説明

プレバイオティックスとしての植物抽出物の使用、当該植物抽出物を含有する組成物及び食品

【課題】 プレバイオティックスとしての植物抽出物の使用及び当該植物抽出物を含有する組成物及び食品を提供する。
【解決手段】 本発明では、ヒトの健康増進に使用される栄養補充食品、機能性食品/飲料、食品添加物及び薬剤の製造目的のために、植物抽出物としてザクロ抽出物を様々な他の成分と併用する。他の成分はプロバイオティック成分であり、これは、抽出物の生物活性成分と相乗効果を発揮できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物抽出物(エキス)及びこれら抽出物の様々な組合せの使用に関する。これらの幾つかは植物抽出物の生物活性成分間の相乗作用を可能にするプロバイオティックも更に含有する。これらはヒューマン・ヘルスケアに使用されるべき栄養補助食品、機能性食品/飲料、食品添加物及び薬剤の製造に使用される。
【0002】
特に、本発明は、プレバイオティック成分としてプニカラギン(punicalagin)(POMANOX)(登録商標)に標準化されるザクロ抽出物の使用に関する。更に、本発明は、(プロバイオティック・バクテリアとプレバイオティック成分との特定混合物を含有する食品と定義される)シンバイオティック(symbiotic)の生成用プロバイオティックと併用される、プレバイオティック特性を有するザクロ抽出物に関する。本明細書における「食品の使用」という用語は、栄養補助食品、機能性食品/飲料、食品添加物又は薬剤も含むものとする。
【背景技術】
【0003】
成人の消化管は、約400〜500の異なるバクテリア種を有する約1014の微生物からなる叢(flora)を包含している。主要な細菌叢は厳密には、バクテロイド属(Bacteroides)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、ユーバクテリウム属(Eubactrium)及びペプトストレプトコッカス属(Peptostreptoccoccus)などの嫌気性バクテリアからなる。次ぎに主要な細菌叢はストレプトコッカス属(Streptoccoccus)及びラクトバチルス属(Lactobacillus)に属し、僅かにエンテロコッカス属(Enteroccoccus)、クロストリジウム属(Clostridium)及びイースト(酵母)に属するバクテリアからなる。これらの種の殆どが重要な役割を有するが、その他の種は例えば、クロストリジウム属のように潜在的病原性を有する。しかし、極く少数の菌は他のバクテリアと競合して、それらの増殖及びそれらの病原性を抑制する。
【0004】
体内の腸内細菌叢は様々な機能を果たす。その重要性は主に防御的である。なぜなら、これらの細菌叢は病原性微生物類のコロニー化を阻止し、かつ、耐性で非炎症性の免疫賦活剤の産生を誘発する免疫システムを調整するからである。更に、細菌叢代謝物は、炭水化物の有機酸への発酵のための消化管壁の重要なエネルギー源であり、また、ビタミンK及び幾つかのビタミンBなどのような特定のビタミン類を合成する。腸管輸送の調整のために微生物により果たされる役割は全て重要である。
【0005】
腸内細菌叢の安定性は、年齢、更年期及びストレスのような幾つかの生理的パラメータ、特定の疾患(特に、下痢、大腸炎及びクローン病など)及び薬剤(特に抗生物質及び栄養剤)の服用等に応じて変化する。この後者の事例の場合、プロバイオティック、プレバイオティック及びシンバイオティックの消耗を起こす。プロバイオティックは非病原性微生物であり、摂取すると宿主の健康及び生理に効果的作用を及ぼす。プロバイオティックの市販製品は主にビフィドバクテリウム属又はラクトバチルス属のバクテリアにより製造される。
【0006】
プレバイオティックとは、結腸内の1種又は限られた個数種のバクテリアの成長又は活性を刺激することにより宿主の健康を改善する可能性を有する非消化性食物成分のことである(非特許文献2参照)。プレバイオティック成分は次の3つの要件を満たさなければならないと考えられている。(i)胃内部で吸収又は加水分解されないこと;(ii)結腸内の1種又は限られた個数種の潜在的に有益なバクテリアのための選択的な基質であり、これらの成長又は代謝活性を刺激するものであること;及び(iii)前記の結果として、腸内細菌叢の組成をバクテリアに富んだ組成に変更可能であること(非特許文献1参照)。
【0007】
シンバイオティック食品とは、プロバイオティック・バクテリア及びプレバイオティック成分の特定の混合物を含有する食品のことである。
【0008】
様々な成分(特に、イヌリン(inulin)及びフラクトオリゴ糖(FOS)など)がプレバイオティックとして有効であることが示されている。これらの成分は腸内細菌叢の組成に顕著に作用し、腸内感染、呼吸器及びアトピー性皮膚炎の発病率を低下させ、また、結腸内におけるビフィズス菌個体群の増大を起こさせる。その他のオリゴ糖及び多糖類もプレバイオティックとして機能することができる。
【0009】
試験管内及び動物モデル及びヒトなどの生体内で発生されたプレバイオティック成分の消費の有益な健康効果を明らかにした文献が多数存在する(非特許文献9参照)。研究は、プレバイオティックの効果を例証することができるバイオマーカーの同定に成功した。これらのマーカーは、(i)腸内細菌叢及び腸内環境、特に有機酸産生の全体的代謝を変化させる、(ii)炎症性及び免疫グロブリンを査定する免疫システムを調整する、(iii)カルシウム、亜鉛又はマグネシウムなどのミネラル類の結腸内における吸収を増大させる、(iv)脂質代謝を調整し、コレステロールを低下させる、(v)結腸癌を予防する。最後の結腸癌の予防は最近特に注目されており、幾つかの文献にはプレバイオティックの結腸癌予防効果を例証する論文が掲載されている(非特許文献8及び非特許文献4参照)。
【0010】
時には、効果の一部は腸自体のレベルで起こることも有る。しかし、このことは、その効果をヒト組織の他の目標器官に伝達できないということを意味しない。例えば、食物繊維(例えば、可溶性繊維)は、腸自体において胆汁酸を隔離する作用を果たすことができる。従って、胆汁酸は再吸収されず、その結果、腸に送られた胆汁内で脂肪酸を一層合成するために、肝臓は内生コレステロールを使用することにより応答する。しかし、第2の作用機序は、可溶性繊維が消化管内で発酵を受けたとき、プロピオネートのような短鎖脂肪酸の生成が増大することを意味する。プロピオネートは門脈を通して結腸内に吸収され、肝臓内におけるHMGR(ヒドロキシメチルグルタリルCoAレダクターゼ)を阻害することが示された。
【0011】
特許文献1には、プレバイオティック食品成分としてT3炭水化物D−タガトースの使用が開示されている。この成分を消費すると、結腸内におけるブチレートの生成が誘発される。このブチレートは結腸癌に対する保護効果を有する。
【0012】
特許文献2には、炎症プロセスの軽減及び非特異性免疫パラメータの異常活性化の軽減のために、プレバイオティックからなる組成物を使用することが記載されている。このプレバイオティックは、グルコース、ガラクトース、キシロース、マルトース、スクロース、ラクトース、デンプン、キシラン、ヘミセルロース、イヌリン、ゴム(例えば、アラビアゴム)又はこれらの混合物から生成されたオリゴ糖からなる。
【0013】
特許文献3には、プレバイオティックを投与することにより消化管を介する吸収不良の症状を予防又は緩和する方法が記載されている。このようなプレバイオティックは例えば、イヌリン、変性加水分解イヌリン、フラクトオリゴ糖、ガラクトマンナン及びその水解物、アラビノガラクタン及びその水解物、トランスガラクトオリゴ糖、ラムノース、ペクチン及び加水分解ペクチン、難消化性デンプン及びその水解物、難消化性デキストリン及びその水解物、難消化性ポリデキストロース及びその水解物、ベータグルカン及びその水解物、及びこれらオリゴ糖と多糖類との組合せなどであることができる。
【0014】
特許文献4には、プロバイオティック、プレバイオティックとアルカリ性pH域で安定性を有し、かつ高尿素活性を有する微生物とからなる医薬組成物が記載されている。プレバイオティックオリゴ糖として、イヌリン、ラクチュロース及びその他の植物由来繊維などが例示されている。
【0015】
特許文献5には、フサスグリ、クランベリー及びザクロなどのような赤色果実及び赤色果実ジュースのプレバイオティック効果と、腸内細菌叢内の有益バクテリア(例えば、ビフィドバクテリウム属及びラクトバチルス属)の成長を促進させるため、及び腸内細菌叢内の有害バクテリア(例えば、クロストリジウム属及びバクテロイド属)の成長を阻害するためのプレバイオティックの使用が記載されている。しかし、特許文献5には、ベリー及びそのジュース内のどの化合物が有益バクテリアの成長を促進し、有害バクテリアの成長を阻害する特性をもたらしているか記載されていない。従って、これらの効果を促進させることができる化合物類にジュースを標準化することは提案されていない。
【0016】
特許文献5には、エラグタンニン(特にプニカラギン)及びエラグ酸(プニカラギンの加水分解により遊離させることができる)がヒト結腸微生物叢により部分的に代謝されることが記載されている。結腸微生物叢によるその代謝の結果として一連の化合物類が生成される。この化合物類は化学的にジベンゾピラノナス(dibenzopiranonas)であり、これらのうち生体内で最も重要なものはウロリチン(urolithin)A及ウロリチンBである。
【0017】
しかし、微生物叢のどの微生物がウロリチンの生成能力を有するのか全く不明である。従って、これらを同定し、癌の化学予防におけるウロリチンの効果が開示されているので、ウロリチン生成を増大させるためのプロバイオティックの使用について大きな関心が寄せられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第2198126号公報(GB2198126)
【特許文献2】スペイン特許出願公開第2278021(T3)号公報(ES2278021(T3))
【特許文献3】スペイン特許出願公開第2320988(T3)号公報(ES2320988(T3))
【特許文献4】国際公開パンフレット第02/091833号(WO02/091833)
【特許文献5】米国特許出願公開第2009/0022849号公報(US 2009/0022849A1)
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Collins MD, Gibson GR. Probiotics, prebiotics and symbiotic: approaches for the nutritional modulation of microbial ecology. 1999. American Journal of Clinical Nutrition 69: 1052s 1057s.
【非特許文献2】Gibson GR, Probert HM, Van Loo J, Rastall RA, Roberfroid MB Dietary modulation of the colonic microbiota: updating the concept of prebiotics. 2004. Nutrition Research Reviews 17: 259-275.
【非特許文献3】Kristensen M, Krogholma KS, Frederiksen H, Duus F, Cornett C, Bugel SH, Rasmussen SE. Improved synthesis methods of standards used for quantitative determination of total isothiocyanates from broccoli in human urine. 2007. Journal of Chromatography B, 852: 229 234.
【非特許文献4】Liong MT. Roles of Probiotics and Prebiotics in Colon Cancer Prevention: Postulated Mechanisms and In-vivo Evidence.2008. International Journal of Molecular Sciences 9(5):854-63.
【非特許文献5】Liu W, and Saint D.A. A new quantitative method of real time reverse transcription polymerase chain reaction assay based on simulation of polymerase chain reaction kinetics. 2002. Anal Biochem. 302(1): 52-9.
【非特許文献6】Menakshi B, Smita SZ, Shobha YB, Ameeta RK and Bimba NJ. 2008. Antidiabetic Indian Plants: a Good Source of Potent Amylase Inhibitors.
【非特許文献7】Pfaffl MW. A new mathematical model for relative quantification in real-time RT-PCR. 2001. Nucleic Acid Research 29(9):e45.
【非特許文献8】Pool-Zobel BL. Inulin-type fructans and reduction in colon cancer risk: review of experimental and human data. 2005. British Journal of Nutrition 93 Suppl 1:S73-90.
【非特許文献9】Venter CS. Prebiotics: an update. 2007. Journal of Family Ecology and Consumer Sciences 35: 17-25.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
従って、本発明の目的は、プレバイオティックスとして植物抽出物(特に、ザクロ抽出物)を使用すること、並びに当該植物抽出物を含有する組成物及び食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
ザクロ由来のプニカラギンは、心臓血管系疾患の予防、変性疾患予防、癌のリスク低減、精液減少又は精液劣化を患う個体の抗炎症性、抗寄生虫性、抗ウイルス性治療及び勃起不全治療などのような様々な側面において健康上の潜在的有益性を示した。
【0022】
プニカラギンを含有するザクロ抽出物は抗微生物活性を有する。驚くべきことに、本発明者らは、これらプニカラギンと同じ化合物の含量について標準化された植物抽出物がヒトの腸内細菌叢におけるある種の有益なバクテリアの成長を特異的に促進させる能力を有することを発見した。これらの事実は前掲の特許文献及び非特許文献の何れにも記載も示唆も教示もされていない。
【0023】
プニカラギンに富むザクロ抽出物(好ましくは、欧州特許出願公開第EP1967079A1号公報に記載された方法により得られたもの)は、腸内細菌叢の有益バクテリアの成長を促進し、腸内細菌叢の潜在的病原性バクテリアの成長を阻害するプレバイオティックとして機能することが本発明者らによって発見された。
【0024】
本発明の目的は、プニカラギン及び遊離エラグ酸を含有するザクロ抽出物のプレバイオティックとしての使用である。このザクロ抽出物におけるプニカラギンの含量は少なくとも2%(w/w)であり、遊離エラグ酸の含量は、プニカラギン/遊離エラグ酸の比率(%w/w)が10/1〜35/1の範囲内となるような量であり、更に、(没食子酸同等物として表される)総フェノール含量は少なくとも5%(w/w)であり、本発明におけるザクロ抽出物が当業者に公知のザクロジュースではないという事実を考慮に入れて、水への溶解度は少なくとも3%(w/w)(即ち、水1L当たりザクロ抽出物30g)である。
【0025】
前記のザクロ抽出物の組成物は次ぎの理由によりプレバイオティックとして使用するのに特に有用である。(i)ビフィドバクテリウム属及びラクトバチルス属の結腸バクテリアの成長を特異的に刺激することができるプニカラギンを高含量で含んでいること、及び(ii)プニカラギン/遊離エラグ酸の比率(%w/w)が10/1〜35/1の範囲内であるように、抽出物中に存在する遊離エラグ酸の含量が極めて低いことである。従来の幾つかの公知文献には、ザクロ抽出物を構成する様々な画分間で、遊離エラグ酸は微生物成長を一層阻害する分子の一つであると報告されている。従って、プレバイオティックとして開発されるべきザクロ抽出物におけるプニカラギン/遊離エラグ酸(%w/w)の現在の関係は出来るだけ高いことが望ましい。
【0026】
市販の最良のザクロジュースは、(没食子酸同等物として表される)総ポリフェノールを2400〜4000mg/L含有し、これは500〜2000mg/Lの範囲内の含量のプニカラギンを含有する。前記ジュースのBrix(ブリックス)は16度であり、引き続き約5倍にまで濃縮させることができる。従って、プニカラギン含量は10g/L(1%w/w)を越えることは無い。ザクロジュース内のプニカラギン/遊離エラグ酸比率は8/1を越えることは無く、通常の濃度中であっても、遊離エラグ酸のその後の遊離を伴うプニカラギンのような複合エラグタンニンにより被る加水分解のために低下していく。
【0027】
別の好ましいザクロ抽出物は欧州特許出願公開第EP1967079A1号公報に記載された方法により得られたものであり、このプニカラギン含量は少なくとも5%(w/w)、好ましくは少なくとも20%(w/w)、最も好ましくは少なくとも30%(w/w)であり、プニカラギン純度は少なくとも55%であり、遊離エラグ酸含量は、プニカラギン/遊離エラグ酸比率(%w/w)が10/1〜35/1の範囲内であるような量であり、(没食子酸同等物として表される)総フェノール含量は少なくとも10%(w/w)、好ましくは少なくとも20%(w/w)、最も好ましくは少なくとも50%(w/w)であり、水への溶解度は少なくとも3%(w/w)(即ち、水1L当たりザクロ抽出物30g)である。好ましくは、抽出物の残留有機溶剤含量は1ppb未満であり、最も好ましくは、0ppmである。
【0028】
プレバイオティックとして本発明で使用するのに好ましい別のザクロ抽出物は欧州特許出願公開第EP1967079A1号公報に記載された方法(この方法の或る段階において、プニカラギンに富む抽出物から得られたものであり、プニカラギンに富む抽出物はプニカラギンを加水分解出来る酵素を用いることにより得られる)により得られたものであり、プニカラギンを少なくとも1.5%(w/w)含有し、プニカラギン/遊離エラグ酸比率(%w/w)が10/1〜35/1の範囲内であることを特徴とする。
【0029】
精製工程で当業者により一般的に使用されるメタノール、エタノール、イソプロパノールなどのような有機溶剤が痕跡量と雖も殆ど存在しないことは、前記抽出物の使用にとって極めて重要なことである。
【0030】
前記ザクロ抽出物の別の利点は、原料(即ち、ザクロ果実)中に存在する農薬の残留物から精製されることである。従って、ジウロン(diuron)、ターブチラジン(terbuthylazine)、シマジン(simazine)、α−エンドスルファン(α-endosulfan)及びβ−エンドスルファンなどのような殺虫剤、除草剤、防黴剤、殺鼠剤などの潜在的有毒化学物質が原料中に存在し得る。
【0031】
これら全ての農薬が吸着樹脂と相互作用可能な分子構造(例えば、トリアジン核)を有し、その後、有機溶剤を使用したときに、抽出物のその他の成分と共に樹脂から溶出される。従って、吸着樹脂を使用し、その後、有機溶剤で溶出させることに基づくザクロからの抽出物の製造方法は、残留農薬含有原料に対して厳格な品質管理を実施しなければならない。なぜなら、吸着樹脂はこれら農薬のトラップとして機能することができ、これら農薬を樹脂上で濃縮し、その後、ザクロ抽出物内に存在するプニカラギンを回収するために有機溶剤が使用されると、これら農薬は吸着樹脂から溶出されるからである。
【0032】
