説明

プレキャスト部材連結金物の設置方法

【課題】プレキャスト部材間の連結を低コストに実現する連結金物の設置手法を提供する。
【解決手段】第1型枠100を外型枠7の開口面と略同一面にして外型枠内に配置する工程と、内挿体200と第2型枠300とを仮固定することで一体化する工程と、内挿体200を筒状連結金物20の内空に挿入して一体化し外型枠内の所定深さの位置に配置する工程と、外型枠内にコンクリートを打設し所定期間の養生を行う工程と、第1型枠100を外型枠7の開口面方向に引き抜いて脱型する工程と、一体化している内挿体200と第2型枠300との仮固定を解除し第2型枠300を外型枠7の開口面方向に引き抜いて脱型する工程と、筒状連結金物20の内空に残された内挿体200に対し把持材210を取り付け、当該把持材210を第2空間から第1空間にかけてスライドさせることで該把持材と共に内挿体200を筒状連結金物内空から第1空間に導き外型枠7の開口面方向に引き抜く工程とを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャスト部材連結金物の設置方法に関するものであり、具体的には、プレキャスト部材間の連結を低コストに実現する連結金物の設置手法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法を採用してトンネルを構築する場合には、切羽の掘進に応じて後方でセグメントを連結し、筒状の覆工体を形成していくことが一般的である。こうしたセグメント同士の連結作業を単純化し、エレクタなどロボットによる自動作業を可能とするため、C型およびI型の連結金物を用いた連結構造が提案されている。この連結構造は、セグメントの突き合わせ接合面の対向位置にC型の連結金物を埋め込んでおき、対向する両セグメントのC型連結金物の開口部に両側端部のフランジが係合するI型の連結金物を嵌め込むことによって、セグメント同士の突き合わせ端面を相互に接合させて連結する構造となっている。
【0003】
こうした技術の例としては、例えば、側端面同士を突き合わせ接合して覆工体に組立形成する箱形の鋼製セグメント同士を、I型に形成された連結金物で連結すべく、該セグメントの接合端面を形成する側板に、該連結金物のフランジ部を挿入する挿入口と、該挿入口に連通して該側板の長手方向に延びる該連結金物のウェブ挿通溝とを形成し、該両ウェブ挿通溝間に該連結金物を跨らせて係合装着して結合するセグメントの連結構造であって、互いに突き合わせ接合される一方のセグメントのウェブ挿通溝には、予め該連結金物を挿通して該側板の内側面に該連結金物の一端側のフランジ部を一体的に固設して他端側のフランジを側方に突出させておくとともに、該突出した他端側のフランジ部に固定係止させて、該他端側のフランジ部と他方のセグメントの側板との係合部間に、両セグメントの突き合わせ接合端面同士を圧着させる弾性部材を介在させたことを特徴とするセグメントの連結構造(特許文献1)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−52541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既存の連結構造においては、セグメント間で生じる引き抜き力を、I型金物を介しC型金物が直接引き受ける構造となっている。また、このC型金物が引き受ける引き抜き力に関しては、C型金物から後方(セグメント内部側)に伸びるアンカー筋が、その引き抜き耐力を発揮して対抗している。
【0006】
こうした連結構造であれば、C型金物自体の強度を大きなものとし、上記の引き抜き力に抵抗する必要がある。そのため従来の連結構造に採用されるC型金物は、肉厚で重いものとなっていた。またC型金物は、I型金物との連結に必要な複雑な形状を備える必要があるため、金属板の単純なプレス加工等で形成することは出来ず、鋳造による製造がなされている。従って、重量と共に製作コストもかさみ、C型金物および連結構造の導入コスト増大を招いていた。そこで、こうした課題を解決するための、プレキャスト部材の連結構造を構成する手法が望まれていた。
【0007】
