説明

プレス金型

【課題】パンチやダイ本体に負担をかけることなく、ダイ本体とパンチとの間のクリアランスを追い込むことができるプレス金型を提供する。
【解決手段】上型10にパンチ11を備え、下型20にパンチ11の下面に対向するパッド22とそのパッド22の両側に位置しパンチ11の両側面に対向する一対のダイ本体21,21を備え、パンチ11で板材30をパッド22に当たるように押し込んで、パンチ11の下面とパッド22の間でプレス成形品5のウェブ面51を形成すると共にパンチ11の両側面とダイ本体21の内側面との間でフランジ面52を形成し、板材30から断面コ字状のプレス成形品5を成形するプレス金型1において、ダイ本体21の内側面に、押し込み時にパンチ11の側面とのクリアランスを板材30の板厚以下に保つと共にパンチ11の上昇時にクリアランスを拡げるクリアランス追い込み・抜き取り手段40を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材から断面コ字状のプレス成形品を成形するプレス金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両のフレームを構成する断面コ字状のサイドメンバを成形する方法として、上型で材料を下型に押し付けてプレス成形品を成形するプレス加工方法が広く用いられている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
まず、サイドメンバについて図3により説明する。
【0004】
トラックなどの大型の車両3は、キャビン3aや荷台3bをフレーム3cで支持する構造を有し(図3(a))、そのフレーム3cは、平行に配置した一対のサイドメンバ5を複数のクロスメンバ6で連結して構成される。
【0005】
サイドメンバ5は断面コ字状に形成され、起立したウェブ面51とその両側から水平方向に延出する2枚のフランジ面52とからなる。また、サイドメンバ5のウェブ面51は、車両3のキャビン3a側で水平面視外側に拡がるようにオフセットするオフセット部53を有し、そのオフセット部53の前後には、共に車両3の側面に平行な前部ウェブ面51aおよび後部ウェブ面51bを有する。オフセット部53よりも更に車両3の前方側においては、フランジ面52,52同士の間隔をキャビン3a側で縮小するように形状変化させる形状変化部54を有する。
【0006】
一般的に、サイドメンバ5は、サイドメンバ5を展開した形状を有する鉄鋼製の板材をプレス成形して成形され、その長さは車両3のサイズに合わせて4600〜11000mm程度、厚さは6〜8mm程度とされる。
【0007】
そのプレス成形には、図4に示すようなプレス金型が用いられる。
【0008】
このプレス金型4は、上型10にパンチ11を備え、下型20にパンチ11の下面に対向するパッド22とそのパッド22の両側に位置してパンチ11の両側面に対向する一対のダイ本体21,21を備える。パンチ11の側面にはパンチインサート11aが、ダイ本体21の内側面にはダイインサート21aが、それぞれ固定ボルト11b,21bを用いて設けられ、摩耗など金型への負担が大きい箇所を容易に交換できるようにしている。
【0009】
このダイ本体21,21上に載置した板材をパンチ11で押し込むことで、板材の両側部が折り曲げられて起立し、パンチ11の下面とパッド22との間でウェブ面51が形成されると共にパンチ11の側面とダイ本体21の内側面との間でフランジ面52が形成され、板材の断面がコ字状に成形される。
【0010】
また、パッド22は、図3で説明したサイドメンバ5のオフセット部53を成形すべく、その上面を上下方向にオフセットしたオフセット成形部を有する。このパッド22に当たるように板材をパンチ11で更に押し込むことで、オフセット部53が形成され、サイドメンバ5が成形される。
【0011】
このプレス金型4では、フランジ面52の食い付きによりパンチ11が抜き取り不能となることを防ぐために、パンチ11の側面とダイ本体21の内側面との隙間であるクリアランスを、板材の板厚+0.5mm程度の広さとするのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平4−118118号公報
【特許文献2】特開平11−123469号公報
【特許文献3】特開2010−149589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、クリアランスを板厚+0.5mm程度としたプレス金型4でプレス成形を行うと、オフセット部53の近傍でフランジ面52にシワが発生しやすいという問題があった。
【0014】
このシワの発生について図5(a)〜(c)により説明する。
【0015】
