プレキャスト部材の連結構造

【課題】プレキャスト部材間の連結を、軽量で低コストな金具により可能とする。
【解決手段】長手方向にわたってスリット状の開口21を備える筒状連結金物20を、連結対象のプレキャスト部材10における他部材15との当接面11より所定長内奥に埋設し、端部のフランジ31とこれに連結した所定長のウェブ32とで構成されるI型連結金物30の一端を前記他部材15に保持し、他端を前記プレキャスト部材10における前記当接面11に備わる挿入口44とこれに連続するプレキャスト部材内の所定内空を介して前記筒状連結金物20に向けて挿入し、前記フランジ31を前記筒状連結金物20の内空22に嵌合させてなることを特徴とするプレキャスト部材の連結構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャスト部材の連結構造に関するものであり、具体的には、プレキャスト部材間の連結を、軽量で低コストな金具により可能とする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法を採用してトンネルを構築する場合には、切羽の掘進に応じて後方でセグメントを連結し、筒状の覆工体を形成していくことが一般的である。こうしたセグメント同士の連結作業を単純化し、エレクタなどロボットによる自動作業を可能とするため、C型およびI型の連結金具を用いた連結構造が提案されている。この連結構造は、セグメントの突き合わせ接合面の対向位置にC型の連結金具を埋め込んでおき、対向する両セグメントのC型連結金具の開口部に両側端部のフランジが係合するI型の連結金具を嵌め込むことによって、セグメント同士の突き合わせ端面を相互に接合させて連結する構造となっている。
【0003】
こうした技術の例としては、例えば、側端面同士を突き合わせ接合して覆工体に組立形成する箱形の鋼製セグメント同士を、I型に形成された連結金物で連結すべく、該セグメントの接合端面を形成する側板に、該連結金物のフランジ部を挿入する挿入口と、該挿入口に連通して該側板の長手方向に延びる該連結金物のウェブ挿通溝とを形成し、該両ウェブ挿通溝間に該連結金物を跨らせて係合装着して結合するセグメントの連結構造であって、互いに突き合わせ接合される一方のセグメントのウェブ挿通溝には、予め該連結金物を挿通して該側板の内側面に該連結金物の一端側のフランジ部を一体的に固設して他端側のフランジを側方に突出させておくとともに、該突出した他端側のフランジ部に固定係止させて、該他端側のフランジ部と他方のセグメントの側板との係合部間に、両セグメントの突き合わせ接合端面同士を圧着させる弾性部材を介在させたことを特徴とするセグメントの連結構造(特許文献1)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−52541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既存の連結構造においては、セグメント間で生じる引き抜き力を、I型金物を介しC型金物が直接引き受ける構造となっている。また、このC型金物が引き受ける引き抜き力に関しては、C型金物から後方(セグメント内部側)に伸びるアンカー筋が、その引き抜き耐力を発揮して対抗している。
【0006】
こうした連結構造であれば、C型金物自体の強度を大きなものとし、上記の引き抜き力に抵抗する必要がある。そのため従来の連結構造に採用されるC型金物は、肉厚で重いものとなっていた。またC型金物は、I型金物との連結に必要な複雑な形状を備える必要があるため、金属板の単純なプレス加工等で形成することは出来ず、鋳造による製造がなされている。従って、重量と共に製作コストもかさみ、C型金物および連結構造の導入コスト増大を招いていた。
【0007】
そこで本発明では、プレキャスト部材間の連結を、軽量で低コストな金具により可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明のプレキャスト部材の連結構造は、長手方向にわたってスリット状の開口を備える筒状連結金物を、連結対象のプレキャスト部材における他部材との当接面より所定長内奥に埋設し、端部のフランジとこれに連結した所定長のウェブとで構成されるI型連結金物の一端を前記他部材に保持し、他端を前記プレキャスト部材における前記当接面に備わる挿入口とこれに連続するプレキャスト部材内の所定内空を介して前記筒状連結金物に向けて挿入し、前記フランジを前記筒状連結金物の内空に嵌合させてなることを特徴とする。
