説明

プレジェット・ハンドリング・システム及び液圧により止血材を血管穿刺部位へデリバリーする方法

【課題】液圧により止血材を血管穿刺部位へデリバリーするシステムを提供する。
【解決手段】このシステムは、既に生体管路に挿入されている導入用シースを介して止血材をデリバリーするものである。このシステムは、導入用シースの中に挿通可能なコントロール用チップを備えており、止血材は、導入用シースの中へ注入されて血管穿刺部位へデリバリーされる。このシステムによれば、血管壁に形成された穿刺部位の位置を正確に確認することができ、その穿刺部位を覆う位置に止血用塞栓を適切に定位することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件特許出願は、先に出願した下記2件の同時継続米国特許出願の一部継続特許出願である。(1)米国特許出願第10/256,493号(出願日:2002年9月26日、発明の名称:SYSTEM AND METHOD FOR DELIVERING HEMOSTASIS PROMOTING MATERIAL TO A BLOOD VESSEL PUNCTURE SITE BY FLUID PRESSURE(液圧により止血材を血管穿刺部位へデリバリーするシス
テム及び方法))、(2)米国特許出願第10/007,204号(出願日:2001年11月8日、発明
の名称:SYSTEM AND METHOD FOR DELIVERING HEMOSTASIS PROMOTING MATERIAL TO A BLOOD VESSEL PUNCTURE SITE BY FLUID PRESSURE(液圧により止血材を血管穿刺部位へデリバリーするシステム及び方法))。
【0002】
本発明は、液圧により止血材を血管穿刺部位へデリバリーするためのシステム及び方法に関し、より詳しくは、本発明は、血管穿刺部位を封止する吸収性スポンジ材料をデリバリーするための改良したシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
様々な診断処置や介入処置のうちには、静脈ないし動脈の中へ、経皮的に器具を導入することを伴う処置が数多く存在している。例えば、冠動脈形成術、血管造影術、粥腫切除術、動脈内ステント留置術、及びその他多数の処置において、大腿動脈などの血管に挿入したカテーテルを介して血管系にアクセスするということが頻繁に行われている。その処置が完了してカテーテルなどの器具を除去したならば、その穿刺部位からの出血を抑制する必要がある。
【0004】
これまで一般的に、血管の穿刺傷の止血は、器具の挿入を行った部位の皮膚を外部から圧迫することによって行われていた。この圧迫は、穿刺部位の出血が止まるまで継続して行われる。場合によっては、この圧迫を1時間以上に亘って継続しなければならないこともあり、その間、患者は動けないために、不自由な思いをすることを余儀なくされる。更に、十分な凝血塊が形成されて止血が達成されるまで、血管から皮下へ出血が続くことがあり、それによって血腫が形成されることもある。また、外部からの圧迫によって血管の穿刺部位を閉塞するという方法は、皮膚表面近くの血管に対しては良好に機能するが、皮下脂肪組織を大量に蓄えた患者の場合には、血管の穿刺部位から皮膚表面までの距離が大きいことから、この方法が不適当であることがある。
【0005】
より最近になって、血管穿刺部位において直接的に止血を行うための様々なデバイスが提案された。そのような穿刺部位封止デバイスの一分類として、血管内アンカーを使用するものがある。血管内アンカーは、血管内に定位され、血管穿刺部位の内面に当接することによってその穿刺部位を封止するものである。この血管内アンカー即ち血管内塞栓は、血管の外側に定位される封止材料と組合せて使用され、その封止材料としては、例えばコラーゲンなどが用いられている。この種の封止デバイスの具体例としては、例えば米国特許第4,852,568号、米国特許第4,890,612号公報、米国特許第5,021,059号公報、それに米
国特許第5,061,274号公報に開示されているものなどがある。
【0006】
皮下血管の穿刺部位を閉塞するための別の方式として、穿刺によって開口が形成された部位へ非吸収性の生体組織接着剤をデリバリーするという方式があり、その生体組織接着剤としては、例えばシアノアクリレートなどが用いられている。この種のシステムの具体例としては、例えば米国特許第5,383,899号公報に開示されているものなどがある。
コラーゲンなどの吸収性材料を用いる場合も、また、非吸収性の生体組織接着剤を用いる
場合も、それら材料を穿刺部位に適用することには幾つかの問題が付随しており、それら問題のうちには、1)それら材料を血管内に注入してしまうと、血栓症を引き起こすおそれがあること、2)血管穿刺部位に対して直接的に圧力を作用させることができないため、血液がそれら材料で形成された塞栓の下側を流れて、周囲の生体組織へ流入するおそれがあること、それに、3)吸収性材料で形成される塞栓を、穿刺部位を覆う位置に正確に位置付けることができないということがある。
【0007】
アンカー及び塞栓を使用する方式は、上に述べた様々な問題を、ある程度まで解決するが、しかし別の幾つかの問題が付随しており、それら問題のうちには、1)使用法が複雑で難しいこと、2)アンカーが血管内に適切に定位された場合でもそのアンカーによってその血管が部分的に閉塞されること、それに、3)アンカーが血管内に不適切に定位された場合にはそのアンカーによってその血管またはその血管の枝血管が完全に閉塞されてしまうということがある。アンカー及び塞栓を使用する方式に付随する更なる問題として、再アクセスの問題がある。アンカー及び塞栓を使用する方式で封止した血管部位に再アクセスすることは、アンカーが完全に吸収されてしまうまでは不可能であり、なぜならば、その部位に再アクセスしようとしたときに、アンカーが剥がれて血流に混入してしまうおそれがあるからである。
【0008】
以上の問題のうちの多くを解決することのできるシステムが、米国特許第6,162,192号
公報に記載されている。このシステムは、吸収性スポンジ材料から成るプレジェットを、水和させた上で、血管の外側へデリバリーすることにより、止血をするようにしたものである。しかしながら、このシステムでは、血管内処置を実施するために使用した導入用シースを抜去し、その導入用シースを抜去したあとの生体管路にダイレータ兼用の導入管を挿入して、吸収性スポンジ材料を注入するようにしている。従って、止血材をデリバリーするために必要とされるステップ数を低減することが望まれており、それには、血管内処置を実施するために使用され、既に生体管路内に挿入された状態にある導入用シースを利用して、その導入用シースを介して止血材をデリバリーすることができるようにすればよい。
【0009】