欧州特許出願公開第EP1967079A1号公報に記載された方法により得られたプニカラギンに富むザクロ抽出物の製造において前記問題は解決される。すなわち、水又は塩基性化された水溶液の単一使用により、かつ、有機溶剤の使用無しに、前記抽出物の活性成分を溶出させることができる非イオン吸着樹脂を特別に選択することにより前記問題は解決される。
【0033】
更に、別の重要なポイントも検討しなければならない。公知文献の何人かの著者は、ザクロ抽出物を得るためにアルコール類を使用すると、或る有毒アルカロイド(例えば、ペレティエリン(pelletierine)、イソペレティエリン(isopelletierine)及びプソイドペレティエリン(pseudopelletierine)など)が存在することを発見したが、プニカラギンに富むザクロ抽出物を欧州特許出願公開第EP1967079A1号公報に記載された方法により得たときに起きるように、水だけを用いてザクロ抽出物を製造すると、アルカロイドは検出されない。
【0034】
欧州特許出願公開第EP1967079A1号公報に記載された方法により得られたプニカラギンに富むザクロ抽出物はアルカロイドを全く含有しない。なぜなら、抽出物製造の如何なる工程においても有機溶剤を全く使用しないからである。
【0035】
特に、ザクロ抽出物はビフィドバクテリウム属及びラクトバチルス属のバクテリアの成長を促進し、クロストリジウム属及びバクテロイド属のバクテリアの成長を阻害する。
【0036】
驚くべきことに、ザクロ抽出物は従来のプレバイオティック(例えば、有効量として1日に4〜20g必要なイヌリン、FOSなど)よりも一層少ない投与量(1日当たり抽出物1g未満)で有効に作用し、高い特異性を示しながら、副作用(例えば、腹部膨満、鼓脹、下痢など)は殆ど無い。従って、この事実は、これら抽出物に基づくプレバイオティック組成物の追加的利点である。
【0037】
本発明によれば、プニカラギンに富むザクロ抽出物を食品母材に添合することもできる。これにより、腸内細菌叢内の有益バクテリアの成長を促進し、腸内細菌叢内の潜在的病原性バクテリアの成長を阻止するプレバイオティックとして作用する食品を製造することができる。下記の関連実施例で説明するように、本発明の抽出物は食品の官能特性を変化させない。また、幾つかの食品母材ではアスコルビン酸やクエン酸などが食品添加物として一般的に使用されるが、プニカラギンは、様々な食品母材においても適当な安定性を有する。
【0038】
好ましい食品母材のうちでも、特に果実清涼飲料が挙げられる。この果実清涼飲料は少なくともグレープジュースを12%含有し、これ単独であるか又はその他の果実ジュースを含むこともでき、アスコルビン酸を0ppm〜9000ppmとクエン酸を0%〜5%含有し、更に、ザクロ抽出物を50ppm〜10000ppm含有する。
【0039】
プニカラギンのようなザクロ抽出物の生物活性成分の安定性の驚くべき改善作用について、アスコルビン酸及びクエン酸が適当な割合で添加された果実飲料にプニカラギンを添合した場合と、前記添加剤を添加しない場合とを比較するため、欧州特許出願公開第EP1967079A1号公報に記載された方法により得られたザクロ抽出物の安定性に対するアスコルビン酸及びクエン酸の添加効果を研究した。この研究のために、噴霧乾燥により粉末状に乾燥させる直前の工程で、濃縮果実汁の形状のザクロ抽出物にアスコルビン酸(0.01%〜5%)とクエン酸(0.1%〜10%)を添加したサンプルを使用した。結果は下記の実施例に示すが、その結果に対して驚異的関心を払うべきである。クエン酸を0.5%(w/w)〜10%(w/w)とアスコルビン酸を0.05%〜5%(p/p)含有するザクロ抽出物粉末も本発明の対象物のうちの一つである。
【0040】
更に、プレバイオティック特性を有する抽出物の食品への添合は当該食品の酸化安定性も著しく改善する。従って、本発明では、プレバイオティック特性を有する抗酸化食品添加剤の製造のためにこれら抽出物を使用することも特許請求する。
【0041】
本発明によるプニカラギンに富むザクロ抽出物は、化学合成により得られた他の食品添加物の代替用食品添加物として使用できる。従来の化学合成食品添加物はヒトの健康に対して潜在的有害性をもたらす。このような化学合成食品添加物は例えば、抗酸化剤{例えば、BHA(ブチル化ヒドロキシアニソール)、BHT(ブチル化ヒドロキシトルエン)及びTBHQ(ターシャリーブチル・ヒドロキノン)など}及び保存剤(例えば、安息香酸、ベンゾエート及びこれらの誘導体)などである。本発明によるプニカラギンに富むザクロ抽出物は、タートランジン及びエリスロシンなどのような着色剤の代替物としても使用できる。前記のように、本発明のザクロ抽出物は抗酸化作用及び抗菌作用を有するが、そのプレバイオティック作用についても具体的に説明し、例証する。これらの特性の組合せにより、驚くべきことに本発明のザクロ抽出物は生物活性食品添加物として使用することができる。従って、食品の製造及び保存中は、前記のような化学合成添加物の代わりに天然食品添加物として第1の機能を発揮し、そして、食品が摂取されると、第2のレベルにおいてそのプレバイオティック機能を発揮し、その結果、ヒトの健康に有益な効果を与える。
【0042】
本発明によれば、シンバイオティックとして機能する食品を製造するために、食品母材中にプロバイオティックバクテリア又はプロバイオティックバクテリア混合物と共に、プニカラギンに富むザクロ抽出物を添合することができる。これらシンバイオティックのうち、プレバイオティックがプロバイオティック成分を選択的に味方する事例が発見された。しかし、本発明によれば、ヒトの健康に有益な効果を発揮するために、プレバイオティック成分とプロバイオティック成分とが相乗効果を示すこともある。下記の関連実施例で説明するように、プレバイオティックとプロバイオティック抽出物とを添合しても、適当な条件下で貯蔵されたとき、プニカラギンの安定性は改変されない。
【0043】
シンバイオティックに使用されるプロバイオティック製品はラクトバチルス属又はビフィドバクテリウム属の菌株であることが好ましい。好ましくは、L(+)乳酸の酸だけを産生する菌株を使用する。ラクトバチルス属の菌株の好ましい具体例は、ラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)及びラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)などである。特に好ましい菌株は、ラクトバチルス・ラムノーサスATCC53103、ラクトバチルス・ラムノーサスCGMCC13724、ラクトバチルス・ロイテリATCC55730、ラクトバチルス・パラカゼイCNCM1−2116及びラクトバチルス・カゼイDN114−001である。ビフィドバクテリウム属の菌株の好ましい具体例は、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)などである。特に好ましい菌株は、ビフィドバクテリウム・アニマリスDN−173010、ビフィドバクテリウム・ラクティス(デンマーク所在のクリスチャン・ハンセン社からBB−12の商品名で市販されている)及びビフィドバクテリウム・ロングムATCC BAA−999(日本所在の森永乳業株式会社からBB536の商品名で市販されている)である。
【0044】
本発明のシンバイオティック製品は、シンバイオティック1g当たりプロバイオティックバクテリアを10〜1010CFUとプニカラギンに富むザクロ抽出物を0.001%〜1%含有していなければならない。
【0045】
選択されたプロバイオティック菌株は、シンバイオティック製品に添合するために、従来から使用されている任意の適当な方法で培養することができる。別法として、プロバイオティック菌株は、シンバイオティック製品に添合するのに適した形状に予め製造された状態で、クリスチャン・ハンセン社及び森永乳業株式会社のような特定の供給者から購入することもできる。
【0046】
従って、本発明は、プレバイオティック成分に付随する有益な効果を促進し、かつ、腸内細菌叢を変化させるために、プニカラギンに富むザクロ抽出物の使用及び当該ザクロ抽出物から製造された製品(これら抽出物を豊富に含む食品及び飲料、栄養補助食品、シンバイオティック、及びプレバイオティック特性を有する抗酸化性食品添加物など)の使用に関する。これらの有益な効果は、腸内輸送の調節、免疫システムの調整、ミネラル吸収、脂質代謝の調整及び癌予防などである。
【0047】
本発明の別の目的は、これら新規なプレバイオティック、すなわち、プニカラギンに富むザクロ抽出物の使用及びこれら抽出物を含む経口組成物の使用であり、これらは、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に付随するリスクファクターを軽減し、また、その結果として、最も顕著なものは、アテローム性動脈硬化症、心臓血管系疾患、高コレステロール症及び2型糖尿病のリスクファクターを軽減する。
【0048】
メタボリックシンドロームは、インスリン抵抗性及び腹部肥満に付随する一連の代謝及び心臓血管系疾患と呼ばれている。6人のヨーロッパ人のうちの一人或いは幾つかの欧州諸国の国民の3人のうちの一人はメタボリックシンドロームを有し、2型糖尿病、心臓血管系疾患のリスクが非常に高まり、早発的死亡を引き起こし得る疾患を有する。年齢が上がるにつれて過体重及び肥満が急速に増大することは、このメタボリックシンドロームの高い有病率を証明している。メタボリックシンドロームのファクターには、メタボリック(肥満、2型糖尿病、脂質異常症、過血糖症)と非メタボリック(高血圧、炎症、プロトロンビン)がある。ヒトが下記の症状のうちの3個以上を有する場合、メタボリックシンドロームと診断される。
(a)腹部肥満(ウエスト周囲長:男性の場合102cm超、女性の場合88cm超)、
(b)高レベルのトリグリセリド値(150mg/dL超)、
(c)低レベルのHDLコレステロール値(40mg/dL未満)、
(d)高血圧(130mmHg/85mmHg超)、
(e)空腹時過血糖(100mg/dL超)。
【0049】
2型糖尿病の家族歴を有する肥満個体では、極めて一般的に、高い末梢インスリン抵抗性と食後高インスリン血症の存在が認められる。更に、炎症のバイオマーカーは心臓血管系疾患の予測変数であり、例えば、高血清C−反応性タンパク(CRP)、インターロイキン6(IL−6)、腫瘍壊死因子α(TNF−α)及びレプチン(これらはメタボリックシンドロームを構成する変化と高い相関性を有する)及び低レベルのアジポネクチンとインターロイキン−10(IL−10)などである。
【0050】
メタボリックシンドロームについて学ぶべきことは更に多数存在するが、我々が知るべきことは、メタボリックシンドロームを有する人々が心臓発作又は冠動脈疾患の高いリスクを有することである。
【0051】
本発明によれば、ザクロ抽出物を食物繊維と併用することにより、ヒトの組織において相乗的に作用することができるプレバイオティック組成物を得ることができる。例えば、ザクロ抽出物と食物繊維を併用することにより、ザクロ抽出物の化合物類の生物活性により高コレステロール血症を軽減できるばかりか、腸内で発酵を受ける食物繊維(例えば、可溶性繊維)はプロピオネートなどのような短鎖脂肪酸の生成を高めることができる。プロピオネートは門脈を介して結腸内に吸収され、HMG−CoA還元酵素(HMGR)を阻害する。
【0052】
本発明によれば、プレバイオティック特性を有するプニカラギンに標準化されるザクロ抽出物をプロバイオティックバクテリア(シンバイオティック)の特定の混合物と併用することができる。このような組合せは、ヒトの結腸内腔におけるウロリチン産生を高めるのに有用である。従って、発癌予防における用途(例えば、癌のリスク軽減、癌の成長阻止又は再発防止のための使用)を考慮すれば、確かに大いなる関心が寄せられる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1A】本発明の実施例1に記載した方法に従って行われた試験におけるビフィズス菌の成長を示す特性図である。座標軸の縦軸には、LOG10/mlとして表示されるビフィズス菌の濃度が示されている。横軸は培養時間(0〜48時間)を示す。特性図内に示された数字は0時間(初期濃度:4.9)と48時間(対照群と異なる濃度におけるザクロ抽出物の3群に関する異なる数値)におけるビフィズス菌の濃度に対応する。
【図2】実施例3に記載された結果を示す特性図である。試験マウスの糞便中の バクテリア総数に対して%で表示されたビフィドバクテリウム属バクテリアの定量値を示す。
【図3A】ザクロ抽出物から製造されたパイナップルジュース飲料中の果実割合(%)と製品製造中のプニカラギン喪失率との関係を示す特性図である。
【図3B】ザクロ抽出物を用いて製造されたパイナップルジュース飲料(パイナップル50%含有)に添合されたクエン酸割合(%)と製品製造中のプニカラギン喪失率との関係を示す特性図である。
【図3C】ザクロ抽出物を用いて製造されたパイナップルジュース飲料(パイナップル20%と種々の濃度のクエン酸含有)に添合されたアスコルビン酸割合(%)と製品製造中のプニカラギン喪失率との関係を示す特性図である。
【図4A】100%リンゴ飲料の官能分析中に査定者により為された、相違性試験及び好み性試験のそれぞれについて実施例7に記載された結果を示すグラフ図である。
【図4B】100%リンゴ飲料の官能分析中に査定者により為された、相違性試験及び好み性試験のそれぞれについて実施例7に記載された結果を示すグラフ図である。
【図5A】パイナップル/プラム飲料の官能分析中に査定者により為された、相違性試験及び好み性試験のそれぞれについて実施例9に記載された結果を示すグラフ図である。
【図5B】パイナップル/プラム飲料の官能分析中に査定者により為された、相違性試験及び好み性試験のそれぞれについて実施例9に記載された結果を示すグラフ図である。
【図5C】ピーチ/リンゴ飲料の官能分析中に査定者により為された、相違性試験及び好み性試験のそれぞれについて実施例9に記載された結果を示すグラフ図である。
【図5D】ピーチ/リンゴ飲料の官能分析中に査定者により為された、相違性試験及び好み性試験のそれぞれについて実施例9に記載された結果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら詳述する。
【実施例1】
【0055】
ザクロ抽出物のビフィズス菌増殖作用
スキムミルク、ビフィズス菌10/g含有市販ヨーグルト0.4g及びザクロ抽出物滅菌水溶液を含有する最終容量50mlの滅菌ファルコン(Falcon)チユーブを準備した。ザクロ抽出物最終濃度が0.5%、0.1%、0.05%及び0%(%p/v)の各サンプルを作成した。このチユーブを30℃で48時間培養した。定量は各サンプルについて2回行った。
【0056】
各ファルコンチユーブ内のビフィズス菌の量は、SYBRグリーンを用いるリアルタイム定量PCRにより、かつ、オリゴヌクレオチドBidF BidR(表1参照)を用いて評価した。ビフィズス菌の絶対定量化は予め作成しておいた回帰線:y=−0.3792x+17.62(式中、yはビフィズス菌の個数のLog10値であり、xは定量PCR反応のCt値である)により算定した。
【0057】
3種類の試験濃度のザクロ抽出物の存在は対照と比較してビフィズス菌の成長を促進した(図1A参照)。
【0058】
下記の表1に、前記各サンプルにおけるバクテリアの定量化について、SYBRグリーンを用いるリアルタイムPCR反応で使用したオリゴヌクレオチドの配列を示す。
表1
オリゴヌクレオチド 配列 (5’−3’) ターゲット AllBF TCCTACGGGAGGCAGCAG 全バクテリア
AllBR GGACTACCAGGGTATCTAATCCTG 全バクテリア
LacF TGGATGCCTTGGCACTAGGA ラクトバチルス属
LacR AAATCTCCGGATCAAAGCTTACTTA ラクトバチルス属
BidF GATTCTGGCTCAGGATGAACG ビフィドバクテリウム属
BidR GATAGGACGCGACCCCAT ビフィドバクテリウム属
CperF CGCATAACGTTGAAAGATGG ウェルシュ菌
CperR CCTTGGTAGGCCGTTACCC ウェルシュ菌
BacF ATCATGAGTTCACATGTCCG バクテロイド属
BacR CCTGCCTCTACTGTACTC バクテロイド属
【実施例2】
【0059】
動物モデルにおけるザクロ抽出物のプレバイオティック効果
各群10匹のマウスを3群準備し、これらについて実験を行った。マウスには市販の餌と、マウス1匹当たり日用量12.8gのザクロ抽出物(マウスの体重1kg当たりザクロ抽出物320mgの1日摂取量に相当する)を20日間与えた(第2群)。また、第1群(対照群)にはザクロ抽出物を与えず前記と同じ餌だけを20日間与えた。この期間経過後、各群の糞便を集め、この糞便0.2gから細菌性DNAを単離した。
【0060】
定量的リアルタイムPCR法を用いて各糞便中の有益バクテリアの量を査定した。バクテリア量は次のように表される。ビフィドバクテリウム属のバクテリア/全バクテリア(%)。オリゴヌクレオチドは前記表1のBidFとBidRを使用した。相対的定量化は前掲の非特許文献5に記載された方法を用いて各測定を3回実施することにより行った。
【0061】
測定結果は、ザクロ抽出物の投与がビフィドバクテリウム属のバクテリアの成長促進に対して明確な効果を有することを示している。測定結果を添付図面の図2に示す。
【0062】
ビフィドバクテリウム属/全バクテリア(%)
第1群(対照群) 0.0248±0.0021
第2群(ザクロ抽出物投与群) 0.1069±0.0341
【0063】
第2群は第1群(対照群)に較べて有意差(p<0.05)が存在する。
【実施例3】
【0064】
ヒト介在研究に対するザクロ抽出物のプレバイオティック効果:腸内細菌叢の変化
28才から58才までの年齢の6人の健康な個体について定量を行った。各個体は昼食時にザクロ抽出物575mg含有カプセルを毎日服用した。篤志被験者にはプレバイオティック能力製品(例えば、フラクトオリゴ糖、イヌリンなど)、抗生物質、下剤及び特にプレバイオティック性を有する製品(例えば、低温滅菌していないヨーグルト、発酵乳飲料など)を摂取しないように申し付けた。6人の篤志被験者は介在研究の前処置フェーズの14日前から、彼らの食事において前記制約を遵守し始め、同じ制約を処置の28日間中、継続し続けた。この処置の間中、篤志被験者は1日に1個のザクロ抽出物カプセルを摂取した。
【0065】
0日目(ザクロ抽出物の投与前の14日間経過後)とザクロ抽出物投与28日経過後の時点で、各個体から糞便サンプルを採取した。大便から細菌性DNAを単離した。
【0066】
糞便中の有益バクテリアの量を定量リアルタイムPCR法を用いて査定した。有益バクテリア量は次のようにして表される。ラクトバチルス属バクテリア/全バクテリア(%)又はビフィドバクテリウム属バクテリア/全バクテリア(%)。オリゴヌクレオチドとしてLacF、LacR、BidF及びBidRを使用した(表1参照)。更に、大便中の潜在的病原性バクテリアの量も査定した。潜在的病原性バクテリア量は次のようにして表される。ウェルシュ菌/全バクテリア(%)又はバクテロイド属バクテリア/全バクテリア(%)。オリゴヌクレオチドとして、CperF、CperR、BacF及びBacRを使用した(表1参照)。相対的定量化は前掲の非特許文献5に記載された方法を用いて各測定を3回実施することにより行った。
【0067】
結果を下記に示す。
(A)有益バクテリア
ラクトバチルス属:6人の個体のうち5人(83.3%)は、ザクロ抽出物の投与28日後のラクトバチルス属バクテリアの百分率に有意差(p<0.05,σp<0.01ケース・バイ・ケース)が認められた。下記の表2に、本実施例におけるリアルタイム定量PCR法により定量化された、実験中の個体の大便中の全バクテリアに対するラクトバチルス属バクテリアの量(%で表示されている)を示す。
表2
被験者番号 ラクトバチルス(t=0) ラクトバチルス(t=28) 有意差
1 0.0287±0.0063 0.1741±0.0899 p<0.05
2 0.0716±0.0398 0.5755±0.0691 p<0.001
3 0.2130±0.0572 0.0816±0.0059 --
4 0.0576±0.0185 0.1443±0.0347 p<0.05
5 0.0635±0.0185 0.2095±0.0777 p<0.05
6 0.0127±0.0044 0.2019±0.0082 p<0.001
【0068】