【0009】
これによれば、いわゆるC型金物などの筒状連結金物を、プレキャスト部材の当接面ではなく当接面より内奥の、つまりプレキャスト部材内の所定深さに配置して利用することになる。このように当接面ではなく内奥に配置された筒状連結金物は、I型連結金物を介して伝達される引き抜き力に対し、自身が固着している周囲のコンクリートに反力を得て引き抜き耐力(コーン耐力、押し抜きせん断耐力)を発揮する。つまり、従来のC型金物の如くC型金物自身で引き抜き力を引き受けるといったことが無いため、筒状連結金物としては肉厚な鋳鉄製のものを採用する必要は無い。また、従来のC型金物の如くアンカー筋を配置する必要も無くなり、連結構造がシンプルな構成となり、更なるコストダウンも図られる。従って、プレキャスト部材間の連結が、軽量で低コストな金具により可能となる。
【0010】
なお、前記プレキャスト部材の連結構造において、前記筒状連結金物は板状材で構成されているものであるとすれば好適である。上述のように、筒状連結金物としては肉厚な鋳鉄製のものを採用する必要は無い為、薄肉の板状材を加工して製作した筒状連結金物を連結構造に採用することが可能であり、肉厚で鋳鉄製の従来のC型金物を採用するより大幅な軽量化を図ることが可能である。また、コストが高い鋳造ではなく低廉な板材加工のみで製作された筒状連結金物を採用することで、当然ながらコスト低減も図られることになる。こうした筒状連結金物を構成する板状材は、I型連結金物におけるフランジの隅角部等が当接して引き抜きの応力がかかっても、板状材背面にあるプレキャスト部材のコンクリートに欠損等が生じない程度の適宜な強度を備えたものであればよく、例えば、金属製、樹脂製、炭素繊維製、であることが考えられる。或いは、こうした素材の液状物ないしゲル状物を、筒状連結金物と同じ形状になるよう設けられたプレキャスト部材内空のコンクリート壁面に塗布するとしてもよい。
【0011】
また、前記プレキャスト部材の連結構造において、前記挿入口に連続するプレキャスト部材内の所定内空は、前記当接面の挿入口より内奥に延びる所定深さの箱状領域である袋部と、前記当接面において前記挿入口と連続し、前記当接面の長手方向に所定長延びて、前記ウェブを挿通可能な挿通開口と、前記袋部の深さ方向に延び、袋部からの前記I型連結金物のスライドを可能にする側方開口とを備え、前記挿通開口から前記筒状連結金物の設置箇所までプレキャスト部材内を所定深さ延びるウェブ経路を有する連結部と、から構成されるとすれば好適である。
【0012】
これによれば、I型連結金物のフランジおよび一部のウェブを、連結対象のプレキャスト部材における挿入口を介して袋部に挿入する手順、袋部に至った前記フランジおよび一部のウェブを、連結部の挿通開口と側方開口を介してウェブ経路に導いて、該ウェブ経路中を当接面長手方向にスライドさせる手順、該スライドにより、前記フランジをプレキャスト部材内の所定深さにある筒状連結金物の内空に嵌合させる手順、を一連のものとしてスムーズに行うことが可能となる。
【0013】
また、前記プレキャスト部材の連結構造において、前記フランジとこれを嵌合させる筒状連結金物の内空とが互いにくさび型となっており、両者がくさび結合する構造であるとすれば好適である。これによれば、例えば、前記I型連結金物のフランジが、ウェブ経路中を当接面長手方向にスライドし、筒状連結金物の内空を進むにつれ嵌合が緊密になり、プレキャスト部材同士の連結構造がより強固なものとなる。
【0014】
また、前記プレキャスト部材の連結構造において、前記I型連結金物における一端のフランジが、予め棒体を嵌合させた管体を備えており、前記棒体の端部が、他部材に設置された筒状連結金物の具備する所定開口から突出するよう、前記フランジを前記他部材における筒状連結金物の内空に嵌合させ、前記所定開口から突出した棒体端部を、前記他部材における筒状連結金物周囲に打設されるコンクリートと付着させて固定することで、I型連結金物の一端を他部材に予め固定し、前記I型連結金物における他端のフランジを、前記連結対象のプレキャスト部材における前記筒状連結金物の内空に嵌合させ、この嵌合動作に反力を得て、前記一端のフランジにおいて予め嵌合していた前記管体と前記棒体とを更に深く嵌合させてなる、としてもよい。
【0015】
