説明

プレコート金属板

【課題】硬度および加工性が一層高められたプレコート金属板を提供する。
【解決手段】金属板の表面が樹脂塗膜で被覆されたプレコート金属板であって、該樹脂塗膜は、樹脂固形分100質量部に対し、長軸方向の平均粒径が8μm以下である薄片状の充填剤を20質量部以上80質量部以下の範囲で含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高度の加工性と硬度とを兼ね備えたプレコート金属板に関するものである。本発明のプレコート金属板は、例えば、冷蔵庫、ホットプレート、電子レンジ内壁材などの調理機器、テレビ、ビデオ、DVDなどのAV機器などの家電製品や、屋内器物、建材などに好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫などの家電機器や建材などに使用される鋼板などの金属板は、一般に、美観(装飾性)および防食性の向上を目的として、表面が塗装されている。塗装方法は、家電メーカー等のユーザー側における公害防止、職場環境改善、省力化、生産性の向上等を目的として、ユーザー側で鋼板をプレス成形した後塗装を行う「ポストコート方式」と、予め、鋼板メーカー側で塗装を行った鋼板をユーザー側でプレス成形する「プレコート方式(すなわち、ユーザー側でプレス成形を行う前に、予め、鋼板メーカー側で鋼板を塗装する方式)」とに大別される。最近は、ユーザー側の便宜を図るため、「ポストコート方式」から「プレコート方式」へと切り替わりつつある。プレコート方式によって得られる金属板は、プレコート金属板と呼ばれ、汎用されている。
【0003】
プレコート鋼板に代表されるプレコート金属板は、用途などに応じて種々の特性が要求されるが、特に、硬度が高く、且つ、加工性に優れることが望まれている。前述したように、プレコート金属板は、表面に樹脂塗膜が被覆されたままプレス加工されるため、加工時に塗膜の亀裂や破壊が生じないこと(加工性)が必要である。一方、加工時または加工後の表面の疵付き防止(耐疵付き性)を確保するため、塗膜は、所定の硬度を有していることも必要である。高加工性と高硬度とは相反する性質であり、一般に、加工性を高めるために塗膜を柔らかくすると耐摩耗性が低下し、疵が付きやすくなる。逆に、塗膜を硬くして硬度を高めると加工性が低下する。
【0004】
このような問題に鑑み、これまで、硬度および加工性の両方が高められた塗装金属板を提供するために種々の提案がなされている。例えば、以下の特許文献1から特許文献3には、塗膜中に添加剤を添加する方法が提案されている。
【0005】
このうち、特許文献1には、塗膜を形成する耐熱樹脂に分散させる無機系微粒子の形状および粒径と、熱溶融性フッ素樹脂粉末の粒径とを適切に制御することにより、フッ素樹脂による高加工性を維持しながら、塗膜硬度及び耐磨耗性が改善された塗装金属板が開示されている。
【0006】
特許文献2には、裏面塗膜を下塗り塗膜と上塗り塗膜との2回塗り塗装とし、当該上塗り塗膜に所定の骨材を添加することにより、塗膜硬度および加工性の向上を図る技術が開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、金属板を被覆した有機樹脂(ベース樹脂)塗膜中に硬質の有機樹脂粒子(硬質粒子)を分散させ、ベース樹脂による高加工性と、硬質粒子による高硬度化とを図った技術が開示されている。
【特許文献1】特開2003−33995号公報
【特許文献2】特開2001−225008号公報
【特許文献3】特開2004−209720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、プレコート金属板に要求される高硬度および高加工性のレベルは、益々、高くなっており、前述した方法は、このような要求に充分対応しているとはいえない。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、硬度および加工性が一層高められたプレコート金属板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のプレコート金属板は、金属板の表面が樹脂塗膜で被覆されたプレコート金属板であって、該樹脂塗膜は、樹脂100質量部に対し、長軸方向の平均粒径が8μm以下である薄片状の充填剤を20質量部以上80質量部以下の範囲で含有することに要旨を有している。