説明

プレキャスト部材の接合構造およびプレキャスト部材

【課題】突合部分の回転を許容する形式のプレキャスト部材の接合構造であって、突合部分にひび割れや欠け等が発生し難い構成を具備したプレキャスト部材の接合構造を提供することを課題とする。
【解決手段】隣接する二つのプレキャスト部材1,1の継手面11,12を突き合せることで形成されるプレキャスト部材の接合構造において、継手面11を凸曲面11aと凹曲面11bとによって断面S字状に成形するとともに、継手面12を凸曲面12aと凹曲面12bとによって断面S字状に成形し、一方のプレキャスト部材1の凸曲面11aおよび凹曲面11bを、それぞれ他方のプレキャスト部材1の凹曲面12bおよび凸曲面12aに突き合せる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木構造物や建築構造物を構築する際に使用されるプレキャスト部材およびその接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
シールドトンネルの一次覆工を構成するセグメント(プレキャスト部材)の接合構造として、一方のセグメントの継手面に設けた円弧面状の凹曲面に他方のセグメントの継手面に設けた円弧面状の凸曲面を突き合せることで形成されるナックルジョイント式の接合構造(継手構造)が知られている(例えば、特許文献1乃至特許文献3参照。)。
【0003】
ナックルジョイント式の接合構造は、突合部分の回転を許容する形式の接合構造であり、曲げモーメントを伝達しないヒンジに近い構造であることから、継手金物を介して結合する場合に比べて、セグメントに発生する曲げモーメントを小さくすることが可能となり、ひいては、セグメントの小断面化を図ることが可能となる。
【0004】
【特許文献1】特開2001−288992号公報(図6)
【特許文献2】特開平8−326488号公報
【特許文献3】特開2002−013393号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1乃至特許文献3に開示された接合構造では、突合部分の回転を許容するために、突合部分以外の継手面間にクリアランスを設ける必要があるが、このようにすると、一方のセグメントの凸曲面と他方のセグメントの凹曲面との接触部分に応力が集中することになるので、突合部分にひび割れや欠け等が発生する虞がある。また、特許文献1乃至特許文献3に開示された接合構造では、突合部分の回転量が大きくなったときに、セグメントの角部同士が接触することになるので、それ以上の回転が制限されるだけでなく、角部にひび割れや欠け等が発生する虞もある。
【0006】
なお、前記した問題は、シールドトンネルの一次覆工の場合に限らず、トンネルの内空に設置される補修用の覆工、立坑、サイロなどの筒状の構造物を構成するプレキャスト部材の接合構造や、2ヒンジや3ヒンジのアーチカルバートなどを構成するプレキャスト部材の接合構造として、突合部分の回転を許容するナックルジョイント式の接合構造を採用する場合に共通して当てはまる問題である。
【0007】
このような観点から、本発明は、突合部分の回転を許容する形式のプレキャスト部材の接合構造であって、突合部分にひび割れや欠け等が発生し難い構成を具備したプレキャスト部材の接合構造を提供することを第一の課題とし、この接合構造に使用されるプレキャスト部材を提供することを第二の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した第一の課題を解決する本発明に係るプレキャスト部材の接合構造は、隣接する二つのプレキャスト部材の継手面同士を突き合せることで形成されるプレキャスト部材の接合構造であって、前記継手面が、凸曲面と凹曲面とによって断面S字状に成形されており、一方の前記プレキャスト部材の前記凸曲面および前記凹曲面が、それぞれ他方の前記プレキャスト部材の前記凹曲面および前記凸曲面に突き合されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るプレキャスト部材の接合構造は、要するに、凸曲面と凹曲面とによって断面S字状に成形された継手面同士を突き合せるところに特徴がある。