プレキャストコンクリート部材
【課題】耐震性および耐久性に優れ、経済的で工期を短縮することができる高強度・高靱性・高耐久性のプレキャストコンクリート柱またはプレキャストコンクリート梁として使用するプレキャストコンクリート部材を提供することである。
【解決手段】プレキャストコンクリート部材は、超高強度コンクリートまたは超高強度モルタルで中空の外殻体2を形成し、該外殻体2の中空部5を必要な耐震性能に応じた形状にし、大きな応力が作用する箇所を厚肉にし、小さな応力が作用する箇所を薄肉にしたことである。
【解決手段】プレキャストコンクリート部材は、超高強度コンクリートまたは超高強度モルタルで中空の外殻体2を形成し、該外殻体2の中空部5を必要な耐震性能に応じた形状にし、大きな応力が作用する箇所を厚肉にし、小さな応力が作用する箇所を薄肉にしたことである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプレキャストコンクリート柱またはプレキャストコンクリート梁として使用するプレキャストコンクリート部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリートの建物を構築する場合、工費の節減および工期の短縮を図るためにプレキャストコンクリート柱などのプレキャストコンクリート部材が用いられている。このプレキャストコンクリート柱としては、図14の(1)に示すような全断面が同一強度のコンクリートで形成されたプレキャストコンクリート柱31や、図14の(2)に示すようなプレキャストコンクリートの外殻体32と内部のコンクリート33とからなるプレキャストコンクリート合成柱34が使用されていた。またその他のプレキャストコンクリート柱として、例えば特開2001−288849号の発明が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−288849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記図14の(1)のプレキャストコンクリート柱は、超高強度コンクリートで形成する場合、鉄筋の降伏で曲げ耐力が決まる範囲では、高価な超高強度コンクリートを有効に利用できないという問題があった。また、柱断面の全てがプレキャストコンクリートのため、重量が大きく、高層建物のなどの場合、クレーンなどの揚重能力により柱の部材長さが制限されるという問題があった。一方、上記図14の(2)のプレキャストコンクリート柱は、外殻体の内側に主筋および帯筋を配筋し、内部には副帯筋も配筋されているため複雑な構成になるという問題があった。
【0005】
本発明はこれらの問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐震性および耐久性に優れ、経済的で工期を短縮することができる高強度・高靱性・高耐久性のプレキャストコンクリート柱またはプレキャストコンクリート梁として使用するプレキャストコンクリート部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するためのプレキャストコンクリート部材は、超高強度コンクリートまたは超高強度モルタルで中空の外殻体を形成し、該外殻体の中空部を必要な耐震性能に応じた形状にし、大きな応力が作用する箇所を厚肉にし、小さな応力が作用する箇所を薄肉にしたことを特徴とする。また外殻体は複数階分の長さであり、梁との接合箇所には梁用接合端部が突設されたことを含む。また外殻体には主筋および帯筋が配筋され、中空部には、外殻体よりも低強度のコンクリートまたは発泡体が充填されたことを含む。また超高強度コンクリートまたは超高強度モルタルは、圧縮強度が80N/mm2以上または設計基準強度が60N/mm2以上であることを含む。また超高強度コンクリート内または超高強度モルタル内には、鋼繊維または有機繊維が混入されたことを含むものである。
【0007】
外殻体の中空部を必要な耐震性能に応じた形状にし、大きな応力が作用する箇所を厚肉にし、小さな応力が作用する箇所を薄肉にしたプレキャストコンクリート部材にしたことにより、高価な超高強度コンクリートを有効に使用することができ、資源の有効利用が図れる。また大きな応力が作用する箇所が厚肉で、小さな応力が作用する箇所が薄肉のプレキャストコンクリート部材にしたことにより、高価な超高強度コンクリートの使用量を縮減して、強度の低いコンクリートを用いることができるので、材料コストを低減することができる。またプレキャストコンクリート柱またはプレキャストコンクリート梁が高強度、高耐久性および高靱性で、かつ軽量になる。