サイドメンバ5のオフセット部53の近傍、より具体的には、オフセット部53と前部ウェブ面51aとの境界近傍では、オフセット成形によりフランジ面52が圧縮変形されるオフセット縮みフランジ部55が形成される(図5(a)中、点線枠で囲った領域)。プレス成形中、このオフセット縮みフランジ部55には周囲の材料が寄ってくるため、プレス金型4のクリアランスを板材の板厚よりも大きくしてプレス成形を行うと、板材と金型との間に形成される隙間で材料が遊び、蛇腹状のシワ56が形成されやすい。
【0016】
シワ56の形状については従来から厳しい要求精度があり、例えばシワ56の段数を1つ以下とし、その高さをできるだけ小さくする(例えば、長さ100mmにつき0.3mm以内にする)ことが求められる。要求精度を満たさないサイドメンバ5ではシワ56を修正する工程が必要となるため、シワ56の発生を軽減することが望ましい。
【0017】
シワ56の発生を軽減するためには、オフセット成形部近傍で材料が遊ぶ隙間を無くし、クリアランスを板材の板厚以下に小さく設定する、すなわち、クリアランスを追い込む必要がある。
【0018】
しかしながら、クリアランスを追い込むとプレス金型4へのフランジ面52の食い付きが強くなるため、パンチ11が下死点から持ち上がらなくなる場合があり、クリアランスを板材の板厚以下にしてサイドメンバ5をプレス成形する技術は確立されていなかった。
【0019】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、板材からサイドメンバのような断面コ字状のプレス成形品を成形するに際し、パンチやダイ本体に負担をかけることなく、ダイ本体とパンチとの間のクリアランスを追い込むことができるプレス金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために創案された本発明は、上型にパンチを備え、下型にパンチの下面に対向するパッドとそのパッドの両側に位置しパンチの両側面に対向する一対のダイ本体を備え、上記パンチで板材を上記パッドに当たるように押し込んで、パンチの下面とパッドの間でプレス成形品のウェブ面を形成すると共にパンチの両側面とダイ本体の内側面との間でフランジ面を形成し、板材から断面コ字状のプレス成形品を成形するプレス金型において、上記ダイ本体の内側面に、押し込み時にパンチの側面とのクリアランスを板材の板厚以下に保つと共にパンチの上昇時にクリアランスを拡げるクリアランス追い込み・抜き取り手段を設けたプレス金型である。
【0021】
上記クリアランス追い込み・抜き取り手段は、ダイ本体の内側面に設けられたスライドプレートと、そのスライドプレートの内側面に上下移動可能に設けられ、押し込み時にパンチの側面とのクリアランスを板材の板厚以下に保ち、パンチが下死点から持ち上げられたときにスライドプレートに沿って上昇してクリアランスを拡げる可動インサートとからなると良い。
【0022】
上記スライドプレートと上記可動インサートとの接触面には、下端から上端にかけて内側から外側に傾斜する傾斜スライド面が形成されると良い。
【0023】
上記可動インサートは、上記ダイ本体から上記スライドプレートを通してストリッパボルトで支持され、上記ダイ本体と上記スライドプレートには、上記ストリッパボルトの上下方向の移動を許容する長穴が形成されると良い。
【0024】
上記プレス成形品は、車両フレームを形成するサイドメンバからなり、そのサイドメンバが断面コ字状に形成されると共にキャビン側で水平面視外側に拡げられたオフセット部を有し、ダイ本体に設けられる上記クリアランス追い込み・抜き取り手段は、上記オフセット部に対応した位置に設けられると良い。
【0025】
上記ダイ本体には、上記オフセット部に対応した位置にクリアランス追い込み・抜き取り手段を収容する凹溝が形成されると良い。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、板材から断面コ字状のプレス成形品を成形するに際し、パンチやダイ本体に負担をかけることなく、ダイ本体とパンチとの間のクリアランスを追い込むことができるプレス金型を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るプレス金型の下型を示す要部拡大図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は(a)のA−A線断面図である。
【図2】本発明に係るプレス金型の構造を示す断面図であり、(a)はパンチの押し込み時、(b)はパンチの下死点到達時、(c)はパンチの抜き取り時を示す図である。
【図3】車両の構造を示す模式図であり、(a)はトラック全体、(b)はフレームを示す図である。
【図4】従来のプレス金型の構造を示す断面図である。
【図5】サイドメンバのオフセット縮みフランジ部に発生するシワを示す図であり、(a)はサイドメンバの全体斜視図、(b)はオフセット縮みフランジ部の斜視図、(c)はオフセット縮みフランジ部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明の好適な実施の形態について添付図面を用いて説明する。
