説明

プレート保持用骨鉗子および使用法

骨に対する骨板の位置決めのための装置は、第1の結合部(114)のところで枢動可能に連結された第1および第2のアームを備え、第1および第2のアーム(104)の遠位端がこれらの間に骨を把持する把持面(112)を定義し、第1および第2のアームの近位部分が第1の平面内に延在する。延長部材(126)は第1の結合部のところで第1および第2のアームに結合しており、第1の結合部より遠位に延在する、第1の平面と平行な第1の区間(128)と、第1および第2のアームが骨を把持する所望の構成にあるときに第2の区間が骨と平行に延在するように第1の区間に対して角度を有する、第1の区間より遠位に延在する第2の区間(130)とを含む。圧縮機構は第2の区間に結合しており、圧縮部材(142)と、第2の区間の方へ近づけたり、第2の区間から遠ざけたりすることのできる結合部材(136)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は2008年7月29日に出願された「Plate Holding Bone Forceps and Method of Use」という名称の米国仮出願第61/084,294号の優先権を主張するものである。上記出願の全開示は参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
本発明は、骨に骨板を仮止めするためのプレート保持システムに関する。このプレート保持システムは、骨板の適正な位置決めを支援するために、骨に対する骨板の位置を一時的に固定するものであり、骨に外傷を生じさせずに骨板を位置決めするために複数回にわたって固定および固定解除を行うことができる。
【背景技術】
【0003】
骨固定のための処置は、骨折その他の損傷を受けた骨に付着させる骨固定板の使用を含む。これらの処置を行うときには、骨のそれ以上の損傷を回避するために骨折部位に対して骨板を適正に位置決めすることがきわめて重要である。骨に対して骨板を位置決めする1つのシステムは、細長い骨板穴を通した骨ねじの挿入を伴う。ねじは骨中に緩く挿入され、骨板は、骨に対してねじを基準として所望の向きに移動される。ねじは所望の向きに配置されるまで、骨内部で繰り返し緩めたり、締めたりされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上記のシステムでは、骨板の矯正位置を維持するのに必要とされる骨板のある程度の側方移動を実現し得ない場合が多い。というのは、骨板は細長い骨板穴の範囲内でしか動かすことができないからである。しかも、骨中でねじを繰り返し締めたり緩めたりすると骨に対するねじの利きが甘くなるため、ねじが最終的に骨中に締め付けられるときの保持力が十分な有効性を持たなくなる可能性もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、骨の目標部分に対する骨板の位置決めのための装置を対象とする。装置は、第1結合部のところで互いに枢動可能に連結された第1および第2のアームを備え、第1および第2のアームそれぞれの遠位端がこれらの間に骨の目標部分を把持するように構成された把持面を定義する。第1結合部より近位の第1および第2のアームの部分がおおむね第1の平面に延在し、延長部材が第1結合部で第1および第2のアームに連結される。延長部材は第1の平面に対しておおむね平行な、第1の結合部より遠位に延在する第1の区間、及び第1の区間に対して角度を有する、第1の区間より遠位に延在する第2の区間を含む。第1および第2のアームが骨の目標部分を把持する所望の構成にあるときに、第2の区間に結合された圧縮機構と組み合わさって、第2の区間が骨の目標部分の表面におおむね平行に延在する。圧縮機構は結合部材を含み、結合部材は延長部材の第2の区間と圧縮板との間に設けられる。圧縮板は、骨に結合されるべき骨板の近位面と係合するように構成された遠位面を含む。結合部材は延長部材の第2の区間に対して移動させられて、圧縮板を第2の区間の方へ近づけたり、第2の区間から遠ざけたりする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明による骨固定装置を示す第1の斜視図である。
