説明

プレス・スルー・パック包装装置及びプレス・スルー・パック包装体

【課題】PTPポケット部内面を粗面化する事により遮光性能を高める目的で、プラグ装置の突出部が粗面加工を有するPTP包装装置と、これを用いて成形した遮光性のあるPTPポケット部を有するPTP包装体を提供すること。
【解決手段】 PTP包装装置のプラグ装置1にて成形上型4への突出部分6を粗面加工することにより、ポケット部内面10の突出面6との接触部分に粗面が転写され、ポケット面外側9からの可視光光線を散乱することにより錠剤8への遮光性を付与することを目的とし粗面加工してあるプラグ突出部6を持つことを特徴とするプレス・スルー・パック包装装置及びこれを用いて成形したPTP包装体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品包装の分野で、固形剤包装用として一般に用いられているプレス・スルー・パック(以下、PTPと略す)包装装置及びPTP包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PTP包装は、例えば医薬品包装の分野で、錠剤、カプセル剤等の固形剤包装用として硬質塩化ビニル樹脂やポリプロピレン樹脂等からなる熱可塑性樹脂包装用フィルムをベース基材として用い、該ベース基材をポケット形状に成形し、その中に固形剤(錠剤、カプセル剤等)を充填し、アルミ箔からなるアルミ蓋材で密封した包装体であり、広く普及してきた。
薬剤の高機能化にともない、近年では光に敏感な薬剤を利用することもあり、遮光性に優れるPTP包装用フィルムが強く求められている。
一般的に遮光とは光透過と相反するものである。従って、褐色ビンあるいは赤色のPTP包装用フィルムに代表されるような遮光性をもつ包装用フィルムは光透過性が悪く、中味の薬剤が見にくいという特徴をもつ。薬剤が見にくいということはその薬剤そのものに施した印字、刻印が見にくいことでもある。これはPTP包装の最も大事なる点である「中味が一個毎に検査できる.従って個別に保証できる」という優れたPTP包装の価値を減じるものである。更には、その薬剤の下部又は背面に位置するアルミ蓋材のシール部側に施された印字も認識しにくいことになる。
【0003】
従来技術として、熱可塑性樹脂の遮光性を得るためには成形材料に着色を行う。前述の際に使用する着色剤としては、成形材料を直接着色するドライカラーやカラードペレットがあり、また顔料を高濃度に含有し、着色成形時に必要濃度に希釈するマスターバッチが製造されている。
しかし、ドライカラーは、顔料の飛散・汚染性が大きく作業環境上に問題がある。また、カラードペレット法では着色コストや物流コストが高くなる等の欠点がある。これに対してマスターバッチは、分散性が良好で着色コストが低く、保存や計量が容易であると共に、汚染性が無い等の着色剤として優れた性質を有している。(特許文献1参照)。しかしながら前述のPTP包装体では遮光性を得るために色調の制限を受ける。
【0004】
一般に遮光性の高い包装用フィルムを得るためには包装用フィルムの着色濃度を高くするが、PTP包装の意匠性の面では遮光性能に応じた色調を選択せざるを得なかった。また、着色濃度を上げるとPTP部容器部分以外も可視光を遮るために蓋材のシール部側に印字された文字や図形を読み取る事が困難であった。
【0005】
【特許文献1】特開平11−106573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、プラグ装置を用いたPTP包装装置において、そのプラグ装置の成形上型への突出部分の表面を粗面加工することによりPTP包装体の遮光性を付与させることが出来るPTP包装装置及び、それによるPTP包装体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1)ポケット部に錠剤が収容されるPTP包装装置であって、
前記ポケット部形成手段は、少なくとも前記ポケット部に対応する部位を加熱し、
当該加熱部位をポケット形状に形成する成形手段を具備し、
前記成形手段は、前記ポケット部を形成するための凹部を有する成形上型と、前記成形上型と包装用フィルムを挟んで反対側に位置し成形上型に対して圧縮空気または、真空にて前記ポケット部を形成する部位からなり、
成形上型に対して突出可能なプラグ装置を用いて前記ポケットを形成する機構を有し、
