説明

プレポリマー、プレポリマー組成物、空孔構造を有する高分子量重合体及び絶縁膜

【課題】 半導体の製造に有用な高い耐熱性及び低い比誘電率を有する高分子量重合体及び絶縁膜とその製造法、これらを形成しうるプレポリマー及びプレポリマー組成物を提供する。
【解決手段】 本発明のプレポリマーは、それぞれの化合物の分子内に2以上の官能基又は官能基群を有しており、一方の化合物の官能基又は官能基群と他方の化合物の官能基又は官能基群との結合により重合して空孔構造を有する高分子量重合体を形成することが可能な2つの化合物A及びBの反応により得られるプレポリマーであって、前記化合物Aが、4官能化合物、3官能化合物、及び2官能化合物の3種の化合物から選択された少なくとも2種の組み合わせであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の製造等に用いられる絶縁膜であって、特に耐熱性や機械的強度に優れ低い比誘電率を示す絶縁膜とその製造法、該絶縁膜を得るために有用なプレポリマー、該プレポリマーを含むプレポリマー組成物、及び空孔構造を有する高分子量重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
超LSIの層間絶縁膜の低誘電率化には空孔構造の構築が効果的であるとされており、シラン系の化合物を用いた膜では、発泡剤等を用いた空孔構造の導入が提案されている。しかし、この方法では、空孔の形成は可能なものの、空孔の結合(空孔の連続化)が避けがたいため、機械的強度、熱的安定性に難点があり、半導体の製造における配線プロセスにおいて、膜破壊が生じるなどの重大な問題を抱えていた。
【0003】
また、層間絶縁膜として、ポリイミド誘導体からなる高分子膜、ポリアリルエーテル誘導体からなる高分子膜、ポリパラキシレン誘導体からなる高分子膜等の有機高分子膜も知られている。このような有機高分子膜では、有機高分子における架橋部位を切断することにより多孔質化を実現させている。しかし、架橋部位を切断すると、機械的強度や耐熱性が低下してしまう。
【0004】
一方、アダマンタン骨格を含有するポリベンズアゾールは、高耐熱樹脂として有用であることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。特に、3官能・4官能のアダマンタンを用いた高架橋型ポリベンズアゾール類は、内部に分子レベルの空孔を多数有するため、比誘電率が低く、かつ機械的強度と耐熱性を備えているため、層間絶縁膜材料として極めて有用であることが知られている(例えば、特許文献1参照)。これらの高架橋型ポリベンズアゾール類は、ポリリン酸等の縮合剤存在下で加熱するなどの製法にて合成することが可能であるが、得られた高架橋樹脂は溶媒への溶解性が極めて低いため、塗布などによる基板上への薄膜形成は極めて困難であり、層間絶縁膜として必要な膜厚を得ることはほとんど不可能である。
【0005】
また、全芳香族系鎖状のポリベンズアゾール類の薄膜形成方法として、原材料となるモノマーアミン水溶液上に、もう片方の原材料モノマーとなるアルデヒド誘導体を展開させ、気液界面上で重合させた膜を水平付着法で基板上に累積させた後、空気中で熱処理することでポリベンズアゾールの薄膜を形成する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この方法では薄膜形成までにかなりの時間を要するため工業生産には適しておらず、また最終工程で前駆体のポリイミンに酸化的熱処理を施すため、得られたポリベンズアゾール膜自身が酸化される可能性が高く、絶縁被膜に必要な機能である低誘電率化が期待できない。
【0006】
【非特許文献1】「ジャーナル・オブ・ポリマーサイエンス(Journal of polymer science)」 PartA−1 (1970),8(12),p.3665−6
【特許文献1】特開2001−332543号公報
【特許文献2】特開昭62−183881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、半導体の製造に有用な高い耐熱性及び低い比誘電率を有する高分子量重合体及び絶縁膜とその製造法、これらを形成しうるプレポリマー及びプレポリマー組成物を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、層間絶縁膜用途として必要な厚みを有する薄膜を容易に形成しうるプレポリマー及びプレポリマー組成物、並びにこれらから形成される高分子量重合体及び絶縁膜を提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、高い架橋度及び高い空孔率を有する高分子量重合体及び絶縁膜と、これらを形成しうるプレポリマー及びプレポリマー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、空孔構造を有する高分子量重合体の製造を2段階で行う、すなわち、特定のモノマーを用いて溶媒に溶解しやすいプレポリマーを予め調製し、次いでこのプレポリマーを熱処理等により高分子量重合体に転化すると、比誘電率が極めて低く且つ所望の厚みを有する絶縁膜が効率よく得られることを見出した。より具体的には、官能基同士の反応により重合して空孔構造を有する高分子量重合体を形成しうる2つの化合物(モノマー)のうち、一方の化合物として、官能基(群)の数の異なる2種以上の化合物を組み合わせて用い、これらを適当な条件で反応させて、前記高分子量重合体の前駆体であるプレポリマーを調製し、これを適宜な溶媒に溶解させて基材上に塗布した後に、例えば熱処理等を施すと、鎖延長、環化、架橋等の反応が円滑に進行して大きな空孔が確実に形成されて、高い空孔率からなる空孔構造を有する高分子量重合体からなる、耐熱性や機械的強度が高く比誘電率の極めて低い絶縁膜が得られること、及び前記プレポリマーが溶媒に対する溶解性に優れるため、層間絶縁膜として必要な厚みを有する薄膜を容易に形成できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
【0011】
すなわち、本発明は、それぞれの化合物の分子内に2以上の官能基又は官能基群を有しており、一方の化合物の官能基又は官能基群と他方の化合物の官能基又は官能基群との結合により重合して空孔構造を有する高分子量重合体を形成することが可能な2つの化合物A及びBの反応により得られるプレポリマーであって、前記化合物Aが、4官能化合物、3官能化合物、及び2官能化合物の3種の化合物から選択された少なくとも2種の組み合わせであるプレポリマーを提供する。
前記プレポリマーの重量平均分子量は、例えば200〜100000である。
【0012】
前記プレポリマーとして、一方の化合物の官能基又は官能基群と他方の化合物の官能基又は官能基群とが互いに反応して鎖状の結合を形成する第1の反応過程と、次いで前記結合部位において環を形成する第2の反応過程とを含む重合過程により空孔構造を有する高分子量重合体を形成することが可能な2つの化合物A及びBの反応により得られるプレポリマーであって、前記第1の反応過程により得られるプレポリマーが挙げられる。このようなプレポリマーとしては、化合物Aの有する官能基又は官能基群と化合物Bの有する官能基又は官能基群との反応において、第1の反応過程で形成される鎖状の結合がアミド結合、エステル結合又はチオエステル結合であり、第2の反応過程で形成されうる環がイミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、又はイミド環であるプレポリマー、例えば、化合物Aの有する官能基又は官能基群がカルボキシル基又はアミノ基であり、化合物Bの有する官能基又は官能基群が2つのアミノ基、アミノ基とヒドロキシル基、アミノ基とメルカプト基、又は2つのカルボキシル基であるプレポリマー等が例示される。
【0013】
本発明のプレポリマーにおいて、前記化合物Aを構成する4官能化合物、3官能化合物、及び2官能化合物として、それぞれ下記式(1)、(2)、及び(3)
【化1】

(式中、Zaは4価の有機基を示し、Ra、Rb、Rc、Rdは、同一又は異なって、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、ハロホルミル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、又は保護基で保護されていてもよいメルカプト基を示し、Ya、Yb、Yc、Ydは、同一又は異なって、単結合又は2価の芳香族性又は非芳香族性環式基を示し、La、Lcは、同一又は異なって、水素原子、炭化水素基又はハロゲン原子を示す)
で表される化合物が挙げられる。
【0014】
また、前記化合物Bとして、下記式(4)
【化2】

(式中、環Zbは単環又は多環の芳香族性又は非芳香族性環を示し、Re、Rf、Rg、Rhは環Zbに結合している置換基であって、同一又は異なって、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいメルカプト基、又は保護基で保護されていてもよいカルボキシル基を示す)
で表される化合物が挙げられる。
【0015】
本発明のプレポリマーには、また、下記式(5)で表されるテトラカルボン酸誘導体、下記式(6)で表されるトリカルボン酸誘導体、及び下記式(7)で表されるジカルボン酸誘導体
【化3】

(式中、Zaは4価の有機基を示し、R1、R2、R3、R4は、同一又は異なって、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基又はハロホルミル基を示し、Y1、Y2、Y3、Y4は、同一又は異なって、単結合又は2価の芳香族性又は非芳香族性環式基を示し、L1、L3は、同一又は異なって、水素原子、炭化水素基又はハロゲン原子を示す)
から選択された少なくとも2種の組み合わせであるポリカルボン酸誘導体からなる化合物Aと、下記式(8)
【化4】

(式中、環Z1は単環又は多環の芳香族性又は非芳香族性環を示し、R5、R6、R7、R8は環Z1に結合している置換基であって、同一又は異なって、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、又は保護基で保護されていてもよいメルカプト基を示す。但し、R5、R6、R7、R8のうち少なくとも2つは、保護基で保護されていてもよいアミノ基である)
で表されるポリアミン誘導体からなる化合物Bとの反応により得られるプレポリマーであって、式(5)、(6)又は(7)で表されるポリカルボン酸誘導体のR1、R2、R3、R4における保護基で保護されていてもよいカルボキシル基又はハロホルミル基と、式(8)で表されるポリアミン誘導体のR5、R6、R7、R8における保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、又は保護基で保護されていてもよいメルカプト基との反応によりアミド結合、エステル結合又はチオエステル結合が形成されたプレポリマーも含まれる。
【0016】
このようなポリマーの第1の例として、下記式(5)及び(6)
【化5】

(式中、Zaは4価の有機基を示し、R1、R2、R3、R4は、同一又は異なって、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基又はハロホルミル基を示し、Y1、Y2、Y3、Y4は、同一又は異なって、単結合又は2価の芳香族性又は非芳香族性環式基を示し、L1は、同一又は異なって、水素原子、炭化水素基又はハロゲン原子を示す)
で表されるポリカルボン酸誘導体と、下記式(8)
【化6】

(式中、環Z1は単環又は多環の芳香族性又は非芳香族性環を示し、R5、R6、R7、R8は環Z1に結合している置換基であって、同一又は異なって、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、又は保護基で保護されていてもよいメルカプト基を示す。但し、R5、R6、R7、R8のうち少なくとも2つは、保護基で保護されていてもよいアミノ基である)
で表されるポリアミン誘導体との反応により得られる、下記式(9)
【化7】

[式中、Za、Y1、Y2、Y3、Y4は前記に同じ。Waは、L1又はW1を示し、W1は、R1、R2、R3、R4の何れか、又は下記式(10)
【化8】

(式中、環Z1は前記に同じ。R5〜8はR5、R6、R7、R8の何れかを示すことを意味する。Xは、R1〜R4とR5〜R8との反応により形成された結合であって、アミド結合、エステル結合又はチオエステル結合を示す。A1は、R5、R6、R7、R8の何れか、又は下記式(11)若しくは(12)
【化9】

(式中、Za、L1、W1、Xは前記に同じ。Y1〜4はY1、Y2、Y3、Y4の何れかであり、Y2〜4はY2、Y3、Y4の何れかであることを示す)
で表される基を示す)
で表される基を示す。但し、式(9)中に示されている3つのW1及びWaのうち少なくとも1つは前記式(10)で表される基であって、分子内に少なくとも前記式(11)及び(12)で表される基を含んでいる。W1、X、A1がそれぞれ複数個存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい]
で表される化合物であるプレポリマーが挙げられる。
【0017】
前記プレポリマーの第2の例として、下記式(6)及び(7)
【化10】

(式中、Zaは4価の有機基を示し、R2、R3、R4は、同一又は異なって、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基又はハロホルミル基を示し、Y1、Y2、Y3、Y4は、同一又は異なって、単結合又は2価の芳香族性又は非芳香族性環式基を示し、L1、L3は、同一又は異なって、水素原子、炭化水素基又はハロゲン原子を示す)
で表されるポリカルボン酸誘導体と、下記式(8)
【化11】

(式中、環Z1は単環又は多環の芳香族性又は非芳香族性環を示し、R5、R6、R7、R8は環Z1に結合している置換基であって、同一又は異なって、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、又は保護基で保護されていてもよいメルカプト基を示す。但し、R5、R6、R7、R8のうち少なくとも2つは、保護基で保護されていてもよいアミノ基である)
で表されるポリアミン誘導体との反応により得られる、下記式(13)
【化12】

