説明

プレートれんがの固定機構

【課題】プレートれんがやその周面に貼付された弾性材を損傷することなく、プレートれんがを金枠に容易に組み込み固定することができるプレートれんがの固定機構を提供する。
【解決手段】プレートれんが20の一端を保持する保持部材30と、プレートれんが20を他端側から保持部材30に押し付ける押圧部材40とを備え、押圧部材40は、プレートれんが20を金枠10に押し付ける方向に進退する押圧ブロック42と、押圧ブロック42の揺動軸43周りに揺動可能に基端部が取り付けられ、近接する金枠辺とプレートれんが20との間に挿入されてプレートれんが20を固定する押圧片41とを具備し、さらに、押圧ブロック42を後退させたとき、近接する金枠辺側に押圧片41の先端を揺動させる付勢機構47を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライディングノズル装置(以下「SN装置」という。)において金枠に収納したプレートれんがを固定するプレートれんがの固定機構に関する。
【背景技術】
【0002】
取鍋やタンディッシュにおいて、溶鋼の流量を制御するため、SN装置が一般的に使用されている。このSN装置は、2枚又は3枚のプレートれんがを相対的にスライドさせ、ノズル孔を開閉することにより溶鋼の流量を制御するものである。また、使用中におけるプレートれんが間からの溶鋼の漏れを防止するため、プレートれんがのスライド面には大きな圧力をかけている。このような使用条件下でプレートれんがをスライドさせるためには、スライド時におけるプレートれんがのずれを防止するため、プレートれんがは金枠に固定されている。
【0003】
従来、プレートれんがを金枠に固定する固定機構としては、金枠内に、プレートれんがの長手方向一端の両側部を保持する保持部材と、プレートれんがの長手方向他端の両側部を長手方向に押圧する押圧部材とを配置し、押圧部材によってプレートれんがを保持部材に向けて押圧することによって、保持部材と押圧部材とでプレートれんがを挟み込んで固定する機構が知られている(例えば特許文献1)。
【0004】
このような固定機構に使用される押圧部材は、プレートれんがの長手方向端部の両側部を押圧するために、平面視でコの字状(チャンネル状)に形成される。プレートれんがを固定する際には、このコの字状の押圧部材内にプレートれんがの長手方向端部を組み込む必要があるが、押圧部材はプレートれんがを確実に固定できるようにプレートれんがに倣った形状に形成されるため、押圧部材とプレートれんがとの間に隙間がなくて、プレートれんがの組み込みが困難な場合がある。また、プレートれんがの組み込み時に、プレートれんがが押圧部材と接触しプレートれんがが損傷することがあり、プレートれんがの周面に断熱シートのような弾性材が貼付されている場合には、その弾性材が損傷することがある。プレートれんがやその周面に貼付された弾性材が損傷すると、プレートれんがの固定が不十分になり、SN装置の操業に支障を来す場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3725966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、プレートれんがやその周面に貼付された弾性材を損傷することなく、プレートれんがを金枠に容易に組み込み固定することができるプレートれんがの固定機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るプレートれんがの固定機構は、SN装置において金枠に収納したプレートれんがを固定するプレートれんがの固定機構であって、前記プレートれんがの一端を保持する保持部材と、前記プレートれんがを他端側から前記保持部材に押し付ける押圧部材とを備え、前記押圧部材は、前記プレートれんがを前記金枠に押し付ける方向に進退する押圧ブロックと、前記押圧ブロックの揺動軸周りに揺動可能に基端部が取り付けられ、近接する金枠辺とプレートれんがとの間に挿入されて該プレートれんがを固定する押圧片と
を具備し、さらに、前記押圧ブロックを後退させたとき、近接する金枠辺側に前記押圧片の先端を揺動させる付勢機構を具備することを特徴とするものである。
【0008】
