉にし、空間部に断熱材を配置することで、コンクリートの水和熱のPCa用型枠からの発散が一層抑制される。そのため、コンクリートを適切に保温することができ、コンクリート強度発現を促進することができる。
(4)上述したPCa用型枠は、軽量型枠からせき板を容易に取り外すことができるため、せき板を簡単に清掃することができ、労力の低減を図ることができる。また、軽量型枠を脱型した後、コンクリートが付着したせき板を清掃済のせき板と交換することにより、即座に次のPCa部材の製造にとりかかれる。そのため、PCa部材の製造効率を向上させることができる。
【0033】
次に、第2の発明に係るプレキャストコンクリート用型枠を用いたプレキャストコンクリート部材の製造方法について、図面を参照して説明する。なお、第2の発明を説明するための図面において、第1の発明と同じ部材については同じ符号を付している。
【0034】
図5は、本発明の第2の発明に係るプレキャストコンクリート用型枠の斜視図を示している。同図に示すようにPCa用型枠1は、地面に載置されたベッド11と、ベッド11に立設された側面型枠のうち2面を形成する軽量型枠20と、残り2面を形成する重量型枠30と、軽量型枠20と重量型枠30との外周を締め付ける締付ベルト16と、隣接する軽量型枠20の端面を連結する固定金具18と、軽量型枠20及び重量型枠30の隅角部に配された面木14とを備えている。
【0035】
ベッド11は、PCa用型枠1のベース部材で、PCa用型枠1を支持する。なお、ベッド11は、第1の発明で説明したベッドと同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0036】
なお、本発明の第2の発明は、第1の発明と異なり、ベッド11上に立設された4面の側面型枠のうち、2面が重量型枠30から形成されている。重量型枠30は、例えば鉄筋コンクリート(以下、RCと記す。)製で、2面の重量型枠30はベッド11上にL字状に配設されている。
【0037】
また、2面の軽量型枠20も同様に、ベッド11上にL字状に配設されている。L字状に配設された軽量型枠20は、重量型枠30と角部が突き合わされ、組み立てられることで、矩形形状をなすPCa柱部材等の側面型枠を構成することができる。なお、軽量型枠20は第1の発明で説明した軽量型枠と同様の構成からなる。
【0038】
締付ベルト16は、例えばポリエステル製のベルトで、軽量型枠20及び重量型枠30からなる側面型枠の外周を取り囲むように配されている。そして、締付ベルト16は、ベルト16の端部に設けられたベルト締付機17により、側面型枠全体を締め付けることができ、打設されたコンクリートの側圧を受けた側面型枠が外側に変位しないように、側面型枠を拘束支持する。
【0039】
固定支持金具18は、例えば、所定の長さに切断されたL型鋼から形成されている。固定金具に形成されたそれぞれの面には2つのボルト孔が形成されており、これらの面は、L字状に立設された2つ軽量コンクリート20の端面と接触し、格子状リブ枠(図6)とボルト連結されている。
【0040】
面木14は、第1の発明で説明した面木と同様に、コンクリートが打設されるPCa用型枠1内部の隅角部に設置され、コンクリートノロの漏出防止と、製造されたPCa部材の面取り部を形成するために設けられている。
【0041】
次に、第2の発明に係るPCa用型枠1の構造詳細について説明する。図6は、図5中の矢視VI−VIで示した断面図である。図に示すように、ベッド11上に立設された格子状リブ枠22は、前述したように、隣接する格子状リブ枠22の端面同士は、L字型の固定金具18を介してボルト25にて連結されている。さらに、格子状リブ枠22の下端は、ベッド11と図示しないボルトで連結されている。
また、格子状リブ枠22の内側に配されるせき板21は、第1の発明の実施形態と同様に、幅方向に調整代Lが設定され、せき板21をベッド11上の所定位置に配置できるように配慮されている。
【0042】
また、打設されるコンクリートと接触する重量コンクリート30の表面には、全面にわたって剥離版28が取り付けられ、製造されたPCa部材が重量型枠30と容易に剥離できるように配慮されている。また、面木14及びせき板21の表面にも必要に応じて剥離剤が塗布される。
【0043】
上述した第2の発明に係るPCa用型枠1を組立て、その内部に鉄筋を配筋しコンクリートを打設することで、図7(a)に示すように、PCa用型枠1内に鉄筋コンクリートを形成することができる。なお、図7(a)は鉄筋コンクリートを形成しているPCa用型枠の状態を示した斜視図、図7(b)は、図7(a)の状態から軽量型枠を脱型した状態を示した斜視図を示している。そして、図7(a)に示した状態、つまりコンクリート25をPCa用型枠1に打設した後、所定の期間養生して所定のコンクリート強度が発現すると、図7(b)に示すように軽量型枠20を脱型する。