ビフィドバクテリウム属:6人の個体のうち5人(83.3%)は、ザクロ抽出物の投与28日後のビフィドバクテリウム属バクテリアの百分率に有意差(p<0.05,σp<0.01ケース・バイ・ケース)が認められた。下記の表3に、本実施例におけるリアルタイム定量PCR法により定量化された、実験中の個体の大便中の全バクテリアに対するビフィドバクテリウム属バクテリアの量(%で表示されている)を示す。
表3
被験者 ビフィドバクテリウム ビフィドバクテリウム
番 号 (t=0) (t=28) 有意差
1 0.2191±0.0355 0.1522±0.0116 --
2 0.1043±0.0056 0.4718±0.0177 p<0.001
3 0.3004±0.0513 0.4459±0.0342 p<0.05
4 0.4196±0.0256 1.1832±0.1177 p<0.001
5 0.1060±0.0044 0.2317±0.0504 p<0.05
6 0.8991±0.0461 1.2721±0.0576 p<0.001
【0069】
(B)病原性バクテリア
ウェルシュ菌:6人の個体のうち5人(83.3%)は、ザクロ抽出物の投与28日後のこの属のバクテリアの百分率に有意な減少(p<0.05,σp<0.01ケース・バイ・ケース)が認められた。
バクテロイド属:6人の個体のうち4人(66.7%)は、ザクロ抽出物の投与28日後のこの属のバクテリアの百分率に有意な減少(p<0.05,σp<0.01ケース・バイ・ケース)が認められた。
【実施例4】
【0070】
ヒトモデルに対するザクロ抽出物のプレバイオティック効果:腸内輸送の調整
実施例3に記載した6人の個体における試験期間中に、各個体に対して、ザクロ抽出物の投与中の彼らの消化器系の健康状態について問診した。
全ての個体は、処置期間中に消化器系の問題が全く起きなかったと回答した。
5人の個体(83.3%)は、腸内輸送について彼らの通常の状態と異なる規則正しさが得られたと回答した。残りの個体は、彼ら自身が既に予定された彼らの習慣について何の変化も認められなかったと回答した。
【実施例5】
【0071】
ザクロ抽出物を有するジュース又は果実ネクタープレバイオティックの製造、製造後及び継続的貯蔵後の食品母材中のザクロ抽出物の安定性の評価
欧州特許出願公開第EP1967079A1号公報に記載された方法により得られたザクロ抽出物(プニカラギン含量61.12%)のサンプルを使用し、ザクロ抽出物624mg/食品母材1kg(プニカラギン384.1mg/食品母材1kg)の濃度の前記抽出物を含有するパイナップルジュース及びリンゴジュースとピーチネクターを製造した。使用した原料は次の通りである。パイナップルジュース濃縮液(60゜BRIX)、リンゴジュース濃縮液(70゜BRIX)及びピーチピューレ。下記の処方に従って、3種類の食品母材の原型(プロトタイプ)、対照物(抽出物無し)及びザクロ抽出物を含有する及び含有しないプレバイオティック(ザクロ抽出物を含有する場合、抽出物を624ppm含有する)を製造した。
【0072】
パイナップルジュース
組 成 g/kg
パイナップル濃縮液(60゜BRIX) 197.89 19.79
水 802.11 80.21

