説明

プレヒーリング装置及びフィルムコンデンサの製造方法

【課題】比較的簡単な構成で、両面に金属膜が形成されたフィルムコンデンサに存在する絶縁欠陥部周辺の蒸着金属を除去する。
【解決手段】導通検出ユニット(35)により、電圧が印加される第1の分割電極(21a)と、残りの第1の分割電極(21a)とが電気的に絶縁されているかを検出し、この検出結果に基づいて、電圧印加ユニット(32)により第1の分割電極(21a)同士が絶縁状態であるときにのみ、第1の分割電極(21a)に対して電圧を印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレヒーリング装置及びフィルムコンデンサの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、片面に金属膜が蒸着された金属化フィルムを巻芯上に巻回してなるフィルムコンデンサが知られている。このようなフィルムコンデンサは、電子機器や電気機器等において、特に安定した電気特性を要する回路に多く用いられている。また、近年のフィルムコンデンサは、電解コンデンサと比較して低損失であり、信頼性にも優れているため、空調機やハイブリッド自動車等のインバータ回路の平滑コンデンサとしても利用されている。
【0003】
このようなフィルムコンデンサでは、ポリプロピレンやポリエチレンテレフタラートを延伸して厚さ数μm程度に薄膜化するためにピンホールができやすい。そして、フィルム体に金属膜をフィルム体に蒸着させる際に、フィルム体にピンホールが形成されていると、このピンホールに金属が侵入して絶縁欠陥部となることがある。この絶縁欠陥部が存在した状態で製品としてのコンデンサ素子を製造した場合には、耐電圧特性が低く、製品検査時に不良となって歩留まりが悪くなっていた。
【0004】
特許文献1には、フィルムコンデンサに存在する絶縁欠陥部の蒸着金属を連続的に除去し、生産性を向上することができるコンデンサフィルムの製造方法が開示されている。この製造方法では、1枚の連続な金属化フィルムを連続して巻き取りながら、金属化フィルムの表裏に転接する金属ロール間に電圧を印可(プレヒーリング)することで、その電気エネルギーにより絶縁欠陥部の蒸着金属を溶融除去するようにしている。
【特許文献1】特開平3−79017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のフィルムコンデンサの製造方法では、両面に金属膜が形成された金属化フィルムに対してプレヒーリングを行うことは困難であった。すなわち、金属膜に電圧を印加したときに、作業者がフィルムコンデンサの端部に触れていた場合には、長さ方向に連続する金属膜を導通して金属膜全体に電圧が印可された状態となるため、作業者が感電するおそれがあった。
【0006】
ここで、従来のコンデンサフィルムにように、片面のみに金属膜が形成されている場合には、金属膜が形成されていない面に電圧を印加することで、金属化フィルムの端部まで導通することを防止できるが、両面に金属膜が形成されている場合には、どちらの面に対して電圧を印可しても金属化フィルムの端部まで導通してしまうこととなる。
【0007】
このような問題を解決するため、フィルムパスや巻回ローラ等、金属膜が接触する部分を全て絶縁し、且つ容易に作業者が手を触れないようにガードする等の対策を施す必要があるが、巻回機やプレヒーリング装置にこれらの安全対策を施すのは、多大な手間とコストがかかってしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的簡単な構成で、両面に金属膜が形成されたフィルムコンデンサに存在する絶縁欠陥部周辺の蒸着金属を除去することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するため、本発明では、金属化フィルムの一方の面に分割電極を形成し、分割電極同士が電気的に絶縁されているかを確認してから電圧を印可するようにした。
【0010】
具体的に、本発明は、フィルム体(20a)の両面に金属膜(20b)が形成された金属化フィルム(21)に対して電圧を印可することで、該金属化フィルム(21)に存在する絶縁欠陥部(25)周辺の該金属膜(20b)を除去するプレヒーリング装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0011】