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高い硬度を維持しつつ、優れた加工性も兼ね備えたプレコート金属板を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明者は、高硬度と高加工性とを兼ね備えたプレコート金属板を提供するため、特に、樹脂塗膜中に添加される充填剤に着目して検討した。その結果、充填剤の形状、粒径、および添加量を所定の範囲に制御することによって所期の目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
本明細書において、「硬度が高い(高硬度)」とは、JIS K5400に従って鉛筆硬度試験を行った(三菱鉛筆製の三菱ユニを使用)とき、塗膜に擦り傷がつかない限度の鉛筆硬度がH以上のものを意味する。
【0014】
また、本明細書において、「加工性に優れる(高加工性)」とは、JIS K5400に記載の耐屈曲性試験(円筒形マンドレル法)に従い、直径2mmのマンドレルを用いて試験板を折り曲げた後、油圧プレスで押し潰して180度曲げ加工を行ったときの加工部を15倍ルーペで観察したとき、塗膜の割れや剥離が見られないか、せいぜい、微細な亀裂が見られる程度のもの(すなわち、明らかな塗膜の割れや剥離は見られない)を意味する。
【0015】
なお、前述した特許文献においても、樹脂塗膜中に充填剤が添加されているが、以下の点で、本発明と相違している。
【0016】
特許文献1の塗装金属板は、耐熱樹脂の固形分100質量部に対し、平均粒径1μm以下の熱溶融性フッ素樹脂を100〜200質量部、平均粒径10〜100μmの鱗片状無機質添加剤を1〜30質量部の割合で含有する塗料を用いて作製される。前述したように、特許文献1は、フッ素樹脂による優れた加工性を維持しながら、塗膜硬度及び耐磨耗性の改善を図る技術であり、鱗片状無機質添加剤の平均粒径および添加量は、いずれも、塗膜硬度および耐磨耗性と、非粘着性との両立という観点から設定されている。特許文献1には、これらの下限を下回ると塗膜硬度及び耐磨耗性の改善効果が不充分であり、これらの上限を超えると非粘着性が低下すると記載されている。
【0017】
しかしながら、本発明者の検討結果によれば、平均粒径が10μm以上の添加剤を用いると、本発明で定める加工性の評価基準を満足できず、所望の加工性が得られないことが分かった(後記する実施例を参照)。
【0018】
加工性の評価基準に関し、本発明では、特許文献1よりも過酷な評価基準を定めている。すなわち、特許文献1では、本発明と同様、JIS K5400 8.1 耐屈曲性に従って180度密着折曲げ試験を行っているが、上記の曲げ試験を行ったときの折曲げ部(加工部)を肉眼で観察して割れの有無を判断し、割れが検出されなかったものを「○」と評価しているのに対し、本発明では、前述したように、上記の曲げ試験を行ったときの加工部を15倍ルーペで観察して塗膜の破壊や剥離の有無を判断し、破壊などが見られないものを「○」と評価している。従って、特許文献1の評価基準によれば、「○」と判断されるものが、本発明の評価基準によれば、「×」と判断される場合がある。本発明では、このような過酷な加工性の評価基準を満足し得るものとして、添加剤の平均粒径および配合量を定めている点で、特許文献1と相違している。
【0019】
また、特許文献2と本発明とは、主に、使用する充填剤の種類や粒径が相違している。特許文献2の実施例の欄には、上塗り塗膜中に、平均粒径30μmのアルミ骨材、平均粒径10μmのポリアクリロニトリルビーズ(PANビーズ)の少なくとも一種が配合された塗装金属板が記載されているが、このように平均粒径の大きい骨材などを用いると、後記する実施例に示すように、所望の加工性が得られない。
【0020】
特許文献3は、前述したように、ベース樹脂によって高加工性を図り、硬質粒子によって高硬度化を図る技術であって、充填剤のみによって加工性および硬度の向上を図る本発明とは相違する。特許文献3では、充填剤の添加によって加工性を高めることは全く意図していないため、実施例の欄には、平均粒径が25〜50μmの熱硬化性有機樹脂粒子を用いた塗装鋼板しか記載されていないが、このように平均粒径が大きい硬質樹脂を用いると、本発明における所望の加工性を実現できない。
