説明

プレストレストコンクリート杭及びその製造方法並びに杭とフーチングとの連結構造

【課題】カットオフする必要がなく、またあらかじめ杭体内補強鉄筋を埋め込んだ杭を製造する必要もなく、現場でフーチングの補強用鉄筋を設置できるプレストレストコンクリート杭を提供する。
【解決手段】PC鋼材2のヘッド定着部8とフーチングの補強用鉄筋10をねじ込むためのネジ穴を備えたカプラー5を、PC杭の杭頭端板4に形成したカプラー定着穴7に装着し、前記PC杭の内部コンクリート3に埋設した前記PC鋼材の端部2aを前記カプラーのヘッド定着部に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプレストレストコンクリート杭に関し、詳しくは、プレストレストコンクリート杭の杭頭部構造及び該杭の製造方法並びに杭とフーチングとの連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート杭とフーチングとの連結方法として、フーチング内への杭の埋込み長さを最小限度にとどめ、主として鉄筋で補強することにより杭頭曲げモーメントに抵抗する方法が知られる(道路橋示方書の「方法B」)。この場合、杭頭部の一定長を機械的にはつり出し、PC鋼材や予め杭体内に埋め込んだ補強鉄筋(杭体内補強鉄筋)を露出させなければならない。さらに杭の中空部に一定深さで中詰めコンクリートを打設し、該中詰めコンクリートに建て込んだ補強筋をフーチング部鉄筋コンクリートと一体化させている。
【0003】
PHC杭の補強方法では、剛結合であることを仮定してモーメントが作用する場合、フーチング部の仮想鉄筋コンクリート断面を仮定して、コンクリートと鉄筋の応力度を照査することが行われている。この場合、杭体内補強鉄筋と中詰め補強鉄筋が考慮され、カットオフ位置から下方のPC鋼材径の50倍の区間はプレストレスのない区間として取り扱われ、PC鋼材は無視される。特に、軸方向の引抜き力を考慮する場合には、杭体内補強鉄筋を用いることが原則である。また、ハツリ出し作業は油圧ジャッキ式の切断機等をもって杭頭部をカットオフし、PC鋼材や杭体内補強鉄筋を傷付けないよう露出させる必要があるため、極めて多大な労力を要する作業である。
【0004】
上記のような問題点を解決するため、PHC杭の杭頭部の補強構造として、杭頭部端板にネジ切りされたPC鋼材緊張時の緊張板固定用の孔を利用し、この雌ネジ穴に先端に雄ネジ部を有するフーチング用の補強鉄筋をネジ込んで定着させる方法(特開昭62−288219号公報)及び前記雌ネジ穴に中央部に雌ネジ穴を設けた連結補助具を埋め込み、該連結補助具の前記雌ネジ穴に先端に雄ネジ部を有するフーチング用補強鉄筋をネジ込んで定着させる方法(実公平3−040912号公報)が開示されている。
【0005】
また、あらかじめフーチング用補強鉄筋の先端にボルトや緊結部材を固着し、PHC杭の杭頭部端板の雌ネジ穴に前記ボルトや緊結部材を螺合して定着する方法も提案されている(特開昭63−165618号公報、実開平04−050447号公報、特開2000−212956号公報)。
【0006】
これらの提案とは別に、フーチングに埋め込まれる補強鉄筋の接続部をネジ切りして雄ネジを形成し、これを既成コンクリート杭の杭頭部端板のネジ孔に螺合してナットやカプラーを締め付けて定着させる工法がある(特開平02−091322号公報)。また、特許3568168号公報のように、所定長のネジ無し部を設けて非螺合部を設け、締め付けによる緊張力を付加しているものが知られている(NCPアンカー工法)。更に、コンクリート杭の杭頭部端板に直接フーチング用の補強鉄筋をスタッド溶接して連結し、フーチングを杭頭部の端板に定着させる工法がある(パイルスタッド工法)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公平03−040912号公報
【特許文献2】特開平02−091322号公報
【特許文献3】実開平04−050447号公報
【特許文献4】特開2000−212956号公報