そこで本発明では、プレキャスト部材間の連結を低コストに実現する連結金物の設置手法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明のプレキャスト部材連結金物の設置方法は、プレキャスト部材の外型枠内に収まる箱状の第1型枠を、開口形成用の部位に関して前記外型枠の開口面と略同一面にして前記外型枠内に配置する工程と、長手方向にわたってスリット状開口を備える筒状連結金物の内空を支持する内挿体と、前記スリット状開口の径と一端の厚みが略同じである箱状の第2型枠とを、仮固定することで一体化する工程と、前記第2型枠と一体化した内挿体を筒状連結金物の内空に挿入して、当該筒状連結金物と前記内挿体および前記第2型枠とを一体化し、前記筒状連結金物の一端および前記第2型枠の側面が前記第1型枠に密着し、前記第2型枠の他端が前記外型枠の開口面と略同一面になるよう、前記外型枠内の所定深さの位置に配置する工程と、前記外型枠内にコンクリートを打設し、所定期間の養生を行う工程と、前記第1型枠を前記外型枠の開口面方向に引き抜いて脱型する工程と、前記一体化している内挿体と第2型枠との仮固定を解除し、前記第2型枠を前記外型枠の開口面方向に引き抜いて脱型する工程と、前記筒状連結金物の内空に残された内挿体に対し、前記第2型枠が形成した第2空間を介して把持材を取り付け、当該把持材を、前記第2空間から前記第1型枠により形成された第1空間にかけてスライドさせることで、該把持材と共に前記内挿体を筒状連結金物内空から前記第1空間に導き、前記外型枠の開口面方向に引き抜く工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
なお、上記各工程のうち、前記外型枠内にコンクリートを打設し、所定期間の養生を行う工程より前の工程については、状況に応じた型枠設置のしやすさ等によって実行順序を入れ換えてもよい。
【0010】
これによれば、いわゆるC型金物などの筒状連結金物を、プレキャスト部材の当接面ではなく当接面より内奥の、つまりプレキャスト部材内の所定深さに設置した、プレキャスト部材の連結構造を効率的に形成することができる。
【0011】
こうして本発明の連結金物の設置方法によって形成される、プレキャスト部材の連結構造は、筒状連結金物をプレキャスト部材同士の当接面ではなく内奥に配置した構造となるから、筒状連結金物は、I型連結金物を介して伝達される引き抜き力に対し、自身が固着している周囲のコンクリートに反力を得て引き抜き耐力(コーン耐力、押し抜きせん断耐力)を発揮する。つまり、従来のC型金物の如くC型金物自身で引き抜き力を引き受けるといったことが無いため、筒状連結金物としては肉厚な鋳鉄製のものを採用する必要は無い。また、従来のC型金物の如くアンカー筋を配置する必要も無くなり、連結構造がシンプルな構成となり、更なるコストダウンも図られる。従って、プレキャスト部材間の連結が、軽量で低コストな金具により可能となる。他方、従来のプレキャスト部材の連結構造では、C型金物等をプレキャスト部材表面直下のごく浅い位置に配置してなるものであった為、本発明の如く、プレキャスト部材内奥に連結金物を配置する手法について考慮すること自体なかった。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、プレキャスト部材間の連結を低コストに実現する連結金物の設置手法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態における型枠構造例を示す図である。
【図2】本実施形態における連結金物の設置手順例1を示す図である。
【図3】本実施形態における連結金物の設置手順例2を示す図である。
【図4】本実施形態におけるプレキャスト部材の連結構造例を示す図である。
【図5】他の実施形態におけるプレキャスト部材の連結構造を示す図である。
【図6】他の実施形態におけるプレキャスト部材の連結手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
−−−型枠類について−−−
以下に本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本実施形態における型枠構造例を示す図である。本実施形態におけるプレキャスト部材としては、シールド工法におけるトンネルの覆工体として用いられるセグメント10を例示することとする。シールド工法において、シールド掘進機内では、エレクタ等によりこのセグメント10が逐次連結され、筒状の覆工体を形成するのが一般的である。そこで互いに連結されるセグメント10の連結構造を構築するため、本実施形態のプレキャスト部材連結金物の設置方法を採用することとする。
【0015】