【0021】
従って、前述した特許文献1から3に記載の充填剤は、いずれも、本発明と相違する。
【0022】
以下、本発明を特徴付ける充填剤を説明する。
本発明に用いられる充填剤は、薄くて平たい薄片形状を有している。
【0023】
ここで、「薄片形状」とは、例えば、板状、フレーク状、鱗片状、繊維状、針状、粒子状(一次粒子)などの形態を意味し、球状の充填剤(前述した特許文献2に記載のPANビーズなど)は含まれない。薄片状であれば、充填剤が塗膜の表面に突出することもなく、樹脂塗膜中に同一方向に並びやすいため、加工時における塗膜の破壊を防止しつつ塗膜表面の硬度を充分高めることができる。これに対し、球状の充填剤を用いると、硬度は向上するが、加工性が低下し、表面が荒れたりする場合があることが、本発明者の実験結果により明らかになった(後記する実施例を参照)。
【0024】
「薄片形状」には、例えば、偏平形状も含まれる。具体的には、扁平比(長径/厚み)が、おおむね、10以上200以下のものを用いることが好ましく、これにより、高硬度および高加工性のレベルを一層高められる。
【0025】
所望の加工性を得るためには、上記充填剤の平均厚さは、0.1μm以下であることが好ましい。硬度および加工性の両方を高めるためには、充填剤の平均厚さは、おおむね、0.01μm以上0.05μm以下であることがより好ましい。
【0026】
更に、本発明に用いられる充填剤は、長軸方向の平均粒径が8μm以下である。後記する実施例に示すように、平均粒径が大きいと所望の加工性が得られない。加工性向上の観点からすれば、平均粒径は小さい方が良く、5μm以下であることが好ましい。ただし、充填剤の平均粒径が小さくなると、硬度が低下する。所望の硬度を確保するためには、充填剤の平均粒径は、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることが更に好ましい。
【0027】
ここで、平均粒径とは、レーザー回折散乱粒度分布測定装置を用いて得られる粒度分布曲線より、50%粒子径を読み取って得られた値である。
【0028】
本発明に用いられる充填剤は、上記要件を満足する限り、微粒子が集合した集合体であっても良い。具体的には、一次粒子がほぼ平行に重なった二次粒子でも良いし、二次粒子が更に三次元的に凝集した三次粒子でもよい。このような集合体は、粉末状のほか、水中に分散したスラリー状としても存在し得る。
【0029】
充填剤の種類は、前述した要件を満足する限り、特に限定されず、例えば、アルミナ、シリカ、マイカなどのセラミックス、ガラス粉末、ガラス繊維、アルミ骨材、クレーなどの層状鉱物などの無機粒子が用いられる。
【0030】
このような充填剤は、例えば、市販品を用いることもできる。具体的には、キンセイマテック株式会社製の板状アルミナ粉末「セラフ」、洞海化学株式会社製の「サンラブリーC&TZ−824」(鱗片形状のSiO微粒子が三次元的に凝集した三次粒子)、斐川礦業社製の「斐川マイカ」などが挙げられる。これらの充填剤は、扁平比(長径/厚み)が10以上200以下である扁平形状の微粒子であり、おおむね、0.1μm以下の平均厚さを有している。上記の充填材は、以下に記載の添加量を満足する限り、単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0031】
このような充填剤は、塗膜を構成する樹脂(ベース樹脂)の固形分100質量部に対し、20質量部以上80質量部以下の比率で添加される。充填量の添加量が20質量部未満では、所望の硬度が得られず、一方、80質量部を超えると、加工性が低下する。充填剤の添加量は、ベース樹脂固形分100質量部に対し、50質量部以上70質量部以下であることが好ましい。
【0032】
以上、本発明を特徴付ける充填剤について説明した。
【0033】
本発明のプレコート金属板は、樹脂塗膜中に上記充填剤が含まれているところに特徴があり、ベース樹脂や金属板の種類などは特に限定されず、プレコート金属板に通常用いられるものを適宜選択することができる。
【0034】