本発明において、前記押圧部材は、前記プレートれんがの両側部を押圧する一対の前記押圧片を備え、前記付勢機構は、前記押圧ブロックを後退させたとき、一対の前記押圧片の先端の間隔が広がる方向に各該押圧片を揺動させるようにすることができる。
【0009】
また本発明において、前記付勢機構は、前記押圧片の基端部と該基端部が接触する接触部の一方であって、前記搖動軸よりも前記金枠の内側に設けた突起とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、押圧ブロックを後退させたとき、押圧片の先端が近接する金枠辺側に揺動するので、プレートれんがを金枠に組み込みやすくなる。したがって、プレートれんがやその周面に貼付された弾性材を損傷することなく、プレートれんがを金枠に容易に組み込み固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るプレートれんがの固定機構の一実施例を示す正面図である。
【図2】図1のプレートれんがの固定機構における一対の押圧片の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1は、本発明に係るプレートれんがの固定機構の一実施例を示す正面図である。SN装置は、取鍋やタンディッシュの底部に取り付けられ、その使用時にはプレートれんがはその長手方向が水平となるように位置するが、SN装置の補修時にプレートれんがを交際するときには、プレートれんがはその長手方向が垂直になるように位置する。図1は、SN装置の補修時の状態を正面視で示している。
【0014】
図1において、金枠10内にプレートれんが20が収納されている。金枠10は矩形状の底板11の周縁に立ち上がり壁12を設けることによってプレートれんが20を収納できるように形成されている。金枠10の底板11には、プレートれんが20のノズル孔21と整合する位置に開口13が設けられている。
【0015】
金枠10内には、プレートれんが20の長手方向一端の両側部を保持する一対の保持部材30が配置されている。具体的には、プレートれんが20の長手方向一端の両側部は傾斜面22とされ、この傾斜面22と面合するように一対の保持部材30が配置されている。
【0016】
また、金枠10には、プレートれんが20の長手方向他端を長手方向に押圧する押圧部材40が配置されている。押圧部材40は、金枠10内に、プレートれんがの長手方向一端の両側部を押圧する一対の押圧片41を備えている。具体的には、プレートれんが20の長手方向他端の両側部は傾斜面23とされ、この傾斜面22と面合するように一対の押圧部材41が配置されている。
【0017】
一対の押圧片41の基端部は、それぞれ押圧ブロック42の長手方向両端の揺動軸43周りに揺動可能に取り付けられている。そして、押圧ブロック42には、金枠10に固定したネジブロック44に螺合された進退用ネジ軸45の先端部分が固定されている。進退用ネジ軸45を螺合したネジブロック44は金枠10に固定されているので、進退用ネジ軸45を一方向に回転させると押圧ブロック42は前進し、進退用ネジ軸45を他方向に回転させると押圧ブロック42は後退する。
【0018】
ここで、図1中の符号46は、ネジブロック44を金枠10に固定するための固定ボルトであり、その先端はネジブロック44に開けられた貫通孔に挿通されている。固定ボルト46を図1の実施例のように進退用ネジ軸45を挟んで対称に設けることで、ネジブロック44を金枠10に確実に固定できると共に、進退用ネジ軸45の操作による押圧ブロック42の進退をスムーズにガイドできる。
【0019】
図1の実施例では、一対の押圧片41の基端部の、押圧ブロック42の長手方向両端の揺動軸43よりも押圧ブロック42の長手方向中央側の位置に、ネジブロック44側に向けて突き出す突起47が設けられている。このように突起47を設けることで、進退用ネジ軸45によって押圧ブロック42を後退させると、最初に突起47がネジブロック44(接触部)に突き当たる。そして、突起47と揺動軸43の位置関係により、突起47がネジブロック44に突き当たると、一対の押圧片41に、その先端の間隔が広がる方向(近接する金枠辺側)に揺動する方向のモーメントが作用し、図2(a)に誇張して示すように一対の押圧片41は、その先端の間隔が広がった状態に保持される。一方、進退用ネジ軸45によって押圧ブロック42を前進させると、突起47がネジブロック44から離れるので、上記のモーメントは作用しなくなり、一対の押圧片41は図2(b)に示すように、自重によりほぼ垂直の状態になる。