このようにすると、突合部分における回転が許容されることになるので、従来のナックルジョイント式の接合構造と同様に、プレキャスト部材に発生する曲げモーメントを小さくすることが可能となり、ひいては、プレキャスト部材の小断面化を図ることが可能となる。特に、本発明では、一方のプレキャスト部材の凸曲面および凹曲面を、他方のプレキャスト部材の凹曲面および凸曲面に突き合せることとしたので、突合部分での応力集中が起こり難く、したがって、突合部分にひび割れや欠け等が発生し難くなる。なお、本発明では、一方のプレキャスト部材の凸曲面および凹曲面を、他方のプレキャスト部材の凹曲面および凸曲面に突き合せているので、継手金物等を使用しなくとも、突合部分においてせん断力を伝達することができる。
【0010】
本発明においては、一方の前記プレキャスト部材の前記継手面および他方の前記プレキャスト部材の前記継手面のそれぞれにおいて、前記凸曲面および前記凹曲面を連続させ、前記凸曲面と前記凹曲面の境界における前記凸曲面の接線および前記凹曲面の接線を一致させることが望ましい。このようにすると、凸曲面と凹曲面とが滑らかに連なることになるので、突合部分にひび割れや欠け等が発生し難くなる。
【0011】
本発明においては、前記凸曲面および前記凹曲面を円弧面とし、一方の前記プレキャスト部材の前記凸曲面および前記凹曲面を、それぞれ他方の前記プレキャスト部材の前記凹曲面および前記凸曲面に面接触させることが望ましい。このようにすると、突合部分における回転を許容しつつ、継手面同士の接触面積を増大させることが可能となるので、応力がより広範囲に分散し、突合部分にひび割れや欠け等がより一層発生し難くなる。
【0012】
なお、継手面の寸法等に特に制限はないが、他方の前記プレキャスト部材の前記凹曲面の半径を、一方の前記プレキャスト部材の前記凸曲面の半径と同一にするとともに、他方の前記プレキャスト部材の前記凸曲面の半径を、一方の前記プレキャスト部材の前記凹曲面の半径と同一にすることが望ましく、より好適には、前記凸曲面の半径および前記凹曲面の半径を前記プレキャスト部材の厚さ寸法の1/2と等しくすることが望ましい。
【0013】
前記した第二の課題を解決する本発明に係るプレキャスト部材は、コンクリート構造物を構成するプレキャスト部材であって、隣接する他のプレキャスト部材に突き合わされる継手面が、凸曲面と凹曲面とによって断面S字状に成形されていることを特徴とする。
【0014】
本発明に係るプレキャスト部材によれば、これと同様の構成を具備する他のプレキャスト部材の継手面に突き合せることで、突合部分にひび割れや欠け等が発生し難い接合構造を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るプレキャスト部材の接合構造によれば、突合部分にひび割れや欠け等が発し難くなる。また、本発明に係るプレキャスト部材によれば、これと同様の構成を具備する他のプレキャスト部材に突き合せることで、突合部分にひび割れや欠け等が発生し難い接合構造を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係るプレキャスト部材およびその接合構造を実施するための最良の形態を、添付した図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
本実施形態に係るプレキャスト部材は、図1に示すように、円筒状のコンクリート構造物であるセグメントリングRを構成するシールドトンネル用のセグメント1である。なお、図示は省略するが、複数のセグメントリングRをトンネル軸方向(図1では紙面垂直方向)に連設すると、シールドトンネルの一次覆工が形成される。
【0018】
セグメント1は、鉄筋コンクリート製であり、円筒を複数個(本実施形態では七つ)に等分割した形態を呈している。すなわち、セグメント1は、図2に示すように、平面視した形状が矩形形状を呈しており、トンネル軸方向から見た形状が円弧状を呈している。より詳細に説明すると、セグメント1は、図3の(a)にも示すように、周方向の端面である一対の継手面11,12と、セグメントリングR(図1参照)の外周面となる円弧面状の外面13と、セグメントリングRの内周面となる円弧面状の内面14と、トンネル軸方向の端面である側面15とを備えている。なお、一対の継手面11,12を区別する場合には、それぞれ「第一継手面11」および「第二継手面12」と称する。また、外面13および内面14と同心の円弧面であって外面13および内面14の中央に位置する円弧面を「中心面16」と称する。