すなわち、第1の発明は、前記金属化フィルム(21)の一方の面には、前記金属膜(20b)が長さ方向に分割されてなる複数の分割電極(21a)が形成されており、
前記複数の分割電極(21a)のうち1つに対して電圧を印加する電圧印加手段(32)と、
前記電圧印加手段(32)により電圧が印加される前記分割電極(21a)と、該分割電極(21a)から所定の間隙を存して配置された残りの分割電極(21a)とが電気的に絶縁されているかを検出する導通検出手段(35)とを備え、
前記電圧印加手段(32)は、前記導通検出手段(35)の検出結果に基づいて、前記分割電極(21a)同士が絶縁状態であるときにのみ、該分割電極(21a)に対して電圧を印加するように構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
第1の発明では、導通検出手段(35)により、電圧が印加される分割電極(21a)と該分割電極(21a)から所定の間隙を存して配置された残りの分割電極(21a)とが電気的に絶縁されているかが検出され、この検出結果に基づいて、電圧印加手段(32)により分割電極(21a)同士が絶縁状態であるときにのみ、分割電極(21a)に対して電圧が印加される。
【0013】
このため、電圧印加手段(32)で分割電極(21a)に対して電圧を印加しても、隣り合う分割電極(21a)には導通しないので、金属化フィルム(21)の全面に電圧が印可された状態となることを回避でき、両面に金属膜(20b)が形成された金属化フィルム(21)に対しても、作業者の安全を確保しつつ効率的に絶縁欠陥部(25)周辺の蒸着金属の除去を行うことができる。
【0014】
また、電圧を印可する分割電極(21a)と、残りの分割電極(21a)とが電気的に絶縁されているかを導通検出手段(35)で検出してから電圧を印加するようにしているので、より高い安全性を確保することができる。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、
前記導通検出手段(35)は、前記電圧印加手段(32)から前記金属化フィルム(21)の長さ方向に所定の離間距離を有して配設され、
前記離間距離は、隣り合う前記分割電極(21a)同士の間隙よりも長くなるように設定されていることを特徴とするものである。
【0016】
第2の発明では、導通検出手段(35)と電圧印加手段(32)との離間距離が、隣り合う分割電極(21a)同士の間隙よりも長くなるように設定される。このため、導通検出手段(35)の検出結果に基づいて、分割電極(21a)同士が完全に絶縁状態であることが確認でき、より高い安全性を確保することができる。
【0017】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、
前記金属化フィルム(21)を長さ方向に順次搬送する搬送手段(38)を備え、
前記導通検出手段(35)は、前記電圧印加手段(32)よりも前記金属化フィルム(21)の搬送方向の上流側及び下流側のうち少なくとも一方に配設されていることを特徴とするものである。
【0018】
第3の発明では、導通検出手段(35)が電圧印加手段(32)よりも金属化フィルム(21)の搬送方向の上流側及び下流側のうち少なくとも一方に配設される。このため、電圧を印加した分割電極(21a)から金属化フィルム(21)の両端に向かって導電することを確実に防止することができる。
【0019】
第4の発明は、第1乃至第3の発明のうち何れか1つにおいて、
前記電圧印加手段(32)及び前記導通検出手段(35)は、それぞれローラ状に形成されて、そのローラ面が前記金属化フィルム(21)の分割電極(21a)に当接するように配設されていることを特徴とするものである。
【0020】
第4の発明では、電圧印加手段(32)及び導通検出手段(35)は、それぞれローラ状に形成された電圧印加ローラ(32a)や検出ローラ(35a)を有し、そのローラ面が金属化フィルム(21)の分割電極(21a)に当接される。このため、金属化フィルム(21)と電圧印加ローラ(32a)及び検出ローラ(35a)との接触面積や摩擦抵抗を低減して、搬送時に金属化フィルム(21)にかかる負荷を軽減することができる。
【0021】
第5の発明は、フィルム体(20a)の両面に金属膜(20b)が形成された金属化フィルム(21)を有するフィルムコンデンサの製造方法を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0022】