[式中、Za、L1、Y1、Y2、Y3、Y4は前記に同じ。Wcは、W2又はL3を示し、W2は、R2、R3、R4の何れか、又は下記式(14)
【化13】

(式中、環Z1は前記に同じ。R5〜8はR5、R6、R7、R8の何れかを示すことを意味する。Xは、R1〜R4とR5〜R8との反応により形成された結合であって、アミド結合、エステル結合又はチオエステル結合を示す。A2は、R5、R6、R7、R8の何れか、又は下記式(15)若しくは(16)
【化14】

(式中、Za、L1、L3、W2、Xは前記に同じ。Y2〜4はY2、Y3、Y4の何れかであり、Y2,4はY2又はY4の何れかであることを示す)
で表される基を示す)
で表される基を示す。但し、式(13)中に示されている2つのW2及びWcのうち少なくとも1つは前記式(14)で表される基であって、分子内に少なくとも前記式(15)及び(16)で表される基を含んでいる。W2、X、A2がそれぞれ複数個存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい]
で表される化合物であるプレポリマーが挙げられる。
【0018】
前記プレポリマーの第3の例として、下記式(5)及び(7)
【化15】

(式中、Zaは4価の有機基を示し、R1、R2、R3、R4は、同一又は異なって、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基又はハロホルミル基を示し、Y1、Y2、Y3、Y4は、同一又は異なって、単結合又は2価の芳香族性又は非芳香族性環式基を示し、L1、L3は、同一又は異なって、水素原子、炭化水素基又はハロゲン原子を示す)
で表されるポリカルボン酸誘導体と、下記式(8)
【化16】

(式中、環Z1は単環又は多環の芳香族性又は非芳香族性環を示し、R5、R6、R7、R8は環Z1に結合している置換基であって、同一又は異なって、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、又は保護基で保護されていてもよいメルカプト基を示す。但し、R5、R6、R7、R8のうち少なくとも2つは、保護基で保護されていてもよいアミノ基である)
で表されるポリアミン誘導体との反応により得られる、下記式(17)
【化17】

[式中、Za、Y1、Y2、Y3、Y4は前記に同じ。Waは、W3又はL1を示し、Wcは、W3又はL3を示し、W3は、R2、R4の何れか、又は下記式(18)
【化18】

(式中、環Z1は前記に同じ。R5〜8はR5、R6、R7、R8の何れかを示すことを意味する。Xは、R1〜R4とR5〜R8との反応により形成された結合であって、アミド結合、エステル結合又はチオエステル結合を示す。A3は、R5、R6、R7、R8の何れか、又は下記式(19)若しくは(20)
【化19】