これによれば、周囲のコンクリートに埋設固定された棒体と管体との嵌合が行われることになり、たとえば上記くさび結合による嵌合ではI型連結金物にがたつきが生じるような場合であっても、管体と棒体との嵌合により、こうしたがたつきは抑止され、I型連結金物の一端は他部材において、より確実に固定されることになる。また、I型連結金物とプレキャスト部材における前記筒状連結金物との嵌合動作に反力を得て、前記一端のフランジにおける管体に棒体がより深く嵌合することになり、I型連結金物の一端は他部材において、より確実に固定されることになる。
【0016】
また、プレキャスト部材の連結構造において、前記I型連結金物の一端が前記他部材に埋め込み固定されているとしてもよい。こうした構造としては、例えば、他部材を構成するコンクリートの打設に際して I型連結金物の一端をそのまま打設コンクリート内に配置して固定して構成するものが想定できる。こうした場合、他部材側の筒状連結金物や、上述の挿入口、袋部などは省略することができ、施工効率やコストの低下が見込まれる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、プレキャスト部材間の連結が、軽量で低コストな金具により可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態におけるプレキャスト部材の連結構造を示す図である。
【図2】本実施形態における筒状連結金物(C型金物)の埋設状況を示す図である。
【図3】本実施形態におけるコーン破壊に対する引き抜き耐力設計の概念図である。
【図4】本実施形態におけるプレキャスト部材の連結手順を示す図である。
【図5】他の実施形態におけるプレキャスト部材の連結構造を示す図である。
【図6】他の実施形態におけるプレキャスト部材の連結手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本実施形態におけるプレキャスト部材の連結構造を示す図であり、図2は本実施形態における筒状連結金物(C型金物)の埋設状況を示す図である。本実施形態におけるプレキャスト部材としては、シールド工法におけるトンネルの覆工体として用いられるセグメント10を例示することとする。シールド工法において、シールド掘進機内では、エレクタ等によりこのセグメント10が逐次連結され、筒状の覆工体を形成するのが一般的である。そこで互いに連結されるセグメント10の連結構造として、本実施形態の連結構造100を採用する。
【0020】
当該連結構造100は、図1に示すように筒状連結金物20およびI型連結金物30を含んでいる。筒状連結金物20はいわゆるC型金物と類似の金物であり、長手方向にわたってスリット状の開口21を備える連結金物となる。一方、端部のフランジ31とこれに連結した所定長のウェブ32とで構成されるのがI型連結金物30である。ここでは「I型」と記載しているが、H型も概念に含まれるものとする。I型連結金物30のウェブ32の長さは、筒状連結金物20がセグメント10の当接面11より所定深さ内奥に埋設されることに対応して、筒状連結金物20の埋設深さの2倍程度となる。
【0021】
本実施形態の連結構造100において、筒状連結金物20は、連結対象のセグメント10における他セグメント15との当接面11より所定長5だけ内奥に埋設されている。従来の連結構造においては、当接面11に開口21をそのまま露出した形態、すなわちセグメント10のほぼ表面に筒状連結金物20は埋設されていることと比較し、大きく相違する点である。このように当接面11の直下ではなくセグメント内奥に配置された筒状連結金物20は、I型連結金物30を介して伝達される引き抜き力に対し、自身が固着している周囲のコンクリートに反力を得て引き抜き耐力(コーン耐力、押し抜きせん断耐力)を発揮することになる。また、従来のように後方にアンカー筋を配置する必要もない。
【0022】
上述の筒状連結金物20における前記開口21は、I型連結金物30のウェブ32の径以上の開口である当接面11上の挿通開口40と、溝状の空間であるウェブ経路41を介して結ばれている。よって、筒状連結金物20は挿通開口40をもって当接面11にて開口しているとも言える。
【0023】