すなわち、第5の発明は、前記金属化フィルム(21)の一方の面には、前記金属膜(20b)が長さ方向に分割されてなる複数の分割電極(21a)が形成されており、
前記複数の分割電極(21a)のうち1つに対して電圧を印加する電圧印加工程と、
前記電圧印加手段により電圧が印加される前記分割電極(21a)と、該分割電極(21a)から所定の間隙を存して配置された残りの分割電極(21a)とが電気的に絶縁されているかを検出する導通検出工程とを備え、
前記電圧印加工程では、前記導通検出工程における検出結果に基づいて、前記分割電極(21a)同士が絶縁状態であるときにのみ、該分割電極(21a)に対して電圧を印加することで、前記金属化フィルム(21)に存在する絶縁欠陥部(25)周辺の前記金属膜(20b)を除去することを特徴とするものである。
【0023】
第5の発明では、導通検出工程において、電圧が印加される分割電極(21a)と該分割電極(21a)から所定の間隙を存して配置された残りの分割電極(21a)とが電気的に絶縁されているかが検出され、この検出結果に基づいて、電圧印加工程において分割電極(21a)同士が絶縁状態であるときにのみ、分割電極(21a)に対して電圧が印加される。
【0024】
このため、電圧印加工程で分割電極(21a)に対して電圧を印加しても、隣り合う分割電極(21a)には導通しないので、金属化フィルム(21)の全面に電圧が印可された状態となることを回避でき、両面に金属膜(20b)が形成された金属化フィルム(21)に対しても、作業者の安全を確保しつつ効率的に絶縁欠陥部の除去を行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、電圧印加手段(32)で分割電極(21a)に対して電圧を印加しても、隣り合う分割電極(21a)には導通しないので、金属化フィルム(21)の全面に電圧が印可された状態となることを回避でき、両面に金属膜(20b)が形成された金属化フィルム(21)に対しても、作業者の安全を確保しつつ効率的に絶縁欠陥部(25)周辺の蒸着金属の除去を行うことができる。
【0026】
また、電圧を印可する分割電極(21a)と、残りの分割電極(21a)とが電気的に絶縁されているかを導通検出手段(35)で検出してから電圧を印加するようにしているので、より高い安全性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0028】
−全体構成−
本発明の実施形態に係るフィルムコンデンサ(11)は、図1に示すように、巻芯(13)に巻回されたコンデンサ素子(20)の両端部にメタリコン電極(14)が設けられたものであり、例えばインバータ回路とコンバータ回路との間の平滑コンデンサ等に用いられる。
【0029】
詳しくは、前記フィルムコンデンサ(11)は、コンデンサ素子(20)と、該コンデンサ素子(20)が巻回される巻芯(13)と、コンデンサ素子(20)の両端部に設けられた2つのメタリコン電極(14)と、それらのメタリコン電極(14)にそれぞれ電気的に接続された外部端子(16)と、コンデンサ素子(20)の外周面を覆うように配設される絶縁カバー(24)と、絶縁カバー(24)、コンデンサ素子(20)、巻芯(13)、メタリコン電極(14)及び外部端子(16)を封止するための封止樹脂(18)とを備えている。
【0030】
図2は、2枚の金属化フィルムを重ね合わせた状態を示す断面図である。図2に示すように、前記コンデンサ素子(20)は、例えばPVDF系の誘電体フィルムからなる帯状のフィルム体(20a)の両面にアルミニウム等の金属箔を蒸着させて金属膜(20b)を形成した第1及び第2の金属化フィルム(21,22)を厚み方向に2枚重ね合わせてなるもので、巻芯(13)の外周に巻回されるように構成されている。
【0031】
なお、本実施形態では、フィルムコンデンサ(11)として、PVDF系の誘電体フィルムを用いるようにしているが、これに限らず、フィルムコンデンサ(11)として機能する材料であれば、どのようなフィルム材料であってもよい。
【0032】
互いに重ね合わされた第1及び第2の金属化フィルム(21,22)におけるフィルム体(20a)の間には、金属膜(20b)がフィルム体(20a)の長さ方向に分割されてなる複数の分割電極(20c)が形成されている。
【0033】
前記分割電極(20c)は、第1の金属化フィルム(21)の金属膜(20b)を長さ方向に分割してなる第1の分割電極(21a)と、第2の金属化フィルム(22)の金属膜(20b)を長さ方向に分割してなる第2の分割電極(22a)とをそれぞれ対向させて重ね合わせることで構成されている。