【0019】
第一継手面11は、隣接する他のセグメント1の第二継手面12に突き合わされる部位であり、図3の(b)にも示すように、凸曲面11aと凹曲面11bとによって断面S字状に成形されている。なお、第一継手面11の断面形状は、セグメント幅方向に一様である。
【0020】
凸曲面11aは、隣接する他のセグメント1側に凸な曲面であり、本実施形態では、中心面16よりも外面13側に形成されている。本実施形態の凸曲面11aは、円弧面であり、この円弧面の中心Pは、中心面16と同心の円弧面であって外面13および中心面16の中央に位置する円弧面17上に位置している。また、凸曲面11aの半径rは、外面13と中心面16の離隔距離d(=セグメント厚さ寸法Dの1/2)と等しくなっている。
【0021】
凹曲面11bは、隣接する他のセグメント1側に凹な曲面であり、本実施形態では、中心面16よりも内面14側に形成されている。本実施形態の凹曲面11bは、円弧面であり、この円弧面の中心Pは、中心面16と同心の円弧面であって内面14および中心面16の中央に位置する円弧面18上に位置している。また、凹曲面11bの半径rは、外面13と中心面16の離隔距離d(=セグメント厚さ寸法Dの1/2)と等しくなっている。つまり、凹曲面11bの半径rは、凸曲面11aの半径rと同一である。
【0022】
本実施形態においては、凸曲面11aおよび凹曲面11bが連続して形成されていて、凸曲面11aおよび凹曲面11bの境界(すなわち、第一継手面11の変極点)Sにおける凸曲面11aの接線(接触平面)Tと凹曲面11bの接線(接触平面)Tが一致している。つまり、凸曲面11aおよび凹曲面11bは、滑らかに連なっている。なお、凸曲面11aと凹曲面11bの境界Sは、本実施形態では、中心面16上に位置している。
【0023】
第二継手面12は、図3の(c)に示すように、隣接する他のセグメント1の第一継手面11に突き合わされる部位であり、凸曲面12aと凹曲面12bとによって断面S字状に成形されている。なお、第二継手面12の断面形状も、セグメント幅方向に一様である。
【0024】
凸曲面12aは、隣接する他のセグメント1の凹曲面11bに突き合わされる部位であり、第一継手面11の凸曲面11aとは反対に、中心面16よりも内面14側に形成されているが、凸曲面12aの形状は、第一継手面11の凸曲面11aと同一である。つまり、凸曲面12aの半径r´は、第一継手面11の凸曲面11aの半径r(図3の(b)参照)と同一であり、さらには、第一継手面11の凹曲面11bの半径r(図3の(b)参照)と同一である。
【0025】
凹曲面12bは、隣接する他のセグメント1の凸曲面11aに突き合わされる部位であり、第一継手面11の凹曲面11bとは反対に、中心面16よりも外面13側に形成されているが、凹曲面12bの形状は、第一継手面11の凹曲面11bと同一である。つまり、凹曲面12bの半径r´は、第一継手面11の凹曲面11aの半径r(図3の(b)参照)と同一であり、さらには、第一継手面11の凸曲面11aの半径r(図3の(b)参照)と同一である。
【0026】
なお、第一継手面11の内面14側の隅角部(凹曲面11bの内面14側の縁部)および第二継手面12の外面13側の隅角部(凹曲面12bの外面13側の縁部)は、曲面状に面取りされている。
【0027】
次に、セグメント1,1の断面S字状の継手面11,12を突き合せることで形成されるプレキャスト部材の接合構造(以下、「接合構造」という。)を詳細に説明する。
【0028】
本実施形態に係る接合構造は、図4の(a)に示すように、一方のセグメント1の第一継手面11に含まれる凸曲面11aおよび凹曲面11bを、それぞれ他方のセグメント1の第二継手面12に含まれる凹曲面12bおよび凸曲面12aに突き合せることで形成される。
【0029】
