説明

プレハブケーブルの製造方法

【課題】各緊張材ごとに緊張可能なプレハブケーブルを、簡易な設備で容易に製造できるプレハブケーブルの製造方法を提供する。
【解決手段】複数の緊張材がシース内に平行に配されたプレハブケーブル100を用意する。このプレハブケーブル100を一端側から順次固定トレイ160上に落とし込み、同トレイ上でプレハブケーブル一巻きにつき実質的に一回の捩れが同ケーブルに導入されるようにプレハブケーブル100を巻回する。ケーブルの施工時、ケーブル100の他端側から上方に引き出せば捩れは解かれて各緊張材が平行状態に復帰される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁やプレストレストコンクリート(PC)構造物などに利用されるプレハブケーブルの製造方法に関するものである。特に、複数の緊張材を有して、各緊張材ごとに緊張作業が可能なプレハブケーブルを製造することができるプレハブケーブルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
斜長橋用の斜ケーブル、吊橋用の吊りケーブル、プレストレストコンクリート構造物のプレストレス導入用ケーブルなどとして、マルチストランドのプレハブケーブルが用いられている(例えば非特許文献1)。
【0003】
一般に、プレハブケーブルとは、現場での施工時間を短縮するため、予め工場で必要本数の緊張材を所定長に切断して束ねたケーブルである。その具体例としては、緊張材となる複数本の樹脂被覆PC鋼より線を集束し、その集束体に充填材を沿わせてほぼ円形断面に成形して、さらにその外周に樹脂被覆のシースを設けた構造が挙げられる。このようなプレハブケーブルは、工場で製作して施工現場に搬入するため、ドラムに巻き取ったり、コイル状に巻き取ったりして出荷される。この巻き取り状態において、各緊張材がシース内で平行に配置されていれば、緊張材間で巻き取り径の内外径差が生じて緊張材のバラケにつながるため、バラケ防止対策として、複数の緊張材は捩り加工を施して集束体として構成されている。
【0004】
このプレハブケーブルの製造手順の一例を図5〜図7に基づいて説明する。まず、図5に示すように、サプライ装置200から緊張材10(樹脂被覆PC鋼より線)を繰り出し、送り出し装置210で下流の計尺装置220に送り込む。計尺装置220では、走行する緊張材10から所定の定尺長を計測する。この定尺長になるように、切断装置230で緊張材10を切断する。定尺長になった各緊張材10をパイプツイスター240内に挿入する。パイプツイスター240は、複数本の中空パイプが収束された構成である。
【0005】
次に、図6に示すように、パイプツイスター240内の緊張材を引き出して目板ツイスター250に挿入する。その状態で、パイプツイスター240と目板ツイスター250を回転させて複数の緊張材10に捩れを付与する。捩られた状態で送り出された緊張材10は、充填材サプライ260から繰り出された充填材20と共にボイス270に導入され、円形断面に成形される。続いて、得られた成形体にラッピング装置280でテープ巻きを施して、巻き取りドラム290に巻き取る。
【0006】
さらに、図7に示すように、この巻き取りドラム290をサプライとしてラッピングされた緊張材11をピンチローラ300で繰り出し、押出機310に導入して樹脂被覆を行ってシースを形成する。その後、シースを形成した緊張材12を水冷槽320に導入して被覆を硬化させ、さらにピンチローラ330を介して巻き取りドラム340に巻き取る。
【0007】
その他、プレハブ型以外のケーブルとして、現場施工型ケーブルも知られている。この現場施工型ケーブルは、シース管内に緊張材を1本ずつ挿入してその緊張と定着作業を行い、順次同様に緊張材の挿入・緊張・定着を繰り返し行って、シース管内に複数本の緊張材が平行に配された状態を構成する。そして、シース管内と緊張材とのクリアランスにセメントミルクを充填して防食を行う。
【0008】
【非特許文献1】住友電工スチールワイヤー株式会社製品カタログ「New PC Materials & engineering」P.9 2002年10月発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記の従来技術では、次のような問題があった。