(式中、Za、L1、L3、W3、Xは前記に同じ。Y1〜4はY1、Y2、Y3、Y4の何れかであり、Y2,4はY2又はY4の何れかであることを示す)
で表される基を示す)
で表される基を示す。但し、式(17)中に示されている2つのW3、Wa及びWcのうち少なくとも1つは前記式(18)で表される基であって、分子内に少なくとも前記式(19)及び(20)で表される基を含んでいる。W3、X、A3がそれぞれ複数個存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい]
で表される化合物であるプレポリマーが挙げられる。
【0019】
本発明のプレポリマーは、前記式中のZaが4価のアダマンチル基であることが好ましい。
【0020】
本発明は、さらに、前記のプレポリマーを溶媒に溶解させたプレポリマー組成物を提供する。
【0021】
本発明は、さらにまた、前記のプレポリマーをさらに反応に付して得られる空孔構造を有する高分子量重合体を提供する。
【0022】
本発明は、また、前記の空孔構造を有する高分子量重合体からなる絶縁膜を提供する。
【0023】
本発明は、さらに、前記のプレポリマーを溶媒に溶解させたプレポリマー組成物を基材上に塗布した後、さらに反応に付して空孔構造を有する高分子量重合体からなる絶縁膜を形成することを特徴とする絶縁膜の製造法を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明のプレポリマーによれば、最終目的物である空孔構造を有する高分子量重合体の構成単位(モノマー単位)が、適度に多量化した構造を有しているため、これをさらに反応に付すと、重縮合等による高分子量化(鎖延長、架橋)や環化反応等が円滑に進行して、所望の大きさの空孔を多量に有する均質性の高い高分子量重合体が生成する。この際、2つの化合物のうち一方の化合物として、分子内に有する官能基(群)の数が互いに異なる化合物を2種以上組み合わせて用いるため、官能基同士の反応により重合して、架橋点間の距離が長い構造からなる大きい空孔が形成される。このため、誘電率が極めて低く、耐熱性及び機械的強度の高い絶縁膜を得ることができる。また、プレポリマーは溶媒に対する溶解性に優れるので、層間絶縁膜用途として必要な膜厚を有する絶縁膜を容易に形成することができる。
【0025】
本発明の高分子量重合体及び絶縁膜は高い空孔率を有するため、低い比誘電率を示す。また、高い耐熱性と機械的強度を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明のプレポリマーは化合物Aと化合物Bとの反応により得られる化合物であって、高分子量重合体の前駆体となるものである。該化合物Aと化合物Bは、それぞれ分子内に2以上の官能基又は官能基群を有しており、一方の化合物の官能基又は官能基群と他方の化合物の官能基又は官能基群との結合により重合して空孔構造を有する高分子量重合体を形成可能な2つの化合物の組み合わせである。なお、本明細書では、結合(重合反応)に関与する官能基又は官能基群を2つ有する場合を「2官能」、3つ有する場合を「3官能」、4つ有する場合を「4官能」と称することがある。
【0027】
化合物A及び化合物Bの中心骨格は、炭素原子、酸素原子、珪素原子、窒素原子、硫黄原子などで構成でき、その構成原子の数は、通常100以下である。また、化合物A及び化合物Bの分子量は、例えば50〜1500、好ましくは100〜1000程度である。
【0028】
空孔構造を有する高分子量重合体を形成可能な化合物A及びBの組み合わせとしては、例えば、中心骨格に結合した複数(例えば2〜4個)の官能基又は官能基群が2次元構造又は3次元構造をなす化合物Aと、中心骨格に結合した複数(例えば2〜4個、好ましくは2個)の官能基又は官能基群が1次元構造(直線状)又は2次元構造(角度を有する直鎖状)をなす化合物Bとの組み合わせが挙げられる。この場合、化合物Aは高分子量重合体の結節点又は架橋点(頂点)を形成し、化合物Bは該結節点又は架橋点をつなぐ連結部(辺)を形成する。いくつかの結節点又は架橋点といくつかの連結部に囲まれた部位に空孔が形成される。前記高分子量重合体は、分岐構造(特に多分岐構造)を有する重合体(高分子架橋体)を構成するが、部分的に分岐を持たない鎖状構造を有していてもよい。
【0029】
化合物Aは、4官能化合物、3官能化合物、及び2官能化合物の3種の化合物から選択された少なくとも2種の組み合わせで構成されている。すなわち、4官能化合物と3官能化合物、4官能化合物と2官能化合物、又は3官能化合物と2官能化合物からなる2種の組み合わせ、4官能化合物、3官能化合物、及び2官能化合物の3種の組み合わせで構成できる。なお、分子内に有する官能基(群)の数が同じ化合物として複数の化合物を用いてもよい。
【0030】
上記の場合における化合物Aの中心骨格としては、例えば、アダマンタン骨格、テトラフェニルアダマンタン骨格、ノルボルナン骨格、テトラメチルノルボルナン骨格、ノルボルネン骨格、テトラメチルノルボルネン骨格等の非芳香族性環骨格(橋架け環骨格等);テトラフェニルメタン骨格等の炭素原子を中心に有する骨格;ポルフィリン骨格等の2次元構造を有する骨格;ブタン骨格等の鎖状の骨格(例えば、炭素数4〜10程度の鎖状の炭化水素骨格等)などが挙げられる。化合物Aの中心骨格部分の分子量は、例えば40〜1460程度である。また、化合物Bの中心骨格としては、例えば、ベンゼン環やビフェニル環等の単環又は多環の芳香族性又は非芳香族性環骨格が挙げられる。
【0031】
官能基としては、反応性を有するものであれば特に限定されないが、代表的な例として、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、シラノール基、ハロゲン原子、カーボアニオン、又はこれらを含有する基などが挙げられる。なお、これらの基は反応性の基に誘導体化されていてもよく、保護基で保護されていてもよい。反応性の基としては、例えばカルボキシル基においては、ハロホルミル基、酸無水物基(保護基で保護されたカルボキシル基としても分類できる)などが挙げられる。保護基としては有機合成の分野で慣用の保護基を使用できる。
【0032】
互いに反応して化学結合を形成する官能基又は官能基群の組み合わせとしては、例えば、カルボキシル基とアミノ基との組み合わせ(アミド結合の形成)、カルボキシル基とヒドロキシル基との組み合わせ(エステル結合の形成)、カルボキシル基とメルカプト基との組み合わせ(チオエステル結合の形成)、ヒドロキシル基とヒドロキシル基との組み合わせ(エーテル結合の形成)、ヒドロキシル基とメルカプト基との組み合わせ(チオエーテル結合の形成)、炭素−炭素結合を形成可能な2つの官能基の組み合わせ、炭素−窒素結合を形成可能な2つの官能基の組み合わせ;1個のカルボキシル基と1,2位又は1,3位の炭素原子に結合した2個のアミノ基との組み合わせ(イミダゾール環等の2つの窒素原子を有する5員又は6員環の形成)、1個のカルボキシル基と1,2位又は1,3位の炭素原子に結合したアミノ基及びヒドロキシル基との組み合わせ(オキサゾール環等の1つの窒素原子と1つの酸素原子を有する5員又は6員環の形成)、1個のカルボキシル基と1,2位又は1,3位の炭素原子に結合した1個のアミノ基及び1個のメルカプト基との組み合わせ(チアゾール環等の1つの窒素原子と1つのイオウ原子を有する5員又は6員環の形成)、1,2位又は1,3位の炭素原子に結合した2個のカルボキシル基と1個のアミノ基との組み合わせ(5員又は6員のイミド環の形成)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
本発明のプレポリマーは、このような化合物A及びBから得られる、空孔構造を有する高分子量重合体に至る前の反応生成物である。プレポリマーの概念には、分子量(重合度)の低いオリゴマーのほか、最終的な高分子量重合体の構造の前駆構造を有する前駆体ポリマーも含まれる。前記前駆体ポリマーとしては、例えば、環化によって環が形成されて最終的な高分子量重合体が得られる場合における環化前の鎖状の構造を有するポリマーなどが挙げられる。プレポリマーの重量平均分子量は、例えば200〜100000、好ましくは300〜50000、さらに好ましくは1000〜30000程度である。
【0034】
プレポリマーは分岐構造(特に多分岐構造)を有する化合物であるが、部分的に分岐を持たない鎖状の化合物であってもよい。プレポリマーの立体構造は、通常、最終的な空孔構造を有する高分子量重合体の立体構造の部分構造と同一であるかそれと近似した構造である。プレポリマーをさらに高分子量化したり、架橋、環化することにより、空孔構造を有する高分子量重合体が得られる。
【0035】
本発明のプレポリマーの好ましい例として、一方の化合物の官能基又は官能基群と他方の化合物の官能基又は官能基群とが互いに反応して鎖状の結合を形成する第1の反応過程と、次いで前記結合部位において環を形成する第2の反応過程とを含む重合反応により空孔構造を有する高分子量重合体を形成することが可能な2つの化合物A及びBの反応により得られるプレポリマーであって、前記第1の反応過程により得られるプレポリマーが挙げられる。このようなプレポリマーをさらに環化反応に付すことにより、前記2つの化合物の中心骨格が環を介して結合した耐熱性及び機械的強度の高い高分子量重合体が得られる。
【0036】
上記プレポリマーには、例えば、第1の反応過程で形成される鎖状の結合がアミド結合、エステル結合又はチオエステル結合であり、第2の反応過程で形成されうる環がイミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、又はイミド環であるプレポリマー等が含まれる。このようなプレポリマーは、前記官能基又は官能基群としてカルボキシル基又はアミノ基を有する化合物Aと、前記官能基又は官能基群として2つのアミノ基、アミノ基とヒドロキシル基、アミノ基とメルカプト基、又は2つのカルボキシル基を有する化合物Bとを、アミド化、エステル化又はチオエステル化反応に付すことにより得ることができる。
【0037】
本発明のプレポリマーにおいて、前記化合物Aの代表的な例としては、前記式(1)で表される4官能化合物、前記式(2)で表される3官能化合物、及び前記式(3)で表される2官能化合物の3種の化合物から選択された少なくとも2種の組み合わせが挙げられる。式(1)〜(3)中、Zaは4価の有機基を示し、Ra、Rb、Rc、Rdは、同一又は異なって、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、ハロホルミル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいメルカプト基を示し、Ya、Yb、Yc、Ydは、同一又は異なって、単結合又は2価の芳香族性又は非芳香族性環式基を示し、La、Lcは、同一又は異なって、水素原子、炭化水素基又はハロゲン原子を示す。この化合物では、保護基で保護されたカルボキシル基、ハロホルミル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基又は保護基で保護されていてもよいメルカプト基が、前記官能基又は官能基群に相当する。
【0038】
aにおける有機基としては、4価の芳香族性又は非芳香族性環式基、4価の非環式基、及びこれらが複数個結合した4価の基が挙げられる。前記4価の芳香族性環式基を構成する芳香環としては、ベンゼン環などの芳香族炭素環やピロール環などの芳香族複素環が複数個、単結合、又は2価の炭化水素基(メチレン基、ビニレン基等)、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、硫黄原子等の1又は2以上の連結基を介して結合した多環(例えば、ポルフィリン環等)などが挙げられる。4価の非芳香族性環式基を構成する非芳香族性環としては、単環又は多環(橋架け環)の脂環式炭素環又は非芳香族性複素環(例えば、アダマンタン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環等)が挙げられる。4価の非環式基としては、例えば、炭素原子;ブタン−1,2,3,4−テトライル基、2,3−ジメチルブタン−1,2,3,4−テトライル基等の鎖状の炭化水素基などが挙げられる。なかでも、Zaとして4価のアダマンチル基、特に4つの橋頭位に結合部位を有するアダマンチル基(1,3,5,7−アダマンタンテトライル基)が好ましく用いられる。
【0039】
a、Rb、Rc、Rdにおける保護基で保護されていてもよいカルボキシル基の「保護基」としては、例えば、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、ヘキシルオキシなどのC1-10アルコキシ基;メトキシメチルオキシ、メトキシエトキシメチルオキシ基などの(C1-4アルコキシ)1-21-4アルコキシ基など)、シクロアルキルオキシ基(シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシなどのC3-20シクロアルキルオキシ基など)、テトラヒドロフラニルオキシ基、テトラヒドロピラニルオキシ基、アリールオキシ基(フェノキシ、メチルフェノキシ基などのC6-20アリールオキシ基)、アラルキルオキシ基(ベンジルオキシ、ジフェニルメチルオキシ基などのC7-18アラルキルオキシ基)、トリアルキルシリルオキシ基(トリメチルシリルオキシ、トリエチルシリルオキシ基などのトリC1-4アルキルシリルオキシ基)、置換基を有してもよいアミノ基(アミノ基;メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノなどのモノまたはジ置換C1-6アルキルアミノ基;ピロリジノ、ピペリジノ基などの環状アミノ基)、置換基を有してもよいヒドラジノ基[ヒドラジノ基、N−フェニルヒドラジノ基、アルコキシカルボニルヒドラジノ基(t−ブトキシカルボニルヒドラジノ基などのC1-10アルコキシカルボニルヒドラジノ基など)、アラルキルオキシカルボニルヒドラジノ基(ベンジルオキシカルボニルヒドラジノ基などのC7-18アラルキルオキシカルボニルヒドラジノ基)など]、アシルオキシ基(アセトキシ、プロピオニルオキシ基などのC1-10アシルオキシ基など)、アシル基(アセチル、プロピオニル基などのC1-10アシル基など)などが挙げられる。カルボキシル基の保護基は、これらに限定されず、有機合成の分野で用いられる他の保護基も使用できる。
【0040】
保護基で保護されたカルボキシル基の好ましい例には、C1-6アルコキシ−カルボニル基、(C1-4アルコキシ)1-2−C1-4アルコキシ−カルボニル基、N−置換カルバモイル基、テトラヒドロピラニルオキシカルボニル基、テトラヒドロフラニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、トリアルキルシリルオキシカルボニル基が含まれる。
【0041】
a、Rb、Rc、Rdにおけるハロホルミル基(ハロゲン化カルボニル基)としては、クロロホルミル基(塩化カルボニル基)、ブロモホルミル基(臭化カルボニル基)、フルオロホルミル基(フッ化カルボニル基)、ヨードホルミル基(ヨウ化カルボニル基)が挙げられる。
【0042】
a、Rb、Rc、Rdにおける保護基で保護されていてもよいアミノ基の「保護基」としては、例えば、アシル基(ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル基などのC1-6脂肪族アシル基;ベンゾイル、ナフトイル基などの炭素数6〜20程度の芳香族アシル基など)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニルなどのC1-4アルコキシ−カルボニル基など)、アラルキルオキシ−カルボニル基(ベンジルオキシカルボニル基、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基などのC7-20アラルキルオキシカルボニル基)、アルキリデン基(メチリデン、エチリデン、プロピリデン、イソプロピリデン、ブチリデン、イソブチリデン、ペンチリデン、シクロペンチリデン、ヘキリデン、シクロヘキシリデン基などの脂肪族アルキリデン基;ベンジリデン、メチルフェニルメチリデンなどの芳香族アルキリデン基など)などが挙げられる。アミノ基の保護基としては、これらに限定されず、有機合成の分野で慣用のものを使用できる。
【0043】
また、保護基で保護されていてもよいアミノ基には、反応や最終的な高分子架橋体の物性を損なわない範囲で、モノ置換アミノ基も含まれる。モノ置換アミノ基の例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基などのアルキルアミノ基;シクロヘキシルアミノ基などのシクロアルキルアミノ基;フェニルアミノ基などのアリールアミノ基;ベンジルアミノ基などのアラルキルアミノ基などが挙げられる。
【0044】
a、Rb、Rc、Rdにおける保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基や保護基で保護されていてもよいメルカプト基の「保護基」には、例えば、アルキル基(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル基などのC1-6アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの3〜15員のシクロアルキル基)、アラルキル基(ベンジル基などのC7-20アラルキル基など)、置換メチル基(メトキシメチル、ベンジルオキシメチル、t−ブトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル基などの総炭素数2〜10程度の置換メチル基)、置換エチル基(1−エトキシエチル、1−メチル−1−メトキシエチル基など)、アシル基(ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル基などのC1-10の脂肪族アシル基;シクロヘキシルカルボニル基などのC4-20脂環式アシル基;ベンゾイル、ナフトイル基などのC7-20芳香族アシル基など)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニルなどのC1-4アルコキシ−カルボニル基など)、アラルキルオキシカルボニル基(ベンジルオキシカルボニル基、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基などのC7-20アラルキルオキシ−カルボニル基)などが含まれる。ヒドロキシル基及びメルカプト基の保護基としては、これらに限定されず、有機合成の分野で慣用のものを使用できる。
【0045】
a、Yb、Yc、Ydにおける2価の芳香族性環式基に対応する芳香族性環には、単環または多環の芳香族炭素環及び芳香族複素環が含まれる。なお、本明細書において「多環」とは、隣接する2つの環が2個以上の原子を共有した縮合環構造を有するもののほか、2つ以上の環が単結合、2価の炭化水素基(メチレン基、ビニレン基等)、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、硫黄原子等の1又は2以上の連結基を介して結合した構造を有するものも含む意味に用いる。
【0046】
単環の芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環が挙げられる。多環の芳香族炭化水素環としては、例えば、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ピレン環などの2つ以上の芳香環がそれぞれ2個以上の原子を共有した縮合環構造をもつもの;ビフェニル環、ビフェニレン環、フルオレン環、スチルベン環などの2つ以上の芳香環が単結合等の連結基を介して結合した構造のものなどが挙げられる。芳香族複素環としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を1又は2以上含む単環または多環の芳香族複素環が挙げられる。芳香族複素環の具体例としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピコリン環などの単環;キノリン環、イソキノリン環、アクリジン環、フェナジン環などの多環などが挙げられる。これらの環は、反応や高分子架橋体の物性を損なわない範囲で置換基を有していてもよい。
【0047】
a、Yb、Yc、Ydにおける2価の非芳香族性環式基に対応する非芳香族性環には、単環又は多環の脂環式炭素環及び非芳香族性複素環が含まれる。脂環式炭素環としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは3〜12員)程度のシクロアルカン環;シクロプロペン環、シクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは3〜10員)程度のシクロアルケン環などの単環の脂環式炭素環;アダマンタン環、パーヒドロインデン環、デカリン環、パーヒドロフルオレン環、パーヒドロアントラセン環、パーヒドロフェナントレン環、トリシクロデカン環、トリシクロウンデカン環、テトラシクロドデカン環、パーヒドロアセナフテン環、パーヒドロフェナレン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環など2〜6環程度の橋かけ環式炭素環などが挙げられる。非芳香族性複素環としては、例えば、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を有する5又は6員の複素環、これらを含む縮合環などが挙げられる。前記非芳香族性環式基は、反応や高分子架橋体の物性を損なわない範囲で置換基を有していてもよい。
【0048】
a、Lcにおける炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、及びこれらの結合した基などが含まれる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、デシル、ドデシル基などの炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜6)程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基;ビニル、アリル、1−ブテニル、3−メチル−4−ペンテニル基などの炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜5)程度の直鎖状又は分岐鎖状アルケニル基;エチニル、プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル基などの炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜5)程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキニル基などが挙げられる。
【0049】
脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは3〜12員)程度のシクロアルキル基、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは3〜10員)程度のシクロアルケニル基などの単環の脂環式炭化水素基;アダマンタン環、パーヒドロインデン環、デカリン環、パーヒドロフルオレン環、パーヒドロアントラセン環、パーヒドロフェナントレン環、トリシクロデカン環、トリシクロウンデカン環、テトラシクロドデカン環、パーヒドロアセナフテン環、パーヒドロフェナレン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環など2〜4環程度の橋かけ環式炭素環などを有する橋かけ環炭化水素基などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフチル基などの炭素数6〜20(好ましくは6〜14)程度の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0050】
脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した炭化水素基には、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル基などのシクロアルキル−アルキル基(例えば、C3-20シクロアルキル−C1-4アルキル基など)が含まれる。また、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した炭化水素基には、アラルキル基(例えば、C7-18アラルキル基など)、アルキル置換アリール基(例えば、1〜4個程度のC1-4アルキル基が置換したフェニル基又はナフチル基など)などが含まれる。
【0051】
前記脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、及びこれらの結合した基は、置換基を有していてもよい。置換基としては反応や高分子架橋体の物性を損なわないものであれば特に限定されない。
【0052】
a、Lcにおけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0053】
式(1)で表される4官能化合物の代表的な例として、例えば、ピロメリット酸などのベンゼン環を中心骨格に有するベンゼン誘導体;1,3,5,7−アダマンタンテトラカルボン酸、1,3,5,7−テトラキス(4−カルボキシフェニル)アダマンタン、1,3,5,7−アダマンタンテトラアミンなどのアダマンタン環を中心骨格に有するアダマンタン誘導体;2,3,5,6−ノルボルナンテトラカルボン酸、2,3,5,6−ノルボルネンテトラカルボン酸、2,3,5,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)ノルボルナン、2,3,5,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)ノルボルネンなどのノルボルナン環又はノルボルネン環を中心骨格に有するノルボルナン又はノルボルネン誘導体;テトラキス(4−カルボキシフェニル)メタンなどの炭素原子を中心骨格に有するテトラアリールメタン誘導体;エリスリトールなどのブタン骨格を中心骨格とするブタン誘導体;ポルフィリンの4つの含窒素環に官能基を有するポルフィリン環を中心骨格とするポルフィリン誘導体などが挙げられる。また、4官能化合物の具体例として、後述の式(5)で表されるポリカルボン酸誘導体も挙げられる。これらの4官能化合物は、それぞれ、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる
【0054】
式(2)で表される3官能化合物の代表的な例として、4官能化合物の代表的な例として上記に例示の化合物と同様の骨格からなり、3つの官能基を有する化合物、例えば、1,3,6−ベンゼントリカルボン酸などのベンゼン環を中心骨格に有するベンゼン誘導体;1,3,5−アダマンタントリカルボン酸などのアダマンタン環を中心骨格に有するアダマンタン誘導体;2,5,7−ノルボルナントリカルボン酸などのノルボルナン環又はノルボルネン環を中心骨格に有するノルボルナン又はノルボルネン誘導体などが挙げられる。また、3官能化合物の具体例として、後述の式(6)で表されるポリカルボン酸誘導体も挙げられる。これらの3官能化合物は、それぞれ、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0055】
式(3)で表される2官能化合物の代表的な例として、4官能化合物の代表的な例として上記に例示の化合物と同様の骨格からなり、2つの官能基を有する化合物、例えば、テレフタル酸などのベンゼン環を中心骨格に有するベンゼン誘導体;1,5−アダマンタンジカルボン酸などのアダマンタン環を中心骨格に有するアダマンタン誘導体;2,5−ノルボルナンジカルボン酸などのノルボルナン環又はノルボルネン環を中心骨格に有するノルボルナン又はノルボルネン誘導体などが挙げられる。また、2官能化合物の具体例として、後述の式(7)で表されるポリカルボン酸誘導体も挙げられる。これらの2官能化合物は、それぞれ、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0056】
式(1)〜(3)で表される化合物の構造としては、立体的に嵩高い構造(容積の大きい構造)が好ましい。特に、式(1)の4官能化合物は、Zaを中心とし、Ra、Rb、Rc、Rdを頂点とするほぼ正四面体の構造であるのが好ましく、式(2)の3官能化合物は、Zaを中心とし、Laを頂点、Rb、Rc、Rdを底面とするほぼ正三角錐の構造であるのが好ましい。また、式(3)の2官能化合物は、Zaを中心とし、RaとRcがほぼ対称となる構造であるのが好ましい。
【0057】
本発明のプレポリマーにおいて、化合物Bの代表的な例として、前記式(4)で表される化合物が挙げられる。式(4)中、環Zbは単環又は多環の芳香族性又は非芳香族性環を示し、Re、Rf、Rg、Rhは環Zbに結合している置換基であって、同一又は異なって、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいメルカプト基、又は保護基で保護されていてもよいカルボキシル基を示す。この化合物では、Re、Rf、Rg、Rhが、前記官能基又は官能基群に相当する。
【0058】
e、Rf、Rg、Rhのうち一対の基(例えば、ReとRf、RgとRh)は、環化の容易さの点から、それぞれ、環Zbの構成原子の1,2位(α位)又は1,3位(β位)の位置に結合しているのが好ましい。また、該一対の基は、2つのアミノ基、アミノ基とヒドロキシル基、アミノ基とメルカプト基、2つのカルボキシル基の何れかの組み合わせが好ましい。このような一対の基を有する化合物Bは、官能基又は官能基群として1個のカルボキシル基又は2個のアミノ基を有する化合物Aと環を形成可能である。
【0059】
環Zbにおける単環又は多環の芳香族性環には芳香族炭素環及び芳香族複素環が含まれる。単環の芳香族炭素環としては、ベンゼン環が挙げられる。多環の芳香族炭素環としては、例えば、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環、ピレン環などの2つ以上の芳香環がそれぞれ2個以上の原子を共有した縮合環構造をもつもの;ビフェニル環、ビフェニレン環、フルオレン環、スチルベン環などの2つ以上の芳香環が1又は2以上の連結基[例えば、単結合、2価の炭化水素基(メチレン基、ビニレン基等)、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、硫黄原子等]を介して結合した構造を有するものなどが挙げられる。芳香族複素環としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を1又は2以上含む単環または多環の芳香族複素環が挙げられる。芳香族複素環の具体例としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピコリン環などの単環;キノリン環、イソキノリン環、アクリジン環、フェナジン環などの多環などが挙げられる。
【0060】
環Zbにおける単環又は多環の非芳香族性環には脂環式炭化水素環及び非芳香族性複素環が含まれる。該非芳香族性環としては、前記Zaにおける非芳香族性環式基に対応する非芳香族性環などが挙げられる。環Zbにおける単環又は多環の芳香族性又は非芳香族性環は、反応や高分子架橋体の物性を損なわない範囲で置換基を有していてもよい。
【0061】
e、Rf、Rg、Rhにおける保護基で保護されていてもよいアミノ基の「保護基」としては、前記Ra、Rb、Rc、Rdにおけるアミノ基の保護基と同様のものが挙げられる。また、アミノ基の保護基としては、複数のアミノ基を同時に保護しうる保護基(多官能保護基)を使用することもできる。このような保護基には、例えば、カルボニル基、オキサリル基、ブタン−2,3−ジイリデン基などが含まれる。このような保護基を使用した場合には、Re、Rf、Rg、Rhのうちの2つの基がが同時に一つの多官能保護基に保護され、環Zbに隣接する環が形成される。また、Re、Rf、Rg、Rhにおける保護基で保護されていてもよいアミノ基には、反応や最終的な高分子架橋体の物性を損なわない範囲で、モノ置換アミノ基も含まれる。モノ置換アミノ基の例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基などのアルキルアミノ基;シクロヘキシルアミノ基などのシクロアルキルアミノ基;フェニルアミノ基などのアリールアミノ基;ベンジルアミノ基などのアラルキルアミノ基などが挙げられる。
【0062】
e、Rf、Rg、Rhにおける保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいメルカプト基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基の「保護基」としては、前記Ra、Rb、Rc、Rdにおけるヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基の保護基として示したものと同様のものが挙げられる。
【0063】
式(4)で表される化合物の具体例としては、例えば、後述の式(8)で表されるポリアミン誘導体のほか、Re、Rf、Rg、Rhが保護基で保護されていてもよいカルボキシル基である化合物(例えば、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸又はその誘導体等)などが挙げられる。これらの化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0064】
本発明のプレポリマーには、前記式(5)、(6)、(7)で表されるポリカルボン酸酸誘導体から選択された少なくとも2種の組み合わせである化合物Aと、前記式(8)で表されるポリアミン誘導体からなる化合物Bとの反応により得られるプレポリマーであって、式(5)、(6)又は(7)で表されるポリカルボン酸誘導体のR1、R2、R3、R4における保護基で保護されていてもよいカルボキシル基又はハロホルミル基と、式(8)で表されるポリアミン誘導体のR5、R6、R7、R8における保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、又は保護基で保護されていてもよいメルカプト基との反応によりアミド結合、エステル結合又はチオエステル結合が形成されたプレポリマーも含まれる。なお、本明細書では、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基がZaに直接結合していない化合物も、便宜上ポリカルボン酸誘導体と称する。
【0065】
式(5)、(6)、(7)のZaにおける4価の有機基は、式(1)、(2)、(3)のZaにおける4価の有機基と同様である。R1、R2、R3、R4における保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、ハロホルミル基は、Ra等における保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、ハロホルミル基と同様である。Y1、Y2、Y3、Y4における2価の芳香族性又は非芳香族性環式基は、Yaにおける2価の芳香族性又は非芳香族性環式基と同様である。また、L1、L3における炭化水素基、ハロゲン原子は、La、Lcにおける炭化水素基、ハロゲン原子と同様である。
【0066】
式(5)、(6)、(7)で表されるポリカルボン酸誘導体は、R1〜R4がアルコキシカルボニル基やアリールオキシカルボニル基等の場合はポリカルボン酸エステルであり、R1〜R4が置換基を有してもよいカルバモイル基の場合は、ポリカルボン酸アミドであり、R1〜R4がハロホルミル基の場合はポリカルボン酸ハライドである。
【0067】
好ましいR1〜R4には、カルボキシル基、C1-6アルコキシ−カルボニル基、(C1-4アルコキシ)1-2−C1-4アルコキシ−カルボニル基、N−置換カルバモイル基、テトラヒドロピラニルオキシカルボニル基、テトラヒドロフラニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、トリアルキルシリルオキシカルボニル基、ハロホルミル基が含まれる。
【0068】
式(5)で表されるテトラカルボン酸誘導体(テトラカルボン酸及びその誘導体)には、R1、R2、R3、R4の4つの官能基全てがカルボキシル基である化合物、1つの官能基が保護基で保護されたカルボキシル基又はハロホルミル基である化合物、2つの官能基が保護基で保護されたカルボキシル基又はハロホルミル基である化合物、3つの官能基が保護基で保護されたカルボキシル基又はハロホルミル基である化合物、4官能基全てが保護基で保護されたカルボキシル基又はハロホルミル基である化合物が含まれる。
【0069】
式(5)で表されるテトラカルボン酸誘導体の代表的な例として、Zaが4価のアダマンタンチル基である化合物を例示すると、1,3,5,7−アダマンタンテトラカルボン酸、1,3,5,7−テトラキス(4−カルボキシフェニル)アダマンタン;1−メトキシカルボニル−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸、1−(t−ブトキシカルボニル)−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸、1−テトラヒドロピラニル(THP)オキシカルボニル−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸、1−フェノキシカルボニル−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸、1−メトキシメチル(MEM)オキシカルボニル−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸、1−トリメチルシリル(TMS)オキシカルボニル−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸、1,3,5−トリカルボキシ−7−アダマンタンカルボン酸クロリド、1−ジエチルカルバモイル−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸、1−(1−ピロリジニルカルボニル)−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸、1,3,5−トリス(4−カルボキシフェニル)−7−(4−メトキシカルボニルフェニル)アダマンタン;1,3−ビス(メトキシカルボニル)−5,7−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ビス(t−ブトキシカルボニル)−5,7−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ビス(テトラヒドロピラニルオキシカルボニル)−5,7−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ビス(フェノキシカルボニル)−5,7−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ビス(メトキシメチルオキシカルボニル)−5,7−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ビス(トリメチルシリルオキシカルボニル)−5,7−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−5,7−アダマンタンジカルボン酸ジクロリド、1,3−ビス(ジエチルカルバモイル)−5,7−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ビス(1−ピロリジニルカルボニル)−5,7−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ビス(4−カルボキシフェニル)−5,7−ビス(4−メトキシカルボニルフェニル)アダマンタン;1,3,5−トリス(メトキシカルボニル)−7−アダマンタンモノカルボン酸、1,3,5−トリス(t−ブトキシカルボニル)−7−アダマンタンモノカルボン酸、1,3,5−トリス(テトラヒドロピラニルオキシカルボニル)−7−アダマンタンモノカルボン酸、1,3,5−トリス(フェノキシカルボニル)−7−アダマンタンモノカルボン酸、1,3,5−トリス(メトキシメチルオキシカルボニル)−7−アダマンタンモノカルボン酸、1,3,5−トリス(トリメチルシリルオキシカルボニル)−7−アダマンタンモノカルボン酸、1−カルボキシ−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸トリクロリド、1,3,5−トリス(ジエチルカルバモイル)−7−アダマンタンモノカルボン酸、1,3,5−トリス(1−ピロリジニルカルボニル)−7−アダマンタンモノカルボン酸、1−(4−カルボキシフェニル)−3,5,7−トリス(4−メトキシカルボニルフェニル)アダマンタン;1,3,5,7−テトラキス(メトキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス(t−ブトキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス(テトラヒドロピラニルオキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス(フェノキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス(メトキシメチルオキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス(トリメチルシリルオキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5,7−アダマンタンテトラカルボン酸テトラクロリド、1,3,5,7−テトラキス(ジエチルカルバモイル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス(1−ピロリジニルカルボニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス(4−メトキシカルボニルフェニル)アダマンタンなどが挙げられる。
【0070】
これらのテトラカルボン酸又はその誘導体は、それぞれ、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0071】
式(6)で表されるトリカルボン酸誘導体(トリカルボン酸及びその誘導体)には、3官能基全てがカルボキシル基である化合物、1つの官能基が保護基で保護されたカルボキシル基又はハロホルミル基である化合物、2つの官能基が保護基で保護されたカルボキシル基又はハロホルミル基である化合物、3官能基全てが保護基で保護されたカルボキシル基又はハロホルミル基である化合物が含まれる。
【0072】
式(6)で表されるトリカルボン酸誘導体の代表的な例として、Zaが4価のアダマンタンチル基である化合物を例示すると、7−メチル−1,3,5−アダマンタントリカルボン酸、7−フェニル−1,3,5−アダマンタントリカルボン酸、1,3,5−トリス(4−カルボキシフェニル)アダマンタン、1,3,5−トリス(4−カルボキシフェニル)−7−メチルアダマンタン、1,3,5−トリス(4−カルボキシフェニル)−7−フェニルアダマンタン;1−メトキシカルボニル−3,5−アダマンタンジカルボン酸、1−(t−ブトキシカルボニル)−3,5−アダマンタンジカルボン酸、1−テトラヒドロピラニルオキシカルボニル−3,5−アダマンタンジカルボン酸、1−フェノキシカルボニル−3,5−アダマンタンジカルボン酸、1−メトキシメチルオキシカルボニル−3,5−アダマンタンジカルボン酸、1−トリメチルシリルオキシカルボニル−3,5−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−5−アダマンタンカルボン酸クロリド、1−ジエチルカルバモイル−3,5−アダマンタンジカルボン酸、1−ピロリジニルカルボニル−3,5−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ビス(4−カルボキシフェニル)−5−(4−メトキシカルボニルフェニル)アダマンタン;1,3−ビス(メトキシカルボニル)−5−アダマンタンモノカルボン酸、1,3−ビス(t−ブトキシカルボニル)−5−アダマンタンモノカルボン酸、1,3−ビス(テトラヒドロピラニルオキシカルボニル)−5−アダマンタンモノカルボン酸、1,3−ビス(フェノキシカルボニル)−5−アダマンタンモノカルボン酸、1,3−ビス(メトキシメチルオキシカルボニル)−5−アダマンタンモノカルボン酸、1,3−ビス(トリメチルシリルオキシカルボニル)−5−アダマンタンモノカルボン酸、1−カルボキシ−3,5−アダマンタンジカルボン酸ジクロリド、1,3−ビス(ジエチルカルバモイル)−5−アダマンタンモノカルボン酸、1,3−ビス(1−ピロリジニルカルボニル)−5−アダマンタンモノカルボン酸、1−(4−カルボキシフェニル)−3,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェニル)−アダマンタン;1,3,5−トリス(メトキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5−トリス(t−ブトキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5−トリス(テトラヒドロピラニルオキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5−トリス(フェノキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5−トリス(メトキシメチルオキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5−トリス(トリメチルシリルオキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5−アダマンタントリカルボン酸トリクロリド、1,3,5−トリス(ジエチルカルバモイル)アダマンタン、1,3,5−トリス(1−ピロリジニルカルボニル)アダマンタン、1,3,5−トリス(4−メトキシカルボニルフェニル)アダマンタンなどが挙げられる。
【0073】
これらのトリカルボン酸又はその誘導体は、それぞれ、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0074】
式(7)で表されるジカルボン酸誘導体(ジカルボン酸及びその誘導体)には、2官能基全てがカルボキシル基である化合物、1つの官能基が保護基で保護されたカルボキシル基又はハロホルミル基である化合物、2官能基全てが保護基で保護されたカルボキシル基又はハロホルミル基である化合物が含まれる。
【0075】
式(7)で表されるジカルボン酸誘導体の代表的な例として、Zaが4価のアダマンタンチル基である化合物を例示すると、1,3−アダマンタンジカルボン酸、5−メチル−1,3−アダマンタンジカルボン酸、5−フェニル−1,3−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ビス(4−カルボキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(4−カルボキシフェニル)−5−メチルアダマンタン、1,3−ビス(4−カルボキシフェニル)−5−フェニルアダマンタン;1−メトキシカルボニル−3−アダマンタンモノカルボン酸、1−(t−ブトキシカルボニル)−3−アダマンタンモノカルボン酸、1−テトラヒドロピラニルオキシカルボニル−3−アダマンタンモノカルボン酸、1−フェノキシカルボニル−3−アダマンタンモノカルボン酸、1−メトキシメチルオキシカルボニル−3−アダマンタンモノカルボン酸、1−トリメチルシリルオキシカルボニル−3−アダマンタンモノカルボン酸、1−カルボキシ−3−アダマンタンカルボン酸クロリド、1−ジエチルカルバモイル−3−アダマンタンモノカルボン酸、1−ピロリジニルカルボニル−3−アダマンタンモノカルボン酸、1−(4−カルボキシフェニル)−3−(4−メトキシカルボニルフェニル)アダマンタン;1,3−ビス(メトキシカルボニル)アダマンタン、1,3−ビス(t−ブトキシカルボニル)アダマンタン、1,3−ビス(テトラヒドロピラニルオキシカルボニル)アダマンタン、1,3−ビス(フェノキシカルボニル)アダマンタン、1,3−ビス(メトキシメチルオキシカルボニル)アダマンタン、1,3−ビス(トリメチルシリルオキシカルボニル)アダマンタン、1,3−アダマンタンジカルボン酸ジクロリド、1,3−ビス(ジエチルカルバモイル)アダマンタン、1,3−ビス(1−ピロリジニルカルボニル)アダマンタン、1,3−ビス(4−メトキシカルボニルフェニル)アダマンタンなどが挙げられる。
【0076】
これらのジカルボン酸又はその誘導体は、それぞれ、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0077】
前記式(5)、(6)、(7)で表されるポリカルボン酸誘導体は、公知の方法により、又は公知の有機合成反応、公知のカルボキシル基への保護基の導入法(例えば、エステル化、アミド化による方法等)等を利用することにより得ることができる。
【0078】
前記式(8)の環Z1における単環又は多環の芳香族性又は非芳香族性環は、環Zbにおける単環又は多環の芳香族性又は非芳香族性環と同様である。R5、R6、R7、R8における保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいメルカプト基は、Re等における保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいメルカプト基と同様である。式(8)において、R5、R6、R7、R8のうち少なくとも2つは、保護基で保護されていてもよいアミノ基である。本発明では、例えば少なくともR6とR7が保護基で保護されていてもよいアミノ基である場合には、R5とR6、R7とR8は、それぞれ、式(5)、(6)、又は(7)で表されるアダマンタンポリカルボン酸のR1〜R4の何れかと反応して環を形成可能な位置にあるのが好ましく、特に、5員環又は6員環を形成できるように、環Zaの構成原子の1,2位(α位)又は1,3位(β位)の位置に結合しているのが好ましい。
【0079】
前記式(8)で表されるポリアミン誘導体としては、(i)R5、R6、R7、R8のうちの保護基で保護されていてもよいアミノ基が全て保護基で保護されていないアミノ基である化合物、(ii)R5、R6、R7、R8の少なくとも1つがアルキリデン基で保護されたアミノ基である化合物(すなわち、イミン誘導体)、(iii)R5、R6、R7、R8の少なくとも1つがアシルアミノ基である化合物(すなわち、アミド誘導体)、(iv)R5、R6、R7、R8の少なくとも1つがアルコキシカルボニル基やアラルキルオキシカルボニル基で保護されたアミノ基である化合物(すなわち、カルバミン酸エステル誘導体)、(v)R5、R6、R7、R8の少なくとも1つがモノ置換アミノ基である化合物などが例示される。
【0080】
前記(i)〜(v)に例示されるポリアミン誘導体の代表的な化合物として、環Z1をベンゼン環に限り、また、保護基を有している場合の保護基の数も4置換体又は2置換体に限定した化合物を以下に例示するが、これらに限られるものではない。すなわち、環Z1がビフェニル環等の場合にも、以下の化合物に対応する化合物が例示される。
【0081】
前記(i)R5、R6、R7、R8のうちの保護基で保護されていてもよいアミノ基が全て保護基で保護されていないアミノ基である化合物の代表的な例として、1,2,4,5−テトラアミノベンゼン、1,4−ジアミノ−2,5−ジヒドロキシベンゼン、1,5−ジアミノ−2,4−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジアミノ−2,5−ジメルカプトベンゼン、1,5−ジアミノ−2,4−ジメルカプトベンゼンなどが挙げられる。
【0082】
前記(ii)R5、R6、R7、R8の少なくとも1つがアルキリデン基で保護されたアミノ基である化合物(すなわち、イミン誘導体)の代表的な例として、下記式で表される化合物などが挙げられる。
【化20】