他方、ウェブ経路41は、挿通開口40から筒状連結金物20の設置箇所までセグメント内を所定深さ延びる経路である。挿通開口40は、当接面11の長手方向に所定長延びた開口であり、I型連結金物30のフランジ31の長さ33と略同じ長さとなっている。また、ウェブ経路41の側面には、内奥方向に延び、I型連結金物30の通過が可能な側方開口42が備わっている。これら挿通開口40、側方開口42、ウェブ経路41を有するセグメント内空が連結部43となる。
【0024】
また、連結構造100に含まれる他の構造として、当接面11の挿入口44より内奥に延びる所定深さの箱状領域である袋部45が含まれる。この袋部45の挿入口44は、上記の挿通開口40と連続する開口であり、図1に示す例では、挿入口44とこれより小さな挿通開口40とが連結した鍵穴状の形態をなしている。
【0025】
一方、I型連結金物30は、その一端を他部材15に保持し、他端をセグメント10における当接面11に備わる挿入口44とこれに連続するセグメント内の所定内空を介して筒状連結金物20に向けて挿入されることになる。挿入口44に連続するセグメント内の所定内空とは、上述した連結部43および袋部45を指している。この場合、I型連結金物30のフランジ31は、挿入口44を介して袋部45に挿入され、袋部45の側面にある側方開口42を介して連結部43のウェブ経路41をスライド移動させられる。また、ウェブ32も、ウェブ経路41を同様にスライド移動することになる。
【0026】
この時、I型連結金物30のフランジ31は、ウェブ経路41の底部、つまり連結部43の底部にある筒状連結金物20の内空22を、側方開口42と反対の突き当たり面24に向かって進み、内空22と最終的に嵌合する。
【0027】
なお、図1では、I型連結金物30の前記一端が、他部材15の内奥に備わる筒状連結金物20の内空22に挿入されてこれと嵌合し、保持されている例を示している。しかしながら、このI型連結金物30の一端が他部材15にて保持される形態としてはこれに限定されない。例えば、他部材15の形成(例:セグメント形成用のコンクリート打設)にあわせて、I型連結金物30の一端を、所定治具などを介して他部材15の内奥部に係止しておき、他部材15への埋め込み固定を図る形態なども採用できる(他部材15を構成するコンクリートの打設に際して I型連結金物30の一端をそのまま打設コンクリート内に配置して固定する例等も含む)。その場合、他部材15側の筒状連結金物20、内空22、挿入口44、袋部45は省略することができる。
【0028】
また、上述した嵌合に適した構造として、くさび結合がなされる構造があげられる。本実施形態に示した連結構造100では、フランジ31と内空22との嵌合時に、このくさび結合をする構造を採用した。このため筒状連結金物20は、その内空22が、セグメント内奥方向に徐々に下降するよう傾斜配置している。また、フランジ31は、内空22の傾斜とは逆の傾斜方向、すなわちセグメント内奥から当接面方向に徐々に上昇するよう成形されている。従って、側方開口42から連結部43にスライドしていくI型連結金物30のフランジ31は、内空22に入り込んでいくごとに、隅角部34が筒状連結金物20の隅角部23に食い込んでいくことになり、互いに緊密に嵌合することになる。
【0029】
なお、I型連結金物30と筒状連結金物20のそれぞれにおいて、両者の接触面に接着剤を塗布しておき、嵌合に際してI型連結金物30と筒状連結金物20とを強固に結合させるとしてもよい。或いは、嵌合にあわせて、筒状連結金物20の内空22に、例えば、パテ(例えば、エポキシパテ、ポリエステルパテなど)やゲル状の接着剤を充填しておき、嵌合に際して筒状連結金物20の内空22に入り込んだI型連結金物30が、パテ等を介して内空22と一体化し、嵌合を強固に固定させるとしてもよい。
【0030】
なお、上述した筒状連結金物20は、従来のC型金物の如く自身で引き抜き力をほぼ引き受けるといったことが無い。従って、肉厚な鋳鉄製のものを採用する必要は無く、板状材で構成されているものを採用すればよい。こうした筒状連結金物20を構成する板状材は、I型連結金物30におけるフランジ31の隅角部34等が当接して引き抜きの応力がかかっても、板状材背面にあるセグメント10のコンクリートに欠損等が生じない程度の適宜な強度を備えたものであればよい。例えば、金属製、樹脂製、炭素繊維製、であることが考えられる。或いは、こうした素材の液状物ないしゲル状物を、筒状連結金物20と同じ形状になるよう設けられたセグメント内空のコンクリート壁面に塗布するとしてもよい。
【0031】
