説明

プレキャストブロックの据付方法および据付装置

【課題】プレキャストブロックを据え付けるための隙間(作業空間)を極力小さくすることが可能なプレキャストブロックの据付方法および据付装置を提供することを目的とする。
【解決手段】移送手段によってプレキャストブロック1を移送し、プレキャストブロック1の下床版2のグラウトホール2a…の必要箇所に据付装置10…を、下床版2の上面側から装着固定し、据付装置10…のジャッキ30…を伸長させてプレキャストブロック1を持ち上げてから、プレキャストブロック1下方の移送手段を撤去し、据付装置10…のジャッキ30…を短縮させてプレキャストブロック1を据付地点に据え付けた後、据付装置10…を、グラウトホール2a…から下床版2の上面側に取り外して撤去する。これにより、プレキャストブロック周囲の隙間を極力小さくすることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストブロックの据付方法および据付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばボックスカルバート等のプレキャストブロックを所定の据付地点に据え付ける際は、大型クレーンや門型クレーンによって吊り上げて行われることが多い。しかし、都市部のように建物が密集した場所や交通量の多い場所では、クレーンを据付地点のそばに据えて行う大型のプレキャストブロックの吊り上げや据付作業は困難である。
このため、輸送車両で輸送されてきたプレキャストブロックは、実際に据え付ける地点から離れた場所で荷降ろしが行われ、据付地点まで移送する際は台車に載せられ、荷降ろし地点から据付地点まで敷設された軌道に沿って移送されるのが一般的である。
また、このように台車で据付地点に移送されたプレキャストブロックはジャッキによって持ち上げられ、台車を取り払った後に、ジャッキを短縮させることによって据付地点に据え付けられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−144360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のように、据付地点で、ジャッキによってプレキャストブロックを持ち上げる場合は、この据付作業中のプレキャストブロックと既設のプレキャストブロックとの間や、据付作業中のプレキャストブロックと掘削溝の側壁との間に、ジャッキを操作したり、ジャッキの取り付けや取り外しを行ったりするための作業空間、すなわち、隙間を十分に確保する必要がある。
ところが、据付作業中のプレキャストブロックと既設のプレキャストブロックとの間に十分な間隔の作業空間を確保すると、ジャッキを取り外した後に、プレキャストブロックを既設のプレキャストブロック側に寄せる作業に手間がかかる場合がある。
また、据付作業中のプレキャストブロックと掘削溝の側壁との間に十分な間隔の作業空間を確保するには、余計に幅を広くした状態で掘削溝を掘削しなければならないし、都市部のように施工を行う土地の広さに制限がある場合には、作業空間を確保しながら掘削溝を掘削すること自体が困難な場合もある。
【0005】
本発明の課題は、プレキャストブロックを据え付けるための隙間を極力小さくすることが可能なプレキャストブロックの据付方法および据付装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、移送手段によって据付地点までプレキャストブロックを移送し、
前記プレキャストブロックの下床版に予め複数形成され、この下床版を厚さ方向に貫通するグラウトホールの必要箇所に、上下方向に伸縮するジャッキを備えた据付装置を、前記下床版の上面側から装着固定し、
前記据付装置のジャッキを伸長させることによってプレキャストブロックを持ち上げてから、プレキャストブロック下方の移送手段を撤去し、
前記据付装置のジャッキを短縮させることによってプレキャストブロックを据付地点に据え付けた後、前記据付装置を、前記グラウトホールから前記下床版の上面側に取り外して撤去することを特徴とする。
【0007】
ここで、必要箇所とは、前記複数のグラウトホールのうち、前記据付装置を装着してプレキャストブロックを持ち上げる際に前記移送装置と干渉し合わず、かつ当該プレキャストブロックをバランス良く持ち上げ得る、いずれかのグラウトホールを指している。
