説明

プレートコンパクタの散水装置

【課題】エンジンベース上に設けたブラケットに対する水タンクの着脱の容易性を確保しつつ、水タンクが熱膨張した際の前後振動による破損を防止しうる構造を有するプレートコンパクタの散水装置を提供する。
【解決手段】水タンク13の前部または後部を係止する手段として、左右一対の係止部を有して水タンク13の左右の動きを防止するとともに、少なくとも前方または後方への動きを防止する第1の係止手段7dを備える。第1の係止手段7dにより係止される水タンク13の後部または前部を係止する手段として、第1の係止手段7dとの間で水タンク13の前後方向の動きを防止する第2の係止手段15を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装面の転圧や路面の締め固め等を行なうプレートコンパクタにおいて、アスファルト上の転圧作業の際に転圧板がアスファルトに付着することを防止するために、水タンクに貯められた水を路面に散水する装置に係わり、より詳しくは水タンクの取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
プレートコンパクタは、例えば特許文献1に記載のように、転圧板上に防振部材を介してエンジンベースを設置し、エンジンベース上にエンジンを載置し、転圧板上に載置した起振装置の起振用回転体をエンジンによって回転させて転圧板を振動させることにより、アスファルト舗装面や砂利を敷き詰めた路面等の転圧を行なうものである。
【0003】
このようなプレートコンパクタにおいて、特許文献2には、アスファルト上の転圧作業の際に転圧板がアスファルトに付着することを防止するため、パイプからなる枠体の前部に散水用の水タンクを搭載し、水タンクから地面に散水するものが開示されている。この特許文献2に記載の水タンクは、枠体への着脱を容易にするため、水タンクの底部に凹溝を形成し、この凹溝を前記枠体を構成する横パイプ上に載せるとともに、水タンクの側面に開口部が後向きとなるように設けた凹溝を枠体の前部に傾斜して設けたパイプに嵌合することにより、水タンクを枠体に搭載している。なお、水タンクとしては一般的に軽量で成形が容易な樹脂製のものが用いられる。
【0004】
図10は従来のプレートコンパクタにおける水タンクの別の取付け構造を説明する側面図、図11、図12はそれぞれその正面図、平面図である。図10〜図12において、50は起振装置51を設置した転圧板、52はこの転圧板50上に防振ゴム53を介して設置したエンジンベース、54はこのエンジンベース52上に設置したエンジン、55はエンジンベース52の前部に後述の構造により搭載した水タンクである。
【0005】
56はエンジンベース53上に取付けたプレートコンパクタ運搬用パイプ、57はこのパイプ56の前部に溶接したタンク取付け用のパイプであり、このパイプ57は2股状のタンク取付け用係止部57a,57aを有する。58はこのパイプ57および前記プレートコンパクタ運搬用パイプ56に溶接したタンク載置板である。水タンク55は、タンク載置板58上に載置するとともに、水タンク55の両側の縦溝55a,55aを、前記2股状の係止部57a,57aに嵌合して取付けている。
【0006】
なお、起振装置51は横軸を中心に回転する偏心した起振用回転体を有し、その起振装置51を機体前方に配置させることにより、転圧板50の前方を大きく振動させるとともに、振動に伴い、プレートコンパクタを前進させる力を発生させるものであり、プレートコンパクタは転圧板50の振動しながら前進する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−129412号公報
【特許文献2】特開2004−211352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に示した水タンクの取付け構造によると、水タンクの両側の凹溝がその開口部を後方に向く方向に設けられており、この凹溝に枠体のパイプが嵌合されているので、前後方向の振動により、水タンクの両側の凹溝がパイプから外れて水タンクが枠体から離脱するおそれがある。また、凹溝形成部に振動による力が集中して凹溝形成部が破損するおそれがある。
【0009】
また、図10ないし図12に示した水タンクの取付け構造の場合、前述のように水タンクには比較的衝撃に強い樹脂を用い、取付け用パイプ57は鉄製である。そして水タンク55の両側に形成する縦溝55aの径はパイプ57の直径とほぼ等しく形成し、水タンク55をパイプ57に取付ける際には、係止部57a,57aに縦溝55a,55aを密着させて隙間をなくし、振動に強い強固な結合を図っている。