【0010】
<従来のプレハブケーブル>
(1)各緊張材ごとに緊張作業を行うことができない。
各緊張材はシース内で捩り加工されているため、個々の緊張材が独立して長手方向へ伸長する自由度が少ない。そのため、緊張材ごとに緊張作業を行おうとしても、緊張力を緊張材の全長に伝達することができない。その結果、このプレハブケーブルの緊張作業は、全緊張材を一括して緊張できる大型のジャッキが必要になり、緊張作業が大掛かりなものとなる。
【0011】
(2)製造設備が大掛かりな上、製造作業も容易でなく、製品がコスト高になる。
複数の緊張材に捩れを付与するため、パイプツイスターなどの大掛かりな製造設備が必要になる。このパイプツイスターのパイプに緊張材を挿入する作業は、パイプと緊張材との摩擦に抗して行うため、大変手間のかかる作業である。また、製造過程では、緊張材の定尺切断、パイプツイスターによる捩り加工、シースの被覆の3つの工程を各々行わなければならず、設備負担が非常に大きい。さらに、捩り加工を付与するため、緊張材の長さは捩りを付与しない直線状の場合に比べて材料自体も長尺のものが必要になる。その結果、製品コストの上昇につながっている。
【0012】
(3)長尺のプレハブケーブルを得ることができない。
得られるプレハブケーブルは、パイプツイスターの長さの制約を受けるため、長尺のプレハブケーブルを得ることができない。パイプツイスターの長さを大きくとれば長尺のプレハブケーブルが得られるが、製造ラインが極めて長大になる上、パイプ内への緊張材の挿入作業も一層困難となり、実用的な製造手段とは言い難い。この挿入作業の実用性を考慮すれば、得られるプレハブケーブルの単位長は250〜300m程度が限界である。
【0013】
<現場施工型ケーブル>
(1)施工作業が極めて煩雑である。
現場施工型ケーブルは、各緊張材1本ごとに小型のジャッキで緊張作業を行うことが可能である。しかし、ケーブル自体を現場で組み立てるため、シース管内に1本ずつ緊張材を挿入して緊張と定着を繰り返さなければならず、非常に煩雑で時間のかかる作業を強いられて施工コストが高くなる。また、複数の緊張材をシース管に挿入して緊張・定着した後、通常はシース管内にセメントミルクの注入作業が必要であり、この作業負担も大きい。特に寒冷地での注入作業は、一層の負担増となる。
【0014】
(2)ケーブル径が大きくなり、風圧抵抗の観点から好ましくない。
現場でシース管内に緊張材を1本ずつ順次挿入し、後にセメントミルクの注入を行うため、この挿入や注入の容易性を考慮して緊張材とシース管との間に十分なクリアランスがとれるシース管を用意する必要がある。そのため、組み立てられたケーブル径(シース管外径)が大きくならざるを得ず、橋梁のケーブルに用いる場合など、風圧抵抗が大きくなり不利である。
【0015】
従って、本発明の主目的は、各緊張材ごとに緊張可能なプレハブケーブルを簡易な設備で容易に製造できるプレハブケーブルの製造方法を提供することにある。
【0016】
また、各緊張材ごとに緊張可能なプレハブケーブルを提供する。
【0017】
さらに、搬送時には巻き取り状態で緊張材に捩れが付与された状態とし、引き出し時には、緊張材の捩れが容易に解かれるプレハブケーブルの取り扱い方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、複数の緊張材がシース内で捩られないプレハブケーブルとし、このプレハブケーブルの出荷形態の形成方法と施工現場での取り扱い方法に工夫を施すことで上記の目的を達成する。
【0019】
本発明プレハブケーブルの製造方法は、複数のサプライドラムから各々緊張材を引き出して集合し平行に配する工程と、集合された緊張材の外側にシースを被覆してプレハブケーブルとする工程と、このプレハブケーブルを一端側から順次固定トレイ上に落とし込み、同トレイ上でプレハブケーブル一巻きにつき実質的に一回の捩れが同ケーブルに導入されるようにプレハブケーブルを巻回する工程とを有することを特徴とする。
【0020】
上記製造方法により、以下のプレハブケーブルが得られる。このプレハブケーブルは、緊張状態で両端部を構造物に固定して架設されるプレハブケーブルである。このケーブルは、複数の緊張材と、これら緊張材を集束して収納するシースとを有する。そして、各緊張材が長手方向に沿って平行である。