基材となる金属板は、軟鋼板、冷延鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、亜鉛合金系めっき鋼板、Al合金系めっき鋼板、銅系めっき鋼板、Ni系めっき鋼板、ステンレス鋼板をはじめとする各種鋼板、AlおよびAl合金板、CuおよびCu合金板、TiおよびTi合金板の各種金属板などが挙げられる。本発明では、これらの金属板を化成処理したものも用いられ、例えば、りん酸塩処理、クロメート処理、クロムフリー処理された金属板などを使用することができる。
【0035】
樹脂塗膜を構成するベース樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。これらは、単独あるいは混合物で用いることができる。必要に応じて、樹脂塗膜の硬度を更に高めるため、メラミン系樹脂などの硬化剤を添加してもよい。
【0036】
樹脂塗膜中には、本発明の特性を阻害しない範囲で、プレコート金属板に通常用いられる添加剤(例えば、防錆顔料、着色顔料(酸化チタン、カーボンブラック、酸化クロム、酸化鉄など)、分散剤、調整剤など)を添加することができる。
【0037】
樹脂塗膜の厚さは、おおむね、10μm以上30μm以下であることが好ましい。10μm未満では、所望とする特性(高硬度及び高加工性)が得られない。樹脂塗膜の厚さの上限は、硬度および加工性の向上の観点からは特に限定されないが、塗装のし易さや塗膜の均一性(一度の塗装処理で均一に塗布できる)などを考慮すると、30μmが好ましい。これらを総合的に勘案すると、樹脂塗膜の厚さは、15μm以上25μm以下であることがより好ましい。
【0038】
上記樹脂塗膜の上には、他の特性付与などを目的として、更なる塗膜が形成されていてもよい。例えば、耐疵付き性の向上などを目的として、クリヤー塗膜が形成されていてもよい。
【0039】
次に、本発明のプレコート金属板を製造する方法について説明する。
【0040】
本発明では、所定の充填剤を使用することを除けば、通常のプレコート金属板の製造方法を採用することができる。
【0041】
まず、本発明を特徴付ける上記充填剤、ベース樹脂、および必要に応じて他の添加剤を含有する塗料を金属板の表面に塗布する。
【0042】
金属板表面への塗装方法は一切制限されないが、一般的な方法としては、例えば表面を清浄化し、あるいは塗装前処理(例えばリン酸塩処理、クロメート処理)等を施した金属板あるいは長尺金属帯の表面に、ロールコーター法、スプレー法、カーテンフローコーター法、バーコート法、コンマコート法等を用いて樹脂希釈液を塗布する方法が挙げられる。しかし、塗膜厚さの均一性や処理コスト、塗装効率等を総合的に考慮して最も好ましいのは、ロールコーターで塗布する方法である。尚上記樹脂塗膜は、金属板の片面のみあるいは両面に形成することができる。
【0043】
次に、上記の塗料が塗布された金属板を焼き付ける。焼付け温度は、樹脂の熱分解が進行して塗膜成分の変質を招くことなく、所定の硬度が得られる温度であれば良く、具体的には、使用するベース樹脂や硬化剤などの種類によっても適宜、適切な温度が設定される。例えば、後記する実施例に示すように、ポリエステル系樹脂(ベース樹脂)とメラミン系樹脂(硬化剤)とを併用する場合、焼付け温度は、おおむね、200℃以上250℃以下の範囲内であることが好ましい。
【0044】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、もとより下記実施例によって制限されるものでは決してなく、前・後記の主旨に適合し得る範囲で適切に変更して実施することも勿論可能であり、いずれも本発明の技術的範囲内に包含される。
【実施例】
【0045】
以下の実施例では、表1に示すように、充填剤の種類、粒径およびベース樹脂に対する配合量を種々変化させたときの硬度および加工性に及ぼす影響を調べた。
【0046】
これらの実施例に使用した金属板およびベース塗料は、以下のとおりである。
【0047】
(金属板)
金属板は、厚さ0.5mmの溶融亜鉛めっき鋼板にノンクロメート処理が塗布されたものを使用した。
【0048】
(ベース塗料)
ベース塗料は、以下のように調製した。まず、ポリエステル樹脂塗料KA‐2049(荒川化学)とメラミン系硬化剤サイメル303(三井サイテック)とを8:2(固形分の質量比率)の割合で混合し、ニッペシンナー(日本ペイント社製)で固形分が35質量%になるように希釈した。これに、硬化触媒としてCAT600(三井サイテック)を1質量部、ルチル型酸化チタンCR‐50(石原産業)を20質量部添加し、ベース塗料とした。
