説明

プレキャストコンクリート用型枠

【課題】プレキャストコンクリート製品の脱型時において、側枠を取外すことなく、かつ、角部の欠けや割れを発生させることなく容易に脱型できるようにして、一般作業員でも容易に脱型でき、かつ、工数の低減を図り、生産性の向上を図る。
【解決手段】ベット2上に側枠3を設置してなる型枠1において、前記側枠3の上部内面3aを、上方が外側へ向って開く傾斜面に形成し、該上部内面3aより下側の下部内面3bを、前記上部内面3aの開き角度θよりも大きい角度で傾斜させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプレキャストコンクリート用型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プレキャストコンクリート(以下PCaともいう)の床版の製造方法として、図8に示すように、鋼製ベット(定盤)101上に、鋼製側枠102を、ボルト或いはノックピンなどの締着具103で固定して、成形型枠を構成し、該成形型枠内に、先付金物、鉄筋を配置し、その後に生コンクリートを投入し、そのコンクリートの硬化後に、前記の鋼製側枠を取外してから、製品となる硬化したプレキャストコンクリート床版104を脱型する方法が一般的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来のPCa床版の製造方法においては、前記のように、鋼製側枠の取付け工程と、取外し工程を必要とし、また、その鋼製側枠は多数のボルトやノックピンで締着することから、製造作業の工数が多い問題がある。
【0004】
そのため、前記従来の型枠において工程の簡略化により、その鋼製側枠を取り外さないで、成形されたプレキャストコンクリート床版を取り外す方法も検討されているが、前記の鋼製側枠102の内面と鋼製ベット101の上面とがなす角部Aが直角であり、また、打設されたコンクリートが鋼製側枠102の内面に付着することから、角部A等に欠けや割れが発生して製品品質に大きな影響が出たり、脱型に高度な技術が必要となる問題がある。更に、脱型時に側枠がコンクリート製品と一緒に持ち上り、その側枠を外すのに時間がかかる問題もある。
【0005】
そこで本発明は、前記の課題を解決するプレキャストコンクリート用型枠を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、ベット上に側枠を設置してなる型枠において、前記側枠の下部内面を、上方が外側に向う傾斜面に形成したことを特徴とするものである。
【0007】
請求項2記載の発明は、ベット上に側枠を設置してなる型枠において、前記側枠の上部内面を、上方が外側へ向って開く傾斜面に形成し、該上部内面より下側の下部内面を、前記上部内面の開き角度よりも大きい角度で傾斜させたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記側枠の下部内面を曲面で形成したものである。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1又は2又は3記載の発明において、前記ベットに振動機を付設したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、側枠の下部内面を、上方が外側に向う傾斜面に形成したので、成形されたコンクリート製品の脱型時において、側枠をベットから取外すことなく付設した状態で脱型しても、コンクリート製品の角部の欠けや割れが発生することを防止でき、高度及び特殊な技能を必要とすることなく、一般作業員でも容易に脱型できる。
【0011】
更に、脱型時に側枠をベットから取外す必要がないため、1個の製品を成形する毎に側枠を組み付けたり、取外したりする作業が不要になり、工数の大幅な低減が可能で、生産性の向上に大きく寄与できる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、側枠の上部内面も外側へ開くように傾斜させることにより、一層脱型を容易にすることができる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、側枠の下部内面を、角部を有することなく側枠の上部内面とベットの表面に連続させることができ、前記のような欠けや割れを一層防止できる。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、コンクリート製品の脱型時に振動機を駆動して型枠を振動することにより、前記のような、欠けや割れが発生しない脱型が一層容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態を図に示す実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0016】