なお、筒状連結金物20をセグメント内奥に埋設する本実施形態の連結構造100に関して、コーン破壊に対する引き抜き耐力の設計を行う場合の算定例を以下に示しておく。図3は本実施形態におけるコーン破壊に対する引き抜き耐力設計の概念図である。この場合、引抜き耐力Paは、
Pa=α×Pa1=α×{φ1・√(f'ck×10.2)・Ac/100×9.8}/1000
なる式で表すことが出来る。
【0032】
ここで各係数は、
・Ac=2・(a+b+2・ld)・ld・・・・・・・抵抗面積
・φ1・・・・・・・・・・・コーン破壊に対する係数
・ld・・・・・・・・・・・・・・・・・・・有効深さ
・f'ck・・・・・・・・・・・・コンクリート圧縮強度
・a・・・・・・・・・・・・・・I型連結金物の長さ
・b・・・・・・・・・・・・・・・I型連結金物の幅
・α・・・・・・・鋼繊維によるせん断耐力の増加率
である。
【0033】
そこで、それぞれの係数について想定できる値を入れてみると、
・抵抗面積Ac=2・(a+b+2・ld)・ld=60800mm2
・コーン破壊に対する係数φ1=1
・有効深さld=100mm
・コンクリート圧縮強度f'ck=42N/mm2
・I型連結金物の長さa=70mm
・I型連結金物の幅b=34mm
・鋼繊維によるせん断耐力の増加率α=1.7
引き抜き耐力Pa=Pa1×α=123kN×1.7=210kNとなる。こうして算定した引き抜き耐力が、セグメント間に生じる引き抜き力に勝っていれば、連結構造100として問題ないことになる。なお、図3にて示すように、I型連結金物30の両側に配筋を行っておくことで、引き抜き耐力が向上することとなり好適である。
【0034】
続いて、上記連結構造100を用いた場合の、セグメント同士の連結動作について概説しておく。図4は、本実施形態におけるプレキャスト部材の連結手順を示す図である。この場合、まず、I型連結金物30における一方のフランジ31および一部のウェブ32を、上述した他部材たるセグメント15に対し、挿入口44を介して袋部45に挿入する(手順1)。
【0035】
次に、袋部45に至ったフランジ31および一部のウェブ32を、連結部43の挿通開口40と側方開口42を介してウェブ経路41に導いて、該ウェブ経路中を当接面11の長手方向にスライドさせ、フランジ31をセグメント15内の所定深さにある筒状連結金物20の内空22に嵌合させる(手順2)。
【0036】
続いて、セグメント10およびセグメント15の互いの当接面11を突き合わせる(手順3)。この時、セグメント15に既に嵌合させてあるI型連結金物30の他方のフランジ31および一部のウェブ32を、セグメント10の挿入口44を介して袋部45に挿入する。
【0037】
また、セグメント10の袋部45に至ったフランジ31および一部のウェブ32を、セグメント10の連結部43の挿通開口40と側方開口42を介してウェブ経路41に導き、該ウェブ経路中を当接面11の長手方向にスライドさせ(手順4)、フランジ31をセグメント10内の所定深さにある筒状連結金物20の内空22に嵌合させる(手順5)。このように、セグメント同士の連結手順はシンプルであり、フランジ31を内空22に嵌合させるための手順を一連のものとしてスムーズに行うことが可能である。
【0038】
−−−他の実施形態−−−
続いて、I型連結金物30の一端を他部材15に固定する他の形態について説明する。図5は、他の実施形態におけるプレキャスト部材の連結構造を示す図である。ここでは、I型連結金物30の端面35に管体50が備わり、この管体50には棒体55が予め嵌合されている。また、筒状連結金物25は、閉塞された突き当たり面24とこの突き当たり面24に設けられた前記開口26を備えており、また、上記実施形態における筒状連結金物20とは異なり、内空22から当接面11まで内空が延長されている。この実施形態における筒状連結金物25の内空22には、こうした棒体55が嵌合された管体50を具備するI型連結金物30の一端が挿入され、前記棒体55は、前記内空22より、筒状連結金物25の前記開口26を経て筒状連結金物外へ適宜突出して配置される。I型連結金物30が備える管体50は、開口51を備えた中空構造となっている。また、前記棒体55のうち、筒状連結金物25の前記開口26より突出した部位は、例えば、セグメントの実体をなすコンクリートに埋め込み固定される基礎部56となる。他方、前記開口26から内空22に向けて突出する部位は突出部57となる。なお、前記突出部57は、管体50の内空51に対し確実に嵌合する径を備えている。