【図2】図1の骨固定装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、以下の説明および添付の図面を参照すればさらによく理解することができる。本発明は骨の治療、特に、骨折その他の損傷を受けた骨上での骨板の位置決めを対象とするシステムに関するものである。本発明の一例示的実施形態では、骨折線に隣接する骨の目標領域を骨鉗子でクランプし、骨鉗子に取り付けられた骨板保持要素を操作して、骨板を骨に当てて保持する圧縮力を加えることによって、骨折骨の目標部分上に骨板を位置決めするシステムおよび方法を示す。本発明の例示的実施形態は具体的には橈骨の骨折の固定を説明するが、本発明は様々な骨の骨折を治療するのに使用され得ることを当業者は理解するであろう。また、近位および遠位という用語は、本明細書で使用する場合、外科医その他のユーザに向かう方向(近位)およびユーザから遠ざかる方向(遠位)を示すものであることも当業者は理解するであろう。
【0008】
図1〜2に示すように、本発明によるシステム100は、2本の細長い(elongates)アーム104を含む骨鉗子102を備える。骨鉗子102の第1の端部はアーム104の把持および操作を補助する指輪106を備える。また指輪106は、当業者には理解されるように、手操作で係合解除されるまで互いに対するアーム104の位置を固定するために、押されて重なり合ったときに互いにしっかりと係合するように構成された対応する弓形のかみ合い歯108も備える。すなわち、各アーム104が互いの方へ回転する際に、歯108は互いに歯止めをかけ合ってアーム104がばらばらに開くのを防ぐと同時に、アーム104が互いの方へさらに押し出されることを可能にする。アーム104は、当業者が理解するように、摩擦によってこれらの間にものを把持する把持面112を備える第2の端部110まで延在する。またアーム104は、所定の距離だけの第2の端部110より近位にある結合部114のところで互いに枢動可能に結合されてもいる。結合部114は、締付けねじ118を枢動可能に受けるための各アーム104を貫通して延在する穴116を含む。例えば締付けねじ118は、細長いねじ軸120および軸120の第1の端部に付いたより大きい直径の頭122で形成されていてもよい。頭122はさらに、当業者が理解するように、ねじ回し機構(driving mechanism)の先端との係合を可能にするように構成された凹部124も備える。軸120の第2の端部は任意選択で、より大きい直径の部分、または締付けねじ118が穴116から抜けない形であるように構成された他の構造を備えていてもよい。よってアーム104は、その近位端に弓形の歯108を備え、その遠位端に把持面112を備えるおおむねX形の器具を定義する。アーム104の結合部114より近位部分は第1の平面に延在し、把持面112を含む結合部114より遠位部分は第1の平面から離れて曲がっている。そのため、骨の目標部分を遠位部分によって把持することができ、アーム104の近位部分が(例えば骨10の長手方向軸に沿って)骨折部位12から離れて延在する。
【0009】
図2の側面図により詳細に示すように、締付けねじ118は、アーム104に対する延長部材126の保持も行う。具体的には、延長部材126は、図2の側面図に示すように、アーム104に結合された近位端を有する細長い要素である。延長部材126は、アーム104の結合部114より近位の部分におおむね平行な近位端から第2の区間130まで延在する第1の区間128を含む。第2の区間130は、ある選択された角度で第1の区間128からそれて延在し、これによりアーム104が骨10の骨折部分を把持する所望の位置にあるときに第2の区間130が骨10の表面とほぼ平行に延在する。
【0010】
第1の区間128を貫通して延在する第1の穴132は、それを貫通して締付けねじ118のねじ軸120を受けると同時に、頭122が挿入されないような大きさとする。第2の区間130は、より大きい直径の頭138およびねじ軸140を有する止めねじ136を受けるように構成された、第2の区間130を貫通して延在する第2の穴134を含む。ねじ軸140の遠位端は、玉継手(ball joint)144によって板支承(plate shoe)142に連結され、玉継手144は骨板148が第2の区間130と平行でない場合でも骨10に対する骨板148の締付けを円滑に行わせる。例えばこの玉継手は、0°から30°までの可動域を移動するものとしてもよい。以下でより詳細に説明するように、止めねじ136が締められると、板支承142は玉継手144によって骨板148に押し付けられる。板支承142が骨板148の近位面とおおむね平行になるまで、玉継手144は板支承142を回転させる。板支承142は遠位面146を有し、作用構成において骨板148の近位面150に当たるように構成される。例えば、骨板148の近位面150がおおむね平坦である場合には、板支承142の遠位面146はおおむね平坦になる。遠位面146は、骨に対する把持を強化するために骨に食い込む1つまたは複数のスパイクを含んでいてもよい。締付けねじ118が延長部材(ナット)126に締め込まれると、延長部材126の第2の区間130が骨10に近づけられ、止めねじ136および板支承142を骨板148に近づけ、骨板148を骨10に押し付ける。