また外殻体の中空内には主筋や帯筋などが配筋されていないので、簡潔な構造になり、製造も容易になる。また鋼繊維または有機繊維などの繊維により高靱性で、耐火性のある外殻体にすることができる。また外殻体を高耐久性のある超高強度コンクリートで形成したので、内部の充填コンクリートは低強度のものが使用でき、コストの低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本願発明のプレキャストコンクリート部材はプレキャストコンクリート柱(以下PC柱という)、またはプレキャストコンクリート梁(以下PC梁という)として使用することができるが、本実施の形態においてはPC柱として説明する。また各実施の形態において同じ構成は同じ符号を付して説明し、異なった構成にのみ異なった符号を付して説明する。
【0009】
図1は第1の実施の形態のPC柱1である。このPC柱1は圧縮強度が80N/mm2以上(または設計基準強度が60N/mm2以上)の超高強度コンクリート、または超高強度モルタルで形成された中空の外殻体2に主筋3および帯筋4が埋設されて構成されたものであり、中空部5が必要な耐震性能に応じた形状に形成されている。例えば、図1のPC柱1は、地震時の曲げ応力が柱頭部6および柱脚部7に大きく作用する場合に対応させたものであり、中空部5が二つの四角錐または円錐を底面で接合した形状、すなわち中央部8が大きくかつ両端部に行くに従って小さくなったものであり、外殻体2の中央部8が薄肉で、柱頭部6および柱脚部7が厚肉になっている。このように地震時の曲げ応力が大きく作用する外殻体2の柱頭部6および柱脚部7を厚肉にすることにより、必要な耐震性能に応じた形状のPC柱1としている。また上記の超高強度コンクリート内には、鋼繊維またはポリプロピレンなどの有機繊維が混入されて、さらに超高強度、高靱性および耐火性を向上させている。なお、PC柱1の断面形状は四角形の他、円形、多角形があり、中空部5の断面形状も四角形および円形の他、多角形もある。
【0010】
また図2のPC柱11は、中空部5を中央部8の大円柱(または四角柱)9と、柱頭部6および柱脚部7の小円柱(または四角柱)10とから構成し、外殻体2の中央部8を薄肉に、柱頭部6および柱脚部7を厚肉にしたものである。
【0011】
また図3のPC柱14は、上記のPC柱1の中空部5に外殻体2よりも強度の低いコンクリート12、または合成樹脂製の発泡体13を充填したものであり、これ以外は上記と同じ構成である。このように外殻体2が高強度、高靱性および高耐久性であるため、中空部5に低強度のコンクリート12を充填しても、高強度、高靱性および高耐久性のPC柱14にすることができる。また図2のPC柱11にも、上記と同様に、中空部5に外殻体2よりも強度の低いコンクリート12、または合成樹脂製の発泡体13を充填することができ、高強度、高靱性および高耐久性のPC柱11にすることができる。
【0012】
また図4は、第2の実施の形態のPC柱15である。このPC柱15は、地震時の大きな曲げ応力が柱脚部7に作用する場合に対応させたものであり、これ以外は第1の実施の形態のPC柱1と同じ構成である。このPC柱15は、下部が小さくかつ上部に行くに従って大きくなった逆四角錐または逆円錐の中空部5を外殻体2に形成することにより、地震時の大きな曲げ応力が作用する柱脚部7を厚肉にしたものである。
【0013】
また図5のPC柱16は、上側の大円柱(または四角柱)9と、下側の小円柱(または四角柱)10とから中空部5を形成して、外殻体2の柱頭部6側を薄肉に、地震時の大きな曲げ応力が作用する柱脚部7側を厚肉にしたものである。
【0014】
また図6のPC柱17は、上記と同じように、中空部5に外殻体2よりも強度の低いコンクリート12、または合成樹脂製の発泡体13を充填したものであり、これ以外は上記と同じ構成である。また図5のPC柱16にも、上記と同様に、中空部5に外殻体2よりも強度の低いコンクリート12、または合成樹脂製の発泡体13を充填することができ、高強度、高靱性および高耐久性のPC柱16にすることができる。
【0015】
また図7は、第3の実施の形態のPC柱18である。このPC柱18は、地震時の大きな曲げ応力が柱頭部6に作用する場合に対応させたものであり、これ以外は第1の実施の形態のPC柱1と同じ構成である。このPC柱18は、下部が大きくかつ上部に行くに従って小さくなった四角錐または円錐の中空部5を外殻体2に形成することにより、地震時の大きな曲げ応力が作用する柱頭部6を厚肉にしたものである。
【0016】
また図8のPC柱19は、下側の大円柱(または四角柱)9と、下側の小円柱(または四角柱)10とから外殻体2に中空部5を形成して、柱頭部6側を薄肉に、地震時の大きな曲げ応力が作用する柱脚部7側を厚肉にしたものである。