また、本実施形態の手法にて設置対象となるプレキャスト部材連結金物は、筒状連結金物20である。この筒状連結金物20はいわゆるC型金物と類似の金物であり、長手方向にわたってスリット状開口21と内空22を備える連結金物となる。なお、詳細は図4に基づき後述するが、この筒状連結金物20と連結構造をなすのがI型連結金物30となる。このI型連結金物30は、端部のフランジ31とこれに連結した所定長のウェブ32とで構成される連結金物である。I型連結金物30のウェブ32の長さは、筒状連結金物20がセグメント10の当接面11より所定深さ内奥に埋設されることに対応して、筒状連結金物20の埋設深さの2倍程度となる。なお、ここでは「I型」と記載しているが、H型も概念に含まれるものとする。
【0016】
また本実施形態にて用いられる型枠類について説明しておく。まず、セグメント10の外型枠7内に収まる箱状の型枠として第1型枠100がある。この第1型枠100は、例えば金属製で密実な箱形構造を想定でき、底部102に対向する端面にはボルト穴101が備わっている。
【0017】
また、筒状連結金物20の内空22を支持する内挿体200がある。この内挿体200は、その内部を貫通するボルト穴215を備えている。必要に応じ、このボルト穴215には把持材としてのボルト210が挿入され、ボルト210と内挿体200との螺合がなされることになる。こうした内挿体200は、コンクリート打設時における、筒状連結金物20の位置を正確に制御するものであり、内空22の位置を決めるための支持部材となる。例えば、ボルト穴215を介して内挿体200に螺合させた前記ボルト210を、内挿体200の表面より所定長さ突出させることで、突出したボルト210の先端211が筒状連結金物20の内空22に当接し、この当接した際の反力で内挿体200の隅角部203が内空22の隅角部23に隙間無く押しつけられ、位置決めがなされる。
【0018】
また、筒状連結金物20が備えるスリット状開口21の径と一端の厚みが略同じであり、例えば金属製で密実な箱状の第2型枠300がある。この第2型枠300は、例えば2つのボルト穴310を備え、このボルト穴310を介して前記把持材たるボルト210を、内挿体200まで挿通させることが可能である。第2型枠300を挿通したボルト210は、ボルト穴215を介して内挿体200に螺合することとなる。図示した例では、一端311の厚みがスリット状開口21の径と略同じとなっている。ここで言う厚みが「略同じ」とは、スリット状開口21に第2型枠300の端部を密着させつつ挿入できる程度、すなわち水密を維持できる程度に略同じであることを意味している。
【0019】
−−−連結金物の設置工程−−−
続いて、上記型枠等を用いた連結金物の設置工程について説明する。図2は、本実施形態における連結金物の設置手順例1を示す図であり、図3は、本実施形態における連結金物の設置手順例2を示す図である。この場合、まず、第1型枠100を、ボルト穴101(開口形成用の部位)に関して外型枠7の開口面17と略同一面にして外型枠7内に固定する(手順1)。外型枠7内での第1型枠100の固定手法は従来における型枠工と同様の手法を採用すればよい(以下、他の型枠類に関しても同様)。
【0020】
続いて、前記内挿体200の端面と、前記第2型枠300の端面とを、ボルト穴215とボルト穴310とが一致するよう当接させ(手順2)、把持材たるボルト210を、第2型枠300側から内挿体200に向けて挿通して螺合させ、仮固定することで一体化する(手順3)。当然ながらボルト穴215、310の内壁(の全部または一部)には、前記ボルト210と螺合するためのネジ溝がきってある。
【0021】
次に、前記ボルト210により第2型枠300と一体化した内挿体200を、筒状連結金物20の内空22に挿入して、当該筒状連結金物20と前記内挿体200および前記第2型枠300とを一体化させる(手順4)。
【0022】
続いて、前記筒状連結金物20の一端25および前記第2型枠300の側面313が前記第1型枠100の側面103に密着し、前記第2型枠300の他端314が前記外型枠7の開口面17と略同一面になるよう、前記外型枠内の所定深さの位置に配置する(手順5)。こうして、セグメント10の外型枠7内において、開口面17から所定深さ5の位置で、筒状連結金物20を含む型枠類を固定することができた。
【0023】
この後、外型枠7内にコンクリートを打設し、一体となった第1型枠100、内挿体200、第2型枠300、および筒状連結金物20と、外型枠7との間の空隙にコンクリートが充填されることになる。コンクリート打設後は所定期間の養生を行うこととなる。
【0024】