【0083】
前記イミン誘導体には、式(8)におけるR5、R6が共にアルキリデン基で保護されたアミノ基であって、N,N″−ジイソプロピリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N′′′−ジイソプロピリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N″−ジシクロヘキシリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N′′′−ジシクロヘキシリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N″−ジベンジリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N′′′−ジベンジリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンなどのR7、R8が共にアミノ基であるイミン誘導体;N,N′,N″,N′′′−テトライソプロピリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N′,N″,N′′′−テトラシクロヘキシリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N′,N″,N′′′−テトラベンジリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンなどのR7、R8が共にアルキリデン基で保護されたアミノ基であるイミン誘導体などが含まれる。
【0084】
さらに、前記イミン誘導体には、式(8)におけるR5、R6が共にアルキリデン基で保護されたアミノ基であって、N,N″−ジイソプロピリデン−N′,N′′′−ジメチル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N′′′−ジイソプロピリデン−N′,N″−ジメチル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N″−ジシクロヘキシリデン−N′,N′′′−ジメチル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N′′′−ジシクロヘキシリデン−N′,N′′′−ジメチル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N″−ジベンジリデン−N′,N′′′−ジメチル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N′′′−ジベンジリデン−N′,N′′′−ジメチル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N″−ジイソプロピリデン−N′,N′′′−ジフェニル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N′′′−ジイソプロピリデン−N′,N″−ジフェニル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N″−ジシクロヘキシリデン−N′,N′′′−ジフェニル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N′′′−ジシクロヘキシリデン−N′,N′′′−ジフェニル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N″−ジベンジリデン−N′,N′′′−ジフェニル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N′′′−ジベンジリデン−N′,N′′′−ジフェニル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンなどのR7、R8が共にモノ置換アミノ基であるイミン誘導体が含まれる。
【0085】
前記イミン誘導体には、上記の他に、N,N′−ジイソプロピリデン−2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゼンジアミン、N,N′−ジイソプロピリデン−2,4−ジヒドロキシ−1,5−ベンゼンジアミン、N,N′−ジシクロヘキシリデン−2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゼンジアミン、N,N′−ジシクロヘキシリデン−2,4−ジヒドロキシ−1,5−ベンゼンジアミン、N,N′−ジベンジリデン−2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゼンジアミン、N,N′−ジベンジリデン−2,4−ジヒドロキシ−1,5−ベンゼンジアミンなどのR7、R8が共にヒドロキシル基であるイミン誘導体;N,N′−ジイソプロピリデン−2,5−ジメルカプト−1,4−ベンゼンジアミン、N,N′−ジイソプロピリデン−2,4−ジメルカプト−1,5−ベンゼンジアミン、N,N′−ジシクロヘキシリデン−2,5−ジメルカプト−1,4−ベンゼンジアミン、N,N′−ジシクロヘキシリデン−2,4−ジメルカプト−1,5−ベンゼンジアミン、N,N′−ジベンジリデン−2,5−ジメルカプト−1,4−ベンゼンジアミン、N,N′−ジベンジリデン−2,4−ジメルカプト−1,5−ベンゼンジアミンなどのR7、R8が共にメルカプト基であるイミン誘導体が含まれる。
【0086】
前記(iii)R5、R6、R7、R8の少なくとも1つがアシルアミノ基である化合物(すなわち、アミド誘導体)としては、下記式で表される化合物などが例示される。
【化21】