【0011】
本発明の例示的方法によれば、骨鉗子102は、畝のある面112が骨10の側方部分と係合するように骨10中の骨折部位12の上に位置決めされる。そのときかみ合い歯108は相互に重なり合って位置決めされて、骨鉗子102を骨10上の所望の位置で固定することができる。次いで骨板148が、骨鉗子102のアーム104間において目的の向きで骨折部位12の上に配置される。図2に示すように、初期構成において締付けねじ118は第1の穴132内に緩く保持され、板支承142と骨10の間で骨板148を摺動させるのに十分な距離だけ、板支承142が骨10から隔てられる。骨板148が目的の向きに移動されると、締付けねじ118が第1の区間128の第1の穴132に締め込まれ、板支承142を骨板148の近位面150に押し付ける。その場合、任意の公知のイメージング技術を使用して、骨板148が骨折部位12に対して所望の向きに配置されていることを確認してもよい。再位置決めが必要とされる場合には、締付けねじ118を緩めて板支承142によって加えられる圧縮力が軽減され、骨板148が再位置決めされる。締付けねじ118は再度締め付けられ、この工程は、骨10を損傷する以前であって骨10上の目的の向きに達するまで、必要な回数だけ繰り返されてもよい。具体的には、本発明の例示的実施形態は、医師その他のユーザが、骨の摩耗や他に骨に外傷を生じさせる危険を冒すことなく、必要な回数だけ骨10に対して骨板148を再位置決めすることを可能にする。目的の向きに到達すると、骨板穴152のいずれかを通して骨固定装置(骨ねじなど)を挿入して骨板148の位置を固定し、骨10から骨鉗子102を取り外す。
【0012】
以上本発明を好ましい実施形態との関連で説明したが、この例示的システムおよび方法には、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく様々な改変が加えられ得るものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨の目標部分に対する骨板の位置決めのための装置であって、
第1の結合部で枢動可能に連結された第1および第2のアームであって、前記第1および第2のアームそれぞれの遠位端がこれらの間に骨の目標部分を把持するように構成された把持面を定義し、前記第1および第2のアームの前記第1の結合部より近位の部分がおおむね第1の平面に延在する、第1および第2のアームと、
前記第1の結合部において前記第1および第2のアームに結合された延長部材であって、前記延長部材は、前記第1の結合部より遠位に延在し前記第1の平面と平行な第1の区間、及び、前記第1の区間より遠位に延在し前記第1の区間に対して角度を有する第2の区間を備え、前記第1および第2のアームが骨の目標部分を把持する所望の構成にあるときに前記第2の区間が前記骨の目標部分の表面とおおむね平行に延在する、延長部材と、
前記第2の区間に結合された圧縮機構であって、前記圧縮機構は、前記延長部材の第2の区間と圧縮板との間に結合された結合部材を含み、前記圧縮板は前記骨に結合されるべき骨板の近位面と係合するように構成された遠位面を含み、前記結合部材は、前記延長部材の前記第2の区間に対して移動可能で、前記圧縮板を前記第2の区間へ近づけたり、前記第2の区間から遠ざけたりする、圧縮機構と、
を備える装置。
【請求項2】
前記圧縮板は、前記第2の区間に対する前記圧縮板の角形成を可能にする第2の結合部を介してねじに結合されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第2の結合部は玉継手である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記結合部材は、前記第2の区間を貫通して形成されたねじ穴を通して挿入された止めねじであり、前記止めねじの回転が前記第2の区間に対する前記圧縮板の対応する動きを生じさせる、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