続いて、第1型枠100を外型枠7の開口面17の方向に引き抜いて脱型する(手順6)。この時、第1型枠100のボルト穴101に螺合されたボルト105を介して引き抜きを行うとすれば作業が円滑となる。また、脱型がスムーズに行えるよう剥離剤の使用など一般的な脱型時の手当が適宜なされるものとする(以下同様)。
【0025】
続いて、前記一体化している内挿体200と第2型枠300とを挿通しているボルト210を螺合を解いて抜去することで、内挿体200と第2型枠300との仮固定を解除する(手順7)。また、仮固定が解除された状態において、前記第2型枠300を前記外型枠7の開口面方向に引き抜いて脱型する(手順8)。ここまでの脱型作業で、第1型枠100により第1空間45が、第2型枠300により第2空間43が、外型枠7の内部で固結したコンクリート体内に形成されている。
【0026】
次に、前記筒状連結金物20の内空22に残された内挿体200のボルト穴215に対し、前記第2型枠300が形成した第2空間43を介して把持材たるボルト210を取り付ける(手順9)。そして、当該ボルト210を、前記第2空間43から前記第1空間45にかけてスライドさせることで、該ボルト210と共に前記内挿体20を筒状連結金物内空22から前記第1空間45に導きことができる(手順10)。最後に、第1空間45に導かれた内挿体200およびボルト210を外型枠7の開口面方向に引き抜いて、工程を完了する。
【0027】
−−−設置した連結金物を用いたセグメント連結構造について−−−
上述のように設置した筒状連結金物20を用いて、どのようにセグメント10が連結される構造となるのか、参考までに図4を用いてその連結構造について説明しておく。図4は本実施形態におけるプレキャスト部材の連結構造例を示す図である。
【0028】
本実施形態の連結構造150において、筒状連結金物20は、連結対象のセグメント10における他セグメント15との当接面11より所定長5だけ内奥に埋設されている。従来の連結構造においては、当接面11に開口21をそのまま露出した形態、すなわちセグメント10のほぼ表面に筒状連結金物20は埋設されていることと比較し、大きく相違する点である。このように当接面11の直下ではなくセグメント内奥に配置された筒状連結金物20は、I型連結金物30を介して伝達される引き抜き力に対し、自身が固着している周囲のコンクリートに反力を得て引き抜き耐力(コーン耐力、押し抜きせん断耐力)を発揮することになる。また、従来のように後方にアンカー筋を配置する必要もない。
【0029】
上述の筒状連結金物20におけるスリット状開口21は、I型連結金物30のウェブ32の径以上の開口である当接面11上の挿通開口40(第2型枠300の端面311の外形に対応)と、溝状の空間であるウェブ経路41(第2型枠300で形成される空間)を介して結ばれている。よって、筒状連結金物20は挿通開口40をもって当接面11にて開口しているとも言える。
【0030】
他方、ウェブ経路41は、挿通開口40から筒状連結金物20の設置箇所までセグメント内を所定深さ延びる経路である。挿通開口40は、当接面11の長手方向に所定長延びた開口であり、I型連結金物30のフランジ31の長さ33より幾分長い長さとなっている。また、ウェブ経路41の側面には、内奥方向に延び、I型連結金物30の通過が可能な側方開口42(第1型枠100の側面103と密着した、第2型枠300の側面313の外形に対応している)が備わっている。これら挿通開口40、側方開口42、ウェブ経路41を有するセグメント内空が第2空間43となる。
【0031】
また、連結構造150に含まれる他の構造として、当接面11の挿入口44より内奥に延びる所定深さの箱状領域である第1空間45(第1型枠100により形成)が含まれる。この第1空間45の挿入口44(第1型枠100の端面の外形に対応)は、上記の挿通開口40と連続する開口であり、図1に示す例では、挿入口44とこれより小さな挿通開口40とが連結した鍵穴状の形態をなしている。
【0032】
一方、I型連結金物30は、その一端を他部材15に固定し、他端をセグメント10における当接面11に備わる挿入口44とこれに連続するセグメント内の所定内空を介して筒状連結金物20に向けて挿入されることになる。挿入口44に連続するセグメント内の所定内空とは、上述した第2空間43および第1空間45を指している。この場合、I型連結金物30のフランジ31は、挿入口44を介して第1空間45に挿入され、第1空間45の側面にある側方開口42を介して第2空間43のウェブ経路41をスライド移動させられる。また、ウェブ32も、ウェブ経路41を同様にスライド移動することになる。