前記プレキャストブロックをバランス良く持ち上げ得るには、前記下床版に対して、少なくとも三つのグラウトホールをバランス良く配置形成し、少なくとも三つの据付装置を、バランス良く配置形成された少なくとも三つのグラウトホールに装着固定する必要がある。一般的には、下床版の四隅にグラウトホールを形成し、これら四隅のグラウトホールそれぞれに前記据付装置を装着固定している。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のプレキャストブロックの据付方法において、予め前記据付地点に、前記据付装置の下端部が、スライド手段を介して当接するアンカープレートを設置しておき、
前記移送手段によってプレキャストブロックを据付地点まで移送する際には、この据付前のプレキャストブロックと、既設のプレキャストブロックとの間に、これらプレキャストブロック同士が接触しない程度の隙間を形成するようにして移送し、
前記プレキャストブロック下方の移送手段を撤去した後に、このプレキャストブロックを、前記スライド手段によって据付装置の下端部をアンカープレートに対してスライドさせるようにして、前記既設のプレキャストブロック側に移動させることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のプレキャストブロックの据付方法において、前記据付装置を、前記グラウトホールから撤去した後、必要に応じて、このグラウトホールからグラウト材を注入することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプレキャストブロックの据付方法に用いられる据付装置であって、
前記下床版に形成されたグラウトホールに固定されるとともに、このグラウトホールと同軸の孔部を有し、この孔部の内周面に雌ネジが形成された筒状金具と、
外周面に雄ネジが形成されることによって、前記筒状金具に、前記下床版の上面側から螺合されるとともに、前記グラウトホールと同軸の孔部を有するブッシングと、
前記ブッシングに、前記下床版の上面側から装着固定される前記ジャッキと、を備えており、
前記ジャッキは、前記ブッシングの孔部に、この孔部の軸方向に沿ってスライド自在に挿入されるシリンダと、
前記シリンダを、前記ブッシングの孔部の軸方向に沿って上下方向に進退させるとともに、前記ブッシングに固定されるジャッキ本体と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、下床版の上面側で据付装置を装着または撤去できるので、据付作業中のプレキャストブロックと既設のプレキャストブロックとの間や、据付作業中のプレキャストブロックと掘削溝の側壁との間に作業空間を確保せずとも、プレキャストブロックを据付地点に据え付けることができ、プレキャストブロック周囲の隙間を極力小さくすることが可能となる。
これによって、据付地点まで移送したプレキャストブロックを、既設のプレキャストブロック側に十分な間隔の隙間を確保せずに据え付けることができるので、プレキャストブロックを既設のプレキャストブロック側に寄せる作業の手間を軽減できる。
また、プレキャストブロックが設置される掘削溝を、プレキャストブロックと掘削溝の側壁との間に十分な間隔の作業空間を確保せずに掘削できるので、余計に幅を広くした状態で掘削溝を掘削する必要がなく、掘削溝の掘削に係る手間を軽減できる。
さらに、都市部のように施工を行う土地の広さに制限がある場合であっても、プレキャストブロックの据付作業を確実に行うことができる。また、プレキャストブロックを移送した後はクレーン等の大型機械を用いることなく施工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】プレキャストブロックおよびグラウトホールを示す斜視図である。
【図2】本発明の据付装置をグラウトホールに装着させた状態を示す部分断面図である。
【図3】本発明の据付方法のうち、プレキャストブロックを既設のプレキャストブロック側にスライドさせる状態を示す平面図である。
【図4】掘削溝内におけるプレキャストブロックの位置関係等を示す断面図である。
【図5】筒状金具との他の構成を示す断面図である。
【図6】ブッシングとジャッキとの連結方法を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図6において符号1は、プレキャストブロックを示す。本実施の形態のプレキャストブロック1はボックスカルバートであり、下床版2と、上床版3と、これら下床版2と上床版3の両端部間に設けられる側壁4,4とを備えており、角筒状に形成されている。