【0034】
前記第1の分割電極(21a)は、第1の金属化フィルム(21)の長さ方向に予め分割されたものであり、第2の分割電極(22a)は、第2の金属化フィルム(22)の長さ方向に連続する金属膜(20b)を、第1の金属化フィルム(21)の長さ方向に予め分割された第1の分割電極(21a)の分割位置に対応するように、第1及び第2の金属化フィルム(21,22)の重ね合わせ直前に分割することで形成されたものである。なお、この点については後述するフィルムコンデンサ(11)の製造方法において説明する。
【0035】
図1に示すように、前記巻芯(13)は、円筒状の樹脂部材で構成されている。なお、この円筒状の巻芯(13)の内部には、金属製の芯部を設けてもよい。この場合、芯部は、メタリコン電極(14)を介して外部端子(16)に接続されていて、第1及び第2の金属化フィルム(21,22)で発生した熱を芯部からメタリコン電極(14)及び外部端子(16)を介して外部へ放出することができる。
【0036】
前記メタリコン電極(14)は、巻芯(13)に巻回されて略円柱状に形成されたコンデンサ素子(20)の軸方向両端部にそれぞれ設けられている。このメタリコン電極(14)は、それぞれ、コンデンサ素子(20)の軸方向端部に金属を溶射することによって形成されていて、コンデンサ素子(20)の軸方向端部においてはみ出している第1及び第2の金属化フィルム(21,22)とそれぞれ電気的に導通している。
【0037】
前記外部端子(16)は、その基端部が巻芯(13)に対応する位置で、メタリコン電極(14)と電気的に接続されている。これらの外部端子(16)は、メタリコン電極(14)の径方向外方に向かって延びて、その先端部が封止樹脂(18)から外方に突出して基板(26)に接続されている。
【0038】
前記絶縁カバー(24)は、樹脂材料からなるシート状の部材を、円筒状のコンデンサ素子(20)の外周面に沿うように丸めて円筒状にしたものである。この絶縁カバー(24)は、コンデンサ素子(20)全体を覆うように設けられている。なお、コンデンサ素子(20)の外周側を覆うように絶縁カバー(24)を配設しているが、この限りではなく、絶縁カバー(24)がなく、該コンデンサ素子(20)を封止樹脂(18)で直接、封止するような構成であってもよい。
【0039】
前記封止樹脂(18)は、絶縁カバー(24)の外周側、メタリコン電極(14)及び外部端子(16)の基端部を封止するように設けられている。すなわち、この封止樹脂(18)は、外部端子(16)の先端側を除いて、フィルムコンデンサ(11)の構成部品全体を覆うように設けられている。
【0040】
−プレヒーリング装置−
図3は、金属化フィルムに存在する絶縁欠陥部を除去するプレヒーリング装置の構成を示す概略図、図4は金属化フィルムの絶縁欠陥部周辺を一部拡大して示す側面図、図5は絶縁欠陥部を除去した後の状態を示す側面図である。図3〜図5に示すように、このプレヒーリング装置(30)は、第1の金属化フィルム(21)がロール状に巻き付けられた上流側ローラ(31)から第1の金属化フィルム(21)を引き出して下流側ローラ(38)(搬送手段)で巻き取り、その搬送途中で第1の金属化フィルム(21)に対して電圧を印加することで、第1の金属化フィルム(21)に存在する絶縁欠陥部(25)周辺の蒸着金属を除去するものである。
【0041】
前記第1の金属化フィルム(21)の一方の面(図3では上側の面)には、金属膜(20b)が長さ方向に分割されてなる複数の第1の分割電極(21a)が形成されている。他方の面には、長さ方向に連続する金属膜(20b)が形成されている。そして、第1の巻回ローラ(41)には、第1の金属化フィルム(21)の第1の分割電極(21a)がロールの外側を向くように巻き付けられている。
【0042】
前記上流側ローラ(31)と下流側ローラ(38)との間の搬送経路には、第1の分割電極(21a)に対して電圧を印加する電圧印加ユニット(32)と、電圧印加ユニット(32)よりも上流側及び下流側にそれぞれ配設された検出ローラ(35a)を有する導通検出ユニット(35)とが配設されている。
【0043】
前記電圧印加ユニット(32)は、第1の金属化フィルム(21)を上下から挟み込むように設けられた一対の電圧印加ローラ(32a)と、電圧印加ローラ(32a)に対して電圧を付与する電源部(32b)と、電圧印加ローラ(32a)により第1の分割電極(21a)に対して電圧を印加するか否かを切り替える切替スイッチ(32c)とを備えている。
