説明

プレキャスト鋼管コンクリート複合杭及びその製造方法

【課題】 上部構造のフーチングと結合する異形棒鋼を杭頭に取付けるための現場溶接を排除すると共に、杭とフーチングとを容易に強固に一体化させることができる、プレキャスト鋼管コンクリート複合杭及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 プレキャスト鋼管コンクリート複合杭10は、外殻鋼管12の頂部端板21を貫通して上方に延出する複数の異形棒鋼31を内蔵するコンクリート筒体30を杭上端に備え、上方に延出する異形棒鋼31は、延出部が上部構造物のフーチングに定着する長さを有し、延出部に上記コンクリート筒体との付着を妨げる剥離補助材32を装着させたものである。遠心成形により製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャスト鋼管コンクリート複合杭に関し、さらに詳しくは、プレキャスト鋼管コンクリート複合杭を上部構造のフーチングに容易に強固に一体化させることができるようにした杭及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プレキャスト鋼管コンクリート複合杭は、外殻鋼管内にコンクリートを遠心成形等により打設して製造する基礎杭であって、高強度、高靭性の優れた特性を有し、中堀り工法又はプレボーリング工法等により、地中に埋設されるものである。
【0003】
従来、このようなプレキャスト鋼管コンクリート複合杭は、その頭部を上部構造のフーチングと接合する場合、鋼管コンクリート複合杭の頭部に異形棒鋼を溶接にて取付け、この異形棒鋼をフーチングコンクリート内に埋設して杭とフーチングとを力学的に一体化していた。
【0004】
この場合、異形棒鋼を外殻鋼管の外周に沿って溶接したり、複合杭の頂部端板にスタッド溶接により取付けていた。
【0005】
外殻鋼管の外周に、異形棒鋼を1本ごとに現場溶接することは、多大の労力と時間を要し、地盤附近での溶接作業のため溶接姿勢がとりにくく、また溶接部の品質や強度の確保に問題があり、さらに溶接技術者の確保など多くの問題点が指摘されていた。
【0006】
これらの問題を解決するために杭体内に鉄筋を埋込んでおき、杭施工後に杭頭部のコンクリートを除去して結合用鉄筋を露出させることも考慮されているが、外殻鋼管の除去、コンクリート破壊や鉄筋露出作業の困難性などがネックとなっていた。
【0007】
また、鋼管コンクリート複合杭の上端の鋼製端板の杭体コンクリート側に複数の頭付きスタッドや複数のアンカー鉄筋を溶着したり、複数の鋼製リブを溶着する手段などもある。この場合、鋼製端板の厚さを厚くし変形を防止すると共に溶着部分を補強する必要があり、多大な費用を要すると共に、スタッドの引張力が鋼製端板の溶着部に偏芯荷重を生じ、鋼製端板の変形を完全に無くすることは困難であった。
【0008】
これを改善する技術として、鋼管コンクリート複合杭の頭部側の外殻鋼管の外径より約20〜60mm大きく、厚さの厚い大径の端板を鋼管コンクリート複合杭の外殻鋼管に溶接し、この端板に、外殻鋼管の肉厚中心と同一円周位置に中心を合わせて異形スタッドを植設する技術がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
この技術は外殻鋼管内に膨張性コンクリートを注入し、遠心成形により製造するもので、鋼製端板の外殻鋼管の肉厚中心と同一円周位置上に所要本数の異形スタッドを植設するものであるが、溶接による不利益を改善することは本質的にできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−167777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上部構造のフーチングと結合する異形棒鋼を、現場溶接することなく、上部構造のフーチングと容易に強固に一体化させることができるような構造を有するプレキャスト鋼管コンクリート複合杭及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、プレキャスト鋼管コンクリート複合杭であって、頂部端板を貫通して上方に延出する複数の異形棒鋼を備え、この延出した異形棒鋼を内蔵するコンクリート筒体を杭上端に備えたことを特徴とするものである。この杭上端のコンクリート筒体の部分は外殻鋼管を有しない。
【0013】
本発明の複合杭は、埋設施工後、前記コンクリート筒体を破壊して上方に延出した異形棒鋼を露出させ、これを上部構造のフーチング中に埋設して容易に一体化させるものである。
【0014】
このため、本発明において、前記上方に延出する異形棒鋼は、延出部が上部構造物に定着する長さを有し、この延出部に前記コンクリート筒体との付着を妨げる剥離補助材を装着させた構造とすると好適である。
【0015】