【0021】
ここで、緊張材には、裸PC鋼より線、メッキPC鋼より線、樹脂被覆PC鋼より線、アンボンドPC鋼より線のいずれかが好適に利用できる。メッキPC鋼より線は、例えば亜鉛メッキPC鋼より線が挙げられる。樹脂被覆PC鋼より線の樹脂被覆には、エポキシ、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエステルなどが利用できる。この樹脂被覆は、PC鋼より線の外周のみに形成されている場合の他、さらに各素線間に樹脂が充填されている場合がある。その他、素線の1本ごとに樹脂被覆を形成し、この樹脂被覆した素線を撚り合わせた構成でもよい。メッキや樹脂被覆を形成したPC鋼より線は高い防食性を得ることができる。アンボンドPC鋼より線は、シース部内にPC鋼より線を収納し、シース部とPC鋼より線との間にグリースなどを充填した構成である。
【0022】
各緊張材には、互いを識別する識別マークを有することが好ましい。上記ケーブルでは、緊張材がシース内で平行に配されているため、緊張材ごとに独立して緊張作業を行うことが可能である。その際、各緊張材を互いに識別できるように、何らかの識別マークを設けておけば、現在緊張すべき緊張材を間違えることがない。識別マークは、裸PC鋼より線やメッキPC鋼より線の場合、部分的に塗装を行って、マークの形状や色分けにより識別マークとすることができる。樹脂被覆PC鋼より線やアンボンドPC鋼より線の場合、樹脂被覆やシース部へのマークの刻印、印刷の他、樹脂被覆やシース部の色分けを行って識別マークとすることができる。
【0023】
このような緊張材は、シース内で平行に配される。このため、各々の緊張材が独立して長手方向に伸長しやすく、小型のジャッキで緊張材ごとに緊張することが可能である。このケーブルは、上記製造方法で述べたように、出荷から現場で利用される直前までは巻き取った状態とされ、その間、緊張材は捩られた状態となるが、後述するように、施工時には巻き取り状態から引き出すことで、緊張材の捩れが開放され、シース内で平行な状態に復帰される。従って、搬送時に緊張材間の巻き取り径の内外径差により緊張材のバラケが生じることも回避できる。
【0024】
また、プレハブケーブルのシース材料には、機械的強度と耐候性に優れる材料が好ましい。例えば、ポリエチレンなどポリオレフィン系樹脂が好適である。特に、カーボンブラックの添加により耐候性を改善できる。この添加量は2〜3重量%程度が好適である。
【0025】
さらに、必要に応じて、緊張材の外周に充填材を配して、緊張材と充填材の複合体の断面形状を円形にすることが好ましい。通常、緊張材を平行に配して集合した状態では、その断面形状が円形になっていない。充填材を緊張材と複合することで、複合体の断面形状を円形にすることができ、その複合体上へのシースの形成を円滑に行うことができる。
【0026】
上記本発明製造方法では、複数の緊張材を集合して平行に配し、それらの緊張材の外側にシースを形成することで、シース内で緊張材に捩れが付与されないプレハブケーブルを得ることができる。続いて、このプレハブケーブルを上方から下方に落とし込み、固定トレイ上に渦巻状に巻き付ける。固定トレイは、例えば垂直方向に巻き胴を有するものが挙げられる。この巻き胴の外周に、落とし込まれたケーブルの巻き始め端を沿わせて巻き付けることでターンを形成し、順次落とし込まれるケーブルを隣接するターンの外周側に巻き付け、渦巻状にケーブルを巻き取る。この巻取りにより、ケーブルが巻き取られた状態においては、シース内の緊張材に捩れが付与された状態を形成できる。この捩れは、ケーブルを落とし込んで巻き始め端を内周側とし、順次外周側に広がるように巻き付けてゆけば、自然に一巻き当たり実質的に一回の捩れが緊張材に付与されることで得られる。
【0027】
従って、この製造方法によれば、シース内に複数の緊張材が平行に配されたプレハブケーブルを製造し、その製造したケーブルを緊張材に捩れが付与された出荷形態に巻き取るまでを一連の製造ラインにて行うことができる。
【0028】