【特許文献5】特許第3568168号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】道路橋示方書 IV 下部構造編
【非特許文献2】パイルスタッド工法カタログ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記道路橋示方書の方法Bでは、杭頭部のコンクリートをはつる作業や杭中空部のソイルセメントを除去する作業があるため、建築分野では前記NCPアンカー工法やパイルスタッド工法が採用されることが多い。しかし、土木分野ではこうした方法が採用されておらず、新たな杭頭補強方法が望まれていた。
【0010】
また、前記実公平3−040912号公報や特開昭62−288219号公報の発明のような杭頭部端板の既製のネジ穴を利用する方法ではネジ径の大きさが限られ、ひいては使用できるフーチング用の補強鉄筋の太さが限られてしまうという問題がある。
【0011】
一方、前記パイルスタッド工法は溶接されるスタッド鉄筋に引張力が生じる。したがって、その影響を避けるため、杭頭部端板の厚さによって使用できるフーチング用補強鉄筋の太さも制限されるという欠点を有する。更には、これら従来の杭頭部の補強構造では、施工後の杭頭部に引張応力が作用した場合、杭頭部端板に引張応力が直接作用し、杭頭部端板が変形したり損傷する畏れが生じるといった問題点がある。
【0012】
本発明は、上記のような従来技術が有する諸欠点を解消するためになされたもので、施工後の杭頭部のハツリ作業をなくすことができるとゝもに、杭頭部端板の既製のネジ穴の大きさに制限されずにフーチング用補強鉄筋の径を大きくすることが可能で、かつフーチング用補強鉄筋に引張応力が作用した場合でも、杭頭部端板が変形したり損傷することのない杭頭部構造を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明は、一端側にPC鋼材のヘッド定着部を、他端側にフーチングの補強用鉄筋を取付けるための雌ネジ穴をそれぞれ有するカプラーを、PC杭の杭頭端板に形成したカプラー定着穴に装着し、前記PC杭の内部コンクリートに埋設した前記PC鋼材の端部を前記カプラーのヘッド定着部に固定したことを特徴とするプレストレストコンクリート杭である。
【0014】
また、上記の目的を達成するため、本願の請求項2に係る発明は、前記カプラーがその外周面に周溝を備え、該周溝と前記杭頭端板に形成したスライド式のカプラー定着穴の穴周縁との係合で、前記カプラーを前記杭頭端板に装着したことを特徴とする。そして、本願の請求項3に係る発明は、前記カプラーが、PC鋼材のヘッド定着部を有する一端側の部材と、フーチングの補強用鉄筋を取付けるための雌ネジ穴を有する他端側の部材との二部材から構成され、前記一端側の部材と他端側の部材とがネジ結合により一体化構造となる構成としたことを特徴とする。
【0015】
さらに、本願の請求項4に係る発明は、前記杭頭端板に形成したカプラー定着穴に、前記杭頭端板の裏面側から挿入した前記一端側の部材と、該一端側の部材とネジ結合により一体に連結した前記杭頭端板の表面側から挿入した前記他端側の部材とで、前記カプラー定着穴の穴周縁を上下から挟持して前記カプラーを装着したことを特徴とする。
【0016】
そして、本願の請求項5に係る発明は、一端側にPC鋼材のヘッド定着部を、他端側にフーチングの補強用鉄筋を取付けるための雌ネジ穴をそれぞれ備えたカプラーをPC杭の杭頭端板に装着するとゝもに、前記カプラーのヘッド定着部にPC鋼材の端部を取付けた鉄筋籠をPC杭成形用の型枠内に配置する工程、前記型枠内にコンクリートを打設して一体に成形した後、前記カプラーを前記雌ネジ穴を利用してねじ込んだ定着ボルトにより取付けた緊張版を介して前記PC鋼材に所定の緊張力を与えながら前記コンクリートを養生硬化させる工程、養生硬化させたコンクリートにプレストレスを与えて脱型し、前記定着ボルトを取り外す工程を順次経ることを特徴とする。
【0017】