従って、血管壁に形成された穿刺部位の位置を正確に確認することができ、その穿刺部位を覆う位置に止血用塞栓を適切に定位することができ、しかも、それら位置確認操作と定位操作とを、既に血管に挿入されている導入用シースを介して行うことのできるシステムを提供することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,852,568号公報
【特許文献2】米国特許第4,890,612号公報
【特許文献3】米国特許第5,021,059号公報
【特許文献4】米国特許第5,061,274号公報
【特許文献5】米国特許第5,383,899号公報
【特許文献6】米国特許第6,162,192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、血管壁に形成された穿刺部位の位置を正確に確認することができ、その穿刺部位を覆う位置に止血用塞栓を適切に定位することができ、しかも、それら位置確認操作と定位操作とを、既に血管に挿入されている導入用シースを介して行うことのできるシステムを提供するfにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、既に血管に挿入されているシースを介して血管穿刺部位へ止血材をデリバリーするシステムに関するものである。
本発明は、その1つの観点においては、プレジェット・ハンドリング・システムを提供するものである。このプレジェット・ハンドリング・システムによれば、プレジェットの水和操作を確実に行うことができ、また、プレジェットの準備操作を効果的に行うことができ、更に、準備が完了する前にプレジェットがデリバリーされてしまうという事態を防止することができる。
【0013】
本発明の別の1つの観点によれば、止血材デリバリー・システムは、導入用シースと、前記導入用シースに接続されたコントロール用チップと、前記コントロール用チップの一部を囲繞するように配設された、血液が前記導入用シースへ流入するのを阻止するシール手段とを備えたものである。前記シール手段は、更に、止血材が前記導入用シースから血管の中へ注入されてしまうという不都合な事態が発生するのを防止する機能も果たすものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】液圧により止血材を血管穿刺部位へデリバリーするシステムの第1の実施の形態の分解側面図である。
【図2】図1のシステムの組立側面図である。
【図3】図2のシステムの一部分の側断面図である。
【図4】デリバリーする止血材をシースの側方分岐から注入するようにした、液圧により止血材を血管穿刺部位へデリバリーする別のシステムの分解側面図である。
【図5】図4のシステムの組立側面図である。
【図6】図5のシステムの一部分の側断面図であり、導入用シースの基端部とコントロール用チップとを含む部分を示した図である。
【図7】図5のシステムの一部分の側断面図であり、排出バルブと、水和用チャンバと、注射器とを含む部分を示した図である。
【図8】図1のシステムの一部分の側断面図であり、止血材から成るプレジェットを水和用チャンバの中に装填した状態を示した図である。
【図9】図1のシステムの一部分の側断面図であり、水和が完了したスポンジ材料がデリバリーのための準備位置まで進められた状態を示した図である。
【図10】血管穿刺部位の側断面図であり、導入用シース及びガイドワイヤが血管穿刺部位に挿入されている状態を示した図である。
【図11】血管穿刺部位の側断面図であり、導入用シースに止血材デリバリー・システムが接続され、ベント・チューブから流出するブリード・バックが観察可能な状態を示した図である。
【図12】血管穿刺部位の側断面図であり、止血材をデリバリーするための適正位置まで、止血材デリバリー・システム及び導入用シースを抜き出した状態を示した図である。
【図13】血管穿刺部位の側断面図であり、液圧により止血材を血管穿刺部位へデリバリーした状態を示した図である。
【図14】血管穿刺部位の側断面図であり、止血材デリバリー・システム及び導入用シースを除去した状態を示した図である。
【図15】血管穿刺部位の側断面図であり、導入用シースを抜去した状態を示した図である。
【図16】液圧により止血材を血管穿刺部位へデリバリーするシステムの別の実施の形態を示した図である。
【図16a】図16に示した実施の形態の詳細図であって、その動作を説明するための図である。
【図16b】図16に示した実施の形態の別の詳細図であって、その動作を説明するための図である。
【図16c】図16に示した実施の形態の別の詳細図であって、その動作を説明するための図である。
【図17】導入用シース、導入用シースに接続され導入用シースから延出するコントロール用チップ、及び、コントロール用チップの周囲を囲繞するように配設されたシール手段を含む、止血材をデリバリーするための別の実施の形態を示した図である。
【図18】別の実施の形態を示した図である。
【図19】別の実施の形態を示した図である。
【図20】別の実施の形態を示した図である。
【図21】別の実施の形態を示した図である。
【図22】別の実施の形態を示した図である。
【図23】別の実施の形態を示した図である。
【図24】別の実施の形態を示した図である。
【図25】別の実施の形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
これより、添付図面に示した好適な実施の形態に即して、本発明を更に詳細に説明して行く。尚、添付図面において、互いに同一ないし対応する構成要素には、同一の参照符号を付してある。
【0016】
本発明に係る止血材デリバリー・システムは、液圧により止血材を血管穿刺部位へデリバリーすることができるようにしたシステムである。このシステムによれば、止血材は、既に体内管路内に挿入されている導入用シースを介してデリバリーされる。このシステムは、コントロール用チップと水和用チャンバとを備えている。コントロール用チップは、導入用シースの中に挿入可能であり、血管穿刺部位の位置を確認するために用いられると共に、その血管穿刺部位を閉塞する機能を果たすものである。また、水和用チャンバは、止血材がこの水和用チャンバに装填され、そして、その装填された止血材が、この水和用チャンバから血管穿刺部位へデリバリーされるようにしたチャンバである。
【0017】
以下に説明する本発明のシステムは、吸収性スポンジ材料から成る止血材を、液圧によって、導入用シースを介して血管穿刺部位へデリバリーするように構成したシステムであるが、ただし、本発明のシステムは、穿刺部位を封止するために使用可能なその他の種類の止血材をデリバリーするためにも用い得るものである。吸収性スポンジ材料を水和させた上でデリバリーするならば、それによってそのスポンジ材料の吸収性を高めることができ、また、水和させた上で圧縮した吸収性スポンジ材料をデリバリーするならば、それによって、より小径の導入用シースを介してデリバリーすることができる。また、吸収性スポンジ材料は、デリバリーされたならば、速やかに膨潤して、生体管路の断面全域に充填された状態となり、それによって穿刺部位を止血する。