【0010】
しかしながら、アスファルト施工においては、プレートコンパクタは高温にさらされるため、熱膨張係数の高い樹脂製の水タンク55はパイプ57に比較して膨張量が大きい。このため、プレートコンパクタが高温にさらされると、縦溝55aの径が大きくなり、これにより、図13(A)に示す状態から図14に示す状態に変化する。このため、係止部57aと縦溝55aとの接触面積が減少し、矢印61(図13(B)参照)に示す前後方向の拘束力が弱まる。その結果、パイプ57に対し、水タンク55が前後方向にずれ、水タンク55の磨耗が進展する。磨耗が進展すると、パイプ57と水タンク55との間に隙間59が生じ、水タンク55は係止部57aに対して相対的に振動し、この振動によって縦溝55aの内壁面が係止部57aに衝突を繰り返し、その結果、水タンク55にクラックが発生するおそれがあるという問題点があった。
【0011】
なお、タンク載置板58は水タンク55の後部のみを支持しているため、水タンク55が前後に振動する際に、図10の側面図に矢印62で示すように、水タンク55の前部が後部支点を中心に上下回動するような振動となり、水タンク55の係止部57aの下部との接触部に応力が集中してこの下部近傍にクラックが発生しやすい。
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑み、水タンクが熱膨張した際の前後振動による破損を防止しうる構造を有するプレートコンパクタの散水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1のプレートコンパクタの散水装置は、
起振用回転体を有する起振装置を転圧板上に設置し、前記転圧板上に緩衝材を介してエンジンベースを設置し、前記エンジンベースにエンジンを搭載するとともに、エンジンベース上における前記エンジンより前部に樹脂製の水タンクを搭載してなるプレートコンパクタの散水装置において、
前記水タンクを係止する手段として、左右一対の係止部を有して水タンクの左右の動きを防止するとともに、少なくとも水タンクの前方または後方への動きを防止する第1の係止手段と、
前記第1の係止手段と前後方向の異なる位置に設けられ、前記第1の係止手段と協働して水タンクの前後方向の動きを防止する第2の係止手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項2のプレートコンパクタの散水装置は、請求項1に記載のプレートコンパクタの散水装置において、
前記水タンクの前後方向の全幅を支持する支持部材を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項3のプレートコンパクタの散水装置は、請求項2に記載のプレートコンパクタの散水装置において、
前記第1の係止手段を、前記プレートコンパクタ運搬用パイプの前部に設けられ、上拡がりの2股状をなす左右の係止部により構成し、
前記水タンクの背面に、後方に突出した上拡がり状の突出部を形成し、
前記突出部を前記左右の係止部間に嵌め、
前記第2の係止手段を、前記支持部材の前端部に設けられ、前記水タンクの前面を受ける立ち上げ片により構成したことを特徴とする。
【0016】
請求項4のプレートコンパクタの散水装置は、請求項3に記載のプレートコンパクタの散水装置において、
前記プレートコンパクタ運搬用パイプに、水タンクの後部の浮き上がりを防止する規制部材を着脱可能に取付けたことを特徴とする。
【0017】
請求項5のプレートコンパクタの散水装置は、請求項1に記載のプレートコンパクタの散水装置において、
前記プレートコンパクタ運搬用パイプの前部から前方に延出させて2股状をなす水タンク支持用のパイプを設けるとともに、延出させたパイプの前端を立ち上がらせて左右のパイプ間隔が上拡がり状の左右の係止部からなる前記第1の係止手段を構成し、
前記水タンクの前面に、前方へ突出しかつ上拡がり形状をなす突出部を形成し、
前記突出部を前記左右の係止部間に嵌め、
前記プレートコンパクタ運搬用パイプの前部を、前記水タンクの背面側を受ける前記第2の係止手段として兼用したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、樹脂製の水タンクの前後移動を第1、第2の係止手段によって防止する構造としたので、水タンクが膨張した際には、水タンクは前後方向について前後の係止手段によってより強固に保持される。このため、アスファルト施工において、高温により水タンクが膨張した場合、水タンクと第1、第2の係止手段との間に隙間を生じることがなく、水タンクと第1、第2の係止手段との相対的振動が防止され、水タンクのクラック発生を防止することができる。