果実割合 100%
゜BRIX 12.8%
密度 1.05174g/ml
酸度 0.600g.c.a./100ml

ザクロ抽出物有り及び無し
ザクロ抽出物有り:624mg/L

゜Bx pH/t 酸度(g.c.a./100ml)
抽出物無し 12.8 3.66/27.2 0.592
抽出物有り 12.8 3.66/24.6 0.610
【0073】
リンゴジュース
組 成 g/kg
リンゴ濃縮液(70゜BRIX) 161.04 16.10
水 838.96 83.89

果実割合 100%
゜BRIX 11.2%
密度 1.04502g/ml
酸度 0.350g.c.a./100ml

゜Bx pH/t 酸度(g.c.a./100ml)
抽出物無し 11.4 3.72/19.5 0.304
抽出物有り 11.5 3.73/18.4 0.310
(624mg/L)
【0074】
ピーチネクター
組 成 g/kg
ピーチピューレ 404.6 40.46
クエン酸 2.0 0.20
砂糖 62.2 6.22
水 576.2 57.60

果実割合 55.0%
゜BRIX 11.2%
密度 1.04502g/ml
酸度 0.480g.c.a./100ml

゜Bx pH/t 酸度(g.c.a./100ml)
抽出物無し 11.3 3.52/23.4 0.467
抽出物有り 11.4 3.53/25.0 0.477
(624mg/L)
【0075】
6個の原型を100℃で15秒間低温滅菌し、そして、85〜87℃の温度で硝子容器内に無菌的に充填包装した。この原型を含有する6個の硝子瓶を水中に浸漬して急速冷却し、次いで、ジュース/ネクターの3タイプに添合されたザクロ抽出物の喪失率を、HPLC(高速液体クロマトグラフ)法を用いてプニカラギン含量を決定することにより測定した。結果を下記に示す。

ザクロ抽出物を含有するジュース/ネクター ザクロ抽出物喪失率(%)
パイナップルジュース 43.2%(156mgプニカラギン)
リンゴジュース 1.1%(4.3mgプニカラギン)
ピーチネクター 39.8%(152mgプニカラギン)
【0076】
第1の結論は、ザクロ抽出物は食品母材に応じた安定性を有するということである。リンゴジュースだけがプレバイオティックザクロ抽出物の用途にとって理想的な挙動を示した。リンゴジュースの場合、ザクロ抽出物を添加すると、ジュースとは呼べない。なぜなら、法律はビタミン及びミネラルをジュースに添加することしか許可していないからである。従って、果実を100%含有していたとしても、リンゴ飲料とは呼ばれない。
【0077】
ザクロ抽出物を有するパイナップル及びピーチ飲料を製造するために、これら食品母材中のザクロ抽出物の喪失に影響するファクターの研究を行った。3種類の重要なファクターが発見された。それは果実の百分率、クエン酸の百分率及びアスコルビン酸の百分率である。(パイナップル飲料に関する図3A、図3B及び図3C参照。ピーチ飲料のデータは示されていないが、同じライン上に並ぶ。)
【0078】
ジュース/ネクタータイプの食品母材にザクロ抽出物を安定的に添合することは、処方にクエン酸、アスコルビン酸サプリメントを包含すること及びリンゴジュース基材の存在により高められると思われるという事実の驚くべき発見の後に、本発明者らはザクロ抽出物を有する新たなタイプの多種類の果実(マルチフルーツ)のネクターの製造を提案した。
【0079】
原型、対照物(抽出物無し)及びザクロ抽出物を含有する及びザクロ抽出物を含有しないプレバイオティック(ザクロ抽出物624ppm含有)マルチフルーツネクターを下記のレシピに従って製造した。
マルチフルーツネクター
組 成 配合量(%)
リンゴジュース 30.0
グレープジュース 18.0
キウイジュース 2.0
プルーンジュース 7.0
アスコルビン酸 0.090
クエン酸 0.50
ザクロ抽出物 0.0624
砂糖 0.47
水 42.40
果実百分率 57.0%
゜BRIX 11.2%
密度 1.04502g/ml
酸度 0.580g.c.a./100ml
【0080】
2個の原型を100℃で15秒間低温滅菌し、そして、85〜87℃の温度で硝子容器内に無菌的に充填包装した。この原型を含有する2個の硝子瓶を水中に浸漬して急速冷却し、次いで、マルチフルーツネクターに添合されたザクロ抽出物の喪失率を、HPLC(高速液体クロマトグラフ)法を用いてプニカラギン含量を決定することにより測定した。結果を下記に示す。
ザクロ抽出物を含有するジュース/ネクター ザクロ抽出物喪失率(%)
マルチフルーツネクター 1.5%(5.7mgプニカラギン)
【0081】
主要な結論は、ジュース/ネクター(果実100%及び少なくとも各果実を50%含有)タイプの食品母材に、プレバイオティック特性を有するザクロ抽出物を安定的に添合できるということである。最適な母材はリンゴジュースである。その次ぎがグレープジュースである。しかし、アスコルビン酸を90〜900ppmとクエン酸を0.3〜0.5%添合することにより好都合に安定化された各種果実からなる母材もザクロ抽出物の優れた添合性を示した。
【0082】
更に、リンゴ飲料及びマルチフルーツネクターの原型が充填されたビンを5±3℃及び25±2℃で貯蔵した。リンゴ飲料及びマルチフルーツネクターに添合されたザクロ抽出物の喪失率をHPLC(高速液体クロマトグラフ)法を用いてプニカラギン含量を決定することにより測定した。安定性試験開始から6ヶ月後のプニカラギン喪失率は、
(a)5±3℃、及び
(b)25±2℃、相対湿度60±5%
の2種類の試験条件下で5%未満であった。
【実施例6】
【0083】
ザクロ抽出物を有するジュース又はフルーツネクタープレバイオティックの官能分析
実施例5に従って製造されたザクロ抽出物を含有する又は含有しないジュース又はマルチフルーツネクターの官能分析を行った。ザクロ抽出物添加及び無添加による特性又は製品属性を識別するために、専門判定者のパネルによって設計された官能評価の実現を目指して、香りに関する試食会(ティスティングセッション)を実施した。
(a)試食会は製品について或る程度訓練されたテイスター(検味者)10〜12人のパネルからなる。
(b)試食には次の項目が含まれていた。
(i)質問事項の設計
質問事項は外観、フレーバー(風味)、アロマ(芳香)及びテキスチャー(肌理)と全体的評価からなる。これらの質問事項は専門テイスターにより是認された。
(ii)特徴付け
これはザクロ抽出物を含有するサンプルとザクロ抽出物を含有しないサンプルとを対比比較することにより行った。
この質問事項において、下記のテストを評価した。
(1)相違の証明:相違属性に関して提供されたサンプル間に何らかの相違点を検出したか否かテイスターに質問した。
(2)好みテスト:どのサンプルが最も好きだったかテイスターに質問した。
(3)濃淡の証明:異なる属性においてどのサンプルが一層大きな濃淡さを有していたかテイスターに質問した。
(4)異なる属性の評価スケール(色合い、アロマ、甘さ/酸っぱさ、フレーバー、渋み及び総合評価)の証明
(5)最後に統計分析を行い、下記に要約される結果報告書を作成した。
【0084】
属性の評価に関する解答書を下記の表4に示す。表4は実施例6〜9に従って製造され、かつ評価されたザクロ抽出物を含有するか又は含有しない果実ジュースの官能分析における種々の属性のスケールによるアセスメントに使用されたキー(鍵)を示す。
表4
色合い/アロマ/風味 甘味/酸味 渋味 総合評価
1.極めて良い 1.極めて甘い 1.極めて渋い 1.極めて好き
2.非常に良い 2.非常に甘い 2.非常に渋い 2.非常に好き
3.良い 3.甘い 3.渋い 3.やや好き
4.やや良い 4.やや甘い 4.やや渋い 4.好きでも嫌いでもない
5.やや悪い 5.やや酸っぱい 5.渋み無し 5.嫌い
6.悪い 6.酸っぱい 6.非常に嫌い
7.非常に悪い 7.非常に酸っぱい 7.極めて嫌い
8.極めて悪い 8.極めて酸っぱい
【0085】
リンゴ飲料の官能分析
異なるテストにおいて、サンプル間に顕著な相違点が発見できなかったその他の製品に較べて、非常に多数の検味者(テイスター)が所定の属性について研究した。
好みに関して、2つのサンプルの何れについても一般的な選択は存在しない。
結果を図4Aに示す。
ザクロ抽出物を含有する及び含有しないリンゴ飲料の好みテストの特徴付けの結果を図4Bに示す。
異なる属性のスケール(等級)による評価に関して、色合い特徴における有意差(p≦0.05)が認められた。
【0086】
下記の表5は、実施例7に記載された100%リンゴ飲料の官能分析において査定者により為された種々の属性スケールの評価結果を要約して示す。
表5
サンプル
属 性 スケール 抽出物含有 抽出物不含有
1.極めて良い
色合い 2.3 2.0
8.極めて悪い
1.極めて良い
アロマ 3.0 2.9
8.極めて悪い
1.極めて甘い
甘味/酸味 4.3 3.8
8.極めて酸っぱい
1.極めて良い
テイスター 2.4 2.6
8.極めて悪い
1.極めて渋い
渋味 4.4 4.4
8.渋味無し
1.極めて好き
総合評価 2.3 2.7
8.非常に嫌い
【0087】
これらの結果から、ザクロ抽出物を含有するリング飲料は官能性の点からザクロ抽出物を含有しないリンゴ飲料よりも遙かに肯定的に評価されるものと断言できる。
【0088】
マルチフルーツ飲料の官能分析
評価結果を下記に示す。
(1)総合評価:製品は「1.極めて好き」〜「3.やや好き」の間に評価された
(2)渋味:「4.やや渋い」
(3)風味:「2.非常に良い」〜「3.良い」
(4)甘味/酸味:「3.甘い 」
(5)アロマ:「2.非常に良い」
(6)色合い:「2.非常に良い」〜「3.良い」
【0089】
リンゴ、グレープ、キウイ及びプラムの飲料にザクロ抽出物を添加しても、色合い、アロマ又はフレーバーを損なうことは無い。
【0090】
これらの結果に基づき、ザクロ抽出物を含有するマルチフルーツ飲料は官能性の点から肯定的に評価されるものと断言できる。
【実施例7】
【0091】
プレバイオティックフルーツ飲料/ザクロ抽出物含有茶抽出物飲料の製造、食品母材中のザクロ抽出物の安定性の評価
欧州特許出願公開第EP1967079A1号公報に記載された方法により得られたザクロ抽出物(プニカラギン含量61.12%)のサンプルを使用し、ザクロ抽出物624mg/食品母材1kg(プニカラギン384.1mg/食品母材1kg)の濃度の前記抽出物を含有する茶抽出物を含有する又は含有しないフルーツ飲料を製造した。下記の処方に従って、様々な食品母材の原型、対照物(抽出物無し)及びザクロ抽出物を含有する及び含有しないプレバイオティック(ザクロ抽出物を含有する場合、抽出物を624ppm含有する)を製造した。
パイナッップル及びプラム飲料
組 成 配合量(g/kg) 配合率(%)
パイナップル濃縮液 18.6 1.86
プラム濃縮液 14.3 1.43
クエン酸 5.00 0.50
アスコルビン酸 0.9 0.09
ザクロ抽出物 0.624 0.0624
砂糖 80.20 8.2
水 880.40 88.0