通常、上記巻取りにより、第1層目の渦巻状ケーブルが所定の外径に達したら、第2層目を第1層の上に積層して外周側から内周側に巻き付けてゆき、順次同様に3段目以降の巻き付けを行う。もちろん、一層ごとにケーブルを切断して、渦巻状のケーブルを多層に積層する巻き付け方でもよい。
【0029】
必要に応じて、緊張材を平行に配する工程とシースの被覆工程との間に充填材の複合工程を組み合わせてもよい。この複合工程により、緊張材と充填材の複合体の断面を実質的に円形に形成する。さらには、複合体にテープでラッピングを施す工程をシースの被覆工程前に追加してもよい。このラッピングにより、複合体がばらけることを抑制する。
【0030】
以下に、複数の緊張材と、これら緊張材を平行に配して収納するシースとを有する上記プレハブケーブルの取り扱い方法を提案する。このプレハブケーブル一巻きにつき一回の捩れが同ケーブルに導入されるようにケーブルの一端側から巻回されたプレハブケーブルを準備する。このようなプレハブケーブルは、例えば、上記本発明製造方法により得られる。その後、導入されたプレハブケーブルの捩れが戻るように、プレハブケーブルの他端側を上方に引き出す。
【0031】
本発明製造方法により得られたプレハブケーブルは、その搬送時、ケーブル一巻きにつき一回の捩れが付与された状態に巻き取られている。そのため、この巻き取られたケーブルを巻き取り終端側から上方に引き出せば、自然に捩れが解かれて、各緊張材がシース内で直線状に復帰される。従って、巻き取り状態において付与された緊張材の捩れを解放するのに格別の設備や方法を用いる必要がなく、その後、直ちに架設作業に移行することができる。
【発明の効果】
【0032】
〔A〕本発明プレハブケーブルの製造方法によれば、次の効果を奏することができる。
(1)各緊張材が平行に配されているため、パイプツイスターにより各緊張材に捩れを導入する必要がなく、製品の長さがパイプツイスターの長さに制約を受けないため長尺材の製造が可能である。
【0033】
(2)パイプツイスターなどの大掛かりな製造設備が不要で、簡易な設備にて安価にプレハブケーブルを製造できる。
【0034】
(3)プレハブケーブルを落とし込みながら渦巻状に巻き込んでいくだけで、プレハブケーブル一巻きにつき一回の捩れを導入でき、巻き付け径の内外径差に影響を受けない巻き取り状態とすることができる。
【0035】
(4)複数の緊張材の繰り出しからシースの被覆を経て、さらに出荷形態にプレハブケーブルを巻き取るまでを一連のラインで行うことができ、製造設備を大幅に簡略化することができる。
【0036】
〔B〕上記製造方法により得られるプレハブケーブルによれば、次の効果を奏することができる。
(1)各緊張材が平行に配されているため、緊張材ごとにジャッキで緊張することが可能であり、比較的小型のジャッキで緊張作業ができる。
【0037】
(2)各緊張材が平行であるため、パイプツイスターで捩れを導入したケーブルよりも各緊張材の長さを節約できる。
【0038】
(3)現場施工型ケーブルに比べて径を小さくでき、風抵抗の小さなケーブルとできる。
【0039】
(4)各緊張材に互いを識別する識別マークを設けることで、個々の緊張材ごとに緊張を行う場合、緊張すべき緊張材の誤認を回避することができる。
【0040】
〔C〕上記プレハブケーブルの取り扱い方法によれば、次の効果を奏することができる。
(1)プレハブケーブル一巻きにつき実質的に一回の捩れが導入されたプレハブケーブルを上方に引き出すだけで、導入されていた捩れを戻すことができ、現場施工時には各緊張材をシース内で平行な状態に復帰させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
(プレハブケーブルの構成)
緊張材ごとにジャッキで緊張することが可能なプレハブケーブルの構成を説明する。
【0042】
図1に示すように、このプレハブケーブル100は、平行に配される複数の緊張材10と、緊張材10の集合体に複合される充填材20と、緊張材10と充填材20の複合体の外周に形成されるシース30とを有する。
【0043】
各緊張材10には、樹脂被覆PC鋼より線を用いた。PC鋼より線は、JIS G 3536 SWPR7BNの7本素線撚り(中心線1本+側線6本)で、15.2mm径のPC鋼より線である。樹脂被覆はエポキシ樹脂を膜厚約0.6mmに粉体塗装して形成している。この被覆樹脂は、各素線間の空隙にも充填して、十分な防食特性が得られる構成とした。