【0017】
また図9のPC柱20は、上記と同じように、中空部5に外殻体2よりも強度の低いコンクリート12、または合成樹脂製の発泡体13を充填したものであり、これ以外は上記と同じ構成である。また図8のPC柱19にも、上記と同様に、中空部5に外殻体2よりも強度の低いコンクリート12、または合成樹脂製の発泡体13を充填することができ、高強度、高靱性および高耐久性のPC柱19にすることができる。
【0018】
また図10は、第4の実施の形態のPC柱21、22である。このPC柱21、22は三階分の長さがあり、梁との接合箇所には梁用接合端部23が突設されている。
【0019】
図10の(1)に示すPC柱21は、第1の実施の形態のPC柱1と同じ形状で、かつ三階分の長さを有するものであり、これ以外は上記のPC柱1と同じ構成である。すなわち、地震時の大きな曲げ応力が作用する外殻体2の柱頭部6および柱脚部7を厚肉にし、中央部8を薄肉にしたものである。
【0020】
また図10の(2)に示すPC柱22は、第1〜3の実施の形態のPC柱1、15、18を組み合わせたものであり、これ以外は第1の実施の形態のPC柱1と同じ構成である。すなわち、一階部分を第2の実施の形態のPC柱15で、二階部分を第1の実施の形態のPC柱1で、三階部分を第3の実施の形態のPC柱18でそれぞれ形成したものであり、地震時の曲げ応力が大きく作用する部分を厚肉にした。
【0021】
このように外殻体2が中空かつ軽量であるため、上記のPC柱21、22の製造が可能になり、あたかも鉄骨造のように複数階にわたるPC柱21、22で建物を構築することができる。
【0022】
また上記と同じように、上記の図10の(1)および(2)のPC柱21、22の中空部5に、外殻体2よりも強度の低いコンクリート12、または合成樹脂製の発泡体13を充填して、新たなPC柱を形成することもできる。
【0023】
また図11〜図13は、第1の実施の形態のPC柱の製造方法を示したものである。図11および図12に示すPC柱の製造方法は、はじめに型枠用芯材24を製造するものであり、強度の低いコンクリート12または合成樹脂製の発泡体13で、二つの四角錐または円錐を底面で接合した形状の型枠用芯材24を製造する。次に、この型枠用芯材24の周りに鉄筋25を配筋するとともに、型枠26を組み立て形成する。そして、型枠用芯材24と型枠26との間に超高強度コンクリート27を充填し、これが硬化した後に脱型すると、第1の実施の形態のPC柱1が製造できる。なお、上記の型枠用芯材24は強度の低いコンクリート12または合成樹脂製の発泡体13に限定されるものではなく、その他の材料でも製造することができる。
【0024】
また図13に示すPC柱の製造方法は、中空部5を形成する内型枠28を埋め殺しにするものであり、はじめに二つの四角錐または円錐を底面で接合した形状の内型枠28を形成する。次に、この内型枠28の周りに鉄筋25を配筋するとともに、外型枠29を組み立て形成する。そして、この内型枠28と外型枠29との間に超高強度コンクリート27を充填し、これが硬化した後に脱型すると、第1の実施の形態のPC柱1が製造できる。
【0025】
また、その他の第2〜第4の実施の形態のPC柱15、18、21、22も上記と同じ方法で製造するものである。
【0026】
なお、上記の実施の形態のプレキャストコンクリート部材は全てPC柱で説明したが、これはもちろんPC柱だけでなく、PC梁にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施の形態のPC柱を示し、(1)は応力図を示した断面図、(2)はPC柱の断面図、(3)は中空部が断面四角錐のA−A線断面図、(4)は中空部が断面円錐のA−A線断面図である。
【図2】第1の実施の形態のPC柱の断面図である。
【図3】(1)は中空部にコンクリートを充填した第1の実施の形態のPC柱の断面図、(2)はB−B線断面図である。
【図4】第2の実施の形態のPC柱を示し、(1)は応力図を示した断面図、(2)はPC柱の断面図、(3)は中空部が断面四角錐のC−C線断面図、(4)は中空部が断面円錐のC−C線断面図である。
【図5】第2の実施の形態のPC柱の断面図である。
【図6】(1)は中空部にコンクリートを充填した第2の実施の形態のPC柱の断面図、(2)はD−D線断面図である。
【図7】第3の実施の形態のPC柱を示し、(1)は応力図を示した断面図、(2)はPC柱の断面図、(3)は中空部が断面四角錐のE−E線断面図である。
【図8】第3の実施の形態のPC柱の断面図である。