果実百分率 20.0%
゜BRIX 11.2%
密度 1.045021g/ml
酸度 0.555g.c.a./100ml
【0092】
ピーチ及びリンゴ飲料
組 成 配合量(g/kg) 配合率(%)
ピーチピューレ 73.1 7.30
リンゴ濃縮液 16.3 1.60
クエン酸 5.00 0.50
アスコルビン酸 0.9 0.09
砂糖 90.2 9.02 ザクロ抽出物 0.624 0.0624
水 814.4 81.40

果実百分率 20.3%
゜BRIX 11.2%
密度 1.04502g/ml
酸度 0.550g.c.a./100ml
【0093】
リンゴ、クランベリー及びプーアール茶飲料
組 成 配合量(g/kg) 配合率(%)
リンゴ濃縮液 61.94 6.2
クランベリー濃縮液 2.86 0.29
クエン酸 5.00 0.50
アスコルビン酸 0.9 0.09
プーアール茶(赤)抽出物 1.2 0.12
砂糖 90.2 9.02 ザクロ抽出物 0.624 0.0624
水 837.3 81.40

果実百分率(33%リンゴ+2%クランベリー) 40%
゜BRIX 11.2%
密度 1.04502g/ml
酸度 0.56g.c.a./100ml
【0094】
グレープ、レモン及び紅茶飲料
組 成 配合量(g/kg) 配合率(%)
グレープ濃縮液 61.94 6.2
レモン濃縮液 3.45 0.34
クエン酸 5.00 0.50
アスコルビン酸 0.9 0.09
紅茶抽出物 2.0 0.2
砂糖 90.2 9.02 ザクロ抽出物 0.624 0.0624
水 836.0 81.40

果実百分率(38%グレープ+2%レモン) 40%
゜BRIX 11.2%
密度 1.04452g/ml
酸度 0.55g.c.a./100ml
【0095】
8個の原型を100℃で15秒間低温滅菌し、そして、85〜87℃の温度で硝子容器内に無菌的に充填包装した。この原型を含有する8個の硝子瓶を水中に浸漬して急速冷却し、次いで、果実飲料に添合されたザクロ抽出物の喪失率を、HPLC(高速液体クロマトグラフ)法を用いてプニカラギン含量を決定することにより測定した。結果を下記に示す。

ザクロ抽出物を含有する果実飲料 ザクロ抽出物喪失率(%)
パイナップル/プラム飲料 0(0mgプニカラギン)
ピーチ/リンゴ飲料 7.5(28.6mgプニカラギン)
果実飲料+プーアール茶抽出物 0(0mgプニカラギン)
果実飲料+紅茶抽出物 0(0mgプニカラギン)
【0096】
主な結論は、茶抽出物を含有する又は含有しない果実飲料(果実を5〜50%と様々な茶抽出物を0.01〜1%含有する)タイプの食品母材にプレバイオティック特性を有するザクロ抽出物を安定的に添合できるということである。主要基材としてリンゴジュース又はグレープジュースを含有し、更に、90〜900ppmのアスコルビン酸及び0.3〜0.5%のクエン酸が添加された最適な母材はザクロ抽出物の添加について非常に優れた安定性を付与する。
【0097】
更に、ピーチ/リンゴ飲料及びパイナップル/プラム飲料が充填されたビンを5±3℃及び25±2℃で貯蔵した。これら双方の果実飲料に添合されたザクロ抽出物の喪失率をHPLC(高速液体クロマトグラフ)法を用いてプニカラギン含量を決定することにより測定した。安定性試験開始から6ヶ月後のプニカラギン喪失率は、
(a)5±3℃、及び
(b)25±2℃、相対湿度60±5%
の2種類の試験条件下で5%未満であった。
【実施例8】
【0098】
ザクロ抽出物を含有するプレバイオティック果実飲料/茶抽出物の官能分析
実施例7に従って製造されたザクロ抽出物を含有する又は含有しないパイナップル及びプラム飲料に関して、並びに、ピーチ及びリンゴ飲料に関して、実施例6に記載された方法に従って官能分析を行った。
【0099】
パイナップル及びプラム飲料の官能分析
相違の証明において、パネリスト全員がサンプル間の相違を識別した。これらの相違は色合いパラメーターのみについて有意(p≦0.05)であり、12人のテイスターのうち10人はザクロ抽出物を含有したサンプルの方が色が一層濃いと識別した。しかし、ザクロ抽出物を含有するサンプルは半数のテイスターにより好まれた。
結果を図5Aに示す。
ザクロ抽出物を含有する及び含有しないパイナップル/プラム飲料の好みの特徴付けの結果を図5Bに示す。
異なる属性のスケール(等級)による評価に関して、その結果は相違の証明及び濃淡の証明において得られた結果と類似している。
色合い及び甘味/酸味特徴において有意差(p≦0.05)が認められた。
【0100】
下記の表6は、実施例8に記載されたパイナップル/プラム飲料の官能分析において査定者により為された種々の属性スケールの評価結果を要約して示す。
表6
サンプル
属 性 スケール 抽出物含有 抽出物不含有
1.極めて良い
色合い 4.0 3.2
8.極めて悪い
1.極めて良い
アロマ 2.9 2.8
8.極めて悪い
1.極めて甘い
甘味/酸味 3.9 3.3
8.極めて酸っぱい
1.極めて良い
テイスター 3.0 2.6
8.極めて悪い
1.極めて渋い
渋味 3.3 3.5
8.渋味無し
1.極めて好き
総合評価 3.1 2.7
8.非常に嫌い
【0101】
これらの結果から、ザクロ抽出物を含有するパイナップル/プラム飲料は、全ての属性分析において、官能性の点から肯定的に評価されたものと断言できる。
【0102】
ピーチ/リンゴ飲料の官能分析
相違の証明において、パネリスト全員がサンプル間の相違を識別した。これらの相違は色合い、フレーバー及び渋味のパラメーターについて有意(p≦0.05)であり、12人のテイスターのうち10人はザクロ抽出物を含有したサンプルの方が色が一層濃いと識別した。しかし、ザクロ抽出物を含有するサンプルは半数のテイスターにより好まれた。
結果を図5Cに示す。
ザクロ抽出物を含有する及び含有しないピーチ/リンゴ飲料の好みテストの特徴付けの結果を図5Dに示す。
異なる属性のスケール(等級)による評価に関して、その結果は相違/濃淡テストで得られた結果と類似している。
色合い、フレーバー及び渋味特徴において有意差(p≦0.05)が認められた。
【0103】
下記の表7は、実施例9に記載されたピーチ/リンゴ飲料の官能分析において査定者により為された種々の属性スケールの評価結果を要約して示す。
表7
サンプル
属 性 スケール 抽出物含有 抽出物不含有
1.極めて良い
色合い 3.6 2.5
8.極めて悪い
1.極めて良い
アロマ 3.0 2.7
8.極めて悪い
1.極めて甘い
甘味/酸味 4.3 5.4
8.極めて酸っぱい
1.極めて良い
テイスター 2.9 3.7
8.極めて悪い
1.極めて渋い
渋味 3.3 3.7
8.渋味無し
1.極めて好き
総合評価 2.8 3.5
8.非常に嫌い
【0104】
これらの結果から、ザクロ抽出物を含有するピーチ/リンゴ飲料は、僅かな渋味を示したが、官能性の点から肯定的に評価されるものと結論する。
【実施例9】
【0105】
プロバイオティック・バクテリア菌株及びザクロ抽出物を含有するシンバイオティック果実飲料の製造及び食品母材中のプロバイオティックの安定性の評価
欧州特許出願公開第EP1967079A1号公報に記載された方法により得られたザクロ抽出物(プニカラギン含量61.12%)のサンプルを使用し、ザクロ抽出物624mg/食品母材1kg(プニカラギン384.1mg/食品母材1kg)の濃度の前記抽出物を含有する果実飲料を製造した。下記の処方に従って、ザクロ抽出物を含有する果実飲料を製造した。
【0106】
ザクロ抽出物を含有する果実飲料
組 成 配合量(g/kg) 配合率(%)
リンゴ濃縮液 61.94 6.2
グレープ濃縮液 3.26 0.33
クエン酸 5.00 0.50
アスコルビン酸 0.9 0.09
砂糖 90.2 9.02 ザクロ抽出物 0.624 0.0624
水 838.1 83.80