【0019】
また、水タンクと第1、第2の係止手段との間の相対的な前後振動が防止される上、水タンクの前後の異なる位置に配置した第1の係止手段と第2の係止手段とで前後振動を受ける構造になるので、水タンク自体が弾性材として作用し、クラックが発生し難くなる。
【0020】
請求項2の発明によれば、水タンクの前後方向の幅全体を支持部材により支持する構造としたので、水タンクの前部が後部支点を中心に上下回動するような振動が防止され、より破損し難い構造が実現される。
【0021】
請求項3の発明によれば、プレートコンパクタ運搬用パイプの前部に2股状をなす左右の係止部を形成して第1の係止手段とし、この左右の係止部間に、水タンクの背面に上拡がり状に形成した突出部を嵌めて水タンクを取付ける構造としたので、アスファルト施工において、高温により水タンクが膨張した場合、突出部と左右の係止部とがより強く圧接するため、突出部と左右の係止部との隙間が発生するおそれがなく、アスファルト施工における横振動にも強い構造が実現される。
【0022】
また、水タンクの前後方向の幅全体を支持部材により支持する構造としたので、水タンクの前部が後部支点を中心に上下回動するような振動が防止され、より破損し難い構造が実現される。また、水タンク全体が第1の係止手段と第2の係止手段との間で挟持された構造となるので、水タンク全体が弾性体として作用するため、より破損し難い構造が実現される。
【0023】
また、プレートコンパクタ運搬用パイプを水タンクの係止手段として兼用したので、部材点数を減少させることができる。また、プレートコンパクタ運搬用パイプの前部を設置する領域を水タンクで占有する領域として利用できるので、水タンクの容量をより大きくすることができる。
【0024】
また、左右の係止部間に水タンクの上拡がりの突出部を上から嵌め込むことによって水タンクを左右の係止部間に固定し、反対に、突出部を係止部間から上方に引上げれば水タンクが取外しできるため、水タンクの着脱が容易となる。
【0025】
請求項4の発明によれば、水タンクの浮き上がりを防止する規制部材を設けたので、水タンクの上下振動が防止され、水タンクの上下振動による破損も防止される。
【0026】
請求項5の発明によれば、水タンクの前面にまで延出させたパイプの前部に2股状をなす左右の係止部を形成して第1の係止手段とし、この左右の係止部間に、水タンクの前面に上拡がり状に形成した突出部を嵌めて水タンクを取付ける構造としたので、アスファルト施工において、高温により水タンクが膨張した場合、突出部と左右の係止部とがより強く圧接するため、突出部と左右の係止部との隙間が発生するおそれがなく、アスファルト施工における横振動にも強い構造が実現される。
【0027】
また、水タンクの前後方向の幅全体を前方に延出したパイプにより支持する構造としたので、水タンクの前部が後部支点を中心に上下回動するような振動が防止され、より破損し難い構造が実現される。また、水タンク全体が第1の係止手段と第2の係止手段との間で挟持された構造となるので、水タンク全体が弾性体として作用するため、より破損し難い構造が実現される。
【0028】
また、水タンクの前面に設けた上拡がりの突出部を左右の係止部間に上から嵌め込むことによって水タンクを左右の係止部間に固定し、反対に、突出部を係止部間から上方に引上げれば水タンクが取外しできるため、水タンクの着脱が容易となる。また、プレートコンパクタ運搬用パイプを水タンクの係止手段として兼用したので、部材点数を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による散水装置の一実施の形態を示すプレートコンパクタの側面図である。
【図2】図1のプレートコンパクタの正面図である。
【図3】図1のプレートコンパクタの平面図である。
【図4】本実施の形態の水タンクの取付け構造を示す側面図である。
【図5】(A)は本実施の形態の水タンク取付け部材を示す正面図、(B)は水タンクの背面図、(C)は水タンクの側面図である。
【図6】本実施の形態の水タンクの押さえ構造を示す側面図である。
【図7】本発明による散水装置の他の実施の形態を示すプレートコンパクタの側面図である。