【図9】(1)は中空部にコンクリートを充填した第3の実施の形態のPC柱の断面図、(2)はF−F線断面図である。
【図10】(1)および(2)は三階分の長さのPC柱の断面図である。
【図11】PC柱の製造方法を示し、(1)は型枠を組立形成した断面図、(2)はG−G線断面図である。
【図12】PC柱の製造方法を示し、(1)は型枠内に超高強度コンクリートを打設した断面図、(2)はH−H線断面図である。
【図13】PC柱の製造方法を示し、(1)は型枠内に超高強度コンクリートを打設した断面図、(2)はI−I線断面図である。
【図14】(1)および(2)は従来のPC柱の断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1、11、14、15、16、17、18、19、20、21、22 PC柱
2、32 外殻体
3 主筋
4 帯筋
5 中空部
6 柱頭部
7 柱脚部
8 中央部
9 大円柱
10 小円柱
12、33 強度の低いコンクリート
13 発泡体
23 梁用接合端部
24 型枠用芯材
25 鉄筋
26 型枠
27 超高強度コンクリート
28 内型枠
29 外型枠
31、34 プレキャストコンクリート柱
【技術分野】
【0001】
本発明はプレキャストコンクリート柱またはプレキャストコンクリート梁として使用するプレキャストコンクリート部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリートの建物を構築する場合、工費の節減および工期の短縮を図るためにプレキャストコンクリート柱などのプレキャストコンクリート部材が用いられている。このプレキャストコンクリート柱としては、図14の(1)に示すような全断面が同一強度のコンクリートで形成されたプレキャストコンクリート柱31や、図14の(2)に示すようなプレキャストコンクリートの外殻体32と内部のコンクリート33とからなるプレキャストコンクリート合成柱34が使用されていた。またその他のプレキャストコンクリート柱として、例えば特開2001−288849号の発明が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−288849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記図14の(1)のプレキャストコンクリート柱は、超高強度コンクリートで形成する場合、鉄筋の降伏で曲げ耐力が決まる範囲では、高価な超高強度コンクリートを有効に利用できないという問題があった。また、柱断面の全てがプレキャストコンクリートのため、重量が大きく、高層建物のなどの場合、クレーンなどの揚重能力により柱の部材長さが制限されるという問題があった。一方、上記図14の(2)のプレキャストコンクリート柱は、外殻体の内側に主筋および帯筋を配筋し、内部には副帯筋も配筋されているため複雑な構成になるという問題があった。
【0005】
本発明はこれらの問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐震性および耐久性に優れ、経済的で工期を短縮することができる高強度・高靱性・高耐久性のプレキャストコンクリート柱またはプレキャストコンクリート梁として使用するプレキャストコンクリート部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するためのプレキャストコンクリート部材は、超高強度コンクリートまたは超高強度モルタルで中空の外殻体を形成し、該外殻体の中空部を必要な耐震性能に応じた形状にし、大きな応力が作用する箇所を厚肉にし、小さな応力が作用する箇所を薄肉にしたことを特徴とする。また外殻体は複数階分の長さであり、梁との接合箇所には梁用接合端部が突設されたことを含む。また外殻体には主筋および帯筋が配筋され、中空部には、外殻体よりも低強度のコンクリートまたは発泡体が充填されたことを含む。また超高強度コンクリートまたは超高強度モルタルは、圧縮強度が80N/mm2以上または設計基準強度が60N/mm2以上であることを含む。また超高強度コンクリート内または超高強度モルタル内には、鋼繊維または有機繊維が混入されたことを含むものである。
【0007】