なお、上記コンクリートとの付着を妨げる剥離補助材は、異形棒鋼の全長に亘って装着することは必ずしも必要ではなく、例えば、外殻鋼管の端板から延出している異形棒鋼の端板の近傍には装着せず、この部分のコンクリートを除去しないで異形棒鋼をフーチングと一体化させることとしてもよい。
【0016】
本発明の複合杭の製造方法は次のとおりである。
【0017】
杭の頂部端板を貫通して外殻鋼管内から上方に延出する複数の異形棒鋼を準備し、これらの異形棒鋼の配列位置を規定する頂部キャップに異形棒鋼の一端をそれぞれ固定し、異形棒鋼の杭頂部端板より延出する部分の異形棒鋼にコンクリートとの剥離補助材を外嵌すると共に、組立用輪筋を取付けて鉄筋篭体を形成し、次いで前記異形棒鋼の基部側を外殻鋼管の頂部端板に設けた貫通孔を貫通して外殻鋼管内に挿通し、挿通した異形棒鋼の先端側から異形棒鋼周囲に順次輪筋を取付けながら外殻鋼管内に進入させて外殻鋼管内外に鉄筋篭を形成し、以上の鉄筋篭を付属した外殻鋼管を遠心成形装置にセットし、コンクリートを打設することによって、本発明のプレキャスト鋼管コンクリート複合管を製造することができる。
【0018】
ここで、頂部キャップは、本発明のプレキャスト鋼管コンクリート複合杭の上端に設けたコンクリート筒体の頂部に載設される杭頭保護キャップであって、かつ、異形棒鋼の配列を規制する部材である。この頂部キャップは、例えば、外殻鋼管の頂部端板と同様のフランジ状の形状を有し、その下面に異形棒鋼の頭部に外嵌する複数の円筒部材を下向きに取付けたものとする。この円筒部材は異形棒鋼の配列と一致する配列に取付けられており、この円筒部材に異形棒鋼の一端を挿入すると異形棒鋼の配列が規制される。
【0019】
また、剥離補助材は、異形棒鋼とコンクリートとの付着を妨げる部材であって、例えば、異形棒鋼に外嵌する発砲ポリスチレン管、塩化ビニール管などの合成樹脂管や各種のテープなどを用いる。合成樹脂管は、長手方向に切目を備えたものや、2つ割りのものを用いると異形棒鋼への取付、除去が容易である。各種のテープは巻きつけ等によって異形棒鋼に装着するとよい。
【0020】
なお、剥離補助材は異形棒鋼からコンクリートを容易に剥離させて、フーチングコンクリートと異形棒鋼とを確実に付着させる部位に外嵌するとよい。
【0021】
本発明のプレキャスト鋼管コンクリート複合杭は、地中埋設後、外殻鋼管の頂部端板より上方のコンクリート筒体のコンクリートを解体剥落させ、露出した異形棒鋼を上部構造のフーチング内に埋設することによって、容易にフーチングと杭との一体化を図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のプレキャスト鋼管コンクリート複合杭は、上部構造のフーチングと結合する異形棒鋼を溶接等によって取付ける必要が全くなく、予め最も適切な位置に異形棒鋼を内蔵し、杭を地中に埋設した後、杭の頭部近傍コンクリートを解体剥落させて異形棒鋼を露出させてフーチングと一体化させ、極めて安価に短時間に容易に杭と上部構造との力学的構造を的確に構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例の縦断面図である。
【図2】図1のA−A矢視断面図である。
【図3】図1のB−B矢視断面図である。
【図4】実施例の使用工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0025】
図1は本発明の実施例のプレキャスト鋼管コンクリート杭10の頭部付近の縦断面図を示すものである。
【0026】
本発明のプレキャスト鋼管コンクリート複合杭10は、外殻鋼管11内に円筒状コンクリート12を打設した通常のプレキャスト鋼管コンクリート複合杭の端板21より上方に異形棒鋼31を内蔵したコンクリート円筒30を形成したものである。
【0027】
通常のプレキャスト鋼管コンクリート複合杭の断面は、図1のB−B矢視断面図を図3に示したように、外殻鋼管11の内側にコンクリート12を打設したもので、コンクリート12中に異形棒鋼31によって形成された鉄筋篭を内蔵している。
【0028】
コンクリート円筒30は本発明特有のものである。図2はこのコンクリート円筒30の横断面を示すもので、図1のA−A矢視断面図である。ここで、上方に延出する異形棒鋼31は、外殻鋼管11の頂部端板21より上方への延出部が上部構造物に定着する長さを有する。このコンクリート筒体30は、本発明の杭を地中に埋設した後、コンクリート34を破壊して異形棒鋼31を露出させる。露出した異形棒鋼31は図示しない上部構造のフーチング中に埋設して、杭頭とフーチングとの一体化を図る。
【0029】
異形棒鋼31には、コンクリート筒体30との付着を妨げる剥離補助材32を装着することによって、コンクリート筒体30破壊後、異形棒鋼31の表面を露出させることができる。
【0030】