【図8】図7のプレートコンパクタの正面図である。
【図9】図7のプレートコンパクタの平面図である。
【図10】従来の散水装置を示すプレートコンパクタの側面図である。
【図11】図10のプレートコンパクタの正面図である。
【図12】図10のプレートコンパクタの平面図である。
【図13】(A),(B)はそれぞれ従来の散水装置の問題点を説明する水タンクの平面図である。
【図14】従来の散水装置における温度上昇時の問題点を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1、図2、図3はそれぞれ本発明による散水装置の一実施の形態を示すプレートコンパクタの側面図、正面図、平面図である。図1ないし図3において、1は転圧板であり、この転圧板1上の前部に起振装置2を設置する。この起振装置2は、起振用の偏心した回転体を備え、その回転体を、その上部が前進方向に移動するように回転させることにより、振動を発生させるとともに、転圧板1に前進方向の力を発生させるものである。なお、起振装置としては、起振用回転体をその上部が後側に向けて移動するように回転させることも可能として後進も可能とする場合もある。
【0031】
転圧板1上には上部構造体取付け板1aを左右2列に溶接し、この取付け板1aに緩衝材としての防振ゴム3(図1参照)を介してエンジンベース4の両側板4aを結合して取付ける。このエンジンベース4にはエンジン5を搭載する。6は燃料タンク、7はこのプレートコンパクタをトラック等に積み込み、積み下ろしする際に持ち上げるためにエンジンベース4に設けた運搬用のパイプである。図4の側面図に示すように、このパイプ7は上方に凸となるように曲成したもので、前部と後部の下端に取付け板7aを有し、この取付け板7aをボルト8によってエンジンベース4の前後に固定して取付けられる。9はエンジンベース4の後部に取付けられたハンドルであり、このハンドル9は、オペレータが把持してこのプレートコンパクタの移動、向きおよび姿勢の制御を行なうものである。
【0032】
図1に示すように、エンジン5の出力を起振装置2の起振用回転体に伝達する動力伝達装置は、エンジン5の出力軸5aに取付けられた駆動プーリ10と、起振装置2の中心軸2aに取付けられた従動プーリ11との間にベルト12を掛け回すことにより構成され、エンジン5を作動させることにより、起振装置2の起振用回転体が回転して振動が発生し、転圧板1が振動するとともに、プレートコンパクタが前進方向に移動する力を発生させる。
【0033】
前記プレートコンパクタ運搬用パイプ7は、その前部をパイプの折り曲げにより上拡がりの2股状に形成する。すなわち、その2股部は、図5(A)に示すように、パイプの折り曲げにより、上部の横パイプ部7cを折り曲げて左右の縦パイプ部からなる係止部7d,7dを形成してなる。そしてエンジンベース4の前後にわたって配置される主パイプ部7eの前端を横パイプ部7cに溶接する。この実施の形態においては、係止部7d,7dは後述の水タンク13の左右の移動を防止し、かつ後方への移動を防止する第1の係止手段を構成する。
【0034】
13はアスファルト施工の際に施工面に散水するための樹脂製水タンク、13aはその蓋、14はこの水タンク13を取付けるための支持部材となる鉄製ブラケットである。このブラケット14は板状をなし、図4に示すように、その後端部を前記パイプ7の前部の係止部7d,7dに溶接により固定する。このブラケット14はその前端部を上方に折り曲げて立ち上げ片15を形成し、この立ち上げ片15により水タンク13の前方への移動を規制する第2の係止手段を構成する。図1において、16はこの立ち上げ片15の背面に固着したゴムからなる衝撃吸収用の弾性材である。
【0035】
図5(B)の背面図および図5(C)の側面図に示すように、水タンク13はその背面側に後方に突出した突出部13bを有し、この突出部13bは上方が拡大された形状をなす。この突出部13bはその左右の側部間の幅が前記左右の係止部7d,7d間の上拡がり部分の間隔に合致する構造を有する。
【0036】
パイプ7には、図4、図5(A)、図6に示すように、水タンク13の上方への浮き上がりを防止するための規制部材17を取付ける。18はこの規制部材17を取付けるための取付け板であり、この取付け板18の両端を係止部7d,7dに溶接して取付ける。この取付け板18に、側面形状がL字形の規制部材17をボルト19により着脱可能に取付ける。20は規制部材17の下面に固着した弾性材である。図4、図5(B)、図6に示すように、突出部13bの頂部には段部13cを形成する。この段部13cに、ゴムからなる弾性材20を介して規制部材17を当接させることにより、水タンク13の浮き上がりを防止する。
