説明

プレポリマー

【課題】低粘度のアシル尿素ウレタンプレポリマーを提供する。
【解決手段】オリゴマージアミンまたはポリアミン(ホルムアミド末端化オリゴマー)のホルムアミドとジイソシアネートまたはポリイソシアネートから新規な低粘度のアシル尿素ウレタンプレポリマーがえられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリゴマージアミンまたはポリアミン(ホルムアミド末端化オリゴマー)のホルムアミドとジイソシアネートまたはポリイソシアネートから得られる新規なプレポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオールとポリイソシアネートのイソシアネート官能性プレポリマーは、古くから知られ、既存の多くの市販生成物の基礎となっている。
【0003】
多くの用途にとって、特にラッカーおよび接着剤の分野では、低粘度のプレポリマーが望ましい。
【0004】
ジイソシアネートとホルムアミド末端化オリゴマーのプレポリマーは新規であって、文献には知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
低粘度によって区別されるアシル尿素プレポリマーをホルムアミド末端化オリゴマーとポリイソシアネートから得られることが、このほど判明した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある実施形態は、ジイソシアネートとホルムアミド末端化オリゴマーのプレポリマーである。
【0007】
本発明の別の実施形態は、前記プレポリマーが式(I):
X-[-N(CHO)-CO-NH-R1-NCO]n (I)
〔式中、Xはn価の有機基である。〕
を有する、上記プレポリマーである。
【0008】
本発明の別の実施形態は、Xは式(II):
Y-[-(CH2-CHR3-(CH2)p-O)m-CH2-CHR4-(CH2)o-]n - (II)
〔式中、
Yはn−官能性飽和C2〜C6基であり;
はC6〜C13−アリールアルキル基またはC4〜C13−アルキレン基であり;
は水素またはメチルであり;
は水素またはメチルを表し;
mは2〜30の自然数であり;
nは2〜4の自然数であり;
oは0または1であり;および
pは0,1または2である。〕
で示される基である、上記プレポリマーである。
【0009】
本発明の別の実施形態は、
式中、Rはメチルであり;
oは0であり;および
pは0である、上記プレポリマーである。
【0010】
本発明のさらに別の実施形態は、ジイソシアネートとホルムアミド末端化オリゴマーを反応させること、およびあらゆる過剰の該ジイソシアネートを蒸留により分離することを含んでなる、上記プレポリマーの製造方法である。
【0011】
本発明のさらに別の実施形態は、 式(III):
OCN-R1-NCO (III),
〔式中、
はC6〜C13−アリールアルキル基またはC4〜C13−アルキレン基であり;および
nは2〜4の自然数である。〕
で示されるジイソシアネートn〜(nx10)モルと、
式(IV):
X-[-NH(CHO)]n (IV),
〔式中、
Xは式(II):
Y-[-(CH2-CHR3-(CH2)p-O)m-CH2-CHR4-(CH2)o-]n - (II)
(式中、
Yはn−官能性飽和C2〜C6基であり;
はC6〜C13−アリールアルキル基またはC4〜C13−アルキレン基であり;
は水素またはメチルであり;
は水素またはメチルを表し;
mは2〜30の自然数であり;
nは2〜4の自然数であり;
oは0または1であり;および
pは0,1または2であり;および
nは2〜4の自然数である。)
の基である。〕
のホルムアミド末端化オリゴマー1モルを反応させること、およびあらゆる過剰の該ジイソシアネートを蒸留により分離することを含んでなる、上記プレポリマーの製造方法である。
【0012】
本発明のさらに別の実施形態は、請求項1に記載のプレポリマーを含んでなるPU成形または発泡品である。
【0013】
本発明のさらに別の実施形態は、上記プレポリマーのいずれかを含んでなる接着剤である。
【0014】