【0087】
前記アミド誘導体には、式(8)におけるR5、R6、が共にアシルアミノ基であって、1,2,4,5−テトラキス(アセトアミノ)ベンゼンなどのR7、R8、が共にアシルアミノ基であるアミド誘導体;1,4−ビス(アセトアミノ)−2,5−ビス(メチルアミノ)ベンゼン、1,5−ビス(アセトアミノ)−2,4−ビス(メチルアミノ)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−2,5−ビス(メチルアミノ)ベンゼン、1,5−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−2,4−ビス(メチルアミノ)ベンゼン、1,4−ビス(アセトアミノ)−2,5−ビス(フェニルアミノ)ベンゼン、1,5−ビス(アセトアミノ)−2,4−ビス(フェニルアミノ)ベンゼンなどのR7、R8が共にモノ置換アミノ基であるアミド誘導体;1,4−ビス(アセトアミノ)−2,5−ジアセトキシベンゼン、1,5−ビス(アセトアミノ)−2,4−ジアセトキシベンゼン、1,4−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−2,5−ジメトキシカルボニルオキシベンゼン、1,5−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−2,4−ジメトキシカルボニルオキシベンゼンなどのR7、R8が共に保護基で保護されたヒドロキシル基であるアミド誘導体;1,4−ビス(アセトアミノ)−2,5−ジアセチルチオベンゼン、1,5−ビス(アセトアミノ)−2,4−ジアセチルチオベンゼンなどのR7、R8が共に保護基で保護されたメルカプト基であるアミド誘導体が含まれる。
【0088】
前記(iv)R5、R6、R7、R8の少なくとも1つがアルコキシカルボニル基やアラルキルオキシカルボニル基で保護されたアミノ基である化合物(すなわち、カルバミン酸エステル誘導体)としては、下記式で表される化合物などが例示される。
【化22】