前記下床版2には、この下床版2の四隅に、この下床版2を厚さ方向に貫通するグラウトホール2a…が形成されている。このグラウトホール2a…は、プレキャストブロック1を接地させた後に、必要に応じて下床版2の下面と前記据付地点との間にグラウト材を充填するために使用される。
なお、本実施の形態のプレキャストブロック1はボックスカルバートであるとしたが、これに限られるものではなく、前記下床版2と同様に底面部を有するものであれば適宜対応可能である。
【0014】
プレキャストブロック1は、輸送車両等によって搬入され、実際に据え付ける地点から離れた場所で荷降ろしされる。この荷降ろし地点から据付地点までは、プレキャストブロック1が埋設される掘削溝5が掘削されている。
掘削溝5の幅は、プレキャストブロック1の幅(両側壁4,4間の長さ)よりも若干長く設定されている。したがって、掘削溝5の側壁6とプレキャストブロック1の側壁4との間には若干の隙間しか形成されないように設定されている。
ここで、掘削溝5の側壁6とプレキャストブロック1の側壁4との間の若干の隙間とは、前記プレキャストブロック1が、掘削溝5のカーブを曲がりきれる程度の余裕を持たせた隙間とされている。
また、掘削溝5の底面には基礎コンクリート7が凹凸を極力無くし、平らに施工されている。さらに、基礎コンクリート7の上面には、荷降ろし地点から据付地点まで軌道8が敷設されて固定されており、この軌道8に沿って、プレキャストブロック1が載置された台車9を移動させることができる(図2〜図4参照)。
なお、台車9は、持ち上げるだけで軌道8上から撤去が可能であり、軌道8も、前記基礎コンクリート7の上面から取り外すことによって撤去が可能となっている。
また、軌道8は、複数の金属製のレール材を掘削溝5の延在方向に沿って接続することによって形成されている。さらに、この軌道8は、図示はしないが、敷鉄板を介して基礎コンクリート7に固定されているものとする。
【0015】
前記プレキャストブロック1の下床版2の四隅に形成されたグラウトホール2a…それぞれには、図2に示すように、前記プレキャストブロック1を据付地点に据え付けるための据付装置10…が、前記下床版2の上面側から装着固定される。
この据付装置10は、筒状金具20と、ブッシング23と、ジャッキ30と、を備えている。
【0016】
前記筒状金具20は、前記グラウトホール2aと同軸の孔部21を有する。この孔部21の内周面には雌ネジが形成されている。
また、外周面には、図2および図5に示すように、付着性能を高めるために、複数のフランジ状の凸部22…や溝部29…を設ける。これら複数の凸部22…および溝部29…は、筒状金具20の軸方向に間隔をあけて配置されている。
この筒状金具20は、前記プレキャストブロック1を形成する際に埋め込まれるものであり、前記下床版2にグラウトホール2aを形成するのと同時に、このグラウトホール2aの孔壁に噛み合う状態となる。すなわち、筒状金具20は、前記下床版2に一体化された状態となっている。
【0017】
前記ブッシング23は、筒状本体24と、筒状本体24に形成されるとともに前記グラウトホール2aと同軸の孔部25と、筒状本体24の上端部に設けられるフランジ部26,26とを有する。
前記孔部25の内周面は平滑な面とされており、前記筒状本体24の外周面には雄ネジが形成されている。
前記フランジ部26,26は、前記筒状本体24の上端部の周方向の二箇所に、等間隔に設けられている。これら二つのフランジ部26,26は、適当な間隔に配置されている。ここで、適当な間隔とは、等間隔でも良いし、不等間隔でも良いものとし、本実施の形態においては等間隔に配置されている。
このブッシング23は、前記筒状金具20に、前記下床版2の上面側から螺合される。すなわち、ブッシング23の外周面の雄ネジと、前記筒状金具20の孔部21の雌ネジとを螺合することによって、このブッシング23を前記筒状金具20に対して固定することができる。
【0018】
前記ジャッキ30は、前記下床版2の上面側から装着固定されるものであり、シリンダ31と、ジャッキ本体35とを有する。
また、このジャッキ30は、油圧式で、かつシリンダ31の長さが長いロングストローク式のジャッキとされている。
【0019】