玉継手が前記圧縮板を前記第2の区間に対して回転させて、前記骨の目標部分上で受けとられた骨板の、前記第2の区間に対する角形成のための調整を可能にする、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記第2の区間は、前記第1および第2のアームが前記骨の目標部分を把持する前記所望の構成にあるときに、前記第2の区間が前記骨の目標部分の長手方向軸とおおむね平行に延在するように角度を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記第1および第2のアームのそれぞれの近位端が把持用ハンドルを備え、前記第1のアームの近位部分が前記第2のアームの近位部分の第2の歯付き弧(toothed arc)の方に向かって延在する第1の歯付き弧を含み、前記第1および第2の歯付き弧は、前記第1および第2のアームが互いの方に向かって前記結合部を中心として回転されるときに、前記第1および第2の歯付き弧が互いに重なり合って前記第1および第2のアームがばらばらに開くのを防ぐように位置決めされる、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記圧縮板は、前記結合部材により板受け位置と板固定位置との間を移動可能で、前記板受け位置では、前記第1および第2のアームが骨の目標部分を把持する所望の構成にあるときに、前記骨の目標部分に結合されるべき骨板の厚さより大きい距離だけ、前記圧縮板の遠位面が前記骨の目標部分の表面から隔てられ、前記板固定位置では、前記遠位面が前記板受け位置より前記骨の表面の方へ移動されて、前記遠位面の下側で受けられる骨板を前記骨の目標部分に押し付ける、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
骨の目標部分に対して骨板を位置決めする方法であって、
第1の結合部のところで互いに枢動可能に連結された第1および第2のアームであり、第1の平面とおおむね平行な、前記第1の結合部より遠位に延在する第1の区間、ならびに前記第1および第2のアームが骨の目標部分を把持する所望の構成にあるときに第2の区間が前記骨の目標部分の表面とおおむね平行に延在するように前記第1の区間に対して角度を有する、前記第1の区間より遠位に延在する第2の区間を含む、前記第1および第2のアームに結合された延長部材を含む、前記第1および第2のアームの遠位端間に骨の目標部分を把持するステップと、
骨板の一部が前記第2の区間と前記骨の目標部分との間に位置するように前記骨の目標部分の上で前記骨板を摺動させるステップと、
圧縮板を前記骨板の近位面の方へ移動させるように、前記第2の区間に結合された圧縮機構を操作して、前記骨板を前記骨の目標部分に当てて一時的に保持するステップと、
前記骨板が前記骨の目標部分の上の所望の位置に保持されているときに、前記骨板内の骨固定要素受け穴を通して骨固定要素を挿入して前記骨板を前記骨の目標部分に固定するステップと
を含む方法。
【請求項10】
前記骨板を再位置決めする必要がある場合に、前記骨板を取り外すために圧縮機構を緩めるステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記圧縮機構は、前記第2の区間と前記圧縮板との間に結合されたねじを含み、前記圧縮機構を操作するステップは、前記止めねじを回して前記圧縮板を前記骨の目標部分の方へ移動させるステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記圧縮板は、前記第2の区間に対する前記圧縮板の角形成を可能にする第2の結合部を介して前記ねじに結合されている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の結合部は玉継手である、請求項12に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2011−529735(P2011−529735A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521288(P2011−521288)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/052115
【国際公開番号】WO2010/014719
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(508111279)シンセス ゲーエムベーハー (9)
【Fターム(参考)】