【0089】
前記カルバミン酸エステル誘導体には、式(8)におけるR5、R6、が共にアルコキシカルボニル基であって、1,2,4,5−テトラキス(アセチルアミノ)ベンゼンなどのR7、R8が共にアルコキシカルボニル基であるカルバミン酸エステル誘導体;1,4−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−2,5−ビス(フェニルアミノ)ベンゼン、1,5−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−2,4−ビス(フェニルアミノ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メチルアミノ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(フェニルアミノ)ベンゼンなどのR7、R8が共にモノ置換アミノ基であるカルバミン酸エステル誘導体;1,4−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−2,5−ジメトキシカルボニルオキシベンゼン、1,5−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−2,4−ジメトキシカルボニルオキシベンゼンなどのR7、R8が共に保護基で保護されたヒドロキシル基であるカルバミン酸エステル誘導体;1,4−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−2,5−ジメトキシカルボニルチオベンゼン、1,5−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−2,4−ジメトキシカルボニルチオベンゼンなどのR7、R8が共に保護基で保護されたメルカプト基であるカルバミン酸エステル誘導体が含まれる。
【0090】
前記(v)R5、R6、R7、R8の少なくとも1つがモノ置換アミノ基である化合物の代表的な例としては、式(8)におけるR5、R6、が共にモノ置換アミノ基であって、1,4−ジアミノ−2,5−ビス(メチルアミノ)ベンゼン、1,5−ジアミノ−2,4−ビス(メチルアミノ)ベンゼン、1,4−ジアミノ−2,5−ビス(フェニルアミノ)ベンゼン、1,5−ジアミノ−2,4−ビス(フェニルアミノ)ベンゼンなどのR7、R8が共にアミノ基である化合物などが挙げられる。
【0091】
前記式(8)で表されるポリアミン誘導体には、上記の他に、R5〜R8のうち少なくとも2つが互いに結合して隣接する原子とともに環を形成した化合物が含まれる。このようなポリアミン誘導体としては、例えば、分子内のアミノ基が前記複数のアミノ基を同時に保護しうる保護基(多官能保護基)で保護された化合物などが挙げられる。このような化合物の代表的な例としては、1,2,4,5−テトラアミノベンゼンが2つのオキサリル基で保護された化合物[式(8)において、環Z1がベンゼン環であって、R5とR6、R7とR8がそれぞれオキサリル基で保護されたアミノ基である化合物]、1,2,4,5−テトラアミノベンゼンが2つのブタン−2,3−ジイリデン基で保護された化合物[式(6)において、環Zがベンゼン環であって、R5とR6、R7とR8がそれぞれブタン−2,3−ジイリデン基で保護されたアミノ基である化合物]などが挙げられる。
【0092】
これらのポリアミン誘導体は、それぞれ、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0093】
前記式(8)で表されるポリアミン誘導体は、公知の方法により、又は公知の有機合成反応、公知のアミノ基への保護基の導入法(例えば、アシル化、イミノ化、アルキル化による方法等)等を利用することにより得ることができる。
【0094】
式(5)、(6)、(7)で表されるポリカルボン酸誘導体から選択された少なくとも2種の組み合わせと式(8)で表されるポリアミン誘導体との反応は、一般的なアミド化、エステル化又はチオエステル化反応に準じて行うことができる。
【0095】
反応は、通常、溶媒中で行われる。溶媒としては、原料を溶解し反応を阻害しないものであればよく、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類;ジメチルイミダゾリジンなどの環状アミノアセタール類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;スルホン類;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、安息香酸エステル、γ―ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)などのエステル類;ジオキサン、テトラヒロドフラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレンなどの芳香族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素等が挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種類以上を混合して使用できる。
【0096】
反応温度は、式(5)、(6)又は(7)で表されるポリカルボン酸誘導体の種類、式(8)で表されるポリアミン誘導体の種類等によって異なるが、一般には−60℃〜200℃の範囲で適宜選択できる。例えば、ポリカルボン酸誘導体がカルボン酸ハライドであり、ポリアミン誘導体が保護基を有しないアミンである場合には、反応温度は、−10℃〜50℃程度である。このように、プレポリマーの調製に際し、比較的低い温度で重合反応を行うため反応を制御しやすい。そのため、モノマー成分を溶解した溶液を塗布した後に高温下で硬化して膜形成を行う場合と比較して、最終的に形成されるポリマー構造を制御しやすく分子設計が容易である。
【0097】
前記ポリカルボン酸誘導体とポリアミン誘導体との使用割合は広い範囲で選択でき、両者を当量用いてもよく、何れか一方を過剰量用いてもよい。一般に、ポリアミン誘導体を過剰量用いる場合が多い。例えば、ポリアミン誘導体の使用量は、ポリカルボン酸誘導体に対して、一般に0.01〜100当量、好ましくは1〜50当量、さらに好ましくは4〜20当量程度である。
【0098】
反応には、原料として用いるポリカルボン酸誘導体及びポリアミン誘導体の種類に応じて、反応を促進させたり、保護基を脱離するための適当な触媒(塩基触媒、酸触媒等)や反応剤、トラップ剤(塩基、脱水剤等)などを使用してもよい。
【0099】
このようにして、前記ポリカルボン酸誘導体のR1、R2、R3、R4における保護基で保護されていてもよいカルボキシル基又はハロホルミル基と、前記ポリアミン誘導体のR5、R6、R7、R8における保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、又は保護基で保護されていてもよいメルカプト基との反応によりアミド結合、エステル結合又はチオエステル結合が形成されたプレポリマーが生成する。なお、R5〜R8のうち1又は2個が保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基又は保護基で保護されていてもよいメルカプト基である時、エステル結合やチオエステル結合が形成されずに、アミド結合のみが形成される場合がある。
【0100】
生成するプレポリマーの重量平均分子量は、例えば200〜100000、好ましくは300〜50000、さらに好ましくは1000〜30000程度である。プレポリマーの分子量は、ポリカルボン酸誘導体とポリアミン誘導体との使用割合や、反応温度、反応時間等の反応条件を適宜選択することにより調整できる。
【0101】
生成したプレポリマーは、例えば、沈殿、再沈殿、晶析、再結晶、濾過、抽出、乾燥等の分離精製手段により単離することができる。
【0102】
本発明のプレポリマーは溶媒に可溶である。このような溶媒として、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類;ジメチルイミダゾリジンなどの環状アミノアセタール類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;スルホン類;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、安息香酸エステル、乳酸エチル、γ―ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)などのエステル類;ジオキサン、テトラヒロドフラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)などのエーテル類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ニトロメタンなどのニトロ化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレンなどの芳香族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;これらの混合溶媒などが挙げられる。
【0103】
本発明のプレポリマーは、特に、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒に溶解しやすく、例えば、前記3種の何れかの溶媒に対する溶解度(g/100g;20℃)は、1以上、好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上である。
【0104】
本発明のプレポリマーは塗布溶媒に対する溶解性に優れる。例えば、本発明のプレポリマーをN,N−ジメチルアセトアミドに溶解して15重量%濃度の溶液を調製し、この溶液を細孔径0.2μmのフィルターを通過させる時の濾過速度は、0.02〜0.8g/分・cm2、好ましくは0.1〜0.5g/分・cm2程度である。
【0105】
本発明のプレポリマー組成物は、前記本発明のプレポリマーを溶媒に溶解させた組成物である。溶媒としては、プレポリマーを溶解可能で、重合や環化反応等を阻害しないものであればよく、例えば前記例示の溶媒を使用できる。
【0106】
本発明のプレポリマー組成物には、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。このような成分として、プレポリマーの原料として用いたモノマー成分(化合物A及び/又は化合物B)が挙げられる。モノマー成分を添加することにより、プレポリマーのポリマー鎖を延長でき、高分子量化した高分子架橋体を得ることができる。該モノマー成分の添加量は、プレポリマー100重量部に対して、例えば、0〜50重量部、好ましくは5〜30重量部である。特に、中心骨格に結合した複数(例えば2〜4個)の官能基又は官能基群が3次元構造をなす化合物Aと、中心骨格に結合した複数(例えば2〜4個、好ましくは2個)の官能基又は官能基群が1次元構造(直線状)又は2次元構造(角度を有する直鎖状)をなす化合物Bとをモノマー成分として用いた場合には、化合物Bを、プレポリマー100重量部に対して、10〜25重量部程度添加するのが好ましい。
【0107】
また、他の添加成分として、重合や環化反応等を促進するための触媒を用いることもできる。触媒の代表的な例として、硫酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の酸触媒、塩基触媒などが挙げられる。触媒の使用量は、プレポリマーを構成するモノマー成分(化合物A及びB)及び新たに添加するモノマー成分の総量に対して、例えば0〜10モル%、好ましくは0〜5モル%程度である。
【0108】
本発明のプレポリマー組成物には、溶液の粘性を高めるための増粘剤を添加してもよい。増粘剤の代表的な例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのアルキレングリコール類やポリアルキレングリコール類などが挙げられる。増粘剤の使用量は、組成物全体に対して、例えば0〜20重量%、好ましくは0〜10重量%程度である。さらに、本発明のプレポリマー組成物には、重合後の分子量を調整するためのモノカルボン酸類、及び/又は重合後の架橋度を調整するためのジカルボン酸類を添加してもよい。モノカルボン酸類の代表的な例としては、アダマンタンカルボン酸、安息香酸などのモノカルボン酸;アダマンタンカルボン酸メチルエステル、安息香酸メチルエステルなどのモノカルボン酸誘導体などが挙げられ、ジカルボン酸類の代表的な例としては、テレフタル酸などのジカルボン酸;テレフタル酸ジメチルエステルなどのジカルボン酸誘導体などが挙げられる。モノカルボン酸類の使用量は、プレポリマーを構成するモノマー成分(化合物A及びB)及び新たに添加するモノマー成分の総量に対して、例えば0〜10モル%、好ましくは0〜5モル%程度であり、ジカルボン酸類の使用量は、プレポリマーを構成するモノマー成分(化合物A及びB)及び新たに添加するモノマー成分の総量に対して、例えば0〜100モル%、好ましくは0〜50モル%程度である。
【0109】
本発明のプレポリマー組成物には、基板上に形成される絶縁被膜の基板密着性を高めるための密着促進剤を添加してもよい。密着促進剤の代表的な例としては、トリメトキシビニルシラン、ヘキサメチルジシラザン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、アルミニウムモノエチルアセトアセテートジイソプロピレートなどが挙げられる。密着促進剤の使用量は、プレポリマーを構成するモノマー成分(化合物A及びB)及び新たに添加するモノマー成分の総量に対して、例えば0〜10重量%、好ましくは0〜5重量%程度である。
【0110】
本発明のプレポリマー組成物には、膜の機械的強度、熱伝導性、熱膨張率等の物理的性質を調節するために、或いは、製膜時の内部応力緩和等、製膜時の膜特性調節のために、直鎖構造、分岐構造を問わず、他のポリマーからなる成分が必要に応じて含まれていてもよい。例えば、膜の耐熱性を向上させるために、ポリイミダゾール、ポリオキサゾールなどが含まれていてもよい。
【0111】
本発明のプレポリマー組成物は、前記プレポリマーと溶媒、及び必要に応じて各種添加物を混合し撹拌又は静置して、プレポリマーを溶媒に溶解させることにより調製できる。溶解は、モノマー成分、特にポリアミン誘導体が酸化されない限度において、空気雰囲気下で行ってもよいが、好ましくは窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行う。プレポリマーを溶解させる温度は、プレポリマーの溶解性や溶媒の沸点等に応じて適宜選択できる。プレポリマーを溶解させる際には、高分子架橋体への転化が生じない範囲で加熱してもよく、その温度は、例えば0〜200℃、好ましくは10〜150℃程度である。
【0112】
プレポリマー組成物中のプレポリマー濃度は、プレポリマーの溶解性、塗布性、作業性等を考慮して適宜選択でき、例えば5〜70重量%、好ましくは10〜60重量%程度である。本発明のプレポリマーは溶媒に対する溶解性に優れるため、高濃度のプレポリマー組成物を得ることができる。高濃度のプレポリマー組成物により形成される絶縁膜は、膜厚を大きくすることができるため優れた電気的特性を示す。このため、種々の半導体製造プロセスに対応した膜厚を有する絶縁膜を形成することができる。
【0113】
本発明の高分子量重合体及び絶縁膜は、上記のプレポリマー組成物を塗布液として基材上に塗布した後、さらに反応に付すことにより、より具体的には、例えば加熱(焼成)等により重合や環化反応させることにより得られる。前記基材としては、例えば、シリコンウェハー、金属基板、セラミック基板などが挙げられる。塗布方法としては、特に限定されず、スピンコート法、ディップコート法、スプレー法などの慣用の方法を用いることができる。
【0114】
加熱温度は、プレポリマーを高分子量重合体に転化できる温度であれば特に制限されないが、一般には100〜500℃、好ましくは150〜450℃程度である。加熱は一定温度で行ってもよく、段階的温度勾配を付けて行ってもよい。加熱操作は、形成される薄膜の性能に影響がない限り、例えば空気雰囲気下で行われてもよいが、好ましくは不活性ガス(窒素、アルゴンなど)雰囲気下、又は真空雰囲気下で行われる。
【0115】
加熱によりプレポリマーが重縮合等により高分子量化して対応する高分子量重合体が生成する。なお、絶縁膜の形成に際し、モノマー成分(化合物A及びB)を溶媒に溶解した溶液を基板上に塗布して加熱により高分子量化することも可能であるが、熱硬化により収縮して膜が不均一になりやすい。これに対し、すでにある程度重合しているプレポリマーを用いる本発明によれば、反応点が少なく、熱硬化による収縮を相対的に少なくできるため、均一な絶縁膜を形成することができる。
【0116】
また、プレポリマーが最終構造の前駆構造を有する化合物である場合には、通常プレポリマーの高分子量化とともに、環化反応等が進行して、所望の構造を有する高分子量重合体が生成する。プレポリマーが保護基を有する場合には、通常、保護基の脱離を伴って高分子量化や環化反応が進行する。環化反応により、それぞれの前駆構造から、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミド環などが形成される。
【0117】
本発明の高分子量重合体の好ましい態様としては、化合物AとBの中心骨格(例えばZa及びZ1)がそれぞれアダマンタン骨格と芳香性環骨格である絶縁膜形成材料から形成されたポリマーに含まれるアダマンタン環、芳香環、及びアゾール環又は6員の含窒素環(重縮合部分に形成される環)を主な構成単位として含んでいる。化合物Aがアダマンタンポリカルボン酸であり、化合物Bが芳香族ポリアミンである例を示すと、4官能化合物としてのアダマンタンテトラカルボン酸誘導体から誘導されるプレポリマーからは、アダマンタン骨格を頂点(架橋点)として4方向に架橋した構造(3つの6角形が互いに2辺を共有してなるユニット)を持ち多数の空孔を有する網目状の高分子膜を形成することができる。また、3官能化合物としてのアダマンタントリカルボン酸誘導体から誘導されるプレポリマーからは、アダマンタン骨格を頂点(架橋点)として3方向に架橋した構造(3つの6角形が互いに2頂点又は2辺を共有してなるユニット)を持ち多数の空孔を有する架橋型高分子膜が形成される。また、2官能化合物としてのアダマンタンジカルボン酸誘導体から誘導されるプレポリマーからは、ポリマー分子鎖中のセグメント間の排除体積効果により、1ポリマー分子が存在する領域への他の分子鎖の貫通が制限されるため、モノマー混合物から直接高分子量重合体を得る場合と比べて疎な充填構造を有する空孔率の高い高分子膜を形成することができる。
【0118】
特に、本発明では、化合物Aを構成する化合物が2種以上の異なる官能基(群)数を有する化合物の組み合わせからなるため、プレポリマー内に有する2種以上の異なる立体構造によって、隣接する架橋点(又は結節点)同士の距離(辺)が長い大きい空孔を形成し、結果として極めて低い誘電率を達成することができる。例えば、式(5)で表される4官能化合物と式(6)で表される3官能化合物との組み合わせから誘導された式(9)で表されるプレポリマーからは、4方向への架橋構造と3方向への架橋構造とが立体的な障害を生じるため、架橋点同士の距離が長くなり、結果として空隙が大きいポリマーとなる。式(6)で表される3官能化合物と式(7)で表される2官能化合物との組み合わせから誘導された式(13)で表されるプレポリマーからは、3官能化合物が形成する3方向への架橋点を頂点とし、該3官能化合物に結合した化合物Bによる連結部と、2官能化合物からなる結節点に結合した化合物Bによる連結部とを外周とする多数の大きい空隙が形成される。式(5)で表される4官能化合物と式(7)で表される2官能化合物との組み合わせから誘導された式(17)で表されるプレポリマーからは、4官能化合物が形成する4方向への架橋点を頂点とし、該4官能化合物に結合した化合物Bによる連結部と、2官能化合物からなる結節点に結合した化合物Bによる連結部とを外周とする大きい空隙が形成される。一方、4官能化合物単独又は3官能化合物単独では、架橋点が多く形成されるため高密度化しやすく、また、2官能化合物単独では、形成されるポリマーが鎖状構造を有し、嵩が低いためポリマー同士が近接しやすく高密度の絶縁膜となってしまう。従って、化合物Aとして上記3種のうち2種以上の化合物を用いると、化合物Aとして前記3種のうち1種の化合物のみを用いてポリマーを得る場合と比べて、低密度の疎な空孔構造を形成することができる。
【0119】
本発明の高分子量重合体及び絶縁膜は溶媒にほとんど溶解しない。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びN−メチル−2−ピロリドンに対する溶解度(g/100g;20℃)は、一般に1未満、通常は0.5未満である。
【0120】
こうして得られる本発明の絶縁膜は内部に多数の分子レベルの空孔を均一に分散して有するため、優れた比誘電率を示す。
【0121】
本発明の絶縁膜は、上記絶縁膜形成材料から形成されたポリマーに含まれる、
【0122】
加熱により形成された絶縁膜の膜厚は、用途に応じて適宜設定できるが、一般には50nm以上(50〜2000nm程度)、好ましくは100nm以上(100〜2000nm程度)、より好ましくは300nm以上(300〜2000nm程度)である。本発明の絶縁形成材料によれば、モノマー濃度の高い塗布液を得ることができるため、ポリベンズアゾール類からなる絶縁膜であっても上記のような膜厚を実現することができる。50nm未満では、リーク電流が発生するなどの電気的特性に悪影響を及ぼしたり、半導体製造工程における化学的機械研磨(CMP)による膜の平坦化が困難となるなどの問題が生じやすいため、特に層間絶縁膜用途としては適さない。
【0123】
なお、予め製造した高分子量重合体(高分子架橋体)を基板上に塗布して絶縁膜を形成することが考えられるが、このような高分子量重合体は溶媒への溶解性が極めて低いので、塗布により薄膜を形成することは困難である。また、モノマー成分(化合物A及びB)を溶媒に溶解した溶液を基板上に塗布して絶縁膜を形成することも考えられるが、この場合には、基板上での重合の際、モノマー成分の種類によっては生成した高分子量重合体の空孔内に入り込んだり、形成された高分子量重合体の空孔内を新たに生成したポリマー鎖が貫通して、空孔が閉塞されやすいため、空孔率が低下しやすい。これに対して、本発明のプレポリマーは溶媒に溶解しやすく、濃度の高い溶液を調製できるので、所望の厚みの薄膜を容易に形成できると共に、予めモノマー成分がある程度多量化された構造が形成されているため、重合が円滑に進行するとともに、空孔内へのモノマー成分の浸入やポリマー鎖の貫通が抑制される。そのため、内部に多数の分子レベルの空孔が均一に分散した高秩序の空孔構造を容易に構築することができる。そして、このように形成された高分子量重合体からなる絶縁膜は、空孔率が高いので比誘電率が低く、架橋により十分な耐熱性及び機械的強度を有する上、配線からの銅の拡散が極めて少ないという利点を有する。
【0124】
本発明の絶縁膜は、低誘電率且つ高耐熱性を示すため、例えば、半導体装置等の電子材料部品における絶縁被膜として使用することができ、特に層間絶縁膜として有用である。
【実施例】
【0125】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、プレポリマーの濾過速度は、プレポリマーをN,N−ジメチルアセトアミドに溶解して15重量%濃度の溶液を調製し、この溶液を細孔径0.2μmのフィルターを通過させることにより測定した。高分子膜の膜厚はエリプソメーターを用いて測定した。また、高分子膜の密度は、X線反射率測定の解析により求め、高分子膜の比誘電率は膜の表面にAl電極を形成して測定した。赤外線吸収スペクトルの測定はうす膜による透過法を採用した。赤外線吸収スペクトルデータにおける「s」、「m」、「w」は、それぞれ、「強い」吸収、「中程度の」吸収、「弱い」吸収を示す。重量平均分子量はポリスチレン換算の値である。密度は25℃の値である。
【0126】
実施例1
下記式(21)
【化23】