前記プラグ装置の成形上型への突出部分を粗面加工しポケット部内面内側に接触させることにより、その突出表面の粗面を転写し前記ポケット部に収容される錠剤への遮光性を付与することを特徴とするPTP包装装置、
(2)前記プラグ装置の粗面加工してある突出部は、サンドブラスト加工によって粗面を形成し、前記サンドブラスト加工に用いられる砥粒の粒度または、メッシュ粗さによって前記粗面の粗さを調整可能となっている(1)項に記載のPTP包装装置、
(3)(1)または(2)項に記載のPTP包装装置を用いて包装されたPTP包装体、
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の粗面加工された突出部を有するプラグ装置を用いることにより、成形されたポケット部の内面に前記突出部粗面加工を転写することによりポケット部以外のアルミ蓋材シール部の透明性を維持したままポケット部表面から受ける可視光領域光線の遮光性能を従来の突出部を用い形成されたポケット部よりも高める事が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、発明を実施するための最良の形態について、図1〜3を用いて説明する。
図1〜3において、本発明に用いる粗面加工された突出部6の粗面粗さはポケット部2の形成が可能であれば特に限定されない。可視光領域の遮光性と透明性を考慮した場合、例えば、突出部6の粗面加工に用いられるサンドブラストのメッシュは100番程度のものが好ましい、ポケット部2とプラグ装置1の粗面加工された突出部6の離型性を向上させる目的で粗面加工突出部6の表面にフッ素系などの離型処理やメッキ処理などをおこなってもよい。また、プラグ装置1を使用するPTP包装装置であれば、圧空成形や真空成形などの成形方式は特に限定されない。
【0010】
本発明に使用するプラグ装置1の粗面加工された突出部6は、ポケット部内面10に突出部粗面を転写するため、突出部6をポケット形成時の加熱温度と同様に加熱することが好ましいが、突出部6の粗面をポケット部内面10に転写可能であれば突出部6の加熱状態は特に限定されない。
【0011】
本発明に使用するプラグ装置1の粗面加工された突出部6の材質は、その粗面加工性や突出部6を加熱する際の熱伝導性などからアルミが好ましいが、前述のポケット部内面10に突出部粗面6の転写を阻害しなければその材質は特に限定されない。
【実施例】
【0012】
以下、本発明の内容を実施例により詳細に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り以下の例に限定されるものではない。
【0013】
<実施例1>
プラグ装置1の突出部6に対し粗面加工を150メッシュでサンドブラスト加工を行い前記のPTP包装装置にて錠剤を充填可能なポケット部の形成を行い、銀色無地のアルミ箔に10ポイントの文字、図柄を印刷した面を、前記PTP包装装置にてポケット周辺部11に加熱接着行った。
<実施例2>
プラグ装置1の突出部6に対し粗面加工を100メッシュでサンドブラスト加工を行い前記のPTP包装装置にて錠剤を充填可能なポケット部の形成を行い、銀色無地のアルミ箔に10ポイントの文字、図柄を印刷した面を、前記PTP包装装置にてポケット周辺部11に加熱接着行った。
<実施例3>
プラグ装置1の突出部6に対し粗面加工を60メッシュでサンドブラスト加工を行い前記のPTP包装装置にて錠剤を充填可能なポケット部の形成を行い、銀色無地のアルミ箔に10ポイントの文字、図柄を印刷した面を、前記PTP包装装置にてポケット周辺部11に加熱接着行った。
<比較例1>
プラグ装置1の突出部6を粗面加工しない状態で前記のPTP包装装置にて錠剤を充填可能なポケット部の形成を行い、銀色無地のアルミ箔に10ポイントの文字、図柄を印刷した面を、前記PTP包装装置にてポケット周辺部11に加熱接着行った。
<比較例2>
プラグ装置1の突出部6に対し粗面加工を50メッシュでサンドブラスト加工を行い前記のPTP包装装置にて錠剤を充填可能なポケット部の形成を行い、銀色無地のアルミ箔に10ポイントの文字、図柄を印刷した面を、前記PTP包装装置にてポケット周辺部11に加熱接着行った。
<比較例3>
プラグ装置1の突出部6に対し粗面加工を200メッシュでサンドブラスト加工を行い前記のPTP包装装置にて錠剤を充填可能なポケット部の形成を行い、銀色無地のアルミ箔に10ポイントの文字、図柄を印刷した面を、前記PTP包装装置にてポケット周辺部11に加熱接着行った。
【0014】