【0018】
本発明に関連して使用する「プレジェット」という用語は、その全体が細長い形状に形成されたスポンジ材料片であって、水和した状態でデリバリーすることにより、導入用シース、デリバリー用カニューレ、または導入管を通して血管穿刺部位へデリバリーすることのできる寸法に形成されたものを意味している。
【0019】
「スポンジ」という用語は、水和させることができ、水和した状態で弾性圧縮可能な、生体適合性材料を意味している。このスポンジは、非免疫誘発性のものであることが好ましく、吸収性のものと非吸収性のものとがある。
【0020】
「吸収性スポンジ」という用語は、人体または哺乳動物の畜体に植込まれたときに、そ
の人体または畜体に吸収されるスポンジを意味している。
「水和」という用語は、例えば、生理食塩水、水、血管造影剤、血液凝固剤、イオン溶液、治療用薬剤、等々の液体を、含浸可能限度量の一杯まで、またはそれより少なく含浸することを意味している。
【0021】
図1のシステムは、導入用シース10と、水和用チャンバ12と、この水和用チャンバ12に取付けられたコントロール用チップ(control tip)14と、カプラ16と、注射
器18とを備えている。導入用シース10は、血管内にアクセスするためのシースであり、冠動脈形成術やステント留置術などを実施するために一般的に用いられているシースと同様のものでる。導入用シース10は、シース管部24と、このシース管部24に結合した基端ハブ22とを備えている。ベント・チューブ(vent tube)26が、ハブ22の内
部に連通しており、このベント・チューブ26は、目視可能なブリード・バック・インジケータ機能を提供するためのものであり、これについては後に詳述する。図1に示した実施の形態には、このベント・チューブ26を手動で開閉するためのベント・キャップ28が装備されている。
【0022】
水和用チャンバ12は、吸収性スポンジ材料から成るプレジェットをこの水和用チャンバ12の中に装填することができるように構成され、また、その装填したプレジェットをこの水和用チャンバ12の中で水和させて、この水和用チャンバ12から、導入用シース10を介してデリバリーすることができるように構成されている。水和用チャンバ12の基端部には、カプラ16を取付けるための取付部であるフランジ部36が形成されている。この水和用チャンバ12の末端部34には、導入用シース12の基端ハブ22が接続される。コントロール用チップ14は末端拡径部40を備えており、この末端拡径部40が血管の穿刺部位に嵌り込むことによって、その穿刺部位から流出しようとする血液の流れがコントロール(抑制)される。末端拡径部40は、それより小径のコントロール用チップの管部42に接続しており、この小径の管部42は、末端拡径部40から延出し、水和用チャンバ12の末端部から水和用チャンバ12の中へ導かれており、そして、この管部42の基端部であるコントロール用チップの基端部44が、水和用チャンバ12の側壁部から外へ延出している。コントロール用チップの末端拡径部40は、複数の機能を果たすものであり、それら機能には、血管の穿刺部位から流出しようとする血液の流れをコントロール(抑制)する機能、導入用シースの末端部の位置を示すインジケータ機能、それに、止血材デリバリー・システムをガイドワイヤに沿わせて案内する機能がある。
【0023】
カプラ16は、注射器18を水和用チャンバ12に連結するための部品である。このカプラ16を水和用チャンバ12から取外すことによって、乾燥状態にある吸収性スポンジ材料から成るプレジェットを、水和用チャンバ12の中に容易に挿入することができる。カプラ16を水和用チャンバ12に接続したならば、そのカプラ16に、一般的に使用されている注射器18を接続する。この注射器18は、水和用チャンバの中へ液体を注入するために用いられるものである。カプラ16は、封止用シール材54を備えると共に、複数の係止突起48を備えている。それら係止突起48は、水和用チャンバのフランジ部36に係合するものであり、カプラの一対の操作突起50を押圧することによって、その係合状態を解除できるようにしてある。一対の操作突起50の内面には、夫々にストッパ部52が形成されており、それらストッパ部52は、カプラ16に注射器18を接続したならば、カプラ16を水和用チャンバ12から取外せなくなるようにするものである。尚、容易に理解されるように、カプラの構成は以上に説明したものに限られず、本発明から逸脱することなく、その他様々な構成のカプラを用いることができる。
【0024】
使用法について説明すると、先ず、図1、図2、及び図3に示したシステムの組立てを行い、その際には、スポンジ材料を水和用チャンバ12の中に装填し、また、水、生理食塩水、等々の液体を充填した注射器18を、カプラ16を介して水和用チャンバ12に取
付ける。続いて、スポンジ材料を水和させる操作と、水和したスポンジ材料の準備操作、即ち、水和したスポンジ材料を水和用チャンバ12の末端部に位置付ける操作とを実行し、これら操作については後に詳述する。注射器18は、例えば1cc注射器などのような、内筒に比較的小さな力を加えるだけで大きな圧力を発生させることができるものを使用することが好ましい。
【0025】
導入用シース10は、患者の血管穿刺部位に挿入された状態にあり、この導入用シース10の挿入は、血管内処置を実施する際に通常採用されている挿入方式によって行われている。その血管内処置が完了したときに、導入用シース10及びガイドワイヤ(不図示)を、血管内に挿入された状態のまま保持する。そして、ガイドワイヤの基端部の外周にコントロール用チップ14を嵌合し、水和用チャンバ12及びコントロール用チップ14を前進させることにより、コントロール用チップ14を導入用シースの中へ挿入して行き、水和用チャンバの末端部34を、導入用シース10のハブ22に嵌合させる。ブリード・バックの観察方法としては、様々な方法があるが、以下に図3を参照して、その方法について説明する。図3の実施の形態においてブリード・バックを観察するには、ベント・キャップ28をベント・チューブ26から取外す。続いて、導入用シース10、水和用チャンバ12、及びコントロール用チップ14を一体的に移動させることによって、それらを穿刺部位から徐々に引抜いて行き、ベント・チューブ26から流出していたブリード・バックが止まったことが観察された時点で、その引抜き操作を停止する。ブリード・バックが止まるのは、コントロール用チップ44の末端拡径部40が、血管穿刺部位の中に嵌り込むことによって、穿刺部位からの血液の流出が阻止されるようになったときである。シース管部24の末端部とコントロール用チップ14の末端拡径部40との間の距離dは、ブリード・バックが止まったことによって、導入用シース10の末端部の位置が、止血材を血管穿刺部位にデリバリーするための適切なデリバリー位置に達したことが示されるような、適切な大きさに選定されている。この距離dは、穿刺部位へデリバリーするプレジェットの寸法に応じて選定されるものであり、また、止血材を血管内腔の中へ注入してしまうことなく血管近傍の生体管路内へ注入することができるような、適切な大きさに選定されるものである。