[式中、Xは2官能化合物とジアミン化合物との結合単位を示し、Yは4官能化合物とジアミン化合物との結合単位を示し、(XorY)はX又はYが連結していることを示す]
で表されるプレポリマー(オキサゾール前駆体ポリマー)の合成
300ml三角フラスコに、3,3’−ジヒドロキシベンジジン[DHBEN:4官能化合物]2.00gを入れ、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)95.01gを加えて、窒素を封入し、振とう機を用いて完全に溶解させてA液を得た。100ml三角フラスコに、アダマンタンジクロライド[Adm(COCl)2:2官能化合物]2.36g、及びアダマンタンテトラクロライド[Adm(COCl)4:4官能化合物]0.036gを入れ、DMAc27.38gを加えて、窒素を封入し、振とう機を用いて完全に溶解させてB液を得た。
A液を濾過し、濾液を回収した3つ口フラスコに、トリエチルアミン2.14gを添加し、氷浴にて冷却した。3つ口フラスコに滴下漏斗を連結し、漏斗内にB液を入れ、反応系内を窒素封入した。氷冷、窒素存在下、B液をA液に約25分かけて滴下した。滴下終了後、氷冷のまま20分間撹拌した。滴下漏斗を用いて、メタノール2.9gを反応溶液に約1分かけて滴下し、そのまま15分間撹拌した。氷冷を止めて室温に戻し、さらに10分間撹拌した。
反応終了後、反応混合液を濾過し、500mlナスフラスコに回収した濾液をエバポレーターを用いて濃縮し(80℃、約20mmHg)、全容量を3分の1にした。濃縮した溶液を750mlの水へ撹拌しつつ静かに加えた後、10分間撹拌を続けた。析出物を濾別し、メタノール500mlに入れて約20分間撹拌することにより洗浄した。析出物を濾別し、55℃で真空乾燥することにより、薄い肌色の標記のプレポリマー3.06gを得た(収率82.4%)。重量平均分子量は約1万であった。上記式中、nは繰り返しの数であり0以上の整数を示す。このプレポリマーは前記式(17)で表されるプレポリマーに含まれる。
[NMRスペクトルデータ]
1H−NMR(d6-DMSO) δ:1.21−2.35(m,14H<アダマンタン環>),6.65−7.24(m,2H<芳香環>),7.62−7.95(m,2H),8.27−8.61(m,2H),9.95−10.27(s,1H<−CONH−>)
【0127】
比較例1
下記式(22)で表されるプレポリマー(オキサゾール前駆体ポリマー)の合成
【化24】

300ml三角フラスコに、3,3’−ジヒドロキシベンジジン(DHBEN)2.66gを入れ、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)120gを加えて、窒素を封入し、振とう機を用いて完全に溶解させてA液を得た。100ml三角フラスコに、アダマンタンジクロライド[Adm(COCl)2:2官能化合物]3.22gを入れ、DMAc30gを加えて、窒素を封入し、振とう機を用いて完全に溶解させてB液を得た。
A液を濾過し、濾液を回収した3つ口フラスコに、トリエチルアミン2.51gを添加し、氷浴にて冷却した。3つ口フラスコに滴下漏斗を連結し、漏斗内にB液を入れ、反応系内を窒素封入した。氷冷、窒素存在下、B液をA液に約35分かけて滴下した。滴下終了後、氷冷のまま20分間撹拌した。滴下漏斗を用いて、メタノール2.6gを反応溶液に約1分かけて滴下し、そのまま15分間撹拌した。氷冷を止めて室温に戻し、さらに10分間撹拌した。
反応終了後、反応混合液を濾過し、500mlナスフラスコに回収した濾液をエバポレーターを用いて濃縮し(80℃、約20mmHg)、全容量を3分の1にした。濃縮した溶液を1200mlの水へ撹拌しつつ静かに加え、析出物を濾別、洗浄し、乾燥させた。乾燥後、析出物を再度DMAcに溶解させ、10分間撹拌を続けた。析出物を濾別し、メタノール750mlに入れて約20分間撹拌することにより洗浄した。析出物を濾別し、55℃で真空乾燥することにより、薄い肌色の標記のプレポリマー4.14gを得た(収率83%)。重量平均分子量は約2万であった。上記式中、nは繰り返しの数であり0以上の整数を示す。
[NMRスペクトルデータ]
1H−NMR(d6-DMSO) δ:1.21−2.35(m,14H<アダマンタン環>),6.65−7.24(m,2H<芳香環>),7.62−7.95(m,2H),8.27−8.61(m,2H),9.95−10.27(s,1H<−CONH−>)
13C−NMR(d6-DMSO) δ:27.75,34.73,37.62,39.01,39.60,39.76,39.93,40.01,41.57,113.28,117.01,121.99,125.56,136.23,147.77,175.07
【0128】
実施例2
実施例1で得られたプレポリマー(イミダゾール前駆体ポリマー)2.01gを、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)とジメチルイミダゾリジン(DMI)との混合溶媒[混合比(重量比)=1:1]18.01gに加え、窒素封入した後、振とう機を用いて完全に溶解させて塗布液を調製した。この塗布液を、細孔径0.2μmのフィルターを通した後、8インチのシリコンウェハ上にスピンコートした。これを窒素雰囲気下、室温から30分かけて300℃まで昇温して30分保持し、続いて20分かけて400℃まで昇温し30分保持して膜を形成した。こうして得られた高分子膜の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、目的の架橋ポリベンズオキサゾール膜が形成されていることが確認された。得られた膜の膜厚は250nmであった。膜の密度は1.16g/cm3、比誘電率は2.3であった。また、プレポリマーの濾過速度を測定したところ、0.1g/分・cm2であった。
[赤外線吸収スペクトルデータ(cm-1)]
2936, 2910, 2858, 1599, 1558, 1422, 1259
【0129】
比較例2
比較例1で得られたプレポリマー(イミダゾール前駆体ポリマー)1.5gを、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)とジメチルイミダゾリジン(DMI)との混合溶媒[混合比(重量比)=1:1]8.5gに加え、窒素封入した後、振とう機を用いて完全に溶解させて塗布液を調製した。この塗布液を、細孔径0.2μmのフィルターを通した後、8インチのシリコンウェハ上にスピンコートした。これを窒素雰囲気下、室温から30分かけて300℃まで昇温して30分保持し、続いて20分かけて400℃まで昇温し30分保持して膜を形成した。こうして得られた高分子膜の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、架橋ポリベンズオキサゾール膜が形成されていることが確認された。得られた膜の膜厚は220nmであった。膜の密度は1.23g/cm3、比誘電率は2.5であった。また、プレポリマーの濾過速度を測定したところ、0.1g/分・cm2であった。
[赤外線吸収スペクトルデータ(cm-1)]
2950, 2910, 2858, 1600, 1463, 1260, 1050