コンクリート筒体30の頂部には、頂部キャップ40が取付けられている。頂部キャップ40は杭頭保護キャップと異形棒鋼の配列を規制するものである。頂部キャップ40は外殻鋼管11の頂部端板21と同様のフランジ状の頂板41とその下面に取付けられた円筒部材42と袴43とを備えている。円筒部材42は、異形棒鋼31の頂部に外嵌するもので、異形棒鋼31の相互間の配列及び位置決めをするものである。袴43は頂部41の外周に設けた円筒で、コンクリート筒体30の頭部の外周を保護する。
【0031】
輪筋33は、異形棒鋼31の周囲に巻付けられ、鉄筋篭を形成する。コンクリート筒体30を破壊して異形棒鋼31を露出させるときは除去される。
【0032】
本発明のプレキャスト鋼管コンクリート複合杭は次の手順によって製造される。
【0033】
外殻鋼管11の端部にフランジ状の端板21を取付ける。杭頭部側端板21は異形棒鋼31を挿通する複数の貫通孔22が設けられている。
【0034】
この端板21の貫通孔22を通って外殻鋼管内から外部に延出するような長さを有する多数の異形棒鋼31を準備する。
【0035】
外殻鋼管11の端板21から上方に延出する部分の異形棒鋼31に剥離補助材32を被覆する。次に、異形棒鋼31の下端側を貫通孔22中に挿通し、外殻鋼管11内で異形棒鋼31の周囲に輪筋35を取付けながら異形棒鋼31を外殻鋼管11内に進入させる。異形棒鋼31の端板21からの延出部長さが所定長になるまで進入したら、この延出部の異形棒鋼31の周囲に輪筋33を配置し鉄筋篭を組立てる。この所定長とは異形棒鋼31がフーチング中に埋設されて一体化する長さである。
【0036】
異形棒鋼31の頂端に杭頭保護キャップ40を取付ける。次いで、外殻鋼管11と異形棒鋼31から成る鉄筋篭とを組合わせた構造体を遠心成形型枠にセットする。
【0037】
この遠心成形型枠内にコンクリートを投入し、遠心締固めを行うと、本発明のプレキャスト鋼管コンクリート複合杭10を形成することができる。次いで、蒸気養生を行う。養生後脱型した本発明のプレキャスト鋼管コンクリート複合杭10は製品ヤードに運搬され、貯蔵される。
【0038】
本発明のプレキャスト鋼管コンクリート複合杭10の上部構造との接合準備作業工程を図4(a)(b)(c)に示した。
【0039】
図4(a)は地中に埋設された本発明に係るプレキャスト鋼管コンクリート複合杭10の埋設直後の杭頭部の状態を示す側面図である。外殻鋼管11の頂部端板21がフーチングを造成する地盤50の近辺にあり、コンクリート筒体30はフーチングを造成する地盤50上に露出している。
【0040】
図4(b)はコンクリート筒体30を破壊している状態を示し、内部の異形棒鋼31、輪筋33等が露出途中である。
【0041】
図4(c)はコンクリート筒体30のコンクリート除去完了状態を示し、異形棒鋼31が完全に露出している。
【0042】
この後、異形棒鋼31と図示しないフーチングの鉄筋篭とを組合せ、フーチングコンクリートを打設する。
【0043】
このようにして、異形棒鋼を杭頭部に溶接取付する必要が全くなくなり、作業の合理化、工事費用の低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0044】
10 鋼管コンクリート複合杭
11 外殻鋼管
12,34 コンクリート
21 端板
22 貫通孔
30 コンクリート円筒
31 異形棒鋼
32 剥離補助材
33,35 輪筋
40 頂部キャップ
41 頂板
42 円筒
43 袴
50 フーチングを造成する地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂部端板を貫通して上方に延出する複数の異形棒鋼を備え、該延出した異形棒鋼を内蔵するコンクリート筒体を杭上端に備えたことを特徴とするプレキャスト鋼管コンクリート複合杭。
【請求項2】
前記上方に延出する異形棒鋼は、延出部が上部構造物に定着する長さを有し、該延出部に前記コンクリート筒体との付着を妨げる剥離補助材を装着したことを特徴とする請求項1記載のプレキャスト鋼管コンクリート複合杭。
【請求項3】
杭の頂部端板を貫通して外殻鋼管内コンクリートから杭の上方に延出する複数の異形棒鋼を準備し、該異形棒鋼の配列位置を規定する頂部キャップに該異形棒鋼の一端をそれぞれ固定し、頂部端板より延出する部分の異形棒鋼にコンクリートとの剥離補助材を外嵌すると共に、組立用輪筋を取付けて鉄筋篭体を形成し、次いで前記異形棒鋼の基部側を外殻鋼管の頂部端板に設けた貫通孔を貫通して外殻鋼管内に挿通し、挿通した異形棒鋼の先端側から異形棒鋼周囲に順次輪筋を取付けながら外殻鋼管内に進入させて外殻鋼管内に鉄筋篭を形成し、以上の鉄筋篭を付属した外殻鋼管を遠心成形装置にセットし、コンクリートを打設することを特徴とするプレキャスト鋼管コンクリート杭の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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