本実施形態では、凸曲面11a,12aおよび凹曲面11b,12bが円弧面であり、かつ、一方のセグメント1の凸曲面11aの半径と当該凸曲面11aに突き合わされる他方のセグメント1の凹曲面12bの半径とが同一で、一方のセグメント1の凹曲面11bの半径と当該凹曲面11bに突き合わされる他方のセグメント1の凸曲面12aの半径とが同一であることから、一方のセグメント1の第一継手面11と他方のセグメント1の第二継手面12とを突き合せると、一方のセグメント1の凸曲面11aと他方のセグメント1の凹曲面12bとが面接触し、一方のセグメント1の凹曲面11bと他方のセグメント1の凸曲面12aとを面接触することになる。
【0030】
なお、本実施形態においては、第一継手面11の内面14側の隅角部および第二継手面12の外面13側の隅角部が面取りされていることから、一方のセグメント1の第一継手面11と他方のセグメント1の第二継手面12とを突き合せると、セグメント1,1の外面13側および内面側14のそれぞれに、セグメント幅方向に沿って断面略三角形状の目地(溝)1aが形成されることになる。
【0031】
ちなみに、図1に示すセグメントリングRを構築するには、複数のセグメント1,1,…を順次連設すればよいが、最後に組み付けるセグメント1については、トンネル軸方向(図1では紙面垂直方向)から挿入する必要がある。
【0032】
以上のように構成された接合構造においては、セグメント1,1に対して図4の(b)に示すようなモーメント(正曲げ)が作用する場合には、内面14側に位置する凹曲面11bと凸曲面12aとが互いに摺動回転しつつ、外面13側に位置する凸曲面11aと凹曲面12bとが離間し、図4の(c)に示すようなモーメント(負曲げ)が作用する場合には、外面13側に位置する凸曲面11aと凹曲面12bとが互いに摺動回転しつつ、内面14側に位置する凹曲面11bと凸曲面12aとは離間する。つまり、本実施形態に係る接合構造によれば、正曲げの場合も負曲げの場合もセグメント1,1の突合部分における回転が許容されることになるので、従来のナックルジョイント式の接合構造と同様に、セグメント1に発生する曲げモーメントを小さくすることが可能となり、ひいては、セグメント1の小断面化を図ることが可能となる。また、本実施形態に係る接合構造によれば、セグメント1,1の角部同士が接触することがないので、正曲げの場合も負曲げの場合も突合部分が無理なく回転する。つまり、本実施形態に係る接合構造によれば、回転が制限されることがないので、従来のナックルジョイント式の接合構造よりも、ヒンジに近い構造となる。さらに、一方のセグメント1の凸曲面11aおよび凹曲面11bを、他方のセグメント1の凹曲面12bおよび凸曲面12aに突き合せているので、継手金物等を使用しなくとも、突合部分においてセグメント厚さ方向(内外方向)のせん断力を伝達することができる。なお、本実施形態に係る接合構造によれば、せん断力の作用方向に係らず、せん断力を伝達することができるが、とりわけ本実施形態においては、セグメント厚さ方向の中央に凸曲面11a(12a)と凹曲面11b(12b)の境界を設け、かつ、凸曲面11a(12a)と凹曲面11b(12b)の半径を等しくしているので、正のせん断力に対しても負のせん断力に対しても、同等の性能を有することとなる。
【0033】
また、本実施形態においては、図4の(a)に示すように、一方のセグメント1の凸曲面11aおよび凹曲面11bを、それぞれ他方のセグメント1の凹曲面12bおよび凸曲面12aに面接触させているので、継手面11,12の接触面積が増大することになる。継手面11,12の接触面積が増大すると、突合部分に発生する応力が広範囲に分散することになるので、突合部分にひび割れや欠け等が発生し難くなる。特に本実施形態では、継手面11(12)を凸曲面11a(12a)と凹曲面11b(12b)とで形成するとともに、凹曲面11b(12b)の縁部を曲面状に面取りすることで、継手面11(12)から鋭角な部位を無くしたので、組立が容易になるとともに、セグメント1にひび割れや欠け等が発生し難くなる。
【0034】
なお、前記した継手面11,12の形態は、適宜変更しても差し支えない。
例えば、本実施形態では、凸曲面11a,12aおよび凹曲面11b,12bをそれぞれ円弧面とした場合を例示したが、これに限定されることはなく、図示は省略するが、楕円面や放物面にしても差し支えない。
【0035】