外殻体の中空部を必要な耐震性能に応じた形状にし、大きな応力が作用する箇所を厚肉にし、小さな応力が作用する箇所を薄肉にしたプレキャストコンクリート部材にしたことにより、高価な超高強度コンクリートを有効に使用することができ、資源の有効利用が図れる。また大きな応力が作用する箇所が厚肉で、小さな応力が作用する箇所が薄肉のプレキャストコンクリート部材にしたことにより、高価な超高強度コンクリートの使用量を縮減して、強度の低いコンクリートを用いることができるので、材料コストを低減することができる。またプレキャストコンクリート柱またはプレキャストコンクリート梁が高強度、高耐久性および高靱性で、かつ軽量になる。また外殻体の中空内には主筋や帯筋などが配筋されていないので、簡潔な構造になり、製造も容易になる。また鋼繊維または有機繊維などの繊維により高靱性で、耐火性のある外殻体にすることができる。また外殻体を高耐久性のある超高強度コンクリートで形成したので、内部の充填コンクリートは低強度のものが使用でき、コストの低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本願発明のプレキャストコンクリート部材はプレキャストコンクリート柱(以下PC柱という)、またはプレキャストコンクリート梁(以下PC梁という)として使用することができるが、本実施の形態においてはPC柱として説明する。また各実施の形態において同じ構成は同じ符号を付して説明し、異なった構成にのみ異なった符号を付して説明する。
【0009】
図1は第1の実施の形態のPC柱1である。このPC柱1は圧縮強度が80N/mm2以上(または設計基準強度が60N/mm2以上)の超高強度コンクリート、または超高強度モルタルで形成された中空の外殻体2に主筋3および帯筋4が埋設されて構成されたものであり、中空部5が必要な耐震性能に応じた形状に形成されている。例えば、図1のPC柱1は、地震時の曲げ応力が柱頭部6および柱脚部7に大きく作用する場合に対応させたものであり、中空部5が二つの四角錐または円錐を底面で接合した形状、すなわち中央部8が大きくかつ両端部に行くに従って小さくなったものであり、外殻体2の中央部8が薄肉で、柱頭部6および柱脚部7が厚肉になっている。このように地震時の曲げ応力が大きく作用する外殻体2の柱頭部6および柱脚部7を厚肉にすることにより、必要な耐震性能に応じた形状のPC柱1としている。また上記の超高強度コンクリート内には、鋼繊維またはポリプロピレンなどの有機繊維が混入されて、さらに超高強度、高靱性および耐火性を向上させている。なお、PC柱1の断面形状は四角形の他、円形、多角形があり、中空部5の断面形状も四角形および円形の他、多角形もある。
【0010】
また図2のPC柱11は、中空部5を中央部8の大円柱(または四角柱)9と、柱頭部6および柱脚部7の小円柱(または四角柱)10とから構成し、外殻体2の中央部8を薄肉に、柱頭部6および柱脚部7を厚肉にしたものである。
【0011】
また図3のPC柱14は、上記のPC柱1の中空部5に外殻体2よりも強度の低いコンクリート12、または合成樹脂製の発泡体13を充填したものであり、これ以外は上記と同じ構成である。このように外殻体2が高強度、高靱性および高耐久性であるため、中空部5に低強度のコンクリート12を充填しても、高強度、高靱性および高耐久性のPC柱14にすることができる。また図2のPC柱11にも、上記と同様に、中空部5に外殻体2よりも強度の低いコンクリート12、または合成樹脂製の発泡体13を充填することができ、高強度、高靱性および高耐久性のPC柱11にすることができる。
【0012】
また図4は、第2の実施の形態のPC柱15である。このPC柱15は、地震時の大きな曲げ応力が柱脚部7に作用する場合に対応させたものであり、これ以外は第1の実施の形態のPC柱1と同じ構成である。このPC柱15は、下部が小さくかつ上部に行くに従って大きくなった逆四角錐または逆円錐の中空部5を外殻体2に形成することにより、地震時の大きな曲げ応力が作用する柱脚部7を厚肉にしたものである。
【0013】
また図5のPC柱16は、上側の大円柱(または四角柱)9と、下側の小円柱(または四角柱)10とから中空部5を形成して、外殻体2の柱頭部6側を薄肉に、地震時の大きな曲げ応力が作用する柱脚部7側を厚肉にしたものである。
【0014】
また図6のPC柱17は、上記と同じように、中空部5に外殻体2よりも強度の低いコンクリート12、または合成樹脂製の発泡体13を充填したものであり、これ以外は上記と同じ構成である。また図5のPC柱16にも、上記と同様に、中空部5に外殻体2よりも強度の低いコンクリート12、または合成樹脂製の発泡体13を充填することができ、高強度、高靱性および高耐久性のPC柱16にすることができる。
【0015】
また図7は、第3の実施の形態のPC柱18である。このPC柱18は、地震時の大きな曲げ応力が柱頭部6に作用する場合に対応させたものであり、これ以外は第1の実施の形態のPC柱1と同じ構成である。このPC柱18は、下部が大きくかつ上部に行くに従って小さくなった四角錐または円錐の中空部5を外殻体2に形成することにより、地震時の大きな曲げ応力が作用する柱頭部6を厚肉にしたものである。