【0044】
前記電圧印加ローラ(32a)は、そのローラ面が第1の分割電極(21a)及び金属膜(20b)に当接するように配設され、上側の電圧印加ローラ(32a)から第1の分割電極(21a)に向かって電圧が印加されるようになっている。
【0045】
ここで、第1の分割電極(21a)は、第1の金属化フィルム(21)の長さ方向に分割されているから、第1の分割電極(21a)のうち1つに電圧を印加しても、隣り合う第1の分割電極(21a)には導通しないので、金属化フィルム(21)の全面に電圧が印可された状態となることを回避できる。これにより、両面に金属膜(20b)が形成された金属化フィルム(21)に対しても、作業者の安全を確保しつつ効率的に絶縁欠陥部(25)周辺の蒸着金属の除去を行うことができる。
【0046】
前記導通検出ユニット(35)は、電圧印加ユニット(32)により電圧が印加される第1の分割電極(21a)と、この第1の分割電極(21a)と隣り合う第1の分割電極(21a)とが電気的に絶縁されているかを検出するものであり、第1の分割電極(21a)に当接する検出ローラ(35a)と、検出ローラ(35a)の検出結果に基づいて電圧印加ユニット(32)の切替スイッチ(32c)のON/OFF状態を切り替える切替信号を出力する制御部(35b)とを備えている。
【0047】
前記検出ローラ(35a)は、電圧印加ユニット(32)の上流側及び下流側にそれぞれ配設されている。これにより、電圧を印加した第1の分割電極(21a)から第1の金属化フィルム(21)の両端に向かって導電することを確実に防止することができる。
【0048】
また、前記検出ローラ(35a)と電圧印加ローラ(32a)との離間距離は、隣り合う第1の分割電極(21a)同士の間隙よりも長くなるように設定されている。このような構成とすれば、第1の分割電極(21a)同士が完全に絶縁状態であることを、導通検出ユニット(35)の検出結果を確認するだけで確認でき、より高い安全性を確保することができる。
【0049】
前記検出ローラ(35a)で第1の分割電極(21a)同士が絶縁されているかを検出した後、その検出信号は制御部(35b)に送信される。制御部(35b)では、第1の分割電極(21a)同士が絶縁されている場合にのみ、電圧印加ユニット(32)に対して切替スイッチ(32c)をON状態にする切替信号を出力するようになっている。切替スイッチ(32c)がON状態になると、電源部(32b)から電圧印加ローラ(32a)を介して第1の分割電極(21a)に対して電圧が印加され、絶縁欠陥部(25)が存在する場合には、その絶縁欠陥部(25)周辺の蒸着金属が溶融除去される。
【0050】
このように、電圧を印可する第1の分割電極(21a)と、残りの第1の分割電極(21a)とが電気的に絶縁されているかを導通検出ユニット(35)で検出してから電圧印加ユニット(32)で電圧を印加するようにしているので、より高い安全性を確保することができる。
【0051】
なお、本実施形態では、電圧印加ユニット(32)よりも上流側及び下流側の両方に導通検出ユニット(35)を配設しているが、何れか一方のみに配設するようにしても構わない。
【0052】
−プレヒーリング方法−
次に、図3に示すプレヒーリング装置(30)を用いて、第1の金属化フィルム(21)から絶縁欠陥部(25)周辺の蒸着金属を除去したフィルムコンデンサ(11)を製造するためのプレヒーリング方法について説明する。図6は金属化フィルムのプレヒーリング方法を示すフローチャート図、図7は導通検出ユニットの検出結果と電圧の印加状態との関係を示すタイミングチャート図である。
【0053】
図6に示すように、まず、ステップS101では、第1の分割電極(21a)が形成された第1の金属化フィルム(21)がロール状に巻き付けられた上流側ローラ(31)を装置にセットし、続くステップS102に進む。
【0054】
ステップS102では、第1の金属化フィルム(21)を引き出し、下流側ローラ(38)に巻き掛けた後、下流側ローラ(38)を回転駆動させて第1の金属化フィルム(21)を巻き取り、続くステップS103に進む。
【0055】
ステップS103では、導通検出ユニット(35)の検出ローラ(35a)により、電圧を印可する第1の分割電極(21a)と、残りの第1の分割電極(21a)との絶縁状態を検出し、続くステップS104に進む。
【0056】