また、本実施形態では、一方のセグメント1の凸曲面11aの半径と当該凸曲面11aに突き合わされる他方のセグメント1の凹曲面12bの半径とを等しくするとともに、一方のセグメント1の凹曲面11bの半径と当該凹曲面11bに突き合わされる他方のセグメント1の凸曲面12aの半径とを等しくした場合を例示したが、これに限定されることはなく、図示は省略するが、一方のセグメント1の凸曲面11aの半径を、当該凸曲面11aに突き合わされる他方のセグメント1の凹曲面12bの半径より小さくするとともに、一方のセグメント1の凹曲面11bの半径を、当該凹曲面11bに突き合わされる他方のセグメント1の凸曲面12aの半径より大きくしてもよい。
【0036】
また、本実施形態では、継手面11(12)において凸曲面11a(12a)と凹曲面11b(12b)を連続させ、継手面11(12)の全部を曲面とした場合を例示したが、これに限定されることはなく、図5に示すように、継手面11(12)において、凸曲面11a(12a)と凹曲面11b(12b)との間に、平面11c(12c)を介在させても差し支えない。
【0037】
なお、セグメントリングRの周囲からの反力(地盤反力など)が期待できない場合や、セグメントリングRの変形を抑制したい場合には、セグメントリングRの周方向にプレストレス(軸圧縮力)を導入するとよい。プレストレスの導入方法に特に制限はないが、例えば、図6に示すように、セグメントリングRの内周に沿って配置したPC鋼材31を緊張すればよい。この場合、PC鋼材31は、各セグメント1の内面14に設けたアイボルトなどのリング部材32に挿通するとよい。この他、図示は省略するが、セグメントリングRの外周に沿って配置したPC鋼材を緊張することで、セグメントリングRの周方向にプレストレスを導入してもよいし、セグメント1に埋設したシースにPC鋼材を挿通し、このPC鋼材を緊張することで、セグメントリングRの周方向にプレストレスを導入してもよい。
【0038】
セグメントリングRを組み立てる際にセグメント1,1同士を仮接合する必要がある場合には、図7の(a)に示すように、斜めボルト41を用いてセグメント1,1を連結するとよい。具体的には、図7の(b)に示すように、一方のセグメント1の内面14に設けた凹部42から第一継手面11に至る挿通孔43に斜めボルト41を挿通し、他方のセグメント1の第二継手面12に設けた雌ネジ44に螺合すればよい。なお、セグメントリングRを閉合した後に、斜めボルト41を撤去することが望ましいが、突合部分の回転を阻害しない場合には残置してもよい。
【0039】
また、前記した実施形態では、継手面11,12の断面形状をセグメント幅方向に一様としたが、これに限定されることはなく、図8に示す継手面11´のように、セグメント幅方向の途中(図8ではセグメント幅方向の中央)で、凸曲面11aと凹曲面11bの位置を逆転させてもよい。つまり、継手面11´のうち、セグメント幅方向の一端から中央までは、中心面16よりも外面13側に凸曲面11aを配置するとともに、中心面16よりも内面14側に凹曲面11bを配置し、セグメント幅方向の中央から他端までは、中心面16よりも内面14側に凸曲面11a´を配置するとともに、中心面16よりも外面13側に凹曲面11b´を配置してもよい。なお、図示は省略するが、継手面11´に突き合わされる他のセグメントの継手面においては、セグメント幅方向の一端から中央までは、中心面16よりも外面13側に凹曲面を配置するとともに、中心面16よりも内面14側に凸曲面を配置し、セグメント幅方向の中央から他端までは、中心面16よりも内面14側に凹曲面を配置するとともに、中心面16よりも外面13側に凸曲面を配置すればよい。このようにすると、隣接する二つのセグメント1,1の継手面同士を突き合わせた際に、セグメント幅方向の中央部が係合し、セグメント1,1のセグメント幅方向への相対移動が阻止されることになるので、これらの組付け精度が向上することになる。
【0040】
なお、前記した実施形態では、プレキャスト部材がシールドトンネル用のセグメント1である場合を例示したが、本発明に係るプレキャスト部材の用途等を限定する趣旨ではない。図示は省略するが、前記したセグメント1およびその接合構造と同様の構成を、トンネルの内空に設置される補修用の覆工、立坑、サイロなどの筒状の構造物を構成するプレキャスト部材(セグメントやライナー)およびその接合構造に適用することもできるし、2ヒンジ構造や3ヒンジ構造のアーチカルバートを構成するプレキャスト部材およびその接合構造に適用することもできる。