また、本願の請求項6に係る発明は、請求項1〜4のうちいずれか一つに記載のプレストレストコンクリート杭を地盤に建て込んだ後、前記カプラーの雌ネジ穴にフーチング補強用鉄筋の基部に形成した雄ネジをねじ込み、該フーチング補強用鉄筋を前記カプラーを介して前記PC鋼材に連結するとゝもに、前記杭頭端板から突出する前記フーチング補強用鉄筋に帯鉄筋を配してフーチングコンクリートを打設することを特徴とするプレストレストコンクリート杭の杭頭部とフーチングとの連結方法である。
【0018】
そして又、本願の請求項7に係る発明は、請求項1〜4のうちいずれか一つに記載のプレストレストコンクリート杭を地盤に建て込んだ後又は建て込む前に、前記カプラーの雌ネジ穴に、鍔部とその上下面から突出するボルト部からなる接続ボルトの一方のボルト部をねじ込んで前記カプラーと連結するとゝもに、前記接続ボルトの他方のボルト部を、フーチング補強用鉄筋の一端を固定したスリーブ圧着ネジ継手の雌ねじ穴にねじ込んで前記フーチング補強用鉄筋と連結し、前記杭頭端板から突出する前記フーチング補強用鉄筋に帯鉄筋を配してフーチングコンクリートを打設することを特徴とするプレストレストコンクリート杭の杭頭部とフーチングとの連結方法である。
【発明の効果】
【0019】
本願の請求項1に記載のプレストレストコンクリート既製杭は、上記のように、一端側にPC鋼材のヘッド定着部を、他端側にフーチングの補強用鉄筋を取付けるための雌ネジ穴をそれぞれ有するカプラーを、PC杭の杭頭端板に形成したカプラー定着穴に装着し、前記PC杭の内部コンクリートに埋設した前記PC鋼材の端部を前記カプラーのヘッド定着部に固定した構成のものであるから、前記カプラーにフーチングの補強鉄筋を連結した場合に、前記PC鋼材は緊張状態を保持したままフーチング補強用鉄筋の定着部としての機能を果たし、杭頭部をハツリ出す作業がなくなる。また、フーチングを介してフーチングの補強用鉄筋に引張り応力が作用した場合でも、この引張り応力は杭頭端板を介さずカプラーを介して前記PC鋼材に直接伝達されるため、杭頭端板を厚くする必要がない。
【0020】
また、本願の請求項2に係る発明は、前記カプラーがその外周面に周溝を備え、該周溝と前記杭頭端板に形成したスライド式のカプラー定着穴の穴周縁との係合で、前記カプラーを前記杭頭端板に装着したことを特徴とする構成であるから、カプラーの杭頭端板への固定が極めて容易であり、製造時の利点が大きい。
【0021】
本願の請求項3に係る発明は、前記カプラーが、PC鋼材のヘッド定着部を有する一端側の部材と、フーチングの補強用鉄筋を取付けるための雌ネジ穴を有する他端側の部材との二部材から構成され、前記一端側の部材と他端側の部材とがネジ結合により一体化構造となる構成としたものであるから、大きさの異なるヘッド定着部を備えた複数の一端側の部材と、大きさの異なる雌ネジ穴を備えた複数の他端側の部材とを任意に組み合わせることで、多種類のカプラーを形成することが可能であり、PC鋼材およびフーチング補強用鉄筋の太さに自在に対応できる。
【0022】
更に、本願の請求項4に係る発明は、前記杭頭端板に形成したカプラー定着穴に、前記杭頭端板の裏面側から挿入した前記一端側の部材と、該一端側の部材とネジ結合により一体に連結した前記杭頭端板の表面側から挿入した前記他端側の部材とで、前記カプラー定着穴の穴周縁を上下から挟持して前記カプラーを装着した構成であるから、カプラーはカプラー定着穴の穴周縁を上下から挟持する状態で杭頭端板に確実に固定され、取付け部の構造強度が向上する。
【0023】
そして又、本願の請求項5に記載のプレストレストコンクリート杭の製造方法は、一端側にPC鋼材のヘッド定着部を、他端側にフーチングの補強用鉄筋を取付けるための雌ネジ穴をそれぞれ備えたカプラーをPC杭の杭頭端板に装着するとゝもに、前記カプラーのヘッド定着部にPC鋼材の端部を取付けた鉄筋籠をPC杭成形用の型枠内に配置する工程、前記型枠内にコンクリートを打設して一体に成形した後、前記カプラーを前記雌ネジ穴を利用してねじ込んだ定着ボルトにより取付けた緊張版を介して前記PC鋼材に所定の緊張力を与えながら前記コンクリートを養生硬化させる工程、養生硬化させたコンクリートにプレストレスを与えて脱型し、前記定着ボルトを取り外す工程を順次経ることを特徴とするものであるから、前記カプラーに形成したフーチングの補強用鉄筋を取付けるための雌ネジ穴を利用することで、前記PC鋼材の緊張作業を容易に行うことができる。