【0037】
図1に示すように、水タンク13の底面には手動式開閉弁13dを有する排水管13eを設ける。一方、図1、図2に示すように、転圧板1の前部の傾斜縁1bの下面に、ノズル管22を溶接した取付け板23をボルト24により取付ける。そして、排水管13eとノズル管22の導入管22aをホース25により接続する。ノズル管22は複数の散水用ノズルを長手方向に間隔を有して配置したパイプからなる。
【0038】
この水タンク13の取付けは、規制部材17をその取付け板18から外しておき、図4に2点鎖線で示すように、水タンク13を前傾姿勢でブラケット14上に載せ、左右の係止部7d,7d間に水タンク13の背面の突出部13bを位置させる。そして、矢印26に示すように水タンク13を起立させて水タンク13の前面の下部を弾性材16を介して係止部材15に係止させるとともに、突出部13bを左右の係止部7b,7b間に嵌め込む。その後、取付け板18にボルト19によって規制部材17を、この規制部材17の下面に設けた弾性材20が水タンク13の段部13cを押さえた状態で取付ける。
【0039】
反対に、水タンク13の取外しの際には、規制部材17を取付け板18から取外し、水タンク13を前傾姿勢となるように水タンク13の背面側を持ち上げれば突出部13bが係止部7d,7d間から外して水タンク13をブラケット14から取外すことができる。
【0040】
図1〜図4に示したように、水タンク13を取付けた状態においては、水タンク13の前面が前方の立ち上げ片15に設けた弾性材16を介して当接し、背面は係止部7d,7dに当接するので、立ち上げ片15と係止部7bとの協働作用により、水タンク13の前後の動きが防止される。また、水タンク13の背面の突出部13bが左右の係止部7d,7d間で挟持されることにより、水タンク13の左右の動きも防止される。また、規制部材17により水タンク13の浮き上がりが防止される。
【0041】
このプレートコンパクタを用いてアスファルト施工を行なう際に、アスファルトの持つ熱によってプレートコンパクタおよび水タンク13の温度が上昇し、鉄製のブラケット14に対して樹脂製の水タンク13が熱膨張係数の差によって相対的に膨張する。このため、水タンク13の前後面は、ブラケット14と一体に形成された係止部材15に固着した弾性材16と係止部7d,7dに圧接し、その結果、水タンク13はより強固に保持されるため、転圧作業に伴う前後方向の振動による水タンク13が破損が防止される。
【0042】
また、この水タンク13の取付け構造によれば、水タンク13のブラケット14や係止部7dに対する前後振動が防止される上、水タンク13全体で前後振動を受ける構造になるので、水タンク13自体が弾性材として作用し、クラックが発生し難くなる。
【0043】
また、2股状をなす左右の係止部7d,7d間に、水タンク13に上拡がり状に形成した突出部13bを挟持させて水タンク13を前記ブラケット14上に取付ける構造としたので、ブラケット14に対する水タンクの横振動も防止される。また、アスファルト施工において、高温により水タンク13が膨張した場合、突出部13bと左右の係止部7d,7dとがより強く圧接するため、アスファルト施工における横振動にも強い構造が実現される。
【0044】
また、水タンク13の前後方向の幅全体をブラケット14により支持する構造としたので、図10の矢印62に示したように水タンクの前部が後部支点を中心に回動するような振動が防止され、より破損し難い構造が実現される。
【0045】
また、この実施の形態においては、係止部7d,7dを上拡がりに形成し、この部分に水タンク13の背面に形成した上拡がり状の突出部13bを上方から嵌め込む構造としたので、着脱が容易となる。
【0046】
また、この実施の形態においては、プレートコンパクタ運搬用パイプ7を水タンク13の背面側の係止部材として兼用したので、部材点数を減少させることができる。また、この実施の形態においては、プレートコンパクタ運搬用パイプ7の前部を2股状に形成し、この2股状に形成した部分に突出部13bを嵌め込む構造にしたので、突出部13bの分だけ、水タンクの容量をより大きくすることができる。
【0047】