【0026】
図3に示したベント・チューブ26及びベント・キャップ28は、ブリード・バックを観察するためのものである。ベント・キャップ28をベント・チューブ26から取外すことによって、導入用シース10の末端部から流入してこの導入用シース10の中を通って流れる血液が、ベント・チューブ26から流出できるようになる。ベント・チューブ26の内径は、比較的小さな径とするようにしており、これは、ベント・チューブ26から血液が噴出ないし流出していることを明瞭に認識できるようにし、もって、ブリード・バックが発生したことが明示されるようにするためである。これに対して、例えば導入用シースのような、大径のチューブから流出するブリード・バックを観察しなければならない場合には、そのブリード・バックが血液の滲出ないし滴下という形で発生するため、ユーザがそのブリード・バックを、位置を正確に示すインジケータとして利用することが困難になる。好適な1つの具体例では、ベント・チューブ26の内径を約0.4mm〜約2mmとするようにしており、特に好ましい内径は約1mmである。
【0027】
図4〜図7は、止血材デリバリー・システムの別の実施の形態を示した図であり、この実施の形態では、水和用チャンバ312が導入用シース310の側面ポート320に連結されている。ベント・チューブ326は、側面ポート320のもう1つのポートに接続されている。開閉コック322は、図10に示した開位置であるデリバリー位置と、図4に想像線で示した閉位置であるブリード・バック位置との間で切換可能となっている。閉位置であるブリード・バック位置にあるときには、ブリード・バックが、ベント・チューブ326から流出可能な状態となっている。開位置であるデリバリー位置にあるときには、止血材を水和用チャンバ312から導入用シースの中へ流入させてデリバリーすることが
できる状態となっている。また、図1〜図3を参照して説明した実施の形態と同様に、注射器318は、カプラ316を介して、水和用チャンバ312に対して着脱可能となっている。
【0028】
図7に断面図で示したように、開閉コック322が、開位置であるデリバリー位置にあるときには、止血材を水和用チャンバ312からこの開閉コック322を通過させて、更に側面ポート320、及び導入用シース310を通過させて、血管穿刺部位へデリバリーすることができる。
【0029】
図6は、コントロール用チップ314と基端プラグ330との結合状態を示したものであり、この基端プラグ330は、カプラ316を介して、導入用シース310のハブ332に連結可能となっている。止血材は、図6の側面ポート320を通過して導入用シース310のハブ332の中へ導入され、そこから導入用シースを通して穿刺部位へデリバリーされる。
【0030】
図8〜図15は、止血材を血管穿刺部位へデリバリーするシステムの準備操作及び使用法を説明するための図である。図8〜図15に示した手順は、図1〜図3に示した実施の形態を用いるときのものであるが、後に説明するその他の実施の形態を用いるときにも、同様の手順とすることができる。図8及び図9には、水和用チャンバ12の中で、スポンジ材料から成るプレジェット20の水和操作及びステージング操作(準備位置へ位置付ける準備操作)を行う手順を示した。水和用チャンバ12の中にプレジェット20を装填して、その水和用チャンバの基端部にカプラ16及び注射器18を接続したならば、それによって、プレジェットの水和操作及びステージング操作を行える状態になる。ステージング操作は、ステージング用チューブ100を使用して行うようにしており、このステージング用チューブ100は、プレジェット20の末端部の位置を規定して、プレジェット20が水和用チャンバ12から押し出されないようにするものである。ステージング用チューブ100は、管部102を備えており、この管部102には、その長手方向に延在するスリット(不図示)が形成されている。また、ステージング用チューブ100には、ハンドル部104を形成しておくと好都合である。このステージング用チューブ100は、長手方向に延在するスリットを利用して、コントロール用チップ14のシャフト部の外周に装着できるようにしてあり、スリットを利用して装着するようにしてあるのは、このステージング用チューブ100は、コントロール用チップの末端拡径部40の外周に嵌合できるほど太くないからである。ステージング用チューブ100をコントロール用チップ14のシャフト部の外周に装着したならば、そのステージング用チューブ100を、水和用チャンバ12の末端部の中へ押し込んで、図8に示した初期位置に位置付ける。この図8に示した状態で、注射器18を操作して生理食塩水などの液体を加圧して水和用チャンバ12の中へ注入することによって、プレジェット20を水和させる。続いて、ステージング用チューブ100を図9に示した位置まで移動させ、そして注射器18から更に液体を注入することによって、プレジェット20を水和用チャンバの末端部の中へ前進させる。
【0031】
水和用チャンバの中にベント・チューブを導入する本発明の実施の形態では、以上のプレジェット20のステージング操作を行うことによって、そのプレジェットの末端部を、ベント・チューブへの流入口より基端側に位置付けるようにしており、それによって、ブリード・バックがプレジェットに妨害されてベント・チューブから流出できなくなるのを回避しているのである。プレジェット20の水和操作及びステージング操作が完了して、プレジェット20が水和用チャンバ12の中の適正な位置に位置付けられたならば、この止血材デリバリー・システムは、プレジェットを穿刺部位へデリバリーするための準備が完了した状態になる。
【0032】
図10は、血管106を、穿刺部位108及び上部組織109と共に示した図である。
図10において、導入用シース10及びガイドワイヤ30は、血管内処置が完了した後、血管穿刺部位108から抜去されず、挿入されたままの状態とされている。
図11に示した段階では、コントロール用チップ14が、ガイドワイヤ30の外周に嵌合されて、導入用シース10の中に挿入されており、また、水和用チャンバ12の末端部34が、導入用シースのハブ22に接続されている。更に、ベント・チューブ26からベント・キャップ28が取外されており、ベント・チューブ26から流出している血液の噴流B(即ちブリード・バック)が観察されている。
【0033】
図12に示した次の段階では、導入用シース10、水和用チャンバ12、及びコントロール用チップ14の3つの部材を一体的に移動させることによって、それらを穿刺部位から徐々に引抜いて行き、ベント・チューブ26から流出していたブリード・バックが観察されなくなったところで、その引抜き操作を停止する。ブリード・バックが消失したということは、コントロール用チップ14の大径先端部40が、血管穿刺部位108の中に位置付けられたために、血液が血管穿刺部位108を通って導入用シース10の中へ流入するのを阻止するようになったことを示すものである。