【0029】
本実施の形態に係るプレス金型の構造を、図1,2により説明する。ここではプレス金型の一例として、図3に示したサイドメンバをプレス成形品として成形するプレス金型について説明する。
【0030】
図1は、本実施の形態に係るプレス金型の下型の構造を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は(a)のA−A線断面図である。また図2は、本発明に係るプレス金型の構造を示す断面図であり、(a)はパンチの押し込み時、(b)はパンチの下死点到達時、(c)はパンチの抜き取り時を示す図である。
【0031】
図1および図2に示すように、プレス金型1は、上型10にパンチ11を備え、下型20に、パンチ11の下面に対向すると共にパンチ11の上下動に連動して上下動するように設けられたパッド22とそのパッド22の両側に位置しパンチ11の両側面に対向する一対のダイ本体21,21を備える。上型10および下型20は、プレス成形品に合わせてパンチ11やパッド22などを交換することにより、様々な形状・寸法のプレス成形品を成形できる。
【0032】
下型20が備えるパッド22は、サイドメンバ5のオフセット部53を形成するためのオフセット成形部23を有する。また、オフセット成形部23の前後(図1(a),(b)では左右)には、前部ウェブ面51aを形成するための前部成形部22aと、後部ウェブ面51bを形成するための後部成形部22bとを有する。
【0033】
パンチ11,ダイ本体21,パッド22は、サイドメンバ5のサイズに合わせ、長手方向(図1(a),(b)では左右方向)の全長を4600〜11000mm程度とされる。なお図1は、プレス金型1のうち、シワ56の発生しやすいオフセット部53の近傍に対応する位置、すなわち、プレス金型1のオフセット成形部23の近傍を拡大して示した要部拡大図である。
【0034】
図2に示すように、このプレス金型1を用い、パンチ11で板材30をパッド22に当たるように押し込むことで、パンチ11の下面とパッド22の間でウェブ面51が形成されると共にパンチ11の両側面とダイ本体21の内側面との間でフランジ面52が形成される。さらに、パッド22のオフセット成形部23でオフセット部53が形成されることで、板材30から断面コ字状のサイドメンバ5が成形される。
【0035】
このプレス金型1では、オフセット縮みフランジ部55でのシワ56の発生を軽減するために、パンチ11とダイ本体21のクリアランスをオフセット成形部23近傍で板材30の板厚以下にして、プレス成形を行う。
【0036】
従来、シワ56の発生を軽減するために、オフセット成形部23近傍でのクリアランスを追い込んでプレス成形を行うと、フランジ面52の食い付きによりパンチ11やダイ本体21に負担がかかり、パンチ11が下死点から持ち上がらなくなる場合があることから、量産工法としては採用できないという課題があった。
【0037】
そこで本実施の形態に係るプレス金型1は、下型20のダイ本体21の内側面に、押し込み時にパンチ11の側面とのクリアランスを板材30の板厚以下に保つと共にパンチ11の上昇時にクリアランスを拡げるクリアランス追い込み・抜き取り手段40を設けたことを特徴とする。
【0038】
このクリアランス追い込み・抜き取り手段40の詳細について説明する。
【0039】
クリアランス追い込み・抜き取り手段40は、ダイ本体21の内側面に設けられたスライドプレート41と、そのスライドプレート41の内側面に上下移動可能に設けられ、押し込み時にパンチ11の側面とのクリアランスを板材30の板厚以下に保ち、パンチ11が下死点から持ち上げられたときにスライドプレート41に沿って上昇してクリアランスを拡げる可動インサート42からなる。
【0040】
スライドプレート41と可動インサート42は、ダイ本体21の内側面の一部を切り欠いて形成した凹溝43に収容される。本実施の形態では、凹溝43は、サイドメンバ5のオフセット部53に対応した位置、より具体的には、サイドメンバ5のオフセット部53と前部ウェブ面51aとの境界近傍に対応した位置に形成される。凹溝43の形成方法は特に限定されず、ダイ本体21にドリルによる切削で形成するような場合には、凹溝43の底部に図1(b)に示すような加工の逃がし溝44を形成することもできる。また、従来のプレス金型4に用いるダイインサート21aを取り外し(図4参照)、その位置にスライドプレート41および可動インサート42を収容することもできる。
【0041】
スライドプレート41は、断面視(図1(c)参照)で上端先細の逆クサビ形状を有し、その下端が凹溝43の底部よりも幅狭となるように形成される。
【0042】