本発明のさらに別の実施形態は、上記プレポリマーのいずれかを含んでなるシーリング材である。
【0015】
本発明のさらに別の実施形態は、上記プレポリマーのいずれかを含んでなるラッカーである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
したがって、本発明は、ジイソシアネートとホルムアミド末端化オリゴマーのプレポリマーを提供する。
【0017】
上記プレポリマーは、好ましくは一般式I:
X-[-N(CHO)-CO-NH-R1-NCO]n (I)
〔式中、
Xはn価の有機基、好ましくは式II:
Y-[-(CH2-CHR3-(CH2)p-O)m-CH2-CHR4-(CH2)o-]n - (II)
(式中、
Yはn−官能性飽和C2〜C6基を表し、
はC6〜C13−アリールアルキル基またはC4〜C13−アルキレン基を表し、
は水素またはメチルを表し、
は水素またはメチル、好ましくはメチルを表し、
mは2〜30の自然数を表し、
nは2〜4の自然数を表し、
oは0または1、好ましくは0を表し、および
pは1または2、好ましくは0を表す。)
で示される基を表す。〕
で示されるプレポリマーである。
【0018】
本発明はまた、ジイソシアネートをホルムアミド末端化オリゴマーと反応させ、および存在し得る過剰のジイソシアネートを蒸留によって分離することを特徴とする本発明のプレポリマーの製造方法を提供する。
【0019】
好ましくは、本発明によれば、式(III):
OCN-R1-NCO (III),
〔式中、Rとnは上記と同義である。〕
で示されるジイソシアネートn〜(nx10)モルを、
式(IV):
X-[-NH(CHO)]n (IV),
〔Xとnは上記と同義である。〕
で示されるホルムアミド末端化オリゴマー1モルと反応させ、および存在し得る過剰のジイソシアネートを蒸留によって分離する。
【0020】
ホルムアミド末端化オリゴマー、特に式(IV)のホルムアミド末端化オリゴマーは、例えばギ酸C1〜C4−アルキルエステルと式(V):
X-[NH2]n (V),
〔式中、Xとnは上記と同義である。〕
で示されるアミンとの反応によって得ることができる。
【0021】
好適には、過剰のギ酸C1〜C4−アルキルエステル、好ましくはギ酸メチルまたはギ酸エチル中、ギ酸エステルの沸点で反応を行い、ホルムアミド基を与えるためのアミノ基の反応が行われた後に、過剰物および同様に生じたアルカノール、好ましくはメタノールまたはエタノールを蒸留除去させる。ホルムアミド末端化オリゴマーIVを与えるためのポリアミンVと、ギ酸または他のギ酸誘導体、例えば一酸化炭素、混合ギ酸−カルボン酸無水物、低分子量アミドまたはギ酸の活性エステルまたはギ酸とアミドカップリング試薬、例えばカルボジイミドまたは縮合リン酸誘導体との前駆体反応生成物との反応は可能だが、好適ではない。ホルムアミド、または強塩基によって生じたホルムアミドのアニオンと、式(VI):
X-[A]n,
〔式中、Xとnは上記と同義であり、Aは脱離基、例えばクロリド、ブロミド、ヨージド、メシラート、トシラートまたはトリフラートを表す。〕
で示されるアルキル化試薬との反応は同様に可能であるが、好適ではない。
【0022】
用いられる式(V)のアミンは、好ましくは、BASF製ポリエーテル−アミンまたはHuntsman製Jeffamineである。これらは、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールまたはポリテトラヒドロフランであって、好ましくは構造:
-CH2-CH(CH3)-NH2
または
-CH2-CH2-CH2-NH2
の基でアミノ官能化されたものである。
【0023】
ホルムアミド末端化オリゴマーとイソシアネートの反応は、亜鉛化合物またはスズ化合物などの触媒を存在させ又は存在させず、好ましくは存在させずに、40〜120℃の温度で行う。ジイソシアネートは、ホルムアミド末端化オリゴマーを基準に3〜8倍のモル量で用いることが好ましく、反応後に真空で薄膜蒸留によって過剰物を除去し、アシル尿素プレポリマーを得る。
【0024】