【0044】
平行に集合されたこれらの緊張材10には、充填材20が複合される。この充填材20は、緊張材10と複合されることで、複合体の断面形状を円形に成形するためのものである。本例では、ポリプロピレンの線材を充填材20に用いた。
【0045】
この緊張材10と充填材20の複合体にはシース30が被覆される。つまり、PC鋼より線は、樹脂被覆とシースにより二重の防食が行われていることになる。シース30にはカーボンブラックを添加したポリエチレンを用いた。
【0046】
(プレハブケーブルの製造方法)
次に、上記プレハブケーブルの製造方法を図2に基づいて説明する。
【0047】
図2は図1に示すケーブルの製造ラインの概略図である。このラインは、上流側から順に、複数のサプライドラム110、集合加工器120、充填材サプライ130、押出機140、水冷槽150、固定トレイ160が配されている。
【0048】
サプライドラム110の各々には、緊張材10となる樹脂被覆PC鋼より線が巻き付けられており、各ドラム110から緊張材10が繰り出される。ドラム110の数は、集合される緊張材10の数に応じて適宜設定すればよい。一般的には、19本や27本の緊張材10が利用されることが多い。
【0049】
サプライドラム110から繰り出された各緊張材10は、集合加工器120に導入され、ここで集合される。続いて、充填材サプライ130に導入されて、充填材20が緊張材10の集合体の外周に複合される。サプライドラム110から充填材サプライ130までの間、集合された緊張材10には全く捩れが付与されておらず、各緊張材10は平行状態に保持されている。
【0050】
次に、緊張材10と充填材20の複合体は、押出機140に導入される。この押出機140では、ポリエチレン樹脂が複合体上に押し出し被覆される。押し出し被覆されたシースは水冷槽150に導入されて硬化し、プレハブケーブル100が構成される。
【0051】
得られたプレハブケーブル100は、固定トレイ160上に落とし込まれて、渦巻状に巻き取られ、出荷形態に形成される。図2では固定トレイ160を上から見た図を示している。この落とし込みによる巻き取り手順を図3に基づいてより詳しく説明する。
【0052】
水冷槽を経て得られたプレハブケーブル100は、一旦工場内の天井などに引き上げられ、その供給部170から床面に設置された固定トレイ160上に落とし込まれる。落とし込みは、単にケーブル100の始端を固定トレイ側に落としていくだけでよく、供給部170自体が旋回したり、固定トレイ160が回転する必要はない。
【0053】
固定トレイ160は、円盤型の底面161上の中心部に巻き胴162が垂直方向に設けられたものである。図示していないが、同トレイ160は底面161の外周から垂直方向に円筒状の外枠も有し、巻き胴162と外枠の間にケーブル100が巻き込まれる。
【0054】
落とし込まれたケーブル100は、まずその始端を底面161上で巻き胴162の所定位置に保持し、順次巻き胴162の外周に沿って巻き付けられてターンを形成する。この保持は適宜な器具で固定トレイ160に保持しておけばよい。落とし込まれたケーブル100を整列して巻き付けてゆく作業は、固定トレイの底面161上にいる作業員が行う。
【0055】
順次天井の供給部170からケーブル100を繰り出し、隣接するターンの外周に次のターンを形成して渦巻状にケーブル100を巻き付けてゆく。この巻き付け時、ケーブル100が巻き胴162を一巻きされる間にケーブル100には一回の捩れが加えられる。そのため、固定トレイ160に巻き付けられた状態のケーブル100は、一巻きにつき一回の捩れが緊張材に付与された状態となる。
【0056】
外周側に順次ターンが形成されてゆき、固定トレイ160の外枠付近にケーブルが達して第一層目の巻き付けが終わったら、落とし込まれたケーブルを第一層目のケーブル100上に積層し、今度は固定トレイ160の外周側から内周側に向けて同様にケーブル100の巻き付けを行う。以下、同様にケーブル100を渦巻状に巻き付けて積層することを繰り返し、固定トレイ160への巻き付けを終了する。巻き付けられたケーブル100は、固定トレイ160ごと出荷されて施工現場に搬入される。
【0057】