可動インサート42は、断面視で下端先細のクサビ形状を有し、凹溝43の底部への着座時にその内側面とパンチ11の側面とのクリアランスが板材30の板厚以下となるように形成される。
【0043】
スライドプレート41と可動インサート42が接触する接触面には、下端から上端にかけて内側から外側に傾斜する傾斜スライド面45が形成される。この傾斜スライド面45に沿って可動インサート42が上昇することにより、クリアランスが拡がる。
【0044】
クリアランスの拡大量は、本実施の形態では傾斜スライド面45の傾斜角(傾斜スライド面45と凹溝43の底面とが成す外側の角)により調節する。例えば、オフセット量がより大きいサイドメンバ5を成形するような場合には、傾斜角を小さくしてクリアランスが大きく拡がるようにする。オフセット量が大きいサイドメンバ5では、シワがより発生し易いため、傾斜角を小さくすることで、オフセット成形部23の近傍でのクリアランスを更に追い込むことが可能となり、シワの発生を軽減することができる。
【0045】
スライドプレート41はダイ本体21の内側面に設けられる。より具体的には、スライドプレート41は凹溝43の側部に、ダイ本体21の外側面からの3本の固定ボルト41aにより固定される。また、可動インサート42は、スライドプレート41の内側面に設けられる。より具体的には、可動インサート42はスライドプレート41の内側面と接触させた状態で、ダイ本体21の外側からスライドプレート41を通してストリッパボルト42aで支持される。
【0046】
本実施の形態では、三角状に配置した3本の固定ボルト41aによりスライドプレート41を固定し、ダイ本体21の長手方向に並べた2本のストリッパボルト42aにより可動インサート42を支持している。ただし、本発明ではこれらボルト41a、42aの本数や配置は特に限定されない。
【0047】
ダイ本体21とスライドプレート41には、ストリッパボルト42aの上下方向の移動を許容する長穴42bが形成される。ストリッパボルト42aを長穴42bに挿通して可動インサート42を支持させることで、可動インサート42の上下方向の移動が長穴42bで許容される。また、ダイ本体21の外側面には、可動インサート42の凹溝43への着座持に可動インサート42の内側への移動を規制し、可動インサート42に上昇時に可動インサート42の外側への移動を許容するスプールリテーナが設定される。長穴42bの寸法は特に限定されないが、その長径については、ストリッパボルト42aおよび可動インサート42の移動量が小さくなりすぎないように、例えばストリッパボルト42aの胴径+10mm程度の長さとされる。この場合、ストリッパボルト42aおよび可動インサート42には、上下方向に対して10mm程度の移動が許容される。
【0048】
ダイ本体21の上面には、可動インサート42の上方向への移動量を規制するためのストッパ46が設けられる。このストッパ46は、ダイ本体21から可動インサート42にかけて上面に形成されたストッパ溝46a内に収容され、プレス成形時にダイ本体21の上面に載置する板材30(図2(a)参照)と干渉しないようにされる。
【0049】
ストッパ46は断面矩形状のL字板からなり、その下面がストッパ溝46aの底部から所定高さだけ離間され、L字の一方の端部がダイ本体21にボルトなどで固定される。
【0050】
次に、本実施の形態の作用を図2により説明する。
【0051】
まず図2(a)に示すように、一対のダイ本体21,21の上面にサイドメンバ5を成形するための板材30(鋼板)を載置し、その上方からパンチ11を下降させる。このとき、可動インサート42は自重で凹溝43の底部に着座しており、クリアランスは板材30の板厚以下となっている。
【0052】
下降してきたパンチ11により板材30をパッド22で挟みながら一対のダイ本体21,21の間に押し込むことで、板材30の両側部30s,30sが折り曲げられて起立する。その後、板材30をさらに押し込むことで、図2(b)に示すように、パンチ11の下面とパッドの上面との間でウェブ面51が、パンチ11の側面とダイ本体21の内側面との間でフランジ面52が形成される。また、オフセット成形部23(図1参照)でオフセット部53が形成され、サイドメンバ5が成形される。
【0053】
この間、可動インサート42は板材30を介してパンチ11の押し込み力を受け、その位置が凹溝43の底部で維持されるため、クリアランスは板材30の板厚以下で一定に保たれる。これにより、サイドメンバ5のオフセット縮みフランジ部55ではシワ56の発生が軽減される。
【0054】
パンチ11およびダイ本体21にはサイドメンバ5が食い付くが、図2(c)に示すように、パンチ11とパッド22を上昇させると、可動インサート42がパンチ11及びパッド22と共に上方向に持ち上がり、クリアランスが拡がる。これにより、パンチ11を下型20から円滑に抜き取ることが可能となり、また、パンチ11の抜き取りの際にパンチ11やダイ本体21への負担を軽減することが可能となる。