ステップS104では、制御部(35b)において、検出ローラ(35a)での検出結果に基づいて第1の分割電極(21a)同士が電気的に絶縁されているかを判定する。ステップS104での判定が「YES」の場合には、ステップS105に分岐して、ステップS105で、図7に示すように、制御部(35b)から切替スイッチ(32c)に対して切替スイッチ(32c)をON状態にする切替信号を出力して、第1の分割電極(21a)に対して電圧の印加を行い、続くステップS107に進む。ここで、第1の金属化フィルム(21)に絶縁欠陥部(25)が存在していた場合には、電圧印加ユニット(32)による電圧の印加により、絶縁欠陥部(25)周辺の蒸着金属が溶融除去される。
【0057】
ステップS104での判定が「NO」の場合には、ステップS106に分岐して、ステップS106で、電圧印加ユニット(32)による電圧の印加を停止し、ステップS107に進む。
【0058】
ステップS107では、第1の金属化フィルム(21)の長さ方向の全面にわたってプレヒーリングが行われたかを判定する。ステップS107での判定が「YES」の場合には、処理を終了する。ステップS107での判定が「NO」の場合には、ステップS102に分岐して、処理を繰り返す。
【0059】
−フィルムコンデンサの製造装置−
図8は、フィルムコンデンサの製造装置の構成を示す概略図である。図8に示すように、この製造装置(40)は、第1の金属化フィルム(21)がロール状に巻き付けられた第1の巻回ローラ(41)と、第2の金属化フィルム(22)が巻き付けられた第2の巻回ローラ(45)とから、それぞれ第1及び第2の金属化フィルム(21,22)を引き出して所定の重ね合わせ位置まで搬送し、重ね合わせ位置に配設された巻芯(13)の外周に巻き取るものである。
【0060】
前記第1の金属化フィルム(21)の一方の面(図8では上側の面)には、金属膜(20b)が長さ方向に分割されてなる複数の第1の分割電極(21a)が形成されている。他方の面には、長さ方向に連続する金属膜(20b)が形成されている。そして、第1の巻回ローラ(41)には、第1の金属化フィルム(21)の第1の分割電極(21a)がロールの外側を向くように巻き付けられている。
【0061】
前記第1の巻回ローラ(41)から巻芯(13)までの間の第1の搬送経路には、複数のガイドローラ(42)が配設され、ガイドローラ(42)のローラ面に第1の金属化フィルム(21)が巻き掛けられている。
【0062】
前記第1の搬送経路における巻芯(13)寄りの位置には、第1の金属化フィルム(21)に形成された第1の分割電極(21a)の分割位置を検出する検出ユニット(46)が配設されている。この検出ユニット(46)は、電気的又は光学的に分割位置を検出するものであり、この検出結果は後述する除去ユニット(47)に送られる。
【0063】
前記第2の金属化フィルム(22)の両面には、長さ方向に連続する金属膜(20b)がそれぞれ形成されて、第2の巻回ローラ(45)に巻き付けられている。第2の巻回ローラ(45)から巻芯(13)までの間の第2の搬送経路には、複数のガイドローラ(42)が配設され、ガイドローラ(42)のローラ面に第2の金属化フィルム(22)が巻き掛けられている。
【0064】
前記第2の搬送経路における巻芯(13)寄りの位置には、第2の金属化フィルム(22)表面の金属膜(20b)との間で放電を行うことで金属膜(20b)を除去する除去ユニット(47)が配設されている。この除去ユニット(47)は、検出ユニット(46)の検出結果に基づいて、第2の金属化フィルム(22)の金属膜(20b)を幅方向に沿って溝状に除去するものであり、金属膜(20b)が除去されることで、第1の金属化フィルム(21)の第1の分割電極(21a)に対向するように長さ方向に分割された第2の分割電極(22a)が形成されるようになっている。
【0065】
前記検出ユニット(46)及び除去ユニット(47)よりも搬送方向の下流側には、第1及び第2の金属化フィルム(21,22)を挟み込むための上下一対の圧着ローラ(43,43)が配設されている。この圧着ローラ(43)は、それぞれ上下方向に移動自在に構成され、第1及び第2の金属化フィルム(21,22)を圧着したり又は圧着を解除することができるようになっている。
【0066】
前記巻芯(13)は、図示しない駆動モータに接続され、駆動モータの回転駆動により第1及び第2の金属化フィルム(21,22)を重ね合わせた状態で巻芯(13)の外周に巻き取ることができるようになっている。
【0067】