シリンダ31は、前記ブッシング23の孔部25に、この孔部25の軸方向に沿ってスライド自在に挿入されている。
また、このシリンダ31は、プレキャストブロック1を上方に持ち上げたときに、前記軌道8および台車9を撤去できる十分な空間を形成するために長尺に形成されている。
なお、このシリンダ31は、伸びた状態のときに前記下床版2の下方に突出し、縮んだ状態のときには前記下床版2の下方に突出しないように設定されている。
【0020】
なお、前記シリンダ31下端部の下方には、このシリンダ31の下端部が直接当接することにより前記基礎コンクリート7が傷付くことを防ぐためにアンカープレート33が配置される。このアンカープレート33の上面は平滑な面とされている。
また、シリンダ31の下端部は、フッ素樹脂等の低摩擦材32によってコーティングされており、これによって、シリンダ31が、アンカープレート33の上面をスライドできるように設定されている。すなわち、シリンダ31の下端部に取り付けられた低摩擦材32がスライド手段とされている。
なお、据付装置10は、前記下床版2の四隅のグラウトホール2a…にそれぞれ固定されているため、四つの据付装置10…が用いられる。このため、アンカープレート33も四枚用いられる。
【0021】
前記ジャッキ本体35は、前記ブッシング23に固定されており、前記シリンダ31を、前記ブッシング23の孔部25の軸方向に沿って上下方向に進退できるように構成されている。このジャッキ本体35によって前記シリンダ31を伸縮させるには、このジャッキ本体35内の油圧を高くしたり緩めたりすることで伸縮させることができる。なお、油圧の制御は、図示しない油圧制御装置によって行われる。
【0022】
前記ジャッキ本体35の下端部には、このジャッキ本体35の下端部の周方向の二箇所にフランジ部36,36が設けられている。これら二つのフランジ部36,36は、適当な間隔に配置されている。ここで、適当な間隔とは、等間隔でも良いし、不等間隔でも良いものとし、本実施の形態においては等間隔に配置されている。
このジャッキ本体35のフランジ部36,36と、前記ブッシング23のフランジ部26,26とは、図2および図6に示すように、ジョイント金具40によって連結される。
このジョイント金具40は、環状本体41と、この環状本体41の内周面に一体形成される複数の引掛けリブ42…とを備えている。
前記環状本体41の内周面の直径は、前記フランジ部26,26を含めたブッシング23の上端部の直径と、前記フランジ部36,36を含めたジャッキ本体35の下端部の直径よりも若干大きくなるように設定されている。
前記引掛けリブ42は、前記環状本体41の内周面に沿って円弧状に形成されており、前記環状本体41の内周面の上端部および下端部それぞれに二つずつ等間隔に配置されている。これら上端部の二つの引掛けリブ42,42間の間隔と、下端部の二つの引掛けリブ42,42間の間隔は、前記ブッシング23のフランジ部26,26と、前記ジャッキ本体35のフランジ部36,36を挿通できる程度の寸法に設定されている。そして、この間隔部から挿通される各フランジ部26,36は、ジョイント金具40自体やジャッキ30を周方向に回転させることで上下の引掛けリブ42,42間に嵌まり込むことになり、これによって、前記ジャッキ本体35のフランジ部36,36と、前記ブッシング23のフランジ部26,26との連結が行われる。
【0023】
次に、プレキャストブロック1の据付方法について説明する。
なお、本実施の形態のプレキャストブロック1は、掘削溝5に設置される複数のプレキャストブロックのうち、二番目以降に設置されるプレキャストブロックとする。したがって、このプレキャストブロック1よりも先に施工が行われたプレキャストブロックがあり、本実施の形態においては便宜上、既設のプレキャストブロック1aと称する。
【0024】
まず、輸送車両等によって搬入され、実際に据え付ける地点から離れた場所で荷降ろしされたプレキャストブロック1を軌道8上に配置された台車9の上面に載置する。
そして、台車9を、例えばバッテリー機関車(図示せず)等の移送用車両によって据付地点まで移送する。
【0025】
なお、据付地点の基礎コンクリート7上には、前記シリンダ31の下方に位置する箇所に前記アンカープレート33を予め配置しておく。
また、前記台車9によって前記プレキャストブロック1を据付地点まで移送する際には、図3および図4に示すように、このプレキャストブロック1と、既設のプレキャストブロック1aとの間に、これらプレキャストブロック1,1a同士が接触しない程度の隙間を形成するようにして移送する。