【0055】
パンチ11を下型20から抜き取ったとき、可動インサート42に対するサイドメンバ5の食い付きが無くなるので、可動インサート42は元の位置(凹溝43の底部)に自然に戻ることとなり、安定した品質で効率よくサイドメンバ5の量産を行うことが可能となる。
【0056】
以上要するに、本実施の形態に係るプレス金型1では、下型20に備えるダイ本体21の内側面に、押し込み時にパンチ11の側面とのクリアランスを板材の板厚以下で一定に保つと共に、パンチ11の上昇時(抜き取り時)にクリアランスを拡げるクリアランス追い込み・抜き取り手段40を設けるようにした。
【0057】
これにより、板材30から断面コ字状のサイドメンバ5を成形するに際し、サイドメンバ5のオフセット縮みフランジ部55でのシワ56の発生を軽減することができる。
【0058】
また、シワ56の発生を軽減することにより、プレス成形後のシワ56の修正を不要とすることができる。
【0059】
さらに、ダイ本体21およびパンチ11への負担を軽減できるので、クリアランスを板材30の板厚以下に追い込んでも、サイドメンバ5の量産を行うことが可能となる。
【0060】
なお、本発明は上記実施の形態に限られず、種々の変形が可能である。
【0061】
例えば、上記実施の形態では、サイドメンバ5をプレス成形するプレス金型1について説明したが、本発明は断面コ字状のプレス成形品を成形するプレス金型の全てに適用可能である。
【0062】
また、形状変化部54に対応する位置にクリアランス追い込み・抜き取り手段40をさらに設け、形状変化部54でのシワの軽減を図ることもできる。
【符号の説明】
【0063】
1 プレス金型
5 プレス成形品(サイドメンバ)
10 上型
11 パンチ
11a パンチインサート
11b 固定ボルト
20 下型
21 ダイ本体
22 パッド
30 板材
30s 側部
40 クリアランス追い込み・抜き取り手段
41 スライドプレート
41a 固定ボルト
42 可動インサート
42a ストリッパボルト
42b 長穴
43 凹溝
45 傾斜スライド面
51 ウェブ面
52 フランジ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型にパンチを備え、下型にパンチの下面に対向するパッドとそのパッドの両側に位置しパンチの両側面に対向する一対のダイ本体を備え、上記パンチで板材を上記パッドに当たるように押し込んで、パンチの下面とパッドの間でプレス成形品のウェブ面を形成すると共にパンチの両側面とダイ本体の内側面との間でフランジ面を形成し、板材から断面コ字状のプレス成形品を成形するプレス金型において、
上記ダイ本体の内側面に、押し込み時にパンチの側面とのクリアランスを板材の板厚以下に保つと共にパンチの上昇時にクリアランスを拡げるクリアランス追い込み・抜き取り手段を設けたことを特徴とするプレス金型。
【請求項2】
上記クリアランス追い込み・抜き取り手段は、ダイ本体の内側面に設けられたスライドプレートと、そのスライドプレートの内側面に上下移動可能に設けられ、押し込み時にパンチの側面とのクリアランスを板材の板厚以下に保ち、パンチが下死点から持ち上げられたときにスライドプレートに沿って上昇してクリアランスを拡げる可動インサートとからなる請求項1記載のプレス金型。
【請求項3】
上記スライドプレートと上記可動インサートとの接触面には、下端から上端にかけて内側から外側に傾斜する傾斜スライド面が形成される請求項2記載のプレス金型。
【請求項4】
上記可動インサートは、上記ダイ本体から上記スライドプレートを通してストリッパボルトで支持され、上記ダイ本体と上記スライドプレートには、上記ストリッパボルトの上下方向の移動を許容する長穴が形成される請求項2又は3記載のプレス金型。
【請求項5】
上記プレス成形品は、車両フレームを形成するサイドメンバからなり、そのサイドメンバが断面コ字状に形成されると共にキャビン側で水平面視外側に拡げられたオフセット部を有し、
ダイ本体に設けられる上記クリアランス追い込み・抜き取り手段は、上記オフセット部に対応した位置に設けられる請求項1〜4いずれか記載のプレス金型。
【請求項6】
上記ダイ本体には、上記オフセット部に対応した位置にクリアランス追い込み・抜き取り手段を収容する凹溝が形成される請求項5記載のプレス金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−49086(P2013−49086A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189476(P2011−189476)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(390001579)プレス工業株式会社 (173)
【Fターム(参考)】