【0044】
以上のように、本発明の第2の発明に係るプレキャストコンクリート用型枠を用いてプレキャストコンクリート部材を製造することで、次のような効果を得ることができる。
(1)図7(b)に示すように、PCa部材の側面の4面のうち2面が開放されていれば、PCa部材を脱型することができる。このとき、開放する面に軽量型枠20を配置しておくことで、脱型時の労力を低減することができる。
(2)また、PCa部材の周囲2面に重量型枠を配することで、コンクリート26の打設時にPCa用型枠1を安定させることができる。
(3)また、軽量型枠20及び重量型枠30を締め付ける際に軽量な締付ベルト16を使用したため、人力で容易に型枠の締付作業を行なうことができる。これにより、従来のPCa用型枠で用いられた、重量のある鋼製の治具等を用いる必要がなくなり、労力を低減させることができる。
(4)また、重量型枠30をRC製とすることで、高価な鋼製型枠を使用せずに、PCa部材を製造する従業者等自身で、重量型枠30も製造することができる。これにより、PCa部材の製造コストを抑制することができる。
【0045】
上述した各プレキャストコンクリート部材の製造方法では、コンクリートの縦打ち(PCa柱部材では、柱軸方向に沿ってコンクリートを打設)する場合について説明したが、図8に示すようにコンクリートの横打ちの場合にも、本発明に係るプレキャストコンクリート用型枠を用いて、PCa部材を製造することができる。図8(a)は、横打ちコンクリート用の第1の発明に係るPCa用型枠の斜視図、図8(b)は、横打ちコンクリート用の第2の発明に係るPCa用型枠の斜視図を示している。コンクリートの横打ちの場合のPCa用型枠1が、上述したような縦打ち用のPCa用型枠1と異なる点は、継手筋が部材から突出する継手筋の通りの扱いである。すなわち、コンクリート26から突出する継手筋27が貫通するための鉄筋貫通孔を型枠に設ける。この場合、鉄筋27をPCa用型枠1に配筋した後、コンクリート26の打設前に、鉄筋27用貫通孔をシール材等で塞ぎ、コンクリートのノロ漏れ等を防止する。
【0046】
このような、コンクリートの横打ちに対応させたプレキャストコンクリート用型枠及びプレキャストコンクリート部材の製造方法を用いる場合も、前記と同様の作用、効果を発揮することができる。
【0047】
なお、上述した第1の発明では、外周拘束部材12として単管パイプを使用した形態について説明したが、例えば、コンクリートの側圧に耐え得る場合には、第2の発明で説明した締付ベルト16を用いて、側面型枠を締め付けてもよい。
【0048】
また、図9(a)及び(b)に示すように、PCa用型枠1の外周に型枠押さえ材18を配し、締付ベルト16の締付力を型枠押さえ材18を介して型枠の押さえ力としてPCa用型枠1に伝えるようにしてもよい。なお、図9は、第2の発明の実施形態に係るプレキャスト用コンクリート型枠が拘束された状態を示した斜視図であり、(a)はコンクリートを縦打ちした場合、(b)はコンクリートを横打ちした場合を示している。型枠押さえ材18として、例えば断面が三角形の端太が用いられることで、人力による取り扱いの容易性と、コストの抑制が図られている。このように、型枠押さえ材18を介して締め付けベルト16でPCa用型枠1を締め付けることにより、図9(a)に示すように、締付ベルト16に張力Tが作用する。この時、軽量型枠20と締付ベルト16とのなす角度をθとした場合、張力Tは、軽量型枠20の主平面と直交する型枠押さえ力F=2Tsinθに変換される。そして、図9に示すように、軽量型枠20の中央付近に配された型枠押さえ材18は、軽量型枠20の最も変形のしやすい部分に型枠押さえ力Fを作用する。このように締付ベルト16とPCa用型枠1との間に型枠押さえ材18を挿入した型枠の拘束方法は、製造するPCa部材の寸法が大きく、コンクリート打設時の側圧によりPCa用型枠1の側面型枠が変形しやすい場合に、特に効果のある側面型枠の変形防止方法である。なお、型枠押さえ材18の三角形断面の締付ベルト16が当接する頂点18aは、図10(a)に示したように、丸面取りされており、締付ベルト16を締め込んだ際に、ベルトが傷まないようになっている。
【0049】
以上、図9各図を参照して、型枠押さえ材18として、断面が三角形でPCa用型枠1の上方から下方まで連続した部材が用いられる場合について説明したが、型枠押さえ材18を用いたPCa用型枠1の断面形状とその締付方法に関し、その断面形状は図10(b)〜(d)に示した各種変形例のようにすることも可能である。図10(b)は角材の2カ所の頂点18aを丸面取りして用いた例であり、図10(c)は、半割円柱を用いた例を示している。この場合には、締付ベルト16は比較的幅を有する頂点18aが接触面として機能する。図10(d)は、汎用製品である所定直径の鋼管パイプを用いた例を示している。また、締付方法として、締付ベルト16の幅程度に切断された所定断面形状の型枠押さえ材18を、型枠が変形する恐れがある箇所のみに配するようにしてもよい。さらに、型枠押さえ材18の断面形状、材種としては、締付ベルト16からの型枠押さえ力Fを確実に型枠に伝達ができ、人力により容易に持ち運べるものであればよく、上述した実施例に何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0050】