【0033】
この時、I型連結金物30のフランジ31は、ウェブ経路41の底部、つまり第2空間43の底部にある筒状連結金物20の内空22を、側方開口42と反対の突き当たり面24に向かって進み、内空22と最終的に嵌合する。以上が筒状連結金物20、I型連結金物30を用いた連結構造となる。
【0034】
また、上述した嵌合に適した構造として、くさび結合がなされる構造があげられる。くさび結合がなされる構造において、筒状連結金物20は、その内空22が、セグメント内奥方向に徐々に下降するよう傾斜配置している。また、フランジ31は、内空22の傾斜とは逆の傾斜方向、すなわちセグメント内奥から当接面方向に徐々に上昇するよう成形されている。従って、側方開口42から第2空間43にスライドしていくI型連結金物30のフランジ31は、内空22に入り込んでいくごとに、隅角部34が筒状連結金物20の隅角部23に食い込んでいくことになり、互いに緊密に嵌合することになる。
【0035】
なお、図4では、I型連結金物30の前記一端が、他部材15の内奥に備わる筒状連結金物20の内空22に挿入されてこれと嵌合し、保持されている例を示している。しかしながら、このI型連結金物30の一端が他部材15にて保持される形態としてはこれに限定されない。例えば、他部材15の形成(例:セグメント形成用のコンクリート打設)にあわせて、I型連結金物30の一端を、所定治具などを介して他部材15の内奥部に係止しておき、他部材15への埋め込み固定を図る形態なども採用できる。
【0036】
また、I型連結金物30と筒状連結金物20のそれぞれにおいて、両者の接触面に接着剤を塗布しておき、嵌合に際してI型連結金物30と筒状連結金物20とを強固に結合させるとしてもよい。或いは、嵌合にあわせて、筒状連結金物20の内空22に、例えば、パテ(例えば、エポキシパテ、ポリエステルパテなど)やゲル状の接着剤を充填しておき、嵌合に際して筒状連結金物20の内空22に入り込んだI型連結金物30が、徐々に硬化するパテ等を介して内空22と一体化し、嵌合を強固に固定させるとしてもよい。
【0037】
また、I型連結金物30の一端を他部材15に固定する他の形態として、図4に示す例だけでなく、別の形態も採用できる。図5は、他の実施形態におけるプレキャスト部材の連結構造を示す図である。ここでは、I型連結金物30の端面35に管体50が備わり、この管体50には棒体55が予め嵌合されている。また、筒状連結金物25は、閉塞された突き当たり面24とこの突き当たり面24に設けられた前記開口26を備えており、また、上記実施形態における筒状連結金物20とは異なり、内空22から当接面11まで内空が延長されている。この実施形態における筒状連結金物25の内空22には、こうした棒体55が嵌合された管体50を具備するI型連結金物30の一端が挿入され、前記棒体55は、前記内空22より、筒状連結金物25の前記開口26を経て筒状連結金物外へ適宜突出して配置される。I型連結金物30が備える管体50は、開口51を備えた中空構造となっている。また、前記棒体55のうち、筒状連結金物25の前記開口26より突出した部位は、例えば、セグメントの実体をなすコンクリートに埋め込み固定される基礎部56となる。他方、前記開口26から内空22に向けて突出する部位は突出部57となる。なお、前記突出部57は、管体50の内空51に対し確実に嵌合する径を備えている。
【0038】
こうした構造において、棒体55を嵌合した管体50を具備するI型連結金物30のフランジ31aを(手順a)、筒状連結金物25の内空22に挿入し、前記棒体55の基礎部56を前記突き当たり面24の開口26より突出させる(手順b)。また、この基礎部56の突出の後、突き当たり面24と対向する開口面27に板材を当接するなどして閉塞し、セグメントの実体をなすコンクリート打設を実行することで、筒状連結金物25の外に突出している前記基礎部56は周囲のコンクリートに付着して固定される。一方、当該基礎部56の反対側端部となる突出部57は、管体50の開口51と、筒状連結金物25の内空22にて嵌合した状態を維持している。但し、この突出部57と管体50との嵌合は、嵌合の限界まで所定の余裕を残した嵌合状態となっている。
【0039】