【0020】
以上の構成において、プレートれんが20を金枠10に収納して固定する際には、進退用ネジ軸45によって押圧ブロック42を後退させ、図2(a)に示すように一対の押圧片41を、その先端の間隔が広がった状態に保持する。そして、プレートれんが20の長手方向一端の両側部を一対の保持部材30で保持し、その状態でプレートれんが20の長手方向他端を一対の押圧片41間に組み込む。このとき、一対の押圧片41はその先端が広がった状態に保持され、プレートれんが20との隙間が十分に確保されているので、プレートれんが20と一対の押圧片41が接触することなくプレートれんが20を容易に組み込むことができる。
【0021】
プレートれんが20の長手方向他端を一対の押圧片41間に組み込んだら、進退用ネジ軸45によって押圧ブロック42を前進させる。そうすると上述のとおり、突起47がネジブロック44から離れるので、上記のモーメントは作用しなくなり、一対の押圧片41は自重によりほぼ垂直の状態になる。さらに進退用ネジ軸45によって押圧ブロック42を前進させると、プレートれんが20長手方向他端の両側部の傾斜面23が一対の押圧片41と面合する。その後さらに押圧ブロック42を前進させると、一対の押圧片41は、プレートれんが20の傾斜面23から押圧されることにより、その先端の間隔が広がる方向に揺動するが、金枠10の立ち上がり壁12に突き当たることでそれ以上は揺動しなくなる。これによって、プレートれんが20は、一対の保持部材30と一対の押圧片41とで挟み込まれて固定される。
【0022】
なお、以上の実施例では、突起47を一対の押圧片41の基端部に設けたが、突起は、一対の押圧片41の基端部と対向するネジブロック44に一対の押圧片41の基端部側に突き出すように設けても、同様の作用を奏することができる。また、突起は剛体(剛性体)によって形成しても良いが、コイルバネ等の弾性体によって形成しても良い。さらにネジブロック44を設けることなく、押圧片41の突起47が金枠に突き当たるように構成してもよい。加えて上記実施例では、一対の押圧片それぞれに突起(付勢機構)を設けているが、片方の押圧片に付勢機構を設け、一方が広がるように構成した場合でも、押圧片を押し広げる作業が従来よりも軽減され、比較的容易にプレートれんがの交換作業を行うことができる。
【符号の説明】
【0023】
10 金枠
11 底板
12 立ち上がり壁
13 開口
20 プレートれんが
21 ノズル孔
22,23 傾斜面
30 保持部材
40 押圧部材
41 押圧片
42 押圧ブロック
43 揺動軸
44 ネジブロック
45 進退用ネジ軸
46 固定ボルト
47 突起(付勢機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライディングノズル装置において金枠に収納したプレートれんがを固定するプレートれんがの固定機構であって、
前記プレートれんがの一端を保持する保持部材と、
前記プレートれんがを他端側から前記保持部材に押し付ける押圧部材と
を備え、
前記押圧部材は、
前記プレートれんがを前記金枠に押し付ける方向に進退する押圧ブロックと、
前記押圧ブロックの揺動軸周りに揺動可能に基端部が取り付けられ、近接する金枠辺とプレートれんがとの間に挿入されて該プレートれんがを固定する押圧片と
を具備し、
さらに、前記押圧ブロックを後退させたとき、近接する金枠辺側に前記押圧片の先端を揺動させる付勢機構を具備する
ことを特徴とするプレートれんがの固定機構。
【請求項2】
前記押圧部材は、前記プレートれんがの両側部を押圧する一対の前記押圧片を備え、
前記付勢機構は、前記押圧ブロックを後退させたとき、一対の前記押圧片の先端の間隔が広がる方向に各該押圧片を揺動させる
ことを特徴とする請求項1記載のプレートれんがの固定機構。
【請求項3】
前記付勢機構は、前記押圧片の基端部と該基端部が接触する接触部の一方であって、前記搖動軸よりも前記金枠の内側に設けた突起であることを特徴とする請求項1または2記載のプレートれんがの固定機構。

【図1】
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【図2】
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