果実百分率(38%リンゴ+2%グレープ) 40%
゜BRIX 11.1%
密度 1.04525g/ml
酸度 0.56g.c.a./100ml
【0107】
ザクロ抽出物を含有する果実飲料を100℃で15秒間低温滅菌し、そして、85〜87℃の温度で硝子容器内に無菌的に充填包装した。ザクロ抽出物を含有する果実飲料のこの原型を含有する硝子容器を水中に浸漬して急速冷却した。25℃に達したら、飲料が充填されたボトルをラミナー・フロー・フードに移し、そこで、完全に無菌的方法で、デンマークに所在のクリスチャン・ハンセン社からBB−12の商品名で市販されているプロバイオティック・バクテリアであるビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)からなる凍結乾燥製品を添加した。
【0108】
ボトルを再び密閉し、プロバイオティック製剤の凍結乾燥粉末を溶解させるために手で撹拌した。次いで、5±3℃の温度の冷蔵庫内で貯蔵した。飲料の含量(CFU/g)は貯蔵開始から0日目と30日目に平板計数法により決定した。結果を下記に示す。
貯蔵開始から0日目 4×10CFU/g(飲料)
貯蔵開始から30日目 9×10CFU/g(飲料)
【0109】
主な結論は次の通りである。すなわち、5〜50%の果実と0〜9000ppmのアスコルビン酸及び0〜5%のクエン酸を含有する果実飲料タイプの食品母材に、プロバイオティック・バクテリアの菌株と共にプレバイオティック特性を有するザクロ抽出物を安定的に添合できる。シンバイオティック果実飲料を1ヶ月間貯蔵した後のプロバイオティック・バクテリア菌株の生菌含量は、シンバイオティック飲料1g当たり10CFU以上であった。
【0110】
従って、本発明は、その他の果実ジュースを併用した又は併用しない、少なくとも10%のリンゴジュースと、含量が0ppm〜9000ppmのアスコルビン酸、含量が0%〜5%クエン酸及び含量が組成物1g当たり10〜1010CFUの範囲内のプロバイオティック・バクテリアと、50ppm〜10000ppmの範囲内のザクロ抽出物を含有する飲料からなる食品を提供する。
【実施例10】
【0111】
アスコルビン酸及びクエン酸の添加により改善された安定性を有するザクロ抽出物粉末の製造
ザクロ抽出物の生物活性成分(例えば、プニカラギン)の安定性の驚くべき改善により、アスコルビン酸とクエン酸が適当な割合で添加されている果実飲料にザクロ抽出物を添合した場合と、アスコルビン酸及びクエン酸が添加されていない場合とを比較するために、ザクロ抽出物の安定性におけるアスコルビン酸及びクエン酸の添加による影響の有無について研究した。
【0112】
欧州特許出願公開第EP1967079A1号公報の実施例7により得られた噴霧乾燥により粉末形状へ乾燥させる直前の工程の、濃厚液の形状のザクロ抽出物10Lからなる2個のサンプルを分離させた。10Lのサンプルにアスコルビン酸90ppmとクエン酸0.5%を添加し、撹拌して完全に溶解させた。他の10Lのサンプルは対照として使用し、アスコルビン酸及びクエン酸は添加しなかった。次いで、乾燥粉末の形状のザクロ抽出物の2個のサンプルを、欧州特許出願公開第EP1967079A1号公報の実施例8に記載された乾燥方法に従って得た。最初に、酸添加物を含有しない対照サンプル(サブロット1)を乾燥させ、噴霧乾燥機を洗浄した後、酸添加物を含有するサンプル(サブロット2)を乾燥させた。ザクロ抽出物のこれら2個のサブロットをヒートシールされたアルミ箔バッグに充填包装した。1バッグ当たりサブロットを10g含有する。各サブロットからサンプルを5個製造した。全てのバッグを培養人工気候室内に静置し、温度70±2℃及び湿度75±5%で加速安定性試験を行った。
【0113】
サブロット1及び2のサンプルのザクロ抽出物の安定性は、HPLC法でプニカラギン含量を決定することにより様々な時点で測定した。前記の条件下で30日間培養した後、サブロット2(酸添加物含有サンプル)のプニカラギン喪失率は5%未満であったが、サブロット1(酸添加物不含有対照物)のプニカラギン喪失率は15%以上であった。
【実施例11】
【0114】
消化管における炭水化物の加水分解に必要とされる酵素のザクロ抽出物による阻害
酵素のα−アミラーゼ及びα−グルコシダーゼの試験管内阻害を研究するために、欧州特許出願公開第EP1967079A1号公報に記載された方法により製造されたザクロ抽出物のサンプルを使用した。試験された酵素は下記の出所源から得た。α−アミラーゼはブタの膵臓から、また、α−グルコシダーゼはサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)(出芽酵母)から得た(両方ともシグマ社から市販されている)。また、α−グルコシダーゼはブタからも得られる(非特許文献6に記載された方法に従いブタの腸から単離される)。
【0115】
酵素を購入した際にシグマ社から提供される手順書に従って、α−アミラーゼ及びα−グルコシダーゼの活性測定を行った。要するに、α−グルコシダーゼ活性は、基材としてニトロフェニルα−D−グルコシド(PNP)を用いて400nmの波長で分光光度計により決定した。また、α−アミラーゼ活性は、基材として可溶性バレイショデンプンを用いて540nmの波長で分光光度計により決定した。陽性対照(ポジティブ・コントロール)として、阻害剤としてアカルボースを用いて測定を行った。
【0116】
測定は3回行った。陽性対照について使用されたブタ由来α−グルコシダーゼ濃度測定の場合、アカルボースは125μg/mlであった。一方、試験されたザクロ抽出物の濃度は650μg/mlであった。酵母由来α−グルコシダーゼの場合、ザクロ抽出物の試験濃度は1.5μg/mlであった。
【0117】
ブタ由来α−アミラーゼに関する測定の場合、陽性対照測定は35μg/mlの濃度のアカルボースにより行った。一方、試験されたザクロ抽出物の濃度は250μg/mlであった。
【0118】
結果を下記に要約して示す。
【0119】
アッセイ ブタα−グルコシダーゼ活性(%)
対照(阻害剤無し) 100.0±3.1
陽性対照(アカルボース;125μg/ml) 57.0±2.2
ザクロ抽出物(650μg/ml) 88.7±1.4
【0120】
アッセイ 酵母α−グルコシダーゼ活性(%)
対照(阻害剤無し) 100.0±3.2
ザクロ抽出物(1.5μg/ml) 4.6±2.5
【0121】
アッセイ ブタα−アミラーゼ活性(%)
対照(阻害剤無し) 100.0±2.1
陽性対照(アカルボース;125μg/ml) 41.2±2.3
ザクロ抽出物(650μg/ml) 48.0±1.7
(脚注:前記100%に関連する値は阻害剤無しで得られた酵素活性の値である。)
【0122】
試験された濃度におけるザクロ抽出物の添加は、アカルボースの添加と同様に、対照に関して、α−アミラーゼ活性及びα−グルコシダーゼ活性を阻害する。
【0123】
食後血糖値が低下する医学的メカニズムは、消化管における炭水化物の加水分解に必要な酵素(例えば、α−アミラーゼ及びα−グルコシダーゼ)の阻害によりグルコース(ブドウ糖)の吸収が緩慢になるためである。α−グルコシダーゼ阻害剤として効力のあるアカルボースは、2型糖尿病の治療に使用される医薬品(薬剤)における活性成分である。試験管内アッセイにおいてザクロ抽出物により得られた結果を考慮すれば、ザクロ抽出物は消化管における炭水化物の加水分解に必要な酵素の阻害によるグルコースの吸収を緩慢にし、それにより、食後血糖値を低下させることができ、従って、ザクロ抽出物は2型糖尿病の治療、併用療法又は予防に有用であると結論することができる。更に、ザクロ抽出物は、炭水化物に富む食品のエネルギー効率を低下させることによる肥満の治療、併用療法又は予防にも有用である。
【実施例12】
【0124】
ザクロ抽出物によるパラオキソナーゼ−1活性及びヒドロキシメチルグルタリル−CoA還元酵素の阻害
欧州特許出願公開第EP1967079A1号公報に記載された方法により製造されたザクロ抽出物のサンプルを使用し、ヒドロキシメチルグルタリル−CoA還元酵素(HMGR)及びパラオキソナーゼ−1(PON−1)などの酵素の試験管内阻害作用/活性作用について研究した。試験に使用した酵素はシグマ社及びインビトロゲン社からそれぞれ購入した。
【0125】
HMGR及びPON−1の活性測定は、購入した酵素キットに付属されたシグマ社及びインビトロゲン社の使用指示書に従って行った。HMGR測定の陽性対照として、プラバスタチン阻害剤を用いて行った。
【0126】
測定は3回行った。プラバスタチンによる陽性対照について使用されたHMGR濃度測定の場合、500ナノモルであり、また、ザクロ抽出物の濃度は100μg/mlであった。
【0127】
PON−1濃度測定の場合、ザクロ抽出物の濃度は50μg/mlと100μg/mlであった。
【0128】
結果を下記に要約して示す。
【0129】
アッセイ ブタα−アミラーゼ活性(%)
対照(阻害剤無し) 100.0±2.1
陽性対照(プラバスタチン) 9.7±3.4
製品試験(ザクロ抽出物) 29.0±3.5

(脚注:前記100%に関連する値は阻害剤無しで得られた酵素活性の値である。)
【0130】
アッセイ PON−1活性率(%)
対照(活性剤無し) 100.0±4.3
ザクロ抽出物(50μg/ml) 107.2±1.2
ザクロ抽出物(100μg/ml) 128.2±1.9