さらに、予め、前記プレキャストブロック1が実際に据え付けられる据付ブロック34を、前記アンカープレート33の周囲に、アンカープレート33から間隔をあけて複数配置しておく。
なお、この据付ブロック34は、その高さが、前記アンカープレート33の高さ(厚み)よりも高くなるように設定されている。
【0026】
続いて、前記下床版2の四隅に形成されたグラウトホール2a…それぞれに、前記据付装置10を、前記下床版2の上面側から装着固定する。
すなわち、まず、前記グラウトホール2a…に予め設けられた前記筒状金具20に対して前記ブッシング23を、前記下床版2の上面側から螺合して固定する。この時、フランジ部26,26と筒状金具20の上面との間に、前記ジョイント金具40下端部の引掛けリブ42,42を挿入できる程度の隙間をあけておくようにする。
次に、前記ジョイント金具40を、前記ブッシング23に対して、このジョイント金具40下端部の引掛けリブ42,42間の間隔部が前記フランジ部26,26を通過するようにして上方から取り付ける。そして、このジョイント金具40を周方向に回転させて、前記下端部の引掛けリブ42,42を、前記ブッシング23のフランジ部26,26と筒状金具20の上面との間に挿入して引掛ける。
次に、前記ジャッキ30を、前記下床版2の上面側から装着固定する。つまり、前記シリンダ31をブッシング23の孔部25に挿入しつつ、前記ジャッキ本体35のフランジ部36,36を、前記ジョイント金具40上端部の引掛けリブ42,42間の間隔部から挿入する。そして、前記ジャッキ本体35を周方向に回転させて、このジャッキ本体35のフランジ部36,36を、前記ブッシング23のフランジ部26,26の上面と前記上端部の引掛けリブ42,42との間に挿入して引掛ける。
【0027】
続いて、前記据付装置10…のジャッキ30…を伸長させることによってプレキャストブロック1を持ち上げてから、このプレキャストブロック1下方の軌道8および台車9を撤去する。
すなわち、前記ジャッキ本体35の油圧を高めるように調整して前記シリンダ31を伸長させる。シリンダ31の下方には前記アンカープレート33が配置されているため、このシリンダ31を、下端部が前記アンカープレート33の上面に当接するまで伸長させるようにする。シリンダ31の下端部が前記アンカープレート33に対してズレなく当接したら、さらにシリンダ31を伸長させて、前記プレキャストブロック1を持ち上げる。
なお、四つのジャッキ30…は油圧制御装置を介して連動しており、前記プレキャストブロック1を傾き無く持ち上げることができる。
このようにプレキャストブロック1を持ち上げたら、まず、前記台車9を撤去し、続いて前記軌道8を撤去する。
【0028】
続いて、前記据付装置10…で持ち上げられた状態のプレキャストブロック1を、前記下床版2の底面が前記据付ブロック34に接する直前まで下げてから、前記既設のプレキャストブロック1a側に移動させる。
すなわち、前記シリンダ31の下端部には、スライド手段として前記低摩擦材32がコーティングされているので、この低摩擦材32の低摩擦機能を利用して、前記シリンダ31の下端部を前記アンカープレート33に対してスライドさせるようにして、前記プレキャストブロック1を、前記既設のプレキャストブロック1a側に移動させる。これによって、前記プレキャストブロック1を既設のプレキャストブロック1a側に寄せる前までに、これらプレキャストブロック1と既設のプレキャストブロック1aとが強く接触することを避けることができるので、これらプレキャストブロック1と既設のプレキャストブロック1aの破損を抑制できるとともに、両者間の隙間を無くして設置することができる。
なお、前記プレキャストブロック1を、前記既設のプレキャストブロック1a側に移動させる距離は、前記シリンダ31が前記アンカープレート33から落ちない程度の距離とされている。したがって、前記台車9によって前記プレキャストブロック1を据付地点まで移送する際に前記プレキャストブロック1と、既設のプレキャストブロック1aとの間に形成される隙間も、前記シリンダ31が前記アンカープレート33から落ちない程度の隙間とされている。
【0029】