また、前記嵌合に際して、フランジ31aを筒状連結金物25の突き当たり面24に向けてスライドさせることにより、上述したくさび結合の状態が形成されることになる。つまり、周囲のコンクリートに埋設固定された棒体55と前記管体50との嵌合、および前記くさび結合による嵌合という二重の嵌合が行われることになり、たとえくさび結合による嵌合ではI型連結金物30にがたつきが生じるような場合であっても、管体50と棒体55との嵌合により、こうしたがたつきは抑止され、I型連結金物30の一端は他部材15において、より確実に固定されることになる。ここまでの処理でI型連結金物30の一端は他部材15に固定された。
【0040】
一方、前記他部材15とセグメント10との当接面11を介した突き合わせを行い(手順x)、上述の如く既に他部材15に固定されているI型連結金物30の他端のフランジ31bを、連結対象のセグメント10の内奥に埋設されている筒状連結金物20に向けて挿入しスライドさせるとする(図6:手順y)。すると、上記実施形態にて述べたくさび結合によりI型連結金物30と筒状連結金物20とは嵌合していくことになるが、この嵌合動作に反力を得て、前記一端のフランジ31aにおける管体50の内空51に、前記棒体55の突出部57がより深く嵌合することになり、I型連結金物30の一端は他部材15において、より確実に固定されることになる(拡大図x〜y〜z)。勿論、こうした嵌合構造は、I型連結金物30の一端を他部材15に固定する場合だけでなく、I型連結金物30の他端をセグメント10の筒状連結金物20に嵌合させる構造に採用してもよい。
【0041】
以上、本実施形態によれば、プレキャスト部材間の連結を低コストに実現する連結金物の設置手法を提供できる。
【0042】
本発明の実施の形態について、その実施の形態に基づき具体的に説明したが、これに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0043】
5 所定長
7 外型枠
10 セグメント
11 当接面
15 他部材(セグメント)
20、25 筒状連結金物
21 スリット状開口
22 筒状連結金物の内空
23 隅角部
24 突き当たり面
25 筒状連結金物20の一端
26 突き当たり面の開口
27 突き当たり面と対向する開口面
30 I型連結金物
31、31a、31b フランジ
32 ウェブ
33 フランジの長さ
34 隅角部
35 I型連結金物の端面
40 挿通開口
41 ウェブ経路
42 側方開口
43 第2空間
44 挿入口
45 第1空間
50 管体
55 棒体
51 開口
56 基礎部
57 突出部
100 第1型枠
101 ボルト穴
102 底部
103 側面
105 ボルト
150 連結構造
200 内挿体
203 内挿体の隅角部
210 ボルト(把持材)
211 ボルト先端
215 ボルト穴
300 第2型枠
310 ボルト穴
311 第2型枠の一端
313 第2型枠の側面
314 第2型枠の他端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレキャスト部材の外型枠内に収まる箱状の第1型枠を、開口形成用の部位に関して前記外型枠の開口面と略同一面にして前記外型枠内に配置する工程と、
長手方向にわたってスリット状開口を備える筒状連結金物の内空を支持する内挿体と、前記スリット状開口の径と一端の厚みが略同じである箱状の第2型枠とを、仮固定することで一体化する工程と、
前記第2型枠と一体化した内挿体を筒状連結金物の内空に挿入して、当該筒状連結金物と前記内挿体および前記第2型枠とを一体化し、前記筒状連結金物の一端および前記第2型枠の側面が前記第1型枠に密着し、前記第2型枠の他端が前記外型枠の開口面と略同一面になるよう、前記外型枠内の所定深さの位置に配置する工程と、
前記外型枠内にコンクリートを打設し、所定期間の養生を行う工程と、
前記第1型枠を前記外型枠の開口面方向に引き抜いて脱型する工程と、
前記一体化している内挿体と第2型枠との仮固定を解除し、前記第2型枠を前記外型枠の開口面方向に引き抜いて脱型する工程と、
前記筒状連結金物の内空に残された内挿体に対し、前記第2型枠が形成した第2空間を介して把持材を取り付け、当該把持材を、前記第2空間から前記第1型枠により形成された第1空間にかけてスライドさせることで、該把持材と共に前記内挿体を筒状連結金物内空から前記第1空間に導き、前記外型枠の開口面方向に引き抜く工程と、
を含むことを特徴とするプレキャスト部材連結金物の設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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