前記巻芯(13)の下方には、カッターユニット(48)が配設されている。このカッターユニット(48)は、カッター刃の上下移動により巻芯(13)に巻き取られた第1及び第2の金属化フィルム(21,22)を切断するものである。
【0068】
また、前記巻芯(13)の左方には、ヒートシールユニット(49)が配設されている。このヒートシールユニット(49)は、先端部が左右方向に移動自在とされ、先端部を巻芯(13)に巻き取られた第1及び第2の金属化フィルム(21,22)に押し当てることでヒートシール処理を行うものである。
【0069】
なお、本実施形態では、金属膜(20b)と除去ユニット(47)との間で放電を行うことで、金属膜(20b)を除去する構成について説明したが、この形態に限定するものではなく、金属膜(20b)に対してレーザーを照射することで、金属膜(20b)を除去して第2の分割電極(22a)を形成するようにしてもよい。
【0070】
−フィルムコンデンサの製造方法−
次に、図8の製造装置(40)を用いたフィルムコンデンサ(11)の製造方法について説明する。図9はフィルムコンデンサの製造工程を示すフローチャート図である。図9に示すように、まず、ステップS201では、第1の分割電極(21a)が形成された第1の金属化フィルム(21)がロール状に巻き付けられた第1の巻回ローラ(41)を装置にセットする一方、長さ方向に連続する金属膜(20b)が両面に形成された第2の金属化フィルム(22)がロール状に巻き付けられた第2の巻回ローラ(45)を装置にセットし、続くステップS202に進む。
【0071】
ステップS202では、第1及び第2の金属化フィルム(21,22)をそれぞれ引き出し、ガイドローラ(42)、圧着ローラ(43)、及び巻芯(13)に巻き掛けるとともに、巻芯(13)を回転駆動して第1及び第2の金属化フィルム(21,22)を重ね合わせながら巻き取り、続くステップS203に進む。
【0072】
ステップS203では、検出ユニット(46)により第1の金属化フィルム(21)に形成された第1の分割電極(21a)の分割位置を検出し、続くステップS204に進む。
【0073】
ステップS204では、検出ユニット(46)の検出結果に基づいて、第1の分割電極(21a)の分割位置に対応するように、第2の金属化フィルム(22)の金属膜(20b)と除去ユニット(47)との間で放電を行うことで第2の分割電極(22a)を形成し、続くステップS205に進む。
【0074】
ステップS205では、巻芯(13)の外周に所定の巻き数だけ第1及び第2の金属化フィルム(21,22)が巻き取られたか否かを判定する。ステップS205での判定が「YES」の場合には、ステップS206に分岐して、ステップS206においてカッターユニット(48)で巻芯(13)に巻き取られた第1及び第2の金属化フィルム(21,22)を切断し、ヒートシールユニット(49)でヒートシール処理を行い、処理を終了する。ステップS205での判定が「NO」の場合には、ステップS202に分岐して処理を繰り返す。
【0075】
以上のように、本発明の実施形態に係るプレヒーリング装置(30)によれば、電圧印加ユニット(32)で第1の分割電極(21a)に対して電圧を印加しても、隣り合う第1の分割電極(21a)には導通しないので、第1の金属化フィルム(21)の全面に電圧が印可された状態となることを回避でき、両面に金属膜(20b)が形成された第1の金属化フィルム(21)に対しても、作業者の安全を確保しつつ効率的に絶縁欠陥部(25)周辺の蒸着金属の除去を行うことができる。
【0076】
また、電圧を印可する第1の分割電極(21a)と、残りの第1の分割電極(21a)とが電気的に絶縁されているかを導通検出ユニット(35)で検出してから電圧を印加するようにしているので、より高い安全性を確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上説明したように、本発明は、比較的簡単な構成で、両面に金属膜が形成されたフィルムコンデンサに存在する絶縁欠陥部周辺の蒸着金属を除去することができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施形態に係るフィルムコンデンサの概略構成を示す縦断面図である。
【図2】2枚の金属化フィルムを重ね合わせた状態を示す断面図である。
【図3】金属化フィルムに存在する絶縁欠陥部を除去するプレヒーリング装置の構成を示す概略図である。
【図4】金属化フィルムの絶縁欠陥部周辺を一部拡大して示す側面図である。