続いて、前記シリンダ31を短縮させることによってプレキャストブロック1を徐々に下げて据付地点に据え付ける。すなわち、前記据付ブロック34上に、プレキャストブロック1を載置する。なお、この時、前記下床版2とアンカープレート33との間には、注入されるグラウトが通過する隙間を形成できるようになっている。上述のように、四つのジャッキ30…は連動しているので、プレキャストブロック1を傾き無く下げることができる。
その後、前記据付装置10…を、前記グラウトホール2a…から前記下床版2の上面側に取り外して撤去する。
すなわち、まず、前記ジャッキ本体35を周方向に回転させ、フランジ部36,36を、前記ブッシング23のフランジ部26,26の上面と前記上端部の引掛けリブ42,42との間から抜き、さらに、前記ジョイント金具40上端部の引掛けリブ42,42間の間隔部から上方に抜き取る。この時、前記シリンダ31もブッシング23の孔部25から抜き取られることになり、これによって、前記ジャッキ30を上方に持ち上げて取り外すことができる。
次に、前記ジョイント金具40を周方向に回転させ、下端部の引掛けリブ42,42を、前記ブッシング23のフランジ部26,26と筒状金具20の上面との間から抜き、さらに、このジョイント金具40を、前記下端部の引掛けリブ42,42間の間隔部が前記フランジ部26,26を通過するようにして上方に抜き取る。これによって、前記ジョイント金具40を取り外すことができる。
次に、前記ブッシング23を、ネジ同士の螺合状態を解除する方向に回転させて上方に取り外すようにする。
なお、前記アンカープレート33…および据付ブロック34…は、前記据付装置10が撤去された後もプレキャストブロック1の下方に残されることになる。
【0030】
据付装置10…を、前記グラウトホール2a…から撤去した後は、例えば逆止弁付きの器具である注入口(図示せず)をグラウトホール2a…に取り付け、この注入口からグラウト材を注入する。
注入されたグラウト材は、前記プレキャストブロック1の下床版2と前記基礎コンクリート7との間の隙間(空隙部)に充填される。このグラウト材が固化することによって前記下床版2と基礎コンクリート7とを密着させることができるので、前記プレキャストブロック1の設置安定性を高めることができる。
以上のようにしてプレキャストブロック1を、掘削溝5の所定の据付地点に据え付けることができる。
【0031】
なお、本実施の形態において、前記ブッシング23、ジョイント金具40、ジャッキ30の装着・取り外し作業は、全て人力で行うことができる。
また、前記下床版2の上方に、前記据付装置10の取り付け・取り外し作業が行えるとともに作業員が入るスペースを確保できれば、プレキャストブロックの形状に関わらず施工を行うことができる。したがって、本実施の形態のプレキャストブロック1はボックスカルバートとしたが、これに限られるものではなく、適宜変更可能である。
また、本実施の形態においては、前記グラウトホール2aからグラウト材を注入するものとしたが、ドライモルタルを据付地点の空隙部に予め設けておく場合は、この限りではない。
【0032】
なお、本実施の形態において、前記グラウトホール2aは、前記下床版2の四隅、すなわち下床版2に対して四つ形成されるものとしたが、これに限られるものではなく、前記下床版2に対して少なくとも三つ形成されていれば良いものとする。
ただし、据付装置10が装着されるグラウトホール2aは、前記下床版2に形成されるグラウトホール2aの数が何個であっても、前記プレキャストブロック1を持ち上げる際に前記移送装置と干渉し合わずに、かつ当該プレキャストブロック1をバランス良く持ち上げ得る箇所に形成されたものが選択される。
特に大きいサイズのプレキャストブロックの場合は、グラウトの充填性を考慮した数のグラウトホールを下床版に形成するとともに、プレキャストブロックの重量に応じた数の据付装置10を装着させる場合もある。
【0033】
本実施の形態によれば、前記下床版2の上面側で据付装置10を装着または撤去できるので、前記プレキャストブロック1と既設のプレキャストブロック1aとの間や、前記プレキャストブロック1と掘削溝5の側壁6,6との間に作業空間を確保せずとも、プレキャストブロック1を据付地点に据え付けることができ、プレキャストブロック1周囲の隙間を極力小さくすることが可能となる。
これによって、据付地点まで移送したプレキャストブロック1を、既設のプレキャストブロック1a側に十分な間隔の隙間を確保せずに据え付けることができるので、プレキャストブロック1を既設のプレキャストブロック1a側に寄せる作業の手間を軽減できる。