本発明に従って用いるジイソシアネートは、例えば2,4−TDI、2,6−TDI、2,4’−MDI、4,4’−MDI、1,3−ジイソシアナトベンゼン、1,4−ジイソシアナトベンゼン、HDI、IPDI、4,4−ジイソシアナトシクロヘキシルメタン、ビスイソシアナトメチルノルボルナン、ビスイソシアナトメチルベンゼンまたはビスイソシアナトメチルシクロヘキサンである。
【0025】
本発明のプレポリマーは、従来技術に対応するプレポリマーが使用される全分野、例えば接着剤、ラッカー、PU成形または発泡品またはシーリング材において、使用することができる。本発明では、該プレポリマーは特に相対的に低粘度であるという利点がある。
【0026】
低粘度は、例えば「柔軟包装」または「反応性ポリウレタンホットメルト接着剤」(ホットメルト)の用途において特に有利である。ここで柔軟包装とは、ポリウレタンに基づく接着剤で接着させることによる複合フィルムの製造を意味するものと理解される。この場合、接着剤は通常、液状でフィルムに塗布され、その直後に第二のフィルムと接合される。反応性ポリウレタンホットメルト接着剤とは、高温ではメルト状であって、その温度にて液状で塗布される接着剤系を意味するものと理解される。塗布と接合の後、依然として反応性の接着剤が冷えることによって急速な初期接着力を確立する。最終的な接着力は、大気中の湿気による完全な硬化後に達成される。
【0027】
上記した全ての参照記載は、参照により、全ての有用な目的のためにその全体が本明細書中に組み込まれるものとする。
【0028】
本発明を具体化するある特定の構造を示し記載するが、本発明概念の精神と範囲から逸脱することなく一部の様々な変形および再調整をなし得ること、および該精神と範囲はここに示し記載された特定形態に限定されないことは、当業者にとって明らかである。
【実施例】
【0029】
使用する出発物質:
Desmodur(登録商標)T80(Bayer MaterialScience AG、レバークーゼン、ドイツ)、2,4−および2,6−TDIの80:20混合物、
Desmophen(登録商標)1262 BD(Bayer MaterialScience AG、レバークーゼン、ドイツ)、モル質量M=400の二官能性ポリプロピレンオキシド、
Jeffamine(登録商標)ED600(Huntsman、英国)、モル質量M=600の二官能性アミノ末端化ポリ−エチレン−co−プロピレングリコール、
Jeffamine(登録商標)D400 (Huntsman、英国)、モル質量M=400の二官能性アミノ末端化ポリプロピレングリコール、および
Irganox(登録商標)1076(Ciba、スイス)、立体障害フェノール。
【0030】
〔実施例1〕
ギ酸エチルエステル(400g)をJeffamine(登録商標)ED600(400g)へ、25℃で4時間かけて滴加し、次いで混合物を4時間撹拌する。その後、過剰のギ酸エチルエステルと生成エタノールを蒸留除去する。生成したホルムアミド末端化オリゴマーをDesmodur(登録商標)T80(2,088g)、Irganox(登録商標)1076(1g)および塩化ベンゾイル(2g)へ、80℃で2時間かけて滴加し、次いで混合物を80℃で8時間撹拌する。その後、過剰のDesmodur(登録商標)T80を薄膜蒸留において130℃で分離する。
NCO含量9.2%および表1に示す粘度を有するアシル尿素プレポリマーが得られる。
【0031】
〔実施例2〕
ギ酸エチルエステル(400g)をJeffamine(登録商標)D400(400g)へ、25℃で4時間かけて滴加し、次いで混合物を4時間撹拌する。その後、過剰のギ酸エチルエステルと生成エタノールを蒸留除去する。生成したホルムアミド末端化オリゴマーをDesmodur(登録商標)T80(2,088g)および塩化ベンゾイル(2g)へ、80℃で2時間かけて滴加し、次いで混合物を80℃で8時間撹拌する。その後、過剰のDesmodur(登録商標)T80を薄膜蒸留において130℃で分離する。
NCO含量10.4%および表1に示す粘度を有するアシル尿素プレポリマーが得られる。
【0032】
〔比較例〕