【0024】
また、本願の請求項6に記載のプレストレストコンクリート杭の杭頭部とフーチングとの連結方法は、上記のように、プレストレストコンクリート杭を地盤に建て込んだ後、前記カプラーの雌ネジ穴にフーチング補強用鉄筋の基部に形成した雄ネジをねじ込み、該フーチング補強用鉄筋を前記カプラーを介して前記PC鋼材に連結するとゝもに、前記杭頭端板から突出する前記フーチング補強用鉄筋に帯鉄筋を配してフーチングコンクリートを打設することを特徴とするものであるから、杭頭部のカットオフを行う必要がない。又、フーチング補強用鉄筋として任意大きさの径のものを選定することができるなど、経済的な杭頭部とフーチングとの連結構造を提供できる。
【0025】
そして更に、本願の請求項7に記載のプレストレストコンクリート杭の杭頭部とフーチングとの連結方法は、上記のように、プレストレストコンクリート杭を地盤に建て込んだ後又は建て込む前に、前記カプラーの雌ネジ穴に、鍔部とその上下面から突出するボルト部からなる接続ボルトの一方のボルト部をねじ込んで前記カプラーと連結するとゝもに、前記接続ボルトの他方のボルト部を、フーチング補強用鉄筋の一端を固定したスリーブ圧着ネジ継手の雌ねじ穴にねじ込んで前記フーチング補強用鉄筋と連結し、前記杭頭端板から突出する前記フーチング補強用鉄筋に帯鉄筋を配してフーチングコンクリートを打設することを特徴とするものであるから、前記接続ボルトの他方のボルト部の径および該ボルト部がねじ込まれて連結されるスリーブ圧着ネジ継手の圧着部の径が大きなものを選択することで、この圧着部に圧着固定されるフーチング補強用鉄筋の径が大きなものを自在に選定することができ、構造強度の大きなフーチング部と杭頭部との連結構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は本発明に係るプレストレストコンクリート杭の杭頭部の説明断面図である。
【図2】図2は本発明で使用するカプラーで、(イ)は斜視図,(ロ)は正面図,(ハ)は(ロ)のIーI線断面矢視図である。
【図3】図3はプレストレストコンクリート杭の杭頭部とフーチングとの連結状態を示す説明断面図である。
【図4】図4はプレストレストコンクリート杭の杭頭部とフーチング補強用鉄筋の連結状態を示す他の実施例の説明断面図である。
【図5】図5は本発明に係るプレストレストコンクリート杭の杭頭部の他の実施例の説明断面図である。
【図6】図6は図2は本発明で使用するカプラーの他の実施例で、(イ)は斜視図,(ロ)は正面図,(ハ)は(ロ)のIIーII線断面矢視図である。
【図7】図7はプレストレストコンクリート杭の杭頭部とフーチングとの連結状態を示す更に他の実施例の説明断面図である。
【図8】図8はプレストレストコンクリート杭の杭頭部とフーチング補強用鉄筋の連結状態を示す更に他の実施例の説明断面図である。
【図9】図9は本発明に係るプレストレストコンクリート杭の製造方法を示す説明部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を図面に示す実施形態により詳細に説明する。図1乃至図4において、1はプレストレストコンクリート杭で、その内部コンクリート3にはプレストレスを導入するためのPC鋼材2が前記杭1の全長にわたって埋設さている。4は前記プレストレストコンクリート杭1の上端部に装着したドーナツ型の杭頭端板であり、5は前記杭頭端板4に設置したカプラーである。なお、図中2aは前記PC鋼材2の先端部に形成した係止用のヘッドである。
【0028】
上記カプラー5は、図2に示すように、全体形状が円柱状体のもので、外周面に周溝6を備えており、この周溝6と前記杭頭端板4に形成したスライド式のカプラー定着穴7の穴周縁との係合により、前記カプラー5は杭頭端板4に装着されている。
【0029】