【0039】
こうした構造において、棒体55を嵌合した管体50を具備するI型連結金物30のフランジ31aを(手順a)、筒状連結金物25の内空22に挿入し、前記棒体55の基礎部56を前記突き当たり面24の開口26より突出させる(手順b)。また、この基礎部56の突出の後、突き当たり面24と対向する開口面27に板材を当接するなどして閉塞し、セグメントの実体をなすコンクリート打設を実行することで、筒状連結金物25の外に突出している前記基礎部56は周囲のコンクリートに付着して固定される。一方、当該基礎部56の反対側端部となる突出部57は、管体50の開口51と、筒状連結金物25の内空22にて嵌合した状態を維持している。但し、この突出部57と管体50との嵌合は、嵌合の限界まで所定の余裕を残した嵌合状態となっている。
【0040】
また、前記嵌合に際して、フランジ31aを筒状連結金物25の突き当たり面24に向けてスライドさせることにより、上記実施形態にて述べたくさび結合の状態が形成されることになる。つまり、周囲のコンクリートに埋設固定された棒体55と前記管体50との嵌合、および前記くさび結合による嵌合という二重の嵌合が行われることになり、たとえくさび結合による嵌合ではI型連結金物30にがたつきが生じるような場合であっても、管体50と棒体55との嵌合により、こうしたがたつきは抑止され、I型連結金物30の一端は他部材15において、より確実に固定されることになる。ここまでの処理でI型連結金物30の一端は他部材15に固定された。
【0041】
一方、前記他部材15とセグメント10との当接面11を介した突き合わせを行い(手順x)、上述の如く既に他部材15に固定されているI型連結金物30の他端のフランジ31bを、連結対象のセグメント10の内奥に埋設されている筒状連結金物20に向けて挿入しスライドさせるとする(図6:手順y)。すると、上記実施形態にて述べたくさび結合によりI型連結金物30と筒状連結金物20とは嵌合していくことになるが、この嵌合動作に反力を得て、前記一端のフランジ31aにおける管体50の内空51に、前記棒体55の突出部57がより深く嵌合することになり、I型連結金物30の一端は他部材15において、より確実に固定されることになる(拡大図x〜y〜z)。勿論、こうした嵌合構造は、I型連結金物30の一端を他部材15に固定する場合だけでなく、I型連結金物30の他端をセグメント10の筒状連結金物20に嵌合させる構造に採用してもよい。
【0042】
以上、本実施形態によれば、いわゆるC型金物などの筒状連結金物を、プレキャスト部材の当接面ではなく当接面より内奥の、つまりプレキャスト部材内の所定深さに配置して利用することになる。このように当接面ではなく内奥に配置された筒状連結金物は、I型連結金物を介して伝達される引き抜き力に対し、自身が固着している周囲のコンクリートに反力を得て引き抜き耐力(コーン耐力、押し抜きせん断耐力)を発揮する。つまり、従来のC型金物の如くC型金物自身で引き抜き力を引き受けるといったことが無いため、筒状連結金物としては肉厚な鋳鉄製のものを採用する必要は無い。また、従来のC型金物の如くアンカー筋を配置する必要も無くなり、連結構造がシンプルな構成となり、更なるコストダウンも図られる。従って、プレキャスト部材間の連結が、軽量で低コストな金具により可能となる。
【0043】
また、薄肉の板状材を加工して製作した筒状連結金物を連結構造に採用することが可能であり、肉厚で鋳鉄製の従来のC型金物を採用するより大幅な軽量化を図ることが可能である。また、コストが高い鋳造ではなく低廉な板材加工のみで製作された筒状連結金物を採用することで、当然ながらコスト低減も図られることになる。
【0044】
また、I型連結金物のフランジおよび一部のウェブを、連結対象のプレキャスト部材における挿入口を介して袋部に挿入する手順、袋部に至った前記フランジおよび一部のウェブを、連結部の挿通開口と側方開口を介してウェブ経路に導いて、該ウェブ経路中を当接面長手方向にスライドさせる手順、該スライドにより、前記フランジをプレキャスト部材内の所定深さにある筒状連結金物の内空に嵌合させる手順、を一連のものとしてスムーズに行うことが可能となる。
【0045】