【図5】絶縁欠陥部を除去した後の状態を示す側面図である。
【図6】金属化フィルムのプレヒーリング方法を示すフローチャート図である。
【図7】導通検出ユニットの検出結果と電圧の印加状態との関係を示すタイミングチャート図である。
【図8】フィルムコンデンサの製造装置の構成を示す概略図である。
【図9】フィルムコンデンサの製造工程を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0079】
11 フィルムコンデンサ
20a フィルム体
20b 金属膜
21 第1の金属化フィルム
21a 第1の分割電極
25 絶縁欠陥部
32 電圧印加ユニット(電圧印加手段)
35 導通検出ユニット(導通検出手段)
38 下流側ローラ(搬送手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム体(20a)の両面に金属膜(20b)が形成された金属化フィルム(21)に対して電圧を印可することで、該金属化フィルム(21)に存在する絶縁欠陥部(25)周辺の該金属膜(20b)を除去するプレヒーリング装置であって、
前記金属化フィルム(21)の一方の面には、前記金属膜(20b)が長さ方向に分割されてなる複数の分割電極(21a)が形成されており、
前記複数の分割電極(21a)のうち1つに対して電圧を印加する電圧印加手段(32)と、
前記電圧印加手段(32)により電圧が印加される前記分割電極(21a)と、該分割電極(21a)から所定の間隙を存して配置された残りの分割電極(21a)とが電気的に絶縁されているかを検出する導通検出手段(35)とを備え、
前記電圧印加手段(32)は、前記導通検出手段(35)の検出結果に基づいて、前記分割電極(21a)同士が絶縁状態であるときにのみ、該分割電極(21a)に対して電圧を印加するように構成されていることを特徴とするプレヒーリング装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記導通検出手段(35)は、前記電圧印加手段(32)から前記金属化フィルム(21)の長さ方向に所定の離間距離を有して配設され、
前記離間距離は、隣り合う前記分割電極(21a)同士の間隙よりも長くなるように設定されていることを特徴とするプレヒーリング装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記金属化フィルム(21)を長さ方向に順次搬送する搬送手段(38)を備え、
前記導通検出手段(35)は、前記電圧印加手段(32)よりも前記金属化フィルム(21)の搬送方向の上流側及び下流側のうち少なくとも一方に配設されていることを特徴とするプレヒーリング装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のうち何れか1項において、
前記電圧印加手段(32)及び前記導通検出手段(35)は、それぞれローラ状に形成されて、そのローラ面が前記金属化フィルム(21)の分割電極(21a)に当接するように配設されていることを特徴とするプレヒーリング装置。
【請求項5】
フィルム体(20a)の両面に金属膜(20b)が形成された金属化フィルム(21)を有するフィルムコンデンサの製造方法であって、
前記金属化フィルム(21)の一方の面には、前記金属膜(20b)が長さ方向に分割されてなる複数の分割電極(21a)が形成されており、
前記複数の分割電極(21a)のうち1つに対して電圧を印加する電圧印加工程と、
前記電圧印加手段により電圧が印加される前記分割電極(21a)と、該分割電極(21a)から所定の間隙を存して配置された残りの分割電極(21a)とが電気的に絶縁されているかを検出する導通検出工程とを備え、
前記電圧印加工程では、前記導通検出工程における検出結果に基づいて、前記分割電極(21a)同士が絶縁状態であるときにのみ、該分割電極(21a)に対して電圧を印加することで、前記金属化フィルム(21)に存在する絶縁欠陥部(25)周辺の前記金属膜(20b)を除去することを特徴とするフィルムコンデンサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−10258(P2010−10258A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165596(P2008−165596)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】