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの化合物の分子内に2以上の官能基又は官能基群を有しており、一方の化合物の官能基又は官能基群と他方の化合物の官能基又は官能基群との結合により重合して空孔構造を有する高分子量重合体を形成することが可能な2つの化合物A及びBの反応により得られるプレポリマーであって、前記化合物Aが、4官能化合物、3官能化合物、及び2官能化合物の3種の化合物から選択された少なくとも2種の組み合わせであるプレポリマー。
【請求項2】
重量平均分子量が200〜100000である請求項1記載のプレポリマー。
【請求項3】
一方の化合物の官能基又は官能基群と他方の化合物の官能基又は官能基群とが互いに反応して鎖状の結合を形成する第1の反応過程と、次いで前記結合部位において環を形成する第2の反応過程とを含む重合過程により空孔構造を有する高分子量重合体を形成することが可能な2つの化合物A及びBの反応により得られるプレポリマーであって、前記第1の反応過程により得られるプレポリマーである請求項1又は2記載のプレポリマー。
【請求項4】
化合物Aの有する官能基又は官能基群と化合物Bの有する官能基又は官能基群との反応において、第1の反応過程で形成される鎖状の結合がアミド結合、エステル結合又はチオエステル結合であり、第2の反応過程で形成されうる環がイミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、又はイミド環である請求項3記載のプレポリマー。
【請求項5】
化合物Aの有する官能基又は官能基群がカルボキシル基又はアミノ基であり、化合物Bの有する官能基又は官能基群が2つのアミノ基、アミノ基とヒドロキシル基、アミノ基とメルカプト基、又は2つのカルボキシル基である請求項4記載のプレポリマー。
【請求項6】
化合物Aにおける4官能化合物、3官能化合物、及び2官能化合物が、それぞれ下記式(1)、(2)、及び(3)
【化1】

(式中、Zaは4価の有機基を示し、Ra、Rb、Rc、Rdは、同一又は異なって、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、ハロホルミル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、又は保護基で保護されていてもよいメルカプト基を示し、Ya、Yb、Yc、Ydは、同一又は異なって、単結合又は2価の芳香族性又は非芳香族性環式基を示し、La、Lcは、同一又は異なって、水素原子、炭化水素基又はハロゲン原子を示す)
で表される化合物である請求項1〜5の何れかの項に記載のプレポリマー。
【請求項7】
化合物Bが、下記式(4)
【化2】

(式中、環Zbは単環又は多環の芳香族性又は非芳香族性環を示し、Re、Rf、Rg、Rhは環Zbに結合している置換基であって、同一又は異なって、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいメルカプト基、又は保護基で保護されていてもよいカルボキシル基を示す)
で表される化合物である請求項1〜6の何れかの項に記載のプレポリマー。
【請求項8】
下記式(5)で表されるテトラカルボン酸誘導体、下記式(6)で表されるトリカルボン酸誘導体、及び下記式(7)で表されるジカルボン酸誘導体
【化3】

式中、Zaは4価の有機基を示し、R1、R2、R3、R4は、同一又は異なって、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基又はハロホルミル基を示し、Y1、Y2、Y3、Y4は、同一又は異なって、単結合又は2価の芳香族性又は非芳香族性環式基を示し、L1、L3は、同一又は異なって、水素原子、炭化水素基又はハロゲン原子を示す)
から選択された少なくとも2種の組み合わせであるポリカルボン酸誘導体からなる化合物Aと、下記式(8)
【化4】

(式中、環Z1は単環又は多環の芳香族性又は非芳香族性環を示し、R5、R6、R7、R8は環Z1に結合している置換基であって、同一又は異なって、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、又は保護基で保護されていてもよいメルカプト基を示す。但し、R5、R6、R7、R8のうち少なくとも2つは、保護基で保護されていてもよいアミノ基である)
で表されるポリアミン誘導体からなる化合物Bとの反応により得られるプレポリマーであって、式(5)、(6)又は(7)で表されるポリカルボン酸誘導体のR1、R2、R3、R4における保護基で保護されていてもよいカルボキシル基又はハロホルミル基と、式(8)で表されるポリアミン誘導体のR5、R6、R7、R8における保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、又は保護基で保護されていてもよいメルカプト基との反応によりアミド結合、エステル結合又はチオエステル結合が形成された請求項1〜3の何れかの項に記載のプレポリマー。
【請求項9】
下記式(5)及び(6)
【化5】

(式中、Zaは4価の有機基を示し、R1、R2、R3、R4は、同一又は異なって、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基又はハロホルミル基を示し、Y1、Y2、Y3、Y4は、同一又は異なって、単結合又は2価の芳香族性又は非芳香族性環式基を示し、L1は、同一又は異なって、水素原子、炭化水素基又はハロゲン原子を示す)
で表されるポリカルボン酸誘導体と、下記式(8)
【化6】

(式中、環Z1は単環又は多環の芳香族性又は非芳香族性環を示し、R5、R6、R7、R8は環Z1に結合している置換基であって、同一又は異なって、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、又は保護基で保護されていてもよいメルカプト基を示す。但し、R5、R6、R7、R8のうち少なくとも2つは、保護基で保護されていてもよいアミノ基である)
で表されるポリアミン誘導体との反応により得られる、下記式(9)
【化7】

[式中、Za、Y1、Y2、Y3、Y4は前記に同じ。Waは、L1又はW1を示し、W1は、R1、R2、R3、R4の何れか、又は下記式(10)
【化8】

(式中、環Z1は前記に同じ。R5〜8はR5、R6、R7、R8の何れかを示すことを意味する。Xは、R1〜R4とR5〜R8との反応により形成された結合であって、アミド結合、エステル結合又はチオエステル結合を示す。A1は、R5、R6、R7、R8の何れか、又は下記式(11)若しくは(12)
【化9】

(式中、Za、L1、W1、Xは前記に同じ。Y1〜4はY1、Y2、Y3、Y4の何れかであり、Y2〜4はY2、Y3、Y4の何れかであることを示す)
で表される基を示す)
で表される基を示す。但し、式(9)中に示されている3つのW1及びWaのうち少なくとも1つは前記式(10)で表される基であって、分子内に少なくとも前記式(11)及び(12)で表される基を含んでいる。W1、X、A1がそれぞれ複数個存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい]
で表される化合物である請求項8記載のプレポリマー。
【請求項10】
下記式(6)及び(7)
【化10】

(式中、Zaは4価の有機基を示し、R2、R3、R4は、同一又は異なって、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基又はハロホルミル基を示し、Y1、Y2、Y3、Y4は、同一又は異なって、単結合又は2価の芳香族性又は非芳香族性環式基を示し、L1、L3は、同一又は異なって、水素原子、炭化水素基又はハロゲン原子を示す)
で表されるポリカルボン酸誘導体と、下記式(8)
【化11】

(式中、環Z1は単環又は多環の芳香族性又は非芳香族性環を示し、R5、R6、R7、R8は環Z1に結合している置換基であって、同一又は異なって、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、又は保護基で保護されていてもよいメルカプト基を示す。但し、R5、R6、R7、R8のうち少なくとも2つは、保護基で保護されていてもよいアミノ基である)
で表されるポリアミン誘導体との反応により得られる、下記式(13)
【化12】

[式中、Za、L1、Y1、Y2、Y3、Y4は前記に同じ。Wcは、W2又はL3を示し、W2は、R2、R3、R4の何れか、又は下記式(14)
【化13】

(式中、環Z1は前記に同じ。R5〜8はR5、R6、R7、R8の何れかを示すことを意味する。Xは、R1〜R4とR5〜R8との反応により形成された結合であって、アミド結合、エステル結合又はチオエステル結合を示す。A2は、R5、R6、R7、R8の何れか、又は下記式(15)若しくは(16)
【化14】

(式中、Za、L1、L3、W2、Xは前記に同じ。Y2〜4はY2、Y3、Y4の何れかであり、Y2,4はY2又はY4の何れかであることを示す)
で表される基を示す)
で表される基を示す。但し、式(13)中に示されている2つのW2及びWcのうち少なくとも1つは前記式(14)で表される基であって、分子内に少なくとも前記式(15)及び(16)で表される基を含んでいる。W2、X、A2がそれぞれ複数個存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい]
で表される化合物である請求項8記載のプレポリマー。
【請求項11】
下記式(5)及び(7)
【化15】

(式中、Zaは4価の有機基を示し、R1、R2、R3、R4は、同一又は異なって、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基又はハロホルミル基を示し、Y1、Y2、Y3、Y4は、同一又は異なって、単結合又は2価の芳香族性又は非芳香族性環式基を示し、L1、L3は、同一又は異なって、水素原子、炭化水素基又はハロゲン原子を示す)
で表されるポリカルボン酸誘導体と、下記式(8)
【化16】

(式中、環Z1は単環又は多環の芳香族性又は非芳香族性環を示し、R5、R6、R7、R8は環Z1に結合している置換基であって、同一又は異なって、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、又は保護基で保護されていてもよいメルカプト基を示す。但し、R5、R6、R7、R8のうち少なくとも2つは、保護基で保護されていてもよいアミノ基である)
で表されるポリアミン誘導体との反応により得られる、下記式(17)
【化17】

[式中、Za、Y1、Y2、Y3、Y4は前記に同じ。Waは、W3又はL1を示し、Wcは、W3又はL3を示し、W3は、R2、R4の何れか、又は下記式(18)
【化18】

(式中、環Z1は前記に同じ。R5〜8はR5、R6、R7、R8の何れかを示すことを意味する。Xは、R1〜R4とR5〜R8との反応により形成された結合であって、アミド結合、エステル結合又はチオエステル結合を示す。A3は、R5、R6、R7、R8の何れか、又は下記式(19)若しくは(20)
【化19】

(式中、Za、L1、L3、W3、Xは前記に同じ。Y1〜4はY1、Y2、Y3、Y4の何れかであり、Y2,4はY2又はY4の何れかであることを示す)
で表される基を示す)
で表される基を示す。但し、式(17)中に示されている2つのW3、Wa及びWcのうちのうち少なくとも1つは前記式(18)で表される基であって、分子内に少なくとも前記式(19)及び(20)で表される基を含んでいる。W3、X、A3がそれぞれ複数個存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい]
で表される化合物である請求項8記載のプレポリマー。
【請求項12】
aが4価のアダマンチル基である請求項6、及び8〜11の何れかの項に記載のプレポリマー。
【請求項13】
請求項1〜12の何れかの項に記載のプレポリマーを溶媒に溶解させたプレポリマー組成物。
【請求項14】
請求項1〜12の何れかの項に記載のプレポリマーをさらに反応に付して得られる空孔構造を有する高分子量重合体。
【請求項15】
請求項14記載の空孔構造を有する高分子量重合体からなる絶縁膜。
【請求項16】
請求項1〜12の何れかの項に記載のプレポリマーを溶媒に溶解させたプレポリマー組成物を基材上に塗布した後、さらに反応に付して空孔構造を有する高分子量重合体からなる絶縁膜を形成することを特徴とする絶縁膜の製造法。

【公開番号】特開2006−219558(P2006−219558A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−33089(P2005−33089)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】