【0016】
また図8のPC柱19は、下側の大円柱(または四角柱)9と、下側の小円柱(または四角柱)10とから外殻体2に中空部5を形成して、柱頭部6側を薄肉に、地震時の大きな曲げ応力が作用する柱脚部7側を厚肉にしたものである。
【0017】
また図9のPC柱20は、上記と同じように、中空部5に外殻体2よりも強度の低いコンクリート12、または合成樹脂製の発泡体13を充填したものであり、これ以外は上記と同じ構成である。また図8のPC柱19にも、上記と同様に、中空部5に外殻体2よりも強度の低いコンクリート12、または合成樹脂製の発泡体13を充填することができ、高強度、高靱性および高耐久性のPC柱19にすることができる。
【0018】
また図10は、第4の実施の形態のPC柱21、22である。このPC柱21、22は三階分の長さがあり、梁との接合箇所には梁用接合端部23が突設されている。
【0019】
図10の(1)に示すPC柱21は、第1の実施の形態のPC柱1と同じ形状で、かつ三階分の長さを有するものであり、これ以外は上記のPC柱1と同じ構成である。すなわち、地震時の大きな曲げ応力が作用する外殻体2の柱頭部6および柱脚部7を厚肉にし、中央部8を薄肉にしたものである。
【0020】
また図10の(2)に示すPC柱22は、第1〜3の実施の形態のPC柱1、15、18を組み合わせたものであり、これ以外は第1の実施の形態のPC柱1と同じ構成である。すなわち、一階部分を第2の実施の形態のPC柱15で、二階部分を第1の実施の形態のPC柱1で、三階部分を第3の実施の形態のPC柱18でそれぞれ形成したものであり、地震時の曲げ応力が大きく作用する部分を厚肉にした。
【0021】
このように外殻体2が中空かつ軽量であるため、上記のPC柱21、22の製造が可能になり、あたかも鉄骨造のように複数階にわたるPC柱21、22で建物を構築することができる。
【0022】
また上記と同じように、上記の図10の(1)および(2)のPC柱21、22の中空部5に、外殻体2よりも強度の低いコンクリート12、または合成樹脂製の発泡体13を充填して、新たなPC柱を形成することもできる。
【0023】
また図11〜図13は、第1の実施の形態のPC柱の製造方法を示したものである。図11および図12に示すPC柱の製造方法は、はじめに型枠用芯材24を製造するものであり、強度の低いコンクリート12または合成樹脂製の発泡体13で、二つの四角錐または円錐を底面で接合した形状の型枠用芯材24を製造する。次に、この型枠用芯材24の周りに鉄筋25を配筋するとともに、型枠26を組み立て形成する。そして、型枠用芯材24と型枠26との間に超高強度コンクリート27を充填し、これが硬化した後に脱型すると、第1の実施の形態のPC柱1が製造できる。なお、上記の型枠用芯材24は強度の低いコンクリート12または合成樹脂製の発泡体13に限定されるものではなく、その他の材料でも製造することができる。
【0024】
また図13に示すPC柱の製造方法は、中空部5を形成する内型枠28を埋め殺しにするものであり、はじめに二つの四角錐または円錐を底面で接合した形状の内型枠28を形成する。次に、この内型枠28の周りに鉄筋25を配筋するとともに、外型枠29を組み立て形成する。そして、この内型枠28と外型枠29との間に超高強度コンクリート27を充填し、これが硬化した後に脱型すると、第1の実施の形態のPC柱1が製造できる。
【0025】
また、その他の第2〜第4の実施の形態のPC柱15、18、21、22も上記と同じ方法で製造するものである。
【0026】
なお、上記の実施の形態のプレキャストコンクリート部材は全てPC柱で説明したが、これはもちろんPC柱だけでなく、PC梁にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施の形態のPC柱を示し、(1)は応力図を示した断面図、(2)はPC柱の断面図、(3)は中空部が断面四角錐のA−A線断面図、(4)は中空部が断面円錐のA−A線断面図である。
【図2】第1の実施の形態のPC柱の断面図である。
【図3】(1)は中空部にコンクリートを充填した第1の実施の形態のPC柱の断面図、(2)はB−B線断面図である。
【図4】第2の実施の形態のPC柱を示し、(1)は応力図を示した断面図、(2)はPC柱の断面図、(3)は中空部が断面四角錐のC−C線断面図、(4)は中空部が断面円錐のC−C線断面図である。
【図5】第2の実施の形態のPC柱の断面図である。
【図6】(1)は中空部にコンクリートを充填した第2の実施の形態のPC柱の断面図、(2)はD−D線断面図である。