【0034】
図13に示したのは、注射器18を操作して液圧を作用させることによって、止血材であるプレジェット20を血管穿刺部位へ注入している段階である。注入された止血材は、生体管路のうちの、血管穿刺部位と導入用シース10の末端部との間の部分の空間を実質的に充填する。プレジェットの材料は、デリバリーされたならば、速やかに膨潤して生体管路を充填することによって血管穿刺部位を止血する。
【0035】
続いて、図14に示したように、水和用チャンバ12、コントロール用チップ14、及びガイドワイヤ30を穿刺部位から抜去する。このとき、導入用シース10は挿入位置に保持しておき、それによって、その他の器具を抜去しているときに、止血材20を安定させておくようにする。続いて、導入用シース10を抜去して、図15に示したように止血材を生体管路の中に残置する。ただし別法として、水和用チャンバ12、コントロール用チップ14、ガイドワイヤ30、及び導入用シース10をまとめて穿刺部位から抜去する方法もある。
【0036】
図16、図16a、図16b、及び図16cは、別の実施の形態を示した図である。この実施の形
態は、プレジェット20の水和操作と、準備操作と、搬送操作とを行うためのプレジェット操作システム400を備えている。プレジェット操作システム400はボディ部402を備えており、このボディ部402は、親指411と人指し指410との間に挟んで保持することのできる太さの略々円筒形に形成された円筒形部分404と、この円筒形部分404の両端を略々閉塞している2つの端部406及び408とを含んでいる。ボディ部402にはバルブ412が取付けられている。このバルブ412は、ハウジング416の中に回転可能に収容された制御子414を備えており、使用者は、この制御子414に結合した制御レバー418を操作することにより、この制御子414を回転させることができる。制御子414は、略々円筒形の中実部分470を備えており、この中実部分470を貫通してポート472が形成されている。更に、半円筒形の切除部474が、中実部分470の縁部に形成されている。制御レバー418には、クリック式係合部(不図示)が設けられており、このクリック式係合部は、制御レバー418が一方の位置から他方の位置へ切換えられたときに、クリック音を発生することによる聴覚表示と、ユーザの指先にクリック感を伝達することによる触覚表示とによって、その位置の切換えがなされたことをユーザに知らしめるためのものである。バルブ412の末端部は、導入用シース(不図示)の基端ハブを連結可能にする連結部422に接続している。それら基部ハブ及び導入用シースは、図4に示した基端ハブ332及び導入用シース310と、基本的に同一構成のものである。更に、バルブ412には、ブリード・バック・ベント420が接続している。
【0037】
連結部422を貫通してコントロール用チップ424が延在しており、このコントロール用チップの基端部426が、円筒形部分404に接続されている。コントロール用チップ424の先端部は図示していないが、先に説明したコントロール用チップ14の先端部と基本的に同一構成のものである。バルブ412の基端部は、長尺状をなす中継用チャンバ430に接続されている。この中継用チャンバ430は、ホースから成り、ボディ部402の中に部分的に収容され、S字形を成している。第1連結部432が、中継用チャンバ430に接続されてボディ部402の端壁部406から突出している。別法として、第1連結部432の替わりに、第2連結部434が、中継用チャンバ430に接続されて円筒形部分404から突出しているようにしてもよい。第1連結部432と第2連結部434とは、基本的に同一構成のものであり、かかる連結部を利用して、ユーザが水和用チャンバ312の末端部を中継用チャンバ430に連通させることができるようにしてある。第1連結部432及び第2連結部434は、各々が一方向弁436を備えている。ただし別法として、一方向弁436の替わりに、ゲートバルブや開閉コックなどのような手動操作式のバルブを備えるようにしてもよい。ホースの基端部438は注射器440に接続されており、この注射器440はボディ部402に取付けられている。
【0038】
図16に示した実施の形態の使用方法は以下の通りである。水和用チャンバ312は、乾燥状態にあるプレジェット20がその中に既に装填された状態でユーザへ供給される。ユーザは、その水和用チャンバ312を、連結部432または434に接続する。ユーザは、注射器318に液体を充填し(充填量は、例えば3〜4cc程度である)、その注射器318を水和用チャンバ312に接続する。更にユーザは、その注射器318を操作することにより、ステージング用チャンバ430及びデリバリー用注射器440の中へ液体を注入し、それらステージング用チャンバ430及びデリバリー用注射器440の中を液体で満たす(そのために必要とされる液体の量は、約1cc程度である)。
【0039】
以上のステップを実行しているときの制御レバーの切換位置は、図16に実線で示した位置Aにあり、そのためバルブ412は、図16及び図16aに示したように、閉状態となっている。続いてユーザは、注射器318を操作して液圧を発生させて、水和用チャンバ312の中のプレジェットを水和させる。プレジェットが水和したならば、ユーザは、制御レバー418を位置Bへ切換える。これによって、回転可能な制御子414が回転して、ステージング位置(図16b)に切換わる。このように切換わったときに、バルブはクリック音を発生すると共に、ユーザの指先にクリック感を提供するため、ユーザはそれらによって、バルブ412がステージング位置へ切換わったことを知ることができる。バルブ412がステージング位置にあるときには、切除部474を通過して流れる低流量の液体の流れが、ベント(不図示)を介してこのバルブ412から流出できる状態にある。ただし、切除部474の寸法は、プレジェット20を通過させないように、十分に小さな寸法としてある。そのため、プレジェット20は、水和用チャンバ312からステージング用チャンバ430の中へ移動するが、図16bに示したように、バルブ412に接した位置で停止する。この時点で、プレジェット20の準備操作が完了し、このシステムは、挿入が可能な状態(即ち供給操作が可能な状態)になっている。
【0040】
続いてユーザは、連結部432または434から注射器318及び中継用チャンバ312を取外し、そして、コントロール用チップ424を導入用シース10の中へ挿入する。上述したように、導入用シース10はこの時点で既に、患者の身体に挿入されている。続いてユーザは、コントロール用チップを末端方向へ移動させ、そして、上述したように、ブリード・バック・ベント420から流出するブリード・バックを確認することによって、コントロール用チップを適正位置に位置付ける。続いてユーザは、図16に示したように、このプレジェット搬送システム400を、親指411と人指し指410との間に挟んで保持して、制御レバー418を位置Cへ切換える。これによって制御子414が回転さ