また、この実施の形態においては、水タンクの浮き上がりを防止する規制部材17を設けたので、水タンク13の上下振動も防止され、水タンク13の上下振動による破損も防止される。さらにこの実施の形態においては、水タンク13と立ち上げ片15との当接部に弾性材16を設けたので、水タンク13が熱膨張した場合、弾性材16がこの熱膨張を吸収して水タンク13の破損をより確実に防止することができる。
【0048】
図7は本発明の他の実施の形態を示すプレートコンパクタの側面図、図8、図9はそれぞれその正面図、平面図である。この実施の形態の散水装置は、水タンク13を支持する部材として、プレートコンパクタ運搬用パイプ7の前部に溶接した左右の支持パイプ27,27を用いる。このパイプ27,27はタンク載置部27a,27aと左右の係止部27b,27bとからなる。
【0049】
図7に示すように、タンク載置部27a,27aは水平状をなし、図9に示すように、前方ほどこれらのタンク載置部27a,27a間の相互の間隔を拡大して取付けられる。左右の係止部27b,27bは、図8に示すように、タンク載置部27a,27aの各前端部から上方に立ち上げ状に曲成されるとともに、上方ほど相互の間隔を拡大して形成される。この左右の係止部27b,27bは、水タンク13の左右の移動を防止するとともに、水タンク13の前方への移動を防止する第1の係止手段として作用するものである。タンク載置部27a,27a上には、水タンク13の底面の当接面積を広げて面圧を下げるため、載置板28を溶接等により取付ける。
【0050】
図7、図8に示すように、水タンク13の前面には、前記左右の係止部27b,27b間に嵌める上拡がりの突出部13fを形成する。また、図7に示すように、水タンク13の前面13gは背面13hとの間の幅が上方ほどやや拡大されるように傾斜して形成し、左右の係止部27bも同様にやや前傾した構造として着脱の容易化を図ったものである。
【0051】
前記プレートコンパクタ運搬用パイプ7の前部7fは、前記水タンク13の背面側を受ける第2の係止手段として兼用する。この実施の形態においては、水タンク13の背面とプレートコンパクタ運搬用パイプ7の前部7fとの間の当接の面圧を下げるため、水タンク13の背面13hを受ける受け板29を溶接等により取付けるとともに、この受け板29の前面に弾性材30を固着して水タンク13の後方への移動を防止する第2の係止手段を構成する。
【0052】
この実施の形態においては、樹脂製の水タンク13の前後移動を、第1の係止手段を構成する左右の係止部27b,27bと、第2の係止手段を構成するプレートコンパクタ運搬用パイプ7の前部7fの受け板29とよって防止する構造としたので、水タンク13が膨張した際には、水タンク13は前後方向についてこれらの係止部27b,27bと受け板29によってより強固に保持される。このため、水タンク13とその支持体との相対的振動が防止され、その振動による水タンク13のクラック発生を防止することができる。
【0053】
また、水タンク13とその支持体との間の相対的な前後振動が防止される上、水タンク13の前後幅全体が係止部27b,27bとプレートコンパクタ運搬用パイプ7の前部7fの受け板29との間で挟持され、水タンク自体が弾性材として作用し、破損し難くなる。
【0054】
また、水タンク13の前後方向の幅全体を支持部材となるタンク載置部27aにより支持する構造としたので、水タンクの前部を支持しない図10〜図12に示した従来構造のように、水タンクの前部が上下回動するように振動することがなく、より破損し難い構造が実現される。
【0055】
左右の2股状をなす左右の係止部27b,27bを形成して第1の係止手段とし、この左右の係止部27b,27b間に、水タンク13の前面に上拡がり状に形成した突出部13fを嵌めて水タンク13を取付ける構造としたので、アスファルト施工において、高温により水タンク13が膨張した場合、突出部13fと左右の係止部27b,27bとがより強く圧接するため、アスファルト施工における横振動にも強い構造が実現される。
【0056】
また、プレートコンパクタ運搬用パイプ7の前部7fを第2の係止手段として兼用したので、部材点数を減少させることができる。
【0057】
また、左右の係止部27b,27b間に水タンク13の上拡がりの突出部13fを上から嵌め込むことによって水タンク13を左右の係止部27b,27b間に固定し、反対に、突出部13fを係止部27b,27b間から上方に引上げれば水タンク13が取外しできるため、水タンク13の着脱が容易となる。
【0058】