詳述すると、前記カプラー定着穴7は、前記カプラー5の外径よりやや大きい径の大径穴と、前記周溝6の外径よりやや大きい径の小径穴とがこの小径穴の直径部で連続した構成の所謂ダルマ穴からなる形状のものであり、前記大径穴の部分で挿入したカプラー5をその周溝6の部分で小径穴方向にスライドさせ、前記小径穴(前記カプラー定着穴)7の穴周縁と係合させることで前記杭頭端板4に装着されている。
【0030】
8は前記PC鋼材2のヘッド2aを固定するためのヘッド定着部で、前記カプラー5の外周面から中心部付近まで延びたT字形状の横穴、詳しくは、ヘッド挿通部8aとPC鋼材挿通部8bとからなる正面視がT字形状の横穴で構成されている。9は前記カプラー5の中心部に上端面から下方向に延びる雌ネジ穴で、プレストレストコンクリート杭1の頭部1AにフーチングFを構築する場合に、フーチングの補強用鉄筋10を取付ける際に使用するものであり、前記雌ネジ穴9の上端は前記カプラー5の上端面に開口している。なお、図中10aは前記フーチング補強用鉄筋10の下端部に形成した雄ねじである。
【0031】
そこで、上記のような構成からなる既成のプレストレストコンクリート杭1を使用し、その杭頭部1Aと連結したフーチングFを構築する場合について説明すると、図3に示すように、プレストレストコンクリート杭1を地盤Gに建て込み、該杭1の杭頭端板4の上面に露出するカプラー5の雌ネジ穴9内に、フーチング補強用鉄筋10の下端部に形成した雄ねじ10aをねじ込み、該補強用鉄筋10を前記カプラー5と一体に連結する。
【0032】
これにより、前記フーチングの補強用鉄筋10は、カプラー5を介して内部コンクリート3内に埋設したPC鋼材2と一体に連結されることになる。つぎに、プレストレストコンクリート杭1の杭頭端板4の上面から上方へ起立する各フーチングの補強用鉄筋10,10に図示しない帯鉄筋を配設し、フーチング成形用の枠内にコンクリートを打設する。そして、このコンクリートが硬化することで、プレストレストコンクリート杭1のPC鋼材2と一体に連結された前記各フーチングの補強用鉄筋10及び図示しない帯鉄筋で補強されたフーチングFが形成される。
【0033】
上記図1乃至図3に示す実施例では、カプラー5の雌ネジ穴9内にフーチング補強用鉄筋10の雄ネジ10aを直接ねじ込むことで、フーチングの補強用鉄筋10とカプラー5とを一体に連結する方法について説明したが、図4に示すような他の方法、すなわち、スリーブ圧着ネジ継手11および接続ボルト13を介して連結する方法も採用できる。
【0034】
詳述すると、前記スリーブ圧着ネジ継手11は、スリーブの内周面に雌ネジを形成した下方の雌ネジ部12aと、スリーブの内周面に凹凸を形成した上方の圧着部12bとから構成されている。一方、前記接続ボルト13は、ねじ棒の長手方向の中央部に鍔14を備え、該鍔14の中心部にあってその上下両面に上部雄ネジ15aと下部雄ネジ15bがそれぞれ上下に突設した構造のものである。
【0035】
そこで、先ず前記接続ボルト13の下部雄ネジ15bを、鍔14が前記カプラー5の上端面と当接するまでその雌ネジ穴9内にねじ込み、前記カプラー5に接続ボルト13を連結しておく。つぎに、前記接続ボルト13の上部ネジ15aにスリーブ圧着ネジ継手11の下方の雌ネジ部12aをねじ込むことで、前記接続ボルト13とスリーブ圧着ネジ継手11とが連結される。
【0036】
これにより、図4(イ)に示すように、前記スリーブ圧着ネジ継手11の上方の圧着部12bに下端が圧着により固定されたフーチングの補強用鉄筋10が、図4(ロ)に示すように、前記スリーブ圧着ネジ継手11および接続ボルト13を介して前記カプラー5と一体に連結されることになる。
【0037】
図5乃至図8は本発明の他の実施例で、前記図1乃至図4に示す実施例1のものとはカプラー5の構造が相違するのみで、その他の構成及びカプラー5とフーチングの補強用鉄筋10との連結構造は、前記図1乃至図4に示す実施例1のものと同じである。したがって、以下では相違する部分についてのみ詳細に説明し、その他の同一の構成部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0038】