前記の実施例1〜3及び比較例1〜3で得られたPTPシートを用いて下記の特性(a)〜(c)を評価し、表1にまとめて示した。
以下に評価特性項目とその評価方法及び評価基準を説明する。
(a)遮光性:突出部6の粗面がポケット部内面10に効率良く転写され、可視光領域の透過が比較1(粗面未加工品)と比較して可視光領域波長800nmで10%以上向上が見られたものを○とし、見られなかったものを×とした。
(b)視認透明性:前記PTP包装装置にてポケット周辺部11に加熱接着行った際に、文字、図柄を印刷したアルミ箔の文字が読めるかを比較して、読めるものを○とし、読めなかったものを×とした。
(c)加工性:突出部6の粗面がポケット部内面10に対し転写され、突出部が成形上型4より離れ成形下型5に収納される際、ポケット部内面が突出部に対して離型されるか比較を行い、比較例1の未加工と比較して同等もしくは離型されやすいものを○に、離型されにくいものを×とした。
ここで言うメッシュとは、プラグ装置1の突出部6を粗面加工する際のサンドブラスト加工に用いた研磨材の粒経(メッシュ)であり、標準篩の目開きの表示方法である。1インチの長さあたりでの目の数を篩番号としている。例えば100メッシュは2.54cmの長さの中に研磨剤を篩う目が100個となる。メッシュの数値が小さいものほど粒経が大きくなる。
【0015】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明によれば従来のPTP包装体のポケット部よりも容易に可視光領域の遮光性能を高める事が可能であり、更に、PTP包装体のポケット部のみ遮光性能を高めることでき、ポケット周辺部での透明性を損なわずアルミ蓋剤に印刷された文字等の視認性にすぐれることから、PTP包装体の意匠性と光に敏感な薬剤を包装するのに適したPTP包装装置及び、PTP包装体を供給することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一実施の形態におけるポケット部形成装置の説明図である。
【図2】ポケット部を示す拡大断面図である。
【図3】ポケット部内面をプラグ装置の突出面を用いて、粗面加工を転写させた拡大断面図である。
【符号の説明】
【0018】
1・・・プラグ装置、2・・・ポケット部、3・・・包装用フィルム、4・・・成形上型部、5・・・成形下型、6・・・突出部、7・・・蓋材アルミ箔、8・・・錠剤、9・・・ポケット部外面、10・・・ポケット部内面(突出部6の粗面未転写)、11・・・ポケット周辺部、12・・・ポケット部内面(突出部6の粗面転写)、13・・・包装用フィルム搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポケット部に錠剤が収容されるプレス・スルー・パック包装装置であって、
前記ポケット部形成手段は、少なくとも前記ポケット部に対応する部位を加熱し、
当該加熱部位をポケット形状に形成する成形手段を具備し、
前記成形手段は、前記ポケット部を形成するための凹部を有する成形上型と、前記成形上型と包装用フィルムを挟んで反対側に位置し成形上型に対して圧縮空気または、真空にて前記ポケット部を形成する部位からなり、
成形上型に対して突出可能なプラグ装置を用いて前記ポケットを形成する機構を有し、
前記プラグ装置の成形上型への突出部分を粗面加工しポケット部内面側に接触させることにより、その突出表面の粗面を転写し前記ポケット部に収容される錠剤への遮光性を付与することを特徴とするプレス・スルー・パック包装装置。
【請求項2】
前記プラグ装置の粗面加工してある突出部は、サンドブラスト加工によって粗面を形成し、前記サンドブラスト加工に用いられる砥粒の粒度または、メッシュ粗さによって前記粗面の粗さを調整可能となっている請求項1に記載のプレス・スルー・パック包装装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプレス・スルー・パック包装装置を用いて包装されたプレス・スルー・パック包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−315686(P2006−315686A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−136862(P2005−136862)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】