図1及び図2は本発明の実施例1を示すもので、本発明の概念図である。
図1において、型枠1は、地表に設置された鋼製のベット(定盤)2と、該ベット2の表面2aの周囲に立設された鋼製の側枠3と、ベット2の側面に付設された振動機6とを有する。
【0017】
前記ベット2の表面2aは水平に形成されて底型面になっている。
前記側枠3は、ベット2の表面2a上において、前後及び左右に配置され、これらの四方の側枠3A〜3Dによって方形の成形空間5が形成されている。そして、これら各側枠3は、ボルトやノックピンなどの締結具4によってベット2の表面に固定されている。
【0018】
前記ベット2の側部には、電動の振動機6が付設されており、該振動機6を駆動することにより、ベット2及び側枠3を振動するようになっている。この振動機6は、所望の位置及び所望数設けるもので、図1に示すように、前後側枠3A,3B側のベット及び左右側枠3C,3D側のベットに夫々設けてもよく、また、所望の位置に1個設けてもよい。
【0019】
前記側枠3における下部を除く内面(上部内面)3aは、該上部内面3aと前記ベット2の表面(型面)2aとがなす角度θが鈍角になるように、上方が外側へ傾斜して開いたテーパ面に形成されており、対向する側枠3,3の相互の上部内面3a,3aが上方に至るにつれて拡開するように形成されている。
【0020】
更に、前記側枠3における内面の下部は、前記の角度θよりも大きい角度で開いた下部内面3bに形成されている。すなわち、側枠3における前記上部内面3aから側枠3より内側(成型空間5側)へ向って曲面或いは直線で傾斜し、ベット2の表面2aに達する下部内面3bに形成されている。なお、該下部内面3bを曲面で形成し、その上端を曲面の接線で前記上部内面3aに連続させ、下端を曲面の接線で前記ベット2の表面2aに連続させるようにするとよい。
【0021】
なお、前記のように、上部内面3aと下部内面3bを傾斜させた側枠を、四方の全ての側枠3A〜3Dに使用してもよく、また、対向する側枠、例えば長手方向の側枠3A,3Bにのみに使用してもよい。すなわち、成形するコンクリート版により、所望の側枠にのみ使用してもよい。
【0022】
次に、前記の型枠1を用いてPCaコンクリート版を製造する工程と作用を説明する。
前記のように、ベット2上に四方の側枠3A〜3Dが固設された状態において、成形空間5内に先付金物や鉄筋を配置し、その後に、生コンクリート7を打設する。
【0023】
次に、前記の打設された生コンクリート7を養生、硬化させた後に、その硬化したコンクリート版を、適宜手段で持ち上げて脱型する。
【0024】
このとき、下部内面3bが傾斜面に形成されているため、脱型時のコンクリート付着応力をスムーズに開放することができ、コンクリート版の脱型が容易で、かつ、側枠の内面とベットの表面とがなす角部におけるコンクリート版の欠けや割れの発生を防止することができる。
【0025】
更に、側枠3の上部内面3aが前記のように外側へ傾斜しているため、一層脱型が容易に行える。
【0026】
また、上記の脱型時において、振動機6を駆動してベット及び側枠3に振動を発生させると、より一層脱型が容易で、かつ、前記のような欠けや割れの発生を防止できる。
【0027】
したがって、脱型時の熟練を必要とせず、一般作業員でも容易に悪影響なく脱型できる。
【0028】
更に、前記のように、側枠をベットに固設したままで脱型できるため、側枠の組付けや取外しの工程が不要となり、作業の大幅な低減が可能となり、生産性の向上に大きく寄与できる。
【0029】
更に、特殊技能を必要としないため、生産活動への幅広い展開が容易になる。
【実施例2】
【0030】
図3及び図4は実施例2を示す。
本実施例2は、前記実施例1における側枠3における下部内面3bの形成例を示すものである。
【0031】
本実施例2は図4に拡大図示するように、側枠3を、前記の下部内面3bを形成する下部側枠3cと前記上部内面3aを形成する上部側枠3dとで形成し、これらを溶接Wで一体化したものである。
【0032】