図5乃至図8において、25はカプラーで、該カプラー25はPC鋼材2のヘッド定着部8を有する雌側部材26と、フーチングの補強用鉄筋10を取付けるための雌ネジ穴9を有する雄側部材27との二部材から構成されており、前記雌側部材26と雄側部材27とはネジ結合により一体化構造となってカプラー25を形成する構成のものである。
【0039】
詳述すると、PC鋼材2のヘッド定着部8を有する雌側部材26は、その中心部に上端面から下方向に延びる雌ネジ穴9を備えており、フーチングの補強用鉄筋10を取付けるための雌ネジ穴9を有する雄側部材27を、その頭部29の下面中央から垂下する雄ネジを備えたボルト部30の部分で前記雌側部材26の雌ネジ穴28と螺合せしめることで、上記カプラー25が形成される。
【0040】
そこで、上記の構成から成るカプラー25をプレストレストコンクリート杭1の杭頭端板4に固定する場合は、前記雄側部材27のボルト部30の径よりやや大きい径のカプラー定着穴31を杭1の杭頭端板4に形成し、前記雄側部材27のボルト部30を前記カプラー定着穴31内に杭頭端板4の上面側から挿入する。そして、一方の雌側部材26を杭頭端板4の裏面側に配設し、その雌ネジ穴28をカプラー定着穴31の位置と合致させ、該カプラー定着穴31内に挿入したボルト部30と雌ネジ穴28とを合致させる。
【0041】
つぎに、雄側部材27を回動することでボルト部30を前記雌側部材26の雌ネジ穴28に螺合させ、雄側部材27を更に回動させることで両部材26,27により前記カプラー25を形成するとゝもに、カプラー定着穴31の穴周縁を前記雄側部材27の頭部29下面と雌側部材26の上端面とで上下から締付けることで、前記カプラー25はプレストレストコンクリート杭1の杭頭端板4に装着される。
【0042】
そこで、上記のような構成からなる既成のプレストレストコンクリート杭1を使用し、その上端部にフーチングFを構築する場合について説明すると、図7に示すように、杭1の杭頭端板4の上面に露出するカプラー25の雌ネジ穴9内に、フーチング補強用鉄筋10の下端部に形成した雄ねじ10aをカプラー25の上端面の開口からねじ込み、フーチングの補強用鉄筋10を前記カプラー5と一体に連結する。
【0043】
或いは、図8に示すように、スリーブ圧着ネジ継手11および接続ボルト13を介して連結する前記図4で説明したような方法で、フーチングの補強用鉄筋10をカプラー25と一体に連結する。その後のプレストレストコンクリート杭1の上端部にフーチングFを構築する方法については上記と同一である。
【0044】
つぎに、本発明に係るプレストレストコンクリート杭1の製造方法を、図9に示す説明図により説明すると、前記カプラー5,25を杭頭端板4のカプラー定着穴7,31に装着し、前記カプラー5,25のヘッド定着部8にPC鋼材2のヘッド2aを取付けた鉄筋籠をプレストレストコンクリート杭成形用の型枠40内に配置する。
【0045】
そして、前記型枠40内にコンクリート41を打設して一体に成形した後、前記カプラー5,25をその雌ネジ穴9を利用してねじ込んだ定着ボルト42により緊張版43に取り付ける。つぎに、油圧シリンダを駆動してその緊張ロッド44を収縮させ、前記緊張版43,カプラー5,25を介して前記PC鋼材2に所定の緊張力を与える。そしてこの状態でコンクリート41を養生硬化させる。
【0046】
そして更に、型枠40内に打設した前記コンクリート41の養生硬化工程が終了したのち、養生硬化させたコンクリート3にプレストレスを与えて脱型し、前記定着ボルト42を前記カプラー5,25の雌ネジ穴9から取り外すことで、本発明に係るプレストレストコンクリート杭1を得ることが出来る。
【符号の説明】
【0047】
1 プレストレストコンクリート杭1
1A 杭頭
2 PC鋼材
2a 端部
3 コンクリート
4 杭頭端板
5・25 カプラー
6 周溝
7・31 カプラー定着穴
8 ヘッド定着部
8a ヘッド挿通部
8b PC鋼材挿通部
9 雌ネジ穴
10 フーチング補強用鉄筋
10a 雄ネジ
11 スリーブ圧ネジ継手
12a 雌ネジ部
12b 圧着部
13 接続ボルト
14 鍔
15a 上部雄ネジ
15b 下部雄ネジ
26 雌型部材
27 雄型部材
28 雌ネジ穴
29 頭部
30 ボルト部
40 型枠