また、前記プレキャスト部材の連結構造において、前記フランジとこれを嵌合させる筒状連結金物の内空とが互いにくさび型となっている場合、前記I型連結金物のフランジが、ウェブ経路中を当接面長手方向にスライドし、筒状連結金物の内空を進むにつれ嵌合が緊密になり、プレキャスト部材同士の連結構造がより強固なものとなる。
【0046】
したがって本実施形態によれば、プレキャスト部材間の連結が、軽量で低コストな金具により可能となる。
【0047】
本発明の実施の形態について、その実施の形態に基づき具体的に説明したが、これに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0048】
5 所定長
10 セグメント
11 当接面
15 他部材(セグメント)
20、25 筒状連結金物
21 スリット状の開口
22 筒状連結金物の内空
23 隅角部
24 突き当たり面
26 突き当たり面の開口
27 突き当たり面と対向する開口面
30 I型連結金物
31 フランジ(31a、31b)
32 ウェブ
33 フランジの長さ
34 隅角部
35 I型連結金物の端面
40 挿通開口
41 ウェブ経路
42 側方開口
43 連結部
44 挿入口
45 袋部
50 管体
55 棒体
51 開口
56 基礎部
57 突出部
100 連結構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向にわたってスリット状の開口を備える筒状連結金物を、連結対象のプレキャスト部材における他部材との当接面より所定長内奥に埋設し、端部のフランジとこれに連結した所定長のウェブとで構成されるI型連結金物の一端を前記他部材に保持し、他端を前記プレキャスト部材における前記当接面に備わる挿入口とこれに連続するプレキャスト部材内の所定内空を介して前記筒状連結金物に向けて挿入し、前記フランジを前記筒状連結金物の内空に嵌合させてなることを特徴とするプレキャスト部材の連結構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記筒状連結金物は板状材で構成されているものであることを特徴とするプレキャスト部材の連結構造。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記挿入口に連続するプレキャスト部材内の所定内空は、
前記当接面の挿入口より内奥に延びる所定深さの箱状領域である袋部と、
前記当接面において前記挿入口と連続し、前記当接面の長手方向に所定長延びて、前記ウェブを挿通可能な挿通開口と、前記袋部の深さ方向に延び、袋部からの前記I型連結金物のスライドを可能にする側方開口とを備え、前記挿通開口から前記筒状連結金物の設置箇所までプレキャスト部材内を所定深さ延びるウェブ経路を有する連結部と、
から構成されることを特徴とするプレキャスト部材の連結構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、
前記フランジとこれを嵌合させる筒状連結金物の内空とが互いにくさび型となっており、両者がくさび結合する構造であることを特徴とするプレキャスト部材の連結構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記I型連結金物における一端のフランジが、予め棒体を嵌合させた管体を備えており、 前記棒体の端部が、他部材に設置された筒状連結金物の具備する所定開口から突出するよう、前記フランジを前記他部材における筒状連結金物の内空に嵌合させ、
前記所定開口から突出した棒体端部を、前記他部材における筒状連結金物周囲に打設されるコンクリートと付着させて固定することで、I型連結金物の一端を他部材に予め固定し、
前記I型連結金物における他端のフランジを、前記連結対象のプレキャスト部材における前記筒状連結金物の内空に嵌合させ、この嵌合動作に反力を得て、前記一端のフランジにおいて予め嵌合していた前記管体と前記棒体とを更に深く嵌合させてなることを特徴とするプレキャスト部材の連結構造。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記I型連結金物の一端が前記他部材に埋め込み固定されていることを特徴とするプレキャスト部材の連結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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