(脚注:前記100%に関連する値は活性剤無しで得られた酵素活性の値である。)
【0131】
評価された濃度におけるザクロ抽出物の添加はHMGR活性を阻害し、PON−1活性を刺激する。
【0132】
血清コレステロールを低下させるための医学的アプローチは、生合成過程において鍵となる酵素(すなわち、HMGR)を阻害することにより、内因性コレステロール生合成を阻害することである。従って、HMGRの有効な阻害剤であるスタチンから、高コレステロール血症を治療するための多数の薬剤が開発されている。前記においても述べたが、ザクロ抽出物と食物繊維との併用は、ザクロ抽出物の化合物類の生物活性により高コレステロール値を低下させるだけでなく、消化管で発酵された食物繊維(例えば、可溶性繊維)はプロピオネートなどの短鎖脂肪酸の生成を増大させることに注目すべきである。プロピオネートは門脈を介して結腸内に吸収され、HMGR阻害作用を発揮する。他方、奇妙なことに、スタチンは血清内のPON−1の活性を高める。ザクロ抽出物が活性化剤である同じプロテインである。脂質の酸化を起こす酸化性ストレスから、リポプロテイン(例えば、HDL)及びマクロファージにおいてPON−1は脂質を保護することが知られている。また、PON−1は、粥状動脈硬化病変の進行に必然的に伴うマクロファージセル発泡体の生成を抑制するなどのようなアテローム産生抑制作用も示す。試験管内における阻害/活性試験でザクロ抽出物により得られた結果を考慮すれば、ザクロ抽出物はHMGRの阻害剤として、及びPON−1の活性化剤として作用することができ、従って、高コレステロール血症の治療、併用療法又は予防に有用であると結論される。また、ザクロ抽出物は、特にPON−1の活性化のようなメカニズムにより動脈内の中膜及び脈管内膜におけるアテローム斑の生成の治療、併用療法又は予防にも有用である。
【実施例13】
【0133】
動物モードにおける差次的遺伝子発現
1群10匹のマウスを使用し差次的遺伝子発現について研究した。各マウスには市販の餌と、日用量12.8mg(マウスの体重1kg当たりザクロ抽出物320mgの一日摂取量に相当する)のザクロ抽出物を30日間摂取させた(第2群)。第1群(対照群)にはザクロ抽出物を摂取させず、餌だけを30日間摂取させた。投与期間経過後、マウスを殺し、各肝臓を摘出し、−80℃で保存した。結果が群を代表するように、各群の各マウスの同じ重量の肝臓断片のプールを作製した。同じものから、RNAを単離し、試験前に厳格な品質管理を施した。
【0134】
差次的遺伝子発現分析はマイクロアレイを用いて行った。特に、GeneChip(登録商標)マウスゲノム430 2.0アレイ(アフィメトリックス(Affymetrix)社製)のチップを使用した。このチップは、マウスに記載された約14000個の遺伝子の発現分析ができる。このチップは、Log2の形で各遺伝子のmRNAの量に応じた強度データを示した。同じものから、各群対対照との間の信号差から、ザクロ抽出物による治療による差次的遺伝子発現を計算した。
【0135】
実施例14〜18に示された差次的遺伝子発現の結果の生物学的解釈は下記のデータベースから得られる情報を用いて行った。RefGene(Reference for genes, proteins and antibiotics):http://refgene.com/; CTD(Toxigenomics The Comparative Database):http://ctd.mdibl.org/; MGI(Mouse Genomics Informatics): http://www.informatics.jax.org/; KEGG(Kyoto Encycropedia of Genes and Genomes): http://www.genome.jp/kegg/genes.html。遺伝子の生物学的機能及び様々なプロセスにおけるそれらの改善、双方のマウス遺伝子から誘導された情報及びヒトにおけるそれらの相対物について記載されている。
【実施例14】
【0136】
免疫システムを調整し、身体の自然な防御性を高める助けになるザクロ抽出物の特性
ザクロ抽出物を摂取した実施例13からのマウス群において、Scara5遺伝子(スカベンジャー・レセプター・クラスA、メンバー5(推定))の発現の活性度は、ザクロ抽出物を摂取しなかった対照群に対して2.46倍であった。
【0137】
Scara5遺伝子製品は、スカベンジャー・レセプタータイプのファミリー(科)に属するタンパク質であり、病原体認識に関連される先天的免疫に必然的に含まれる。なぜなら、これらのうちの様々なものに結合する能力を示現するからである。Scara5遺伝子は上皮細胞内に発現され、また、病原体結合能力も有する。
【実施例15】
【0138】
脂質代謝の調整におけるザクロ抽出物の特性
ザクロ抽出物を摂取した、実施例13からのマウス群において、Serpine1遺伝子(セルピンペプチダーゼ阻害剤、クレードE、メンバー1)の発現抑制率は、ザクロ抽出物を摂取しなかった対照群に較べて3.51倍であった。
【0139】
Serpine1遺伝子産物はプラスミノーゲン活性化剤タイプ1(PAI-1)の阻害剤と呼ばれている。マウスにコレステロールに富む餌を与えると、肝臓においてSerpine1発現が活性化されることが示された。高コレステロール血症のヒトにおけるPAI-1血漿レベルは高い。また、スタチンはヒト内皮細胞におけるSerpine1遺伝子発現を阻害することが示された。スタチンは、高コレステロール血症を有するヒトにおけるコレステロール値を低下させることが示されたHMGCoA還元酵素を阻害する薬剤である。高コレステロール血症でも示される食事性コレステロールの腸管吸収阻害剤(エゼチミブ)は、マウスの大動脈及び脂肪組織におけるSerpine1遺伝子発現を抑制する。
【0140】
従って、活性量のザクロ抽出物を、スタチンだけで治療が行われていたときの処方量よりも少ない投与量のスタチンと投与することにより、高コレステロール血症の併用療法が可能である。
【実施例16】
【0141】
様々な腫瘍プロセス/疾患の治療、併用療法及び予防におけるザクロ抽出物の特性
ザクロ抽出物を摂取した実施例13におけるマウス群は、ザクロ抽出物を摂取しなかった対照群に較べて、発癌遺伝子jun、myc及びfosの発現抑制率がそれぞれ3.04倍、3.27倍及び6.43倍であった。
【0142】
jun及びfos産物は、AP-1(活性化プロテイン−1)と呼ばれる転写複合体を生成するために二量化する転写因子である。AP-1は成長因子及び腫瘍プロモータにより誘発される遺伝子発現を調節する転写因子である。発癌遺伝子のjun又はfosの過剰発現は、乳癌、卵巣癌、結腸癌、骨肉腫、子宮癌、肺癌及び膀胱癌などのような幾つかの癌に付随する。従って、AP-1は癌の化学療法的治療のためのターゲットとして使用された。
【0143】
myc発癌遺伝子産物は、転写因子E2Fの発現及び細胞サイクル調整に必然的に伴われるCdc(補体依存細胞毒性)サイクリンの活性化に責任があるホスファターゼの発現を調節するタンパク質である。myc発癌遺伝子は、膵臓癌、子宮頸癌、乳癌及び結腸癌などの多くのヒトの癌に過剰発現される。myc発癌遺伝子産物も癌治療のターゲットとして使用される。
【0144】
ヒトにおける研究では、ラクトバチルス属菌株を腸粘膜に注入した後、発癌遺伝子jun、myc及びfosの発現抑制が認められた。
【0145】
実施例13のマウスのうち、ザクロ抽出物を摂取した群では、ザクロ抽出物を摂取しなかった対照群に対して、遺伝子Adamts1(ディスインテグリン様及びメタロプロテイナーゼ(レプロリシンタイプ))の発現抑制率が2.04倍であった。
【0146】
Adamts1遺伝子産物はメタロプロテイナーゼ・ドメインとディスインテグリン・ドメインを有するタンパク質である。このタンパク質は、炎症プロセス及び結腸癌の動物モデルで試験されるように、癌性悪液質の発生に必然的に伴う。高転移活性を有する乳癌においてAdamts1遺伝子の過剰発現が実証された。この遺伝子の過剰発現は繊維芽細胞の補充により腫瘍成長を促進するものと推測されている。
【0147】
実施例13のマウスのうち、ザクロ抽出物を摂取した群では、ザクロ抽出物を摂取しない対照群に対して、遺伝子ATF3(活性化転写因子3)の発現抑制率が4.34倍であった。
【0148】
ATF3遺伝子産物は、ストレス状態及び様々な組織におけるDNA損傷状態で発現される転写因子である。多くの乳癌において、ATF3の過剰発現が報告されている。このタンパク質は前立腺癌のマーカーとして使用されている。なぜなら、その存在がこのタイプの癌の発生において認められたからであり、従って、有効な治療ターゲットである。
【0149】
実施例13のマウスのうち、ザクロ抽出物を摂取した群では、ザクロ抽出物を摂取しない対照群に対して、Ddit4(DNA損傷誘発性転写4)遺伝子の発現抑制率が2.92倍であった。
【0150】
Ddit4遺伝子産物は、RTP801又はREDD1と呼ばれるタンパク質であり、細胞増殖に必然的に伴われるmTOR/S6K1経路を阻害する。この経路の阻害剤は癌治療薬として評価されている。マウスにおける実験では、Ddit4遺伝子欠損は癌成長を促進することが報告されているが、ヒトにおける実験では、様々な癌におけるこの遺伝子の抑制が報告されている。
【0151】
実施例13のマウスのうち、ザクロ抽出物を摂取した群では、ザクロ抽出物を摂取しない対照群に対して、Egr1(early growth response 1)遺伝子の発現抑制率が2.61倍であった。
【0152】
Egr1遺伝子産物は、様々な細胞プロセスに必然的に伴われる転写因子であり、その関与は細胞成長及び前立腺癌のサバイバルで実証されている。前立腺癌の動物モデルでは、Egr1遺伝子の欠損が腫瘍成長を遅らせることが示された。
【0153】
実施例13のマウスのうち、ザクロ抽出物を摂取した群では、ザクロ抽出物を摂取しない対照群に対して、Sox9(SRY(Sex Determining Region Y)-box 9)遺伝子の発現抑制率が2.45倍であった。
【0154】
Sox9遺伝子産物は、DNA結合ドメインタイプのHMG(高移動群)を有する転写因子として作用するタンパク質を生成する。膵臓癌の増殖におけるSox9遺伝子産物の関与及び結腸癌の様々な細胞系におけるSox9遺伝子産物の過剰発現が示されている。
【0155】
実施例13のマウスのうち、ザクロ抽出物を摂取した群では、ザクロ抽出物を摂取しない対照群に対して、インターロイキン1アルファ(IL1α)遺伝子の発現抑制率が2.97倍であった。
【0156】
IL1α遺伝子は、肺癌、結腸癌及びメラノーマなどのような様々な癌で過剰発現される。結腸癌において、IL1α遺伝子は、細胞移動及び血管新生を刺激し、その発現はプロスタグランジンE2により誘発される。ヒトにおける実験では、ラクトバチルス属菌株を腸粘膜に注入した後、IL1α遺伝子発現の抑制が起きた。
【0157】
実施例13のマウスのうち、ザクロ抽出物を摂取した群では、ザクロ抽出物を摂取しない対照群に対して、Gadd45b(growth arrest and DNA-damage-inducible 45 β)遺伝子及びGadd45g(growth arrest and DNA-damage-inducible 45 γ)遺伝子の発現抑制率がそれぞれ2.24倍及び2.57倍であった。
【0158】
Gadd45b及びGadd45g遺伝子産物は細胞サイクル制御に関連されるタンパク質である。メラノーマのマウス動物モデルでは、Gadd45bの機能欠損は一層高い腫瘍成長を生成することが示された。この遺伝子産物はp38キナーゼの活性化に必要である。p38タンパク質は腫瘍抑制に必然的に伴われる。Gadd45b及びGadd45g遺伝子の発現は様々な癌において抑制される。
【実施例17】
【0159】
結腸癌の治療、併用療法及び予防におけるザクロ抽出物の特性
実施例13のマウスのうち、ザクロ抽出物を摂取した群では、ザクロ抽出物を摂取しない対照群に対して、発癌遺伝子jun、myc及びfosの発現抑制がそれぞれ3.04倍、3.27倍及び6.43倍であった。
【0160】
jun及びfos産物は、AP-1(活性化プロテイン−1)と呼ばれる転写複合体を生成するために二量化する転写因子である。AP-1は成長因子及び腫瘍プロモータにより誘発される遺伝子発現を調節する転写因子である。発癌遺伝子のjun又はfosの過剰発現は、結腸癌に付随する。
【0161】
myc発癌遺伝子産物は、転写因子E2Fの発現及び細胞サイクル調整に必然的に伴われるCdc(補体依存細胞毒性)サイクリンの活性化に責任があるホスファターゼの発現を調節するタンパク質である。myc発癌遺伝子は、結腸癌に過剰発現される。AP-1及びmyc発癌遺伝子産物の両方とも癌治療のターゲットとして使用される。
【0162】
ヒトにおける研究では、ラクトバチルス属菌株を腸粘膜に注入した後、発癌遺伝子jun、myc及びfosの発現抑制が認められた。
【0163】
実施例13のマウスのうち、ザクロ抽出物を摂取した群では、ザクロ抽出物を摂取しない対照群に対して、Fam84A(family with sequence similarity 84, member A)遺伝子の発現抑制率が2.53倍であった。
【0164】
Fam84A遺伝子産物は、NSE1(neurologic sensory protein 1)として知られているタンパク質であり、サブ細胞膜内に配置され、細胞移動性に必然的に伴われる。この遺伝子の発現は結腸癌で活性化される。NSE1遺伝子は結腸癌細胞の移動性に必然的に伴われるかもしれない。従って、この癌の進行に関係する。
【0165】
実施例13のマウスのうち、ザクロ抽出物を摂取した群では、ザクロ抽出物を摂取しない対照群に対して、遺伝子Adamts1(ディスインテグリン様及びメタロプロテイナーゼ(レプロリシンタイプ))の発現抑制率が2.04倍であった。
【0166】
Adamts1遺伝子産物はメタロプロテイナーゼ・ドメインとディスインテグリン・ドメインを有するタンパク質である。このタンパク質は炎症プロセスに必然的に伴い、また、結腸癌の動物モデルで試験されるように癌性悪液質の発生に必然的に伴う。
【0167】
実施例13のマウスのうち、ザクロ抽出物を摂取した群では、ザクロ抽出物を摂取しない対照群に対して、Sox9(SRY(Sex Determining Region Y)-box 9)遺伝子の発現抑制率が2.45倍であった。
【0168】
Sox9遺伝子産物は、DNA結合ドメインタイプのHMG(高移動群)を有する転写因子として作用するタンパク質を生成する。膵臓癌の増殖におけるSox9遺伝子産物の関与及び結腸癌の様々な細胞系におけるSox9遺伝子産物の過剰発現が示されている。
【0169】
実施例13のマウスのうち、ザクロ抽出物を摂取した群では、ザクロ抽出物を摂取しない対照群に対して、インターロイキン1アルファ(IL1α)遺伝子の発現抑制率が2.97倍であった。
【0170】
IL1α遺伝子は、肺癌、結腸癌及びメラノーマなどのような様々な癌で過剰発現される。結腸癌において、IL1α遺伝子は、細胞移動及び血管新生を刺激し、その発現はプロスタグランジンE2により誘発される。ヒトにおける実験では、ラクトバチルス属菌株を腸粘膜に注入した後、IL1α遺伝子発現の抑制が起きた。
【実施例18】
【0171】
肥満及び糖尿病の治療におけるザクロ抽出物の特性
ザクロ抽出物を摂取した実施例13からのマウス群において、Serpine1遺伝子(セルピンペプチダーゼ阻害剤、クレードE、メンバー1)の発現抑制率は、ザクロ抽出物を摂取しなかった対照群に較べて3.51倍であった。
【0172】
Serpine1遺伝子産物はプラスミノーゲン活性化剤タイプ1(PAI-1)の阻害剤と呼ばれている。1型及び2型糖尿病において、PAI-1タンパク質の高血漿レベルが認められた。これは2型糖尿病の場合に最も適合する。このタイプの糖尿病におけるこのような高い血漿レベルは、動脈でのPAI-1合成におけるグルコースの直接効果及び肝臓でのPAI-1合成におけるインスリンの効果によるものである。PAI-1タンパク質は、ビトロネクチンとの結合及びビトロネクチンによる安定化によりインスリンシグナル伝達を阻害する。チアゾリジンジオン又はグリタゾンは、2型糖尿病の徴候であるPPAR-y受容体のアゴニスト薬剤であり、PAI-1のレベル低下を起こす。健康なヒトにおける、たとえ正常範囲内であったとしても、高いグルコースレベルとPAI-1レベルとの間の相関関係が報告されている。糖尿病ラットの肝臓におけるSerpine1遺伝子の発現の活性化が認められた。
【0173】
血漿内の高いPAI-1レベルは、繊維素溶解活性の不活化の主要原因であり、肥満に長年にわたって随伴する。肥満患者の体重が減少した場合、PAI-1の血漿レベルの低下が報告されている。体重が元に戻ると、PAI-1の血漿レベルも元の高い値に戻る。
【0174】
実施例13のマウスのうち、ザクロ抽出物を摂取した群では、ザクロ抽出物を摂取しない対照群に対して、Lpin1(Lipin 1)遺伝子の発現活性率が2.35倍であった。
【0175】
Lpin1 遺伝子は、機能欠損が脂肪異栄養症を起こしたマウスに記述されるリピンのファミリー(科)に属するタンパク質である。このタンパク質は脂肪生成及びトリグリセリド代謝に関係し、また、PPAR-y 受容体の肝臓における転写活性化のPPARGC1A遺伝子産物にも関係する。脂肪組織におけるLpin1 遺伝子レベルはインスリン抵抗性と逆比例の関係を有する。この組織は、インスリン感受性を高める作用機序を有するチアゾリジンジオン薬剤で治療されると、Lpin1 遺伝子発現の増大を示した。
【実施例19】
【0176】
定量的RT-PCR法を用いる差次的遺伝子発現
マイクロアレイ(実施例13参照)の結果に関連する差次的遺伝子発現の実施例14〜18にしめされた結果は、定量的RT-PCR法により差次的遺伝子発現を計算することにより確認された。マウスの肝臓から単離された同じRNAから、SYBRグリーンを用いてRT-PCR法を実施した。相対定量は、連続発現に関してマウスのGAPDH遺伝子を参照として使用して行った。相対定量に使用した方法は前掲の非特許文献7に記載されている。
【実施例20】
【0177】
HPLC-DAD及び質量分析検出器によるザクロ抽出物のプニカラギンの特徴付け
ザクロ抽出物内に存在するプニカラギンを更に特徴付けるために、ザクロ抽出物の細分画を行い、関心のある各分画を引き続き分析して最大可能性化合物を検出した。
【0178】
これを得るための標準化された方法は次の通りである。
(a)ASEによる第1の画分。これには、高極性〜低極性の一連の溶剤を適用する。
(b)ヘキサン(3回洗浄)による脱脂工程−ASEのヘキサン画分。
(c)酢酸エチル(3回洗浄)による抽出工程−ASEの酢酸エチル画分。
(d)アセトン(3回洗浄)による抽出工程−ASEのアセトン画分。
(e)アセトン/水(3回洗浄)による抽出工程−ASEのアセトン/水画分。
(f)第2工程として、アセトン除去後に、ASEで得られたアセトン/水画分に適用された酢酸エチル(3回洗浄)による手作業の液−液抽出(LLE)を行う。
(g)LLEの酢酸エチル画分。
(h)LLEの水画分。
【0179】
引き続き、極性画分の分析用に高速液体クロマトグラフ法(HPLC)を用いて、様々な単離画分を分析して特徴付けを行った。サンプル中に発見すべき異なるファミリーから最大個数の化合物を同定するために、HPLC法において、スクリーニングのクロマトグラフ的方法を開発した。化合物の同定のために、ダイオード・アレイ・検出器(DAD)及び質量分析検出器、飛行時間(TOF)及びイオン・トラップ(IT)を使用した。
【0180】
前記の方法により、総数18個の化合物を決定した。結果を下記の表8に要約して示す。
【0181】
表8