前記下部側枠3cは前記ベット2の表面2aに載置する鋼板で形成するとともに、その内側端面を前記のような曲面や直線で傾斜した下部内面3bとし、また、前記上部側枠3dは鋼板で形成し、その上部を外側に傾斜させて下部側枠3c上に立設して設けられている。
【0033】
そして、前記の下部側枠3cを、ボルトやノックピンなどの締結具4によりベット2に固着されている。
【0034】
本実施例2におけるその他の構造は前記実施例1と同様であるため、同一部材には前記と同一符号を付してその説明は省略する。
【0035】
本実施例2においても、前記実施例1と同様の作用、効果を発揮できる。
【実施例3】
【0036】
図5は実施例3を示す。
本実施例3は、前記実施例1における下部内面3bの更に他の形成例である。
【0037】
本実施例3においては、前記実施例1における側枠3の傾斜した上部内面3aの下方を同一角度でベット2の表面2aまで延長し、この延長した面3eとベット2の表面2aとがなす角部にシール材などを塗着固化させ、この塗布材8の内面で前記の傾斜する下部内面3bを形成したものである。
【0038】
その他の構造は前記実施例と同様であるため、前記と同一部材には前記と同一符号を付してその説明は省略する。
【0039】
本実施例3においても前記実施例1と同様の作用、効果を発揮できる。
なお、前記側枠3の下部内面3bは、前記実施例2に示す上部側枠3dの下部を、成形空間5側へ屈曲させてベット2の表面2aまで延長して、この延長部で前記の下部内面3bを形成してもよい。
【実施例4】
【0040】
図6は実施例4を示す。
本実施例4は、前記実施例1及び2における側枠3の傾斜した上部内面3aを、その傾斜角で下方に延長して、側枠3の下部内面3bを、上方が外側に向う傾斜面に形成したものである。
【0041】
その他の構造は前記実施例と同様であるため、同一部分には前記と同一符号を付してその説明を省略する。
【0042】
本第4実施例においても前記と同様の作用、効果を発揮することができる。
【実施例5】
【0043】
図7は実施例5を示す。
本実施例5は、前記各実施例における側枠3の上部内面3aを、ベット2の表面2aに対して垂直に形成したものである。
【0044】
すなわち、側枠3の上部内面3aをベット2の表面2aに対して垂直に形成し、側枠3の下部内面3bを、上部が外側に向う直線状の傾斜面に形成したものである。
【0045】
なお、本実施例5における下部内面3bは、前記図2乃至図4に示す実施例のような曲面でもよく、更に、図5の実施例に示すようなシール材などを塗着固化して形成しても良い。
【0046】
その他の構造は前記実施例と同様であるため、同一部分には前記と同一符号を付してその説明を省略する。
【0047】
本第5実施例においても前記と同様の作用、効果を発揮することができる。
また、本発明は、PCa板材の製造に適用できるもので、特にPCa床版の製造に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施例1を示す平面図。
【図2】図1におけるA−A線断面図。
【図3】本発明の実施例2を示す型枠の側断面図。
【図4】図3における側枠部の拡大側断面図。
【図5】本発明の実施例3を示す型枠の側断面図。
【図6】本発明の実施例4を示す要部側断面図。
【図7】本発明の実施例5を示す要部側断面図。
【図8】従来の型枠を示す側断面図。
【符号の説明】
【0049】
1 型枠
2 ベット
2a ベットの表面
3 側枠
3a 上部内面
3b 下部内面
4 締結具
5 成形空間
6 振動機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベット上に側枠を設置してなる型枠において、前記側枠の下部内面を、上方が外側に向う傾斜面に形成したことを特徴とするプレキャストコンクリート用型枠。
【請求項2】
ベット上に側枠を設置してなる型枠において、前記側枠の上部内面を、上方が外側へ向って開く傾斜面に形成し、該上部内面より下側の下部内面を、前記上部内面の開き角度よりも大きい角度で傾斜させたことを特徴とするプレキャストコンクリート用型枠。
【請求項3】
前記側枠の下部内面を曲面で形成した請求項1又は2記載のプレキャストコンクリート用型枠。
【請求項4】
前記ベットに振動機を付設したことを特徴とする請求項1又は2記載のプレキャストコンクリート用型枠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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