せられ、バルブ412の基端側と末端側との間で全開の流れが許容されるようになる。続いて使用者は、他方の手で注射器440を操作して液圧を発生させる。すると、プレジェット20がバルブ412を通過し、更に導入用シース10を通過して患者の身体内へ挿入され、このプレジェットのデリバリーは、先に図13〜図15を参照して説明したのと基本的に同様にして行われる。導入用シース10とプレジェット操作システム400とは、連結部を介して相互にしっかりと固定結合されているため、使用者は、片手だけで、導入用シース10を安定して保持しつつ制御レバー418を操作することができる。
中継用チャンバ430に関しては、以下の点が重要である。先ず、中継用チャンバ430の長さは、プレジェット20の長さ以上となる。そこで、中継用チャンバ430の形状をS字形とすることによって、その形状を直線状とした場合と比べて、デバイスの全長を短縮することが可能となる。また、ステージング位置Bは、ユーザがブリード・バックを確認するための位置でもあり、このステージング位置Bにあるときには、血液の流れが、連結部422を通り、バルブ412を通過して、ブリード・バック・ベント・チューブ420から流出できるようになっている。
【0041】
以上に図示して説明した実施の形態では、ブリード・バックが、導入用シース10とコントロール用チップ14との間の空間を通過して流出するようにしてあったが、ブリード・バックを流出させるための別の構成として、コントロール用チップに孔(ブリード・バック・ホール)438を形成し、コントロール用チップの内腔を通して、ブリード・バックを流出させる構成とすることも可能である。ブリード・バックを流出させるためのこの別構成の方式では、ブリード・バック・ホール438を形成する位置を、コントロール用チップ14の末端拡径部40上とし、しかも、この末端拡径部40の基端部の近傍とする。そして、そのブリード・バック・ホール438を、コントロール用チップの本体部分の内腔に連通させておけば、水和用チャンバ12の側壁部から突出しているそのコントロール用チップの基端部44において、ブリード・バックを観察することができる。この構成を採用したシステムの一例は、2001年5月18日に出願され、2002年5月23日に米国特許出願公開第US 2002/0062104 A1号として公開された、米国特許出願第09/859,682号に教示されている。
【0042】
以上に説明した実施の形態のいずれにおいても、導入用シースの末端部とコントロール用チップ14の末端拡径部40との間の距離dは、ブリード・バックが止まったときの位置が、止血材を血管穿刺部位にデリバリーするための適切なデリバリー位置となっているように、この距離dの大きさを選定しておくことが好ましい。ただし別法として、ブリード・バックが止まったときの位置から、導入用シース10、水和用チャンバ12、及びコントロール用チップ14を更に所定量だけ引き抜いたときの位置が、適切なデリバリー位置となるように、この距離dの大きさを選定しておくようにしてもよい。
【0043】
2001年5月18日に出願された米国特許出願第09/859,682号にその一例が教示されている
上述したシステムには、ある問題が付随しており、それは、血管穿刺部位108の周縁部と、コントロール用チップの末端拡径部40との間から血液が漏出して導入用シース10の中へ流入してしまうことによるものである。そのような漏出が起こると、ブリード・バックの流出の停止及び開始をユーザが明確に判定することが困難となり、ひいてはデバイスを適正位置に定位することが困難になる。以下に説明する幾つかの実施の形態は、この問題を軽減または解消できるようにしたものである。
【0044】
図17〜図21に示した別の実施の形態は、コントロール用チップ14を囲繞するように配設された可撓性シール部材を備えている。この可撓性シール部材は、十分な可撓性及び弾性を有しており、導入用シースを通過している間は、弾性変形して導入用シースの内周面に密接して嵌合しており、導入用シースを出たならば、展張状態に復帰して、穿刺部位108の周縁部と、コントロール用チップの末端拡径部40との間から血液が漏出して
導入用シース10中へ流入するのを阻止するものである。図17において、可撓性シール部材440は、複数の円筒形の突条部442を備えており、それら突条部442は複数の円筒形部分444を介して相互に接続している。可撓性シール部材440の上端部及び下端部は、コントロール用チップ14の末端拡径部40の外周に密接して嵌合している。複数の突条部442の直径は、導入用シース10の内径より大きくしてあり、また、導入用シース10の外径以上としておくことが好ましい。以上の構成により、コントロール用チップ14の末端拡径部40を、導入用シース10の中へ押し込んで移動させるときには、複数の突条部442が、圧縮された状態で導入用シース10の中を摺動し、そして、それら突条部442が導入用シース10の末端部から外に出たならば、それら突条部442は展張状態に復帰して、図17に示したように、それら突条部442の直径が導入用シース10の内径より大きくなる。従って、既に血管の内腔の中まで挿入されている導入用シースの末端側部から、コントロール用チップの末端拡径部が外へ出たときに、血液が導入用シースの中へ流入し、その血液が導入用シースから流出するのをユーザが観察することができる。その状態から、導入用シース及びコントロール用チップを一体的に移動させて引き抜いて行くと、導入用シースの先端から突出している複数の突条部442が血管穿刺部位108の中に嵌合したときに、それら突条部442が、血管穿刺部位108から流出しようとする血液の流れを停止させ、従って導入用シースへ流入していた血液の流れも停止する。更に、複数の突条部442が導入用シース10の先端から外に出るときに、それらが急激に展張状態になるため、それによって発生するかすかな振動が、コントロール用チップ14を通ってユーザの指先に感触としてフィードバックされ、それによってユーザは突条442が導入用シース10の先端から外へ出たことを知ることができる。更に、突条442が可撓性を有するため、導入用シース10へ挿入する際に容易に圧縮することができ、また、導入用シース10からの抜去も容易となっている。
【0045】
図18に示した実施の形態では、可撓性シール部材440は、円筒形部分448に接続した円錐形部分446を備えている。円筒形部分448は、その内部に円筒形の溝450が形成されており、この溝450が、コントロール用チップ14の外周に形成された円筒形の突出部452と係合することで、可撓性シール部材を、コントロール用チップ14の長手方向における一定の位置に固定できるようにしている。円錐形部分446は中空であり、可撓性を有するため、導入用シース10の中に容易に押し込むことができ、血管穿刺部位の中で液密の封止状態を提供し、また、導入用シース10から容易に抜去することができる。