Desmophen(登録商標)1262BD(265.98g)をDesmodur(登録商標)T80(535.02g)へ、80℃で2時間かけて滴加し、次いで混合物を8時間撹拌する。その後、過剰のDesmodur(登録商標)T80を薄膜蒸留において130℃で分離する。
NCO含量10.4%および表1に示す粘度を有するアシル尿素プレポリマーが得られる。
【0033】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジイソシアネートとホルムアミド末端化オリゴマーのプレポリマー。
【請求項2】
前記プレポリマーは式(I):
X-[-N(CHO)-CO-NH-R1-NCO]n (I)
〔式中、Xはn価の有機基である。〕
を有する、請求項1に記載のプレポリマー。
【請求項3】
Xは式(II):
Y-[-(CH2-CHR3-(CH2)p-O)m-CH2-CHR4-(CH2)o-]n - (II)
〔式中、
Yはn−官能性飽和C2〜C6基であり;
はC6〜C13−アリールアルキル基またはC4〜C13−アルキレン基であり;
は水素またはメチルであり;
は水素またはメチルを表し;
mは2〜30の自然数であり;
nは2〜4の自然数であり;
oは0または1であり;および
pは0,1または2である。〕
で示される基である、請求項2に記載のプレポリマー。
【請求項4】
式中、Rはメチルであり;
oは0であり;および
pは0である、請求項3に記載のプレポリマー。
【請求項5】
ジイソシアネートとホルムアミド末端化オリゴマーを反応させること、および過剰の該ジイソシアネートを蒸留により分離することを含んでなる、請求項1に記載のプレポリマーの製造方法。
【請求項6】
式(III):
OCN-R1-NCO (III),
〔式中、
はC6〜C13−アリールアルキル基またはC4〜C13−アルキレン基であり;および
nは2〜4の自然数である。〕
で示されるジイソシアネートn〜(nx10)モルと、
式(IV):
X-[-NH(CHO)]n (IV),
〔式中、
Xは式(II):
Y-[-(CH2-CHR3-(CH2)p-O)m-CH2-CHR4-(CH2)o-]n - (II)
(式中、
Yはn−官能性飽和C2〜C6基であり;
はC6〜C13−アリールアルキル基またはC4〜C13−アルキレン基であり;
は水素またはメチルであり;
は水素またはメチルを表し;
mは2〜30の自然数であり;
nは2〜4の自然数であり;
oは0または1であり;および
pは0,1または2であり;および
nは2〜4の自然数である。)
の基である。〕
のホルムアミド末端化オリゴマー1モルを反応させること、および過剰の該ジイソシアネートを蒸留により分離することを含んでなる、請求項2に記載のプレポリマーの製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載のプレポリマーを含んでなるPU成形または発泡品。
【請求項8】
請求項1に記載のプレポリマーを含んでなる接着剤。
【請求項9】
請求項1に記載のプレポリマーを含んでなるシーリング材。
【請求項10】
請求項1に記載のプレポリマーを含んでなるラッカー。
【請求項11】
請求項2に記載のプレポリマーを含んでなるPU成形または発泡品。
【請求項12】
請求項2に記載のプレポリマーを含んでなる接着剤。
【請求項13】
請求項2に記載のプレポリマーを含んでなるシーリング材。
【請求項14】
請求項2に記載のプレポリマーを含んでなるラッカー。
【請求項15】
請求項3に記載のプレポリマーを含んでなるPU成形または発泡品。
【請求項16】
請求項3に記載のプレポリマーを含んでなる接着剤。
【請求項17】
請求項3に記載のプレポリマーを含んでなるシーリング材。
【請求項18】
請求項3に記載のプレポリマーを含んでなるラッカー。

【公開番号】特開2009−221477(P2009−221477A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−43518(P2009−43518)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】