(プレハブケーブルの取り扱い方法)
次に、固定トレイに巻き付けられた状態で施工現場に搬入されたケーブルを引き出す際の取り扱い方法を図4に基づいて説明する。
【0058】
施工現場で固定トレイ160に巻き付けられたケーブル100を引き出す際、巻き付け時の終端側から引き出す。引き出されたケーブル100は上方に引き上げられ、適宜なガイド(図示せず)を介して施工現場に引き出される。この引き上げにより、渦巻状に巻き付けられていたケーブル100は、渦巻きが解かれて繰り出され、その際に緊張材に加えられていた捩れが戻される。その結果、引き出されたケーブル100は、シース内において緊張材が平行に配された状態に復帰されることになる。
【0059】
従って、このケーブル100の施工時には、各緊張材を独立して緊張し、架設作業を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
上述したプレハブケーブルは、斜長橋用の斜ケーブル、吊橋用の吊りケーブル、プレストレストコンクリート構造物のプレストレス導入用ケーブルなどの分野において利用できる。また、上述したプレハブケーブルの取り扱い方法は、上記橋梁や構造物の施工分野において利用することが期待される。さらに、本発明プレハブケーブルの製造方法は、上記プレハブケーブルの製造分野において利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施形態に示すプレハブケーブルの断面図である。
【図2】実施形態に示すプレハブケーブルの製造ラインの概略図である。
【図3】実施形態に示すプレハブケーブルを固定トレイに巻き付ける際の状態を示す説明図である。
【図4】実施形態に示すプレハブケーブルを固定トレイから引き出す際の状態を示す説明図である。
【図5】従来のプレハブケーブルにおける前段工程の説明図である。
【図6】従来のプレハブケーブルにおける中段工程の説明図である。
【図7】従来のプレハブケーブルにおける終段工程の説明図である。
【符号の説明】
【0062】
100 プレハブケーブル 10 緊張材 20 充填材 30 シース
110 サプライドラム 120 集合加工器 130 充填材サプライ
140 押出機 150 水冷槽 160 固定トレイ 161 底面 162 巻き胴
170 供給部
11 ラッピングされた緊張材 12 シースを形成した緊張材
200 サプライ装置 210 送り出し装置 220 計尺装置 230 切断装置
240 パイプツイスター 250 目板ツイスター 260 充填材サプライ
270 ボイス 280 ラッピング装置 290 巻き取りドラム
300 ピンチローラ 310 押出機 320 水冷槽 330 ピンチローラ
340 巻き取りドラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のサプライドラムから各々緊張材を引き出して集合し平行に配する工程と、
集合された緊張材の外側にシースを被覆してプレハブケーブルとする工程と、
このプレハブケーブルを一端側から順次固定トレイ上に落とし込み、同トレイ上でプレハブケーブル一巻きにつき実質的に一回の捩れが同ケーブルに導入されるようにプレハブケーブルを巻回する工程とを有することを特徴とするプレハブケーブルの製造方法。
【請求項2】
緊張材が、裸PC鋼より線、メッキPC鋼より線、樹脂被覆PC鋼より線、アンボンドPC鋼より線のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のプレハブケーブルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−102795(P2009−102795A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318787(P2008−318787)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【分割の表示】特願2004−126038(P2004−126038)の分割
【原出願日】平成16年4月21日(2004.4.21)
【出願人】(302061613)住友電工スチールワイヤー株式会社 (163)
【Fターム(参考)】