41 コンクリート
42 定着ボルト
43 緊張板
44 緊張ロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側にPC鋼材のヘッド定着部を、他端側にフーチングの補強用鉄筋を取付けるための雌ネジ穴をそれぞれ有するカプラーを、PC杭の杭頭端板に形成したカプラー定着穴に装着し、前記PC杭の内部コンクリートに埋設した前記PC鋼材の端部を前記カプラーのヘッド定着部に固定したことを特徴とするプレストレストコンクリート杭。
【請求項2】
前記カプラーがその外周面に周溝を備え、該周溝と前記杭頭端板に形成したスライド式のカプラー定着穴の穴周縁との係合で、前記カプラーを前記杭頭端板に装着したことを特徴とする請求項1記載のプレストレストコンクリート杭。
【請求項3】
前記カプラーが、PC鋼材のヘッド定着部を有する一端側の部材と、フーチングの補強用鉄筋を取付けるための雌ネジ穴を有する他端側の部材との二部材から構成され、前記一端側の部材と他端側の部材とがネジ結合により一体化構造となる構成としたことを特徴とする請求項1又は2記載のプレストレストコンクリート杭。
【請求項4】
前記杭頭端板に形成したカプラー定着穴に、前記杭頭端板の裏面側から挿入した前記一端側の部材と、該一端側の部材とネジ結合により一体に連結した前記杭頭端板の表面側から挿入した前記他端側の部材とで、前記カプラー定着穴の穴周縁を上下から挟持して前記カプラーを装着したことを特徴とする請求項3記載のプレストレストコンクリート杭。
【請求項5】
一端側にPC鋼材のヘッド定着部を、他端側にフーチングの補強用鉄筋を取付けるための雌ネジ穴をそれぞれ備えたカプラーをPC杭の杭頭端板に装着するとゝもに、前記カプラーのヘッド定着部にPC鋼材の端部を取付けた鉄筋籠をPC杭成形用の型枠内に配置する工程、前記型枠内にコンクリートを打設して一体に成形した後、前記カプラーを前記雌ネジ穴を利用してねじ込んだ定着ボルトにより取付けた緊張版を介して前記PC鋼材に所定の緊張力を与えながら前記コンクリートを養生硬化させる工程、養生硬化させたコンクリートにプレストレスを与えて脱型し、前記定着ボルトを取り外す工程を順次経ることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一つに記載のプレストレストコンクリート杭の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のうちいずれか一つに記載のプレストレストコンクリート杭を地盤に建て込んだ後、前記カプラーの雌ネジ穴にフーチング補強用鉄筋の基部に形成した雄ネジをねじ込み、該フーチング補強用鉄筋を前記カプラーを介して前記PC鋼材に連結するとゝもに、前記杭頭端板から突出する前記フーチング補強用鉄筋に帯鉄筋を配してフーチングコンクリートを打設することを特徴とするプレストレストコンクリート杭の杭頭部とフーチングとの連結方法。
【請求項7】
請求項1〜4のうちいずれか一つに記載のプレストレストコンクリート杭を地盤に建て込んだ後又は建て込む前に、前記カプラーの雌ネジ穴に、鍔部とその上下面から突出するボルト部からなる接続ボルトの一方のボルト部をねじ込んで前記カプラーと連結するとゝもに、前記接続ボルトの他方のボルト部を、フーチング補強用鉄筋の一端を固定したスリーブ圧着ネジ継手の雌ねじ穴にねじ込んで前記フーチング補強用鉄筋と連結し、前記杭頭端板から突出する前記フーチング補強用鉄筋に帯鉄筋を配してフーチングコンクリートを打設することを特徴とするプレストレストコンクリート杭の杭頭部とフーチングとの連結方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−174474(P2010−174474A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16568(P2009−16568)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(308025923)前田製品販売株式会社 (16)
【Fターム(参考)】