1 プレキャストコンクリート用型枠(PCa用型枠)
11 ベッド
12 外周拘束部材
13 下端拘束部材
14 面木
15 ガスケット
16 締付ベルト
17 ベルト締機
18 型枠押さえ材
20 軽量型枠
21 せき板
22 格子状リブ枠
23 保温用板材
24 空間部
26 コンクリート
27 鉄筋
28 剥離板
30 重量型枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
打設されるコンクリートに面するせき板と、該せき板の背面に取り付けられ、枠体に保持され前記せき板を面支持する格子状リブを有する格子状リブ枠と、該格子状リブ枠の背面に取り付けられた保温板材とを備え、製造されるプレキャストコンクリート部材の側面型枠として用いられることを特徴とするプレキャストコンクリート用型枠。
【請求項2】
製造されるプレキャストコンクリート部材の側面型枠のうち、隣接する2面の側面型枠が請求項1に記載されたプレキャストコンクリート用型枠であって、側面型枠のうちの他の2面の側面型枠が、重量型枠部材であり、前記各側面型枠が組み立てられることを特徴とするプレキャストコンクリート用型枠。
【請求項3】
前記重量型枠部材は、鉄筋コンクリート製板であることを特徴とする請求項2に記載のプレキャストコンクリート用型枠。
【請求項4】
前記側面型枠は、組み立てられた際に、打設されたコンクリートの側圧による型枠変形を防止する外周拘束部材で取り囲まれることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のプレキャストコンクリート用型枠。
【請求項5】
前記外周拘束部材は、締め付け部を有する帯状ベルトであることを特徴とする請求項4に記載のプレキャストコンクリート用型枠。
【請求項6】
前記帯状ベルトと側面型枠外面との間に、型枠押さえ材が挿入され、前記帯状ベルトの張力を増加させて型枠の外周拘束を高めたことを特徴とする請求項5に記載のプレキャストコンクリート用型枠。
【請求項7】
前記側面型枠の内の前記せき板と、前記格子状リブ枠と、前記保温板材とに囲まれた空間に位置するように、前記保温板材に断熱材が取り付けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のプレキャストコンクリート用型枠。
【請求項8】
請求項1に記載されたプレキャストコンクリート用型枠を用いて、固定ベッド上に、製造予定のプレキャストコンクリート部材に側面型枠を組み立て、前記ベッドに組み立てられた型枠の下端を固定するとともに、前記組み立てられた状態の側面型枠の周囲を外周拘束部材で締め付けて、前記プレキャストコンクリート部材の外形形状を保持し、側面型枠内部にコンクリートを打設し、コンクリート硬化後に、前記側面型枠を脱型してプレキャストコンクリート部材を製造することを特徴とするプレキャストコンクリート部材の製造方法。
【請求項9】
請求項2に記載されたプレキャストコンクリート用型枠を用いて、固定ベッド上に、製造予定のプレキャストコンクリート部材に側面型枠を組み立て、前記ベッドに組み立てられた型枠の下端を固定するとともに、前記組み立てられた状態の側面型枠の周囲を外周拘束部材で締め付けて、前記プレキャストコンクリート部材の外形形状を保持し、側面型枠内部にコンクリートを打設し、コンクリート硬化後に、前記側面型枠のうち重量型枠部材を前記ベッド上に残置して脱型してプレキャストコンクリート部材を製造することを特徴とするプレキャストコンクリート部材の製造方法。
【請求項10】
前記外周拘束部材は、締め付け部を有する帯状ベルトであり、
前記組み立てられた状態の側面型枠の周囲を前記外周拘束部材で締め付ける際に、前記側面型枠と前記外周拘束部材との間に型枠押さえ材を挿入し、
前記型枠押さえ材により、前記外周拘束部材に発生する張力を前記側面型枠の押さえ力に変換して、該側面型枠の変形を防止することを特徴とするプレキャストコンクリート部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−105380(P2010−105380A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122686(P2009−122686)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】