【図7】第3の実施の形態のPC柱を示し、(1)は応力図を示した断面図、(2)はPC柱の断面図、(3)は中空部が断面四角錐のE−E線断面図である。
【図8】第3の実施の形態のPC柱の断面図である。
【図9】(1)は中空部にコンクリートを充填した第3の実施の形態のPC柱の断面図、(2)はF−F線断面図である。
【図10】(1)および(2)は三階分の長さのPC柱の断面図である。
【図11】PC柱の製造方法を示し、(1)は型枠を組立形成した断面図、(2)はG−G線断面図である。
【図12】PC柱の製造方法を示し、(1)は型枠内に超高強度コンクリートを打設した断面図、(2)はH−H線断面図である。
【図13】PC柱の製造方法を示し、(1)は型枠内に超高強度コンクリートを打設した断面図、(2)はI−I線断面図である。
【図14】(1)および(2)は従来のPC柱の断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1、11、14、15、16、17、18、19、20、21、22 PC柱
2、32 外殻体
3 主筋
4 帯筋
5 中空部
6 柱頭部
7 柱脚部
8 中央部
9 大円柱
10 小円柱
12、33 強度の低いコンクリート
13 発泡体
23 梁用接合端部
24 型枠用芯材
25 鉄筋
26 型枠
27 超高強度コンクリート
28 内型枠
29 外型枠
31、34 プレキャストコンクリート柱
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超高強度コンクリートまたは超高強度モルタルで中空の外殻体を形成し、該外殻体の中空部を必要な耐震性能に応じた形状にし、大きな応力が作用する箇所を厚肉にし、小さな応力が作用する箇所を薄肉にしたことを特徴とするプレキャストコンクリート部材。
【請求項2】
外殻体は複数階分の長さであり、梁との接合箇所には梁用接合端部が突設されたことを特徴とする請求項1に記載のプレキャストコンクリート部材。
【請求項3】
外殻体には主筋および帯筋が配筋され、中空部には、外殻体よりも低強度のコンクリートまたは発泡体が充填されたことを特徴とする請求項1または2に記載のプレキャストコンクリート部材。
【請求項4】
超高強度コンクリートまたは超高強度モルタルは、圧縮強度が80N/mm2以上または設計基準強度が60N/mm2以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプレキャストコンクリート部材。
【請求項5】
超高強度コンクリート内または超高強度モルタル内には、鋼繊維または有機繊維が混入されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプレキャストコンクリート部材。
【請求項1】
超高強度コンクリートまたは超高強度モルタルで中空の外殻体を形成し、該外殻体の中空部を必要な耐震性能に応じた形状にし、大きな応力が作用する箇所を厚肉にし、小さな応力が作用する箇所を薄肉にしたことを特徴とするプレキャストコンクリート部材。
【請求項2】
外殻体は複数階分の長さであり、梁との接合箇所には梁用接合端部が突設されたことを特徴とする請求項1に記載のプレキャストコンクリート部材。
【請求項3】
外殻体には主筋および帯筋が配筋され、中空部には、外殻体よりも低強度のコンクリートまたは発泡体が充填されたことを特徴とする請求項1または2に記載のプレキャストコンクリート部材。
【請求項4】
超高強度コンクリートまたは超高強度モルタルは、圧縮強度が80N/mm2以上または設計基準強度が60N/mm2以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプレキャストコンクリート部材。
【請求項5】
超高強度コンクリート内または超高強度モルタル内には、鋼繊維または有機繊維が混入されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプレキャストコンクリート部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−233548(P2006−233548A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−48711(P2005−48711)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【Fターム(参考)】
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