【0046】
図19に示した実施の形態では、コントロール用チップ14は円筒形の溝460と、可撓性シール部材440とを備えている。可撓性シール部材440は、Oリング製ガスケットと同様の形状の可撓性を有する部材から成るが、ただし、Oリングにはない、長く延展するテーパの付いた周縁部を有している。
【0047】
図20に示した実施の形態では、可撓性シール部材440は、その上方部分が円錐形部分462とされており、この円錐形部分462の外周に、板状部分464が形成されている。板状部分464は、食器の平皿のごとき形状であって、中央部よりも周縁部の方が僅かに持ち上がった形状とされている。この形状は、この可撓性シール部材440が、導入用シースの内部を、この導入用シースの基端側から末端側へ移動させ易くする一方で、血管内の血液の圧力によって、穿刺部位108の内面の一定の位置に固定されるようにするものである。図18の実施の形態と同様に、この図20の実施の形態でも、その内部に円筒形の溝450が形成されており、この溝450が、コントロール用チップ14の外周の円筒形の突出部452と係合することで、可撓性シール部材を、コントロール用チップ14の長手方向における一定の位置に固定できるようにしている。
【0048】
図21に示した実施の形態は、図20に示した実施の形態と同様の構成であるが、ただ
し、図21の実施の形態では、シール部材440の内部に形成した円筒形の溝466に充填した接着剤によって、シール部材440をコントロール用チップ14に接着している。更に、この実施の形態では、板状部分464の外周は、上下方向の何れにも撓むことができるようにしてある。この形状は、可撓性シール部材440が、導入用シースの中を、導入用シースの基端側から末端側へも、また、末端側から基端側へも、摺動させることができるようにしたものである。
【0049】
図22に示した実施の形態は、図21に示した実施の形態と同様の構成である。ただし図22の実施の形態では、コントロール用チップ14にブリード・バック・ホール438が形成されており、可撓性シール部材441にブリード・バック・ポート476が形成されている。
【0050】
図23〜図25は、コントロール用チップの一部分を、圧縮及び展張が可能な発泡材料ないしポリマー材料から成る領域としたものを示した図である。図23に示した円錐形のチップは、大径末端部の基端側部分に発泡材料領域478を備えており、この発泡材料領域478は、挿入時の外径480が導入用シースの内径以下となり、展張状態での外径482が導入用シースの外径以上となるようにしてある。これによって、導入用シースに挿入する際にコントロール用チップを圧縮することで(或いは、予め圧縮してあるコントロール用チップを導入用シースに挿入することで)、コントロール用チップを導入用シースを介して血管の中へ挿入できるようにすると共に、そのコントロール用チップが展張状態に復帰したときの外径が、導入用シースの外径と同程度の大きさに形成されている穿刺部位の孔より大きくなるようにしている。そして、それによって、穿刺部位におけるコントロール(血流抑制)が最大限に行われるようにしている。
【0051】
図24及び図25は、別の実施の形態を示したものであり、更にその他の構成とすることも可能である。発泡材料としては、発泡ポリウレタンなどの非吸収性発泡材料を使用することもでき、また、ゼラチンスポンジやコラーゲンスポンジなどの吸収性発泡材料を使用することもできる。発泡材料を導入用シースに挿入する際には、例えばユーザが、その発泡材料を径方向に圧縮して、導入用シースの内径に合わせるようにすればよい。圧縮された発泡材料は、血管内腔の中へ押し出されたならば、自由に展張できる状態となり、展張状態での外径を回復する。これによって、発泡材料は、穿刺部位に位置付けられたときに、その穿刺部位におけるコントロール(血流抑制)を最大限に行えるようになり、しかも、導入用シースを通して抜去することも可能となっている。図23〜図25に示した実施の形態は、予め挿入補助具の中に収容しておくのもよい。使用する挿入補助具は、発泡材料をその展張状態での外径より小さな外径にまで予め圧縮しておくものであり、導入用シースの内径以下に、即ち、挿入時の外径以下にまで予め圧縮しておくようにすることが好ましい。また、以上のような圧縮可能なコントロール用チップは、吸収性材料(例えばゼラチンやマニトールなど)で製作したカプセルの中に収容して、挿入時の形状にしておくのもよく、それによって挿入が容易になる。そのようなコントロール用チップは、血管内腔の中に挿入されたならば、カプセルが短時間のうちに溶解して、圧縮されていた材料が展張して、展張状態での外径を回復する。更に、形状記憶性を有する弾性材料を使用することによって、展張が積極的に行われるようにするのもよく、例えば、発泡ウレタン性パッドやエラストマー材料などは、拘束を解かれたならば、元の形状を回復する特性を有している。液体吸収により展張動作がトリガされるようにするのもよく、例えば、スポンジ材料などは、液体を吸収することによって膨潤を開始する。また「感熱型形状記憶性」によって展張動作がトリガされるようにするのもよい。例えば、エラストマー材料のうちには、第1の温度ではある特定の形状を呈し(即ち、室温ではその外径が挿入時の外径となっており)、第2の温度(即ち、体温)ではそれより外径の大きい第2の形状を呈するものがある。
【0052】
以上に説明した本発明のシステムは、止血材を血管穿刺部位へデリバリーするのに、ガイドワイヤに沿わせてデリバリーするようにしたものであった。しかしながら、本発明のシステムは、ガイドワイヤを使用しないシステムとして構成することも可能であり、その場合には、コントロール用チップを、ガイドワイヤを挿通する内腔を備えたものとする必要はない。
【0053】
図示した止血材デリバリー・システムは、そのシステムの全体を1つのキットとして供給するようにしてもよく、或いは、構成部品を個別に供給して、それら構成部品を通常の導入用シースや注射器と組合せて使用するようにしてもよい。
【0054】
水和用チャンバ12は、ハブの形状が夫々に異なる様々な種類の導入用シースのうちの2種類以上の導入用シースに装着できる構成とするのもよい。例えば、公知の導入用シースのうちには、そのハブの形状として、内周フランジ部を備えたもの、外周フランジ部を備えたもの、雌ネジ部を備えたもの、雄ネジ部を備えたもの、及び/または、係合突起を備えたものなどがある。それら公知の導入用シースのうちの幾つかのハブは、それに対応する形状のダイレータに連結するように構成されている。
【0055】
本発明のデリバリー・システムに使用することのできる市販の止血材の具体例を挙げるならば、例えばUpJohn社製のGelfoam(登録商標)を挙げることができる。また、市販さ