【0182】
以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。特許請求の範囲の構成要素の後に記載した括弧内の番号は、図面の部品番号に対応し、発明の容易なる理解の為に付したものであり、発明を限定的に解釈するために用いてはならない。また、同一番号でも明細書と特許請求の範囲の部品名は必ずしも同一ではない。これは上記した理由による。用語「又は」に関して、例えば「A又はB」は、「Aのみ」、「Bのみ」ならず、「AとBの両方」を選択することも含む。特に記載のない限り、装置又は手段の数は、単数か複数かを問わない。
【符号の説明】
【0183】
図1A:(縦軸)LOGビフィドバクテリウム属/ml
−●−対照
図2:(縦軸)ビフィドバクテリウム属/総バクテリア(%)
(横軸)対照, ザクロ抽出物
図3A:(縦軸)プニカラギン喪失率(%)
(横軸)母材中のパイナップル割合(%)
図3B:(縦軸)プニカラギン喪失率(%)
(横軸)クエン酸(%)
図3C:(縦軸)プニカラギン喪失率(%)
(横軸)カテゴリー:1(クエン酸無し);2(クエン酸0.5%含有);3(クエン酸0.3%含有)
図4A:(左欄)好み,渋味,テイスター,香気,色合い
(右欄)抽出物不含有,相違無し,抽出物含有
図4B:(上欄)抽出物含有,抽出物不含有
(左欄)総合評価,渋味,テイスター,甘味/酸味,芳香,色合い
図5A:(左欄)好み,渋味,テイスター,香気,色合い
(右欄)抽出物含有,相違無し,抽出物不含有
図5B:(上欄)抽出物含有,抽出物不含有
(左欄)総合評価,渋味,テイスター,甘味/酸味,芳香,色合い
図5C:(左欄)好み,渋味,テイスター,香気,色合い
(右欄)抽出物不含有,相違無し,抽出物含有
図5D:(上欄)抽出物含有,抽出物不含有
(左欄)総合評価,渋味,テイスター,甘味/酸味,芳香,色合い

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌特性を有するポリフェノールの含量が少なくとも5%(w/w)(総フェノールとして測定され、かつ没食子酸同等物として表示される)のザクロ抽出物を含有する組成物であり、前記組成物は、
(a)プニカラギン含量が少なくとも2%、
(b)エラグ酸、及び
(c)クエン酸含量が少なくとも0.5%(w/w)
からなり、
プニカラギン/遊離エラグ酸(%w/w)比率が10/1〜35/1の範囲内であり、水への溶解度が少なくとも3%(w/w)であり、
プレバイオティックとして使用できる、
ことを特徴とする組成物。
【請求項2】
クエン酸の代わりに、アスコルビン酸を少なくとも0.05%(w/w)含有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
クエン酸を少なくとも0.5%(w/w)とアスコルビン酸を少なくとも0.05%(w/w)含有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の組成物を含有する食品。
【請求項5】
前記食品は果実の清涼飲料水であり、前記果実清涼飲料水は少なくとも10%のリンゴジュースと、他の果実ジュースを併用又は併用せず、アスコルビン酸を0〜9000ppmと、クエン酸を0%〜5%と、ザクロ抽出物を50ppm〜10000ppm含有することを特徴とする請求項4に記載の食品。
【請求項6】
前記食品は果実の清涼飲料水であり、前記果実清涼飲料水は少なくとも12%のグレープジュースと、他の果実ジュースを併用又は併用せず、アスコルビン酸を0〜9000ppmと、クエン酸を0%〜5%と、ザクロ抽出物を50ppm〜10000ppm含有することを特徴とする請求項4に記載の食品。
【請求項7】
プロバイオティック・バクテリア菌株を更に含有することを特徴とする請求項4〜6の何れかに記載の食品。
【請求項8】
シンバイオティックとして使用されることを特徴とする請求項7に記載の食品。
【請求項9】
前記食品は、組成物1g当たり10〜1010CFUの範囲内の量のビフィドバクテリウム属又はラクトバチルス属に属するプロバイオティック・バクテリアを含有することを特徴とする請求項8に記載のシンバイオティック食品。
【請求項10】
前記組成物に含まれるプロバイオティック菌株はラクトバチルス・カゼイDN114−001又はビフィドバクテリウム・アニマリスDN173−010であることを特徴とする請求項8に記載のシンバイオティック食品。
【請求項11】
ヒトの結腸内腔におけるウロリチンA及びウロリチンBの産生を高める治療に使用されることを特徴とする請求項4〜10の何れかに記載の食品。
【請求項12】
ヒトの結腸内腔におけるウロリチンA及びウロリチンBの産生を高め、前立腺癌、結腸癌及び膵臓癌からなる群から選択される癌疾患の治療、併用療法又は予防に使用されることを特徴とする請求項4〜10の何れかに記載の食品。
【請求項13】
ヒトの生体自然防御能力を高める助けになる、ヒト結腸内腔におけるビフィドバクテリウム属及びラクトバチルス属のバクテリアの成長を刺激するための治療に使用されることを特徴とする請求項4〜10の何れかに記載の食品。
【請求項14】
メタボリック・シンドローム(内臓脂肪症候群)の治療、併用療法又は予防に使用されることを特徴とする請求項4〜10の何れかに記載の食品。
【請求項15】
食事後にα−グルコシダーゼ酵素又はα−アミラーゼ酵素の働きを阻害する能力に基づき、2型糖尿病及び肥満症から選択される1つ以上の疾患の治療、併用療法又は予防に使用されることを特徴とする請求項4〜10の何れかに記載の食品。
【請求項16】
高コレステロール血症の治療、併用療法又は予防に使用されることを特徴とする請求項4〜10の何れかに記載の食品。
【請求項17】
動脈の中膜及び脈管内膜におけるアテローム斑の生成の治療、併用療法又は予防に使用されることを特徴とする請求項4〜10の何れかに記載の食品。
【請求項18】
心臓血管系疾患の治療、併用療法又は予防に使用されることを特徴とする請求項4〜10の何れかに記載の食品。
【請求項19】
結腸癌の治療、併用療法又は予防に使用されることを特徴とする請求項4〜10の何れかに記載の食品。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−505283(P2013−505283A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530298(P2012−530298)
【出願日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【国際出願番号】PCT/ES2010/000389
【国際公開番号】WO2011/036316
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(509211022)プロベルテ ファーマ,エス.エー. (5)
【Fターム(参考)】