本発明を実施する場合、第1の係止手段と第2の係止手段は、その一方を水タンクの前後方向の中心より前部を係止するものとして構成する場合、他方は水タンクの前後方向の後部を係止するものとして構成することにより実現できる。例えば図10〜図12に示したように、水タンク55の後部に設けた溝55aに嵌めるパイプ57aによって水タンク左右移動と後方への移動を防止する第1の係止手段を構成し、これに加えて、図1〜図4に示したように、立ち上げ片15によって水タンク13の前方への動きを防止する第2の係止手段を構成してもよい。また、水タンク13の前面または前部側面に縦溝を形成してその縦溝に嵌まるパイプにより水タンクの前方への移動と左右の移動を防止する第1の係止手段とし、プレートコンパクタ運搬用パイプ7の前部等を第2の係止手段とした構成とすることもできる。その他、上記実施の形態以外に種々の変更、付加が可能である。
【符号の説明】
【0059】
1:転圧板、2:起振装置、3:防振ゴム、4:エンジンベース、5:エンジン、6:燃料タンク、7:プレートコンパクタ運搬用パイプ、7d:係止部(第1の係止手段)、7f:プレートコンパクタ運搬用パイプの前部(第2の係止手段)、9:ハンドル、10:駆動プーリ、11:従動プーリ、12:ベルト、13:水タンク、13b,13f:突出部、13c:段部、14:ブラケット(支持部材)、15:立ち上げ片(第2の係止手段)、16:弾性材、17:規制部材、18:取付け板、19:ボルト、20:弾性材、22:ノズル管、27:支持パイプ、27a:タンク載置部(支持部材)、27b:係止部(第1の係止手段)、28:載置板、29:受け板、30:弾性材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
起振用回転体を有する起振装置を転圧板上に設置し、前記転圧板上に緩衝材を介してエンジンベースを設置し、前記エンジンベースにエンジンを搭載するとともに、エンジンベース上における前記エンジンより前部に樹脂製の水タンクを搭載してなるプレートコンパクタの散水装置において、
前記水タンクを係止する手段として、左右一対の係止部を有して水タンクの左右の動きを防止するとともに、少なくとも水タンクの前方または後方への動きを防止する第1の係止手段と、
前記第1の係止手段と前後方向の異なる位置に設けられ、前記第1の係止手段と協働して水タンクの前後方向の動きを防止する第2の係止手段とを備えたことを特徴とするプレートコンパクタの散水装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプレートコンパクタの散水装置において、
前記水タンクの前後方向の全幅を支持する支持部材を備えたことを特徴とするプレートコンパクタの散水装置。
【請求項3】
請求項2に記載のプレートコンパクタの散水装置において、
前記第1の係止手段を、前記プレートコンパクタ運搬用パイプの前部に設けられ、上拡がりの2股状をなす左右の係止部により構成し、
前記水タンクの背面に、後方に突出した上拡がり状の突出部を形成し、
前記突出部を前記左右の係止部間に嵌め、
前記第2の係止手段を、前記支持部材の前端部に設けられ、前記水タンクの前面を受ける立ち上げ片により構成したことを特徴とするプレートコンパクタの散水装置。
【請求項4】
請求項3に記載のプレートコンパクタの散水装置において、
前記プレートコンパクタ運搬用パイプに、水タンクの後部の浮き上がりを防止する規制部材を着脱可能に取付けたことを特徴とするプレートコンパクタの散水装置。
【請求項5】
請求項1に記載のプレートコンパクタの散水装置において、
前記プレートコンパクタ運搬用パイプの前部から前方に延出させて2股状をなす水タンク支持用のパイプを設けるとともに、延出させたパイプの前端を立ち上がらせて左右のパイプ間隔が上拡がり状の左右の係止部からなる前記第1の係止手段を構成し、
前記水タンクの前面に、前方へ突出しかつ上拡がり形状をなす突出部を形成し、
前記突出部を前記左右の係止部間に嵌め、
前記プレートコンパクタ運搬用パイプの前部を、前記水タンクの背面側を受ける前記第2の係止手段として兼用したことを特徴とするプレートコンパクタの散水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−53462(P2013−53462A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192516(P2011−192516)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(594201397)株式会社日立建機カミーノ (18)
【Fターム(参考)】