また、前記プレキャストブロック1が設置される掘削溝5を、プレキャストブロック1と掘削溝5の側壁6,6との間に十分な間隔の作業空間を確保せずに掘削できるので、余計に幅を広くした状態で掘削溝5を掘削する必要がなく、掘削溝5の掘削に係る手間を軽減できる。
さらに、都市部のように施工を行う土地の広さに制限がある場合であっても、以上のようなプレキャストブロック1の据付作業を確実に行うことができる。また、プレキャストブロック1を移送した後はクレーン等の大型機械を用いることなく施工を行うことができる。
【符号の説明】
【0034】
1 プレキャストブロック
1a 既設のプレキャストブロック
2 下床版
2a グラウトホール
3 上床版
4 側壁
5 掘削溝
6 側壁
7 基礎コンクリート
8 軌道
9 台車
10 据付装置
20 筒状金具
21 孔部
22 凸部
23 ブッシング
24 筒状本体
25 孔部
26 フランジ部
29 溝部
30 ジャッキ
31 シリンダ
32 低摩擦材
33 アンカープレート
34 据付ブロック
35 ジャッキ本体
36 フランジ部
40 ジョイント金具
41 環状本体
42 引掛けリブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移送手段によって据付地点までプレキャストブロックを移送し、
前記プレキャストブロックの下床版に予め複数形成され、この下床版を厚さ方向に貫通するグラウトホールの必要箇所に、上下方向に伸縮するジャッキを備えた据付装置を、前記下床版の上面側から装着固定し、
前記据付装置のジャッキを伸長させることによってプレキャストブロックを持ち上げてから、プレキャストブロック下方の移送手段を撤去し、
前記据付装置のジャッキを短縮させることによってプレキャストブロックを据付地点に据え付けた後、前記据付装置を、前記グラウトホールから前記下床版の上面側に取り外して撤去することを特徴とするプレキャストブロックの据付方法。
【請求項2】
予め前記据付地点に、前記据付装置の下端部が、スライド手段を介して当接するアンカープレートを設置しておき、
前記移送手段によってプレキャストブロックを据付地点まで移送する際には、この据付前のプレキャストブロックと、既設のプレキャストブロックとの間に、これらプレキャストブロック同士が接触しない程度の隙間を形成するようにして移送し、
前記プレキャストブロック下方の移送手段を撤去した後に、このプレキャストブロックを、前記スライド手段によって据付装置の下端部をアンカープレートに対してスライドさせるようにして、前記既設のプレキャストブロック側に移動させることを特徴とする請求項1に記載のプレキャストブロックの据付方法。
【請求項3】
前記据付装置を、前記グラウトホールから撤去した後、必要に応じて、このグラウトホールからグラウト材を注入することを特徴とする請求項1または2に記載のプレキャストブロックの据付方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のプレキャストブロックの据付方法に用いられる据付装置であって、
前記下床版に形成されたグラウトホールに固定されるとともに、このグラウトホールと同軸の孔部を有し、この孔部の内周面に雌ネジが形成された筒状金具と、
外周面に雄ネジが形成されることによって、前記筒状金具に、前記下床版の上面側から螺合されるとともに、前記グラウトホールと同軸の孔部を有するブッシングと、
前記ブッシングに、前記下床版の上面側から装着固定される前記ジャッキと、を備えており、
前記ジャッキは、前記ブッシングの孔部に、この孔部の軸方向に沿ってスライド自在に挿入されるシリンダと、
前記シリンダを、前記ブッシングの孔部の軸方向に沿って上下方向に進退させるとともに、前記ブッシングに固定されるジャッキ本体と、を有することを特徴とするプレキャストブロックの据付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−36295(P2013−36295A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175575(P2011−175575)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000112749)フジミ工研株式会社 (24)
【Fターム(参考)】