【0049】
塗膜の特性(硬度および加工性)は、前述した方法に従って評価した。加工性の評価基準は、以下のとおりである。
(加工性の評価基準)
◎:塗膜の割れおよび剥離が見られない。
○:微細な亀裂が見られた。
×:明らかな塗膜の割れや剥離が見られた。
【0050】
実験例1(試料1から試料3の調製)
上記のベース塗料中に、ベース樹脂(ポリエステル樹脂)の樹脂固形分100質量部に対し、平均粒径5μm、平均厚さ0.07μmの板状アルミナ粒子セラフ05070(キンセイマテック株式会社製)を表1に示す範囲で添加した後、ハイブリッドミキサーおよび小型ホモジナイザーを用いて塗料中に分散させた。次に、上記の金属板に、バーコーターを用いてベース塗料を塗布し、最高到達温度が約220℃になるように焼付けることにより、表1に示す試料1から試料3を調製した。
【0051】
実験例2(試料4から試料5の調製)
実験例1において、平均粒径2μm、平均厚さ0.08μmの板状アルミナ粒子セラフ2050(キンセイマテック株式会社製)を表1に示す範囲で添加したこと以外は、実験例1と同様にして表1に示す試料4から試料5を調製した。
【0052】
実験例3(試料6から試料7の調製)
実験例1において、平均粒径5μm、平均厚さ0.01〜0.1μmの薄片状シリカ集合体サンラブリー(洞海化学株式会社製)を表1に示す範囲で添加したこと以外は、実験例1と同様にして表1に示す試料6から試料7を調製した。
【0053】
実験例4(試料8から試料9の調製)
実験例1において、平均粒径2μm、平均厚さ0.1μmのマイカZ20(斐川礦業)を表1に示す範囲で添加しこと以外は、実験例1と同様にして表1に示す試料10から試料12を調製した。
【0054】
実験例5(試料10の調製)
実験例1において、平均粒径15μm、平均厚さ5μmのガラスフレークREF015A(日本板硝子)を50質量部添加したこと以外は、実験例1と同様にして表1に示す試料10を調製した。
【0055】
実験例6(試料11の調製)
実験例1において、平均粒径10μmの硝子パウダー(日本板硝子)を50質量部添加したこと以外は、実験例1と同様にして表1に示す試料11を調製した。
【0056】
実験例7(試料12の調製)
実験例1において、平均粒径11μmの中空ガラスビーズ(ポッターズ・ベロティーニ社製)を30質量部添加したこと以外は、実験例1と同様にして表1に示す試料12を調製した。
【0057】
実験例8(試料13の調製)
実験例1において、ベース塗料のみで塗膜を形成したこと以外は、実験例1と同様にして表1に示す試料13を調製した。
【0058】
これらの結果を表1にまとめて示す。
【0059】
【表1】

【0060】
表1より、以下のように考察することができる。
【0061】
試料2、4、6、および8は、いずれも、本発明の要件を満足する例であり、所望の硬度および加工性が得られた。
【0062】
これに対し、本発明の要件のいずれかを満足しない下記試料は、以下の不具合を有している。
【0063】
試料1および8は、いずれも、充填剤の添加量が少ない例であり、加工性は優れるものの、硬度が低下した。一方、3、5、および7は、充填剤の添加量が多い例であり、硬度は高いが加工性が低下した。
【0064】
試料10は、充填剤の平均粒径が大きい例であり、硬度は高いが加工性が低下した。
【0065】
試料11および12は、球状の充填剤を用いた例であり、硬度は高いが加工性が低下した。
【0066】
試料13は、充填剤を添加しない例であり、硬度および加工性が両方低下した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板の表面が樹脂塗膜で被覆されたプレコート金属板であって、
該樹脂塗膜は、樹脂固形分100質量部に対し、長軸方向の平均粒径が8μm以下である薄片状の充填剤を20質量部以上80質量部以下の範囲で含有することを特徴とする加工性に優れた高硬度のプレコート金属板。

【公開番号】特開2007−175866(P2007−175866A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−373363(P2005−373363)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】