【0041】
また、前記した実施形態では、円筒を複数個に等分割した形態のプレキャスト部材(セグメント1)を例示したが、プレキャスト部材の形態を限定する趣旨ではない。断面楕円状のリングを複数個に分割した形態のプレキャスト部材や平板状を呈するプレキャスト部材であっても、断面S字状を呈する継手面同士を突き合せることで、前記した実施形態のものと同様の作用効果を奏する接合構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態に係るプレキャスト部材を具備する構造物を示す正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るプレキャスト部材を示す斜視図である。
【図3】(a)は本発明の実施形態に係るプレキャスト部材を示す正面図、(b)は(a)のB部拡大図、(c)は(a)のC部拡大図である。
【図4】本発明の実施形態に係るプレキャスト部材の接合構造を説明するための拡大正面図であって、(a)は継手面同士を突き合わせた状態を示す図、(b)および(c)は突合部分が回転した状態を示す模式図である。
【図5】継手面の変形例を示す拡大正面図である。
【図6】プレキャスト部材間にプレストレスを導入する方法を説明するための模式的な正面図である。
【図7】(a)はプレキャスト部材同士を仮接合する方法を説明するための模式的な拡大断面図、(b)は(a)の分解図である。
【図8】継手面の他の変形例を説明するための斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
1 セグメント(プレキャスト部材)
11,12 継手面
11a,12a 凸曲面
11b,12b 凹曲面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する二つのプレキャスト部材の継手面同士を突き合せることで形成されるプレキャスト部材の接合構造であって、
前記継手面が、凸曲面と凹曲面とによって断面S字状に成形されており、
一方の前記プレキャスト部材の前記凸曲面および前記凹曲面が、それぞれ他方の前記プレキャスト部材の前記凹曲面および前記凸曲面に突き合されていることを特徴とするプレキャスト部材の接合構造。
【請求項2】
一方の前記プレキャスト部材の前記継手面および他方の前記プレキャスト部材の前記継手面のそれぞれにおいて、前記凸曲面および前記凹曲面を連続させ、前記凸曲面と前記凹曲面の境界における前記凸曲面の接線および前記凹曲面の接線を一致させたことを特徴とする請求項1に記載のプレキャスト部材の接合構造。
【請求項3】
前記凸曲面および前記凹曲面が、それぞれ円弧面であり、
一方の前記プレキャスト部材の前記凸曲面および前記凹曲面が、それぞれ他方の前記プレキャスト部材の前記凹曲面および前記凸曲面に面接触することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプレキャスト部材の接合構造。
【請求項4】
他方の前記プレキャスト部材の前記凹曲面の半径が、一方の前記プレキャスト部材の前記凸曲面の半径と同一であり、
他方の前記プレキャスト部材の前記凸曲面の半径が、一方の前記プレキャスト部材の前記凹曲面の半径と同一であることを特徴とする請求項3に記載のプレキャスト部材の接合構造。
【請求項5】
前記凸曲面の半径および前記凹曲面の半径が、それぞれ前記プレキャスト部材の厚さ寸法の1/2と等しいことを特徴とする請求項3に記載のプレキャスト部材の接合構造。
【請求項6】
コンクリート構造物を構成するプレキャスト部材であって、
隣接する他のプレキャスト部材に突き合わされる継手面が、凸曲面と凹曲面とによって断面S字状に成形されていることを特徴とするプレキャスト部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−144496(P2008−144496A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−334194(P2006−334194)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(591066719)株式会社カネヤス (1)
【Fターム(参考)】