れているGelfoam(登録商標)に改変を加えてデリバリー・システムとの間の真圧力を低
減した様々な種類の発泡ゼラチン製スポンジ材料を使用することができる。そのような改変の具体例としては、ゼラチンに添加する架橋剤の量を変化させて、そのスポンジ材料のデリバリー特性を改善したものなどがある。
【0056】
以上に説明した実施の形態に係るコントロール用チップはいずれも、その挿入時には、可撓性シール部材440が圧縮された状態になっているため、使用している導入用シースの太さが5フレンチ〜9フレンチであるならば、末端拡径部40の中央部の外径も約5フレンチ〜約9フレンチとなっている。一方、図17、図18、及び図19に示した可撓性シール部材440の展張状態での外径は、導入用シース10の外径以上としておくことが好ましい。また、図20、図21、及び図22に示した可撓性シール部材440の展張状態での外径は、導入用シース10の外径よりもかなり大きくしておくことが好ましく、例えば、使用する導入用シースの種類に応じて、約3mm〜約10mmなどとするとよい。末端拡径部を構成しているコントロール・ヘッドの長さ、即ち、このコントロール・ヘッドの末端側の先端から、このコントロール・ヘッドの基端側に形成されているテーパ部分の基端側の先端までの長さは、約1.5インチ(約3.8cm)〜約3インチ(約7.6センチ)の範囲内の長さとするようにしており、約1.5インチ(約3.8cm)〜約2インチ(約6.4cm)の範囲内の長さとすればなお好ましく、約1.875インチ(約4.8cm)の長さとすれば更に好ましい。このような長さのコントロール・ヘッドは、本明細書に説明した手順で穿刺部位におけるコントロール(血流抑制)を行うのに好適なものであり、また特に、セルディンガー法を用いて血管にアクセスするために形成された穿刺部位におけるコントロールに適したものである。
【0057】
以上に説明した構成において、その横断面形状は所望の様々な形状とすることができ、例えば正方形、楕円形、三角形などとすることも可能であるが、特に好ましい横断面形状は円形である。また、導入用シース、水和用チャンバ、コントロール用チップ、それにカプラの夫々の製作材料は、比較的大きな剛性を有する生体適合性材料のうちから選択することが好ましく、特に好ましい製作材料は、生体適合性ポリマー材料、生体適合性金属材料、生体適合性合金材料、それに、それらを組合せた材料である。
【0058】
以上、本発明を、その幾つかの好適な実施の形態に即して詳細に説明したが、当業者に
は容易に理解されるように、本発明から逸脱することなく、それら実施の形態に対しては様々な改変を加えることが可能であり、また、それら実施の形態に用いられている構成を均等構成に替えることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
止血材から成るプレジェットを血管穿刺部位へデリバリーして止血するためのシステムにおいて、
血管穿刺部位に挿入可能な導入用シースと、
止血材からなるプレジェットを受容するプレジェット操作システムとを備え、同プレジェット操作システムは、
先端と基端とを有し、かつプレジェットを導入用シースに通過させる通路を閉鎖する閉鎖位置と、同通路を開放する開放位置とに手動操作により切り換えられ、先端が導入用シースの基端に接続されているバルブと、
先端と基端とを有し、これら基端及び先端の間にコネクタを備え、さらには先端がバルブの基端に接続される中継用チャンバと、
先端と基端とを有し、先端は前記中継用チャンバのコネクタに対して着脱可能に装着されるように構成され、前記プレジェットを受容する水和用チャンバであって、先端がコネクタに着脱されることにともなって接続用チャンバに対して選択的に接続及び離脱される水和用チャンバと、
前記水和用チャンバの基端に接続され、前記水和用チャンバが中継用チャンバに接続されたとき、プレジェットを水和し、かつ水和用チャンバ内の水圧を上昇させ、前記バルブが閉鎖位置にあるとき水圧によりプレジェットを水和用チャンバから中継用チャンバに移動させる第1の注射器と、
前記中継用チャンバの基端に接続され、中継用チャンバとともに水和用チャンバから供給される液体が満たされる第2の注射器であって、水和用チャンバが中継用チャンバから離脱され、かつバルブが開放位置にあるとき、中継用チャンバに供給する液圧によりプレジェットをバルブに移動させる第2の注射器と
からなることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記プレジェット操作システムは円筒状をなす本体を有し、同本体内に前記バルブが収納されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記バルブはハウジングと、同ハウジング内に配置された制御子とを備え、さらに制御子は中実部分と、同忠実部分を貫通するポートとを有し、中継用チャンバから導入用シースを経て血管穿刺部位に至るプレジェットの通路が忠実部分及びポートによってそれぞれ閉鎖及び開放されることを特徴とする請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記バルブは制御子に連結された制御レバーを有し、同制御レバーは使用者に操作されて制御子を回動させ、プレジェットの通路を開閉することを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記バルブは、使用者がプルジェット操作システムの先端からの液体の流れを制御できるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
基端が前記本体に取付けられて、制御用シース内を延び、先端が血管穿刺部位に達するように構成され、かつ全長にわたって延びる管腔を有するコントロール用チップを有することを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図16a】
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【図16b】
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【図16c】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−183193(P2011−183193A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116396(P2011−116396)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【分割の表示】特願2006−543950(P2006−543950)の分割
【原出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】